(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183473
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電極、電極構造体、電池、飛行体、及び、電極の生産方法、電極構造体の生産方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1399 20100101AFI20231221BHJP
H01M 4/60 20060101ALI20231221BHJP
H01M 4/137 20100101ALI20231221BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20231221BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20231221BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231221BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20231221BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20231221BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20231221BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01M4/1399
H01M4/60
H01M4/137
H01M10/0565
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/054
H01M50/531
H01M4/66 A
H01M4/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097004
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 絢太郎
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 貴也
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AA04
5H017CC01
5H017DD05
5H017DD06
5H017DD08
5H017EE05
5H017EE07
5H017HH03
5H017HH04
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5H017HH10
5H029AJ03
5H029AJ14
5H029AK01
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5H029AK03
5H029AK15
5H029AK16
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL13
5H029AM02
5H029AM03
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5H029AM07
5H029AM16
5H029BJ03
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5H029HJ04
5H029HJ06
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5H029HJ08
5H029HJ09
5H029HJ15
5H029HJ18
5H029HJ20
5H043AA05
5H043AA12
5H043AA19
5H043BA17
5H043BA19
5H043CA07
5H043CA13
5H043EA32
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050BA18
5H050BA20
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA03
5H050CA04
5H050CA05
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA19
5H050CA20
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5H050DA04
5H050FA15
5H050FA18
5H050GA03
5H050GA07
5H050GA22
5H050GA28
5H050HA04
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA09
5H050HA15
5H050HA17
5H050HA18
(57)【要約】
【解決手段】 電極を生産する方法が、集電体を準備する段階と、集電体の少なくとも一方の面に、有機化合物を活物質として含む活物質層を形成する段階と、活物質層及び集電体を固着させる段階とを有する。集電体は、導電性材料を含む導電層と、導電層を支持する支持層とを備える。支持層の導電率は、導電層の導電率よりも小さい。支持層の密度は、導電層の密度よりも小さい。活物質層及び集電体を固着させる段階は、積層された活物質層及び集電体に圧力を印加する段階を含む。圧力は、(i)活物質層及び集電体に圧力が印加される前後における集電体の電気抵抗の変化率が50%以内となるように、又は、(ii)活物質層及び集電体に圧力が印加される前後における集電体の電気抵抗の差の絶対値が1[Ω]未満となるように設定又は調整される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体を準備する段階と、
前記集電体の少なくとも一方の面に、有機化合物を活物質として含む活物質層を形成する段階と、
前記活物質層及び前記集電体を固着させる段階と、
を有し、
前記集電体は、
導電性材料を含む導電層と、
前記導電層を支持する支持層と、
を備え、
前記支持層の導電率は、前記導電層の導電率よりも小さく、
前記支持層の密度は、前記導電層の密度よりも小さく、
前記活物質層及び前記集電体を固着させる段階は、
積層された前記活物質層及び前記集電体に圧力を印加する段階、
を含み、
前記圧力は、
(i)前記活物質層及び前記集電体に圧力が印加される前後における前記集電体の電気抵抗の変化率が50%以内となるように、又は、
(ii)前記活物質層及び前記集電体に圧力が印加される前後における前記集電体の電気抵抗の差の絶対値が1[Ω]未満となるように、
設定又は調整される、
電極を生産する方法。
【請求項2】
集電体を準備する段階と、
前記集電体の少なくとも一方の面に、有機化合物を活物質として含む活物質層を形成する段階と、
前記活物質層及び前記集電体を固着させる段階と、
を有し、
前記集電体は、
導電性材料を含む導電層と、
前記導電層を支持する支持層と、
を備え、
前記支持層の導電率は、前記導電層の導電率よりも小さく、
前記支持層の密度は、前記導電層の密度よりも小さく、
前記活物質層及び前記集電体を固着させる段階は、
積層された前記活物質層及び前記集電体に圧力を印加する段階、
を含み、
前記圧力は、(i)圧力が印加された後の前記集電体の前記導電層に電流を印加して測定された第2電圧の値から、(ii)圧力が印加される前の前記集電体の前記導電層に電流を印加して測定された第1電圧の値を引いた値が、100mV未満となるように設定又は調整される、
電極を生産する方法。
【請求項3】
集電体を準備する段階と、
前記集電体の少なくとも一方の面に、有機化合物を活物質として含む活物質層を形成する段階と、
前記活物質層及び前記集電体を固着させる段階と、
を有し、
前記集電体は、
導電性材料を含む導電層と、
前記導電層を支持する支持層と、
を備え、
前記支持層の導電率は、前記導電層の導電率よりも小さく、
前記支持層の密度は、前記導電層の密度よりも小さく、
前記活物質層及び前記集電体を固着させる段階は、
積層された前記活物質層及び前記集電体に圧力を印加する段階、
を含み、
前記圧力は、
圧力が印加された後の前記活物質層のポロシティが25~40%となるように、
設定又は調整される、
電極を生産する方法。
【請求項4】
前記圧力を印加する段階は、
ロールプレスを用いて、線圧が1.0kgf/cm~200kgf/cmとなるように、前記積層された前記活物質層及び前記集電体に圧力を印加する段階、
を含む、
請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記支持層は、シート状の樹脂材料である、
請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記導電層は、層状又は箔状のアルミニウムを含み、
前記層状又は箔状のアルミニウムの厚さは、0.05μm~5μmである、
請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
正極及び負極を準備する段階と、
セパレータを準備する段階と、
前記正極、前記セパレータ及び前記負極をこの順に積層する段階と、
を有し、
前記正極及び負極を準備する段階は、
請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の方法により、前記正極及び前記負極の少なくとも一方を作製する段階、
を含む、
電極構造体を生産する方法。
【請求項8】
集電体と、
前記集電体の少なくとも一方の面に配され、有機化合物を活物質として含む活物質層と、
を備える電極であって、
前記集電体は、
導電性材料を含む導電層と、
前記導電層を支持する支持層と、
を備え、
前記導電層の厚さは、0.05μm~5mであり、
前記支持層の導電率は、前記導電層の導電率よりも小さく、
前記支持層の密度は、前記導電層の密度よりも小さく、
前記集電体の電気抵抗が0.01mΩ~1Ωである、
電極。
【請求項9】
前記活物質層のポロシティは、25~40%である、
請求項8に記載の電極。
【請求項10】
前記導電層は、アルミニウム箔であり、
前記支持層は、シート状の樹脂材料である、
請求項8又は請求項9に記載の電極。
【請求項11】
前記集電体は、複数の貫通孔が形成されており、
前記複数の貫通孔のそれぞれの円相当径は、15μm~150μmである、
請求項8又は請求項9に記載の電極。
【請求項12】
前記集電体の一方の面の外形の面積に対する、前記集電体の前記一方の面における前記複数の貫通孔の面積の総和の割合は、30%以上である、
請求項11に記載の電極。
【請求項13】
前記複数の貫通孔の少なくとも一部の内壁に配され、導電性材料を含む内部導電層をさらに備える、
請求項11に記載の電極。
【請求項14】
前記内部導電層は、主成分の異なる3以上の層を有する、
請求項13に記載の電極。
【請求項15】
1以上の正極と、
1以上の負極と、
前記1以上の正極のそれぞれ、及び、前記1以上の負極のそれぞれの間に配される1以上のセパレータと、
を備え、
前記1以上の正極及び前記1以上の負極の少なくとも1つは、請求項8又は請求項9に記載の電極である、
電極構造体。
【請求項16】
前記セパレータは、高分子固体電解質を含む、
請求項15に記載の電極構造体。
【請求項17】
請求項15に記載の電極構造体と、
前記電極構造体を収容する筐体と、
を備える、電池。
【請求項18】
前記1以上の正極を電気的に接続する正極接続部、及び、前記1以上の負極を電気的に接続する負極接続部の少なくとも一方、
をさらに備え、
前記正極接続部は、前記1以上の正極の一部を挟み込んで支持する正極支持部を有し、
前記負極接続部は、前記1以上の負極の一部を挟み込んで支持する負極支持部を有する、
請求項17に記載の電池。
【請求項19】
請求項17に記載の電池と、
前記電池に蓄積された電気エネルギーを利用して推進力を発生させる推進力発生装置と、
を備える、飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極、電極構造体、電池、飛行体、及び、電極の生産方法、電極構造体の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、正極活物質、結着材及び溶剤を含有する正極活物質層用塗工組成物を用いて正極活物質層を形成することが開示されている。特許文献2には、負極合剤スラリーを含む負極集電体に加熱したローラによるプレス処理を施すことが開示されている。特許文献3には、集電体上に電極ペーストを塗布して乾燥した後、ロールプレスにより290kgf/cmの線圧で圧延して正極を作製したことが開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2006-156102号公報
[特許文献2] 特開2015-185092号公報
[特許文献3] 特開2014-143041号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の態様においては、電極を生産する方法が提供される。上記の方法は、例えば、集電体を準備する段階を有する。上記の方法は、例えば、集電体の少なくとも一方の面に、有機化合物を活物質として含む活物質層を形成する段階を有する。上記の方法は、例えば、活物質層及び集電体を固着させる段階を有する。上記の方法において、集電体は、例えば、導電性材料を含む導電層を備える。集電体は、例えば、導電層を支持する支持層を備える。上記の方法において、支持層の導電率は、例えば、導電層の導電率よりも小さい。支持層の密度は、例えば、導電層の密度よりも小さい。上記の方法において、活物質層及び集電体を固着させる段階は、例えば、積層された活物質層及び集電体に圧力を印加する段階を含む。上記の方法において、圧力は、例えば、(i)活物質層及び集電体に圧力が印加される前後における集電体の電気抵抗の変化率が50%以内となるように、又は、(ii)活物質層及び集電体に圧力が印加される前後における集電体の電気抵抗の差の絶対値が1[Ω]未満となるように、設定又は調整される。
【0004】
本発明の第2の態様においては、電極を生産する方法が提供される。上記の方法は、例えば、集電体を準備する段階を有する。上記の方法は、例えば、集電体の少なくとも一方の面に、有機化合物を活物質として含む活物質層を形成する段階を有する。上記の方法は、例えば、活物質層及び集電体を固着させる段階を有する。上記の方法において、集電体は、例えば、導電性材料を含む導電層を備える。集電体は、例えば、導電層を支持する支持層を備える。上記の方法において、支持層の導電率は、例えば、導電層の導電率よりも小さい。支持層の密度は、例えば、導電層の密度よりも小さい。上記の方法において、活物質層及び集電体を固着させる段階は、例えば、積層された活物質層及び集電体に圧力を印加する段階を含む。上記の方法において、圧力は、例えば、(i)圧力が印加された後の集電体の導電層に電流を印加して測定された第2電圧の値から、(ii)圧力が印加される前の集電体の導電層に電流を印加して測定された第1電圧の値を引いた値が、100mV未満となるように設定又は調整される。
【0005】
本発明の第3の態様においては、電極を生産する方法が提供される。上記の方法は、例えば、集電体を準備する段階を有する。上記の方法は、例えば、集電体の少なくとも一方の面に、有機化合物を活物質として含む活物質層を形成する段階を有する。上記の方法は、例えば、活物質層及び集電体を固着させる段階を有する。上記の方法において、集電体は、例えば、導電性材料を含む導電層を備える。集電体は、例えば、導電層を支持する支持層を備える。上記の方法において、支持層の導電率は、例えば、導電層の導電率よりも小さい。支持層の密度は、例えば、導電層の密度よりも小さい。上記の方法において、活物質層及び集電体を固着させる段階は、例えば、積層された活物質層及び集電体に圧力を印加する段階を含む。上記の方法において、圧力は、例えば、圧力が印加された後の活物質層のポロシティが25~40%となるように、設定又は調整される。
【0006】
上記の第1の態様、第2の態様、及び/又は、第3の態様に係る電極を生産する方法において、圧力を印加する段階は、ロールプレスを用いて、線圧が1.0kgf/cm~200kgf/cmとなるように、積層された活物質層及び集電体に圧力を印加する段階を含んでよい。上記の何れかの電極を生産する方法において、支持層は、シート状の樹脂材料であってよい。上記の何れかの電極を生産する方法において、導電層は、層状又は箔状のアルミニウムを含んでよい。層状又は箔状のアルミニウムの厚さは、0.05μm~5μmであってよい。
【0007】
本発明の第4の態様においては、電極構造体を生産する方法が提供される。上記の方法は、例えば、正極及び負極を準備する段階を有する。上記の方法は、例えば、セパレータを準備する段階を有する。上記の方法は、例えば、正極、セパレータ及び負極をこの順に積層する段階を有する。上記の方法において、正極及び負極を準備する段階は、例えば、上記の何れかの電極を生産する方法により、正極及び負極の少なくとも一方を作製する段階を含む。
【0008】
本発明の第5の態様においては、電極が提供される。上記の電極は、例えば、集電体を備える。上記の電極は、例えば、集電体の少なくとも一方の面に配され、有機化合物を活物質として含む活物質層を備える。上記の電極において、集電体は、例えば、導電性材料を含む導電層を備える。集電体は、例えば、導電層を支持する支持層とを備える。上記の電極において、導電層の厚さは、例えば、0.05μm~5mである。支持層の導電率は、例えば、導電層の導電率よりも小さい。支持層の密度は、例えば、導電層の密度よりも小さい。集電体の電気抵抗は、例えば、0.01mΩ~1Ωである。
【0009】
上記の電極において、活物質層のポロシティは、25~40%であってよい。上記の何れかの電極において、導電層は、アルミニウム箔であってよい。上記の何れかの電極において、支持層は、シート状の樹脂材料であってよい。
【0010】
上記の何れかの電極において、集電体は、複数の貫通孔が形成されていてよい。複数の貫通孔のそれぞれの円相当径は、15μm~150μmであってよい。上記の何れかの電極において、集電体の一方の面の外形の面積に対する、集電体の一方の面における複数の貫通孔の面積の総和の割合は、30%以上であってよい。上記の何れかの電極は、複数の貫通孔の少なくとも一部の内壁に配され、導電性材料を含む内部導電層を備えてよい。内部導電層は、主成分の異なる3以上の層を有してよい。
【0011】
本発明の第6の態様においては、電極構造体が提供される。上記の電極構造体は、例えば、1以上の正極を備える。上記の電極構造体は、例えば、1以上の負極を備える。上記の電極構造体は、例えば、1以上の正極のそれぞれ、及び、1以上の負極のそれぞれの間に配される1以上のセパレータを備える。上記の電極構造体において、1以上の正極及び1以上の負極の少なくとも1つは、例えば、上記の第5の態様に係る何れかの電極である。
【0012】
上記の電極構造体において、セパレータは、高分子固体電解質を含んでよい。
【0013】
本発明の第7の態様においては、電池が提供される。上記の電池は、例えば、上記の第6の態様に係る何れかの電極構造体を備える。上記の電池は、例えば、電極構造体を収容する筐体を備える。
【0014】
上記の電池は、1以上の正極を電気的に接続する正極接続部、及び、1以上の負極を電気的に接続する負極接続部の少なくとも一方を備えてよい。上記の何れかの電池において、正極接続部は、1以上の正極の一部を挟み込んで支持する正極支持部を有してよい。上記の何れかの電池において、負極接続部は、1以上の負極の一部を挟み込んで支持する負極支持部を有してよい。
【0015】
本発明の第8の態様においては、飛行体が提供される。上記の飛行体は、例えば、上記の第7の態様に係る何れかの電池を備える。上記の飛行体は、例えば、電池に蓄積された電気エネルギーを利用して推進力を発生させる推進力発生装置を備える。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】飛行体100のシステム構成の一例を概略的に示す。
【
図8】積層構造体760の電極の電気的な接続関係の一例を概略的に示す。
【
図9】蓄電セル112の製造方法の一例を概略的に示す。
【
図10】正極220の製造方法の一例を概略的に示す。
【
図11】実施例1及び比較例2の充放電曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において例示される一実施形態(本実施形態と称される場合がある。)によれば、導電層及び当該導電層を支持する支持層を有する集電体を用いて、電池(特に、二次電池である。)に用いられる電極が生産される。上記の電極の生産方法は、例えば、集電体を準備する段階と、集電体の少なくとも一方の面に活物質層を形成する段階と、活物質層及び集電体を固着させる段階とを有する。
【0019】
本実施形態において、導電層は、例えば、導電性材料を含む。また、例えば、支持層の導電率は導電層の導電率よりも小さく、支持層の密度は導電層の密度よりも小さい。これにより、従来の蓄電セルと比較して、蓄電セルの単位質量当たりのエネルギー密度[Wh/kg-蓄電セル]、及び/又は、活物質の単位質量あたりの容量[mAh/g-活物質]が向上し得る。
【0020】
例えば、従来、集電体として、8~20μm程度の厚さを有するアルミニウム箔、銅箔などが用いられている。そのため、従来の電池においては、蓄電セルの質量に対する正極及び負極の集電体の質量の割合は、20~25%であった。これに対して、本実施形態によれば、集電体の一部が、アルミニウム箔又は銅箔よりも密度の小さな物質(典型的には、空気、又は、熱可塑性の樹脂材料である。)により形成される。その結果、単位質量当たりのエネルギー密度及び/又は活物質の単位質量あたりの容量に優れた蓄電セルが提供され得る。例えば、本実施形態によれば、単位質量あたりのエネルギー密度が350[Wh/kg-蓄電セル]以上の蓄電セルが提供され得る。また、本実施形態に係る蓄電セルを備えた電池は、単位質量あたりのエネルギー密度が大きいので、飛行体の用途に特に適している。
【0021】
本実施形態によれば、積層された活物質層及び集電体に圧力を印加することで、活物質層及び集電体を固着させる。ここで、導電層が薄くなるにつれて、上記の固着工程において導電層が破損しやすくなる。特に、上記の支持層の導電率が導電層の導電率よりも小さい場合には、導電層が大きく破損すると集電体の電気抵抗が増加し、かえって、電池の単位質量当たりのエネルギー密度[Wh/kg-電池]、及び/又は、活物質の単位質量あたりの容量[mAh/g-活物質]が減少してしまう。
【0022】
そこで、本実施形態によれば、集電体の導電層の破断が抑制されるように、上記の固着工程における圧力が設定又は調整される。本実施形態において、上記の固着工程における圧力は、比較的小さな値に設定又は調整される。
【0023】
一実施形態において、固着工程における圧力は、(i)活物質層及び集電体に圧力が印加される前後における集電体の電気抵抗(比抵抗)の変化率が50%以内となるように、又は、(ii)活物質層及び集電体に圧力が印加される前後における集電体の電気抵抗(比抵抗)の差の絶対値が1[Ω]未満となるように設定又は調整される。固着工程における圧力は、上記の差の絶対値が500m[Ω]以下となるように設定又は調整されることが好ましく、上記の差の絶対値が100m[Ω]以下となるように設定又は調整されることがさらに好ましい。これにより、集電体の導電層の破断が抑制される。
【0024】
他の実施形態において、固着工程における圧力は、(i)圧力が印加された後の集電体の導電層に電流を印加して測定された第2電圧の値から、(ii)圧力が印加される前の集電体の導電層に電流を印加して測定された第1電圧の値を引いた値が、100mV未満となるように設定又は調整される。これにより、集電体の導電層の破断が抑制される。上記の第1電圧及び第2電圧は、例えば、電圧値の測定機能及び出力機能を有する低抵抗率計により測定される。上記の第1電圧及び第2電圧は、例えば、低抵抗率計(日東精工アナリテック株式会社製、ロレスタ-GX MCP-T700)を用いた4端子4探針方式により測定され得る。
【0025】
他の実施形態において、固着工程における圧力は、圧力が印加された後の活物質層のポロシティが20~40%となるように、設定又は調整される、これにより、集電体の導電層の破断が抑制される。
【0026】
上述されたとおり、本実施形態において、上記の固着工程における圧力は、比較的小さな値に設定又は調整される。例えば、活物質層及び集電体がロールプレスを用いて固着される場合、ロールプレスの線圧が200kgf/cm以下となるように設定又は調整される。一方、固着工程における圧力が小さくなると、活物質層及び集電体が固着しにくくなる。この点につき、本発明者らは、活物質層に含まれる活物質が主として有機化合物(有機活物質と称される場合がある。)である場合には、比較的小さな圧力でも活物質層及び集電体が固着することを見出した。
【0027】
特開2014-143041号公報に記載されているように、活物質層に含まれる活物質が主として無機化合物(無機活物質と称される場合がある。)である場合には、ロールプレスを用いて、線圧で290kgf/cm以上の高圧が印加される。これは、無機活物質はヤング率が比較的大きくて硬いので、上記の固着工程において高圧を印加しなければ、活物質同士の接合界面が保持されないものと推定される。これに対して、有機活物質はヤング率が比較的小さくて柔らかいので、固着工程における圧力が小さくても活物質同士の接合界面が保持されるものと推定される。
【0028】
無機活物質のヤング率は、多くの場合、70~200GPaである。有機活物質はヤング率は、多くの場合、0.5GPa以下である。上記のヤング率は、例えば、ナノインデンターを用いて測定される。ナノインデンターは、スライドガラス上に散布されたサンプルを、先端が平坦なフラットパンチ圧子を用いて圧壊させることにより、当該サンプルの硬度及び/又はヤング率を測定する。
【0029】
そこで、本実施形態においては、固着工程に先立って、集電体の少なくとも一方の面に、有機化合物を活物質として含む活物質層が形成される。これにより、活物質層及び集電体の固着工程における圧力を小さくすることができる。
【0030】
また、活物質層に含まれる活物質が主として有機化合物である場合、活物質層に高圧が印加されると、活物質の単位質量あたりの容量が減少することがある。上記の現象の原因は定かではないが、上述されたとおり、有機活物質は、無機活物質と比較してヤング率が小さい。そのため、活物質層に高圧が印加されると、活物質粒子が変形したり、粒子間の空隙が減少したりする。その結果、活物質層中への電解液の浸透が妨げられたり、活物質層におけるイオン伝導パス及び/又は導電パスが減少したりするものと推定される。
【0031】
上述されたとおり、本実施形態によれば、電極の生産過程において活物質層に高圧が印加されない。そのため、活物質層が、活物質として主として有機活物質を含む場合であっても、上述された容量低下が抑制される。また、一般的に、有機活物質は、無機活物質と比較して軽量である。そのため、本実施形態に係る電極が電池に組み込まれた場合、当該電池のエネルギー密度が向上する。特に、電池の活物質として、分子量が比較的小さく、多電子授受能を有する有機分子が使用されることで、当該電池のエネルギー密度が大きく向上し得る。特に、電池の質量エネルギー密度[Wh/kg]が大きく向上する。
【0032】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0033】
本明細書において、数値範囲が「A~B」と表記される場合、当該表記はA以上B以下を意味する。また、「置換又は非置換」とは、「任意の置換基で置換されている、又は、置換基で置換されていない」ことを意味する。上記の置換基の種類は、明細書中で言及されない限り、特に制限されない。また、上記の置換基の個数は、明細書中で言及されない限り、特に制限されない。
【0034】
(飛行体100の概要)
図1は、飛行体100のシステム構成の一例を概略的に示す。本実施形態において、飛行体100は、蓄電池110と、電力制御回路120と、1又は複数の電動機130と、1又は複数のプロペラ140と、1又は複数のセンサ150と、制御装置160とを備える。本実施形態において、蓄電池110は、1又は複数の蓄電セル112を有する。
【0035】
本実施形態において、飛行体100は、蓄電池110に蓄積された電気エネルギーを利用して飛行する。飛行体100としては、飛行機、飛行船又は風船、気球、ヘリコプター、ドローンなどが例示される。
【0036】
本実施形態において、蓄電池110は、電力制御回路120を介して、外部の充電装置(図示されていない。)から電気エネルギーを受領し、当該電気エネルギーを1以上の蓄電セル112に蓄積する。また、蓄電池110は、電力制御回路120を介して、1以上の蓄電セル112に蓄積された電気エネルギーを電動機130に供給する。
【0037】
本実施形態において、蓄電セル112は、電気エネルギーを蓄積する(蓄電セル112の充電と称される場合がる)。また、蓄電セル112は、蓄積された電気エネルギーを放出する(蓄電セル112の放電と称される場合がある)。蓄電セル112は、二次電池であってよい。
【0038】
蓄電セル112は、全固体電池であってよい。蓄電セル112は、全固体二次電池であってよい。全固体二次電池は、上述された電解液又はゲル電解質を実質的に含まない二次電池であり、例えば、一対の電極と、当該一対の電極の間に配される固体電解質層とを備える。
【0039】
二次電池が電解液又はゲル電解質を実質的に含まないとは、二次電池が電解液又はゲル電解質を含まない場合だけでなく、二次電池が少量の電解液又はゲル電解質を含む場合をも意味する。二次電池の構成材料が電解液又はゲル電解質に含まれる溶媒に溶解する場合であっても、二次電池に含まれる溶媒の量が少なければ、二次電池の構成材料が溶媒に溶解することの電池性能に対する影響が無視し得るからである。
【0040】
一実施形態において、蓄電セル112は、(i)支持電解質塩及び溶媒を含む電解液、及び、(ii)支持電解質塩、有機高分子化合物及び有機溶媒を含むゲル電解質の少なくとも一方を含まない。他の実施形態において、活物質として用いられる有機化合物の質量[kg]に対する、電解液及びゲル電解質の質量[kg]の割合は、5%未満である。
【0041】
二次電池のキャリアイオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどが例示される。二次電池としては、ナトリウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウム金属二次電池、リチウム空気二次電池、リチウム硫黄二次電池、マグネシウムイオン二次電池などが例示される。
【0042】
例えば、車両に搭載される二次電池用の活物質としては、単位体積あたりに蓄積できる電荷量の大きな材料が選択されることが多い。一方、本実施形態において、蓄電セル112は飛行体100に搭載される。そのため、蓄電セル112に用いられる活物質は、単位質量あたりに蓄積できる電荷量の大きな材料であることが好ましい。
【0043】
蓄電セル112の質量エネルギー密度は、350[Wh/kg‐蓄電セル]以上であることが好ましく、400Wh/kg‐蓄電セル]以上であることがより好ましく、500Wh/kg‐蓄電セル]以上であることがより好ましく、600Wh/kg‐蓄電セル]以上であることがより好ましく、700[Wh/g‐蓄電セル]以上であることがさらに好ましい。これにより、飛行体の電源の用途に特に適した蓄電セルが得られる。
【0044】
蓄電セル112の体積エネルギー密度は、300[Wh/m3‐蓄電セル]以上1200[Wh/m3‐蓄電セル]以下であってもよく、400[Wh/m3‐蓄電セル]以上1000[Wh/m3‐蓄電セル]以下であってもよい。蓄電セル112が飛行体100の電源の一部として飛行体100に搭載される場合、蓄電セル112の体積エネルギー密度は、600[Wh/m3‐蓄電セル]以下であってもよく、800[Wh/m3‐蓄電セル]以下であってもよい。
【0045】
蓄電セル112は、上記の数値範囲内の質量エネルギー密度と、上記の数値範囲内の体積エネルギー密度を有してもよい。これにより、車両の電源に用いることが比較的困難な蓄電セルを、飛行体の電源として利用することができる。蓄電セル112の詳細は後述される。
【0046】
本実施形態において、電力制御回路120は、蓄電池110の電力の入力及び出力を制御する。電力制御回路120は、制御装置160からの命令に基づいて、蓄電池110の電力の入力及び出力を制御してよい。電力制御回路120は、例えば、制御装置160からの制御信号に基づいて動作する複数のスイッチング素子を含む。
【0047】
本実施形態において、電動機130は、電力制御回路120を介して、蓄電池110から電気エネルギーを受領する。電動機130は、蓄電池110から受領した電気エネルギーを利用して、プロペラ140を回転させる。これにより、電動機130は、蓄電セル112に蓄積された電気エネルギーを利用して、飛行体100の推進力を発生させることができる。
【0048】
本実施形態において、センサ150は、飛行体100の位置及び姿勢に関する各種の物理量を測定する。飛行体100の位置及び姿勢に関する各種の物理量を測定するためのセンサとしては、GPS信号受信機、加速度センサ、角加速度センサ、ジャイロセンサなどが例示される。センサ150は、蓄電池110の状態に関する各種の物理量を測定してよい。蓄電池110の状態に関する各種の物理量を測定するためのセンサとしては、温度センサ、電流センサ、電圧センサなどが例示される。
【0049】
本実施形態において、制御装置160は、飛行体100を制御する。制御装置160は、電力制御回路120を制御することで、蓄電池110の電力の入出力を制御してよい。例えば、制御装置160は、蓄電池110の出力電流、出力電圧、入力電流、入力電圧などを制御する。これにより、制御装置160は、飛行体100の位置及び姿勢を制御することができる。制御装置160は、センサ150からの出力に基づいて電力制御回路120を制御することで、飛行体100の位置及び姿勢を制御してよい。
【0050】
蓄電池110は、二次電池の一例であってよい。蓄電セル112は、二次電池の一例であってよい。電動機130は、推進力発生装置の一例であってよい。二次電池は、電池の一例であってよい。
【0051】
(蓄電セル112の概要)
図2は、蓄電セル112の一例を概略的に示す。本実施形態においては、蓄電セル112がコイン型の全固体二次電池である場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明される。しかしながら、蓄電セル112はコイン型の全固体二次電池に限定されないことに留意されたい。
【0052】
(蓄電セル)
本実施形態において、蓄電セル112は、正極ケース212と、負極ケース214と、封止剤216と、金属バネ218とを備える。また、蓄電セル112は、正極220と、セパレータ230と、負極240とを備える。本実施形態において、正極220は、正極集電体222と、正極活物質層224とを有する。本実施形態において、負極240は、負極集電体242と、負極活物質層244とを有する。
【0053】
本実施形態において、蓄電セル112は、正極220と、セパレータ230と、負極240とを有する構造体260を備える。
図2に示されるとおり、正極220、セパレータ230及び負極240はこの順に積層されており、セパレータ230は、正極220及び負極240の間に配される。
【0054】
本実施形態においては、蓄電セル112が、電解液又はゲル電解質を実質的に含まない場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明される。また、本実施形態においては、正極集電体222が(i)導電性材料を含む導電層及び(ii)導電層を支持する支持層を有する場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明される。
【0055】
本実施形態において、正極ケース212及び負極ケース214を組み立てることで、正極ケース212及び負極ケース214の内部に空間が形成される。正極ケース212及び負極ケース214により形成された空間の内部には、金属バネ218、正極220、セパレータ230及び負極240が収容される。正極220、セパレータ230及び負極240は、金属バネ218の反発力により、正極ケース212及び負極ケース214の内部に固定される。
【0056】
正極ケース212及び負極ケース214は、例えば、円盤状の薄板形状を有する導電性の材料により構成される。本実施形態において、封止剤216は、正極ケース212及び負極ケース214の間に形成される隙間を封止する。封止剤216は、絶縁性材料を含む。封止剤216は、正極ケース212及び負極ケース214を絶縁する。
【0057】
(正極)
本実施形態において、正極集電体222は、正極活物質層224を保持する。本実施形態において、正極集電体222は、0.01mΩ~1Ωの電気抵抗を有する。これにより、正極集電体222の製造中に正極集電体222の導電層(導電層の詳細は後述される。)に圧力が印加される前後において、特定の測定条件で当該導電層に電流を印加して測定される電圧の変動が、例えば、100mV未満に抑制される。正極集電体222は、0.01mΩ~333mΩの電気抵抗を有してもよく、0.01mΩ~100mΩの電気抵抗を有してもよい。
【0058】
正極集電体222の密度は、例えば、1.1~2.0g/cm3程度に調整される。これにより、例えば、正極活物質層224に含まれる活物質の主成分が、アントラキノン(密度:1.3g/cm3)、アントラセン(密度:1.25g/cm3)及び/又はナフタレン(密度:1.14g/cm3)である場合、正極集電体222及び正極活物質層224を有する正極220の質量が非常に軽くなり、蓄電セル112の質量エネルギー密度が大きくなる。
【0059】
本実施形態において、正極集電体222の少なくとも一部は、金属よりも密度の小さな材料により形成される。正極集電体222の少なくとも一部は、アルミニウムよりも密度の小さな材料により形成されてもよい。例えば、正極集電体222の少なくとも一部は、樹脂により形成される。これにより、蓄電セル112が軽量化され得る。
【0060】
特に、固体電解質を主成分とするセパレータ230が用いられる場合、固体電解質の種類によっては、セパレータ230の質量が比較的大きくなる。このような場合であっても、正極集電体222の少なくとも一部が樹脂により形成されることにより、蓄電セル112の全体の質量の増加が抑制される。その結果、蓄電セル112の質量当たりの容量、及び、蓄電セル112のエネルギー密度が向上する。
【0061】
例えば、正極集電体222は、導電性材料を含む導電層と、当該導電層を支持する支持層とを備える。導電層及び支持層の詳細は後述される。
【0062】
正極集電体222の形状としては、箔形状(板形状、フィルム形状、シート形状などと称される場合がある)、メッシュ形状、穴あき板形状などが例示される。正極集電体222の厚さは、特に限定されるものではないが、1~200μmであることが好ましい。正極集電体222の厚さは、6~20μmであってもよく、4~10μmであってもよい。
【0063】
本実施形態において、正極活物質層224は、正極集電体222の少なくとも一方の面に形成される。正極活物質層224の厚さは、正極集電体222の片面あたり1~100μmであってもよく、5~50μmであってもよい。
【0064】
正極活物質層224は、例えば、正極活物質と、結着材料(バインダーと称される場合がある。)とを含む。正極活物質層224は、導電性材料及びイオン伝導性材料の少なくとも一方をさらに含んでよい。正極活物質層224は、正極活物質と、イオン伝導性材料とを含んでもよい。これにより、正極活物質層224の内部に形成されるイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスの切断が抑制され得る。
【0065】
一実施形態において、正極活物質層224は、正極集電体222の少なくとも一方の面の上に、正極活物質層224を構成する材料及び溶媒を含むスラリーを塗布し、当該スラリーを乾燥させることで形成される。上記の溶媒としては、各種の溶媒物質又はその混合物が例示される。上記の溶媒物質の種類は特に限定されるものではないが、上記の溶媒物質としては、N-メチルピロリドン(NMP)、水などが例示される。
【0066】
他の実施形態において、正極活物質層224は、正極活物質層224を構成する材料を混合してシート状に成型し、当該シート状の混合物を正極集電体222の少なくとも一方の面に圧着することで形成される。正極活物質として有機化合物が用いられる場合、上記の圧着工程において正極活物質層224に過度の圧力が印加されないように、正極集電体222及び正極活物質層224が圧着される。
【0067】
例えば、コーターを用いて、正極集電体222の上に正極活物質層224の前駆材料が塗工されるときに、正極活物質層224の前駆材料に印加される圧力が調整される。例えば、コーターによる塗工ギャップが180μm以上となるように設定される。上記の塗工ギャップは200μm以上に設定されてもよい。これにより、正極活物質層224中のイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスの切断が抑制される。
【0068】
正極活物質として有機化合物が用いられる場合、正極活物質層224の体積に対する、正極活物質として機能する有機化合物の体積の割合(活物質体積割合と称される場合がある。)は、60%以上であってよい。正極活物質層224の体積に対する、正極活物質として機能する有機化合物の体積の割合は、60~80%であることが好ましく、65~75%であることがより好ましい。
【0069】
正極活物質層224が高圧でプレスされると、正極活物質層224の体積に対する、正極活物質として機能する有機化合物の体積の割合が80%を超える。上記の割合が80%を超えると、イオン伝導パスが細くなったり、イオン伝導パスが切断されたりする。その結果、正極活物質層224の容量が小さくなる。上記の高圧は、50MPa以上を意味してもよく、100MPa以上を意味してもよく、500MPa以上を意味してもよい。
【0070】
一方、正極活物質層224の体積に対する、正極活物質として機能する有機化合物の体積の割合が60%未満になると、キャリアイオンの伝導性は良好になるものの、正極活物質の密度が小さくなったり、正極活物質層224に含まれる正極活物質の質量が少なくなったりする。その結果、正極活物質層224の容量が小さくなる。
【0071】
正極活物質層224の体積に対する、正極活物質として機能する有機化合物の体積の割合は、例えば、三次元SEM(Scanning Electron Microscopy)を用いた観察結果に基づいて決定される。例えば、一般財団法人材料科学技術振興財団により提唱されている「三次元SEMによる活物質体積の数値評価(C0316)」(https://www.mst.or.jp/casestudy/tabid/1318/pdid/87/Default.aspx)によれば、SEM観察を繰り返し、数十枚の連続画像を取得することで、一定体積中の各物質の存在比率、平均体積などの情報が取得され得る。
【0072】
正極活物質層224における活物質体積割合は、例えば、蓄電セル112の製造工程において正極活物質層224に加えられる圧力の大きさにより決定される。蓄電セル112の製造工程において正極活物質層224に印加される圧力が大きくなると、正極活物質層224における活物質体積割合は大きくなる。正極活物質層224に印加される圧力の大きさと、正極活物質層224における活物質体積割合の増加の度合いとの関係は、例えば、有機活物質の種類によって異なる。
【0073】
そこで、例えば、正極活物質として有機化合物が用いられる場合、作製された蓄電セル112に含まれる正極活物質層224における活物質体積割合が80%以下となるように、蓄電セル112の製造工程中に正極活物質層224に印加される圧力の最大値が調整又は管理される。これにより、正極及び又は電池の実容量が、正極及び又は電池の理論容量と比較して大きく減少するという現象の発生が抑制される。
【0074】
また、正極活物質層224のヤング率が小さいほど、正極活物質層224に高圧が印加された場合における活物質体積割合の増加の度合いが大きくなり得る。そこで、正極活物質が有機化合物である場合、正極活物質層224のヤング率が、セパレータ230のヤング率と同程度に調整されてよい。例えば、セパレータ230が主として高分子固体電解質により構成され、且つ、正極活物質が有機化合物である場合、正極活物質のヤング率に対する高分子固体電解質のヤング率の割合が、0.7~1.3となるように、正極活物質層224の材料及び/又は製造条件が決定される。
【0075】
上記のヤング率は、例えば、JIS K7171に規定される曲げ試験により測定される。上記の曲げ試験においては、歪み速度が約1%/分となるように設定される。
【0076】
なお、正極活物質層224のヤング率は、特に限定されない。例えば、蓄電セル112の製造工程において正極活物質層224に印加される圧力が比較的小さい場合、正極活物質層224の材料は、正極活物質層224のヤング率を考慮することなく、任意に決定され得る。
【0077】
また、本実施形態によれば、正極集電体222及び正極活物質層224の固着工程においても、正極集電体222及び正極活物質層224に印加される圧力が、上記のとおりに設定又は調整される。これにより、正極集電体222に含まれる導電層が薄い場合であっても、当該導電層の破断が抑制される。その結果、正極集電体222の電気抵抗の増加が抑制される。本実施形態によれば、正極活物質層224のイオン伝導パス及び/又は導電パスの減少に伴う容量の低下が抑制されるだけでなく、正極集電体222の電気抵抗の増大に伴う容量の低下も抑制され得る。
【0078】
上述されたとおり、本実施形態によれば、正極活物質層224の体積に対する、正極活物質として機能する有機化合物の体積の割合が、60~80%となるように、固着工程における圧力が設定又は調整される。この場合、正極活物質層224の体積に対する、空隙の体積の割合(空隙率、ポロシティなどと称される場合がある)は、25~40%となる。
【0079】
(正極活物質)
正極活物質層224に含まれる正極活物質としては、蓄電セル112のキャリアイオンを吸蔵及び放出することができる各種の物質が用いられる。本実施形態においては、正極活物質は、主として、単一又は複数の種類の有機化合物により構成される。正極活物質は、無機化合物を含んでもよい。例えば、正極活物質層224に含まれる正極活物質のうち、80質量%以上が有機化合物により構成される。
【0080】
上述されたとおり、正極220は、正極集電体222と、正極活物質層224とを有する。正極活物質層224の質量は、正極220の全質量の80%以上であってよい。正極活物質の質量は、正極活物質層224の全質量の80%以上であってよい。正極活物質として用いられる有機化合物の質量は、正極活物質の全質量の80%以上であってよい。
【0081】
正極活物質として用いられる無機化合物(無機正極活物質と称される場合がある。)としては、金属酸化物、金属ケイ酸塩、金属リン酸塩、金属ホウ酸塩などが例示される。上記の金属としては、V、Mn、Ni、Coなどの遷移金属が例示される。
【0082】
正極活物質として用いられる有機化合物(有機正極活物質と称される場合がある。)としては、各種の酸化還元活性な化合物が有機正極活物質として用いられる。有機正極活物質としては、共役系高分子、ジスルフィド、キノン、局在型ラジカル、非局在型ラジカルなどが例示される。
【0083】
有機正極活物質は、芳香族炭化水素、芳香族複素環化合物、1以上のシアノ基により置換されたアルケン、ジスルフィド、及び、その誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であってよい。有機正極活物質が上記の構造単位を含む化合物である場合、その重合度は100以下であってよい。上記の誘導体は、1以上の水素が、ケトン基、OH基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ニトロ基などにより置換された化合物であってよい。
【0084】
有機正極活物質は、ベンゼン環に少なくとも2個の酸素原子が結合した構造を含む化合物、ベンゼン環に少なくとも2個の水酸基が結合した構造を含む化合物、ベンゼン環の少なくとも2個の炭素原子が窒素原子に置換された構造を含む化合物、炭素の二重結合に少なくとも2個のシアノ基が結合した構造を含む化合物、ジスルフィド結合を含む化合物、及び、その誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であってよい。有機正極活物質が上記の構造単位を含む化合物である場合、その重合度は100以下であってよい。上記の誘導体は、1以上の水素が、ケトン基、OH基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ニトロ基などにより置換された化合物であってよい。
【0085】
特定の化合物に由来する構造を含む化合物は、当該特定の化合物に含まれる少なくとも1つの水素が除かれてできる基又は構造を含む化合物であってよい。特定の化合物に由来する構造を含む化合物は、当該化合物の単量体であってもよく、二量体又は多量体であってもよい。例えば、芳香族炭化水素の誘導体の一例であるベンゾキノンに由来する構造を含む化合物としては、ナフトキノン、アントラキノン、フェナントレンキノンなどの多環芳香族炭化水素の誘導体が例示される。
【0086】
例えば、1,4-ナフトキノン、5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、及び、9,10-アントラキノンは、ベンゾキノンに由来する構造を含む。5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン(ナフタザリンと称される場合がある。)は、1,4-ナフトキノンに由来する構造を含む化合物の一例であってよい。また、9,10-アントラキノンは、1,4-ナフトキノンに由来する構造を含む化合物の一例であってよい。
【0087】
同様に、特定の化合物に由来する構造単位を含む化合物は、当該特定の化合物、又は、当該特定の化合物に含まれる少なくとも1つの水素が除かれてできる基若しくは構造を、繰り返し単位として含むポリマー又はオリゴマーが例示される。上述されたとおり、特定の化合物に由来する構造単位を含む化合物は、重合度が100以下のオリゴマーであることが好ましい。これにより、質量エネルギー密度の大きな電池が作製され得る。
【0088】
有機正極活物質は、正極活物質層224における活物質体積割合が80%を超える場合に、正極活物質層224の容量が正極活物質層224の理論容量の50%未満となるような化合物であってよい。有機正極活物質は、正極活物質層224における活物質体積割合が80%を超える場合に、正極活物質層224の容量が正極活物質層224の理論容量の50%未満となり、且つ、正極活物質層224における活物質体積割合が65~75%の場合に、正極活物質層224の容量が正極活物質層224の理論容量の50%以上(より好ましくは、70%以上である。)となるような化合物であってよい。上述されたとおり、本実施形態によれば、このような有機化合物が電池の正極活物質として用いられた場合であっても、高容量の電池が作製され得る。
【0089】
このような有機化合物としては、分子量が比較的小さく、且つ、多電子授受能を有する有機分子が例示される。上記の有機分子が低分子化合物である場合、当該有機分子の分子量は、例えば、500以下である。上記の有機分子の分子量は、200以下であってもよい。上記の有機分子がポリマー又はオリゴマーである場合、当該有機分子の分子量は、例えば、5000以下である。上記の有機分子の分子量は、3000以下であってもよい。
【0090】
有機正極活物質は、0.1013MPa、25℃の条件下におけるエチレンカーボネート(EC)に対する溶解度が0.01~40[mmol/l‐EC]の有機化合物、及び、0.1013MPa、25℃の条件下におけるジエチルカーボネート(DEC)に対する溶解度が0.01~40[mmol/l‐DEC]の有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であってよい。上記の溶解度に関する数値範囲の上限は、10[mmol/l‐溶媒]であることが好ましい。上述されたとおり、本実施形態によれば、このような有機化合物が電池の正極活物質として用いられた場合であっても、比較的寿命の長い電池が作製され得る。
【0091】
このような有機化合物としては、分子量が比較的小さく、且つ、多電子授受能を有する有機分子が例示される。上記の有機分子が低分子化合物である場合、当該有機分子の分子量は、例えば、500以下である。上記の有機分子の分子量は、200以下であってもよい。上記の有機分子がポリマー又はオリゴマーである場合、当該有機分子の分子量は、例えば、5000以下である。上記の有機分子の分子量は、3000以下であってもよい。
【0092】
上述されたとおり、蓄電セル112の有機活物質が電解液又はゲル電解質の溶媒に溶解しやすいほど、蓄電セル112が電解液又はゲル電解質を実質的に含まないことの効果が大きくなる。エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)は、電解液又はゲル電解質の溶媒として広く用いられている非プロトン性有機溶媒である。そのため、正極活物質層224が上記のような溶解度を有する有機化合物を含む場合、蓄電セル112が電解液又はゲル電解質を実質的に含まないことの効果が大きくなり得る。
【0093】
有機正極活物質の具体例としては、下記の化学式のそれぞれにより表される化合物及びその誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。上述されたとおり、特定の化合物に由来する構造を含む化合物は、当該特定の化合物に含まれる少なくとも1つの水素が除かれてできる基又は構造を含む化合物であってよい。同様に、特定の化合物に由来する構造単位を含む化合物は、当該特定の化合物、又は、当該特定の化合物に含まれる少なくとも1つの水素が除かれてできる基若しくは構造を、繰り返し単位として含むポリマー又はオリゴマーが例示される。
【0094】
【0095】
上記の誘導体は、1以上の水素が、重水素、水酸基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ハロゲン、各種の有機基などにより置換された化合物であってよい。上記の群から選択される少なくとも1種の化合物の分子量は、例えば500以下である。上記の群から選択される少なくとも1種の化合物の分子量は、200以下であってもよい。上記の構造単位を含む化合物は、重合度が100以下のオリゴマーであることが好ましい。
【0096】
上記の化学式において、R及びR'は、それぞれ独立して、水素、重水素、水酸基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、又は、有機基を示す。上記の有機基としては、各種の1価の基が例示される。上記の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、ケトン基、カルボキシル基、カルボニル基、アリール基、シアノ基、ヘテロ環を含む基などが例示される。R及びR'は、それぞれ独立して、水素、重水素、水酸基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ケトン基、シアノ基、カルボニル基、及び、ヘテロ環を含む基から選択される1つであってよい。
【0097】
上記の有機基は、下記の化学式のそれぞれにより表される化合物又はその誘導体に由来する構造を有する1価の基であってよい。
【0098】
【0099】
上記の化学式のそれぞれにより表される化合物に由来する構造を有する1価の基は、上記の化学式のそれぞれにおいて、芳香環に結合する水素のうちの1つが除かれてできる基であってよい。上記の化学式のそれぞれにより表される化合物の誘導体は、上記の化学式において、1以上の水素が、重水素、ハロゲン、水酸基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、有機基などにより置換された化合物であってよい。上記の誘導体に由来する構造を有する1価の基は、当該誘導体の芳香環に結合する水素のうちの1つが除かれてできる基であってよい。
【0100】
例えば、セパレータ230が、主に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物を含む固体電解質層により構成される場合、正極活物質層224は、有機正極活物質として、上記の化学式のそれぞれにより表される化合物及びその誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む。これにより、上述された有機正極活物質の容量の低下が抑制される。
【0101】
上記の化学式のそれぞれにより表される化合物及びその誘導体は、分子量が小さく、且つ、多電子授受能を有する。そのため、これらが蓄電セル112の活物質として用いられることで、蓄電セル112のエネルギー密度及び/又は容量が向上する。特に、本実施形態によれば、蓄電セル112が電解液又はゲル電解質を実質的に含まない。また、正極活物質層224が20%以上のポロシティを有する。これにより、蓄電セル112のエネルギー密度及び/又は容量がさらに向上する。
【0102】
上記の化学式のうち、p-ベンゾキノンに由来する構造を含む化合物としては、5,8-ジヒドロキシ-1,4-ナフトキノン(ナフタザリンと称される場合がある)、ナフタザリン二量体などが例示される。同様に、p-ベンゼンジオールに由来する構造を含む化合物としては、ナフタザリン、ナフタザリン二量体などが例示される。これらの化合物が正極活物質として用いられることで、エネルギー密度の大きな電池が作製され得る。
【0103】
p-ベンゾキノンに由来する構造を含む化合物は、2,4-ジヒドロキシ-p-ベンゾキノンであってもよい。また、上記の化学式のうち、o-ベンゾキノンに由来する構造を含む化合物としては、4-ニトロ-1,2-ベンゾキノンなどが例示される。これらの化合物が正極活物質として用いられることで、エネルギー密度の大きな電池が作製され得る。
【0104】
(正極活物質以外の材料)
正極活物質層224に含まれる結着材料は、正極活物質層224を構成する材料を結着し、正極220の電極形状を保持する。結着材料としては、例えば、各種の高分子材料が用いられる。上記の高分子材料としては、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体などが例示される。
【0105】
結着材料は、有機正極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する結着材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機正極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
【0106】
正極活物質層224に含まれる導電性材料は、正極活物質層224の導電率を向上させる。これにより、正極220の抵抗が小さくなる。導電性材料は、電子伝導性を有する材料であれば特に限定されない。導電性材料としては、炭素系材料、金属系材料、導電性高分子材料などが例示される。これらの導電性材料は、単独で用いられてもよく、2種以上の導電助剤が組み合せられてもよい。
【0107】
炭素系材料としては、黒鉛、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどである)、コークス、非晶質炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが例示される。金属系材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、チタン、ニッケルなどが例示される。導電性高分子材料としては、ポリフェニレン誘導体などが例示される。
【0108】
導電性材料は、有機正極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する導電性材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機正極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
【0109】
正極活物質層224に含まれる伝導性材料は、正極活物質層224におけるキャリアイオンの伝導性を向上させる。伝導性材料としては、例えば、各種の固体電解質が用いられる。固体電解質としては、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、高分子固体電解質などが例示される。伝導性材料として、高分子固体電解質が用いられてよい。高分子固体電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。
【0110】
後述されるとおり、本実施形態において、セパレータ230は、高分子固体電解質を含む。伝導性材料として用いられる高分子固体電解質の種類は、セパレータ230に含まれる高分子固体電解質の種類と同一であってもよく、異なってもよい。
【0111】
伝導性材料は、有機正極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する伝導性材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機正極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
【0112】
(セパレータ)
本実施形態において、セパレータ230は、正極220及び負極240の間に配され、正極220及び負極240を隔離する。また、セパレータ230は、正極220及び負極240の間におけるキャリアイオンの伝導性を確保する。セパレータ230の厚さは、特に限定されるものではないが、10~50μmであることが好ましい。
【0113】
本実施形態において、セパレータ230は、層状(板状、フィルム状、シート状などと称される場合がある。)の固体電解質(固体電解質層と称される場合がある。)を備える。これにより、固体電解質層が、蓄電セル112のセパレータとして機能する。
【0114】
一実施形態において、セパレータ230として、固体電解質層が用いられる。固体電解質層は、単一の固体電解質層により構成されてもよく、複数の固体電解質層により構成されてもよい。他の実施形態において、セパレータ230として、1又は複数の固体電解質層と、固体電解質以外の材料を含む他の層との積層体が用いられる。他の層は、イオン伝導性を有してよい。他の層としては、複数の貫通孔が形成された樹脂と、当該貫通孔の内部に充填されたイオン伝導性材料とを備える複合材料が例示される。
【0115】
これにより、電解液又はゲル電解質を含まない二次電池が作製され得る。その結果、正極活物質層224及び/又は負極活物質層244が、主な活物質として有機活物質を含む場合であっても、有機活物質が電解液又はゲル電解質の溶媒に溶解することによる電池寿命の減少が抑制され得る。
【0116】
なお、セパレータ230は、上記の実施形態に限定されない。例えば、細孔の内部に固体電解質が配された多孔質材料が、セパレータ230として用いられる。適切な支持材料又は保持材料をゲル電解質又は電解液に浸漬し、当該支持材料又は当該保持材料の内部にゲル電解質又は電解液を浸潤させた後、当該支持材料又は当該保持材料の内部に配された電解質を固化させることで、セパレータ230が作製されてもよい。例えば、ゲル電解質又は電解液を含む支持材料又は保持材料を乾燥させることで、当該支持材料又は当該保持材料の内部に配された電解質が固化する。
【0117】
電解液又はゲル電解質の溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、γ-ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、1,2-ジメトキシメタン、1,3-ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、及び、これらの混合物が例示される。特に、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、及び、エチルメチルカーボネート(EMC)は、電解液又はゲル電解質の溶媒として広く用いられている。
【0118】
(固体電解質層)
本実施形態において、セパレータ230は、高分子固体電解質を主な構成材料として含む固体電解質層を備える。固体電解質層は、例えば、80質量%以上の真正高分子固体電解質を含む。セパレータ230が高分子固体電解質を主な構成材料として含む場合、高圧のプレス工程を経ることなく、セパレータ230と、正極220及び/又は負極240とが接合され得る。
【0119】
その結果、例えば、正極活物質層224及び/又は負極活物質層244が有機活物質を含む場合であっても、20%以上のポロシティを有する正極活物質層224及び/又は負極活物質層244が得られる。上述されたとおり、正極活物質層224及び/又は負極活物質層244のポロシティが20%以上である場合、理論容量に対する、正極活物質層224及び/又は負極活物質層244の容量の割合が大きな蓄電セル112が得られる。理論容量に対する、正極活物質層224及び/又は負極活物質層244の容量の割合は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
【0120】
固体電解質層は、例えば、平滑な支持板の上に、固体電解質層を構成する材料及び溶媒を含むスラリーを塗布し、当該スラリーを乾燥させることで作製される。上記の溶媒としては、各種の溶媒又はその混合物が例示される。上記の溶媒の種類は特に限定されるものではないが、上記の溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、水、メタノールなどが例示される。
【0121】
固体電解質層を構成する高分子固体電解質としては、例えば、60℃の条件下で1×10-4 [S/cm]以上のイオン伝導度を有する高分子材料が用いられる。蓄電セル112の正極活物質及び/又は負極活物質として有機化合物が用いられる場合、当該有機化合物のヤング率に対する上記の高分子材料のヤング率の割合が0.7~1.3となるように、高分子材料の種類、組成及び分子量の少なくとも1つが決定されてよい。
【0122】
これにより、蓄電セル112の製造過程又は使用過程における、活物質のポロシティの低下がさらに抑制される。なお、固体電解質層が主として高分子固体電解質により構成される場合、蓄電セル112の使用過程における蓄電セル112の内部の圧力は、通常、0.1~0.2[MPa]程度である。一方、固体電解質層が主として無機系の固体電解質により構成される場合、蓄電セルの使用過程における蓄電セルの内部の圧力は、通常、500[MPa]程度まで加圧される。
【0123】
固体電解質層を構成する高分子固体電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。固体電解質層は、実質的に単一高分子固体電解質により構成されてもよく、2以上の種類の高分子固体電解質を含んでよい。
【0124】
(負極)
本実施形態において、負極集電体242は、負極活物質層244を保持する。負極集電体242の材料としては、銅、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金などが例示される。
【0125】
負極集電体242は、導電性樹脂を含んでもよい。負極集電体242は、導電性樹脂であってもよい。一実施形態において、導電性樹脂は、導電性高分子を含む。他の実施形態において、導電性樹脂は、導電性フィラーを含む高分子であってよい。
【0126】
負極集電体242は、正極集電体222と同様の構成を有してもよい。例えば、負極集電体242は、導電性材料を含む導電層と、当該導電層を支持する支持層とを備える。支持層は、金属よりも密度の小さな材料により形成される。支持層は、アルミニウムよりも密度の小さな材料により形成されてもよい。例えば、支持層は、樹脂により形成される。これにより、蓄電セル112が軽量化され得る。
【0127】
負極活物質としてキャリア金属が用いられる場合、当該キャリア金属が集電体の役割を兼ね得る。例えば、蓄電セル112のキャリア金属がリチウムであり、負極活物質がリチウム金属である場合、リチウム金属が集電体として用いられる。この場合、蓄電セル112は、負極集電体242を備えなくてもよい。
【0128】
負極集電体242の形状としては、箔形状(板形状、フィルム形状などと称される場合がある)、メッシュ形状、穴あき板形状などが例示される。負極集電体242の厚さは、特に限定されるものではないが、1~200μmであってよい。負極集電体242の厚さは、4~20μmであってもよく、6~10μmであってもよい。
【0129】
本実施形態において、負極活物質層244は、負極集電体242の少なくとも一方の面に形成される。負極活物質層244の厚さは、負極集電体242の片面あたり、0~200μmであってもよく、1~100μmであってもよい。
【0130】
負極活物質層244は、例えば、負極活物質と、結着材料(バインダーと称される場合がある。)とを含む。負極活物質層244は、導電性材料及びイオン伝導性材料の少なくとも一方をさらに含んでよい。負極活物質層244は、負極活物質と、イオン伝導性材料とを含んでもよい。これにより、負極活物質層244の内部に形成されるイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスの切断が抑制され得る。
【0131】
一実施形態において、負極活物質層244は、負極集電体242の少なくとも一方の面の上に、負極活物質層244を構成する材料及び有機溶媒を含むスラリーを塗布し、当該スラリーを乾燥させることで作製される。上記の溶媒としては、各種の溶媒物質又はその混合物が例示される。上記の溶媒物質の種類は特に限定されるものではないが、上記の溶媒物質としては、N-メチルピロリドン(NMP)、水などが例示される。
【0132】
他の実施形態において、負極活物質層244は、負極活物質層244を構成する材料を混合してシート状に成型し、当該シート状の混合物を負極集電体242の少なくとも一方の面に圧着することで形成される。負極活物質として有機化合物が用いられる場合、上記の圧着工程において負極活物質層244に過度の圧力が印加されないように、負極集電体242及び負極活物質層244が圧着される。
【0133】
例えば、コーターを用いて、負極集電体242の上に負極活物質層244の前駆材料が塗工されるときに、負極活物質層244の前駆材料に印加される圧力が調整される。例えば、コーターによる塗工ギャップが180μm以上となるように設定される。上記の塗工ギャップは200μm以上に設定されてもよい。これにより、負極活物質層244中のイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスの切断が抑制される。
【0134】
負極活物質として有機化合物が用いられる場合、負極活物質層244の体積に対する、負極活物質として機能する有機化合物の体積の割合(活物質体積割合と称される場合がある。)は、60%以上であってよい。負極活物質層244の体積に対する、負極活物質として機能する有機化合物の体積の割合は、60~80%であることが好ましく、65~75%であることがより好ましい。
【0135】
負極活物質層244が高圧でプレスされると、負極活物質層244の体積に対する、負極活物質として機能する有機化合物の体積の割合が80%を超える。上記の割合が80%を超えると、イオン伝導パスが細くなったり、イオン伝導パスが切断されたりする。その結果、負極活物質層244の容量が小さくなる。上記の高圧は、50MPa以上を意味してもよく、100MPa以上を意味してもよく、500MPa以上を意味してもよい。
【0136】
一方、負極活物質層244の体積に対する、負極活物質として機能する有機化合物の体積の割合が60%未満になると、キャリアイオンの伝導性は良好になるものの、負極活物質の密度が小さくなったり、負極活物質層244に含まれる正極活物質の質量が少なくなったりする。その結果、負極活物質層244の容量が小さくなる。
【0137】
負極活物質層244における活物質体積割合は、正極活物質層224における活物質体積割合と同様の手順により導出される。例えば、負極活物質層244における活物質体積割合は、三次元SEM(Scanning Electron Microscopy)を用いた観察結果に基づいて決定される。
【0138】
負極活物質層244における活物質体積割合は、例えば、蓄電セル112の製造工程において負極活物質層244に加えられる圧力の大きさにより決定される。蓄電セル112の製造工程において負極活物質層244に加えられる圧力が大きくなると、負極活物質層244における活物質体積割合は大きくなる。負極活物質層244に印加される圧力の大きさと、負極活物質層244における活物質体積割合の増加の度合いとの関係は、例えば、有機活物質の種類によって異なる。
【0139】
そこで、例えば、負極活物質として有機化合物が用いられる場合、作製された蓄電セル112に含まれる負極活物質層244における活物質体積割合が80%以下となるように、蓄電セル112の製造工程中に負極活物質層244に印加される圧力の最大値が調整又は管理される。これにより、負極及び又は電池の実容量が、負極及び又は電池の理論容量と比較して大きく減少するという現象の発生が抑制される。
【0140】
また、負極活物質層244のヤング率が小さいほど、負極活物質層244に高圧が印加された場合における活物質体積割合の増加の度合いが大きくなり得る。そこで、負極活物質が有機化合物である場合、負極活物質層244のヤング率が、セパレータ230のヤング率と同程度に調整されてよい。例えば、セパレータ230が主として高分子固体電解質により構成され、且つ、負極活物質が有機化合物である場合、負極活物質のヤング率に対する高分子固体電解質のヤング率の割合が、0.7~1.3となるように、負極活物質層244の材料及び/又は製造条件が決定される。
【0141】
上記のヤング率は、例えば、JIS K7171に規定される曲げ試験により測定される。上記の曲げ試験においては、歪み速度が約1%/分となるように設定される。
【0142】
なお、負極活物質層244のヤング率は、特に限定されない。例えば、蓄電セル112の製造工程において負極活物質層244に印加される圧力が比較的小さい場合、負極活物質層244の材料は、負極活物質層244のヤング率を考慮することなく、任意に決定され得る。
【0143】
後述されるとおり、負極活物質層として、リチウム金属などのキャリア金属の箔が用いられる場合がある。この場合、負極活物質層の材料は、負極活物質層のヤング率を考慮することなく決定され得る。
【0144】
(負極活物質)
負極活物質層244に含まれる負極活物質としては、蓄電セル112のキャリアイオンを吸蔵及び放出することができる各種の物質が用いられる。負極活物質は、無機化合物であってもよく、有機化合物であってもよい。これらの負極活物質は単独で用いられてもよく、2種以上の負極活物質が組み合せられてもよい。例えば、蓄電セル112のキャリアイオンを放出可能な金属箔が、負極活物質層244として用いられる。これにより、蓄電セル112の質量エネルギー密度が向上する。
【0145】
負極集電体242が、正極集電体222と同様に、導電性材料を含む導電層と、当該導電層を支持する支持層とを備える場合、一実施形態によれば、負極活物質として、蓄電セル112のキャリアイオンを放出可能な金属(例えば、Li金属である。)が用いられる。この場合、負極活物質層244に含まれる負極活物質のほぼ全体が、当該金属により構成される。他の実施形態において、負極活物質は、主として、単一又は複数の種類の有機化合物により構成されてよい。負極活物質は、無機化合物を含んでもよい。例えば、負極活物質層244に含まれる負極活物質のうち、80質量%以上が有機化合物により構成される。
【0146】
負極活物質として用いられる無機化合物(無機負極活物質と称される場合がある。)としては、(i)キャリア金属及びこれを含む合金、(ii)スズ、シリコン及びこれらを含む合金、(iii)珪素酸化物、(iv)チタン酸化物などが例示される。例えば、蓄電セル112がリチウム二次電池である場合、負極活物質として、金属リチウム、リチウム・チタン酸化物(LTO)などが用いられる。キャリア金属を含まない材料が負極活物質として用いられる場合、当該材料にキャリア金属がプレドープされてよい。
【0147】
負極活物質として用いられる有機化合物(有機負極活物質と称される場合がある。)としては、芳香族複素環化合物及びその誘導体、並びに、これらに由来する構造又は構造単位を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であってよい。有機負極活物質が上記の構造単位を含む化合物である場合、その重合度は100以下であってよい。上記の誘導体は、1以上の水素が、ケトン基、OH基、OM基(Mは、金属である。Mとしては、電池のキャリア金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが例示される)、ニトロ基などにより置換された化合物であってよい。
【0148】
上述されたとおり、負極活物質層244は、箔状のキャリア金属を含んでよい。例えば、負極活物質層244は、リチウム金属箔を含む。これにより、蓄電セル112にキャリア金属が供給される。金属箔の厚さは、1~200μmであってよく、10~100μmであってよく、20~50μmであってよい。金属箔の厚さ及び/又は質量は、正極活物質層224における正極活物質の含有量に応じて決定されてよい。
【0149】
(負極活物質以外の材料)
負極活物質層244に含まれる結着材料は、負極活物質層244を構成する材料を結着し、負極240の電極形状を保持する。結着材料としては、例えば、各種の高分子材料が用いられる。上記の高分子材料としては、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体などが例示される。
【0150】
結着材料は、有機負極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する結着材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機負極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
【0151】
負極活物質層244に含まれる導電性材料は、負極活物質層244の導電率を向上させる。これにより、負極240の抵抗が小さくなる。導電性材料は、電子伝導性を有する材料であれば特に限定されない。導電性材料としては、炭素系材料、金属系材料、導電性高分子材料などが例示される。これらの導電性材料は、単独で用いられてもよく、2種以上の導電助剤が組み合せられてもよい。
【0152】
炭素系材料としては、黒鉛、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどである)、コークス、非晶質炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが例示される。金属系材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、チタン、ニッケルなどが例示される。導電性高分子材料としては、ポリフェニレン誘導体などが例示される。
【0153】
導電性材料は、有機負極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する結着材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機負極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
【0154】
負極活物質層244に含まれる伝導性材料は、負極活物質層244におけるキャリアイオンの伝導性を向上させる。伝導性材料としては、例えば、各種の固体電解質が用いられる。固体電解質としては、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、高分子固体電解質などが例示される。伝導性材料として、高分子固体電解質が用いられてよい。高分子固体電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。
【0155】
上述されたとおり、本実施形態において、セパレータ230は、高分子固体電解質を含む。伝導性材料として用いられる高分子固体電解質の種類は、セパレータ230に含まれる高分子固体電解質の種類と同一であってもよく、異なってもよい。
【0156】
伝導性材料は、有機負極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する伝導性材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機負極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
【0157】
正極ケース212は、筐体の一例であってよい。負極ケース214は、筐体の一例であってよい。正極220は、電極の一例であってよい。正極集電体222は、集電体の一例であってよい。正極活物質層224は、活物質層の一例であってよい。負極240は、電極の一例であってよい。負極集電体242は、集電体の一例であってよい。負極活物質層244は、活物質層の一例であってよい。構造体260は、電極構造体の一例であってよい。有機活物質は、有機化合物の一例であってよい。有機正極活物質は、有機化合物の一例であってよい。有機負極活物質は、有機化合物の一例であってよい。
【0158】
(別実施形態の一例)
本実施形態においては、蓄電セル112がコイン型二次電池である場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明された。しかしながら、蓄電セル112の種類、構造などは、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、蓄電セル112は、正極、セパレータ及び負極が渦巻状に巻回した巻回電極体を備える円筒型電池であってもよい。さらに他の実施形態において、蓄電セル112は、正極及び負極がセパレータを挟んで交互に積層した積層電極体が、ラミネートで封止されたラミネート型電池であってもよい。
【0159】
本実施形態においては、負極240が、負極集電体242及び負極活物質層244を有する場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明された。しかしながら、蓄電セル112の負極は、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、箔状のキャリア金属が、負極集電体242及び負極活物質層244として機能する。例えば、蓄電セル112がリチウム金属二次電池である場合、金属リチウムが負極として使用され得る。
【0160】
本実施形態においては、正極集電体222が(i)導電性材料を含む導電層及び(ii)導電層を支持する支持層を有し、正極活物質層224が活物質として主として有機化合物を含み、負極240が任意の構成を有する場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明された。しかしながら、蓄電セル112の負極は、本実施形態に限定されない。
【0161】
他の実施形態において、負極集電体242が(i)導電性材料を含む導電層及び(ii)導電層を支持する支持層を有し、負極活物質層244が活物質として主として有機化合物を含み、正極220が任意の構成を有してよい。さらに他の実施形態において、正極集電体222及び負極集電体242が(i)導電性材料を含む導電層及び(ii)導電層を支持する支持層を有し、正極活物質層224及び負極活物質層244が活物質として主として有機化合物を含んでもよい。
【0162】
図3は、蓄電セル112の他の例を概略的に示す。
図3に関連して説明される蓄電セル112は、正極ケース212及び負極ケース214により形成された空間の内部に、金属バネ218、正極220、セパレータ230及び負極240に加えて、液体又はゲル状の電解質350が収容される点と、セパレータ230として固体電解質以外の材料が採用され得る点とで、
図2に関連して説明された蓄電セル112と相違する。
図3に関連して説明される蓄電セル112は、上記の相違点を除き、
図2に関連して説明された蓄電セル112と同様の構成を有してよい。
【0163】
液体又はゲル状の電解質350としては、公知の電解液又はゲル電解質が使用され得る。セパレータ230としては、公知のセパレータが使用され得る。
【0164】
図4、
図5及び
図6を用いて、正極集電体222の詳細が説明される。上述されたとおり、負極集電体242も、正極集電体222と同様の構成を有してよい。
図4は、正極集電体222の一例である集電体400の断面図を概略的に示す。
図5は、正極集電体222の一例である集電体500の断面図の一例を概略的に示す。
図6は、正極集電体222の一例である集電体600の断面図の一例を概略的に示す。
【0165】
図4に示されるとおり、集電体400は、支持層420と、導電層442と、導電層444とを備える。本実施形態において、支持層420は、第1平面422と、第2平面424と、側面426とを有する。本実施形態において、導電層442は、支持層420の第1平面422に配される。導電層444は、支持層420の第2平面424に配される。
【0166】
本実施形態において、支持層420は、導電層442及び導電層444を支持する。これにより、導電層442及び導電層444の破損が抑制される。支持層420の密度は、導電層442又は導電層444の密度より小さい。例えば、支持層420は、密度が導電層442又は導電層444の密度よりも小さな材料により構成される。支持層420は、シート状の樹脂材料であってよい。
【0167】
支持層420の導電率は特に限定されるものではないが、支持層420の導電率は、導電層442又は導電層444の導電率より小さくてもよい。支持層420の厚さは特に限定されるものではないが、支持層420の厚さは、導電層442又は導電層444の厚さより大きくてもよい。支持層420の厚さが大きくなると、支持層420の質量も大きくなる。そこで、支持層420がシート状の樹脂材料である場合、支持層420の厚さは、10μm以下であってもよく、7μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
【0168】
本実施形態において、導電層442及び導電層444は、導電性材料を含む。導電性材料は、抵抗率が8.0×10-8[Ω・m]以上の材料であってよい。導電性材料は、金属であってよい。上記の金属としては、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル又はこれらの合金などが例示される。ステンレススチールとしては、SUS-430、SUS-304などが例示される。導電性材料は、アルミニウムであってもよい。
【0169】
導電層442及び/又は導電層444の厚さ(図中、上下方向の長さとして示される。)は、0.05μm~7μmであってよい。導電層442及び/又は導電層444の厚さは、0.05μm~5μmであってもよく、0.1μm~3μmであってもよく、0.1μm~2μmであってもよく、0.5μm~1μmであってもよい。導電層442及び/又は導電層444の厚さは、0.05μm~4μmであってもよく、0.05μm~3μmであってもよく、0.05μm~2μmであってもよく、0.05μm~1μmであってもよい。導電層442及び/又は導電層444の厚さは、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.1μm~1μmであることがさらに好ましい。市販のアルミニウム箔は、比較的薄いアルミニウム箔であっても6~10μmの厚さを有することから、集電体400が5μm以下の厚さを有する導電層442及び/又は導電層444を備えることにより、導電層442及び/又は導電層444として市販のアルミニウム箔が用いられた場合と比較して、蓄電セルの単位質量当たりのエネルギー密度[Wh/kg-蓄電セル]が向上する。
【0170】
導電層442及び/又は導電層444の少なくとも一方は、上記の厚さを有する層状又は箔状のアルミニウムであってよい。層状又は箔状のアルミニウムは、貼り付けにより支持層420の表面に配されてもよく、蒸着法、堆積法などにより支持層420の表面に形成されてもよい。
【0171】
導電層442及び/又は導電層444の厚さが7μm以下である場合、蓄電セル112の質量エネルギー密度が向上する。導電層442及び/又は導電層444の厚さが5μm以下である場合、蓄電セル112の質量エネルギー密度がさらに向上する。導電層442及び/又は導電層444の厚さが1μm以下である場合、蓄電セル112の質量エネルギー密度が大きく向上する。一般的に、導電層の厚さが0.1μm以下又は0.1μm未満になると、導電層442及び/又は導電層444の厚さが破損しやすくなる。しかしながら、本実施形態に係る導電層442及び導電層444は、支持層420により支持されている。そのため、導電層442及び/又は導電層444の厚さが0.05~0.1μm程度の場合であっても、導電層442及び/又は導電層444のの破損が抑制され得る。
【0172】
支持層420が樹脂材料である場合、上述された固着工程における導電層442及び導電層444の破断に対する耐性は、上述された固着工程における集電体400の破断に対する耐性と同程度である。集電体400の破断に対する耐性の度合いは、例えば、集電体400から、支持層420、導電層442及び導電層444を含んだ状態で短冊状に切り出されたサンプルの引張試験により決定される。なお、固着工程中に導電層442及び導電層444の一部が破断した場合、導電層442及び導電層444の電気抵抗は、固着工程が実施される前と比較して増加し得る。
【0173】
サンプルの大きさ及び形状は、例えば、「試験機アカデミア」(株式会社キーエンス、[online]https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/testing-machine/material/tension.jsp(2022年4月6日))に開示されているように、幅20mm×長さ100mmの短冊状の全体形状を有し、中央に長さ40mmのテーバー領域を有する。テーパー領域は、中央に幅10mm×長さ20mmの狭幅領域を有する。テーパー領域の一方の端部及び狭幅領域の一方の端部が連結され、テーパー領域の他方の端部及び狭幅領域の他方の端部が連結される。
【0174】
引張試験は、例えば、IPC-TM-650に従って、又は、IPC-TM-650に準拠して実施される。具体的には、サンプルの両端に固定治具を取り付け、当該サンプルを上下に引っ張ることで、サンプルの引張強度を測定する。引張速度は、例えば、2inch/min(50.8mm/min)に設定される。上記の条件における引張強度が、例えば、Ts(50)のように表記される場合がある。上記のカッコ内の数値は、引張速度を示す。
【0175】
上記のサンプルの引張強度Ts(50)は、360MPa以上であってよい。引張強度Ts(50)は、450MPa以上であってよい。
【0176】
図5に示されるとおり、集電体500は、支持層420に複数の貫通孔522が形成されている点で、
図4に関連して説明された集電体400と相違する。集電体500は、上記の相違点を除き、集電体400と同様の構成を有してよい。
【0177】
集電体として単なる金属箔を用いた場合、当該集電体に貫通孔を形成しようとすると、当該金属箔が屈曲してしまい、貫通孔を形成することが困難になる場合がある。そのため、特に、金属箔の両面に活物質層が形成される場合には、集電体に貫通孔を形成することが難しい。これに対して、本実施形態によれば、導電層が樹脂シートなどの支持層により支持されているので、集電体に貫通孔を形成しても集電体が比較的屈曲しにくい。
【0178】
本実施形態によれば、複数の貫通孔522の一部に、導電性材料546が充填される。導電性材料546は、導電層442及び導電層444を電気的に接続する。
【0179】
複数の貫通孔522のそれぞれの円相当径(円相当直径と称される場合がある。)は、15μm~150μmであってよい。隣接する2つの貫通孔522の間隔は、30μm~250μmであってよい。
【0180】
貫通孔522の円相当径が15μmよりも小さくなると、貫通孔522の内壁面に、導電層442及び導電層444を電気的に接続するための導電層(内部導電層と称される場合がある。)を形成する場合に、当該内壁面に形成される導電層の厚さが小さくなり、当該導電層の電気抵抗が大きくなる。一方、貫通孔522の円相当径が150μmよりも大きくなると、貫通孔522の内壁面に、導電層442及び導電層444を電気的に接続するための導電層を形成する場合に、当該導電層の総量が少なくなり、導電層442及び導電層444の電気抵抗が大きくなる。また、貫通孔522の円相当径が150μmよりも大きくなると、集電体500の強度が不足する可能性がある。
【0181】
複数の貫通孔522のそれぞれの円相当径(円相当直径と称される場合がある。)は、15μm~150μmであってもよく、15μm~50μmであってもよく、15~35μmであってもよい。導電性材料546が充填されていない貫通孔522の円相当径は、15μm~50μmであってよく、15~35μmであってもよい。導電性材料546が充填されている貫通孔522の円相当径は、特に限定されない。これにより、導電層442及び導電層444の破断が抑制されつつ、集電体500の計量化が実現され得る。
【0182】
集電体500の一方の面の外形の面積に対する、集電体500の一方の面における複数の貫通孔522の面積の総和の割合は、30%以上であってよい。集電体500の一方の面の外形の面積に対する、集電体500の一方の面における、導電性材料546が充填されていない貫通孔522の面積の総和の割合は、30%以上であってもよい。これにより、導電層442及び導電層444の破断が抑制されつつ、集電体500の計量化が実現され得る。
【0183】
図6に示されるとおり、集電体600は、支持層420、導電層442及び導電層444を貫通する複数の貫通孔620が形成されている点で、
図5に関連して説明された集電体500と相違する。集電体500は、上記の相違点を除き、集電体500と同様の構成を有してよい。
【0184】
本実施形態において、複数の貫通孔620の少なくとも一部の内壁部622の表面には、導電層642が形成されている。導電層642は、導電性材料を含む。導電性材料は、金属であってよい。上記の金属としては、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル又はこれらの合金などが例示される。ステンレススチールとしては、SUS-430、SUS-304などが例示される。導電性材料は、アルミニウムであってもよい。
【0185】
導電層642は、主成分の異なる3以上の層を有してよい。導電層642は、補助層と、目的層と、保護層とを備えてもよい。例えば、貫通孔620の内壁部622の表面にニッケルを主成分とする第1層が形成され、第1層の上に銅を主成分とする第2層が形成され、第2層の上にクロメート被膜が形成される。第1層の厚さは0.1μm程度であってよく、第2層の厚さは1μm程度であってよく、クロメート被膜の厚さは0.3μm程度であってよい。
【0186】
導電層642は、導電層442及び導電層444を電気的に接続してよい。導電層642は、内部導電層の一例であってよい。
【0187】
図7は、積層構造体760の一例を概略的に示す。
図2に関連して説明された実施形態においては、構造体260が、正極220、セパレータ230及び負極240はこの順に積層されている場合を例として、電池の一部構成する構造体(電極構造体と称される場合がある。)の詳細が説明された。しかしながら、電極構造体は、構造体260に限定されない。
【0188】
図7及び
図8を用いて、電極構造体の他の例である積層構造体760の詳細が説明される。
図7は、積層構造体760の断面の一例を概略的に示す。
図8は、積層構造体760の電極の電気的な接続関係の一例を概略的に示す。積層構造体760は、複数の正極220と、複数のセパレータ230と、複数の負極240とを備える点を除き、構造体260と同様の構成を有してよい。
【0189】
本実施形態において、積層構造体760は、1以上の正極220と、1以上の負極240と、1以上の正極220のそれぞれ、及び、1以上の負極240のそれぞれの間に配される1以上のセパレータ230とを備える。
図7に示されるとおり、積層構造体760は、複数の正極220と、複数の負極240と、複数の正極220のそれぞれ、及び、複数の負極240のそれぞれの間に配される複数のセパレータ230とを備える。
【0190】
積層構造体760の最も外側に配される正極220を除き、複数の正極220のそれぞれは、正極集電体222の両面に配された正極活物質層224を有する。積層構造体760の最も外側に配される正極220は、正極集電体222の一方の面に配された正極活物質層224を有する。
【0191】
積層構造体760の最も外側に配される負極240を除き、複数の負極240のそれぞれは、負極集電体242の両面に配された負極活物質層244を有する。積層構造体760の最も外側に配される負極240は、負極集電体242の一方の面に配された負極活物質層244を有する。
【0192】
図7に示されるとおり、積層構造体760は、複数の正極220のそれぞれを電気的に接続する正極接続部820を備える。本実施形態によれば、正極接続部820は、複数の正極220の一部を挟み込んで支持するリード822及びサブリード824を有する。これにより、複数の正極220の結合箇所の強度が向上する。
【0193】
正極接続部820において、複数の正極220が溶接により物理的に結合されてよい。溶接方法としては、超音波溶接、抵抗溶接、レーザー溶接などが例示される。サブリード824の平面寸法は、溶接領域の平面寸法より大きくてよい。リード822の平面寸法は、サブリード824の平面寸法より大きくてよい。
【0194】
リード822は、例えば、板状の導電性材料により構成される。リード822の厚さは、10~300μmであってもよく、30~200μmであることが好ましく、50~100μmであることがさらに好ましい。
【0195】
サブリード824の材質は特に限定されない。サブリード824は、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス及びこれらの合金により構成される。サブリード824は、ポリプロピレン、ポリイミドなどの樹脂材料により構成されてもよい。サブリード824の厚さは、10~300μmであってもよく、30~200μmであることが好ましく、50~100μmであることがさらに好ましい。
【0196】
同様に、積層構造体760は、複数の負極240のそれぞれを電気的に接続する負極接続部840を備える。本実施形態によれば、負極接続部840は、複数の正極220の一部を挟み込んで支持するリード842及びサブリード844を有する。これにより、複数の負極240の結合箇所の強度が向上する。
【0197】
負極接続部840において、複数の負極240が溶接により物理的に結合されてよい。溶接方法としては、超音波溶接、抵抗溶接、レーザー溶接などが例示される。サブリード844の平面寸法は、溶接領域の平面寸法より大きくてよい。リード842の平面寸法は、サブリード844の平面寸法より大きくてよい。
【0198】
リード842は、例えば、板状の導電性材料により構成される。リード842の厚さは、10~300μmであってもよく、30~200μmであることが好ましく、50~100μmであることがさらに好ましい。
【0199】
サブリード844の材質は特に限定されない。サブリード844は、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス及びこれらの合金により構成される。サブリード844は、ポリプロピレン、ポリイミドなどの樹脂材料により構成されてもよい。サブリード844の厚さは、10~300μmであってもよく、30~200μmであることが好ましく、50~100μmであることがさらに好ましい。
【0200】
リード822及びサブリード824は、正極支持部の一例であってよい。リード842及びサブリード844は、負極支持部の一例であってよい。
【0201】
(別実施形態の一例)
本実施形態においては、積層構造体760が正極接続部820及び負極接続部840を備える場合を例として、積層構造体760の詳細が説明された。しかしながら、積層構造体760は本実施形態に限定されない。他の実施形態において、積層構造体760は、正極接続部820及び負極接続部840の少なくとも一方を備えてよい。
【0202】
図9は、蓄電セル112の製造方法の一例を概略的に示す。本実施形態において、積層構造体760を備える蓄電セル112を生産する方法が説明される。本実施形態によれば、まず、ステップ912(ステップがSと省略される場合がある。)において、複数の正極220と、複数の負極240とが準備される。正極220又は負極240を準備する方法の詳細は後述される。また、S914において、複数のセパレータ230が準備される。次に、S920において、正極220、セパレータ230及び負極240がこの順に積層される。これにより、積層構造体760が作製される。
【0203】
次に、S932において、積層構造体760の複数の正極220が電気的に接続される。また、S934において、積層構造体760の複数の負極240が電気的に接続される。その後、S940において、積層構造体760が正極ケース212及び負極ケース214の内部に収容され、蓄電セル112が組み立てられる。
【0204】
図10は、正極220の製造方法の一例を概略的に示す。本実施形態によれば、まず、S1010において、正極集電体222が準備される。次に、S1022において、正極活物質及び溶媒を含む正極スラリーが調整される。次に、S1024において、正極集電体222の表面に正極スラリーが塗布される。また、正極スラリーを乾燥させる。これにより、正極集電体222の表面に正極活物質層224が形成される。
【0205】
次に、S1030において、正極活物質層224及び正極集電体222を固着させる。より具体的には、積層された正極活物質層224及び正極集電体222に圧力を印加することで、正極活物質層224及び正極集電体222を固着させる。
【0206】
一実施形態において、固着工程における圧力は、(i)活物質層及び集電体に圧力が印加される前後における集電体の電気抵抗(比抵抗)の変化率が50%以内となるように、又は、(ii)活物質層及び集電体に圧力が印加される前後における集電体の電気抵抗(比抵抗)の差の絶対値が1[Ω]以下となるように、設定又は調整される。固着工程における圧力は、上記の差の絶対値が1[Ω]未満となるように設定又は調整されてもよい。固着工程における圧力は、上記の差の絶対値が500m[Ω]以下となるように設定又は調整されることが好ましく、上記の差の絶対値が100m[Ω]以下となるように設定又は調整されることがさらに好ましい。これにより、集電体の導電層の破断が抑制される。上記の集電体の電気抵抗は、例えば、低抵抗率計(日東精工アナリテック株式会社製、ロレスタ-GX MCP-T700)を用いた4端子4探針方式により測定され得る。
【0207】
他の実施形態において、固着工程における圧力は、(i)圧力が印加された後の集電体の導電層に電流を印加して測定された第2電圧の値から、(ii)圧力が印加される前の集電体の導電層に電流を印加して測定された第1電圧の値を引いた値が、100mV未満となるように設定又は調整される。これにより、集電体の導電層の破断が抑制される。上記の第1電圧及び第2電圧は、例えば、電圧値の測定機能及び出力機能を有する低抵抗率計により測定される。上記の第1電圧及び第2電圧は、例えば、低抵抗率計(日東精工アナリテック株式会社製、ロレスタ-GX MCP-T700)を用いた4端子4探針方式により測定され得る。
【0208】
他の実施形態において、固着工程における圧力は、圧力が印加された後の活物質層のポロシティが20~40%となるように、設定又は調整される、これにより、集電体の導電層の破断が抑制される。
【0209】
例えば、ロールプレスを用いて、正極活物質層224及び正極集電体222に圧力を印加する場合、正極活物質層224及び正極集電体222に印加される線圧が1.0kgf/cm~200kgf/cmとなるように、ロールプレスが制御される。上記の線圧が2kgf/cm~150kgf/cmとなるようにロールプレスが制御されてもよく、上記の線圧が10kgf/cm~100kgf/cmとなるようにロールプレスが制御されてもよい。これにより、上記の特性を有する正極集電体222が作製される。
【実施例0210】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
ナフタザリン二量体を正極活物質として用いて、積層パウチ型電池を作製した。積層パウチ型電池は、下記の手順で作製された。
【0211】
(正極の作製)
まず、正極集電体を準備した。正極集電体としては、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン製、カプトン、厚さ5μm)の両面に、無電解メッキ法によりアルミニウム層を形成したものを用いた。アルミニウム層の厚さは片面当たり1μmであった。アルミニウムの純度は、99%以上であった。また、正極集電体の密度は、1.9g/cm3であった。
【0212】
次に、結着材料としてのPVdFを含むNMP溶液に、所定量のナフタザリン二量体を及び導電性材料を混合し、NMPで濃度を調整することで、スラリー組成物を作製した。ナフタザリン二量体は、公知の手法により合成した。導電性材料としては、カーボンナノチューブ(Cnano Technology社製)を用いた。正極活物質及び導電性材料は、予め乳鉢で粉砕し、分級した。正極活物質の個数基準による平均粒径は約25μmであった。正極活物質の平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEMと称される場合がある。)を用いて導出した。正極活物質、導電性材料及び結着材料は、正極活物質:導電性材料:結着材料=95:2:3(質量比)の割合で混合した。活物質の理論容量は、462mA/gであった。
【0213】
次に、正極集電体の一方の面にスラリー組成物を塗布し乾燥させた。活物質の塗工量は、3.5g/cm2であった。
【0214】
活物質層が形成された正極集電体に圧力を印加して活物質層及び正極集電体を固着させる前に、正極集電体の電気抵抗を測定した。具体的には、正極集電体上に4端子測定のESPプローブを接触させて抵抗値を測定した。この数値をプレス前後で比較した。次にセルの容量に対して1.0Cに該当する電流値を、積層数で割った時の電流値を流した際の電圧変化量を概算した。測定端子の離隔距離は、5mmであった。
【0215】
その後、ロールプレスを用いて、活物質層が形成された正極集電体に圧力を印加し、活物質層及び正極集電体を固着させた。ロールプレスの線圧は、60kgf/cmであり、コーティングギャップは200μmであった。プレス後の活物質層のポロシティは31%であった。
【0216】
活物質層が固着された正極集電体から正極を切り出す前に、プレス後の正極種電体の電気抵抗を測定した。プレス後の正極種電体の電気抵抗は、活物質層及び正極集電体を固着させる前に実施された手順と同様の手順により測定された。
【0217】
次に、活物質層が形成された正極集電体を正極の形状に切り出した。これにより、幅34mm×高さ30mmの四角形の一辺に、幅10mm×高さ10mmの四角形のタブが取り付けられた平面形状を有する正極が得られた。正極の平面形状は略L字型であった。
【0218】
(負極の作製)
まず、負極集電体を準備した。負極集電体としては、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン製、カプトン、厚さ5μm)の両面に、無電解メッキ法により銅層を形成したものを用いた。銅層の厚さは片面当たり1μmであった。銅の純度は、99.9%以上であった。負極活物質としては、金属Li(本城金属株式会社製、純度99.8%、20μm)を用いた。圧着法を用いて、負極集電体の両面に金属Liを貼り付けた。
【0219】
次に、金属Liが貼り付けられた負極集電体を負極の形状に切り出した。これにより、幅37mm×高さ32mmの四角形の一辺に、幅10mm×高さ10mmの四角形のタブが取り付けられた平面形状を有する負極が得られた。負極の平面形状は略L字型であった。
【0220】
(電池の組み立て)
次に、積層パウチ型電池を組み立てた。セパレータとしては、ポリプロピレンのシートを用いた。電解液としては、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)と、ジメチルエーテル(DME)との混合物溶液(株式会社キシダ化学製)を用いた。上記の混合物におけるLiTFSIと、DMEとの割合は、1:2(モル比)であり、LiTFSIの濃度は3[mol/l]であった。
【0221】
実施例1においては、1枚の正極と、1枚のセパレータと、1枚の負極とを用いて、積層構造体を組み立てた。また、積層構造体を筐体の内部に収容した後、当該筐体の内部に電解液を充填した。これにより、積層パウチ型電池が得られた。
【0222】
(実施例2)
ルベアン酸二量体を正極活物質として用いて、積層パウチ型電池を作製した。積層パウチ型電池は、下記の手順で作製した。
【0223】
(正極の作製)
まず、正極集電体を準備した。支持層としてのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製、カプトン、厚さ5μm)に、孔径30μmの貫通孔を100μm間隔で設けた。貫通孔が形成されたポリイミドフィルムの両面、及び、当該貫通孔の内壁面に、無電解メッキ法によりアルミニウム層を形成した。ポリイミドフィルムの平面におけるアルミニウム層の厚さは、片面当たり1μmであった。また、貫通孔の内壁面に形成されたアルミニウム層の厚さは、0.1μmであった。アルミニウムの純度は、99%以上であった。また、正極集電体の密度は、1.9g/cm3であった。
【0224】
次に、結着材料としてのPVdFを含むNMP溶液に、所定量のルベアン酸二量体及び導電性材料を混合し、NMPで濃度を調整することで、スラリー組成物を作製した。導電性材料としては、カーボンナノファイバー(昭和電工株式会社、VGCF)を用いた。正極活物質及び導電性材料は、予め乳鉢で粉砕し、分級した。活物質の個数基準による平均粒径は約10μmであった。正極活物質、導電性材料及び結着材料は、正極活物質:導電性材料:結着材料=88:9:3(質量比)の割合で混合した。活物質の理論容量は、610mAh/gであった。
【0225】
次に、正極集電体の一方の面にスラリー組成物を塗布し乾燥させた。活物質の塗工量は、11.1g/cm2であった。
【0226】
活物質層が形成された正極集電体に圧力を印加して活物質層及び正極集電体を固着させる前に、正極集電体の電気抵抗を測定した。正極種電体の電気抵抗は、実施例1と同様の手順により測定された。
【0227】
その後、ロールプレスを用いて、活物質層が形成された正極集電体に圧力を印加し、活物質層及び正極集電体を固着させた。ロールプレスの線圧は、100kgf/cmであり、コーティングギャップは280μmであった。プレス後の活物質層のポロシティは40%であった。
【0228】
活物質層が固着された正極集電体から正極を切り出す前に、プレス後の正極種電体の電気抵抗を測定した。正極種電体の電気抵抗は、実施例1と同様の手順により測定された。
【0229】
次に、活物質層が形成された正極集電体を正極の形状に切り出した。これにより、幅37mm×高さ32mmの四角形の一辺に、幅10mm×高さ10mmの四角形のタブが取り付けられた平面形状を有する正極が得られた。
【0230】
(負極の作製)
実施例1と同様の手順により、負極を作製した。
【0231】
(電池の組み立て)
次に、積層パウチ型電池を組み立てた。セパレータとしては、表面にアルミナがコーティングされたポリエチレンフィルム(星源社製、9μm)を用いた。電解液としては、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)と、ジメチルエーテル(DME)との混合物溶液(株式会社キシダ化学製)を用いた。上記の混合物におけるLiTFSIと、DMEとの割合は、1:2(モル比)であり、LiTFSIの濃度は3[mol/l]であった。
【0232】
実施例2においては、4枚の正極と、7枚のセパレータと、4枚の負極とを用いて、積層構造体を組み立てた。また、積層構造体を電池の筐体の内部に収容した後、当該筐体の内部に電解液を充填した。これにより、セル容量が1.0Ahの積層パウチ型電池が得られた。
【0233】
(比較例1)
LiNiCoMnO2(杉杉能源社製、NCM111)を正極活物質として用いて、積層パウチ型電池を作製した。積層パウチ型電池は、正極物質が異なる点と、ロールプレスの線圧が290kgf/cmとなるようにコーティングギャップを調整した点とを除いて、実施例1と同様の手順により作成した。
【0234】
(比較例2)
ナフタザリン二量体を正極活物質として用いて、積層パウチ型電池を作製した。積層パウチ型電池は、厚さが12μmのアルミニウム箔を集電体として用いた点と、ロールプレスの線圧が290kgf/cmとなるようにコーティングギャップを調整した点と、セパレータとしてグラフフィルターを用いた点とを除き、実施例1と同様の手順により作製された。なお、プレス後の活物質層のポロシティは21%であった。
【0235】
(参考例1)
LiNiCoMnO2(杉杉能源社製、NCM111)を正極活物質として用いて、積層パウチ型電池を作製した。積層パウチ型電池は、厚さが12μmのアルミニウム箔を集電体として用いた点を除き、比較例1と同様の手順により作製された。
【0236】
(参考例2)
LiNiCoMnO2(杉杉能源社製、NCM111)を正極活物質として用いて、積層パウチ型電池を作製した。積層パウチ型電池は、ロールプレスの線圧が800kgf/cmとなるようにコーティングギャップを調整した点を除き、参考例1と同様の手順により作製された。なお、プレス後の活物質層のポロシティは25%であった。
【0237】
(評価)
上述されたとおり、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、参考例1及び参考例2のそれぞれに関し、各電池の作製過程中、正極のプレス工程(固着工程と称される場合がある。)の前後における集電体の電気抵抗の変化が測定された。また、作製された各電池の容量が測定された。各電池の容量は、充放電試験機(東洋システム株式会社製、TOSCAT3100)を用いて測定した。
【0238】
実施例1においては、45℃の雰囲気下、20mA/gの電流密度で、4.5-1.2V(vs.Li+/Li)の電位範囲で定電流充放電試験を行った。充電レート及び放電レートは0.1Cであった。
【0239】
実施例2においては、40℃の雰囲気下、5.5mAh/cm2の電流密度で、4.1-1.5V(vs.Li+/Li)の電位範囲で定電流充放電試験を行った。充電レート及び放電レートは0.1Cであった。
【0240】
比較例1においては、25℃の雰囲気下、30mA/gの電流密度で、4.3-2.8V(vs.Li+/Li)の電位範囲で定電流充放電試験を行った。充電レート及び放電レートは0.1Cであった。
【0241】
比較例2においては、40℃の雰囲気下、20mA/gの電流密度で、4.1-1.5V(vs.Li+/Li)の電位範囲で定電流充放電試験を行った。充電レート及び放電レートは0.05Cであった。
【0242】
参考例1においては、25℃の雰囲気下、30mA/gの電流密度で、4.3-2.8V(vs.Li+/Li)の電位範囲で定電流充放電試験を行った。充電レート及び放電レートは0.1Cであった。
【0243】
参考例2においては、25℃の雰囲気下、30mA/gの電流密度で、4.3-2.8V(vs.Li+/Li)の電位範囲で定電流充放電試験を行った。充電レート及び放電レートは0.1Cであった。
【0244】
実施例、比較例及び参考例のそれぞれに係る測定結果を、表1に示す。表1において、「容量」の「◎」は、電池容量の測定結果が理論容量の80%以上であったことを示す。同様に、「容量」の「〇」は、電池容量の測定結果が理論容量の70%以上80%未満であったことを示す。「容量」の「×」は、電池容量の測定結果が理論容量の70%未満であったことを示す。
【0245】
表1において、「電圧変化量」の「〇」は、正極のプレス工程の前後における集電体の抵抗値の変化が10~50mVであり、抵抗値の変化率が50%以内であったことを示す。「電圧変化量」の「×」は、正極のプレス工程の前後における集電体の抵抗値の変化が100mVを超えており、抵抗値の変化率が50%を超えていたことを示す。
【0246】
【0247】
実施例1及び実施例2によれば、正極集電体として、両面にAl層が配された樹脂材料が用いられた。実施例1及び実施例2においては、Al層の厚さが非常に薄く、且つ、樹脂材料の密度がAlよりも小さかったことから、容量の大きな電池が作製された。表1に示されるとおり、実施例1及び実施例2に係る電池の容量は、参考例1及び参考例2に係る電池の容量と同等以上であった。
【0248】
(実施例1及び実施例2と、比較例1との比較)
上述されたとおり、実施例1、実施例2及び比較例1の正極集電体のアルミニウム層は非常に薄く、破断しやすい。実施例1及び実施例2によれば、正極活物質層が有機化合物を活物質として含み、且つ、プレス工程において印加される線圧が200kgf/cm以下となるように設定又は調整された。実施例1及び実施例2においては、プレス工程の前後における電圧(又は抵抗値)の変化量が小さく、プレス工程におけるアルミニウム層の破断が抑制されていることがわかる。
【0249】
一方、比較例1おいては、正極活物質層が無機化合物を活物質として含み、且つ、プレス工程において印加される線圧が200kgf/cmを超えていた。比較例1おいては、プレス工程の前後における電圧(又は抵抗値)の変化量が大きく、プレス工程においてアルミニウム層が破断したものと推測される。例えば、比較例1のアルミニウム層は1μmの厚さを有するに過ぎないにもかかわらず、活物質として有機化合物と比較して硬い無機活物質が用いられ、且つ、プレス工程において高圧が印加されたことから、アルミニウム層が破断したものと推測される。
【0250】
(実施例1及び実施例2と、比較例2との比較)
実施例1、実施例2及び比較例2の正極活物質層は、有機化合物を活物質として含む。上述されたとおり、プレス工程において正極活物質層に高圧が印加されると、活物質の単位質量あたりの容量が減少する可能性がある。実施例1及び実施例2によれば、プレス後の正極活物質層のポロシティが25~40%の範囲内となるように、プレス工程において正極活物質層に印加される圧力が設定又は調整された。
【0251】
一方、比較例2においては、プレス工程において290kgf/cmの圧力が印加された結果、プレス後の正極活物質層のポロシティは21%であった。表1に示されるとおり、実施例1及び実施例2の電池は、比較例2の電池と比較して、単位質量当たりのエネルギー密度及び/又は活物質の単位質量あたりの容量に優れていることがわかる。なお、比較例2においては、集電体として厚さが12μmのアルミ箔が用いられた。これにより、プレス工程において集電体の破断の発生が抑制された結果、プレス工程の前後における電圧(又は抵抗値)の変化量も抑制されているものと推測される。
【0252】
以上のとおり、集電体が0.05μm~7μm又は0.05μm~5μm程度の厚さを有する導電体層を備える場合であっても、活物質として有機化合物が用いられることで、集電体の製造過程における導電体層の破損が抑制されることがわかる。また、活物質として有機化合物を用いて集電体を作製する場合には、集電体の製造過程において活物質層に印加される圧力を調整することで、当該集電体を用いて作製された電池の容量が向上することがわかる。この場合、導電体層に印加される圧力も軽減されることから、導電体層の破損がさらに抑制される。
【0253】
(充放電サイクル試験)
実施例1及び比較例2の電池について、充放電サイクル試験を行った。
図11に、充放電サイクル試験の結果(充放電曲線)を示す。
図11において、実線は、実施例1の充放電曲線を示し、点線は、比較例2の充放電曲線を示す。
【0254】
図11に示されるとおり、集電体が導電層及び支持層を含み、導電層の厚さが小さい場合には、固着工程において活物質層及び集電体に印加される圧力を小さくすることで、電池容量が向上することがわかる。また、活物質として有機化合物が用いられる場合には、上記の効果が特に顕著に表れることがわかる。
【0255】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0256】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0257】
本発明の一実施形態を用いることで、充電式電池における重量当たりのエネルギー量を改善することができ、より軽量でより多くの電力を蓄えることができる充電式電池を実現できる。充電式電池は、例えば災害現場へ持ち込まれ被災者へのエネルギー供給などへ活用が考えられるため、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」又は目標13「気候変動に具体的な対策を」などの達成に貢献できる。
100 飛行体、110 蓄電池、112 蓄電セル、120 電力制御回路、130 電動機、140 プロペラ、150 センサ、160 制御装置、212 正極ケース、214 負極ケース、216 封止剤、218 金属バネ、220 正極、222 正極集電体、224 正極活物質層、230 セパレータ、240 負極、242 負極集電体、244 負極活物質層、260 構造体、350 電解質、400 集電体、420 支持層、422 第1平面、424 第2平面、426 側面、442 導電層、444 導電層、500 集電体、522 貫通孔、546 導電性材料、600 集電体、620 貫通孔、622 内壁部、642 導電層、760 積層構造体、820 正極接続部、822 リード、824 サブリード、840 負極接続部、842 リード、844 サブリード