(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183461
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】溶接トーチのノズルクリーナ装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/29 20060101AFI20231221BHJP
B23K 9/32 20060101ALI20231221BHJP
B08B 1/04 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B23K9/29 N
B23K9/32 E
B08B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096991
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】391037308
【氏名又は名称】マツモト機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100178124
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】青野 日出機
(72)【発明者】
【氏名】蓑原 照晃
【テーマコード(参考)】
3B116
4E001
【Fターム(参考)】
3B116AA47
3B116AB53
3B116BA03
3B116BA12
3B116BA16
3B116CD24
3B116CD42
3B116CD43
4E001LA06
4E001LA07
4E001LH01
4E001LH11
(57)【要約】
【課題】本発明は、溶接トーチのノズルの内面に付着したスパッタを簡単かつ確実に除去することができる溶接トーチのノズルクリーナ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
所定の回転軸αに沿って平行に延びる長寸法のブレード10と、該ブレード10を所定の回転軸αの回りに回転させる回転駆動機構11とを備える。ブレード10は、一対の幅広の平面部101を有する薄板から構成されるとともに、平面部101が回転軸αの周方向に沿う態様で配置される。ブレード10は、平面部101が溶接トーチ2のノズル21の内面に対向する態様でノズル21の内側に挿入されたあと、回転駆動機構11により所定の回転軸αの周りを回転した際、遠心力が作用することにより回転軸αに対して径方向外側に撓むように弾性変形することによって、溶接トーチ2のノズル21の内面に摺接しながらスパッタを除去する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチのノズルの内面に付着したスパッタを除去する溶接トーチのノズルクリーナ装置であって、
所定の回転軸に沿って平行に延びる長寸法のブレードと、該ブレードを所定の回転軸の回りに回転させる回転駆動機構とを備え、
前記ブレードは、一対の幅広の平面部を有する薄板から構成されるとともに、前記平面部が回転軸の周方向に沿う態様で配置され、
前記平面部が前記溶接トーチの前記ノズルの内面に対向する態様で前記ノズルの内側に挿入されたあと、前記回転駆動機構により所定の回転軸の周りを回転した際、遠心力が作用することにより前記回転軸に対して径方向外側に撓むように弾性変形することによって、溶接トーチのノズルの内面に摺接しながらスパッタを除去することを特徴とする溶接トーチのノズルクリーナ装置。
【請求項2】
前記ブレードは、回転時において遠心力が作用することにより径方向外側に撓むように弾性変形する一方、回転終了時において遠心力が除荷されることにより径方向内側の元の形状に戻る超弾性合金からなる請求項1に記載の溶接トーチのノズルクリーナ装置。
【請求項3】
前記ブレードは、ニッケルとチタンを主成分とする超弾性合金である請求項2に記載の溶接トーチのノズルクリーナ装置。
【請求項4】
前記ブレードは、平面部の周方向の幅が5mm~7mm、径方向の厚みが0.5mm~1mmの薄板状に形成されている請求項1に記載の溶接トーチのノズルクリーナ装置。
【請求項5】
前記ブレードは、回転軸方向の先端部が鋭角状に形成されている請求項1に記載の溶接トーチのノズルクリーナ装置。
【請求項6】
前記ブレードは、前記平面部の周方向片側または周方向両側の端部が湾曲状に形成されている請求項1に記載の溶接トーチのノズルクリーナ装置。
【請求項7】
前記回転駆動機構は、駆動モータ部と、駆動モータ部の上方に設けられた錐状の回転ベース部とを備え、前記回転ベース部の頂上部に前記ブレードの基端部が接続されている請求項1に記載の溶接トーチのノズルクリーナ装置。
【請求項8】
前記回転駆動機構は、回転軸に対してブレードの基端部と対称な位置に錘が設けられている請求項7に記載の溶接トーチのノズルクリーナ装置。
【請求項9】
前記ブレードと回転駆動機構の周囲に保護カバーが設けられている請求項7に記載の溶接トーチのノズルクリーナ装置。
【請求項10】
前記保護カバーは、前記ブレードの少なくとも先端部の周囲が透明に形成されている請求項9に記載の溶接トーチのノズルクリーナ装置。
【請求項11】
前記保護カバーは、溶接トーチのノズルの内面から除去されたスパッタを下方に排出する漏斗状の排出部が設けられている請求項9に記載の溶接トーチのノズルクリーナ装置。
【請求項12】
請求項1に記載のノズルクリーナ装置によって溶接トーチのノズルの内面に付着したスパッタを除去するスパッタ除去方法であって、
溶接トーチが下方に移動することによって、ブレードの先端部が溶接トーチのチップの先端部の側面に当接する工程と、
回転駆動機構によりブレードが回転軸の周りで低速度で回転することによって、ブレードの先端部が溶接トーチのチップの側面に摺接しながら、溶接トーチのチップに付着したスパッタを除去する工程と、
溶接トーチがさらに下方に移動するとともに、回転駆動機構によりブレードが回転軸の周りで徐々に速度を上げながら回転することによって、遠心力が作用することによりブレードが回転軸に対して径方向外側に撓むように弾性変形して、溶接トーチのノズルの内面に摺接しながらスパッタを除去する工程とを備えることを特徴とする溶接トーチのスパッタ除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接トーチの内面に付着したスパッタを除去するノズルクリーナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、アーク溶接において、溶接中にスパッタが飛散してノズルの内面に付着する。このスパッタを放置すると、スパッタが堆積することでガスの気流に乱れが生じ、シールド不良により溶接欠陥が発生するため、溶接後においてノズルの内面に付着したスパッタを除去する必要がある。そして、このような溶接トーチのノズルの内面に付着したスパッタを除去する装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、クリーナ本体とクリーナ本体の駆動機構とから構成され、クリーナ本体はノズル先端部の付着スパッタを除去するためのリング状の第1回転クリーナヘッドと該クリーナヘッドの中央孔に昇降自在に嵌挿したノズル内面の付着スパッタを除去するための径方向に拡縮可能な筒状のブラシ部材からなる第2回転クリーナヘッドとから構成される装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2は、固定台のノズル開口端径より若干小さい円周上に先端が内側に曲がった長尺ワイヤと先端が外向鉤形に形成された短尺ワイヤとが複数本樹立された前処理装置と、回転台のノズル開口端径より若干小さい円周上に先端に細いワイヤを植毛した長尺ブラッシング棒及び短尺ブラッシング棒が複数本樹立されるとともにその外側に円筒状ワイヤブラシが立設された本処理装置20とからなり、ガス吹出口近傍のスパッタ及びノズル開口端の環状スパッタが除去する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-25045号公報
【特許文献2】特開平5-138361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の装置は、スパッタを除去する除去部材が複数の線条のブラシ部材または棒状のブラッシング棒から構成されるため、回転時において径方向外側に容易に撓むように弾性変形することができるかもしれないが、同様に周方向後側にも容易に撓むように弾性変形する上、除去部材自体も単なる線状または棒状の形状に形成されているに過ぎないため、ノズルの内面に付着したスパッタを十分に除去することができないという問題があった。しかも、従来の装置は、回転終了時において除去部材が塑性変形してしまって元の形状に戻らないことが多く、除去部材を何度も繰り返して使用することが難しいという問題もあった。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、第1に、溶接トーチのノズルの内面に付着したスパッタを簡単かつ確実に除去することができ、第2に、繰り返して使用することができる溶接トーチのノズルクリーナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、溶接トーチのノズルの内面に付着したスパッタを除去する溶接トーチのノズルクリーナ装置であって、所定の回転軸に沿って平行に延びる長寸法のブレードと、該ブレードを所定の回転軸の回りに回転させる回転駆動機構とを備え、前記ブレードは、一対の幅広の平面部を有する薄板から構成されるとともに、前記平面部が回転軸の周方向に沿う態様で配置され、前記平面部が前記溶接トーチの前記ノズルの内面に対向する態様で前記ノズルの内側に挿入されたあと、前記回転駆動機構により所定の回転軸の周りを回転した際、遠心力が作用することにより前記回転軸に対して径方向外側に撓むように弾性変形することによって、溶接トーチのノズルの内面に摺接しながらスパッタを除去することを特徴とする。
【0009】
これによれば、ブレードは、一対の幅広の平面部を有する薄板から構成されるとともに、平面部が回転軸の周方向に沿う態様で配置されるため、回転時において遠心力が作用することにより回転軸に対して径方向外側に撓むように確実に弾性変形することによって、溶接トーチのノズルの内面に摺接することができる。また、ブレードは、幅広の平面部を有することにより周方向後側に弾性変形しない上、平面部の周方向前側の端部が刃のように薄い形状であるため、溶接トーチのノズルの内面に付着したスパッタを簡単かつ確実に除去することができる。さらに、ブレードは、溶接トーチのノズルの内径の変化に追従しながら弾性変形するため、例えば溶接トーチのノズルの先端部のテーパ部や奥部のストレート部の内面形状など、様々なノズルの内面形状に対して同一のブレードで対応することができる。
【0010】
また、前記ブレードは、回転時において遠心力が作用することにより径方向外側に撓むように弾性変形する一方、回転終了時において遠心力が除荷されることにより径方向内側の元の形状に戻る超弾性合金からなってもよい。これによれば、ブレードが、超弾性合金の性質によって、回転終了時において遠心力が除荷されると径方向内側の元の形状に戻るため、ブレードを繰り返し使用することができる。
【0011】
また、前記ブレードは、ニッケルとチタンを主成分とする超弾性合金であってもよい。これによれば、ブレードが回転終了時において遠心力が除荷されると元の形状に確実に戻ることができる。
【0012】
また、前記ブレードは、平面部の周方向の幅が5mm~7mm、径方向の厚みが0.5mm~1mmの薄板状に形成されてもよい。これによれば、このようにブレードの0.5mm~1mmの厚みに対して平面部の幅を7mm以下にすることによって、回転前においてブレードを溶接トーチのノズルの内側に容易に挿入することができるとともに、回転時においてブレードを径方向外側に確実に撓ませることができる。また、ブレードの0.5mm~1mmの厚みに対して平面部の幅を5mm以上にすることによって、回転終了時においてブレードの径方向および周方向の塑性変形を軽減または防止して、ブレードを元の形状に確実に戻すことができる。さらに、ブレードの厚みを0.5mm~1mmとすることによって、ブレードの周方向両側の端部を刃のように薄く形成することができる。
【0013】
また、前記ブレードは、回転軸方向の先端部が鋭角状に形成されてもよい。これによれば、ブレードを溶接トーチのノズルの内側に挿入し易くなる。
【0014】
また、前記ブレードは、前記平面部の周方向片側または周方向両側の端部が湾曲状に形成されてもよい。これによれば、ブレードが溶接トーチのノズルの内面に対する削り過ぎを防止しながら、溶接トーチのノズルの内面に付着したスパッタを簡単かつ確実に除去することができる。
【0015】
また、前記回転駆動機構は、駆動モータ部と、駆動モータ部の上方に設けられた錐状の回転ベース部とを備え、前記回転ベース部の頂上部に前記ブレードの基端部が接続されてもよい。これによれば、溶接トーチのノズルから除去されたスパッタが錐状の回転ベース部を滑り落ちるため、スパッタが回転駆動機構に堆積することを防止することができる。
【0016】
また、前記回転駆動機構は、回転軸に対してブレードの基端部と対称な位置に錘が設けられてもよい。これによれば、回転時においてブレードと錘が互いにつり合いながら回転軸の周りを回転するため、ブレードの不要な振動を防止または軽減することができる。
【0017】
また、前記ブレードと回転駆動機構の周囲に保護カバーが設けられてもよい。これによれば、溶接トーチの内面から除去されたスパッタが装置外部に飛散することを防止することができる。
【0018】
また、前記保護カバーは、前記ブレードの少なくとも先端部の周囲が透明に形成されてもよい。これによれば、ブレードの先端部を保護カバーの透明部分を介して視認し得るため、ブレードを溶接トーチのノズルの内側に挿入し易くなる。
【0019】
また、前記保護カバーは、溶接トーチのノズルの内面から除去されたスパッタを下方に排出する漏斗状の排出部が設けられてもよい。これによれば、溶接トーチのノズルの内面から除去され、回転駆動機構の周囲から落下してきたスパッタをそのまま下方の排出ボックス等に排出することができる。
【0020】
また、本発明は、上記に記載のノズルクリーナ装置によって溶接トーチのノズルの内面に付着したスパッタを除去するスパッタ除去方法であって、溶接トーチが下方に移動することによって、ブレードの先端部が溶接トーチのチップの先端部の側面に当接する工程と、回転駆動機構によりブレードが回転軸の周りで低速度で回転することによって、ブレードの先端部が溶接トーチのチップの側面に摺接しながら、溶接トーチのチップに付着したスパッタを除去する工程と、溶接トーチがさらに下方に移動するとともに、回転駆動機構によりブレードが回転軸の周りで徐々に速度を上げながら回転することによって、遠心力が作用することによりブレードが回転軸に対して径方向外側に撓むように弾性変形して、溶接トーチのノズルの内面に摺接しながらスパッタを除去する工程とを備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ブレードは、一対の幅広の平面部を有する薄板から構成されるとともに、平面部が回転軸の周方向に沿う態様で配置されるため、回転時において遠心力が作用することにより回転軸に対して径方向外側に撓むように確実に弾性変形することによって、溶接トーチのノズルの内面に摺接することができる。しかも、ブレードは、幅広の平面部を有することにより周方向後側に弾性変形しない上、平面部の周方向前側の端部が刃のように薄い形状であるため、溶接トーチのノズルの内面に付着したスパッタを簡単かつ確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るノズルクリーナ装置および溶接トーチを示す斜視図である。
【
図2】
図1のノズルクリーナ装置を示す側面図である。
【
図3】
図1のブレードを示す(a)正面図および(b)側面図である。
【
図4】
図3のブレードのIV-IV線矢視断面図である。
【
図5】ブレードを溶接トーチのノズルに挿入する過程を示す縦側面図である。
【
図6】第2の実施形態に係るノズルクリーナ装置および溶接トーチを示す斜視図である。
【
図7】
図6のノズルクリーナ装置および溶接トーチを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の実施形態>
次に、本発明に係るノズルクリーナ装置(以下、本装置1という)の第1の実施形態について
図1~
図5を参照しつつ説明する。なお、本実施形態において、本装置1の所定の回転軸αに対してブレード10が存在する方向を径方向、ブレード10が回転する方向を周方向として説明する。
【0024】
本装置1は、
図1および
図2に示すように、所定の回転軸αに沿って平行(略平行を含む)に延びる長寸法のブレード10と、該ブレード10を所定の回転軸αの回りに回転させる回転駆動機構11とを備え、溶接トーチ2のノズル21の内面やチップ22の側面に付着したスパッタを除去する。なお、溶接トーチ2は、ノズル21と、ノズル21の内側に設けられたチップ22と、チップ22に設けられた溶接ワイヤ23とを備える。
【0025】
前記ブレード10は、
図3に示すように、全体の長さLおよび幅Wの一対の幅広の平面部101と、全体の長さLおよび厚みTの幅狭の側面部102とを有する金属製の薄板から構成される。
【0026】
また、前記ブレード10は、弾性変形可能な金属製の素材により形成されており、後述するように回転駆動機構11により回転軸αの周りを回転した際、遠心力が作用することにより平面部101が径方向外側に撓むように弾性変形するものとなされている。
【0027】
特に、本実施形態では、前記ブレード10は、軸周りの回転時において遠心力が作用することにより平面部101が径方向外側に撓むように弾性変形する一方、軸周りの回転終了時において遠心力が除荷されることにより平面部101が元の形状に戻る超弾性合金からなり、特にはニッケルとチタンを主成分とする超弾性合金が好適に用いられる。これにより、ブレード10を何度も繰り返して使用することができる。
【0028】
また、前記ブレード10は、
図3(a)に示すように、回転軸α方向の先端部101aが正面視二等辺三角形の鋭角状に形成されている。これにより、ブレード10を溶接トーチ2のノズル21の内側に挿入し易くなる。
【0029】
また、前記ブレード10は、
図3(a)および
図4に示すように、長さ方向の中間部において、径方向外側の平面部101の周方向両側の端部101b、101bが湾曲状に形成されている。これにより、ブレード10が溶接トーチ2のノズル21の内面を削り過ぎることを防止することができる。
【0030】
また、前記ブレード10は、平面部101の周方向の幅Wが5mm~7mm、径方向の厚みTが0.5mm~1mmの薄板状に形成されるのが好ましい。このようにブレード10の0.5mm~1mmの厚みTに対して平面部101の幅Wを7mm以下にすることによって、回転前においてブレード10を溶接トーチ2のノズル21の内側に確実に挿入することができるとともに、回転時においてブレード10を径方向外側に確実に撓ませることができる。また、ブレード10の0.5mm~1mmの厚みTに対して平面部101の幅Wを5mm以上にすることによって、回転終了時においてブレード10の径方向および周方向の塑性変形を軽減または防止して、ブレード10を元の形状に確実に戻すことができる。さらに、ブレード10の厚みTを0.5mm~1mmとすることによって、ブレード10の周方向両側の端部101bを刃のように薄く形成することができる。
【0031】
前記回転駆動機構11は、
図1および
図2に示すように、装置本体3に支持ブラケット31を介して設けられた駆動モータ部111と、該駆動モータ部111の上方に設けられた錐状の回転ベース部112と、駆動モータ部111の下部に設けられた電気配線32とを備え、駆動モータ部111により回転ベース部112が所定の回転軸αで軸回転するものとなされている。
【0032】
また、前記回転駆動機構11は、回転ベース部112の頂上部に前記ブレード10の基端部101cが接続されている。具体的には、ブレード10は、回転ベース部112の頂上部において回転軸αから距離Kだけ径方向外側にオフセットした位置に基端部101cが接続されるとともに、平面部101が回転軸αに対して周方向に沿う態様で配置されている。このため、ブレード10は、回転駆動機構11の回転ベース部112の上方において、回転軸αから距離Kを隔てながら、一方の平面部101が回転軸αに対して径方向外側、他方の平面部101が回転軸αに対して径方向内側、一方の側面部102が回転軸αに対して周方向前側、他方の側面部102が回転軸αに対して周方向後側に向いた状態となる。
【0033】
而して、駆動モータ部111により回転ベース部112が所定の回転軸αで軸回転すると、ブレード10が所定の回転軸αの周りを半径Kの円を描く態様で回転するとともに、遠心力が作用することによりブレード10の平面部101が径方向外側に撓むように弾性変形する。なお、回転時においてブレード10は周方向後側に弾性変形しない。
【0034】
なお、本実施形態では、回転軸αに対してブレード10の基端部101cと対称な位置に錘113が設けられる。これにより、回転時においてブレード10と錘113が互いにつり合いながら回転軸αの周りを回転するため、ブレード10の不要な振動を防止または軽減することができる。
【0035】
次に、本装置1の動作について、
図5を参照しつつ説明する。
【0036】
まず、
図5(a)に示すように、溶接トーチ2の溶接ワイヤ23の軸と本装置1の回転軸αが概ね一致した状態において溶接トーチ2が下方に移動すると、ブレード10の先端部における内側の平面部101が溶接トーチ2のチップ22の先端部の側面に当接する。そして、回転駆動機構11によりブレード10が回転軸αの周りで低速度で回転すると、ブレード10の先端部が溶接トーチ2のチップ22の側面に摺接しながら、チップ22に付着したスパッタを除去する。
【0037】
次に、
図5(b)に示すように、溶接トーチ2がさらに下方に移動するとともに、回転駆動機構11によりブレード10が回転軸αの周りで徐々に速度を上げながら回転すると、ブレード10が溶接トーチ2のノズル21の内側に挿入されるとともに、遠心力が作用することにより径方向外側に撓むように弾性変形することによって、溶接トーチ2のノズル21の先端部(テーパ部)の内面に摺接しながらスパッタを除去する。
【0038】
次に、
図5(c)に示すように、溶接トーチ2がさらに下方に移動するとともに、回転駆動機構11によりブレード10が回転軸αの周りでさらに速度を上げながら回転すると、ブレード10が溶接トーチ2のノズル21の内側にさらに挿入されるとともに、遠心力が作用することにより径方向外側に撓むように弾性変形することによって、溶接トーチ2のノズル21の奥部(ストレート部)の内面に摺接しながらスパッタを除去する。
【0039】
なお、溶接トーチ2のノズル21の内面から除去されたスパッタは、回転駆動機構11の錐状の回転ベース部112を滑り落ちるなどして、回転駆動機構11の下方に落下する。
【0040】
次に、溶接トーチ2のノズル21の内面に付着したスパッタの除去が完了した際、溶接トーチ2が上方に移動するとともに、回転駆動機構11によりブレード10が回転軸αの周りの回転の速度を徐々に下げながら停止すると、ブレード10が径方向内側の元の形状に戻りながら、ノズル21の外部に引き出される。
【0041】
以上のとおり、本装置1によれば、ブレード10は、一対の幅広の平面部101を有する薄板から構成されるとともに、平面部101が回転軸αの周方向に沿う態様で配置されるため、回転時において遠心力が作用することにより回転軸αに対して径方向外側に撓むように確実に弾性変形することによって、溶接トーチ2のノズル21の内面に摺接することができる。また、ブレード10は、幅広の平面部101を有することにより周方向後側に弾性変形しない上、平面部101の周方向前側の端部が刃のように薄い形状であるため、溶接トーチ2のノズル21の内面に付着したスパッタを簡単かつ確実に除去することができる。さらに、ブレード10は、溶接トーチ2のノズル21の内径の変化に追従しながら弾性変形するため、例えば溶接トーチ2のノズル21の先端部のテーパ部や奥部のストレート部の内面形状など、様々なノズル21の内面形状に対して同一のブレード10で対応することができる。
【0042】
<第2の実施形態>
次に、本装置1の第2の実施形態について
図6および
図7を参照しつつ説明する。なお、以下では上記の実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、同一の構成については説明を省略して同一の符号を付すこととする。
【0043】
本実施形態では、前記ブレード10と回転駆動機構11の周囲に保護カバー12が設けられている。この保護カバー12は、透明の合成樹脂製またはガラス製の円筒状の第1の保護カバー121と、不透明の金属製または合成樹脂製の円筒状の第2の保護カバー122と、第1の保護カバー121の上部に設けられた位置決め部13と、第2の保護カバー122の下部に設けられた金属製または合成樹脂製の漏斗状の排出部14とから構成される。
【0044】
前記第1の保護カバー121および第2の保護カバー122が本装置1の周囲に設けられるため、溶接トーチ2の内面から除去されたスパッタが装置外部に飛散することを防止することができる。また、第1の保護カバー121が透明に形成されることによって、ブレード10の先端部101aを保護カバー12の透明部分を介して視認し得るため、ブレード10を溶接トーチ2のノズル21の内側に挿入し易くなる。
【0045】
前記位置決め部13は、溶接トーチ2のノズル21を位置決めするものであり、センサスイッチ15が設けられている。これにより、センサスイッチ15が溶接トーチ2を検知すると、回転駆動機構11の回転ベース部112が回転することによりスパッタの除去が開始される。
【0046】
前記排出部14は、溶接トーチ2のノズル21から除去されたあと、保護カバー12内を落下してきたスパッタを受けて、そのまま外部に設けられた図示略の排出ボックスに排出する。
【0047】
なお、以上の実施形態では、一枚のブレード10を設けるものとしたが、所定の回転軸αの周りに複数枚のブレード10を設けてもよい。ただ、ブレード10は、ニッケルとチタンを主成分とする超弾性合金は高額であることや、一枚のブレード10でも十分にスパッタを除去し得るため、一枚のブレード10とするのが好ましい。
【0048】
また、ブレード10によりチップ22の側面に付着したスパッタを除去したあと、ノズル21の内周面に付着したスパッタを除去するものとしたが、チップ22の側面に付着したスパッタを除去することなく、ノズル21の内面に付着したスパッタのみを除去してもよい。
【0049】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…本装置
10…ブレード
101…平面部
101a…先端部
101b…周方向両側の端部
101c…基端部
102…側面部
11…回転駆動機構
111…駆動モータ部
112…回転ベース部
113…錘
12…保護カバー
121…第1の保護カバー
122…第2の保護カバー
13…位置決め部
14…排出部
15…センサスイッチ
2…溶接トーチ
21…ノズル
22…チップ
23…溶接ワイヤ
3…装置本体
31…支持ブラケット
32…電気配線
α…回転軸