(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183485
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/44 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
C23C16/44 B
C23C16/44 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097025
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
(72)【発明者】
【氏名】野沢 秀二
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA09
4K030DA06
4K030EA04
4K030EA11
4K030GA02
4K030KA12
(57)【要約】
【課題】基板処理のスループットを向上させる。
【解決手段】基板処理装置であって、処理容器と、ステージと、排気空間と、第1の排気路と、第2の排気路とを備える。ステージは、処理容器内に設けられ、基板が載せられる。排気空間は、処理容器の内側壁に沿って、ステージの周囲に配置されている。第1の排気路は、ステージの上方の処理空間と排気空間との間に設けられ、処理空間よりもコンダクタンスが小さい。第2の排気路は、ステージの下方の下部空間と排気空間との間に設けられ、処理空間よりもコンダクタンスが小さい。処理空間内に供給された処理ガスは、第1の排気路を介して排気され、下部空間内に供給されたパージガスは、第2の排気路を介して排気される。また、第2の排気路は、第1の排気路または第1の排気路よりも排気空間側の空間につながっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、基板が載せられるステージと、
前記処理容器の内側壁に沿って、前記ステージの周囲に配置された排気空間と、
前記ステージの上方の処理空間と前記排気空間との間に設けられ、前記処理空間よりもコンダクタンスが小さい第1の排気路と、
前記ステージの下方の下部空間と前記排気空間との間に設けられ、前記処理空間よりもコンダクタンスが小さい第2の排気路と
を備え、
前記処理空間内に供給された処理ガスは、前記第1の排気路を介して排気され、
前記下部空間内に供給されたパージガスは、前記第2の排気路を介して排気され、
前記第2の排気路は、前記第1の排気路または前記第1の排気路よりも前記排気空間側の空間につながっている基板処理装置。
【請求項2】
前記第1の排気路は、
前記ステージの上面の周縁に設けられた環状のステージカバーの上に配置されたリングカバーと前記ステージの上方に配置され前記処理容器内にガスを供給するシャワーヘッドの下面との間の空間であり、
前記第2の排気路は、
前記ステージカバーに設けられた環状の第1の排気ブレードと前記処理容器の側壁に設けられた環状の第2の排気ブレードとの間の空間である請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ステージを上下に移動させる駆動部をさらに備え、
前記駆動部は、
前記処理容器内のクリーニングが行われる場合に、前記ステージを下降させることにより、前記第1の排気路のコンダクタンスを上げ、
前記リングカバーは、
前記ステージが下降することにより、前記ステージカバーから前記第2の排気ブレードに受け渡される請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記ステージの上面の周縁に配置された環状のリングカバーであって、前記ステージの上面と交差する方向に立設する環状の突条を有するリングカバーをさらに備え、
前記第1の排気路は、
前記リングカバーの上面と前記ステージの上方に配置され前記処理容器内にガスを供給するシャワーヘッドの下面との間の空間、および、前記リングカバーの前記突条の側面と前記シャワーヘッドの側面との間の空間の少なくともいずれかの空間であり、
前記第2の排気路は、
前記ステージの側面と、前記処理容器の側壁に設けられた環状の排気ブレードとの間の空間である請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記ステージを上下に移動させる駆動部をさらに備え、
前記駆動部は、
前記処理容器内のクリーニングが行われる場合に、前記ステージを下降させることにより、前記第1の排気路および前記第2の排気路のコンダクタンスを上げ、
前記リングカバーは、
前記ステージが下降することにより、前記処理容器の内側壁に設けられた棚部に受け渡される請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ステージの上方に配置され前記処理容器内にガスを供給するシャワーヘッドを囲むように、前記シャワーヘッドの側壁に設けられた筒状のリングカバーをさらに備え、
前記第1の排気路は、
前記ステージの上面の周縁に設けられた環状のステージカバーの側面と前記リングカバーの側面との間の空間であり、
前記第2の排気路は、
前記ステージカバーに設けられた環状の第1の排気ブレードと前記処理容器の側壁に設けられた環状の第2の排気ブレードとの間の空間である請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記ステージを上下に移動させる駆動部をさらに備え、
前記リングカバーの側面と前記第2の排気ブレードとの間の空間のコンダクタンスは、前記第1の排気路のコンダクタンスおよび前記第2の排気路のコンダクタンスのいずれよりも大きく、
前記駆動部は、
前記処理容器内のクリーニングが行われる場合に、前記ステージを下降させることにより、前記第1の排気路のコンダクタンスを上げる請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記ステージに前記基板が載せられた状態で、前記ステージの上方に配置されたシャワーヘッドを介して、第1のモノマーを含む第1の処理ガスと、第2のモノマーを含む第2の処理ガスとを、前記シャワーヘッドの異なる吐出口から前記処理空間内に供給することにより、前記基板に、前記第1のモノマーおよび前記第2のモノマーの重合体の膜を形成するガス供給部をさらに備える請求項1から7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第1のモノマーは、イソシアネートであり、
前記第2のモノマーは、アミンであり、
前記基板に形成される重合体には尿素結合が含まれる請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第1のモノマーは、カルボン酸無水物であり、
前記第2のモノマーは、アミンであり、
前記基板に形成される重合体にはイミド結合が含まれる請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第1のモノマーは、エポキシドであり、
前記第2のモノマーは、アミンであり、
前記基板に形成される重合体には2-アミノエタノール結合が含まれる請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第1のモノマーは、イソシアネートであり、
前記第2のモノマーは、アルコールであり、
前記基板に形成される重合体にはウレタン結合が含まれる請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記第1のモノマーは、ハロゲン化アシルであり、
前記第2のモノマーは、アミンであり、
前記基板に形成される重合体にはアミド結合が含まれる請求項8に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2種類のモノマーを含むガスを、基板が収容された処理容器内に供給し、2種類のモノマーの重合反応により基板に重合体の有機膜を形成する技術が知られている。例えば、芳香族アルキル、脂環状、または脂肪族のジイソシアネートモノマーと、芳香族アルキル、脂環状、または脂肪族のジアミンモノマーとの真空蒸着重合反応により、基板に重合体の有機膜を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板処理のスループットを向上させることができる基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、基板処理装置であって、処理容器と、ステージと、排気空間と、第1の排気路と、第2の排気路とを備える。ステージは、処理容器内に設けられ、基板が載せられる。排気空間は、処理容器の内側壁に沿って、ステージの周囲に配置されている。第1の排気路は、ステージの上方の処理空間と排気空間との間に設けられ、処理空間よりもコンダクタンスが小さい。第2の排気路は、ステージの下方の下部空間と排気空間との間に設けられ、処理空間よりもコンダクタンスが小さい。処理空間内に供給された処理ガスは、第1の排気路を介して排気され、下部空間内に供給されたパージガスは、第2の排気路を介して排気される。また、第2の排気路は、第1の排気路または第1の排気路よりも排気空間側の空間につながっている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、基板処理のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態における基板処理装置の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態におけるステージの周縁付近の構造の一例を示す拡大断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態におけるそれぞれの空間のコンダクタンスの関係の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、比較例におけるステージの周縁付近の構造の一例を示す拡大断面図である。
【
図5】
図5は、比較例におけるそれぞれの空間のコンダクタンスの関係の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態において、パージガスの流量を変えた場合の有機膜の膜厚分布の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態におけるクリーニング時のステージの周縁付近の状態の一例を示す拡大断面図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態におけるステージの周縁付近の構造の一例を示す拡大断面図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態におけるそれぞれの空間のコンダクタンスの関係の一例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態におけるクリーニング時のステージの周縁付近の状態の一例を示す拡大断面図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態におけるステージの周縁付近の構造の他の例を示す拡大断面図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態におけるステージの周縁付近の構造の一例を示す拡大断面図である。
【
図13】
図13は、第3の実施形態におけるクリーニング時のステージの周縁付近の状態の一例を示す拡大断面図である。
【
図14】
図14は、第3の実施形態におけるステージの周縁付近の構造の他の例を示す拡大断面図である。
【
図15】
図15は、第3の実施形態におけるクリーニング時のステージの周縁付近の状態の他の例を示す拡大断面図である。
【
図16】
図16は、第3の実施形態におけるステージの周縁付近の構造の他の例を示す拡大断面図である。
【
図17】
図17は、第3の実施形態の他の例におけるそれぞれの空間のコンダクタンスの関係の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示される基板処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示される基板処理装置が限定されるものではない。
【0009】
ところで、有機膜の蒸着重合では、処理条件によって成膜速度(成膜レート)が大きく変化する。特に、有機膜の成膜に用いられる成膜ガスの濃度と成膜される場所の温度が重要である。例えば、成膜ガスの濃度が高く、成膜される場所の温度が低ければ、成膜速度が大きくなり、成膜ガスの濃度が低く、成膜される場所の温度が高ければ、成膜速度が小さくなる。そのため、成膜対象の基板が配置される空間においては、成膜ガスの濃度を高く維すると共に、基板の温度を低く維持することが好ましい。
【0010】
一方、基板に有機膜を成膜する基板処理装置では、有機膜の成膜に寄与しなかった成膜ガスが排気されるが、有機膜の成膜に寄与しなかった成膜ガスの一部は、基板処理装置の処理容器内に拡散し、処理容器の内壁等に有機膜を形成してしまう。複数の基板に対する処理が進むと、処理容器の内壁等に形成された有機膜が成長し、やがてパーティクルとなて基板に付着する場合がある。そのため、処理容器の内壁等を加熱することにより、処理容器の内壁等への有機膜の形成を抑制する方策がとられている。
【0011】
しかし、処理容器内の部分によっては、高い温度に加熱することが難しい部分があるため、そのような処理容器内の部分については、有機膜の形成を抑制することが難しい。そのため、頻繁に成膜処理を停止し、チャンバ内のクリーニングを実施することになり、成膜処理におけるスループットが低下する。そこで、加熱が難しい処理容器内の部分にパージガスを供給し、その部分に供給される成膜ガスを希釈することにより、有機膜の形成を抑制することが考えられる。
【0012】
しかし、パージガスが基板付近に流れ込むと、基板付近の成膜ガスの濃度が低下し、基板への有機膜の成膜速度が低下する。これにより、所望の厚さの有機膜を基板に形成するのに要する時間が長くなり、成膜等の基板処理におけるスループットが低下する。
【0013】
そこで、本開示は、基板処理のスループットを向上させることができる技術を提供する。
【0014】
(第1の実施形態)
[基板処理装置10の構成]
図1は、本開示の一実施形態における基板処理装置10の一例を示す概略断面図である。基板処理装置10は、装置本体200と、装置本体200を制御する制御装置100とを備える。装置本体200は、処理容器209を有する。処理容器209は、下部容器201、排気ダクト202、支持構造体210、およびシャワーヘッド230を有する。
【0015】
下部容器201は、例えばアルミニウム等の金属により形成されている。排気ダクト202は、下部容器201の上部の周縁に設けられている。また、排気ダクト202の上には、環状の絶縁部材204が配置されている。シャワーヘッド230は、下部容器201の上方に設けられており、絶縁部材204に支持されている。下部容器201の略中央には、基板Wを載置する支持構造体210が設けられている。支持構造体210とシャワーヘッド230との間の空間を処理空間SPと定義する。
【0016】
下部容器201の側壁には、基板Wの搬入および搬出を行うための開口部205が形成されている。開口部205は、ゲートバルブGによって開閉される。排気ダクト202は、縦断面が中空の角型形状であり、下部容器201の上部に沿って環状に延在している。
【0017】
排気ダクト202には、排気管206の一端が接続されている。排気管206の他端は、APC(Auto Pressure Controller)バルブ等の圧力調整バルブ207を介して真空ポンプ等を有する排気装置208に接続されている。圧力調整バルブ207は、制御装置100によって制御され、処理空間SP内の圧力を予め設定された圧力に制御する。
【0018】
排気ダクト202の側壁およびシャワーヘッド230の上面には図示しないヒータが設けられており、排気ダクト202およびシャワーヘッド230は、例えば200℃以上の温度となるように加熱される。これにより、排気ダクト202およびシャワーヘッド230への反応副生成物(いわゆるデポ)の付着をある程度抑制することができる。なお、排気管206、圧力調整バルブ207、および排気装置208においても、ヒータが設けられ、デポが付着しにくい温度に加熱されてもよい。
【0019】
支持構造体210は、ステージ211および支持部212を有する。ステージ211は、例えばアルミニウム等の金属により構成され、上面に基板Wが載せられる。シャワーヘッド230は、ステージ211に対向する位置に設けられている。支持部212は、例えばアルミニウム等の金属により筒状に構成され、ステージ211を下方から支持する。
【0020】
ステージ211には、ヒータ214が埋め込まれている。ヒータ214は、供給された電力に応じてステージ211上に載せられた基板Wを加熱する。ヒータ214に供給される電力は、制御装置100によって制御される。
【0021】
また、ステージ211内には、冷媒が流通する流路215が形成されている。流路215には、配管216aおよび配管216bを介して、図示しないチラーユニットが接続されている。チラーユニットによって予め定められた温度に調整された冷媒が配管216aを介して流路215に供給され、流路215内を循環した冷媒が、配管216bを介してチラーユニットに戻される。流路215内を循環する冷媒によりステージ211が冷却される。チラーユニットは、制御装置100によって制御される。
【0022】
支持部212は、下部容器201の底部に形成された開口部を貫通するように下部容器201内に配置されている。支持部212は、昇降機構240の駆動により上下に昇降する。昇降機構240は、駆動部の一例である。基板Wが搬入される際には、昇降機構240の駆動により支持構造体210が下降し、ゲートバルブGが開けられる。そして、開口部205を介して図示しない搬送ロボットによって基板Wが下部容器201内に搬入され、ステージ211上に突出した図示しないリフトピンに渡される。そして、図示しないリフトピンが下降することにより、基板Wがステージ211上に載せられる。そして、ゲートバルブGが閉じられ、昇降機構240の駆動により支持構造体210が上昇し、基板Wへの成膜処理が実行される。また、基板Wが搬出される際には、昇降機構240の駆動により支持構造体210が下降し、ゲートバルブGが開けられる。そして、図示しないリフトピンが上昇することにより、基板Wがステージ211から持ち上げられる。そして、図示しないリフトピン上の基板Wが図示しない搬送ロボットによって開口部205を介して下部容器201の外部へ搬出される。
【0023】
シャワーヘッド230は、拡散室231aおよび拡散室231bを有する。拡散室231aおよび拡散室231bは互いに連通していない。拡散室231aおよび拡散室231bには、ガス供給部220が接続されている。具体的には、拡散室231aには、配管225aを介して、バルブ224a、MFC(Mass Flow Controller)223a、気化器222a、および原料供給源221aが接続されている。原料供給源221aは、第1のモノマーの一例であるイソシアネートの供給源である。気化器222aは、原料供給源221aから供給されたイソシアネートの液体を気化させる。MFC223aは、気化器222aによって気化されたイソシアネートの蒸気の流量を制御する。バルブ224aは、イソシアネートの蒸気の配管225aへの供給および供給停止を制御する。
【0024】
拡散室231bには、配管225bを介して、バルブ224b、MFC223b、気化器222b、および原料供給源221bが接続されている。原料供給源221bは、第2のモノマーの一例であるアミンの供給源である。気化器222bは、原料供給源221bから供給されたアミンの液体を気化させる。MFC223bは、気化器222bによって気化されたアミンの蒸気の流量を制御する。バルブ224bは、アミンの蒸気の配管225bへの供給および供給停止を制御する。イソシアネートの蒸気およびアミンの蒸気は、成膜ガスの一例である。また、イソシアネートの蒸気は第1の処理ガスの一例であり、アミンの蒸気は第2の処理ガスの一例である。
【0025】
また、シャワーヘッド230には、配管225aおよび配管225bを介して、バルブ224c、MFC223c、およびクリーニングガス供給源221cが接続されている。クリーニングガス供給源221cは、例えば酸素原子またはフッ素原子を含む分子を含有するクリーニングガスの供給源である。MFC223cは、クリーニングガス供給源221cから供給されたクリーニングガスの流量を制御する。バルブ224cは、クリーニングガスの配管225aおよび配管225bへの供給および供給停止を制御する。
【0026】
拡散室231aは、複数の吐出口232aを介して処理空間SPと連通しており、拡散室231bは、複数の吐出口232bを介して処理空間SPと連通している。配管225aを介して拡散室231a内に供給されたガスは、拡散室231a内を拡散し、吐出口232aを介して処理空間SP内にシャワー状に吐出される。また、配管225bを介して拡散室231b内に供給されたガスは、拡散室231b内を拡散し、吐出口232bを介して処理空間SP内にシャワー状に吐出される。イソシアネートおよびアミンの蒸気は、吐出口232aおよび吐出口232bを介して処理空間SP内に吐出された後、処理空間SP内において混合され、ステージ211に載せられた基板Wの表面に尿素結合を有する重合体の有機膜を形成する。
【0027】
例えば、第1のモノマーとしてジイソシアネート、第2のモノマーとしてジアミン(例えば、第1級アミン)を用いることで、直鎖のポリ尿素を生成させることができる。ジイソシアネートおよびジアミンの組み合わせは、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)および1,12-ジアミノドデカン(DAD)の組み合わせである。ジイソシアネートおよびジアミンの組み合わせは、例えば、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)および1,12-ジアミノドデカン(DAD)の組み合わせである。ジイソシアネートおよびジアミンの組み合わせは、例えば、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)および1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(H6XDA)の組み合わせである。ジイソシアネートおよびジアミンの組み合わせは、例えば、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)およびヘキサメチレンジアミン(HMDA)の組み合わせである。ジイソシアネートおよびジアミンの組み合わせは、例えば、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)およびm-キシリレンジアミン(XDA)の組み合わせである。ジイソシアネートおよびジアミンの組み合わせは、例えば、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)およびベンジルアミン(BA)の組み合わせである。
【0028】
例えば、第1のモノマーとしてジイソシアネート、第2のモノマーとしてトリアミン(例えば、第1級アミン)またはテトラアミン(例えば、第2級アミン)を用いることで、架橋性ポリ尿素を生成させることができる。また、第1のモノマーとしてモノイソシアネート、第2のモノマーとしてジアミン(例えば、第1級アミン)を用いることで、尿素結合を有するトリマーを生成させることができる。また、第1のモノマーとしてモノイソシアネート、第2のモノマーとしてモノアミン(例えば、第1級アミン)を用いることで、尿素結合を有するダイマーを生成させることができる。
【0029】
シャワーヘッド230には、整合器261を介して、プラズマ発生用のRF(Radio Frequency)電力を供給するRF電源260が接続されている。シャワーヘッド230は、ステージ211に対してカソード電極として機能する。処理容器209内のクリーニングにおいて、シャワーヘッド230を介してガス供給部220から処理空間SP内にクリーニングガスが供給され、整合器261を介してRF電源260から処理空間SP内にRF電力が供給される。これにより、処理空間SP内においてクリーニングガスがプラズマ化され、プラズマに含まれる活性種により、処理容器209内のクリーニングが行われる。
【0030】
ステージ211の下方の下部容器201には、配管225dを介して、バルブ224d、MFC223d、およびパージガス供給源221dが接続されている。パージガス供給源221dは、パージガスの供給源である。パージガスは、例えば窒素ガスや希ガス等の不活性ガスである。MFC223dは、パージガス供給源221dから供給されたパージガスの流量を制御する。バルブ224dは、パージガスの配管225dへの供給および供給停止を制御する。ステージ211の下方の下部容器201内の空間を下部空間SLと定義する。下部空間SL内にパージガスが供給されることにより、処理空間SP内に供給された成膜ガスが下部空間SL内に侵入することを抑制することができる。
【0031】
制御装置100は、メモリ、プロセッサ、および入出力インターフェイスを備える。メモリには、制御プログラムおよび処理レシピ等が格納される。プロセッサは、制御プログラムをメモリから読み出して実行し、メモリに格納されたレシピ等に基づいて、入出力インターフェイスを介して装置本体200の各部を制御する。
【0032】
[ステージ211の周縁付近の構造]
図2は、第1の実施形態におけるステージ211の周縁付近の構造の一例を示す拡大断面図である。基板Wが載せられるステージ211の上面の周縁には、ステージ211の上面の周縁を囲むように、環状のステージカバー250が設けられている。本実施形態において、ステージカバー250には、例えば
図2に示されるように、ステージ211の側面から離れる方向に延在し、さらに下部容器201の側壁に沿って上方に突出する断面形状の排気ブレード2501が設けられている。排気ブレード2501は、ステージ211の外周に沿って環状に形成されている。排気ブレード2501は、第1の排気ブレードの一例である。排気ブレード2501と下部容器201の側壁との間には隙間が設けられている。
【0033】
また、ステージカバー250の上には、環状で板状のリングカバー251が配置されている。シャワーヘッド230の下面とリングカバー251の上面と間の空間を、第1の排気路30と定義する。
【0034】
排気ダクト202には、排気ダクト202の延在方向に沿ってダクトカバー252が設けられている。ダクトカバー252には、排気ダクト202の延在方向に沿ってスリット状の排気口2520が形成されている。ダクトカバー252には、例えば
図2に示されるように、下部容器201の側壁から離れる方向に延在し、さらに下部容器201の側壁に沿って下方に垂下する断面形状の排気ブレード2521が設けられている。排気ブレード2521は、下部容器201の側壁に沿って環状に形成されている。排気ブレード2521は、第2の排気ブレードの一例である。基板Wに有機膜を形成する際、ステージカバー250の排気ブレード2501は、例えば
図2に示されるように、ダクトカバー252の排気ブレード2521と下部容器201の側壁との間に配置される。排気ブレード2521と排気ブレード2501との間、および、排気ブレード2521と下部容器201の側壁との間には隙間が設けられている。
【0035】
下部容器201と排気ブレード2501との間の空間、および、排気ブレード2521と排気ブレード2501との間の空間を、第2の排気路31と定義する。また、排気口2520内の空間を第3の排気路32と定義し、ダクトカバー252と排気ダクト202で囲まれた空間を、排気空間SEと定義する。また、第1の排気路30、第2の排気路31、および第3の排気路32の間の空間を、中間空間SMと定義する。
【0036】
基板Wに有機膜を成膜する処理において、処理空間SP内に供給されたガスは、第1の排気路30、中間空間SM、および第3の排気路32を介して排気空間SEへ排気される。また、下部空間SLに供給されたパージガスは、第2の排気路31、中間空間SM、および第3の排気路32を介して排気空間SEへ排気される。
【0037】
また、シャワーヘッド230の下面とリングカバー251の上面との間の距離は、シャワーヘッド230の下面とステージ211上に載せられた基板Wの上面との間の距離よりもずっと短い。そのため、第1の排気路30のコンダクタンスは、処理空間SPのコンダクタンスよりも小さい。また、本実施形態では、第2の排気路31のコンダクタンスも、処理空間SPのコンダクタンスより小さい。
【0038】
これらの空間のコンダクタンスの関係を図示すると、例えば
図3のようになる。
図3は、第1の実施形態におけるそれぞれの空間のコンダクタンスの関係の一例を説明するための図である。
図3の例において、各部の太さがコンダクタンスの大きさを表している。例えば
図3に示されるように、処理空間S
Pと中間空間S
Mとは、処理空間S
Pよりもコンダクタンスが小さい第1の排気路30を介して連通しており、下部空間S
Lと中間空間S
Mとは、処理空間S
Pよりもコンダクタンスが小さい第2の排気路31を介して連通している。また、中間空間S
Mと排気空間S
Eとは、処理空間S
Pよりもコンダクタンスが小さい第3の排気路32を介して連通している。
【0039】
ここで、ステージ211の周縁付近の構造が例えば
図4に示されるような構造である場合を考える。
図4は、比較例におけるステージ211の周縁付近の構造の一例を示す拡大断面図である。
図4に例示された比較例には、リングカバー251が設けられていない。そのため、比較例において、処理空間S
Pのコンダクタンスと、シャワーヘッド230の下面とステージカバー250の上面と間の排気路33のコンダクタンスとは、ほぼ同じ大きさである。
【0040】
比較例におけるそれぞれの空間のコンダクタンスの関係を図示すると例えば
図5のようになる。
図5は、比較例におけるそれぞれの空間のコンダクタンスの関係の一例を説明するための図である。比較例では、リングカバー251が設けられていない。そのため、比較例では、成膜処理が行われる際、排気路33を介して処理空間S
Pから中間空間S
M内に大量に成膜ガスが流入する。これにより、中間空間S
M内における成膜ガスの分圧が高くなる。そのため、中間空間S
M、第3の排気路32、および排気空間S
E内に濃度が高い成膜ガスが流れ、中間空間S
M、第3の排気路32、および排気空間S
Eの側壁に有機膜がデポとして形成されやすくなる。中間空間S
M、第3の排気路32、および排気空間S
Eの側壁の中に、有機膜の成膜を阻害する程度に十分に加熱することが難しい部分があると、成膜処理を停止して、その部分のクリーニングを頻繁に行う必要がある。
【0041】
また、比較例において、中間空間SM内の成膜ガスの分圧を下げるために、下部空間SLに供給されるパージガスの流量を増加させることが考えられる。これにより、中間空間SM内に供給されるパージガスが増加し、中間空間SM内の成膜ガスの分圧を下げることができる。しかし、比較例では、排気路33のコンダクタンスが大きいため、中間空間SM内に供給されたパージガスが排気路33を介して処理空間SP内に流入しやすい。パージガスが処理空間SP内に流入すると、処理空間SPの成膜ガスの濃度が低下する。処理空間SPの成膜ガスの濃度が低下すると、成膜速度が低下し、成膜処理におけるスループットが低下する。
【0042】
これに対し、本実施形態では、例えば
図3に示されたように、コンダクタンスが低い第1の排気路30を介して処理空間S
Pと中間空間S
Mとが連通している。そのため、下部空間S
Lに供給されるパージガスが第1の排気路30を介して中間空間S
M内から処理空間S
P内へ流入する量を低く抑えることができる。従って、下部空間S
Lに供給されるパージガスの流量を増加させても、処理空間S
P内へのパージガスの流入量を低く抑えることができ、有機膜の成膜速度の低下を抑えることができる。
【0043】
また、有機膜の成膜速度の低下を抑えつつ、下部空間SLに供給されるパージガスの流量を増加させることができるため、中間空間SM内の成膜ガスの分圧を下げることができる。これにより、中間空間SM、第3の排気路32、および排気空間SE内に流れる成膜ガスの濃度を下げることができ、中間空間SM、第3の排気路32、および排気空間SEの側壁への有機膜の付着を抑制することができる。これにより、クリーニングの頻度を下げることができ、成膜処理におけるスループットを向上させることができる。
【0044】
[実験結果]
図6は、第1の実施形態において、パージガスの流量を変えた場合の有機膜の膜厚分布の一例を示す図である。
図6において、「Average」は基板Wに形成された有機膜の平均膜厚、「D/R」は成膜レート(成膜速度)、「Max」は膜厚の最大値、「Min」は膜厚の最小値、「Range」は膜厚の最大値と最小値との差を表す。また、「WiW±」は平均膜厚に対するRangeの百分率を半分に割った値を表し、「WiW1σ」は平均膜厚に対する標準偏差の百分率を表す。例えば
図6に示されるように、パージガスの流量を1600sccmに増加させると、成膜速度(D/R)が多少変化する。しかし、パージガスの流量が1600sccmの時の成膜速度の低下は、パージガスの流量が100sccmの時の成膜速度に比べて30%以内に抑えられている。
【0045】
なお、パージガスの流量が100sccmの場合、排気空間SEにおける成膜ガスの分圧は250mTorrであり、パージガスの流量が1600sccmの場合、排気空間SEにおける成膜ガスの分圧は50mTorrであった。即ち、パージガスの流量を1600sccmに増加させると、排気空間SEにおける成膜ガスの分圧は、パージガスの流量が100sccmの時に比べて20%以下に低減することができた。これにより、排気空間SEにおける有機膜の成膜を抑制することができ、クリーニングの頻度を大幅に下げることができる。
【0046】
[クリーニング時の動作]
図7は、第1の実施形態におけるクリーニング時のステージ211の周縁付近の状態の一例を示す拡大断面図である。成膜処理中に基板W以外の部分への有機膜の付着を抑制するために、基板W以外の部分を加熱したり、基板W以外の部分に供給される成膜ガスを希釈するが、基板W以外の部分への有機膜の付着を完全になくすことは難しい。そのため、成膜処理が繰り返されると、基板W以外の部分に有機膜が付着する場合がある。そのため、基板W以外の部分に付着した有機膜がパーティクルとなって処理容器209内に飛散する前に、処理容器209内のクリーニングが行われる。
【0047】
本実施形態において、処理容器209内のクリーニングは、昇降機構240を駆動することにより、ステージ211を下降させた状態で実施される。ステージ211が成膜処理の際の位置から下降することにより、リングカバー251がステージ211と共に下降し、例えば
図7に示されるように、リングカバー251がステージカバー250の上面から排気ブレード2521の上面に受け渡される。これにより、シャワーヘッド230の下面とリングカバー251の上面と間の空間が第1の排気路30’に広がり、第1の排気路30’のコンダクタンスが大きくなる。これにより、処理空間S
P内においてプラズマ化されたクリーニングガスの活性種が、第1の排気路30’を介して中間空間S
M内に容易に拡散する。これにより、中間空間S
Mの壁面等に付着した有機膜を効率よく除去することができる。
【0048】
また、ステージ211が下降してリングカバー251がステージカバー250の上面から排気ブレード2521の上面に受け渡されることにより、例えば
図7に示されるように、リングカバー251の下面とステージカバー250の上面とが離間する。これにより、処理空間S
P内においてプラズマ化されたクリーニングガスの活性種によって、リングカバー251の下面に付着した有機膜、および、ステージカバー250の上面に付着した有機膜を効率よく除去することができる。
【0049】
以上、第1の実施形態について説明した。上記したように、本実施形態における基板処理装置10は、処理容器209と、ステージ211と、排気空間SEと、第1の排気路30と、第2の排気路31とを備える。ステージ211は、処理容器209内に設けられ、基板Wが載せられる。排気空間SEは、処理容器209の内側壁に沿って、ステージ211の周囲に配置されている。第1の排気路30は、ステージ211の上方の処理空間SPと排気空間SEとの間に設けられ、処理空間SPよりもコンダクタンスが小さい。第2の排気路31は、ステージ211の下方の下部空間SLと排気空間SEとの間に設けられ、処理空間SPよりもコンダクタンスが小さい。処理空間SP内に供給された処理ガスは、第1の排気路30を介して排気され、下部空間SL内に供給されたパージガスは、第2の排気路31を介して排気される。また、第2の排気路31は、第1の排気路30よりも排気空間SE側の空間につながっている。これにより、処理空間SP内へのパージガスの流入量を低く抑えることができ、有機膜の成膜速度の低下を抑えることができる。これにより、成膜処理におけるスループットを向上させることができる。
【0050】
また、上記した実施形態において、第1の排気路30は、ステージ211の上面の周縁に設けられた環状のステージカバー250の上に配置されたリングカバー251と、ステージ211の上方に配置され処理容器209内にガスを供給するシャワーヘッド230の下面との間の空間である。また、第2の排気路31は、ステージカバー250に設けられた環状の排気ブレード2501と、処理容器209の側壁に設けられた環状の排気ブレード2521との間の空間である。これにより、第1の排気路30および第2の排気路31を容易に形成することができる。
【0051】
また、上記した実施形態において、基板処理装置10は、ステージ211を上下に移動させる昇降機構240を備える。バルブ2240は、処理容器209内のクリーニングが行われる場合に、ステージ211を下降させることにより、第1の排気路30のコンダクタンスを上げる。また、リングカバー251は、ステージ211が下降することにより、ステージカバー250から排気ブレード2521に受け渡される。これにより、リングカバー251の下面に付着した有機膜、および、ステージカバー250の上面に付着した有機膜を効率よく除去することができる。
【0052】
また、上記した実施形態において、シャワーヘッド230は、第1のモノマーを含む第1の処理ガスと、第2のモノマーを含む第2の処理ガスとを、それぞれ異なる吐出口232aおよび232bから処理容器209内に供給することにより、ステージ211上に載せられた基板Wに、第1のモノマーおよび第2のモノマーの重合体の膜を形成する。また、第1のモノマーは例えばイソシアネートであり、第2のモノマーは例えばアミンであり、基板Wに形成される重合体には尿素結合が含まれる。基板Wに形成される重合体の膜厚は、基板W上における第1のモノマーのガスおよび第2のモノマーのガスの濃度の影響を受ける。本実施形態では、処理空間SP内における第1のモノマーのガスおよび第2のモノマーのガスの濃度の低下を抑制できるため、基板Wに形成される重合体の膜の成膜速度の低下を抑制することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、第1の排気路30を介して処理空間SPと中間空間SMとが連通し、第2の排気路31を介して下部空間SLと中間空間SMとが連通し、第3の排気路32を介して中間空間SMと排気空間SEとが連通する。これに対し、第2の実施形態では、第1の排気路30を介して処理空間SPと排気空間SEとが連通し、第2の排気路31を介して下部空間SLと排気空間SMEが連通する点が第1の実施形態とは異なる。以下では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明を行う。
【0054】
図8は、第2の実施形態におけるステージ211の周縁付近の構造の一例を示す拡大断面図である。本実施形態では、ステージ211の上面の周縁にステージカバー250が配置されておらず、ステージ211の上面の周縁にリングカバー251が配置されている。本実施形態におけるリングカバー251には、ステージ211の上面と交差する方向に立設する環状の突条2510が形成されている。本実施形態では、シャワーヘッド230の下面とリングカバー251の上面と間の空間、および、シャワーヘッド230の側面と突条2510の側面との間の空間を、第1の排気路30と定義する。
【0055】
第1の排気路30のコンダクタンスは、処理空間S
Pのコンダクタンスよりも小さい。なお、
図8の例では、リングカバー251に突条2510が形成されているが、第1の実施形態におけるリングカバー251と同様に、リングカバー251には突条2510が設けられていなくてもよい。この場合であっても、第1の排気路30のコンダクタンスを、処理空間S
Pのコンダクタンスよりも小さくすることができる。
【0056】
また、
図8の例では、ステージ211の上面の周縁にステージカバー250が配置されておらず、ステージ211の上面の周縁にリングカバー251が配置されているが、開示の技術はこれに限られない。本実施形態においても、ステージ211の上面の周縁に排気ブレード2501を有さないステージカバー250が配置され、ステージカバー250の上にリングカバー251が配置されてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、排気ダクト202に沿って、環状の排気ブレード253が設けられている。排気ブレード253の断面形状は、例えば
図8に示されるように、下部容器201の側壁から離れる方向に延在し、さらに下部容器201の側壁に沿って下方に垂下する形状である。本実施形態では、ステージ211の側面と排気ブレード253の側面と間の空間を、第2の排気路31と定義する。なお、本実施形態では、排気ダクト202にダクトカバー252が設けられていない。また、排気ブレード253は、下部容器201から離れる方向に延在する断面形状であれば、下部容器201の側壁に沿って下方に垂下する部分がなくてもよい。排気ブレード253は、第2の排気ブレードの一例である。
【0058】
処理空間S
P、下部空間S
L、排気空間S
E、第1の排気路30、および第2の排気路31のコンダクタンスの関係を図示すると、例えば
図9のようになる。
図9は、第2の実施形態におけるそれぞれの空間のコンダクタンスの関係の一例を説明するための図である。
図9の例において、各部の太さがコンダクタンスの大きさを表している。基板Wに有機膜を成膜する処理において、処理空間S
P内に供給された成膜ガスは、第1の排気路30を介して排気空間S
Eへ排気され、下部空間S
Lに供給されたパージガスは、第2の排気路31を介して排気空間S
Eへ排気される。
【0059】
本実施形態では、例えば
図9に示されたように、コンダクタンスが低い第1の排気路30を介して処理空間S
Pと排気空間S
Eとが連通している。そのため、下部空間S
Lに供給されるパージガスが第1の排気路30を介して排気空間S
E内から処理空間S
P内へ流入する量を低く抑えることができる。従って、下部空間S
Lに供給されるパージガスの流量を増加させても、処理空間S
P内へのパージガスの流入量を低く抑えることができ、有機膜の成膜速度の低下を抑えることができる。
【0060】
また、有機膜の成膜速度の低下を抑えつつ、下部空間SLに供給されるパージガスの流量を増加させることができるため、排気空間SE内の成膜ガスの分圧を下げることができる。これにより、排気空間SE内に流れる成膜ガスの濃度を下げることができ、排気空間SEの側壁への有機膜の付着を抑制することができる。これにより、クリーニングの頻度を下げることができ、成膜処理におけるスループットを向上させることができる。
【0061】
[クリーニング時の動作]
図10は、第2の実施形態におけるクリーニング時のステージ211の周縁付近の状態の一例を示す拡大断面図である。本実施形態において、処理容器209内のクリーニングは、昇降機構240を駆動することにより、ステージ211を下降させた状態で実施される。ステージ211が成膜処理の際の位置から下降することにより、リングカバー251がステージ211と共に下降し、例えば
図10に示されるように、リングカバー251がステージ211の上面から排気ブレード253の上面に受け渡される。これにより、シャワーヘッド230の下面とリングカバー251の上面と間の空間、および、シャワーヘッド230の側面と突条2510の側面との間の空間が第1の排気路30’に広がる。これにより、第1の排気路30’のコンダクタンスが大きくなり、処理空間S
P内においてプラズマ化されたクリーニングガスの活性種が、第1の排気路30’を介して排気空間S
E内に容易に拡散する。これにより、排気空間S
Eの壁面等に付着した有機膜を効率よく除去することができる。
【0062】
また、ステージ211が下降してリングカバー251がステージ211の上面から排気ブレード253の上面に受け渡されることにより、例えば
図10に示されるように、リングカバー251の下面とステージ211の上面とが離間する。これにより、処理空間S
P内においてプラズマ化されたクリーニングガスの活性種によって、リングカバー251の下面に付着した有機膜、および、ステージ211の上面に付着した有機膜を効率よく除去することができる。
【0063】
また、ステージ211が下降することにより、ステージ211と排気ブレード253とが離間し、ステージ211と排気ブレード253との間の空間が、第2の排気路31’に広がる。これにより、第2の排気路31’のコンダクタンスが大きくなり、処理空間SP内においてプラズマ化されたクリーニングガスの活性種が、第2の排気路31’を介して下部空間SL内に容易に拡散する。これにより、下部空間SLの壁面等に付着した有機膜を効率よく除去することができる。
【0064】
なお、
図8の例では、排気ダクト202に沿って、環状の排気ブレード253が設けられているが、開示の技術はこれに限られない。下部容器201には、例えば
図11に示されるように、排気ダクト202の下方に、下部容器201の側壁に沿って、下部空間S
Lの方向へ突出する環状の棚部2010が形成されていてもよい。この場合、棚部2010の側壁とステージ211の側壁との間の空間が第2の排気路31に相当する。
【0065】
以上、第2の実施形態について説明した。上記したように、本実施形態における基板処理装置10は、ステージ211の上面の周縁に配置された環状のリングカバー251であって、ステージ211の上面と交差する方向に立設する環状の突条2510を有するリングカバー251をさらに備える。第1の排気路30は、リングカバー251の上面とステージ211の上方に配置されシャワーヘッド230の下面との間の空間、および、リングカバー251の突条2510の側面とシャワーヘッド230の側面との間の空間の少なくともいずれかの空間である。第2の排気路31は、ステージ211の側面と、下部容器201の側壁に設けられた環状の排気ブレード253との間の空間である。これにより、第1の排気路30および第2の排気路31を容易に形成することができる。
【0066】
また、上記した実施形態において、基板処理装置10は、ステージ211を上下に移動させる昇降機構240を備える。昇降機構240は、処理容器209内のクリーニングが行われる場合に、ステージ211を下降させることにより、第1の排気路30および第2の排気路31のコンダクタンスを上げる。リングカバー251は、ステージ211が下降することにより、処理容器209の内側壁に設けられた棚部2010に受け渡される。これにより、排気空間SEおよび下部空間SLの壁面等に付着した有機膜を効率よく除去することができる。
【0067】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、ステージカバー250の上に、ステージ211の上面に沿う向きに延在するように板状のリングカバー251が配置された。これに対し、第3の実施形態では、筒状のリングカバー251がシャワーヘッド230を囲むように、シャワーヘッド230の外側壁に固定されている点が第1の実施形態とは異なる。以下では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明を行う。
【0068】
図12は、第3の実施形態におけるステージ211の周縁付近の構造の一例を示す拡大断面図である。本実施形態では、例えば
図12に示されるように、筒状のリングカバー251がシャワーヘッド230を囲むように、シャワーヘッド230の外側壁に固定されている。本実施形態では、ステージ211に設けられたステージカバー250の側面とリングカバー251の側面との間の空間を、第1の排気路30と定義する。第1の排気路30のコンダクタンスは、処理空間S
Pのコンダクタンスよりも小さい。
【0069】
また、本実施形態では、排気ダクト202に沿って、環状の排気ブレード253が設けられている。排気ブレード253は、第2の排気ブレードの一例である。排気ブレード253の断面形状は、例えば
図12に示されるように、下部容器201の側壁から離れる方向に延在し、さらに下部容器201の側壁に沿って下方に垂下する形状である。基板Wに有機膜を成膜する処理において、ステージカバー250の排気ブレード2501は、例えば
図12に示されるように、排気ブレード253と下部容器201の側壁との間に配置される。排気ブレード253と排気ブレード2501との間、および、排気ブレード2501と下部容器201の側壁との間には隙間が設けられている。本実施形態では、下部容器201と排気ブレード2501との間の空間、および、排気ブレード253と排気ブレード2501との間の空間を、第2の排気路31と定義する。
【0070】
また、本実施形態において、リングカバー251と排気ブレード253との間の空間のコンダクタンスは、処理空間S
Pのコンダクタンスよりも大きい。本実施形態において、処理空間S
P、下部空間S
L、排気空間S
E、第1の排気路30、および第2の排気路31のコンダクタンスの関係は、例えば
図9と同様である。基板Wに有機膜を成膜する処理において、処理空間S
P内に供給されたガスは、第1の排気路30を介して排気空間S
Eへ排気され、下部空間S
Lに供給されたパージガスは、第2の排気路31を介して排気空間S
Eへ排気される。
【0071】
本実施形態においても、例えば
図9に示されたように、コンダクタンスが低い第1の排気路30を介して処理空間S
Pと排気空間S
Eとが連通している。そのため、下部空間S
Lに供給されるパージガスが第1の排気路30を介して排気空間S
E内から処理空間S
P内へ流入する量を低く抑えることができる。従って、下部空間S
Lに供給されるパージガスの流量を増加させても、処理空間S
P内へのパージガスの流入量を低く抑えることができ、有機膜の成膜速度の低下を抑えることができる。
【0072】
また、有機膜の成膜速度の低下を抑えつつ、下部空間SLに供給されるパージガスの流量を増加させることができるため、排気空間SE内の成膜ガスの分圧を下げることができる。これにより、排気空間SE内に流れる成膜ガスの濃度を下げることができ、排気空間SEの側壁への有機膜の付着を抑制することができる。これにより、クリーニングの頻度を下げることができ、成膜処理におけるスループットを向上させることができる。
【0073】
[クリーニング時の動作]
図13は、第3の実施形態におけるクリーニング時のステージ211の周縁付近の状態の一例を示す拡大断面図である。本実施形態において、処理容器209内のクリーニングは、昇降機構240を駆動することにより、ステージ211を下降させた状態で実施される。ステージ211が成膜処理の際の位置から下降することにより、例えば
図13に示されるように、ステージ211と、シャワーヘッド230の側壁に固定されたリングカバー251とが離れる。これにより、ステージ211の側面とリングカバー251の側面と間の空間が第1の排気路30’に広がる。これにより、第1の排気路30’のコンダクタンスが大きくなり、処理空間S
P内においてプラズマ化されたクリーニングガスの活性種が、第1の排気路30’を介して排気空間S
E内に容易に拡散する。これにより、排気空間S
Eの壁面等に付着した有機膜を効率よく除去することができる。
【0074】
なお、第3の実施形態の他の例として、例えば
図14に示されるように、排気ブレード253に変えて、排気ダクト202の下方に、下部容器201の側壁に沿って、下部空間S
Lの方向へ突出する環状の棚部2010が形成されていてもよい。この場合、棚部2010の側面と排気ブレード2501との間の空間が第2の排気路31に相当する。このような構成においても、下部空間S
Lに供給されるパージガスが第1の排気路30を介して排気空間S
E内から処理空間S
P内へ流入する量を低く抑えることができると共に、排気空間S
E内に流れる成膜ガスの濃度を下げることができる。
【0075】
また、クリーニング時には、ステージ211が成膜処理の際の位置から下降することにより、例えば
図15に示されるように、ステージ211と、シャワーヘッド230の側壁に固定されたリングカバー251とが離れる。これにより、ステージ211の側面とリングカバー251の側面と間の空間が第1の排気路30’に広がり、第1の排気路30’のコンダクタンスが大きくなる。これにより、処理空間S
P内においてプラズマ化されたクリーニングガスの活性種が、第1の排気路30’を介して排気空間S
E内に容易に拡散し、排気空間S
Eの壁面等に付着した有機膜を効率よく除去することができる。
【0076】
また、ステージ211が下降することにより、ステージ211と排気ブレード2501とが離間し、ステージ211と排気ブレード2501との間の空間が、第2の排気路31’に広がる。これにより、第2の排気路31’のコンダクタンスが大きくなり、処理空間SP内においてプラズマ化されたクリーニングガスの活性種が、第2の排気路31’を介して下部空間SL内に容易に拡散する。これにより、下部空間SLの壁面等に付着した有機膜を効率よく除去することができる。
【0077】
また、
図12の例では、リングカバー251と排気ブレード253との間の空間のコンダクタンスは、処理空間S
Pのコンダクタンスよりも大きいが、開示の技術はこれに限られない。他の例として、例えば
図16に示されるように、リングカバー251と排気ブレード253との間の空間のコンダクタンスは、処理空間S
Pのコンダクタンスよりも小さくなるように構成されてもよい。リングカバー251と排気ブレード253との間の空間を、第4の排気路34と定義する。
【0078】
図16の例において、処理空間S
P、下部空間S
L、排気空間S
E、第1の排気路30、第2の排気路31、および第4の排気路34のコンダクタンスの関係は、例えば
図17のようになる。本実施形態において、第2の排気路31は、例えば
図17に示されるように、第1の排気路30につながっている。基板Wに有機膜を成膜する処理において、処理空間S
P内に供給されたガスは、第1の排気路30を介して第4の排気路34へ流れ、下部空間S
Lに供給されたパージガスは、第2の排気路31を介して第4の排気路34へ流れる。そして、第4の排気路34内を流れるガスは、排気空間S
Eへ排気される。
【0079】
以上、第3の実施形態について説明した。上記したように、本実施形態における基板処理装置10は、シャワーヘッド230を囲むように、シャワーヘッド230の側壁に設けられた筒状のリングカバー251を備える。本実施形態における第1の排気路30は、ステージ211の上面の周縁に設けられた環状のステージカバー250の側面とリングカバー251の側面との間の空間である。また、本実施形態における第2の排気路31は、ステージカバー250に設けられた環状の排気ブレード2501と処理容器209の側壁に設けられた環状の排気ブレード253との間の空間である。これにより、第1の排気路30および第2の排気路31を容易に形成することができる。
【0080】
また、上記した実施形態において、基板処理装置10は、ステージ211を上下に移動させる昇降機構240を備える。また、本実施形態において、リングカバー251の側面と排気ブレード253との間の空間のコンダクタンスは、第1の排気路30のコンダクタンスおよび第2の排気路31のコンダクタンスのいずれよりも大きい。昇降機構240は、処理容器209内のクリーニングが行われる場合に、ステージ211を下降させることにより、第1の排気路30のコンダクタンスを上げる。これにより、クリーニングにおいて、排気空間SEの壁面等に付着した有機膜を効率よく除去することができる。
【0081】
[その他]
なお、本願に開示された技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0082】
例えば、上記した実施形態では、第1のモノマーとしてイソシアネート、第2のモノマーとしてアミンを用いて、基板Wの表面に尿素結合(-NH-CO-NH-)を有する重合体の膜が形成されたが、開示の技術はこれに限られない。例えば、第1のモノマーとしてエポキシド、第2のモノマーとしてアミンを用いて、基板Wの表面に2-アミノエタノール結合(-NH-CH2-CH(OH)-)を有する重合体の膜が形成されてもよい。あるいは、第1のモノマーとしてイソシアネート、第2のモノマーとしてアルコールを用いて、基板Wの表面にウレタン結合(-NH-CO-O-)を有する重合体の膜が形成されてもよい。あるいは、第1のモノマーとしてハロゲン化アシル、第2のモノマーとしてアミンを用いて、基板Wの表面にアミド結合(-NH-CO-)を有する重合体の膜が形成されてもよい。あるいは、第1のモノマーとしてカルボン酸無水物、第2のモノマーとしてアミンを用いて、基板Wの表面にイミド結合(-CO-N(-)-CO-)を有する重合体の膜が形成されてもよい。
【0083】
基板Wの表面にイミド結合を有する重合体の膜が形成される場合、第1のモノマーとしては、例えばピロメリト酸二無水物(PMDA)等を用いることができる。また、基板Wの表面にイミド結合を有する重合体の膜が形成される場合、第2のモノマーとしては、例えば4,4’-オキシジアニリン(44ODA)、または、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)等を用いることができる。
【0084】
また、上記した実施形態では、基板処理装置10として、成膜を行う装置を例に説明したが、開示の技術はこれに限られない。処理容器209内のガスの分布が基板Wに対する処理の品質に影響を及ぼす装置であれば、成膜を行う装置以外に、エッチングを行う装置や、基板Wの改質を行う装置等にも開示の技術を適用することができる。
【0085】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
G ゲートバルブ
W 基板
10 基板処理装置
100 制御装置
200 装置本体
201 下部容器
2010 棚部
202 排気ダクト
204 絶縁部材
205 開口部
206 排気管
207 圧力調整バルブ
208 排気装置
209 処理容器
210 支持構造体
211 ステージ
212 支持部
214 ヒータ
215 流路
216 配管
220 ガス供給部
221a 原料供給源
221b 原料供給源
221c クリーニングガス供給源
221d パージガス供給源
222 気化器
223 MFC
224 バルブ
225 配管
230 シャワーヘッド
231 拡散室
232 吐出口
240 昇降機構
250 ステージカバー
2501 排気ブレード
251 リングカバー
2510 突条
252 ダクトカバー
2520 排気口
2521 排気ブレード
253 排気ブレード
260 RF電源
261 整合器
30 第1の排気路
31 第2の排気路
32 第3の排気路
33 排気路
34 第4の排気路