(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183499
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】杭打機
(51)【国際特許分類】
E02D 7/16 20060101AFI20231221BHJP
E04G 1/20 20060101ALI20231221BHJP
E04G 3/28 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
E02D7/16
E04G1/20 A
E04G3/28 301Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097044
(22)【出願日】2022-06-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 愛斗
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 隆明
【テーマコード(参考)】
2D050
2E003
【Fターム(参考)】
2D050CB03
2D050EE14
2D050EE29
2E003AA01
2E003AB01
2E003AC02
2E003AC03
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構成で作業台昇降を行うことが可能な作業台昇降装置を備えた杭打機を提供する。
【解決手段】杭打機に備わる振止装置23は、ベース部材29に一対の振止部材28が開閉可能に設けられるとともに、リーダ15の前面に設けられたラックギヤ24に噛合するピニオンギヤと、該ピニオンギヤを駆動する振止装置昇降モータとを有する振止装置昇降機構を介して作業装置の高さ位置よりも下方で昇降可能に設けられ、一対の振止部材28は、ベース部材29に設けられた上部旋回体幅方向一対の回動ピン41を中心として、回動端同士が接近した閉じ状態と、離反した開き状態とに回動可能に形成され、ベース部材29には、作業台27を取り付けてその床下空間Sに開き状態の振止部材28を位置させる作業台取付部30が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラを備えた下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダの前面に沿って昇降可能な作業装置と、前記上部旋回体の幅方向一側部に設けられた運転室とを備え、前記リーダの前面には、前記作業装置によって回転駆動される施工部材の振れを防止する振止装置が設けられている杭打機において、
前記作業装置は、前記リーダの前面に設けられたラックギヤに噛合するピニオンギヤと、該ピニオンギヤを駆動する作業装置昇降モータとを有する作業装置昇降機構を介して昇降可能に設けられ、
前記振止装置は、ベース部材に一対の振止部材が開閉可能に設けられるとともに、前記ラックギヤに噛合するピニオンギヤと、該ピニオンギヤを駆動する振止装置昇降モータとを有する振止装置昇降機構を介して前記作業装置の高さ位置よりも下方で昇降可能に設けられ、
前記一対の振止部材は、前記ベース部材に設けられた上部旋回体幅方向一対の回動軸を中心として、回動端同士が接近した閉じ状態と、離反した開き状態とに回動可能に形成され、
前記ベース部材には、作業台を取り付けてその床下空間に前記開き状態の振止部材を位置させる作業台取付部が設けられていることを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記作業台取付部は、上部旋回体幅方向における前記運転室と前記作業台との位置関係を互いに整合させてなることを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項3】
前記作業台取付部は、水平方向に挿抜可能な取付ピンを有するピン結合構造からなることを特徴とする請求項1又は2記載の杭打機。
【請求項4】
前記作業装置と前記振止装置との相対距離が一定値以内に近づいたときに、近づく方向の動作を規制する非常停止手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の杭打機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、リーダに沿って作業台を昇降させる作業台昇降装置を備えた杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、杭打機には、補助作業を行うための付帯装置として、リーダに沿って作業台を昇降させる作業台昇降装置が備えられ、作業台に搭乗した作業者がオーガなどの作業装置の取付けや取外し、修理、点検、若しくはロッド又はスクリューなどの継ぎ足し及びこれらの誘導などが行えるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の作業台昇降装置は、構成部品(例えばガイドレール)を取り付けるための広いスペースを要することから、主にリーダ断面の大きい三点式杭打機のような大型のものに採用されている。一方、こうした作業台昇降装置を小型のものに採用できれば有効であるが、スペース的に難しく、ロッドやスクリューを接続する高所作業を行う場合、現状では、リーダ側面のラダーを使用するか、別途、専用の足場を作るほかなく、作業負担や作業コストの増大を招くものであった。
【0005】
そこで本発明は、コンパクトな構成で作業台昇降を行うことが可能な作業台昇降装置を備えた杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、クローラを備えた下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダの前面に沿って昇降可能な作業装置と、前記上部旋回体の幅方向一側部に設けられた運転室とを備え、前記リーダの前面には、前記作業装置によって回転駆動される施工部材の振れを防止する振止装置が設けられている杭打機において、前記作業装置は、前記リーダの前面に設けられたラックギヤに噛合するピニオンギヤと、該ピニオンギヤを駆動する作業装置昇降モータとを有する作業装置昇降機構を介して昇降可能に設けられ、前記振止装置は、ベース部材に一対の振止部材が開閉可能に設けられるとともに、前記ラックギヤに噛合するピニオンギヤと、該ピニオンギヤを駆動する振止装置昇降モータとを有する振止装置昇降機構を介して前記作業装置の高さ位置よりも下方で昇降可能に設けられ、前記一対の振止部材は、前記ベース部材に設けられた上部旋回体幅方向一対の回動軸を中心として、回動端同士が接近した閉じ状態と、離反した開き状態とに回動可能に形成され、前記ベース部材には、作業台を取り付けてその床下空間に前記開き状態の振止部材を位置させる作業台取付部が設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、前記作業台取付部は、上部旋回体幅方向における前記運転室と前記作業台との位置関係を互いに整合させてなることを特徴としている。さらに、前記作業台取付部は、水平方向に挿抜可能な取付ピンを有するピン結合構造からなることを特徴としている。加えて、前記作業装置と前記振止装置との相対距離が一定値以内に近づいたときに、近づく方向の動作を規制する非常停止手段を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の杭打機によれば、リーダの前面に設けたラックギヤが作業装置の昇降用の他に振止装置の昇降用として用途を兼ね、振止装置のベース部材に対し、作業台を取り付けてその床下空間に開き状態の振止部材を位置させる作業台取付部を設けているので、小型杭打機であっても、既設の昇降機構を流用してリーダに沿った高所位置への移動が行えるようになる。すなわち、昇降式の振止装置に作業台を取り付けるだけの簡単な構成で、作業装置に近づいて行う高所作業が安全かつ容易に達成できる。とりわけ、作業台の配置を振止部材の開き動作に対して高さ方向に避けたので、作業台と施工部材との水平間距離を離すことなく作業台の位置を確保でき、その上、リーダに対する作業台の独立性を高めたことで作業台自体のサイズも小さくできることから、コンパクトで実用的な杭施工用作業台昇降装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の杭打機の一形態例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至
図6は、本発明の杭打機を示す図である。杭打機11は、
図1及び
図2に示すように、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持する起伏シリンダ16とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート17が設けられ、上部旋回体13の幅方向(
図2の上下方向)一側部(右側部)には、オペレータが搭乗して運転操作を行う運転室18が、他側部(左側部)には、油圧を発生させる動力部(エンジンパワーユニット)19がそれぞれ設けられている。さらに、上部旋回体13の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ20が設けられるとともに、上部旋回体13の後端部に杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト21が搭載されている。
【0011】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を連結したもので、各リーダ部材は、上下端のフランジ部材によって連結され、ボルト・ナットを使用して着脱可能に構成されている。また、リーダ15の上端部には、吊上げ用ロープが巻掛けられるトップシーブ(図示せず)が、下部前方には、回転駆動される施工部材22の振れを防止する開閉可能な振止装置23が備えられており、リーダ15の前面中央には、ラックピニオン式昇降機構(作業装置昇降機構)の構成品の一つであるラックギヤ24が、両側面前端部には、左右一対のガイドパイプ25,25が、リーダ15の全長に亘ってそれぞれ連続的に設けられている。
【0012】
作業装置の一例であるオーガ26は、リーダ15のガイドパイプ25,25に摺接する左右一対のガイドギブ26a,26aが後方に突出して設けられるとともに、ラックギヤ24の両側に設けられている歯列に歯合する左右一対で上下複数段のピニオンギヤ(図示せず)を対応する複数のオーガ昇降モータ(油圧モータ)26bでそれぞれ回転駆動させることにより、リーダ15の前面に沿って昇降可能になっている。
【0013】
杭打機11を地盤改良の目的で使用する場合には、施工部材22として中空ロッドが使用される。中空ロッドは、オーガ26のギヤケース26cを貫通して取り付けた状態で、左右一対のオーガ駆動モータ(油圧モータ)26d,26dの駆動を受けて回転され、上端がオーガ26の上方でスイベル(図示せず)と連結されるとともに下端が掘削ヘッド(図示せず)と連結される。これにより、中空ロッドを回転させながら、中空ロッドを通じて掘削ヘッドの先端から噴射したセメントミルクなどの地盤改良剤が地盤内に注入される。
【0014】
一方、杭打機11を鋼管埋設の目的で使用する場合には、施工部材22として鋼管杭が使用される。鋼管杭は、ギヤケース26cの出力軸の下端にロッドキャップ(図示せず)を介して連結され、オーガ駆動モータ26d,26dの駆動を受けて、ロッドキャップを回転させながらオーガ26を下降させることにより地中に圧入される。なお、
図1に表される施工部材22は、中空ロッド(例えば長さ5m)である。中空ロッドを継ぎ足す場合は、トルク伝達性に優れた断面六角形状の雄型及び雌型の継手22a,22bを互いに嵌め込み、水平方向に2本の連結ピンを差し込んで連結される。
【0015】
ところで、施工部材22を継ぎ足すための補助作業は、通常、高所作業となる。この場合、足場が必要になるから、リーダ15の側面に設けられているラダー15aに登るか、別途、高所作業車の使用が求められる。そこで、こうした作業負担や作業コストを低減すべく、杭打機11には、補助作業を行うための付帯装置として、リーダ15に沿って作業台27を昇降させる作業台昇降装置が備えられている。作業台昇降装置は、主に、昇降機能を備えた振止装置23をそのまま使用することで、作業台27に昇降のための動力を取得させ、必要に応じて振止装置23から作業台27それ自体を分離可能な着脱式としたものである。
【0016】
振止装置23は、
図3乃至
図6に示すように、オーガ26の昇降と同様にラックピニオン式の振止装置昇降機構を有するとともに、施工部材22の支持構造、すなわち、施工部材22を支持する振止部材28と、該振止部材28が設けられるベース部材29と、後述する作業台取付部30とを備えている。
【0017】
ベース部材29は、図示は省略するが、内側面に左右一対の振止装置昇降モータ(油圧モータ)が取り付く基板29aを有して箱状に形成され、上部旋回体13の幅方向(
図4の上下方向)一側部(右側部)には、上板29bを張り出して形成した作業台支持部31が、他側部(左側部)には、油圧系の付属品支持部32がそれぞれ設けられている。各支持部31,32は、必要な強度・剛性が確保されたブラケット構造を有している。また、基板29aにおける振止装置昇降モータが配置された前面側とは反対の後面側には、リーダ15のガイドパイプ25,25に摺接する左右一対のガイドギブ33,33が後方に突出して設けられている。
【0018】
このような振止装置昇降機構を備えた振止装置23は、ラックギヤ24の両側に設けられている歯列に歯合する左右一対のピニオンギヤ34,34を振止装置昇降モータで回転駆動することで、オーガ26の高さ位置よりも下方において、リーダ15の前面に沿って昇降可能になっている(
図1)。これを、昇降系の油圧回路図を参照しながら説明する。
【0019】
図6に示されるように、上部旋回体13に備えられた油圧取出口(インポート及びアウトポートとなる接続口)35に配管接続した状態で、昇降操作弁(昇降SOL)36に操作信号が入力されると、上昇及び下降のいずれかの操作パイロット圧を得て方向切換弁37が切り替わり、油圧源(メインポンプ)からの作動油の供給油路P及び作動油タンクへの排出油路Tと、振止装置昇降モータL,R(油圧モータ38,38)の流入・流出側(ABポート)との間の油路を連通させて作動油の給排が行われる。このとき、互いに並列で油路が接続された2個の油圧モータ38,38は、負荷圧が均一に作用し、同量の圧油で各ピニオンギヤ34,34の回転駆動を円滑に行わせる。
【0020】
また、作動油の給排を開始すると、油路に介設した昇降油圧停止弁(ロードホールディング弁)39が機能し、振止装置昇降モータL,Rに制動力を付与するためのネガブレーキ機構40,40を作動させる。つまり、作動圧がネガブレーキ機構40,40に作用して振止装置昇降モータL,Rへの制動力が解除され、これにより、油圧モータ38,38の回転が許可される。一方、作動油の給排を終了すると、昇降油圧停止弁39に備わる逆流防止機能によって油圧モータ38との間の油路が閉塞し、油圧封止状態となり、同時に作動圧の低下によってネガブレーキ機構40が作動前の状態に復帰し、振止装置昇降モータL,Rに機械的な制動力が付与される。こうして、昇降停止状態では、昇降油圧停止弁39と2つのネガブレーキ機構40,40とからなる3重の停止保持機能が発揮される。
【0021】
振止部材28は、上部旋回体幅方向(左右方向)に対をなす略対称形状を有し、基端部がベース部材29の前端部に設けられた上部旋回体幅方向一対の回動ピン(回動軸)41,41に軸支され、これにより、鉛直方向の回動ピン41,41を中心として、回動端(先端)同士が接近した閉じ状態(
図4の実線)と、離反した開き状態(
図4の想像線)とに水平回動可能に形成されている。そして、閉じ状態で先端部に固定ピン42が挿入されて一体となり、逆に、開き状態では、ベース部材29の上板29bと上下重なる部分に係止ピン43,43を挿入することで、両方とも定位置に保持される。
【0022】
また、振止部材28は、互いに内側が開口した箱状に形成され、閉じ状態で施工部材22の外径よりも広径な円形になるように、内側開口部(施工部材挿通部)には、略半円状の切欠き28a,28aが形成されている。これにより、施工部材22が回転可能かつ摺動可能に支持される。さらに、振止部材28の内部には、図示は省略するが、施工部材22を把持して固定する固定手段を配置しており、固定手段を構成する左右一対のチャックブロックを対向配置している。加えて、振止部材28の先端部外側面には、チャックブロックを開閉駆動するための左右一対の油圧シリンダ44,44が設けられている。これにより、油圧シリンダ44,44を作動してチャックを行えば、施工部材22が数トンの重量物であっても安定して把持できるようになっている。
【0023】
作業台取付部30は、作業台支持部31の上板29bの上面に固着される4つの板状部材であって、板片30aを2つ一組で左右間隔をあけて対面させ、これを前後2列に配置したものである。対面する板片30a,30aのそれぞれには、
図5に示すように、ピン結合構造の要素として、水平方向に挿抜可能な取付ピン45のピン孔30bが設けられている。作業台27の床下に設けられたピン挿通部46を板片30a,30a同士の間に重ね入れ、その重合部に取付ピン45を挿通して作業台27を取り付けると、作業台27の床下空間Sには、開き状態の振止部材28の一方側(右側)が位置される。また、取付状態では、振止装置23と作業台27との互いの前端位置が平面視でほぼ等しく、さらに、運転室18と作業台27との互いの位置関係が上部旋回体幅方向において一方側(右側)に整合した状態(右側整合状態)となる(
図2,
図4)。
【0024】
作業台27は、安全規格に準拠した形状を有し、形鋼で矩形枠状に組まれた床フレーム27aの上面に床材27bとしてエキスパンドメタルが固着されている。床フレーム27aは、足場としての強度が確保され、補強を兼ねる梁材46aと、左右の梁材46a,46a同士の間に設けられた2本のパイプ材46b,46bとからなる溶接構造によってピン挿通部46が形成されている。これにより、パイプ材46bの内部に取付ピン45の先端を挿入した後は、取付ピン45の把手45aを掴んで押すだけの片手作業でピン結合を済ませることができる。
【0025】
また、作業台27の周縁部には、床フレーム27aの長さに対応して前後に延びる外側手摺27cと、該外側手摺27cの反対側かつその半分の長さで後縁部の乗降口に整合した内側手摺27dと、前縁部に整合した前部側手摺27eとが設けられている。外側手摺27cと内側手摺27dとの支柱間には、作業者の乗降時のみ開放されるチェーン47が取り付けられている。また、内側手摺27dと前部側手摺27eとの支柱間には、作業者の作業時のみ開放されるチェーン48が取り付けられている。
【0026】
このように形成した杭打機11を使用して、現場で施工部材(例えば中空ロッド)22を組み立てる際は、吊上げ用ロープで施工部材22を起立させた状態とし、地上付近で振止装置23を閉じて固定する。そして、作業台27に作業者が搭乗した後、振止装置23と作業台27とを一体で上昇させ、作業者を施工部材22の連結作業が可能な高さ位置に移動させる。このとき、杭打機11のオペレータと作業台27の作業者との間で、安全確認のための意思疎通が図られる。
【0027】
ここで、
図1に示すように、オーガ26と振止装置23との相対距離Lは、オペレータの運転操作によって適宜調整されるものであるが、それには作業者の的確な合図を要する。しかしながら、雨天時や夜間などの現場では、互いに離れた位置相互間での意思の疎通が良好に図れない(合図が伝達できない)事態も起こり得る。そこで、杭打機11には、オーガ26と振止装置23との相対距離Lが一定値以内に近づいたときに、近づく方向の動作を規制する非常停止手段が備えられている。
【0028】
非常停止手段は、例えばレーザ方式の距離センサが用いられる。距離センサで測定されたデータ(距離情報)は、運転室18のコントローラに送信される。そして、コントローラは、相対距離Lが設定された値(例えば作業内容に基づいて定められる距離)以内に近づいたときに、オーガ26の下降及び振止装置23の上昇のいずれの動作も油圧的な制御(例えば昇降操作弁36を中立に制御する)で規制し、逆方向に離れる動作、つまり、オーガ26の上昇及び振止装置23の下降のみ許可する。こうして、両者が近づきすぎない安全な足場を得た作業者は、施工部材22の上端部において、雄型及び雌型の継手22a,22bを互いに嵌め込む連結作業が行えるようになる。
【0029】
このように、本発明の杭打機11によれば、リーダ15の前面に設けたラックギヤ24が作業装置26の昇降用の他に振止装置23の昇降用として用途を兼ね、振止装置23のベース部材29に対し、作業台27を取り付けてその床下空間Sに開き状態の振止部材28を位置させる作業台取付部30を設けているので、小型杭打機であっても、既設の昇降機構を流用してリーダ15に沿った高所位置への移動が行えるようになる。すなわち、昇降式の振止装置23に作業台27を取り付けるだけの簡単な構成で、作業装置26に近づいて行う高所作業が安全かつ容易に達成できる。とりわけ、作業台27の配置を振止部材28の開き動作に対して高さ方向に避けたので、作業台27と施工部材22との水平間距離すことなく作業台27の位置を確保でき、その上、リーダ15に対する作業台27の独立性を高めたことで作業台27自体のサイズも小さくできることから、コンパクトで実用的な杭施工用作業台昇降装置が実現できる。
【0030】
また、作業台取付部30が上部旋回体幅方向における運転室18と作業台27との位置関係を互いに整合させているので、運転室18のオペレータと作業台27の作業者との間の意思疎通が容易に行え、オペレータの誤操作を防止して作業者の安全を確保することができる。さらに、作業台取付部30が水平方向に挿抜可能な取付ピン45を有するピン結合構造からなるので、施工の目的や条件に応じて作業台27の取付けや取外しが行え、その作業も容易に行うことができる。加えて、作業装置26と振止装置23との相対距離Lが一定値以内に近づいたときに、近づく方向の動作を規制する非常停止手段を備えているので、作業者の安全をより高めることができ、もって杭施工現場の作業環境向上に資するものとなる。
【0031】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、作業台取付部は、作業台の取付位置を確定させる構成であればよく、ピン結合だけでなくボルト止めなども採用できる。また、作業台の構成や配置も任意であり、2名が搭乗できるように床面積を大きくしたり、オペレータと会話が可能な通信手段を設けたりするなど、各種装置の仕様や作業条件などに応じて適宜変更を加えることができる。さらに、非常停止手段に用いられるセンサはリミットスイッチなどの接触式のものであってもよく、作業者が自ら操作できる停止ボタン、停止バーなどを併用して種々の挟まれ防止対策を講じることができる。
【符号の説明】
【0032】
11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、15a…ラダー、16…起伏シリンダ、17…リーダサポート、18…運転室、19…動力部、20…ジャッキ、21…カウンタウエイト、22…施工部材(中空ロッド)、22a,22b…継手、23…振止装置、24…ラックギヤ、25…ガイドパイプ、26…オーガ、26a…ガイドギブ、26b…オーガ昇降モータ、26c…ギヤケース、26d…オーガ駆動モータ、27…作業台、27a…床フレーム、27b…床材、27c…外側手摺、27d…内側手摺、27e…前部側手摺、28…振止部材、28a…切欠き、29…ベース部材、29a…基板、29b…上板、30…作業台取付部、30a…板片、30b…ピン孔、31…作業台支持部、32…付属品支持部、33…ガイドギブ、34…ピニオンギヤ、35…油圧取出口、36…昇降操作弁、37…方向切換弁、38…油圧モータ、39…昇降油圧停止弁、40…ネガブレーキ機構、41…回動ピン、42…固定ピン、43…係止ピン、44…油圧シリンダ、45…取付ピン、45a…把手、46…ピン挿通部、46a…梁材、46b…パイプ材、47,48…チェーン