(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183478
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】固形コンディショナー組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/40 20060101AFI20231221BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20231221BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20231221BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231221BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20231221BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A61K8/40
A61Q5/12
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/86
A61K8/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097011
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】390003001
【氏名又は名称】川研ファインケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC182
4C083AC402
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC691
4C083AC692
4C083BB06
4C083CC33
4C083DD21
4C083DD50
4C083EE01
4C083EE05
4C083EE28
4C083FF05
4C083FF06
(57)【要約】
【課題】
量産化に適した切断成型が可能で、保存安定性および使用感に優れる固形コンディショナー組成物を提供する。
【解決手段】
(A)4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤のうち少なくとも1種が5~25重量%と、(B)アルキル鎖長が炭素数14~22の高級アルコールより選択される少なくとも1種が10~35重量%と、(C)グリセリン脂肪酸エステルより選択される少なくとも1種以上が10~40重量%と、(D)常温(25℃)でペースト状~固体であるポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルより選択される少なくとも1種以上が10~30重量%で構成され、(C)及び(D)成分の平均HLBが3~8である固形コンディショナー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤のうち少なくとも1種が5~25重量%と、(B)アルキル鎖長が炭素数14~22の高級アルコールより選択される少なくとも1種が10~35重量%と、(C)グリセリン脂肪酸エステルより選択される少なくとも1種以上が10~40重量%と、(D)常温(25℃)でペースト状~固体であるポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルより選択される少なくとも1種以上が10~30重量%で構成され、(C)及び(D)成分の平均HLBが3~8である固形コンディショナー組成物。
【請求項2】
(A)成分がベヘントリモニウム塩型カチオン性界面活性剤である、(1)の固形コンディショナー組成物。
【請求項3】
(B)成分のアルキル鎖長が炭素数16~18の高級アルコールより選択される少なくとも1種である、請求項1または請求項2に記載の固形コンディショナー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量産化に適した切断成型が可能で、安定性が良好で使用感に優れる固形コンディショナー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SDGs(持続可能な開発目標)の視点から製品の濃縮化による包装容器の削減が進められている。特に液体製品を固形化する事は、脱プラスチック、包装容器の簡素化につながることで、ゴミ排出量の低減が期待でき、また、製品重量の削減、容器等のコンパクト化による、輸送時のコストおよびCO2の削減にも期待できる。ヘアケア製品においては特に、コンディショナー、トリートメントの市場は大きく、固形化する事は大きなメリットとなる。消費者側からも、固形化した製品を使用することが、身近なSDGs活動として注目されている。しかしながら、固形化により、毛髪を滑らかにするシリコーン油や油剤を高配合できず、液体のコンディショナー、トリートメントに比べ性能に劣る問題があった。
【0003】
特許文献1の請求項1では、(i)少なくとも5重量%のカチオン性界面活性剤と、(ii)少なくとも5重量%の脂肪アルコール材料と、を含み、80重量%未満の水を含有する固体形態のヘアコンディショナー組成物が提案されている。この固体形態のヘアコンディショナー組成物は、適量を使用すれば液体のコンディショナーに近い性能を持つが、疎水性が強く溶け崩れが弱いことにより、適量の使用に至らない場合があり、満足できる使用感が得られない場合もあった。
また、高温下では低融点成分が融解し、表面に浮き出してくる場合が有り、使用感改善のために親水性を強くした場合、浴室保管時の湿度による過度な溶け崩れや、疎水性成分の浮き出しが発生する場合があり、使用感と保存安定性の両立には改善の余地が有る。
【0004】
一方、成型方法としては溶融させた液を一つ一つの型に流し込んで固化させ成型する方法が広く用いられているが、この方法では生産する個数に応じて型を用意する必要があり、また、固化させるための静置スペースを多く必要とすることから量産化に課題があった。量産化に適した方法としては、例えば、直方体の筒に溶融させた液を流し込み、固化後に切断し成型する方法が挙げられる。本方法を用いることにより、生産個数分の型は不要となる。また、直方体の筒を使用する為、スペースを有効活用することが可能となる。しかしながら、一般的にヘアコンディショナー組成物を構成するカチオン界面活性剤や高級アルコール等の主成分が硬く脆い性質の為、切断の途中で割れてしまう問題があり、成型方法として切断を用いることには難が有る。
すなわち、量産化に適した切断成型が可能であり、高温および高湿下での保存安定性が良好で使用感に優れる固形コンディショナー組成物はこれまで見出されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
量産化に適した切断成型が可能で、高温および高湿下での保存安定性および使用感に優れる固形コンディショナー組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の界面活性剤、特定の高級アルコールおよび特定のグリセリン脂肪酸エステル誘導体を適量組み合わせた固形コンディショナー組成物が、量産化に適した切断成型が可能であり、かつ、固形コンディショナーとして必要な保存安定性や使用感に優れることを見出し、本発明を開発するに至った。
【0008】
即ち本発明は、以下のとおりである。
(1)
(A)4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤のうち少なくとも1種が5~25重量%と、(B)アルキル鎖長が炭素数14~22の高級アルコールより選択される少なくとも1種が10~35重量%と、(C)グリセリン脂肪酸エステルより選択される少なくとも1種以上が10~40重量%と、(D)常温(25℃)でペースト状~固体であるポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルより選択される少なくとも1種以上が10~30重量%で構成され、(C)及び(D)成分の平均HLBが3~8である固形コンディショナー組成物。
(2)
(A)成分がベヘントリモニウム塩型カチオン性界面活性剤である、(1)の固形コンディショナー組成物。
(3)
(B)成分のアルキル鎖長が炭素数16~18の高級アルコールより選択される少なくとも1種である、(1)または(2)に記載の固形コンディショナー組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定の(A)~(D)成分を適量含有する事により、量産化に適した切断成型が可能で、高温および高湿下での保存安定性および使用感に優れる固形コンディショナー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に具体例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの説明により何ら限定されるものでは無い。
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(A)成分である4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤としては、例えば、ベヘントリモニウムメトサルフェート、ステアルトリモニウムメトサルフェート、セトリモニウムメトサルフェート、ベヘナミドプロピルトリモニウムメトサルフェート、リシノレアミドプロピルトリモニウムメトサルフェート、ババスアミドプロピルトリモニウムメトサルフェート、パームアミドプロピルトリモニウムメトサルフェート、ステアリルエチルヘキシルジモニウムメトサルフェート、ジオレオイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジステアロイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジダイズ油脂肪酸エチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジナタネ種子油脂肪酸エチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジパーモイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジ水添パーモイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ビス((イソステアロイル/オレオイル)イソプロピル)ジモニウムメトサルフェート、ビス(ダイズ油脂肪酸/ナタネ油脂肪酸)エチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ビス(ベヘン酸エチルPPG-3)ジモニウムメトサルフェート、PEG-2ジメドウフォームアミドエチルモニウムメトサルフェート、PEG-3ジオレオイルアミドエチルモニウムメトサルフェート、PEG-3ジステアロイルアミドエチルモニウムメトサルフェートなどの4級アンモニウムのメトサルフェート塩、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(ベヘントリモニウムクロリド)、塩化ミリスチルトリメチルアンモニウム、臭化ミリスチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化セチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化2-デシルテトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化2-ドデシルヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウムなどのハロゲン化4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0012】
(A)成分である4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤の中でも、ベヘントリモニウム塩型カチオン性界面活性剤は、他のカチオン性界面活性剤よりも比較的親水性が低く、固形コンディショナーに配合した場合、適度な溶け崩れとなり、毛髪への固形コンディショナーの塗布性が向上するため好ましい。ベヘントリモニウム塩型カチオン性界面活性剤としては、例えば、ベヘントリモニウムメトサルフェート、ベヘナミドプロピルトリモニウムメトサルフェート、ベヘントリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムブロミド等が挙げられる。また、複数のアルキル基をもつ中で、前記の成分が含まれるものでも構わない。またこれらを、1種または2種以上を併用してもよい。
特にベヘントリモニウムクロリドは、入手のしやすさと塗布性向上のバランスから、より好ましい。
【0013】
(A)成分の含有量は、塗布性や、すすぎ時から乾燥までの指通り性などの使用感と、切断成型性のバランスの観点から、原料配合において全組成中の5~25重量%が好ましく、より好ましくは10~20重量%である。(A)成分が5重量%未満では適度な溶け崩れ性が得られず、塗布のしやすさや、使用感が悪くなる場合がある。また、25重量%を超えると可塑性が低下し、切断成型時に割れるなど切断成型性が低下する場合や、疎水成分の浮き出しや浴室使用時で想定される湿度(80%)下での過度な溶け崩れ等により、保存安定性が低下する場合がある。
【0014】
(B)成分である、アルキル鎖長が炭素数14~22の高級アルコールとしては、セタノール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。高級アルコールは1種または2種以上を併用してもよい。炭素数14~22の高級アルコールを用いることで、すすぎから乾燥後までの毛髪の指通り性などの使用感の向上、適度な可塑性や硬度の付与による良好な切断成型性、高温下での低融点成分の浮き出し抑制などの良好な保存安定性を付与する事ができる。一方、炭素数14未満では、高級アルコールの融点が低く、固形コンディショナーとした場合、例えば実使用範囲内の高温(40℃)下でも一部低融点の高級アルコール等が浮き出し、保存安定性が低下する場合がある。また、炭素数が22を超える場合では、可塑性が低下し切断成型時に割れるなど切断成型性が低下する場合ある。従って、アルキル鎖長が炭素数14~22の高級アルコールが、保存安定性及び切断成型性の観点から好まく、使用感をより向上させるため、炭素数16~18がより好ましい。
【0015】
(B)成分の含有量は、固形コンディショナーとしての使用感や保存安定性、切断成型性のバランスの観点から、原料配合において全組成中の10~35重量%が好ましく、より好ましくは15~30重量%である。
高級アルコールが10重量%未満の場合、硬度の低下や、他の融点の低い成分の影響による低融点成分の浮き出し等の発生など保存安定性が低下する場合があり、35重量%を超えて配合すると、可塑性が失われ切断成型性が低下する場合がある。
【0016】
(C)成分であるグリセリン脂肪酸エステルとしては、イソステアリン酸グリセリル(HLB:4.0)、ミリスチン酸グリセリル(HLB:3.5)、ジイソステアリン酸グリセリル(HLB:3.0)、ステアリン酸グリセリル(HLB:3.0)、オレイン酸グリセリル(HLB:2.5)などが挙げられる。特にステアリン酸グリセリル(HLB:3.0)、オレイン酸グリセリル(HLB:2.5)は、固形コンディショナーに適度な硬度及び良好な保存安定性が付与されるため好ましい。グリセリン脂肪酸エステルは1種または2種以上を併用してもよい。
【0017】
(C)成分は固形コンディショナーに配合することで、可塑性を付与し、容易な切断成型を可能とする。(C)成分の配合量が10重量%未満では十分な可塑性が得られず、切断成型性が得にくくなる場合があり、40重量%を超えると、塗布性およびすすぎから乾燥後までの毛髪の指通り性などの使用感が低下する場合がある。そのため、(C)成分の含有量は、使用感と切断成型性のバランスの観点から、原料配合において全組成中の10~40重量%が好ましく、より好ましくは15~30重量%である。
なおHLBとは、Hydrophile-Lipophile Balanceの略であり、界面活性剤の親水基および親油基のバランスを数値化した概念である。一般に、HLBは0から20の範囲内の数値で示され、数値がより大きいほど親水性がより高いことを示す。HLB値については、以下に詳しい。
(日本化粧品技術者連合会会誌 第8巻 第2号 1974 界面活性剤の合成・製造におけるHLBの利用、乳化剤選択における“HLB”の利用について)
【0018】
(D)成分は常温(25℃)でペースト状~固体であるポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルである。ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸PEG-5グリセリル(HLB:8.0)、ステアリン酸PEG-10グリセリル(HLB:11.0)、ステアリン酸PEG-15グリセリル(HLB:13.0)、ステアリン酸PEG-20グリセリル(HLB:14.0)、ジステアリン酸PEG-4グリセリル(HLB:4.0)、トリステアリン酸PEG-4グリセリル(HLB:2.0)、トリステアリン酸PEG-5グリセリル(HLB:3.0)、トリステアリン酸PEG-6グリセリル(HLB:3.0)、トリステアリン酸PEG-10グリセリル(HLB:5.0)、トリステアリン酸PEG-15グリセリル(HLB:7.0)、トリステアリン酸PEG-20グリセリル(HLB:8.0)などが挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ポリグリセリル-2(HLB:5.0)、オレイン酸ポリグリセリル-2(HLB:5.5)、ステアリン酸ポリグリセリル-4(HLB:6.0)、オレイン酸ポリグリセリル-4(HLB:6.0)、ステアリン酸ポリグリセリル-6(HLB:9.0)、ステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB:12.0)、オレイン酸ポリグリセリル-10(HLB:12.0)、トリステアリン酸ポリグリセリル-6(HLB:2.5)、トリステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB:7.5)、トリオレイン酸ポリグリセリル-10(HLB:7.0)などが挙げられる。ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルは1種または2種以上を併用してもよい。
【0019】
(D)成分を固形コンディショナーに配合することで、(C)成分と同様に可塑性を付与し切断成型性を改善させる。また、高温下での低融点成分の浮き出しを抑制し、保存安定性を向上させる効果も有している。
【0020】
(D)成分の含有量が10重量%未満では可塑性が十分に発現せず切断時に割れるなど十分な切断成型性が得にくくなる場合や、低融点成分の浮き出しなどで保存安定性が低下する場合があり、30重量%を超えると、塗布性およびすすぎから乾燥後までの毛髪の指通りなどの使用感が悪くなる場合がある。そのため、含有量は10~30重量%が好ましく、15~25重量%が使用感や保存安定性、切断成型性の観点から、より好ましい。
【0021】
(C)成分および(D)成分をそれぞれ単独で使用した場合でも、固形コンディショナーに可塑性を付与できるが、(C)成分および(D)成分を組み合わせることで、相乗的に可塑性を向上させ、切断成型性を大幅に改善することができる。
【0022】
本発明で用いられる(C)成分及び(D)成分を組み合わせて配合する場合、その平均HLB値は3.0~8.0が好ましく、より好ましくは4.0~7.0である。HLB値が3.0未満の場合は、水溶性の低下により適度な溶け崩れが妨げられる場合がある。これにより塗布しやすさや使用感が低下する場合がある。一方、HLB値が8.0を超える場合は、他成分と相溶しづらくなることで不均一となる場合や、疎水成分の浮き出しや高湿下での過度な溶け崩れなどにより保存安定性が低下する場合がある。
【0023】
その他、固形コンディショナーの硬度や使用感の調整のために、エステル油を適宜配合することができる。エステル油としては、例えば、ヤシ油、パーム核油、パームオレイン、メドウフォーム油、シア脂、ホホバ油、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチルヘキシル、イソステアリン酸フィトステリル等が挙げられる。エステル油は1種または2種以上を併用してもよい。
【0024】
水は原料に含有している水分や水溶性成分を溶解する為の水分等を適宜配合することができる。しかし、固形コンディショナー組成物中の水分量は10重量%以下、さらには3重量%以下が望ましく、配合しなくてもよい。10重量%を超えると固体が軟化し、成型加工が難しくなる、または、形状を保持できなくなる場合がある。
【0025】
本発明の固形コンディショナー組成物には、通常の液体コンディショナーや固形洗浄剤に用いられる成分を、本願にて提供する効能効果を阻害しない範囲で配合する事ができる。特に限定されるものではないが、高重合ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンオイル、環状シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等のシリコーン類、トレハロース、ヒアルロン酸、コラーゲン、カルボキシメチルキトサンサクシナミド等の保湿剤、アロエベラエキス、オウゴン根エキス、オタネニンジンエキス、カキタンニンエキス、カニナバラエキス、カミツレ花エキス、セイヨウオドリギソウエキス、セイヨウナシ枝エキス、センチフォリアバラエキス、チャ葉エキス、トウセンカエキス、ハマメリスエキス、フユボダイジュエキス、マグワエキス、ヤグルマギクエキス、ユズエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス等のエキス類、ウコン抽出物、オタネニンジン抽出物、ヒバマタ抽出物、ブナの芽抽出物、米ぬか抽出物、ツバキ抽出物、トウニン抽出物、クララ抽出物、クロレラ抽出物、マジョラム抽出物、イチヤクソウ抽出物、月桃葉抽出物、オウバク抽出成分、オウレン抽出成分、カッコン抽出成分、シコン抽出成分、シャクヤク抽出成分、センブリ抽出成分、バーチ抽出成分、セージ抽出成分、ビワ抽出成分、ニンジン抽出成分、アロエ抽出成分、ゼニアオイ抽出成分、アイリス抽出成分、ブドウ抽出成分、ヨクイニン抽出成分、ヘチマ抽出成分、ユリ抽出成分、サフラン抽出成分、センキュウ抽出成分、ショウキョウ抽出成分、オトギリソウ抽出成分、ローズマリー抽出成分、ニンニク抽出成分、トウガラシ抽出成分、ワレモコウ抽出成分等の天然物抽出物類、天然物抽出成分類、真珠層を有する貝殻又は真珠から得られる蛋白質又はその加水分解物、シルクから得られる蛋白質又はその加水分解物、マメ科植物の種子から得られる蛋白含有抽出物、カチオン化セルロース、ヒドロキシアルキル化セルロース等の高分子化合物、ジンクピリチオン、トリクロロカルバニリド、イオウ、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム等の抗フケ剤、乳化剤、乳濁剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、粉末成分、血行促進剤、局所刺激剤、毛包賦活剤、毛髪栄養剤、抗男性ホルモン剤、抗脂漏剤、抗老化薬剤、エモリエント剤、角質溶解剤、殺菌剤、フェノキシエタノール、パラベン類等の防腐剤、消炎剤、抗炎症剤、清涼剤、アミノ酸、ビタミン類、生薬エキス類等の育毛薬剤、pH調整剤、色素、染料、色材、香料等が例示される。
【0026】
本発明品の固形コンディショナー組成物は、切断による割れが発生しにくいため、量産化に適した切断成型を用いることができる。たとえば、各成分を溶融又は溶解し均一にした後、密栓を取り付けた直方体の筒又は容器に流し込み、冷却または放冷による固化後、ピアノ線、刃物など様々な方法を用いて切断し成型できる。切断成型については以下に詳しい。
(山添長四郎, 吉崎義郎 共著、“小資本で出来る石鹸製造法 : 実験応需”、昭和7) 切断成型以外にも、溶融させた液を一つ一つの型に流し込んで固化させ成型する方法など、一般的に用いられている方法でも成型することができる。
【0027】
次に、本発明の固形コンディショナーの好ましい使用方法を説明する。
毛髪洗浄後に、本発明の固形コンディショナーを直接毛髪に接触させ塗布し、その後全体によく馴染ませる。もしくは、固形コンディショナーを少量溶かし、毛髪全体に馴染ませる。馴染ませた後に十分にすすぐことで、すすぎ時から乾燥後の髪の滑らかさの向上等の好ましい使用感が最も感じられる。
一方すすぎを行わない場合、又はすすぎが不十分な場合は、乾燥後にべたつきや粉吹き等が発生する場合がある。
【実施例0028】
本発明の効果に関して、以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、以下の記載における処方中の配合量は、特に断りのない限り全量に対する重量%である。また、以下の実施例および比較例における本発明の固形コンディショナー組成物の評価方法は、以下のとおりである。
【0029】
表1~4に示す固形コンディショナー組成物を下記製造手順に従って調整した。
(製造手順)
表1~4に示す、すべての成分を約90℃に加熱し均一に混合する。
直径5cm、高さ50cmの円筒の筒で底面に蓋をしたものに混合液を流し込み放冷する。
室温まで低下し、固化したら筒から押し出して下記の評価を実施した。
なお、表1~4に示す固形コンディショナー組成物は、すべて室温で固形となった。
【0030】
(作業性評価)
(切断成型性の評価)
筒から取り出した固形コンディショナーを包丁にて3cm間隔で5回切断し、4段階で評価した。
×:切断による割れや欠損が認められる。
△:切断による割れや欠損が僅かに認められる。
○:切断による割れや欠損がほぼ認められない。
◎:切断による割れや欠損が全く認められない。
【0031】
(安定性評価)
(高温下での保存安定性)
3cm間隔で切断した固形コンディショナーを温度40℃、湿度25%の条件で保管し、1週間後の外観を目視にて4段階で評価した。
×:表面に大きな変化が確認できた。(例:ひどい溶け崩れ、表面に成分の浮き出し)
△:表面に品質に問題が生じる変化が確認できた。(例:溶け崩れ、浮き出し)
○:表面にわずかに変化が確認されるが、使用には差し支えない。
◎:表面に変化が確認されない。
(高湿下での保存安定性)
浴室内保管条件を想定し、高湿下での保存安定性を確認した。
保管条件:室温25℃、湿度80%の条件で24時間静置して、表面の状態を確認した。
×:表面に大きな変化が確認できた。(例:ひどい溶け崩れ、表面に成分の浮き出し)
△:表面に品質に問題が生じる変化が確認できた。(例:溶け崩れ、浮き出し)
○:表面にわずかに変化が確認されるが、使用には差し支えない。
◎:表面に変化が確認されない。
【0032】
(使用感評価)
6名の専門パネラーが実施例および比較例の固形コンディショナーを5日間使用し、下記の各評価基準に基づき点数をつけ、合計点が25点以上を◎、20点~24点を〇、15点~19点を△、15点未満を×とした。
(塗布性)
1点:塗布し難い
2点:やや塗布し難い
3点:塗布できるが伸びは悪い
4点:塗布しやすく伸びる
5点:塗布しやすくよく伸びる
(すすぎ時の髪の指通り性)
1点:使用前より悪くなった
2点:使用前よりやや悪くなった
3点:使用前と変わらない
4点:使用前よりやや滑らかになった
5点:使用前より滑らかになった
(乾燥後の髪の指通り性)
1点:使用前より悪くなった
2点:使用前よりやや悪くなった
3点:使用前と変わらない
4点:使用前よりやや滑らかになった
5点:使用前より滑らかになった
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
※1:リポカード(登録商標)22-80(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製) 、※2:BTMS 225KC(KCI社製 組成: ベヘントリモニウムメトサルフェート 25重量%、ステアリルアルコール25重量%、セタノール 50重量%)、※3:カルコール(商標登録)6098(花王社製)、※4:カルコール8098(花王社製)、※5:NIKKOL(商標登録) MGS-BV2(日光ケミカルズ社製)、※6:NIKKOL MGO(日光ケミカルズ社製)、※7 EMALEX(商標登録) GM-5(日本エマルジョン社製)、※8 EMALEX GM-15(日本エマルジョン社製)、※9 EMALEX GM-20(日本エマルジョン社製)、※10:NIKKOL DGMS(日光ケミカルズ社製)、※11:NIKKOL TETRAGLYN 1-SV(日光ケミカルズ社製)、※12:NIKKOL TETRAGLYN 1-OV(日光ケミカルズ社製)、※13:NIKKOL HEXAGLYN 1-SV(日光ケミカルズ社製)、※14:NIKKOL DECAGLYN 1-SV(日光ケミカルズ社製)、※15:NIKKOL HEXAGLYN 3-SV(日光ケミカルズ社製)、※16:EMALEX 603(日本エマルジョン社製)、※17:EMALEX 400di-S(日本エマルジョン社製)、※18:EMALEX SPE-100S(日本エマルジョン社製)、※19:NIKKOL TRIFAT C-24(日光ケミカルズ社製)、※20:Lipex(商標登録) Sheasoft(AAK Sweden AB社製)
【0038】
評価の結果
本発明の固形コンディショナー組成物の範囲内で調整された実施例1~16は、すべての評価が〇評価以上となり、量産化に適した切断成型性と、固形コンディショナーとして必要な高温または高湿下での保存安定性、塗布性およびすすぎ時から乾燥後の使用感が共に優れていることが確認できた。
一方で、(A)成分が範囲未満である比較例1は、塗布性およびすすぎから乾燥後までの毛髪の指通りが悪かった。(A)成分が範囲を超える比較例2は、切断成型時に割れや欠損が発生し、高湿下での保存安定性も劣った。(B)成分が範囲未満である比較例3は、高温下での保存安定性が劣り、すすぎから乾燥後までの毛髪の指通りも悪かった。(B)成分が範囲を超える比較例4は、切断成型時に割れや欠損が発生した。(C)成分が範囲未満である比較例5は、切断成型時に割れや欠損が発生した。(C)成分が範囲を超える比較例6は、塗布性およびすすぎから乾燥後までの毛髪の指通りが悪かった。(D)成分が範囲未満である比較例7は、切断成型時に割れや欠損が発生し、高温下での保存安定性も劣った。(D)成分が範囲を超える比較例8は、塗布性およびすすぎから乾燥後までの毛髪の指通りが悪かった。HLBが範囲未満である比較例9は、塗布性およびすすぎ時の毛髪の指通りが悪かった。HLBが範囲を超える比較例10は、高湿下での保存安定性が劣った。(D)成分を使用していない比較例11~13は、切断成型時に割れや欠損が発生し、高温下での保存安定性も劣った。(C)成分を使用していない比較例14は、切断成型時に割れや欠損が発生した。
本発明の固形コンディショナー組成物により、量産化に適した切断成型が可能であり、最適な使用量になるように適度に溶け崩れ、適量を塗布しやすく、伸びが良く、すすぎから乾燥後までの毛髪の指通りが滑らかになり、高温および高湿下での保存安定性に優れ、液体コンディショナーと同等の性能を持つため、固形コンディショナーの他に、固形リンス、固形トリートメント、固形洗浄剤等の量産化、および作業効率の改善、低コスト化に寄与できる。