(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183495
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】清掃装置
(51)【国際特許分類】
B08B 9/049 20060101AFI20231221BHJP
B08B 1/04 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B08B9/049
B08B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097040
(22)【出願日】2022-06-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (刊行物1) 第22回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会の講演論文集(令和3年12月15日発行)2G1-06にて公開 (刊行物2) 2022 IEEE/SICE International Symposium on System Integration(SII),2022.pp473-478.(2022年 IEEE/SICE システムインテグレーション国際シンポジウム)の講演論文集(令和4年1月9日発行)pp473-478にて公開 (刊行物3) ロボティクス・メカトロニクス講演会2022の講演論文集(令和4年6月1日発行)2P1-D03にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山中 雄太
(72)【発明者】
【氏名】人見 峻広
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文臣
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA13
3B116AB54
3B116BA02
3B116BA15
3B116BA35
(57)【要約】
【課題】筒状の管体の内周面に付着した油塵等の付着物を分離可能とする清掃装置を提供する。
【解決手段】 断面円形状の管体内を清掃するための清掃装置であって、管体の内周面に付着した付着物を前記内周面から分離させる清掃体と、清掃体を管体の内周面に摺接した状態を維持しつつ管体の内周面を円周方向に沿って公転させながら自転させる駆動手段とを備えた構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形状の管体内を清掃するための清掃装置であって、
前記管体の内周面に付着した付着物を前記内周面から分離させる清掃体と、
前記清掃体を前記管体の内周面に摺接した状態を維持しつつ前記管体の内周面を円周方向に沿って公転させながら自転させる駆動手段と、
を備えたことを特徴とする清掃装置。
【請求項2】
前記清掃体は、公転方向に複数設けられたことを特徴とする請求項1に記載の清掃装置。
【請求項3】
前記清掃体は、自転軸の軸方向に複数設けられ、各清掃体が異なる素材で構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の清掃装置。
【請求項4】
前記清掃体を前記管体の延長方向に沿って移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の清掃装置。
【請求項5】
前記清掃体は、繊維を素材とし、自転軸周りに放射状に延長する繊維群を備え、該繊維群により付着物を分離させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の清掃装置。
【請求項6】
前記清掃体は、可撓性を有する弾性体を備え、該弾性体により付着物を分離させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃装置に関し、特に、飲食店などに設置された換気ダクト内に付着する粘性の高い油塵の除去を目的としたダクトの清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダクト内を清掃する清掃装置の一つとして、例えば、特許文献1に示すように空気を噴射してダクト内に付着した埃を除去するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、飲食店などに設置された換気ダクト内に付着する粘性の高い油塵等の除去に適したものではない。飲食店では、調理時に発生する油煙を換気するために換気ダクトが設置され、換気扇から吸気された油煙がダクトを通り屋外へ排出される。この油煙は、ダクトを通過する際に油分が埃や塵と混合し冷えて固まることで油塵と呼ばれる物質に変化しながらダクト壁面に付着し、換気設備の長期利用に伴いダクト内壁全体に堆積する。この油塵に何らかの要因で引火した場合,火はダクト内の油塵により伝播し,建物全体に延焼することが問題となる。このようなダクトは、建物の構造上,天井裏や床下に設置されることが多く、ダクト火災における初期消火に困難性を生じさせ、甚大な被害に発展する可能性が高い。ダクト火災を未然に防ぐには、定期的に油塵を除去する必要があるものの、現状では、作業員がダクト内に入り、スクレーパなどを用いて人力で油塵を削ぎ落とす清掃に依存している。また、ダクトによっては、人の侵入不可能な大きさにより清掃が困難なもの、天井裏などの暗く狭い場所での作業となり作業者に危険を生じさせるものがある。また、人による清掃が可能であっても、飲食店が換気ダクトを使用しない営業時間外に清掃作業を行う必要があり,実質的に人によるダクト全体の清掃が困難な場合もある。
【0005】
そこで、本発明では、筒状の管体の内周面に付着した油塵等の付着物を分離可能とするダクトの清掃に好適な清掃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための清掃装置の構成として、断面円形状の管体内を清掃するための清掃装置であって、管体の内周面に付着した付着物を内周面から分離させる清掃体と、清掃体を管体の内周面に摺接した状態を維持しつつ管体の内周面を円周方向に沿って公転させながら自転させる駆動手段とを備えた構成とした。
本構成によれば、人手によらずダクト内を清掃することができ、定期的にダクト内の清掃をすることができる。また、清掃体が管体の内周面に摺接した状態を維持しつつ管体の内周面を円周方向に沿って公転しながら自転することにより、ダクト内の付着物が粘性の高い油塵などであっても分離し、除去することができる。
また、清掃体は、公転方向に複数設けたりしても良い。
また、清掃体は、自転軸の軸方向に複数設けられ、各清掃体が異なる素材で構成するようにしても良い。
また、清掃体を前記管体の延長方向に沿って移動させる移動手段を備えた構成とすることにより、ダクト内を容易に清掃することができる。
また、清掃体は、繊維を素材とし、自転軸周りに放射状に延長する繊維群を備え、該繊維群により付着物を分離させる構成としたり、可撓性を有する弾性体を備え、該弾性体により付着物を分離させる構成としたりしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ダクト清掃装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図3】ブラシの1巻き分がダクトの内壁に沿って1周公転したときの軌跡を示す図である。
【
図4】X-Y平面上に展開したブラシの傾斜を示す図である。
【
図5】ブラシが公転しつつ自転したときの軌跡をX-Y平面上に展開したときの図である。
【
図6】一般化した式に基づいてブラシの軌跡を推定した図である。
【
図7】公転数とブラシの移動距離に関するグラフである。
【
図8】公転数とブラシの移動距離に関するグラフである。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明者らは、ダクト内に付着した油塵の清掃において、ブラシを利用した清掃に着目した。そして、ブラシを利用した清掃試験を繰り返すことにより、ブラシの油塵に対する清掃性能への影響に関して確認した。その結果、油塵の付着した清掃面に対し、ブラシの接触と非接触とが多く繰り返すほど清掃性能がより向上し、またブラシの表面積が大きいほど吸着性能が高くなるとの知見を得た。
【0010】
[ダクト清掃ロボットの概略構成]
図1は、ダクト清掃装置1の一実施形態を示す概略構成図である。本実施形態に係るダクト清掃装置1は、断面形状が円形の所謂円形ダクト、スパイラルダクト等を清掃対象とされる。
図1に示すように、ダクト清掃装置1は、概略、清掃部2と、清掃部2を駆動する駆動部5(駆動手段)とを備える。
【0011】
清掃部2は、ダクト8の内壁(内周面)8aに付着した付着物を、内周面8aから分離させる清掃体と、清掃体を回転(自転)させながらダクト8の内周面を円周方向に沿って移動可能とする機構部20とを備える。本実施形態では、清掃体をブラシ10とし、機構部20がブラシ10自身を回転(自転)させながらダクト8の内周面を円周方向に沿って移動可能とするものとして説明する。
【0012】
転軸周りに放射状に延長する繊維群
ブラシ10は、例えば、棒状の芯部材12を軸とし、その外周に放射状に延長する繊維群14を備える。本実施形態では、繊維群14は、列をなして芯部材12の外周において螺旋状に連続するように設けられる。繊維群14を構成する繊維には、弾性係数が小さいナイロン製ブラシが好適とされる。
【0013】
機構部20は、ブラシ10自身を当該ブラシ10の軸周りに回転(自転)させながら、繊維群14を構成する回転軸周りに放射状に延長する各繊維の先端がダクト8の内周面8aに押し付けられた状態を維持しつつ、円周方向に沿って移動(公転)を可能とする。機構部20は、例えば、遊星歯車機構を利用することにより、前記ブラシ10の動作を実現することができる。
【0014】
本実施形態で利用される遊星歯車機構は、太陽歯車22、太陽歯車22の周りを自転しつつ公転する遊星歯車24、太陽歯車22に対して遊星歯車24を保持する遊星キャリア26及び補助キャリア28で構成することができる。
【0015】
太陽歯車22は、例えば、後述の駆動部5において不動の部位に固定され、ブラシ10を自転及び公転をさせるための駆動力が入力される主軸30が貫通可能とされる。即ち、太陽歯車22は、主軸30の回転と供回りしないように設けられる。
【0016】
遊星歯車24は、遊星キャリア26に保持され、太陽歯車22と噛み合った状態で太陽歯車22の外周を回転可能に設けられる。遊星キャリア26は、主軸30に固定され、主軸30と共に回転可能とされ、遊星歯車24に対しては回転自在に支持する。
【0017】
遊星歯車24には、ブラシ10を構成する芯部材12の一端側が固定される。この固定において、ブラシ10の芯部材12は、遊星歯車24の回転中心線と軸線が同軸とされ、遊星歯車24と共に回転する。
【0018】
補助キャリア28は、主軸30の他端側に取り付けられる。補助キャリア28は、遊星キャリア26と同期して回転するように主軸30に固定して取り付けられる。また、補助キャリア28は、ブラシ10の芯部材12の軸線と、主軸30の軸線との平行状態を維持するように、芯部材12の他端側を回転自在に支持する。
【0019】
駆動部5は、太陽歯車22が貫通する主軸30の一端側に接続される。
駆動部5は、例えば、モーター50と、モーター50の回転を減速する減速機構52とを備える。モーター50には、例えば、回転状態を制御しやすいステッピングモーター等を用いることができる。また、減速機構52には、例えば、入力軸と出力軸とを同軸上に配置することができる遊星歯車機構を利用することができる。
駆動部5は、モーター50の図外の回転出力軸を減速機構52の入力側と連結し、減速機構52から突出する出力軸53をカップリング54を介して遊星キャリア26と連結される。
【0020】
上記構成によれば、モーター50を駆動することにより、減速機構52を介して遊星キャリア26が回転する。遊星キャリア26の回転は、遊星歯車24を太陽歯車22の外周に沿って回転させると共に、遊星歯車24と太陽歯車22との噛み合いによって遊星歯車24自体を回転させる。
【0021】
図2は、ダクト清掃装置1の動作を示す図であって、
図2(a)~(d)は、機構部20の作用により、ブラシ10が自転しつつダクト8の内壁8aに沿って90°回転する毎、移動したときの様子を示している。なお、各
図2(a)~(d)には、主軸30の軸線に沿う断面図、及び、補助キャリア28側からの軸方向視した平面図が示してある。各
図2(a)~(d)における補助キャリア28側からの軸方向視を示す図中の矢印Aは、主軸30の回転方向を示し、矢印Bは、ブラシ10の自転方向を示している。
【0022】
ブラシ10は、補助キャリア28側から軸方向視したときに、主軸30が右に回転することにより、右に回転する。また、主軸30が左に回転する場合には、ブラシ10も同じく左に回転することとなる。本実施形態では、補助キャリア28側から軸方向視したときに、主軸30が右に回転し、ブラシ10も同じ右に回転するものとして説明する。
【0023】
以下、ブラシ10について詳説する。ブラシ10は、
図2の(a)→(b)→(c)→(d)→(a)と、太陽歯車22の外周を一周公転したときに毛先14Aにより描かれる軌跡の直径が、清掃対象となるダクト8の内径以上となるように構成すると良い。
【0024】
つまり、ダクト清掃装置1をダクト8内に配置し、モーター50を駆動することにより、ブラシ10は、繊維群14がダクト8の内壁8aに摺接するように接触した状態を維持しつつ、ダクト8の内壁8aを円周方向に沿って移動しながら自転する。
【0025】
このようにブラシ10が公転しつつ自転することにより、繊維群14が油塵の付着した清掃面に対し、接触と非接触を繰り返すことにより、ダクト8の内壁8aに付着した油塵を、ブラシ10によって除去することができる。
【0026】
補助キャリア28側を前側、遊星キャリア26側を後側とした場合、ブラシ10において繊維群14が描く螺旋が、前側から後側に向けて回転方向に沿って延長する螺旋とすることにより、除去された油塵を繊維に付着させて、ブラシ10の後側へと送ることができる。そして、この後方へと送られた油塵を、例えば、ブラシ10の後側に回収手段を設けることにより、回収することができる。
【0027】
また、ダクト清掃装置1のダクト内における移動を可能とする移動手段により、ダクト清掃装置1を前側に移動させることにより、ダクト8内の油塵を除去しつつ、ブラシ10の後側に設けた回収手段により回収し、ダクト8を自動的に清掃することができる。即ち、人手によらず、また、時間を気にすることなく、ダクト8を定期的に清掃することが可能となる。
【0028】
例えば、前述のダクトに対してダクト清掃装置1を配置するときに、主軸30の中心軸をダクトの中心線に一致させることで、ダクトの内壁8aを円周方向に均一に清掃することができる。
【0029】
上記ダクト清掃装置1を用いてダクト内を清掃する場合について説明する。例えば、
ダクト清掃装置1が所定の速度で移動しながら、前述の螺旋状のブラシ10がダクト8の内壁8aの全面に隙間なく接触するように清掃することで、最も効率良く清掃可能となる。
【0030】
図3は、ブラシ10の1巻き分が、ダクト8の内壁8aに沿って1周公転したときの軌跡を示す図である。
図3に示すように、ダクト8の内壁8aを円筒形状とし、A-A’で切断し、ダクト8の内壁8aに沿って1周公転したときの軌跡をX-Y平面として展開して示した図である。ここで、X軸はダクト8の軸方向、Y軸はダクト8の内壁8aの円周方向に対応する。X軸は、長さ(位置)[m]、Y軸は、ブラシ10が公転したときのダクト8の内壁8aの円周方向の角度θ [rad] (0≦θ≦2π)である。
【0031】
また、ブラシ10が内壁8aを1周するときの1巻き分の軌跡の本数c[-]は、c=(Z1/Z2)×jとして示すことができる。以下この式を(式3.1)という。ここで、Z1は、太陽歯車22の歯数、Z2は、遊星歯車24の歯数である。また、jは、ブラシ10の繊維群14により形成される螺旋の数であり、例えば、2重螺旋の場合にはj=2、3重螺旋の場合にはj=3等となる。
【0032】
図4は、X-Y平面上に展開したブラシの傾斜を示す図である。
図5は、ブラシが公転しつつ自転したときの軌跡をX-Y平面上に展開したときの図である。
例えば、各軌跡に番号δ(δは、1以上の自然数)として付し、軌跡のx軸方向の座標を、軌跡の番号δを添え字としてxδ等と表す。
図4,5に示すように、最初に描かれる軌跡1は、X-Y平面において、始点が(0,0)終点が(±p+vΔt/c,2π/c)である。
したがって、軌跡1は、x1=[(±p+vΔt/c)/(2π/c)]×yとして表される。但し、0≦y<2π/cである。
なお、pは、ブラシにおける繊維群14の螺旋方向が左周りで、ブラシが右回りに自転と公転をする場合には、正の値、ブラシにおける繊維群14の螺旋方向が左周りで、ブラシが左回りに自転と公転をする場合には、負の値となる。
【0033】
次に、2番目に描かれる軌跡2は、
図5に示すように、ブラシ10が2π/c≦y<4π/cまで公転するときに、(vΔt/c,2π/c)を始点として描かれる。また、ブラシ10が1公転すると、Y座標が2π[rad]を超えると0[rad]へと戻る。
【0034】
以上を踏まえると、ブラシ10の毛先14Aが内壁8aに描く軌跡は、
xδ=(±cp+vΔt)/2π{y-(δ-1)2π/c}+(δ-1)vΔt/cによりとして一般化される。但し、(δ-1)2π/c<y<δ2π/cである。
【0035】
図6は、一般化した式に基づいてブラシの軌跡を推定した図である。
図6に示すように、X方向において隣り合う軌跡δは、ブラシ10が1周公転する間に、ブラシ10の毛先14Aが描く軌跡の本数が自然数となる場合、1公転毎の軌跡の終点の角度は、y=δ(2π/c)=2πとなる。
隣り合う軌跡の間隔は、y=θ、y=θ+2πのx座標をそれぞれα、
α’とすると, X座標間隔Wθは、Wθ=α’-α=vΔtとなる。但し、cは自然数である。
即ち、螺旋の傾斜角度によらず、軌跡の間隔は一定となる。例えば、任意の位置におけるA-A’上を通過するブラシのX座標の間隔を決定すれば、ダクト全体における軌跡の間隔を決定することができる。
【0036】
図7は、公転数とブラシ10の移動距離に関するグラフである。
例えば、M巻きのブラシ10を用いてダクト内を清掃するとする。ダクト8の内壁8aに接するブラシ10の毛を進行方向先頭から毛番号m=1,2,…,M、ピッチ幅p[m]を単位清掃幅と定義する。長さ(M-1)pのブラシ10が、単位清掃幅x=pを通過するまでにN回公転する時の、Y軸を公転数y[-]、X軸をブラシ10の移動距離X[m]とした。
図7に示すように、各毛の一次関数直線と公転数y=n(n=1,2,3,…)との交点のx座標は、A-A’直線上をブラシ10が通過した位置を示している。
したがって、m番目の毛が清掃するA-A’上のx軸方向の座標は、x=(Mp/y)y-(m-1)pにより算出される。そして、この式により得られたx座標の間隔がブラシ10の毛幅hより小さい場合に隙間なく清掃できる。毛幅hとは、繊維群14が螺旋状に延長するときの幅をいう。
【0037】
図8は、公転数とブラシ10の移動距離に関するグラフである。
次に、ブラシ10の軌跡間隔を踏まえた上で、毛先14Aが通過する座標を制御するため、ダクト8の全てにブラシ10が接触する回転速度と並進速度について考える。
ブラシ10が単位清掃幅を通過する時間Tは、T=mp/vで表される。
また、時間Tの間にブラシ10が公転する回数Nは、N=Tω/2πで表される。
そして、これらの式から時間Tを消去することで、並進速度vと回転速度ωの関係では、v=(mp/2πN)ωが得られる。
以上より、ブラシ10の螺旋のピッチ、毛幅、巻き数に基づいてダクト8内をブラシ10が隙間なく擦ることを可能とする並進速度と回転速度を設定することが可能となる。
【0038】
なお、上記実施形態では、ブラシ10における繊維群14の形態を螺旋状として説明したが、これに限定されない。例えば、繊維群14は、芯部材12の外周の全域に繊維を設けたものであっても良く、また、芯部材12の延長方向に沿うように複数の繊維で構成された列からなる繊維群を円周方向に均等、不均等な間隔で設けたものであっても良い。また、前述の螺旋状とは、等ピッチ、不等ピッチの螺旋、2重螺旋、3重螺旋等の意味を含む。
【0039】
また、上記実施形態では、ブラシ10をダクト8の内壁8aに沿って公転させながら自転させる機構を、公転方向に沿うように自転させるものとして構成したが、例えば、公転方向に逆らうように逆向きにブラシを自転させるように遊星歯車機構を構成しても良く、また、それらを組み合わせても良い。
【0040】
また、ブラシ10の数量は、上述の1つに限定されず、2つ以上としても良い。この場合、利用したいブラシ10の数量に応じて太陽歯車22の外周を公転する遊星歯車を設ければ良い。
【0041】
上述のように、ダクト8の内周面8aからの粘性の高い油塵の分離に清掃体としてブラシ10を用いると好適であるとして説明したが、ブラシ10に代えて、清掃体としてスポンジやゴム等の可撓性を有する弾性体を用い、この弾性体により付着物をダクト8の内周面8aから分離するようにしても良い。
【0042】
また、素材の異なる清掃体を複数用いるようにしても良い。例えば、自転軸の軸方向に素材の異なる清掃体を複数設けたり、素材の異なる清掃体を組み合わせて設けるようにしても良い。
【0043】
したがって、上記構成の清掃装置1がダクト8の延長方向に沿う直線部分や曲管部分を含む移動を可能とする移動手段(駆動源)を備えた構成とすることにより、ダクト8の清掃を容易とすることができる。
例えば、移動手段は、清掃体の公転中心が清掃対象である管体の中心線に沿って移動するように構成するとより良い。
【符号の説明】
【0044】
1 ダクト清掃装置、10 ブラシ、12 芯部材、14 繊維群。