(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183458
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231221BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20231221BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231221BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/205
H01L21/31 C
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096987
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 要
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB29
5F004BD04
5F045AA08
5F045EJ03
5F045EJ09
5F045EM02
5F045EM05
5F045EM07
5F045EM09
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA04
5F131EB11
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】異常放電の発生を低減し、ガスの流量を制御しやすい保持装置を提供する。
【解決手段】保持装置は、対象物を保持する第1表面10Aと、第1表面10Aの反対側に位置する第2表面10Bと、を有する絶縁性の板状部材10と、板状部材10の内部に形成されるガス流路50と、ガス流路50に配される絶縁性の多孔部60と、を有し、ガス流路50は、第2表面10Bに開口を有し、第1表面10Aに交差する方向に延びる縦ガス流路53と、縦ガス流路53と連通し、第1表面10Aに平行に延びる横ガス流路54と、横ガス流路54と連通し、第1表面10Aに開口を有するガス流出孔51と、を有し、多孔部60は、第1表面10Aに平行な方向において横ガス流路54と接続される第1多孔部61を備え、第1多孔部61は、第1表面10Aに平行な方向について第1多孔部61の外縁より内側に凹む凹部63を有し、凹部63において横ガス流路54と接続されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持する第1表面と、前記第1表面の反対側に位置する第2表面と、を有する絶縁性の板状部材と、前記板状部材の内部に形成されるガス流路と、前記ガス流路に配される絶縁性の多孔部と、を有し、
前記ガス流路は、
前記第2表面に開口を有し、前記第1表面に交差する方向に延びる縦ガス流路と、
前記縦ガス流路と連通し、 前記第1表面に平行に延びる横ガス流路と、
前記横ガス流路と連通し、前記第1表面に開口を有するガス流出孔と、を有し、
前記多孔部は、前記第1表面に平行な方向において前記横ガス流路と接続される第1多孔部を備え、
前記第1多孔部は、前記第1表面に平行な方向について前記第1多孔部の外縁より内側に凹む凹部を有し、前記凹部において前記横ガス流路と接続されている、保持装置。
【請求項2】
前記板状部材の内部に配され、前記第1表面に直交する方向に貫通する貫通孔が形成される電極部材をさらに備え、
前記電極部材は、前記第1表面に直交する方向について前記第1表面側に配され、
前記横ガス流路は、前記第1表面に直交する方向から見て前記電極部材の前記貫通孔の内側に配されていない、請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記多孔部は、前記第1多孔部よりも前記第1表面側に配され、前記第1表面に交差する方向において前記ガス流出孔と接続される第2多孔部をさらに備え、
前記第2多孔部は、前記電極部材の前記貫通孔内に配されている、請求項2に記載の保持装置。
【請求項4】
前記第1表面に直交する方向から見て、前記第2多孔部は、前記第1表面に平行な方向について前記第1多孔部の内側に配されている、請求項3に記載の保持装置。
【請求項5】
前記第1表面に平行な方向において、前記多孔部と異なる位置であってガス流路に配される他の多孔部をさらに備え、
前記横ガス流路は、前記凹部において前記多孔部と接続される第1ガス流路と、前記多孔部と前記他の多孔部とを接続する第2ガス流路と、前記第1ガス流路と前記第2ガス流路とを直接接続するバイパス流路と、を有する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の保持装置。
【請求項6】
前記凹部は、前記第1多孔部の前記第1表面側の端面に開口を有し、
前記開口は、前記第1表面に直交する方向に開口している、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の保持装置。
【請求項7】
前記凹部は、前記第1多孔部の前記第1表面側の端面よりも前記第2表面側に配されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
保持装置の一例として、半導体を製造するためのプラズマ処理に用いられる静電チャックが知られている。基板やウェハ等のプラズマ処理を行う際には、処理対象物を上面に保持させた絶縁性の静電チャックをチャンバー(処理容器)の内部に配置し、静電チャックの下方に配した導電性の冷却ベース部材に高周波電力を印加して、ウェハ等にバイアス電圧を生じさせる。静電チャックの内部には、下面(冷却ベース部材側の面)と上面(ウェハ保持面)とを連通させるガス流路が設けられており、このガス流路を通じて、ウェハ保持面の温度制御性を高めるためのヘリウム等の熱伝導性ガスが、冷却ベース部材側からウェハ載置面側に送られる。
【0003】
プラズマ処理時に印加される高周波電力によってガス流路内で異常放電(アーキング)が発生すると、ウェハ等の処理品質が悪化し歩留りが低下するため、ガスの供給を妨げることなく異常放電の発生を低減する技術が求められる。そこで、例えば下記特許文献1には、ガス流路となる細孔の一部にプラグ室を形成し、プラグ室の内部に配置した多孔質で絶縁性の通気性プラグをエポキシ系樹脂等からなる接着剤でプラグ室壁面に接着固定した静電チャックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、処理の高速化等を図るため、プラズマ処理時に印加される高周波電力が高電圧化されている。この結果、冷却ベース部材とウェハ等との間の電位差が大きくなり、ガス流路内の特に上下方向に延びる空所において異常放電が生じ易くなっている。よって、異常放電を低減するための絶縁性の多孔体は、多孔体とガス流路の壁面との間に隙間が生じないように形成することが好ましい。
【0006】
多孔体とガス流路の壁面との間に生じる隙間を減らすには、例えば、予め設けたガス流路内にペースト状の多孔体の原料を注入し、焼成することで、静電チャックを製造することが考えられる。しかしながら、ガス流路内にペースト状の多孔体の原料を注入する場合、多孔体の体積を一定に制御することが難しい場合がある。よって、静電チャックの多孔体を通ってガス流出孔から流出するガスの流量を均等にすることが難しい場合がある。
【0007】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、異常放電の発生を低減し、ガスの流量を制御しやすい保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の保持装置は、対象物を保持する第1表面と、前記第1表面の反対側に位置する第2表面と、を有する絶縁性の板状部材と、前記板状部材の内部に形成されるガス流路と、前記ガス流路に配される絶縁性の多孔部と、を有し、前記ガス流路は、前記第2表面に開口を有し、前記第1表面に交差する方向に延びる縦ガス流路と、前記縦ガス流路と連通し、 前記第1表面に平行に延びる横ガス流路と、前記横ガス流路と連通し、前記第1表面に開口を有するガス流出孔と、を有し、前記多孔部は、前記第1表面に平行な方向において前記横ガス流路と接続される第1多孔部を備え、前記第1多孔部は、前記第1表面に平行な方向について前記第1多孔部の外縁より内側に凹む凹部を有し、前記凹部において前記横ガス流路と接続されている、保持装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、異常放電の発生を低減し、ガスの流量を制御しやすい保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかる静電チャックの外観構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、静電チャックの模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、多孔部周辺を拡大して示す板状部材の模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、多孔部周辺を拡大して示す板状部材の模式的な平面図である。
【
図6】
図6は、ガス流出孔を兼ねる形態の多孔部について示す板状部材の模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、板状部材の製造方法を模式的に表した説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態2にかかる多孔部周辺を拡大して示す板状部材の模式的な断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態3にかかる多孔部及び他の多孔部の周辺を拡大して示す板状部材の模式的な断面図である。
【
図10】
図10は、平面視におけるガス流路を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、他の実施形態にかかる第2多孔部を備えない多孔部について示す板状部材の模式的な断面図である。
【
図12】
図12は、他の実施形態にかかる電極部材の貫通孔の内側に入り込んでいる凹部について示す板状部材の模式的な断面図である。
【
図13】
図13は、他の実施形態にかかる2つのバイパス流路を模式的に示す図である。
【
図14】
図14は、他の実施形態にかかる接続流路を有するバイパス流路を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
(1)本開示の保持装置は、対象物を保持する第1表面と、前記第1表面の反対側に位置する第2表面と、を有する絶縁性の板状部材と、前記板状部材の内部に形成されるガス流路と、前記ガス流路に配される絶縁性の多孔部と、を有し、前記ガス流路は、前記第2表面に開口を有し、前記第1表面に交差する方向に延びる縦ガス流路と、前記縦ガス流路と連通し、 前記第1表面に平行に延びる横ガス流路と、前記横ガス流路と連通し、前記第1表面に開口を有するガス流出孔と、を有し、前記多孔部は、前記第1表面に平行な方向において前記横ガス流路と接続される第1多孔部を備え、前記第1多孔部は、前記第1表面に平行な方向について前記第1多孔部の外縁より内側に凹む凹部を有し、前記凹部において前記横ガス流路と接続されている、保持装置である。
【0012】
多孔部の第1多孔部には、第1表面と平行な方向に凹む凹部が設けられ、この凹部において第1多孔部と横ガス流路とが接続されているから、確実に横ガス流路から多孔部にガスを流通させることができる。また、凹部の形状や大きさを制御することにより、多孔部の体積を制御することができる。よって、ガス流出孔から流出するガスの流量を制御しやすい。
【0013】
(2)(1)に記載の保持装置において、前記板状部材の内部に配され、前記第1表面に直交する方向に貫通する貫通孔が形成される電極部材をさらに備え、前記電極部材は、前記第1表面に直交する方向について前記第1表面側に配され、前記横ガス流路は、前記第1表面に直交する方向から見て前記電極部材の前記貫通孔の内側に配されていないことが好ましい。
【0014】
横ガス流路は、第1表面に直交する方向から見て電極部材の貫通孔の内側に配されていないから、横ガス流路における異常放電を抑制することができる。
【0015】
(3)(2)に記載の保持装置において、前記多孔部は、前記第1多孔部よりも前記第1表面側に配され、前記第1表面に交差する方向において前記ガス流出孔と接続される第2多孔部をさらに備え、前記第2多孔部は、前記電極部材の前記貫通孔内に配されていることが好ましい。
【0016】
多孔部のうち第2多孔部が電極部材の貫通孔内に配置されていることで、第1表面の開口から多孔部までの間における第1表面に直交する方向における空洞を小さくすることができ、異常放電を抑制することができる。
【0017】
(4)(3)に記載の保持装置において、前記第1表面に直交する方向から見て、前記第2多孔部は、前記第1表面に平行な方向について前記第1多孔部の内側に配されていることが好ましい。
【0018】
第1表面に直交する方向から見て、第2多孔部が第1多孔部の内側に配されているので、第1表面に平行な方向における第2多孔部の寸法を小さくすることができる。よって、電極部材の貫通孔の孔径を小さくすることができ、電極部材の面積を大きくすることができる。したがって、電極部材の機能を維持しつつ、異常放電を抑制することができる。
【0019】
(5)(1)、(2)、(3)または(4)に記載の保持装置において、前記第1表面に平行な方向において、前記多孔部と異なる位置であってガス流路に配される他の多孔部をさらに備え、前記横ガス流路は、前記凹部において前記多孔部と接続される第1ガス流路と、前記多孔部と前記他の多孔部とを接続する第2ガス流路と、前記第1ガス流路と前記第2ガス流路とを直接接続するバイパス流路と、を有することが好ましい。
【0020】
保持装置が多孔部と他の多孔部とを備え、横ガス流路が多孔部と接続される第1ガス流路と、多孔部と他の多孔部とに接続される第2ガス流路と、を備える場合、多孔部からガス流出孔へとガスが流れるため、第2ガス流路のガス圧が第1ガス流路のガス圧よりも低くなってしまう。上記の構成では、第1ガス流路と第2ガス流路とを直接接続するバイパス流路が設けられることで、ガスの圧損なく多孔部と他の多孔部とにガスを供給することができる。よって、多孔部及び他の多孔部のそれぞれに接続されるガス流出孔から流出するガスの流量を一定にすることができる。
【0021】
(6)(1)、(2)、(3)、(4)または(5)に記載の保持装置において、前記凹部は、前記第1多孔部の前記第1表面側の端面に開口を有し、前記開口は、前記第1表面に直交する方向に開口していることが好ましい。
【0022】
このような構成によると、凹部を第1表面と直交する方向に大きくすることができるから、ガスの流量を大きくすることができる。
【0023】
(7)(1)、(2)、(3)、(4)または(5)に記載の保持装置において、前記凹部は、前記第1多孔部の前記第1表面側の端面よりも前記第2表面側に配されていることが好ましい。
【0024】
このような構成によると、凹部の上に多孔部の体積を確保しやすいから、異常放電を抑制しやすい。
【0025】
[本開示の実施形態1の詳細]
本開示の実施形態1について、
図1から
図7を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明においては、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0026】
<静電チャック>
本開示の保持装置は、半導体ウェハ、ガラス基板等の対象物(以下「ウェハW」という)を吸着保持できる静電チャック100である。静電チャック100は、例えば、図示しない半導体製造装置の処理チャンバに取り付けられ、プラズマを用いてウェハWに対する各処理(成膜、エッチング等)を行うために用いられる。
【0027】
静電チャック100は、
図1に示すように、板状部材10と、ベース部材20と、を備える。板状部材10とベース部材20とは、接合部30によって接合されている。接合部30は、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着剤によって構成されている。静電チャック100は、ウェハWを静電引力により吸着保持できるようになっている。
【0028】
ベース部材20は、円盤状の部材であり、例えば、340mm程度の直径と35mm程度の厚みをもった形状に成形することができる。ベース部材20は、アルミニウム、アルミニウム合金等の導電性材料を主成分として構成されている。なお、ここでいう主成分とは、含有割合(重量割合)の最も多い成分を意味する。
図2に示すように、ベース部材20は、板状部材10側に配される第3表面20Aと、第3表面20Aと反対側に配される第4表面20Bと、を有する。第3表面20Aはベース部材20の上側に配され、第4表面20Bはベース部材20の下側に配されている。ベース部材20の第3表面20Aは、接合部30により後述する板状部材10の第2表面10Bに接合されている。
【0029】
ベース部材20の内部には、冷媒流路21が設けられている。冷媒流路21は図示しない冷媒循環装置に接続されている。冷媒循環装置は、フッ素系不活性液体、水等の冷媒を冷媒流路21に循環可能に構成されている。冷媒流路21に冷媒が流されると、ベース部材20が冷却され、接合部30を介したベース部材20と板状部材10との間の伝熱(熱引き)により、板状部材10が冷却され、後述する板状部材10の第1表面10Aで保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度を制御できる。
【0030】
また、ベース部材20の内部には、内部を流体が移動可能に形成されたガス注入路22が設けられている。ガス注入路22は、ベース部材20の第4表面20Bに開口しており、接合部30の孔を経て後述する板状部材10のガス流路50に連通している。ガス注入路22からガス流路50に熱伝導性ガスが注入されるようになっている。
【0031】
<板状部材>
板状部材10は、全体として円盤状をなし、例えば、300mm程度の直径と5mm程度の厚みをもった形状に成形することができる。板状部材10は絶縁性の基板であって、例えば、窒化アルミニウム(AlN)やアルミナ(Al
2O
3)を主成分とするセラミックスにより形成されている。板状部材10は、ウェハWを保持する第1表面10Aと、第1表面10Aと反対側に配される第2表面10Bと、を有する。
図2に示すように、第1表面10Aは板状部材10の上側に配され、第2表面10Bは板状部材10の下側に配されている。第2表面10Bは、接合部30を介してベース部材20と接合されている。
【0032】
<電極部材>
板状部材10の内部であって、第1表面10A側(上側)の位置には、チャック電極40(電極部材の一例)が配されている。チャック電極40は、例えば第1表面10Aに略平行な平面状をなし、端子等を介して電源に接続されている。必要に応じてチャック電極40に給電が行われることで静電引力が生じ、ウェハWが第1表面10A上に吸着保持される。チャック電極40は、例えばタングステンやモリブデン等を含む導電性材料によって形成できる。チャック電極40には、上下方向にチャック電極40を貫通する貫通孔41が形成されている。電極部材はチャック電極に限らず、高周波電極やヒーター電極でも構わない。
【0033】
<ガス流路>
図1に示すように、板状部材10の第1表面10Aには、複数のガス流出孔51が設けられている。
図2に示すように、第2表面10Bには、ガス流入孔52が設けられている。そして、板状部材10の内部には、ガス流出孔51及びガス流入孔52との間を流体が移動可能に連通させるガス流路50が形成されている。板状部材10のガス流路50には、ヘリウムガス等の熱伝導性ガスが流される。ベース部材20のガス注入路22からガス流入孔52に注入されたガスは、ガス流路50を通ってガス流出孔51から流出するようになっている。
【0034】
図3に示すように、ガス流路50は、ガス流入孔52を有し、第1表面10Aに交差する方向に延びる縦ガス流路53と、縦ガス流路53と連通し、第1表面10Aに平行に延びる横ガス流路54と、を有する。横ガス流路54とガス流出孔51とは後述する多孔部60を介して連通している。
【0035】
<多孔部>
板状部材10の内部には、多孔部60が埋設されている。多孔部60は、セラミックス等の絶縁性材料から構成される多孔性の部材であり、その内部を流体が流通可能に形成されている。多孔部60はガス流路50内に配されている。詳細には、多孔部60は、横ガス流路54に連通するとともに、ガス流出孔51と連通している。
【0036】
多孔部60は、第1多孔部61と、第1多孔部61の上側に連続して設けられる第2多孔部62と、を備える。本実施形態では、第1表面10Aに直交する方向(上下方向)から見て、第2多孔部62は、第1表面10Aに平行な方向(水平方向)について、第1多孔部61の内側に配されている。第1多孔部61及び第2多孔部62は、
図5に示すように、略円柱状に形成することができる。第1多孔部61及び第2多孔部62は、略円柱状でなくてもよく、例えば略多角柱状でもよい。
【0037】
図3に示すように、第1多孔部61には、水平方向について第1多孔部61の外縁より内側に凹む凹部63が形成されている。第1多孔部61は凹部63において横ガス流路54と連通している。凹部63の内空間は、横ガス流路54に含まれている。本実施形態では、凹部63は、第1多孔部61の第1表面10A側(上側)の端面61Aよりも下側(第2表面10B側)に配されている。これにより、横ガス流路54よりも上方に配される第1多孔部61の体積を確保することができ、ガス流路50内における異常放電を抑制することができる。
【0038】
本実施形態では、
図4に示すように、上下方向から見て、横ガス流路54は、チャック電極40の貫通孔41内に配されていない。換言すると、上下方向から見て、横ガス流路54は、貫通孔41を除くチャック電極40(
図4の網掛け部分)と重なるように配されている。このような配置により、横ガス流路54における異常放電を抑制することができる。
【0039】
図3に示すように、第2多孔部62は、上下方向に延びて、チャック電極40の貫通孔41の内側に配されている。第2多孔部62が設けられることにより、ガス流出孔51につながる上下方向に延びるガス流路50を減らすことができ、ガス流路50における異常放電を抑制することができる。
【0040】
図6に示すように、第2多孔部62は、ガス流路50内において板状部材10の第1表面10Aに至るまで設けられ、第1表面10A側において上下方向に延びるガス流路50を埋めてしまってもよい。すなわち、第2多孔部62は、ガス流出孔51を兼ねていてもよい。
【0041】
<静電チャックの製造方法について>
以上が本実施形態の静電チャック100の構成であって、以下では
図7を参照しつつ板状部材10及び静電チャック100の製造方法の一例について説明する。板状部材10の製造方法は、グリーンシート(セラミックグリーンシート)を利用したシート積層法を応用したものである。なお、
図7においては、図示下方が板状部材10の第1表面10A側に対応し、図示上方が板状部材10の第2表面10B側に対応していることに留意する。
【0042】
まず、
図7(A)に示すように、板状部材10のもととなるグリーンシート2を複数枚積層する。なお、グリーンシート2の必要な箇所には導電性ペーストが印刷されており、複数枚のグリーンシート2が積層されることにより、導体層2Aが形成される。導体層2Aは、板状部材10のチャック電極40等の電極や配線パターンに対応している。
【0043】
図7(B)に示すように、積層されたグリーンシート2をルーター等により削ることで、多孔部収容部3を形成する。
【0044】
図7(C)に示すように、多孔部収容部3に対してペースト状とされる多孔部60の前駆体4を流し込み、グリーンシート2と前駆体4とを乾燥させる。
【0045】
図7(D)に示すように、乾燥したグリーンシート2及び前駆体4の一部を削り、水平方向に延びる第1孔部5を形成する。第1孔部5は、板状部材10の凹部63及び横ガス流路54に対応している。前駆体4を削って第1孔部5を形成することで、凹部63を設けることができる。これにより、横ガス流路54から多孔部60へとガスを確実に流通させることができる。また、上記の工程により凹部63を形成することで、凹部63の形状や大きさを制御しやすい。よって、多孔部60の体積を制御し、ガスの流量を容易に制御することができる。
【0046】
図7(E)に示すように、
図7(D)の状態からさらにグリーンシート2を積層し、上下方向に延びる第2孔部6が形成される。第2孔部6は、板状部材10の縦ガス流路53に対応している。
【0047】
図7(F)に示すように、グリーンシート2を削り、第3孔部7を形成する。なお、このとき、多孔部60の前駆体4の一部を削ってもよい。第3孔部7は、板状部材10のガス流出孔51に対応している。また、第3孔部7の形成は、
図7(B)に示す多孔部収容部3を形成する工程において行ってもよく、この場合、多孔部収容部3から第3孔部7側に多孔部60の前駆体4が進入してもよい。
【0048】
図7(F)に示す工程で得られたグリーンシート積層体8を焼成する(脱脂焼成)。焼成体を研磨加工により精密な形状体に形成し、ロウ付けにより電気を導通する金属ピンをこの形状体に接合する。以上により板状部材10が得られる。
【0049】
公知の方法によって得られたベース部材20に、上記の板状部材10を、接合部30を介して接合する(
図1参照)。以上により静電チャック100の製造が完了する。なお、本開示の板状部材10の製造方法は、上記に限定されるものではなく、種々の公知の方法を適宜に採用できる。
【0050】
<実施形態1の効果>
以上のように、実施形態1の保持装置(静電チャック100)は、対象物(ウェハW)を保持する第1表面10Aと、第1表面10Aの反対側に位置する第2表面10Bと、を有する絶縁性の板状部材10と、板状部材10の内部に形成されるガス流路50と、ガス流路50に配される絶縁性の多孔部60と、を有し、ガス流路50は、第2表面10Bに開口を有し、第1表面10Aに交差する方向に延びる縦ガス流路53と、縦ガス流路53と連通し、第1表面10Aに平行に延びる横ガス流路54と、横ガス流路54と連通し、第1表面10Aに開口を有するガス流出孔51と、を有し、多孔部60は、第1表面10Aに平行な方向において横ガス流路54と接続される第1多孔部61を備え、第1多孔部61は、第1表面10Aに平行な方向について第1多孔部61の外縁より内側に凹む凹部63を有し、凹部63において横ガス流路54と接続されている。
【0051】
多孔部60の第1多孔部61には、第1表面10Aと平行な方向に凹む凹部63が設けられ、この凹部63において第1多孔部61と横ガス流路54とが接続されているから、確実に横ガス流路54から多孔部60にガスを流通させることができる。また、凹部63の形状や大きさを制御することにより、多孔部60の体積を制御することができる。よって、ガス流出孔51から流出するガスの流量を制御しやすい。
【0052】
実施形態1の保持装置は、板状部材10の内部に配され、第1表面10Aに直交する方向に貫通する貫通孔41が形成される電極部材(チャック電極40)をさらに備え、電極部材は、第1表面10Aに直交する方向について第1表面10A側に配され、横ガス流路54は、第1表面10Aに直交する方向から見て電極部材の貫通孔41の内側に配されていない。
【0053】
横ガス流路54は、第1表面10Aに直交する方向から見て電極部材の貫通孔41の内側に配されていないから、横ガス流路54における異常放電を抑制することができる。
【0054】
実施形態1では、多孔部60は、第1多孔部61よりも第1表面10A側に配され、第1表面10Aに交差する方向においてガス流出孔51と接続される第2多孔部62をさらに備え、第2多孔部62は、電極部材の貫通孔41内に配されている。
【0055】
多孔部60のうち第2多孔部62が電極部材の貫通孔41内に配置されていることで、第1表面10Aの開口から多孔部60までの間における第1表面10Aに直交する方向における空洞を小さくすることができ、異常放電を抑制することができる。
【0056】
実施形態1では、第1表面10Aに直交する方向から見て、第2多孔部62は、第1表面10Aに平行な方向について第1多孔部61の内側に配されている。
【0057】
第1表面10Aに直交する方向から見て、第2多孔部62が第1多孔部61の内側に配されているので、第1表面10Aに平行な方向における第2多孔部62の寸法を小さくすることができる。よって、電極部材の貫通孔41の孔径を小さくすることができ、電極部材の面積を大きくすることができる。したがって、電極部材の機能を維持しつつ、異常放電を抑制することができる。
【0058】
実施形態1では、凹部63は、第1多孔部61の第1表面10A側の端面61Aよりも第2表面10B側に配されている。
【0059】
このような構成によると、凹部63の上に多孔部60の体積を確保しやすいから、異常放電を抑制しやすい。
【0060】
[本開示の実施形態2の詳細]
本開示の実施形態2について、
図8を参照しつつ説明する。実施形態2の静電チャック200は、板状部材110と、ベース部材20と、接合部30と、を備える。板状部材110は、凹部163及び横ガス流路154の形状において実施形態1の板状部材10と異なっている。実施形態2のその他の構成については、実施形態1と同様であるから、実施形態1と同一の部材に対して同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
板状部材110の内部には、ガス流路150内に多孔部160が配されている。多孔部160は、第1多孔部161と、第2多孔部62と、を備える。第1多孔部161は凹部163を有し、凹部163において横ガス流路154と接続されている。
【0062】
実施形態2の凹部163は、第1多孔部161の第1表面10A側(上側)の端面161Aに開口163Aを有する。開口163Aは、第1多孔部161の端面161Aを上下方向に貫通している。横ガス流路154は、開口163Aよりも上側まで形成されており、実施形態1の横ガス流路54よりも上下方向に大きく形成されている。
【0063】
<実施形態2の効果>
実施形態2では、凹部163は、第1多孔部161の第1表面10A側の端面161Aに開口163Aを有し、開口163Aは、第1表面10Aに直交する方向に開口している。
【0064】
このような構成によると、凹部163を第1表面10Aと直交する方向に大きくすることができるから、ガスの流量を大きくすることができる。
【0065】
[本開示の実施形態3の詳細]
本開示の実施形態3について、
図9及び
図10を参照しつつ説明する。実施形態3の静電チャック300は、板状部材210と、ベース部材20と、接合部30と、を備える。板状部材210は、横ガス流路254の形状において実施形態1の板状部材10と異なっている。実施形態2のその他の構成については、実施形態1と同様であるから、実施形態1と同一の部材に対して同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
図9に示すように、板状部材210のガス流路250内には、実施形態1の
図6と同様の多孔部60と、多孔部60とは第1表面10Aに平行な方向において異なる位置に配される他の多孔部260と、が配されている。本実施形態では、他の多孔部260は多孔部60と同様に構成され、凹部63において横ガス流路254と接続されているものとする。
【0067】
実施形態3の横ガス流路254は、多孔部60に接続される第1ガス流路254Aと、多孔部60と他の多孔部260とに接続される第2ガス流路254Bと、を有する。多孔部60は、凹部63において第1ガス流路254A及び第2ガス流路254Bに接続されている。第1ガス流路254Aは縦ガス流路53と接続されている。他の多孔部260は凹部63において第2ガス流路254Bに接続されている。
【0068】
図10は、上方から見たガス流路250、多孔部60、及び他の多孔部260の位置関係を示す図である。
図10では電極部材等は省略されており、ガス流路250の概形が模式的に示されている。
図10に示すように、横ガス流路254は、さらに、第1ガス流路254Aと第2ガス流路254Bとを直接接続するバイパス流路255を有する。
【0069】
本実施形態とは異なり、バイパス流路255が設けられない場合には、縦ガス流路53に直接接続されている第1ガス流路254Aから第2ガス流路254Bへとガスが流れる際、多孔部60に接続されているガス流出孔51からガスが流出することで、ガスの圧損が生じるため、第2ガス流路254Bのガス圧が第1ガス流路254Aのガス圧よりも低くなる。したがって、他の多孔部260からガス流出孔51に流出するガスの流量が、多孔部60からガス流出孔51に流出するガスの流量よりも小さくなってしまう。
【0070】
一方、本実施形態では、バイパス流路255により第1ガス流路254Aと第2ガス流路254Bとが多孔部60を介することなく直接接続されている。このため、第1ガス流路254Aと第2ガス流路254Bとにおいてガス圧が等しくなる。よって、多孔部60からのガスの流量と、他の多孔部260からのガスの流量とを同一にすることができる。
【0071】
<実施形態3の効果>
実施形態3の保持装置(静電チャック300)は、第1表面10Aに平行な方向において、多孔部60と異なる位置であってガス流路250に配される他の多孔部260をさらに備え、横ガス流路254は、凹部63において多孔部60と接続される第1ガス流路254Aと、多孔部60と他の多孔部260とを接続する第2ガス流路254Bと、第1ガス流路254Aと第2ガス流路254Bとを直接接続するバイパス流路255と、を有する。
【0072】
保持装置が多孔部60と他の多孔部260とを備え、横ガス流路254が多孔部60と接続される第1ガス流路254Aと、多孔部60と他の多孔部260とに接続される第2ガス流路254Bと、を備える場合、多孔部60からガス流出孔51へとガスが流れるため、第2ガス流路254Bのガス圧が第1ガス流路254Aのガス圧よりも低くなってしまう。上記の構成では、第1ガス流路254Aと第2ガス流路254Bとを直接接続するバイパス流路255が設けられることで、ガスの圧損なく多孔部60と他の多孔部260とにガスを供給することができる。よって、多孔部60及び他の多孔部260のそれぞれに接続されるガス流出孔51から流出するガスの流量を一定にすることができる。
【0073】
<他の実施形態>
(1)実施形態1では、多孔部60は第2多孔部62を備えていたが、
図11に示すように、第2多孔部は省略してもよい。
【0074】
(2)実施形態1では、横ガス流路54は上下方向から見て電極部材の貫通孔41の内側に配されていなかったが、
図12に示すように、電極部材の貫通孔41の内側に入り込むように横ガス流路54(及び凹部63)を形成してもよい。
【0075】
(3)実施形態3では、多孔部60は第2ガス流路254Bと凹部63において接続されていたが、多孔部は第2ガス流路と凹部において接続されていなくてもよい。
【0076】
(4)実施形態3では、第1ガス流路254Aが縦ガス流路53に直接接続されていたが、縦ガス流路は横ガス流路のいずれかの部分で接続されていればよく、第1ガス流路は縦ガス流路に直接接続されていなくてもよい。
【0077】
(5)実施形態3では、他の多孔部260は凹部63において横ガス流路254と接続されていたが、他の多孔部は凹部を介さない形態で横ガス流路と接続されていてもよい。
【0078】
(6)実施形態3では、バイパス流路255は1つ設けられていたが、バイパス流路は複数設けられてもよい。例えば、
図13に示すように、2つのバイパス流路255が設けられてもよい。
【0079】
(7)
図14に示すように、バイパス流路255は多孔部60と接続される接続流路256を有してもよい。
【符号の説明】
【0080】
2…グリーンシート 2A…導体層 3…多孔部収容部 4…前駆体 5…第1孔部 6…第2孔部 7…第3孔部 8…グリーンシート積層体
10,110,210…板状部材 10A…第1表面 10B…第2表面
20…ベース部材 20A…第3表面 20B…第4表面 21…冷媒流路 22…ガス注入路
30…接合部
40…チャック電極 41…貫通孔
50,150,250…ガス流路 51…ガス流出孔 52…ガス流入孔 53…縦ガス流路 54,154,254…横ガス流路 254A…第1ガス流路 254B…第2ガス流路 255…バイパス流路 256…接続流路
60,160…多孔部 61,161…第1多孔部 61A,161A…第1表面側の端面 62…第2多孔部 63,163…凹部 163A…開口
260…他の多孔部
100,200,300…静電チャック W…ウェハ