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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001835
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】高性能パワー集積回路半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20221226BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20221226BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20221226BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20221226BHJP
   H01L 21/76 20060101ALI20221226BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
H01L29/78 655F
H01L29/78 653A
H01L29/78 652T
H01L29/78 652P
H01L29/78 655B
H01L29/78 655D
H01L29/78 655A
H01L29/78 652N
H01L29/78 652R
H01L29/78 658K
H01L29/78 656A
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122654
(22)【出願日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2021102740
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】509260466
【氏名又は名称】菅原 良孝
(72)【発明者】
【氏名】菅原 良孝
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高耐圧大電流出力用縦型逆導通半導体素子を搭載できる大電力容量パワー集積回路半導体装置の構造及びその低損失化や小チップ面積を達成し、且つ、逆導通半導体素子特有のスナップバック現象とSiC半導体を用いた場合に特有のオン電圧劣化とを解消して高信頼性を達成できる高耐圧大電流パワー集積回路半導体装置を提供する。
【解決手段】パワー集積回路半導体装置チップ100は、誘電体分離型集積回路構造を採用し、渡り配線116下の厚い絶縁保護膜のかなりの部分をチップ本体の表面下に埋め込み絶縁膜106として形成し、渡り配線116直下に表面キャリア濃度低減電界緩和領域(SCaDFRR121)を設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体絶縁分離型集積回路半導体装置であり、その半導体チップ本体は分離領域に誘電体絶縁分離膜を介して単結晶島が敷き詰められて構成されており、単結晶島の側面は半導体チップ本体の表面に対し結晶方位で定まる所定の角度を有しており、単結晶島内の集積回路構成素子は他の単結晶島内の集積回路構成素子と半導体チップ本体表面上の表面絶縁保護膜上に設けた配線により結線されている集積回路半導体装置において、
半導体チップ本体の分離領域と誘電体絶縁分離膜とチャネルストッパーの上を渡る配線部分を渡り配線と定義するとき、集積回路半導体装置の電力容量の大きい構成素子は、渡り配線下のチャネルストッパー層表面に表面キャリア濃度低減電界緩和領域(SCaDFRR)を設けられていることを特徴とする集積回路半導体装置。
【請求項2】
〔請求項1〕において、前記チャネルストッパーが傾斜チャネルストッパーであり、その表面の前記表面キャリア濃度低減電界緩和領域(SCaDFRR)と前記チップ本体の表面との間に厚い埋込絶縁保護膜を設けており、この厚い埋込絶縁保護膜はチップ本体の表面上の前記表面絶縁保護膜に接していることを特徴とする集積回路半導体装置。
【請求項3】
誘電体絶縁分離型集積回路半導体装置であり、その半導体チップ本体は分離領域に誘電体絶縁分離膜を介して単結晶島が敷き詰められて構成されており、単結晶島の側面は半導体チップ本体の表面に対し結晶方位で定まる所定の角度を有しており、単結晶島内の集積回路構成素子は他の単結晶島内の集積回路構成素子と半導体チップ本体上の表面絶縁保護膜を介して配線により結線されている集積回路半導体装置において、
前記誘電体絶縁分離型集積回路半導体装置の前記半導体チップ本体が、前記分離領域に前記集積回路構成素子を含む前記単結晶島が敷き詰められて構成された素子集積基板と、前記素子集積基板の支持機能もしくは支持機能と導電路機能の両方を含む素子支持基板とを重ねて構成されており、
前記集積回路半導体装置の電力容量の大きい構成素子は、単結晶島の島底の前記誘電体絶縁分離膜が削除された単結晶島内に形成された主機能部が、この主機能部に接続して前記素子集積基板内に形成されたドレインもしくはコレクタを介して前記素子支持基板の導電路と接続されて縦型半導体素子として構成されていることを特徴とする集積回路半導体装置。
【請求項4】
〔請求項3〕において、前記電力容量の大きい構成素子の前記主機能部が形成されている前記単結晶島表面には第1主電極が形成され、且つ前記半導体チップ本体の前記素子支持基板の裏面には第2主電極が形成されており、前記主機能部が形成されている単結晶島に前記誘電体絶縁分離膜を介して隣接する前記分離領域の表面には第3主電極が形成されていることを特徴とし、
前記第2主電極と前記第3の主電極とは電気的に接続されており、従って第1主電極と第2主電極および第3主電極との間の素子は縦型逆導通半導体素子を構成することを特徴とする集積回路半導体装置。
【請求項5】
〔請求項4〕において、前記縦型逆導通半導体素子がバイポーラ素子であり、そのドリフト層と前記素子集積基板の分離領域とは同一極性であるが、素子支持基板は反対極性であることを特徴とする集積回路半導体装置。
【請求項6】
〔請求項4〕において、前記縦型逆導通半導体素子がユニポーラ素子であり、そのドリフト層と前記素子支持基板の分離領域とは同一極性であるが、前記素子集積基板は反対極性であることを特徴とする集積回路半導体装置。
【請求項7】
〔請求項1〕~〔請求項6〕において、前記逆導通半導体素子が1重バッファー層もしくは2重以上からなる多層バッファー層を有していることを特徴とする集積回路半導体装置。
【請求項8】
〔請求項1〕~〔請求項7〕において、前記半導体チップ本体が、
多結晶面と単結晶面混在貼り付け面を有する前記素子集積基板と単結晶面のみの貼り付け面を有する前記素子支持基板とを貼合せた構造(SP&S-DBS)、
もしくは多結晶面と単結晶面混在貼り付け面を有する前記素子集積基板と多結晶面のみの貼り付け面を有する前記素子支持基板とを貼合せた構造(SP&P-DBS)のいづれかを有することを特徴とする集積回路半導体装置。
【請求項9】
〔請求項1〕~〔請求項9〕において、前記半導体装置がSiC半導体により構成されていることを特徴とする集積回路半導体装置。
【請求項10】
〔請求項9〕において前記単結晶島は、表面がC面すなわち(000-1)面の結晶面を用いて構成され、側面が{0-33-8}面で構成され、単結晶島の底面がSi面すなわち(0001)面で構成された単結晶島結晶面構造を有していることを特徴とする集積回路半導体装置。
【請求項11】
誘電体絶縁分離型集積回路半導体装置であり、その半導体チップ本体は分離領域に誘電体絶縁分離膜を介して単結晶島が敷き詰められて構成されており、単結晶島の側面は半導体チップ本体の表面に対し結晶方位で定まる所定の角度を有しており、単結晶島内の集積回路構成素子は他の単結晶島内の集積回路構成素子と半導体チップ本体表面上の表面絶縁保護膜上に設けた配線により結線されている集積回路半導体装置において、
電力容量の大きい構成素子は,前記表面キャリア濃度低減電界緩和領域(SCaDFRR)および
多結晶面と単結晶面混在貼り付け面を有する前記素子集積基板と単結晶面のみもしくは多結晶面のみの貼り付け面を有する前記素子支持基板とを貼合せた構造(SP&S-DBS もしくは SP&P-DBS)
の両方を有することを特徴とする集積回路半導体装置。
【請求項12】
〔請求項11〕において、電力容量の大きい構成素子は〔請求項10〕に記載の単結晶島結晶面構造も有していることを特徴とする集積回路半導体装置。
【請求項13】
誘電体絶縁分離型集積回路半導体装置であり、その半導体チップ本体は分離領域に誘電体絶縁分離膜を介して単結晶島が敷き詰められて構成されており、単結晶島の側面は半導体チップ本体の表面に対し結晶方位で定まる所定の角度を有しており、単結晶島内の集積回路構成素子は他の単結晶島内の集積回路構成素子と半導体チップ本体上の表面絶縁保護膜を介して配線により結線されている集積回路半導体装置において、
インバータ回路を内蔵し、このインバータの上アームを[請求項1]もしくは [請求項4] もしくは[請求項11]もしくは [請求項12]に記載の電力容量の大きい構成素子を含んで構成していることを特徴とする集積回路半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路半導体装置に係わり、特に大電力容量化すなわち高耐圧化および大電流化に好適で、且つ小型低損失化にも好適な高性能パワー集積回路半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高耐圧の中小電力容量の出力用素子を集積したSiパワー集積回路半導体装置が多様な用途で開発され商用化されてきている。この出力用素子としては、個別素子としても主要な半導体装置として用いられているSi-IGBTやSi-MOSFETが多用されている。しかし、Si-IGBT個別素子としては耐圧6.5kV・100A級まで製品供給されているが、パワー集積回路半導体装置としては種々の制約から耐圧0.7kV・電流容量20A程度にとどまっており、大電力容量化が要望されている。
一方、パワー集積回路半導体装置の出力用素子として期待されるSi-IGBTは個別素子としては近年低損失化などの高性能化を目的に、低オン抵抗化とターンオフ速度の高速化が追求され様々な工夫がこらされ顕著な進展をみせている。その代表的な例として、最近電気自動車用パワー素子として製品化されつつあるが、図7に示す先行技術例1や図8に示す先行技術例2のSi逆導通IGBTがあり、各々非特許文献1や2に開示されている。
以下に簡単に説明するが、説明に当たっては簡明にするためnチャネル素子を例にして説明する。
先行技術例1のコレクタ短絡Si-IGBT(nチャネル型)では、nドリフト層がp+コレクタ層に設けたn+短絡部によりコレクタ電極に短絡されており、ターンオフ時にnドリフト層内に残存するキャリアをこのn+短絡部を介して排除することによりターンオフ時間を短くし大幅な低損失化を図っている。
【0003】
ところで、開示されている先行技術例1をはじめとするSi逆導通IGBTの場合、出力
特性すなわちコレクターエミッタ間電圧(以下、Vceと記す)とコレクターエミッタ間
電流(以下、Iceと記す)の間のIce-Vce特性には、オン直前のコレクターエミ
ッタ間電圧がオン直後のコレクターエミッタ間電圧よりも大きいというスナップバック現
象が発生し、各種の過渡現象を誘発し信頼性を損ねてしまう。オン直前のコレクターエミ
ッタ間電圧を以下ではスナップバック電圧と呼びVsbと記述し、このVsbにおけるコ
レクターエミッタ間電流をスナップバック電流と呼びIsbと記述する。
先行技術例2のSi逆導通IGBT(nチャネル型)は、逆導通Si-IGBT領域とパ
イロットIGBT領域とから構成されている。パイロットIGBT領域のコレクタの幅は
逆導通IGBT領域のコレクタの幅よりも大幅に大きくし、小さなIsbでパイロットI
GBT領域が逆導通IGBT領域に先駆けてオンするようにしてタ-ンオンする際に発生
するスナップッバック現象を抑制して過渡電圧や過渡電流による誤動作を抑え高信頼性化
を図っている。
なお、これらの開示されているIGBTはnドリフト層がn+短絡部によりコレクタ電極
に短絡されているので、逆電圧に対する阻止能力がないために、逆導通IGBTと総称さ
れている。それ故、以下ではいずれも逆導通IGBTと呼ぶ。
【0004】
一方、発明者等による先行技術例3は、制御用低耐圧縦型素子及び横型素子と出力用の高耐圧縦型IGBTとを同一チップに集積した650V25A級の誘電体分離型集積回路を開示している。その制御用素子部では駆動回路や保護回路を集積し高性能機能の高密度化と高集積化が図れることを示唆する一方、出力用IGBTは縦型構造にすることによりドリフト抵抗を大幅に低減して低オン抵抗化と大電流容量化を図ることにより、パワー集積回路半導体装置の大幅な大電流化と低損失化と高性能化を達成している。
【0005】
なお、近年SiC半導体のようなワイドギャップ半導体を用いて高耐圧の大電力および中
電力用半導体装置の開発が推進され、SiC-MOSFET個別素子やSiC-IGBT
個別素子に代表される半導体装置の大幅な性能改善が進められている。例えば、先行技術
例4では6.5kV級SiC-MOSFET個別素子が開示されている。この素子におい
てはインバータ等の用途には不可欠なフライホイーリングダイオード(以下ではFWDと
記述する)としてSiCショットキーダイオードを内蔵させており、SiC半導体装置に
特有のオン電圧劣化を抑制し高性能化と高信頼性の達成を図っている。
しかしSiC半導体のようなワイドギャップ半導体は、半導体チップの結晶品質や大面積
化に加えて種々の課題が多く、基本要素回路の開発が始まりつつある段階であり、制御回
路や高耐圧大電流出力用素子を集積した本格的なパワー集積回路半導体装置の開発例や実
用化例は見当たらない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ハジメ・アキヤマ (Hajime AKIYAMA)、他5名、EFECTS OF SHORTED COLLECTOR ON CHARACTERISTICS OF IGBTS、プロシーディングス オブ ザ セカンド インターナショナル シンポジューム オン パワー セミコンダクタ デバイシズ アンド ICs (Proceedings of The 2nd International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs),1990年4月、p.131-136.
【非特許文献2】リウタウラス ストラスタ (Litauras Storasta),他2名、A Comparison of charge dynamics in the Reverse-Conducting RCIGBT and Bi-mode Insulated Gate Transistor BiGT、プロシーディングス オブ ザ トエンテイセカンド インターナショナル シンポジューム オン パワー セミコンダクタ デバイシズ アンド ICs (Proceedings of The 22nd International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs),1010年6月、p.391-394.
【非特許文献3】ミゾグチ(T.MIZOGUTI)、スガワラ(Y.Sugawara)他2名、600V,25A Dielectrically-Isolated Power IC Vertical IGBT, プロシーディングス オブ ザ トエンテイセカンド インターナショナル シンポジューム オン パワー セミコンダクタ デバイシズ アンド ICs (Proceedings of The 3rd International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs),2017年4月、p.40-44.
【非特許文献4】コータロウ カワハラ (Koutarou KAWAHARA)、他9名、6.5kV Schottky-Barrier-Diode-Embedded SiC-MOSFET for Comact Full-Unipolar Modeule.プロシーディングス オブ ザ セカンド インターナショナル シンポジューム オン パワー セミコンダクタ デバイシズ アンド ICs (Proceedings of The 29th International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs),2017年6月、p.41-44.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、現在パワー集積回路半導体装置としては種々の技術的問題から耐圧0.7
kV電流容量25A程度以下にとどまっており、各種の新しいニーズに対応するために
大電力容量化が重要な課題である。大電力容量化には高耐圧化と大電流化のいずれも
達成しなければならない。しかも、妥当な経済性を有するチップサイズ(例えば20mm
x20mm程度以下)で達成しなければならない。
前述したが、パワー集積回路半導体装置の出力用素子として期待されるIGBT個別素子
やMOSFET個別素子では、近年低損失化などの高性能化を目的に、低オン抵抗化とタ
ーンオフ速度の高速化が追求され好適な素子として逆導通IGBTや逆導通MOSFET
が注目されている。本明細書では逆導通半導体素子を[0003]の総称よりは狭義に捉え
、素子内の高耐圧pn主接合を逆バイアス時にインバータ等に不可欠なFWDとして機能
させる素子を逆導通半導体素子と定義する。この場合、FWDが素子内に内在しているの
で別途新たに導入もしくは形成しなくてよく、出力用素子のチップ占有面積をほぼ半分近
くにでき大幅な集積回路半導体装置チップの面積低減による低コスト化が見込めるからで
ある。しかし、この定義の逆導通半導体素子には以下に記述する種々の技術的課題があり、パワー集積回路半導体装置に搭載され実用化に到っている例は見当たらない。
【0008】
EVなどのモーバイル機器分野に代表されるように種々の産業分野で、小型軽量で低損失
且つ低コストで1kV10A以上の半導体装置に対する需要は旺盛であり、現在半導体モジュールで対応しているが、パワー集積回路半導体装置は更なる大幅な小型軽量化且つ低損失化・低コスト化が見込める。従って先行技術の技術的問題を解決し、低損失化や高性能化(例えば高信頼性等)に好適な逆導通IGBTや逆導通MOSFET等の逆導通半導体素子を搭載できる構造を考案し、1kV以上の高耐圧で電流容量の大きいパワー集積回路半導体装置を実現することは重要な第1の課題である。
【0009】
先行技術例3では誘電体型集積回路半導体装置の出力用IGBTを縦型構造にしてドリ
フト抵抗を大幅に低減し、低オン抵抗化と大電流容量化に成功しているが、逆導通半導体
素子は想定されておらず、何ら言及されてもいない。先行技術例3の構造では先行技術例
1および2の個別素子のように素子裏面のコレクタ電極側に短絡部を設けることは厚いp+
コレクタを用いているので困難であり、従って、逆導通半導体素子を搭載してターンオフ
時間短縮によるスイッチング損失の大幅低減に基づく低損失化は享受できておらず、また
IGBTに内在するpボディの接合を用いてFWD機能を達成することもできず、従って
チップ内に新たに内蔵しチップ面積の大幅な増大を招くか外付けせざるをえない。逆導通
半導体素子を小占有面積且つ低損失で搭載できるようにすることはパワー集積回路半導体
装置において解決すべき第2の課題である。
【0010】
ところで、逆導通IGBTのような逆導通半導体装置はオン直前から直後に推移するまで
の時間すなわちターンオン時間が短いので、スナップバック現象が発生するとターンオン
時に 急峻な電圧変化(以下dV/dtと表記)や急峻な電流変化(以下dI/dtと表
記)を生じる。この結果、回路内に存在する寄生容量により急峻な跳ね上がり電流(C・
dv/dt)が、また寄生リアクトルにより急峻な跳ね上がり電圧(L・dI/dt)が
生じ、これに起因して大きな過度現象が誘発される。このため、この逆導通IGBTのよ
うな逆導通半導体装置を用いた回路に大きな擾乱を招いてしまい、誤動作を生じたり、場
合によっては素子や回路の損傷に至り著しく信頼性を損なってしまう。従ってスナップバ
ック現象の抑制もしくは解消は、狭いチップ面積に各種回路を集積しているパワー集積回
路半導体装置においては極めて深刻な第3の課題である。
【0011】
また、先行技術例2のSi逆導通IGBTでは、多数の逆導通IGBTセルから構成さ
れる逆導通IGBT領域に隣接してパイロットIGBT領域を設けている。パイロットI
GBT領域のp+コレクタ幅は逆導通IGBT領域のIGBTセルのp+コレクタ幅よりも
大幅に大きくすることによりp+コレクタ上のバッファー層の横方向抵抗を非常に大きく
しており、従ってまず小さいIsbでパイロットIGBT領域をオンさせるようにしてい
る。これにより、パイロットIGBT領域のスナップバック現象を抑制している。
しかし、この先行技術例2の場合は全体のIGBTチップ面積に占めるパイロットIG
BT領域の面積がかなり大きくなってしまう。例えば、先行技術例2の場合、データから
読み取ると、3.3kV設計のSi逆導通IGBT標準セルのp+コレクタ幅が180ミ
クロンメートルであるのに対し、パイロットIGBTのp+コレクタ幅を約3.6倍の6
50ミクロンメートル以上にすることにより、Vsbをビルトイン電圧である0.7V程
度にしてスナップバック現象を解消している。逆導通IGBT標準セルのp+コレクタ幅
をはるかに小さくし微細化すると標準セルの横抵抗が小さくなるので、コレクタ接合のビ
ルトイン電圧Vbiを得るためにより大きな電流が必要となるため、パイロットIGBT
のp+コレクタ幅もこれに対応して大きくする必要がある。この結果、スナップバック現
象は解消されるが、所定面積のIGBTチップ全体に占める逆導通IGBT標準セル領域
の面積が少なくなるので、所定のチップ内に集積する標準セル数が減少し、オン抵抗が増
大するとともにターンオフ時に残存するキャリアを排除するという本来の逆導通IGBT
の機能が有効に発揮できなくなってしまう。歩留まりなどの経済性の点から素子のチップ
サイズが20mmx20mm程度以下に設定される現状では、逆導通半導体素子のスナッ
プバック現象を小さい占有面積で解消することはパワー集積回路半導体装置において重要
な問題であり、解決すべき第4の課題である。
【0012】
先行技術例4ではSiC-MOSFETにFWDとしてSiCショットキーダイオードを
内蔵させており、オン電圧劣化を抑制し高信頼性化することには成功しているが、専有チ
ップ面積は2倍程度に大幅に増大してしまう。更なる高温もしくは高耐圧になるとドリフ
ト抵抗が大幅に増大するので、低損失化を図るには更なる大幅なSiCショットキーダイ
オードの面積増加が避けられない。また逆導通IGBTのように、事故などによる過大電
流到来時もしくは過大電流供給時にはIGBTを動作させて電導度変調にともなう低オン
抵抗化により電流耐量を増加させることができないので、素子の損傷を免れるためには想
定される過電流に対応してSiC-MOSFETとSiC-FWDの専有チップ面積を更
に増大させておく必要がある。
現在の20mmx20mm程度に制約される集積回路半導体装置チップの面積においては
、上記のFWDによる専有面積の増大は重要な問題であり、解決すべき第5の課題である。
【0013】
本発明は、前記の従来技術の課題を解決し大電力容量化を図るために、電力容量の大きい構成素子すなわち高耐圧且つ(もしくは)大電流容量の構成素子、特に逆導通半導体素子を搭載できるパワー集積回路半導体装置の構造を提供することを目的にする。また、搭載する電力容量の大きい構成素子を小占有面積もしくは低損失にできる構造のパワー集積回路半導体装置を提供することを目的にする。また別途FWDを集積することなくFWD機能を達成することにより、チップサイズを低減できる高性能逆導通パワー集積回路半導体装置を提供することを目的にする。更に、出力用高性能逆導通パワー集積回路半導体装置のスナップバック現象を抑制もしくは解消するとともに、これをより小さい占有面積で解消できる信頼性の高いパワー集積回路半導体装置を提供することを目的にする。またSiC等のワイドギャップ半導体を用いてオン電圧劣化を解消もしくは抑制できる信頼性の高い高性能逆導通パワー集積回路半導体装置を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
【解決手段】
【0015】
説明に先立ち、集積回路半導体装置において、集積回路構成素子は他の集積回路構成素子
と半導体チップ本体上の表面絶縁保護膜を介して配線により結線されており、半導体チッ
プ本体内の表面に露出した構成素子間の分離領域と誘電体絶縁分離膜と傾斜チャネル
ストッパーとの上を渡る配線部分を渡り配線と定義する。
また、半導体装置チップから電極や配線や絶縁保護膜などを除いた半導体部分をチップ本
体と定義してこの名称で記述する。
チップ本体は素子集積基板とその下に素子支持基板を重ねて構成されている。素子を形成した単結晶島が誘電体絶縁分離膜を介して敷き詰められた分離領域で構成されるチップ本体の上部を素子集積基板と定義し、この基板を支持するとともにその中の全部もしくは一部が素子の導電路および放熱路として機能するチップ本体の下部を素子支持基板と定義し、以下ではこれらの名称で記述する。
なお、以下では煩雑さを避け理解を容易にするために、nチャネルタイプのIGBTとnチャネルタイプのMOSFETを電力容量の大きい構成素子(例えば出力用素子)とするパワー集積回路半導体装置を対象にして説明する。
【0016】
上記した課題を解決し本発明の目的を達成するため、この発明にかかるパワー集積回路
半導体装置は
誘電体絶縁分離型集積回路半導体装置であり、その半導体チップ本体は分離領域に
誘電体絶縁分離膜を介して単結晶島が敷き詰められて構成されており、単結晶島の側面は
半導体チップ本体の表面に対し結晶方位で定まる所定の角度を有しており、単結晶島内の
集積回路構成素子は他の単結晶島内の集積回路構成素子と半導体チップ本体上の表面絶縁
保護膜を介して配線により結線されている集積回路半導体装置において、
電力容量の大きい構成素子は渡り配線下の傾斜チャネルストッパー層表面に新規な表面
キャリア濃度低減電界緩和領域(Surface Carrier density Decrease electric Field Reduction Region 略してSCaDFRR、読み方スキャッドFRR)を設けられている
ことを特徴とする。
【0017】
上記した課題を解決し本発明の目的を達成するため、この発明にかかるパワー集積回路
半導体装置は、
電力容量の大きい構成素子が前記傾斜チャネルストッパー層表面の前記表面キャリア濃度低減電界緩和領域SCaDFRRと前記チップ本体の表面との間に厚い埋込絶縁保護膜を設け、この厚い埋込絶縁保護膜に接してチップ本体の表面上に前記表面絶縁保護膜を設けていることを特徴とする。
【0018】
上記した課題を解決し本発明の目的を達成するため、この発明にかかるパワー集積回路
半導体装置は
前記誘電体絶縁分離型集積回路半導体装置の前記半導体チップ本体が素子集積基板と素子
支持基板とを重ねて構成されており、
電力容量の大きい構成素子は、素子集積基板内の単結晶島の島底の誘電体絶縁分離膜が削
除された単結晶島内に主機能部が形成され、この主機能部に接続して前記素子集積基板内
に形成されたドレインもしくはコレクタを介して前記素子支持基板の導電路と接続されて
縦型半導体素子として構成されていることを特徴とする。
主機能部とは素子を構成するチップ本体内の構造因子からドレインもしくはコレクタもし
くは短絡部を除外した残りの構造因子を集約して示す呼称である。
【0019】
上記した課題を解決し本発明の目的を達成するため、この発明にかかるパワー集積回路
半導体装置は、
前記電力容量の大きい構成素子の前記主機能部が形成されている前記単結晶島表面には第1主電極が形成され、且つ前記半導体チップ本体の前記素子支持基板の裏面には第2主電極が形成されており、前記主機能部が形成されている単結晶島に前記誘電体絶縁分離膜を介して隣接する前記分離領域の表面には第3主電極が形成されていることを特徴とし、前記第2主電極と前記第3主電極とは電気的に接続されており、従って第1主電極と第2主電極および第3主電極との間の素子は縦型逆導通半導体素子を構成することを特徴とする。
【0020】
上記した課題を解決し本発明の目的を達成するため、この発明にかかるパワー集積回路
半導体装置は
前記縦型逆導通半導体素子がバイポーラ素子であり、そのドリフト層と前記素子集積基板
の分離領域とは同一極性であるが、素子支持基板は反対極性であることを特徴とする。
上記した課題を解決し本発明の目的を達成するため、この発明にかかるパワー集積回路
半導体装置は、
前記縦型逆導通半導体素子がユニポーラ素子であり、ドリフト層と素子支持基板とは同一
極性であり、素子集積基板の分離領域とは反対極性であることを特徴とする。
【0021】
上記した課題を解決し本発明の目的を達成するため、この発明にかかるパワー集積回路半
導体装置は、前記逆導通半導体素子が1重バッファー層もしくは2重以上からなる多重バ
ッファー層を有することを特徴とする。
【0022】
上記した課題を解決し本発明の目的を達成するため、この発明にかかるパワー集積回路半導体装置は、前記半導体チップ本体が多結晶面と単結晶面の混在する貼り付け面を有する前記素子集積基板と単結晶面のみの貼り付け面もしくは多結晶面のみの貼り付け面を有する前記素子支持基板との貼り付け面同士を直接貼合せた構造を有することを特徴とする。
以下では従来の各種誘電体分離型パワー集積回路半導体装置における貼り付け構造との差異を明確にし混乱を避けるために、前記素子集積基板が多結晶面と単結晶面の混在する貼り付け面であり上記の素子支持基板が単結晶面のみの貼り付け面である場合をSingle and Poly mixed crystal surface & Single crystal surface Direct Bonding Structure 略してSP&S-DBSと表記する。
また前記素子集積基板は同じであるが上記の素子支持基板が多結晶面のみの貼り付け面である場合をSingle and Poly mixed crystal surface & Poly crystal surface Direct Bonding Structure 略してSP&P-DBSと表記する。
【0023】
上記した課題を解決し本発明の目的を達成するため、この発明にかかるパワー集積回路半導体装置は、前記半導体装置がSiC半導体により構成されていることを特徴とする。
またSiC半導体により構成されているパワー集積回路半導体装置の前記単結晶島の表面は、C面すなわち(000-1)面の結晶面を用いて構成され、側面は{0-33-8}面で構成され、単結晶島の底面はSi面すなわち(0001)面で構成されていることを特徴とする。
【0024】
上記した課題を解決し本発明の目的を達成するため、この発明にかかるパワー集積回路半
導体装置は、
誘電体絶縁分離型集積回路半導体装置であり、その半導体チップ本体は分離領域に誘電体絶縁分離膜を介して単結晶島が敷き詰められて構成されており、単結晶島の側面は半導体チップ本体の表面に対し結晶方位で定まる所定の角度を有しており、単結晶島内の集積回路構成素子は他の単結晶島内の集積回路構成素子と半導体チップ本体表面上の表面絶縁保護膜上に設けた配線により結線されている集積回路半導体装置において、
電力容量の大きい構成素子は,前記表面キャリア濃度低減電界緩和領域(SCaDFRR)および
多結晶面と単結晶面混在貼り付け面を有する前記素子集積基板と単結晶面のみもしくは多結晶面のみの貼り付け面を有する前記素子支持基板とを貼合せた構造(SP&S-DBS もしくは SP&P-DBS)
の両方を有することを特徴とする。
また、電力容量の大きい構成素子は前記の単結晶島結晶面構造も有していることを特徴とする。
【0025】
誘電体絶縁分離型集積回路半導体装置であり、その半導体チップ本体は分離領域に誘電体絶縁分離膜を介して単結晶島が敷き詰められて構成されており、単結晶島の側面は半導体チップ本体の表面に対し結晶方位で定まる所定の角度を有しており、単結晶島内の集積回路構成素子は他の単結晶島内の集積回路構成素子と半導体チップ本体上の表面絶縁保護膜を介して配線により結線されている集積回路半導体装置において、
インバータ回路を内蔵し、このインバータの上アームを[0016]もしくは [0019] もしくは[0024]に記載の電力容量の大きい構成素子を含んで構成していることを特徴とする。
【0026】
この発明にかかるパワー集積回路半導体装置は、上述した発明において、
電力容量の大きい構成素子に渡り配線下の傾斜チャネルストッパー層表面に新規な表面電界緩和領域(SCaDFRR)を設けており、これにより高耐圧化が達成できる。
また、厚い素子支持基板にもかかわらず、第1主電極を主表面に形成し且つ第2主電極と第3主電極とを電気的に接続して、第1の主電極と第2主電極および前記第3主電極との間に出力用縦型構造の逆導通半導体素子を実現している。これにより誘電体分離島内に横型構造でIGBTを構成した場合に比べてドリフト抵抗を大幅に低減でき低オン抵抗化と大電流容量化が達成できる。
従ってこれらの高耐圧化と大電流容量化よりパワー集積回路半導体装置の大容量化が達成できる。
【0027】
パワー集積回路半導体装置の高耐圧化を実現するためには、渡り配線下の半導体チップ本体の表面絶縁破壊を抑制するために電界緩和領域を設置し表面ピーク電界を緩和するとともに、渡り配線下の絶縁保護膜も厚くする必要がある。耐圧が高い場合は電界緩和領域の設置のみではフィールド領域がかなり大きくなってしまうので絶縁保護膜も厚くするがこの厚さは非常に大きくなってしまう。設置する電界緩和領域や絶縁膜の組成により異なるが、例えばFRRという電界緩和領域とSi酸化膜(以下SiO2膜と表記する)を用いた先行技術文献3から推定すると耐圧1.2kVの場合は12μm以上の絶縁保護膜厚さが必要になり形成が難しくなる。また、絶縁分離島内部の素子の薄い絶縁保護膜上の配線と結線する際に大きな段差を生じ、この段差部で配線の断線が生じる。これを避けるために素子内部では絶縁保護膜を階段状にして各段での段差を通常1μmから2μm程度にしているが、例えば絶縁保護膜厚さが12μm以上となる高耐圧の場合はこの段数を多くする必要があり、その結果大半の集積回路半導体装置構成素子のサイズが大きくなりチップが肥大化してしまう。これらのため、650V以上の高耐圧集積回路半導体装置例は見当たらず、商品化の大きな障害になっている。
【0028】
本発明では、電力容量の大きい構成素子は渡り配線下の傾斜チャネルストッパー表面に新規な表面キャリア濃度低減電界緩和領域SCaDFRRを設け高耐圧化を達成している。
先行技術文献3では渡り配線下のドリフト領域表面に電界緩和領域FRRを導入してドリフト領域表面のキャリア濃度を高くして高耐圧化したが、高濃度の傾斜チャネルストッパー表面全体もより高濃度にしてしまっている。このため、傾斜チャネルストッパー表面のドリフト領域側端部での電界集中がより高くなり、耐圧すなわちこの電界集中部の極大電界が半導体材料の破壊電界強度に達する電圧が低い値に制限されていた。
本発明では、渡り配線下の傾斜チャネルストッパーのドリフト領域側表面にキャリア濃度
のより低い新奇なSCaDFRRを設けている。この結果、渡り配線との電位差で低濃度
のSCaDFRR領域が空乏化し、表面電界が最大になる位置はSCaDFRRと空乏化
していない傾斜チャネルストッパー表面との境界付近に移る。この結果、SCaDFRR
の電圧分担分だけ電界緩和ができ耐圧を増加できる。従って、SCaDFRRは傾斜チャ
ネルストッパー表面がチャネルストッパーとしての機能を維持する範囲で長い方が好まし
い。なお、SCaDFRR領域は傾斜チャネルストッパー内に設けるので、素子サイズの
増大は招かないという特徴がある。
このようにSCaDFRRにより高耐圧にできるので、耐圧をそのままにする場合は渡
り配線下の絶縁保護膜の厚さを低減できる。また、SCaDFRRによる極大電界低減効
果範囲内で高耐圧化しつつ絶縁保護膜の厚さも低減することもできる。なお、渡り配線下
の傾斜チャネルストッパーに隣接してドリフト領域側表面に設ける限りにおいては、FR
Rは電界緩和効果を有効に発揮できるので、FRRとSCaDFRRは共存させるのも好
ましい。
【0029】
上記の[0027]に記載したが、パワー集積回路半導体装置の高耐圧化を実現するため
にはこの渡り配線下の絶縁保護膜を厚くして半導体素子表面の電界強度を緩和し極大電界強度が半導体材料の絶縁破壊電界強度以下にする必要がある。耐圧が高い場合はこの絶縁保護膜の厚さが非常に大きくなるので、配線の断線を避けるために絶縁保護膜を階段状にして各段での段差を低くするが、この結果段数を多くする必要があり大部分の集積回路半導体装置構成素子のサイズが大きくなりチップが肥大化してしまい現実的ではない。
本発明ではこれを解決するために、チップ本体の表面下に厚い埋込み絶縁膜を設け、前記SCaDFRRはその直下に設け、且つこの厚い埋込み絶縁膜上のチップ本体表面上にも別途絶縁保護膜を設ける構成にしている。例えば半導体材料がSiの場合FRRを用い且つ絶縁膜としてSiO2膜を用いると耐圧1.2kVの時は12μm以上の絶縁膜厚さが必要になるが、上記のSCaDFRRの絶縁膜厚低減効果を2μmと見込み、チップ本体の表面上の絶縁保護膜の厚さを現実的な厚さである6μm程度にする場合、上記の主表面下の埋込み絶縁膜の厚さを4μm程度以上にすることにより解決できる。
【0030】
本発明では、電力容量の大きい構成素子は、単結晶島底の前記誘電体絶縁分離膜が削除
された単結晶島にその主機能部が形成され、その主機能部がドレインもしくはコレクタを
介して前記素子支持基板の導電路と接続されて縦型半導体素子として構成している。この
結果従来の誘電体分離型パワー集積回路半導体装置の横型半導体素子に比べて、ドレイン
もしくはコレクタを素子表面ではなく主機能部の下方に形成するので、ドリフト厚さを小
さくできドリフト抵抗を大幅に低減し低損失化でき且つ素子面積を増やすことなく大幅に
電流容量を増大でき大電力容量化ができる。
【0031】
本発明では、前記電力容量の大きい構成素子の主機能部が形成されている単結晶島の表面には第1主電極が形成され、且つ半導体チップ本体の裏面には第2主電極が形成されており、主機能部が形成されている単結晶島に誘電体絶縁分離膜に挟まれて隣接する分離領域の表面には第3主電極が形成され、第2主電極と第3の主電極とを電気的に接続しているので、第1主電極と第2主電極および第3主電極との間の素子を容易に縦型構造の逆導通半導体素子として実現できる。
【0032】
本発明では、パワー集積回路半導体装置の縦型半導体素子がバイポーラ素子である場合は、
そのドリフト層と素子集積基板の分離領域とを同一極性にし素子支持基板は反対極性に
し、容易に逆導通縦型IGBTのような逆導通縦型バイポーラ半導体素子を提供できる。
例えばこのバイポーラ素子の場合は、そのドリフト層と素子集積基板の分離領域とは同じ
n型にするが、素子支持基板は反対極性のp型にする。この結果、第1主電極と第2
主電極間に縦型IGBTを構成でき、第1主電極と第3主電極間にその短絡部を構成でき
、第2主電極と第3主電極間を電気的に接続するので第1主電極と第2主電極および第3
主電極間に縦型逆導通IGBTを実現できる。この結果縦型素子の小さいオン抵抗によ
り大電流容量と低損失を享受でき、併せて逆導通IGBTのターンオフ時間低減による低
損失化を享受できる。また、逆バイアス時には第1主電極と第3主電極間をpボディ接合
からなるFWDとして動作させることができ、別途FWDを集積する必要がなく大幅なチ
ップ小型化を享受できる。先行技術例3の構造では厚いpコレクタ層を介して第2主電極
に相当するコレクタ電極と接続しているためn+短絡部を設けることが困難であったが、
本発明ではこのように素子支持基板と素子集積基板の極性を変えて構成することにより容
易に縦型IGBTと短絡部を独立して設けることができ、その結果、容易に縦型逆導通
IGBTの構造を提供できる。
この結果、縦型化による低損失化と大電流容量化を、また逆導通半導体素子のターンオフ
時間短縮によるスイッチング損失の大幅低減により更なる低損失を享受できる。
【0033】
本発明では、パワー集積回路半導体装置の縦型半導体素子がユニポーラ素子である場合は、そのドリフト層と素子支持基板とを同一極性にし素子集積基板の分離領域を反対極性にし、容易に逆導通縦型ユニポーラ半導体素子を提供できる。
例えば、この縦型半導体素子がMOSFETのようなユニポーラ素子である場合は、そのドリフト層と素子支持基板とを同一のn型極性にし、素子集積基板の分離領域は反対極性のp型にする。この結果、第1主電極と第2主電極間に縦型MOSFETを、第1主電極と第3主電極間にIGBTを構成できる。第2主電極と第3主電極間を電気的に接続するので第1主電極と第2主電極および第3主電極間は順バイアス時には逆導通IGBTとして機能する。
縦型MOSFETの通電路にpn接合が介在しないので、低印加電圧で縦型構造の小さいオン抵抗による大電流容量と低損失を享受できる。一方、ビルトイン電圧以上の印可電圧では、IGBTも並列に動作させることができる。この結果、IGBTの電導度変調による低損失化とオン抵抗の小温度依存性が功を奏し、過大電流を特に高温時に処理することができる。この際、縦型MOSFETの一部がn+短絡部として機能するのでIGBTは逆導通IGBTとして機能しターンオフ時間短縮によるスイッチング損失の大幅低減により低損失化を享受できる。
また、逆バイアス時には第1主電極と第2主電極間をpボディ接合からなるFWDとして動作させることができ、別途FWDを設ける必要がなく大幅なチップ小型化を享受できる。
【0034】
本発明では、パワー集積回路半導体装置の逆導通半導体素子が1層構成のバッファー層、もしくは2層以上の構成の多重バッファー層を有している。1層構成の場合はバッファー層厚さと不純物濃度の適正低濃度化により、所定の小さいpコレクタ層幅でもその上のバ
ッファー層の横抵抗を極力大きくなるようにして、小さなIsbでもVsbがp+コレクタ接合のビルトイン電圧Vbi以下にしスナップバック現象を解消している。この結果小さいp+コレクタ幅の逆導通半導体素子でパワー集積回路半導体装置のチップ面積を低減し、
スナップバック現象を抑制もしくは解消し高信頼性を達成している。
なお、2層以上の構成の多重バッファー層では最終層のみがp+コレクタ接合のビルトイン電圧Vbiで全部が空乏化されずに残り、その他の層は全部が空乏化されるように設定する。この結果Isbが流れるバッファー層の更なる高抵抗化ができ、p+コレクタ幅を更に小さくでき逆導通半導体素子の面積、ひいてはパワー集積回路半導体装置のチップ面積を更に低減でき、且つスナップバック現象を更に抑制もしくは解消し高信頼性を達成している。
【0035】
本発明では、横型逆導通素子形成用には、多結晶貼り付け面を有する素子集積基板用ウエ
ーハと単結晶貼り付け面を有する素子支持基板用ウエーハとを貼り合わせて半導体チップ
形成用ウエーハを構成している。従来のエピタキシャル成長で両ウエーハを一体化して形
成した場合に比べて、高温・長時間のエピタキシャル成長行程と大きな彎曲を平坦化する
ための成長後の研削・研磨行程を割愛でき、パワー集積回路半導体装置製作プロセスの大
幅な簡略化が達成できかなりの低コスト化ができるという利点がある。
一方、縦型逆導通素子形成用には、絶縁分離酸化膜を削除した縦型逆導通半導体素子を形成する単結晶面と絶縁分離酸化膜上に形成した多結晶面が混在する貼り付け面を有する素子集積基板用ウエーハと単結晶面のみの貼り付け面を有する素子支持基板用ウエーハを貼り付けて新規な半導体チップ形成用貼合わせ構造([0022]に記載のSP&S-DBS)のウエーハを実現している。単結晶面同士の貼り合わせでは貼り合わせ境界にボイドが発生し貼り付け強度が低下する傾向があるため、貼り付け温度や貼り付け圧力や貼り付け雰囲気ガスおよび前処理材料に工夫を凝らしてこれを克服している。上記の多結晶貼り付け面と単結晶貼り付け面の貼り合わせに比べて、単結晶面同士の貼り付け部分が存在するので貼り付け強度が向上するため貼り合わせウエーハ全体の貼り付け強度が向上するので、その後の素子製作工程における損傷が更に低減し良品歩留まりの向上が見込める。
【0036】
この発明にかかるパワー集積回路半導体装置は、上記した発明において、
前記集積回路半導体装置をSiC半導体のようなワイドギャップ半導体で構成している。
この結果、Si半導体を大幅に凌駕する更なる高耐圧、低損失、小チップ、高耐熱な
どの高性能を有する半導体装置が実現できる。また誘電体分離型パワー集積回路半導体装
置はpn分離型パワー集積回路半導体装置に比べて、リーク電流が高温でも極めて少ない
ため高耐圧・高耐熱達成に適しており、且つpn接合による素子分離に比べて素子間の分離領域の幅を大幅に狭くできるためチップの小型低損失化達成にも適している。従って両者を組合せて構成するSiC誘電体分離型パワー集積回路半導体装置は理想的なパワー半導体装置といえる。
【0037】
本発明では、このSiC半導体誘電体分離型集積回路半導体装置を実現するために、単
結晶島の各面を本発明特有の結晶方位をもつ結晶面で構成した新規な単結晶島結晶面構造
用いている。すなわち、4HSICを用いてn単結晶島を形成し、その単結晶島表面は
C面すなわち(000-1)面の結晶面を用いて構成し、側面は(0-33-8)面と等価な{0-33-8}面で構成し、単結晶島の底面はSi面すなわち(0001)面で構成する新規な単結晶島結晶面構造である。この結果、次の利点が得られる。
(1)Si面は平坦化技術として優れている触媒表面基準エッチング法(CARE法)を
用いるとC面よりも原子レベルで優れた平坦性を得ることができる。従って、単結晶島底
をSi面にすることにより貼り合わせにおいてより良質な貼り付け面と接着強度の強い貼
り付け面が得られ、本発明における単結晶部分の貼り合わせで形成される縦型素子には極
めて好適である。
(2)側面は(0-33-8)面と等価な{0-33-8}面で構成することにより、表面のC面に対して54.7度もしくは(180度-54.7度)の傾斜角度をもつ。この結晶面は酸化速度が速く高耐圧用の厚い絶縁分離酸化膜が形成しやすい点で好適である。更にこの面はドリフト領域に耐圧不良やリーク電流増大の原因となるマイクロパイプなどの微少欠陥が存在してもエピタキシャルなどのCVD法で形成中にほぼ完全に閉塞でき、良質で厚さが薄目のチャネルストッパー形成結晶面としても極めて好適である。
(3)C面は最も良好なMOS界面が得られ高いチャネル移動度のMOSFETを作製で
きる。更に、C面は酸化速度が最も速い結晶面であり、渡り配線下に厚い良質な絶縁保護
膜を必要とする高耐圧集積回路半導体装置には極めて好適である。
この他にSiC半導体の場合はSi半導体の場合に比べて絶縁破壊強度が一桁程度高いので、[0027]および[0029]でも説明したように渡り配線下の絶縁保護膜を高耐圧の場合でも薄くできる。この結果、絶縁保護膜の形成が容易になるとともに、配線の断線を避けるための段数が少なくて済み素子面積の肥大化を防ぎチップの小型化ができる。
一方SiC半導体の場合は、IGBTやpボディ接合で構成するFWD等のバイポーラ素子には、特有のオン電圧劣化現象が存在し、信頼性が大きく損ねられるという問題を有する。しかし、上記の本発明の逆導通構造により素子始動時や稼働時に多数キャリアのみを流すことができ、接合温度をオン電圧劣化現象抑制温度以上に昇温させオン電圧劣化を抑制もしくは解消するというMaCH-TEDREC法(本発明者により発明された動作方法であり、特許第6232687号にて開示されている)が適用でき、オン電圧劣化現象の解消もしくは大幅な抑制ができ、高信頼性を達成できる。
【0038】
この発明にかかるパワー集積回路半導体装置は、インバータ回路を内蔵させる場合は、イ
ンバータの上アームを前記縦型半導体素子を含んで構成する。
これにより、例えば、1相以上のアームを有するインバータの場合、各相の上アームは電
源の高電位の配線に各相の逆導通半導体素子のコレクタもしくはドレインが並列接続しているので、第2主電極(コレクタ電極もしくはドレイン電極)に素子支持基板を介して複数の逆導通半導体素子を並列接続できる本発明の素子構造が好適である。一方、各相の下アームは電源の低高電位の配線に第1主電極(エミッタ電極もしくはソース電極)が並列接続されているがインバータの稼働中に第2主電極(コレクタ電極もしくはドレイン電極)の電位は各々変化するので、第2主電極(コレクタ電極もしくはドレイン電極)が他相から独立している構造の逆導通半導体素子が好適である。このため、好適な1相分のアーム構造として実施の形態7~9の構造を設定するものである。
【発明の効果】
【0039】
以上のように本発明により、誘電体分離型パワー集積回路半導体装置において、出力用素子の傾斜チャネルストッパー表面にSCaDFRRを設けることにより従来困難な700V以上の高耐圧化ができるとともに、出力用逆導通素子の縦型構造化が実現でき大幅な大電流容量化と低損失化ができる、パワー集積回路半導体装置の大容量化と低損失化ができる。
更に、バッファー層の最適化や多重化により小さい専有面積でスナップバック現象を解消でき、高信頼性化ができる。また、新規なウエーハ貼り合わせ構造SP&S-DBSを用いた誘電体分離型集積回路半導体装置用ウエーハにより大幅な低コスト化が図れるとともに、ウエーハ貼り合わせ強度が向上できその後の素子製作の経済化が図れる。
また、SiC半導体を用いてSCaDFRRとSP&S-DBSに加えて新規なSiC単結晶島結晶面構造の適用により、更に大幅な大容量化・低損失化ができるとともに、オン電圧劣化を解消でき信頼性の向上が達成できる。
この結果、本発明のパワー集積回路半導体装置の適用により、家電・事務・車両・産業用等の各種電力変換回路搭載機器の小型軽量化・低損失化・高信頼性化・経済化に多大の寄与ができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】実施の形態1にかかるSi横型逆導通IGBTの模式的断面図
図2】実施の形態2にかかるSi逆導通IGBTの模式的断面図
図3】実施の形態2にかかるSi逆導通IGBTの製作プロセスフロー
図4】実施の形態3にかかるSiC 逆導通MOSFETの模式的断面図
図5】実施の形態4にかかるSiC 逆導通MOSFETの模式的断面図
図6】実施の形態5にかかるSiC 逆導通IGBTの模式的断面図
図7】実施の形態7にかかるSi単相インバータ集積回路半導体装置の1相分の 出力素子構成
図8】実施の形態8にかかるSiC3相インバータ集積回路半導体装置の1相分の出力素子構成
図9】実施の形態6にかかるSiC 逆導通MOSFETの模式的断面図
図10】先行技術例1の高耐圧Si逆導通IGBTの模式的断面図
図11】先行技術例2の高耐圧Si逆導通IGBTの模式的断面図
図12】先行技術例3の高耐圧SiIGBTの模式的断面図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる誘電体分離型パワー集積回路半導体装置
の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはp
の半導体の極性を冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアである
ことを意味する。図面中の層や領域を示す番号と矢印は同じ層や領域の場合、原則的に各
々代表して1個のみを記し他は省略してある。また、各図は煩雑さを避けて発明をよりよ
く説明するための模式的断面図であり、各構造因子は各図内および各図間で大小関係や比
例などの相関はない。しかし、説明文中の各構造因子の数値は極力具体的に記載してある
のでそちらで把握いただきたい。また図の煩雑化を避けるため、出力素子の多数のセルは
3~4個を描くにとどめ、表面保護膜の多段の段数も模式的に1段しか描いていない。
更に、出力素子以外の周辺回路構成素子は2個程度模式的に描くにとどめている。
なお、パワー集積回路半導体装置においては、公知の出力素子のゲート駆動回路や電圧・
電流・温度等の各種検出回路や各種保護回路等を構成する素子が単独素子もしくは複数
素子または回路単位で各絶縁分離島にパワー集積回路半導体装置の仕様に応じて形成さ
れる。本明細書ではこれらの出力素子以外の回路および素子を一括して周辺回路および
周辺回路素子と定義してこれらの名称で記述する。
以下の実施の形態では、本発明を把握する上で不可欠な誘電体分離型パワー集積回路半
導体装置チップの中の、特に出力素子に注目して記述し周辺回路やパッケージに関する記
述は割愛する。
【0042】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかるパワー集積回路半導体装置チップ100の主要部である
出力素子を中心に模式的に示した断面図である。図1に示す実施の形態1にかかる半導体
装置チップ100は、Si半導体を用いて作製された例えば設計耐圧1.2kV・3A級
の誘電体分離型パワー集積回路半導体装置チップであり、図1中には出力素子周辺も少し
示されている。出力用素子はトレンチゲート構造の逆導通IGBTであり、ストライブ形
状である。ストライブ状単結晶島にはストライブ状セルが25個形成されているが、煩雑
化を避けるために図には3セルしか記載していない。単結晶島幅は約520μm、単結晶
島長さは5mmである。
誘電体分離型はpn分離型に比べて、リーク電流が高温でも極めて少なく且つ素子間の絶
縁分離領域が大幅に小さくてすむので高耐圧化とチップサイズ低減が容易であり、高耐圧
パワー集積回路半導体装置には大変好適である。
なお、本実施の形態1のチップ本体は素子集積基板101と素子支持基板102とで構成
されており、両基板はウエーハ貼り付け技術で貼り合わされている。この用いたウエーハ
貼付け技術は本発明者等によって開発され、「NEW DIELECTRIC ISOL
ATION FOR HIGH VOLTAGE ICS BY SINGLE SIL
ICON POLY SILICON DIRECT BODING (SPSDB)
TECHNIQUE」というタイトルで「Proceedings of 1992 I
nternational Symposium on Power Semicond
uctor Devices & ICs,1992年5月、p.316-321」にお
いて開示している。このウエーハ貼り付け技術による貼り付け構造は[0022]の名称
の仕方を踏襲するといわばP&S-DBSと呼ぶべき構造であり、この構造の適用により、
従来の誘電体分離型パワー積回路半導体装置製作プロセスにおける厚い素子支持基板形成用の1200℃以上の高温且つ長時間のエピタキシャル成長行程を割愛できる。この結果、パワー集積回路半導体装置製作プロセスの大幅な簡略化が達成できるとともに製作装置の大幅な簡略化と保守の簡易化ができ、大幅な低コスト化ができるという利点がある。
なお、これまで開示されているSOIを含めた誘電体分離型パワー集積回路半導体装置の
各種貼り付け構造はほとんどP&S-DBSである。
【0043】
では、まず図1の実施の形態1の構成と特徴を説明する。
従来の誘電体絶縁分離型集積回路半導体装置の構成をかいつまんで記述すると、そのSi
半導体チップ本体は分離領域117に誘電体絶縁分離膜106を介して単結晶島が敷
き詰められて構成されており、単結晶島の側面は半導体チップ本体の表面に対し結晶方位
で定まる所定の角度を有して傾斜しており、それ故に誘電体絶縁分離膜106に沿って延
在するチャネルストッパー125は表面および裏面に対し傾斜しているので、以下では
傾斜チャネルストッパーと呼称する。
また、単結晶島内の集積回路構成素子は他の単結晶島内の集積回路構成素子と半導体チッ
プ本体の上に設けた表面絶縁保護膜を介して配線により結線されており、段落[0015]
に記載したように半導体チップ本体の表面に露出している分離領域と誘電体絶縁分離
膜と傾斜チャネルストッパーとの上を渡る配線部分116は渡り配線と定義している。
なお、本実施の形態ではSi半導体チップ本体の表面は(001)面で構成され、側面は
{111}面で構成されており、表面に対する結晶方位で定まる所定の角度は約54.7
度もしくは(180度-54.7度)である。
【0044】
素子集積基板101内の単結晶島内の逆導通IGBTのpコレクタ104は周囲をnバッ
ファー層107で囲まれており、nエミッタ110から離れた方の位置にある短絡部10
5を介して第2主電極(コレクタ電極)103に接続されており、逆導通構造になってい
る。nバッファー層107は2重バッファー層構成であり、1重バッファー層構成に比べ
て高い横抵抗を有するので、延在するpコレクタ幅が短くても小さいIsbで約0.7V
のビルトイン電圧Vbiを達成できIGBTをオンさせることができるので、スナップバ
ック現象を大幅に抑制できる。すなわち、小さい専有面積でスナップバック現象を大幅に
抑制できる。2重バッファー層は本発明者による特許第6383971号にその基本概念
が開示されている。
また、第1主電極(エミッタ電極)120に接続しているpボディ109とドリフト層1
08とでFWDを構成しn短絡部105を介して第2主電極(コレクタ電極)103に接
続している。この結果、別途FWDを単結晶島内に集積する必要がなく大幅な素子面積の
低減ができる。
【0045】
大幅な高耐圧化の達成を目的とする本実施の形態における誘電体分離型パワー集積回路半
導体装置チップは、従来の誘電体分離型集積回路半導体装置チップに比較し次の2点で構
成が相違する。
第1の相違点は、接合端の電界緩和のためのフィールドプレート123と傾斜チャネルス
トッパー部の電界緩和のための表面電界緩和層FRR(エフアールアール)といった従来
の電界緩和高耐圧技術に加えて、渡り配線下の傾斜チャネルストッパー125の表面に
新規な表面キャリア濃度低減電界緩和領域(Surface Carrier density Decrease Field
Reduction Region 略してSCaDFRR:スキャッド)SCaDFRRを設けているこ
とである。先行技術3の600Vのチップでは渡り配線下の表面絶縁保護膜118は厚さ
5.4μm程度のSiO2からなる絶縁膜を用いている。本実施の形態の場合は1.2kV以上の耐電圧が必要なので、SiO2からなる表面絶縁保護膜118は12μm程度以上の膜厚が必要となり形成が難しくなる。そこで本実施の形態では新規に傾斜チャネルストッパー125の表面にSCaDFRR121を設け耐圧の向上と絶縁膜の薄膜化を図っている。その原理は[0028]に記述しているが、SCaDFRRを設けたことによりその長さや絶縁膜の膜質、FRRとの共存度合い等により異なるが約2μm以上の膜厚低減が見込め、上記の先行技術3に適用すると10μm程度の膜厚に低減できる。
【0046】
第2の相違点は渡り配線下のチップ本体に埋込み絶縁膜140を用いていることである。
耐圧に該当する電圧が印可されるとこの渡り配線116下での表面電界集中によりSi
表面が絶縁破壊を生じるので、この表面電界集中を緩和し絶縁破壊を防ぐ表面絶縁保護膜厚さにする必要がある。耐圧が大きい場合はこの厚さが非常に大きくなり、例えば耐圧1.2kVの場合は上記のように12μm以上の絶縁膜厚さが必要になり形成が難しくなる。また、絶縁分離島内部で素子と結線するまでの薄い絶縁膜上の配線119との間に大きな段差を生じ、段差部で配線の断線が生じる。これを避けるために素子内部では配線下の絶縁膜を階段状にして各段での段差を通常1~2μm程度にしているが、高耐圧の場合はこの段数を多くする必要があり段差間の踏板部分が多くなり、その結果大半の集積回路半導体装置構成素子のサイズが大きくなりチップが肥大化してしまう。このため、650V以上の高耐圧集積回路半導体装置例は見当たらず、商品化の大きな障害になっている。
【0047】
本実施の形態では、これまでチップ本体表面上に形成されていた渡り配線下の厚い表面絶
縁保護膜118の一部をチップ本体の表面下に埋込んだ厚い埋込み絶縁膜140を設け、
前記SCaDFRR121はその下に設けており、且つチップ本体の表面上には埋込絶縁
膜厚を差し引いた厚さの別表面絶縁保護膜118を設ける構成にしている。例えば上記の
SCaDFRRの絶縁膜厚低減効果が約2μmと見込めるので、チップ本体の表面上の表
面絶縁保護膜の厚さを現実的な厚さ6μm程度にするために上記の主表面下の埋込み絶縁
膜の厚さを約4μm程度にしている。
これによりパワー集積回路半導体装置のチップ本体の表面上の絶縁保護膜の段差数低減が
でき、チップ面積の低減を達成することができる。
【0048】
なお、主要構造諸元値は、例えばドリフト層は不純物濃度1x1014cm-3・厚さ1
40μmであってもよい。n+エミッタ領域は不純物濃度と厚さが各々5x1019cm
-3・1.5μm、pボディ領域は3x1017cm-3・表面からの厚さ4μm、nバ
ッファー層は2x1016cm-3・4μm、p+コレクタ領域は1x1019cm-3
・2μmであってもよい。pボディ領域からSiO2誘電体絶縁分離膜までの距離は170μmであってもよく、傾斜チャネルストッパーの厚さは5μmであってもよい。ゲート酸化膜の厚さは1300オングストロームであってもよく、SiO2誘電体絶縁分離膜の厚さは5μmであってもよい。またチップ本体の厚さは約300μmである。
【0049】
次に本実施の形態1のパワー集積回路半導体装置の特性について説明する。本パワー集積
回路半導体素子チップ100は特性測定用高耐圧パッケージに実装して動作試験に供した
。ゲート電圧を印加しない状態でエミッタ電極120とコレクタ電極103間に順方向電
圧を印加すると、リーク電流が流れるが良好な順阻止特性を示し、室温での耐圧すなわち
なだれ降伏を示す電圧は約1.42kVであり、またなだれ降伏前のリーク電流は室温で
1×10-6A/cm以下、250℃の高温でも8x10-6A/cm以下と良好で
ある。
【0050】
また、順方向状態でゲート電圧を印可し増大してゆくと逆導通IGBTがオンするが、ス
ナップバック現象は観察されたがVsbは約1.6Vと低く実用上問題のないレベルであ
る。また、オンした状態で100A/cmの電流密度で通電した際の室温でのオン電圧
は約2.5Vと低く良好である。また、100A/cm通電時のターンオフ時間は約1
.2μsであり、同耐圧クラスSi-IGBTの約1/2以下であり短い。このように逆
導通IGBT機能によりターンオフ時間を低減でき高速化できる結果、スイッチング損失
を著しく低減でき低損失化できる。
更に、FWDの100A/cmの電流密度で通電した際の室温でのオン電圧は約1.5
Vと低く良好である。
【0051】
以上のように、本実施の形態によればSiパワー集積回路半導体装置チップの出力素子として、SCaDFRRと埋込み絶縁膜により高耐圧の逆導通IGBTを集積でき、且つ高耐圧化とチップ占有面積低減および低損失化ができ、パワー集積回路半導体装置の大容量化も達成できる。更にスナップバック現象も実用上問題のないレベルまで大幅な抑制ができ高信頼性が達成できる。またインバータの還流時にpボディとnドリフト層で構成する内蔵ダイオードをFWDダイオードとして活用でき、別途新たなダイオードを設ける必要がなくパワー集積回路半導体装置の半導体チップサイズを大幅に小さくでき低コスト化が図れる。
【0052】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2にかかるSiパワー集積回路半導体装置チップ200の主要部である出力素子を中心に模式的に示した断面図である。図2に示す実施の形態2にかかる半導体装置チップ200は、Si半導体を用いて作製された例えば設計耐圧1.2kV・60A級の誘電体分離型パワー集積回路半導体装置チップであり、素子集積基板201と素子支持基板202とは本発明による新規な貼り付け構造(SP&S-DBS)を用いて貼り合わせて構成されている。出力素子はトレンチゲート構造の縦型構造逆導通IGBTであり、本発明による新規な逆導通IGBT構造を用いており、素子集積基板201の誘電体絶縁分離単結晶島内と隣接する分離領域217とに集積されている。なお、出力素子はストライブ形状であり、ストライブ状単結晶島幅は約6.5mm、単結晶島長さは5mmである。ストライブ状単結晶島にはストライブ状セルが500個形成されているが、煩雑化を避けるために図には模式的に4セルしか記載していない。
前記のように誘電体分離型はpn分離型に比べて、リーク電流が高温でも極めて少なく且つ分離領域が大幅に小さくてすむので高耐圧化とチップサイズ低減が容易であり、高耐圧パワー集積回路半導体装置には好適である。
【0053】
まず、図2の実施の形態1の構成と特徴を具体的に説明する。
実施の形態2においては、出力用素子の逆導通IGBT200の主機能部はほとんど誘電
体分離島内に形成されているが、この誘電体分離島底の絶縁膜206は除去されているの
で、p+コレクタ204を介してp+素子支持基板202に接続しており、このp+素子支
持基板202は第2主電極であるコレクタ電極203に接続している。従って第1主電極
であるエミッタ電極220と第2主電極であるコレクタ電極203間の素子部分は縦型S
i-IGBTとして機能できる。一方、第1主電極220と第3主電極215間の素子部
分は誘電体分離島底の絶縁膜が除去された部分を介してn+領域(n+短絡部兼MOSFE
Tのドレイン)205と接続しており、更にn分離領域217を介して第3主電極2
15に接続されている。従って第1主電極220と第3主電極215間の素子はSi-M
OSFETとして機能できる。また第3主電極215は、第2主電極203がダイボンディングされたパッケージの金属部とワイヤボンディングによりチップ外部で電気的に接続されているので、第2主電極203と第3主電極215は電気的に接続されている。従って、第1主電極220と第2主電極203および第3主電極215との間の素子は全体的には逆導通IGBTとして機能する。
また、n+領域205の幅と上記のp領域204の幅を調整することにより、n+領域205の幅が大きい場合はMOSFETの動作がメインになり、p+領域の幅205が大きい場合はIGBTの動作がメインになるようにできる。本実施の形態の場合はIGBTの動作をメインにするために、上記のp+領域204の幅と上記のn+領域205の幅の比を約90対10程度に設定してp+領域204をかなり大きくしてもよい。一方、上記のn+領域205はp+コレクタ204の短絡部として機能させるので、ターンオフ時にはドリフト層208の残存キャリアの排出を迅速に進めることができ、この結果ターンオフ時間が短くなりターンオフ損失を低減できるのでパワー集積回路半導体装置チップの低損失化ができる。
なお、p+コレクタ204の幅が大きくなるので所定のセル数毎にp+コレクタ204内に
もn+領域205を複数個設けて残存キャリアの排出を効率的且つ迅速に行っている。図2では模式的に1個のみしか示していない。このn+領域205の間隔は、スナップバック現象の抑制条件で決まる。またp+コレクタ204内に設けたn+領域205は図の紙面の奥でp+コレクタ204を所定個所分断してp+コレクタ204の左右のn+領域205や内部のn+領域同士とで接続して抵抗を抑え残存キャリアの排出を迅速に行っている。
【0054】
また耐圧に該当する電圧が第1主電極と第2主電極間に印可されると、素子内部の高耐圧
接合端で電界集中が生じるので図中のフィールドプレート223のような公知のターミネ
ーション技術で抑制しており、またチップ表面に発生するチャネルは傾斜チャネルストッパー技術で遮断している。更にトレンチゲート底部での電界集中によるゲート絶縁破壊の阻止にはゲート底部の酸化膜212の厚膜化や図示していないがゲート底部カバー用pウェルの設置などの公知の技術を適用している。これらの技術を用いて適切な設計を行うと耐圧を決定する主因は配線下で生じる電界集中となり、本素子構造の場合は渡り配線216下の傾斜チャネル部225における表面電界集中である。この表面電界集中によりSi表面が耐圧よりも低い電圧で絶縁破壊を生じるので、この絶縁破壊を防ぐために表面電界集中を緩和し絶縁保護膜も厚くする必要がある。
耐圧が大きい場合はこの厚さが非常に大きくなり、例えば耐圧1.2kVの場合は12μ
m以上の絶縁保護膜厚さが必要になり形成が難しくなる。また、絶縁分離島内部のエミッタ210と結線するまでの薄い絶縁保護膜上の配線219との間に大きな段差を生じ、段差部で配線の断線が生じる。これを避けるために素子内部では配線下の絶縁保護膜を階段状にして各段での段差を通常1~2μm程度にしているが、高耐圧の場合はこの段数を多くする必要があり段差間の踏板部分が多くなり、その結果大半の集積回路半導体装置構成素子のサイズが大きくなりチップが肥大化してしまう。これらのため、650V以上の高耐圧集積回路半導体装置例は見当たらず、商品化の大きな障害になっている。
【0055】
本実施の形態では、従来はチップ表面上に形成されていた渡り配線下の厚い絶縁保護膜218のかなりの部分をチップ本体の表面下に埋め込み絶縁膜240として形成することにより、チップ表面上に形成される表面絶縁保護膜218の厚さを小さくして段差と段差数を低減している。また、埋め込み絶縁膜240の下には実施の形態1で前述した新規な電界緩和領域SCaDFRR221を形成しており、これにより2μm程度以上の絶縁膜圧の低減ができる。この結果、例えば1.2kV耐圧を達成するのに12μm以上必要な表面酸化膜218を6μm程度にし、表面下の埋込み絶縁膜240を4μm程度にしてもよく、これによりパワー集積回路半導体装置チップの高耐圧化と段差数低減によるチップ面積の低減を共に達成することができる。
またこのチップをインバータ等に用いた場合は、インバータの還流時にpボディ209
とnドリフト層208で構成するpn接合ダイオードをFWDダイオードとして活用でき
る。すなわち、還流電流は第1電極220→pボディ209→nドリフト208→n+短
絡部205→分離領域217→第3電極215のルートで流れFWDとして機能する
わけである。この結果FWDとして別途新たなダイオードを設ける必要がなくなる。FW
DはIGBTとほぼ同等な電流容量を必要とするので、パワー集積回路半導体装置の半導
体チップサイズをほぼ約1/2近くまで小さくでき、パワー集積回路半導体装置の小型化
と低コスト化が図れる。
【0056】
また逆導通IGBTに付随するスナップバック現象に関しては、逆導通IGBT用の単結晶島幅が[0052]に記載のように十分広いので1重バッファー層でも横抵抗を大きくでき、小さなスナップバック電流Isbでスナップバック電圧VsbをSiのビルトイン電圧Vbi以下にできスナップバック現象を解消できるので十分適用できる。しかし、バッファー層が延在するp+コレクタ204が大きくなるため短絡部の間隔が大きくなってしまいターンオフ時の残存キャリアの排出速度が損なわれる場合がある。この場合は、2重バッファー層の適用が好ましい。
2重バッファー層にすることにより、ドリフト208に接する側のバッファー層内の空乏
化されていないスナップバック電流Isbの通電路部分の横抵抗を大きくできるので、ス
ナップバック現象を解消できるp+コレクタ幅を小さくできる。すなわち、短絡部の間隔
を小さくできるのでターンオフ時の残存キャリアの排出速度を速くでき逆導通IGBT本
来のスイッチング速度の向上による低損失化がより効果的に達成でき、且つスナップバッ
ク現象の解消による高信頼性も十分に達成できる。
【0057】
次に図3を用いて実施の形態2の製作プロセスフローを簡単に説明する。図3の[5]と[
6]は[4]以前の図よりも右側が作図の都合で少し拡張されて描かれていることを前もっ
てお断りしておく。
まずn単結晶主基板230上に分離溝形成用のマスクを形成し、高温溶融KOH液により
分離溝が所定の深さに達するまでn単結晶主基板230の選択エッチングを行う。このエ
ッチングに当たっては第3主電極215形成部のマスク幅を他の分離用V溝形成部のマス
ク幅よりも広くしておく。分離溝の深さは160μmであってもよい。V溝部のエッチン
グ深さが160μmに達した時点でエッチングを終了すると幅の広い第3主電極215形
成部も他のV溝部と一緒に自動的に形成される。
ついで、n傾斜チャネルストッパー225を拡散により形成し、更に例えば燐とアンチモ
ンの選択2重拡散を行い二重バッファー層207を形成する(図3の[1]参照)。その後、誘電体絶縁分離用のSiO絶縁膜206を全面に形成する。その厚さは約4μmでもよい。ついでp+コレクタ204を形成する部分のSiO絶縁膜206を選択エッチングで除去し、更にエピタキシャル成長によりp+コレクタ204用のp+単結晶層を形成する。例えばp+エピタキシャル層の厚さは18μmであってもよい。その後p+エピタキシャル層の選択エッチングを施しp+コレクタ204を形成する。その後、n短絡層205形成部分のp+コレクタ204を選択エッチングにより除去し、更に第3主電極215形成部分のSiO2誘電体絶縁分離膜206を選択エッチングで除去する(図2の[2]参照)。これによりn短絡層205形成部分と第3主電極215形成部分の単結晶が露出する。次いで、全面にn+エピタキシャル成長を、第3主電極215の形成部分も含めて全分離溝が完全に埋め尽される厚さ以上になるまで実施する。この際n+短絡層205形成部分と第3主電極215の形成部分とp+コレクタ204上にはn単結晶が、絶縁分離酸化膜206上にはn多結晶が成長し分離領域217は両結晶が混在した状況となる。その後、研削と鏡面研磨をp+コレクタ204が露出するまで実施し素子集積基板201を完成する(図2の[3]参照)。
【0058】
その後、このウエーハと別途準備した単結晶面貼り付け面のみをもち素子支持基板202となるn+単結晶ウエーハと、新規な多結晶面・単結晶面混在貼り付け面をもつ素子集積基板201とを貼り付けた新規な貼り合わせ構造(SP&S-DBS)のウエーハを完成する(図3の[4]参照)。この新規な貼合わせ構造の貼合わせウエーハは従来のエピ成長基板のウエーハに比べて彎曲が小さく、実施の形態1やこれまで開示されている従来の単結晶単独面と多結晶単独面の貼合わせ構造(P&S-DBS)のウエーハに比べても彎曲が小さく接着強度が強い。彎曲が小さいのは多結晶は単結晶に比べてをエピタキシャル成長後冷却する際収縮が激しくウエーハが大きく湾曲するためであり、新構造では単結晶領域が混在するので収縮が抑制されることによる。また接着強度が強いのは、従来の貼合わせ部が単結晶と多結晶の貼合わせ部のみであるのに対し、新構造ではこれに加えて接着強度が強い単結晶と単結晶の貼合わせ部が存在することによる。しかし、単結晶と単結晶の貼合わせ部は貼り合わせ境界にボイドが発生し貼り付け強度が低下する傾向があり、貼り付け温度や圧力、貼り付け雰囲気ガスおよび前処理材料に工夫を凝らしボイドの発生を解消している。
このようにして完成した彎曲が小さく接着強度の強い貼合わせウエーハは、次いで貼付けたウエーハの上面側から誘電体分離された結晶島が露出するまで単結晶主基板230の上面を研磨して素子集積基板201を仕上げて、パワー集積回路半導体装置チップ用のウエーハを完成する(図3の[5]参照)。完成ウエーハの厚さは約300μm程度であってもよい。
その後、埋込み絶縁膜240形成部のSiを選択エッチングで4μm除去し、次いでSCaDFRR221形成部分に燐もしくはアルミニュームの選択イオン打ち込みを行い、ついで全面に4μm以上の厚さのSiO2をCVDで形成した後、鏡面研磨し埋込み絶縁膜240の形成を完了する。
その後、公知の一般的な方法なので説明を割愛するが、所定の素子製作技術を用いて各単
結晶島内にトレンチゲート構造の出力用素子やプレーナゲート構造の駆動・制御回路用素
子や検出・保護回路用の素子や第3電極215等の電極や配線を形成し本実施の形態2の
パワー集積回路半導体装置を完成する(図3の[6]参照)。
【0059】
本実施の形態では上記の新規な貼合わせ構造(SP&S-DBS)を用いることにより、貼り合わせウエーハの弯曲が低減できるとともに貼り合わせウエーハ全体の貼り付け強度を向上できる。この結果、その後の所定の素子製作工程において製作プロセスを簡易にでき素子製作中の損傷が低減し良品歩留まり向上効果が得られる。なによりも新規な貼合わせ構造(SP&S-DBS)により、従来の1200℃程度の高温且つ長時間のエピタキシャル成長行程を割愛でき、パワー集積回路半導体装置製作プロセスの大幅な簡略化が達成できるとともに製作装置の簡易化と保守の簡略化ができ大きな低コスト化ができる点は甚大な効果である。
【0060】
なお、上記以外の主要構造諸元値に関しては、例えばドリフト層、pボディ領域、n+エミッタ領域、nバッファー層、傾斜チャネルストッパー、ゲート酸化膜は実施の形態1と同じである。一方、p+コレクタ領域は1x1019cm-3・18μmであってもよく、p+分離領域の不純物濃度は1x1019cm-3であってもよい。pボディ領域からSiO2誘電体絶縁分離膜までの距離は170μmであってもよく、SiO2誘電体絶縁分離膜の厚さは4μmであってもよく、p+素子支持基板はキャリア濃度1x1019cm-3・厚さ150μmであってもよい。この場合、素子集積基板201の厚さ、すなわちp+素子支持基板202とチップ本体表面間の領域の厚さは155μmである。
【0061】
次に上記のプロセスフローで製作されるパワー集積回路半導体装置の特性について説明す
る。本パワー集積回路半導体素子チップ200は特性測定用に作成されたパッケージに実装して動作試験に供した。当然ながら第3主電極215は第2主電極203がダイボンディングされたパッケージの金属端子面にワイヤボンディングされており、両者は電気的に接続されている。
素子は良好な順阻止特性を示し、室温での耐圧すなわちなだれ降伏を示す電圧は約1.3
6kVであり、またなだれ降伏前のリーク電流は室温で5×10-6A/cm以下、2
50℃の高温でも6x10-5A/cm以下と良好である。
また、順方向状態でゲート電圧を印可し増大してゆくと逆導通IGBTがオンするが、オ
ンする際のスナップバック現象は観察されなかった。オンした状態で100A/cm2の
電流密度で通電した際の室温でのオン電圧は約1.9Vと低く良好である。
また、50A通電時のターンオフ時間は約0.7μsであり、同耐圧クラスのSi-IG
BTに比べて短い。このようにターンオフ時間を低減でき高速化できる結果、スイッチン
グ損失を著しく低減でき低損失化できる。
更に、FWDの100A/cmの電流密度で通電した際の室温でのオン電圧は約1.5
Vと低く良好である。
【0062】
以上のように、本実施の形態によればパワー集積回路半導体装置チップの出力素子として
、SCaDFRRと埋込み絶縁膜の適用により高耐圧で電流容量の大きい縦型構造逆導通
IGBTを集積できるようになり、高耐圧化とチップ占有面積低減および低損失化が達成
でき、パワー集積回路半導体装置の大幅な大容量化が達成できる。また新規な多結晶面・
単結晶面混在貼り合わせ構造(SP&S-DBS)の適用により、良質で接着強度が強い貼り付け面をもち彎曲の小さい且つ低コストの誘電体分離型集積回路ウエーハを実現できる。更にスナップバック現象の解消もでき高信頼性が達成できる。またインバータの還流時にpボディとnドリフト層で構成する内蔵ダイオードをFWDダイオードとして活用でき、別途新たなダイオードを設ける必要がなくパワー集積回路半導体装置の半導体チップサイズを大幅に小さくでき更なる低コスト化が図れる。
【0063】
(実施の形態3)
一般に、SiC半導体素子はSi半導体素子に比べて、高耐圧・小型低損失・高耐熱・
高放熱、高電力耐量等の点で大幅に優れた性能を有しており、パワー素子に好適である。
特に、SiCの絶縁破壊電界強度が高いため素子のフィールド領域の幅をSiの一桁程度
小さくできるので同耐圧の場合大幅な素子面積の低減ができる。一方、誘電体分離型パワ
ー集積回路半導体装置はpn分離型パワー集積回路半導体装置に比べて、リーク電流が高
温でも極めて少ないため高耐圧・高耐熱達成に適しており、且つ素子分離領域の幅を
大幅に狭くできるため小型低損失の高耐圧集積回路半導体装置に好適である。これらの特
徴に注目した本発明者は本発明の目的を更によく達成するために、実施の形態1及び2で
示した本発明の新規な多結晶面・単結晶面混在貼り合わせ構造SP&S-DBSと新規な
SCaDFRR構造に加えて、SiC誘電体分離型パワー集積回路半導体装置に好適な新
規な単結晶島結晶面構造を考案し、これらを適用して本実施の形態3を構成した。
図4は、実施の形態3にかかるSiC半導体を用いて作製したSiC誘電体分離型パワー
集積回路半導体装置チップ300の主要部である出力素子を中心に示した模式的な断面図
である。集積回路半導体装置チップ300は素子集積基板301と素子支持基板302と
を本発明による新規な貼り付け構造SP&S-DBSを用いて貼り合わせて構成している。但し、現在のSiCバルク結晶はSiバルク結晶に比べて結晶品質が劣るので、例えば図3のプロセスフロー(IGBTのプロセスフローであるのでMOSFETとの相違を承知で参考にされたい。)の[1]([0057]に記載)において、スタートのn単結晶主基板230への分離溝形成用マスク形成の前に、SiC単結晶主基板(図3の230に相当)に所定の深さのV分離溝よりも厚いn型単結晶層のエピタキシャル成長を実施し、このエピタキシャル層に完成後の単結晶島全てが内蔵されるようにしている。この結果、SiCエピタキシャル単結晶層はSiCバルク結晶に比べて結晶品質がはるかに良好なので、エピタキシャル単結晶島に形成された各集積回路構成素子はSiCバルク結晶内に形成された場合に比べて格段に優れた特性を持つようにできる。なお当然ながら、SiC単結晶主基板は図3のプロセスフロー[5]の研磨工程で全て削除され素子集積基板の各単結晶島内にはエピタキシャル単結晶のみが残る。実施の形態4以降の素子集積基板も同様である。
【0064】
出力素子は設計耐圧1.2kV、電流容量100A級のSiC逆導通MOSFETであり、素子集積基板301の誘電体絶縁分離島内に集積されており、トレンチゲート構造の縦型逆導通MOSFETであり、ストライブ形状である。この出力素子を集積した単結晶島幅は約2.5mm、単結晶島長さは5mmである。単結晶島内には多数のセルを集積し並列接続しているが、図には煩雑化を避け説明用に4セルのみ模式的に示している。
誘電体分離型集積回路半導体装置では、半導体チップ本体は分離領域317に誘電体
絶縁分離膜306を介して単結晶島が敷き詰められて構成されており、単結晶島の側面は
半導体チップ本体の表面に対し結晶方位で定まる所定の角度を有して傾斜している。上記
の誘電体分離型集積回路半導体装置とSiC半導体との理想的な組み合わせを実現するた
めに、本実施の形態では単結晶島の各面を本発明特有の結晶方位の面で構成した新規な単
結晶島結晶面構造を用いている。すなわち、4HSICを用いてn単結晶島を形成し、そ
の単結晶島表面はC面すなわち(000-1)面の結晶面を用いて構成し、側面は{0-33-8}面で構成し、単結晶島の底面はSi面すなわち(0001)面で構成する。この結果、次の利点が得られる。
(1)Si面は通常のSiC個別素子の製作において、平坦化技術として優れている触媒
表面基準エッチング法(CARE法)を用いて原子レベルで極めて高い平坦性が達成され
ており、C面よりも同法適用による平坦性がよいことが報告されている。従って、単結晶
島底をSi面にすることにより、多結晶面・単結晶面混在貼り合わせ構造SP&P-DB
Sにおいて単結晶面同士のより良質で接着強度の強い貼り付け面が得られ、本実施の形態
における単結晶部分同士の貼り合わせで構成される縦型素子には極めて好適である。
(2)側面の{0-33-8}面は表面のC面に対して54.7度もしくは(180度-54.7度) の傾斜角度をもち酸化速度が極めて速く、高耐圧用の厚い絶縁分離酸化膜を形成しやすい点で好適である。更にこの面はドリフト領域に耐圧不良原因となるマイクロパイプなどの微少欠陥が存在してもエピタキシャルなどのCVD法で形成中にほぼ完全に閉塞できるので、高耐圧素子の良質な傾斜チャネルストッパー形成用結晶面としても極めて好適である。
(3)C面は最も良好なMOS界面を得られるので、高いチャネル移動度のMOSFET
を作製でき好適である。更に、C面は酸化速度が最も高い結晶面であり、渡り配線下に厚
い良質な絶縁保護膜を必要とする高耐圧集積回路半導体装置には極めて好適である。
【0065】
ところで、実施の形態2のSi半導体素子に比べてSiC半導体素子は、同耐圧の場合ドリフト領域の厚さを大幅に薄くできるため単結晶島形成用のV溝を大幅に浅くできるので、素子集積基板の厚さを大幅に薄くできる。この結果、次の利点も得られる。
(1)素子集積基板の分離領域形成の際のV溝を埋めるエピタキシャル成長工程において、形成される多結晶層が薄くてすむためエピタキシャル成長終了時の冷却過程で多結晶Siの収縮に起因して発生する彎曲を小さくできる。この結果、その後の貼り付け用平坦化工程における研磨や貼り付けなどのプロセスも容易にでき、低コスト化に有利なウエーハの大口径化ができる。
(2)単結晶島に素子を形成する一連の製作工程において損傷の少ない所定の強度を得るため、ウエーハの厚さを例えば一般的に300~400μm程度とする。例えば300μmとする場合、1.2kVのSi素子では約150μmの厚いドリフト領域に制約されて素子支持基板ウエーハの厚さは半分の約150μmにする必要があるが、SiC素子ではドリフト領域を大幅に薄くできるため約250μmと厚くできる。この結果、素子支持基板ウエーハを厚くできるため彎曲しにくくなり、単結晶島に素子を形成する一連の製作工程において、酸化や高温熱処理に伴うウエーハの彎曲とその変動に伴う素子の損傷などの悪影響が少なくて済む。
【0066】
以下では、その他の図4の実施の形態3の構成と特徴を具体的に説明する。
実施の形態3においては、出力用素子はストライブ形状のトレンチゲート型SiC逆導通
MOSFET300であり、その主機能部はほとんど誘電体分離島内に形成されているが
、この誘電体分離島底の絶縁膜は除去されているので、nドレイン305を介してn+素
子支持基板302に接続でき、このn+素子支持基板302は第2主電極303に接続し
ている。従って第1主電極320と第2主電極303間の素子は縦型逆導通SiC MOSFETとして機能でき、実施の形態1のような横型構造の場合に比べてドリフト抵抗が低減でき、これによるオン抵抗低減効果とSiCの物性によるオン抵抗低減効果とで大幅な低損失化ができる。
【0067】
本実施の形態では実施の形態2とほぼ同様に、これまでチップ表面上に形成されていた渡
り配線316下の厚い絶縁膜318のかなりの部分をチップ本体の表面下に埋め込み絶縁
膜340として形成し、その直下にSCaDFRR321を設けることにより高耐圧化を
達成し、更にチップ本体の表面上の絶縁保護膜318の厚さの低減を達成して段差と段差
数を低減している。
SiCはSiに比べて不純物の拡散速度が極端に遅いために高濃度のn型傾斜チャ
ネルストッパーはCVD等の堆積技術で形成せざるを得ない。この結果、配線下のチップ
主表面における傾斜チャネルストッパーは拡散で形成した場合に比べるとほぼ均一な高濃
度のキャリア濃度(例えば8x1018cm-3でもよい)となっており、チップ主表面
のドリフト領域308とのキャリア濃度(例えば8x1015cm-3でもよい)との差
が極めて大きく、この部分で急激に配線下のチャネルの延びが止められ表面電界強度が急
増し、SiC表面部やSiO2膜などに絶縁破壊を生じ損傷を与えてしまう。本実施の形態ではFRRに加えて新規にSCaDFRR321を設けて表面電界強度を緩和しており、このSCaDFRR321はチップ主表面におけるn型傾斜チャネルストッパーにp型のドーパントをイオン打ち込みしてキャリア濃度を相殺して、例えば1x1016~5x1017cm-3の範囲にして表面電界強度を緩和している。
1.2kVSiC素子の場合はフィールド領域の幅が15μm程度とSi素子より約一桁小さいので、約5μm厚さの傾斜チャネルストッパーの表面に形成するSCaDFRR321の高耐圧化効果はSi素子の場合に比べて相対的に著しく大きくなる。また、このSCaDFRR321による高耐圧化効果の一部を絶縁保護膜318の厚さ低減に充てるとSiの場合よりもより大きな厚さ低減効果が得られる。
この結果、例えば1.2kV耐圧を達成するのに12μm以上の表面絶縁保護酸化膜が必要となるが、表面下の埋込み絶縁膜340の厚さを4μm程度にし、これにSCaDFRR321による高耐圧化にともなう絶縁膜厚低減効果を加えると、表面絶縁保護酸化膜を6μm以下にでき、チップの段差数低減によるチップ面積の低減効果を享受できる。またチップ面積の低減分の一部をセル数の増加に充てることにより低損失化効果を享受することもできる。
【0068】
またこの素子は高耐圧主接合が逆バイアス時にインバータ等に不可欠なフライホイーリン
グダイオードFWDとして機能する素子であり、[0007]の定義による逆導通SiC
MOSFETに該当するものであり、別途新たにFWDを導入もしくは形成しなくてよく
、チップ面積の大幅低減による低コスト化が見込める。FWDはMOSFETとほぼ同等
な電流容量を必要とするので、この結果パワー集積回路半導体装置の半導体チップサイズ
をおおよそ約1/2近くまで小さくでき、パワー集積回路半導体装置チップの小型化や低
コスト化が図れる。
ところで、上記のFWDは内蔵するSiC pnダイオードで構成されているが、このようなSiCバイポーラ半導体素子には、素子に内在する積層欠陥に起因するSiC特有のオン電圧が経時増大するというオン電圧劣化現象が存在する。これにより通電時の素子の損失が経時増大したり、インバータ等の適用機器の効率の経時劣化が生じたり、過度に進行した場合は素子が損傷したり、モジュール内の素子間の電流分担バランスが崩れて一部の素子が損傷したりして適用機器の損傷を招いてしまう。この解消もしくは抑制対策として、本発明者はMaCH-TEDREC法を開発し特許5835679号において開示している。この方法は素子始動時や稼働時に多数キャリアのみの通電により、素子温度を劣化抑制温度以上(解消の場合は例えば150℃から200℃以上)に昇温させることにより、劣化原因である素子に内在する積層欠陥の拡大を阻止する方法である。内在pnダイオードをFWDとして用いる逆導通MOSFETの場合は、順方向バイアス時に多数キャリアによる順方向の通電電流のみを独立して通電することができるので、MaCH-TEDREC法を適用しオン電圧劣化の解消ができる。このように、本実施の形態はSiCバイポーラ素子特有のオン電圧経時劣化を解消しパワー集積回路半導体装置の高信頼性を達成できる。
【0069】
なお、本実施の形態における各主要構造諸元を以下に示す。例えばドリフト層308は不純物濃度8x1015cm-3・厚さ13μmであってもよい。n+ソース領域310は不純物濃度と厚さが各々3x1019cm-3・0.3μm、pボディ領域309は1x1018cm-3・主表面からの厚さ0.7μm、n傾斜チャネルストッパー層は8x1018cm-3・厚さ4μm、n+ドレイン領域304は5x1019cm-3・厚さ13μmであってもよく、pボディ領域からSiO2誘電体絶縁分離膜までの距離は25μmであってもよく、SiO2誘電体絶縁分離膜306の厚さは5μmであってもよい。またn+素子支持基板302は1x1019cm-3・厚さ260μmであってもよい。この場合、素子集積基板301、すなわちn+素子支持基板302とチップ本体の表面との間の領域の厚さは約40μmである。なお、ゲート酸化膜311の厚さは1000オングストロームであってもよい。
【0070】
次に本実施の形態によるパワー集積回路半導体装置の特性について説明する。
本パワー集積回路半導体素子チップ300は特性測定用に作成されたパッケージに実装し
て動作試験に供した。ゲート電圧を印加しない状態でソース電極320とドレイン電極3
03間に順方向電圧を印加すると、リーク電流が流れるが良好な順阻止特性を示し、室温
での耐圧すなわちなだれ降伏を示す電圧は約1.42kVである。また、なだれ降伏前の
リーク電流は室温で5×10-6A/cm以下、250℃の高温でも1x10-6A/
cm以下と良好である。
また、順方向状態でゲート電圧を印可し増大してゆくと逆導通MOSFETがオンする。
オンさせた状態で100A/cmの電流密度で通電した際の室温でのオン電圧は0.3
5Vと低く良好であり、200℃でのオン電圧も0.51Vと低く良好である。また特性
オン抵抗RonSは室温で3.5mΩcmと著しく小さい。ゲート電圧Vgを20Vに
し300A/cmの電流密度で通電した場合のオン電圧は約1.5Vであり大幅な低損失化ができる。一方、50A/cmの電流密度で通電する条件で測定した時のターンオン時間は1.5ns,ターンオフ時間は約35nsであり短い。このようにスイッチング時間を低減でき高速化できる結果、スイッチング損失を著しく低減でき低損失化できる。
また、100A/cmの電流密度で2000時間の通電試験実施後でもMaCH-TE
DREC法が効を奏し、オン電圧劣化現象は観察されない。
【0071】
以上のように、本実施の形態によればSiCパワー集積回路半導体装置チップの出力素子
であるSiC逆導通MOSFETにSCaDFRRと埋込み絶縁膜を適用することにより
高耐圧化を達成すると供に、チップ本体の表面上の絶縁膜厚の低減により段差と段差数を低減しチップ面積の低減と低損失化を達成している。また、新規な単結晶島結晶面構造と新規な多結晶面・単結晶面混在貼り合わせ構造SP&S-DBSの適用により、渡り配線下に厚い酸化膜が形成しやすく高耐圧化が容易であり、且つ良質で接着強度の強い貼り付け面をもつ彎曲の小さい且つ低コストの誘電体分離型集積回路半導体装置を実現できる。更にインバータの還流時に素子に内在するpボディとnドリフト層で構成するダイオードをFWDダイオードとして活用でき、別途新たなダイオードを設ける必要がなくパワー集積回路半導体装置の半導体チップサイズを大幅に小さくできより低コスト化が図れる。またオン電圧劣化の解消により高信頼性を達成できる。
【0072】
(実施の形態4)
図5は、実施の形態4にかかるSiC半導体を用いて作製された設計耐圧1.2kV、
電流容量80A級のSiC誘電体分離型パワー集積回路半導体装置チップの主要部である
出力用素子を中心に示す模式的断面図である。
事故時等に、本チップを搭載した電力変換設備が通常稼働時をうわまわる大電流を急きょ
供給しなければならない場合に対応できるようにすることを意図した出力用縦型逆導通M
OSFETである。実施の形態3に比べて素子構造面での相違点は、第3主電極415を
隣接する分離領域417に設け第2電極403にワイヤボンディングで外部接続され
ている点と、分離領域417がn型素子支持基板402と反対極性のp型SiCであ
る点、nドレイン405の両側に逆導通IGBTのpコレクタ404を設けている点であ
る。機能的には、通常動作時は第1主電極420と第2主電極403間の縦型逆導通MO
SFETが動作しており、事故時等の大電流供給時は第1主電極420と第2主電極40
3および第3主電極415との間の逆導通IGBTも動作し保護装置が始動するまでの所
定の比較的短い時間の間IGBTの通電電流を縦型逆導通MOSFETの通電電流に上乗
せして事故に対応するものである。逆導通IGBTが動作するときには縦型逆導通MOS
FETのnドレイン405と素子支持基板402が短絡部として機能しターンオフ時の残
存キャリアの排出を早め低損失化を図る。
【0073】
図5は、実施の形態4には実施の形態2および実施の形態3で記述した本発明になる新規
事項が全て含まれている。すなわち、新規なSCaDFRRと埋込み絶縁膜、新規な単結
晶島結晶面構造、新規な多結晶面・単結晶面混在貼り合わせ構造SP&P-DBS、第3
主電極を設けた新規な逆導通IGBT構造などが全て含まれており、同等の効果を達成し
ている。また、実施の形態3と単結晶島内の素子構造と上記の相違点を除けばその諸元値
を含めてほとんど同じである。
【0074】
素子面積としては、単結晶島の面積は同じであるが第3主電極の分が増えている。また、
両側にpコレクタを設けているのでnドレインの幅が80%程度になり、稼働時の定格電
流は20%ほど低減している。しかし、事故時に逆導通IGBT電流を流すことができる
。例えば7Vの印可電圧では素子温度が自己発熱で高くなるためMOSFETのオン抵抗
は高くなるので通電電流は印可電圧に比例しては流れないが、逆導通IGBTのオン抵抗
は電導度変調効果が寄与し素子温度が変わってもほとんど変わらない。この結果、事故時
にはパッケージなどの熱抵抗で制限される短時間ではあるが、実施の形態3の逆導通MO
SFETの2倍近い190A程度の通電電流が見込める。
また、またスナップバック現象とIGBTやFWDのオン電圧劣化の解消により高信頼性
を達成できる。更に、FWDは通電電流が少し低下するが実用上問題ないレベルであり、
別途新たなダイオードを設ける必要がなくSiCチップサイズを大幅に小さくでき低コス
ト化が図れる。
【0075】
本実施の形態では、用途によってnドレイン405の幅とpコレクタ404幅との割合
を変えることにより、低オン抵抗MOSFET機能と耐電流機能との割合をある程度任意
に設定できる。場合によっては第3主電極を第2主電極に接続しないで第1主電極と第2
主電極間のMOSFET機能のみを享受することもできる。
【0076】
以上のように、本実施の形態によれば事故時にはパッケージなどの熱抵抗で制限される短
時間ではあるが、実施の形態3の逆導通MOSFETに比べ大きな通電電流が見込める。
また実施の形態3と同様に、SCaDFRRと埋込み絶縁膜を適用することにより高耐圧
化を達成できると供に、チップ本体の表面上の絶縁膜厚の低減を達成して段差と段差数を
低減しチップ面積の低減や低損失化を達成できる。またスナップバック現象とオン電圧劣
化の解消により高信頼性を達成できる。更にインバータの還流時に素子に内在するpボデ
ィとnドリフト層で構成するダイオードをFWDダイオードとして活用でき、別途新たな
ダイオードを設ける必要がなくパワー集積回路半導体装置の半導体チップサイズを大幅に
小さくでき低コスト化が図れる。
【0077】
(実施の形態5)
図6は、実施の形態5にかかるSiC半導体を用いて作製された設計耐圧1.2kV、電流容量60A級のSiC誘電体分離型パワー集積回路半導体装置チップの主要部である出力用素子を中心に模式的に示す断面図である。SiC-IGBTがSiC-MOSFETに比べてオン抵抗の温度依存性が極めて小さいので、高温領域での用途への適用を意図した出力用縦型逆導通IGBTである。実施の形態4に比べて素子構造面での相違点は、分離領域517がp型素子支持基板402と反対極性のn型SiCである点、pコレクタ504の両側に逆導通MOSFETのn短絡部505を設けている点、素子支持基板502が多結晶SiCで構成されている点である。
逆導通IGBTが動作するときにはこの短絡部505と第2主電極503に外部接続された第3主電極515とを介してターンオフ時の残存キャリアの排出を迅速に行い低損失化を図ることができる。
この実施の形態5では本発明の新規な多結晶面・単結晶面混在貼り合わせ構造SP&P-DBSにおいて素子支持基板502として多結晶SiCを用いているが、貼り合わせ温度をより高くすることにより単結晶支持基板を使用した場合と比較してあまり遜色のない貼り合わせ強度を実現できるし、彎曲なども許容レベルであり、実用上問題はない。単結晶素子支持基板に比べてコストを大幅に低減できるメリットは極めて大きい。
【0078】
(実施の形態6)
図9は、実施の形態6にかかるSiC半導体を用いて作製したSiC誘電体分離型パワー
集積回路半導体装置チップ600の主要部である出力素子を中心に示した模式的な断面図
である。出力素子は設計耐圧1.2kV、電流容量100A級のSiC逆導通MOSFETであり、トレンチゲート構造の縦型構造逆導通MOSFETであり、ストライブ形状である。この出力素子を集積した単結晶島幅は約2.5mm、単結晶島長さは5mmである。
本実施の形態6は実施の形態3と比較して、単結晶島側面を{11-22}結晶面で構成している点および貼り付け基板を用いないで素子集積基板701の分離領域を形成する際、エピタキシャル成長層を厚くして、素子集積基板701に素子支持基板を兼ねさせている点を除くと、集積回路半導体装置チップ600や出力素子のSiC逆導通MOSFETの各構造諸元や製作プロセスフローは全く同じであり、製作出力素子の特性等もほとんど同じである。
本実施の形態6の{11-22}の結晶面で構成する単結晶島側面は単結晶島表面のC面や裏面のSi面に対して{0-33-8}面よりも大きい傾斜角度を有しているので、単結晶島底面積を増大できるため出力素子のオン抵抗を低減できるとともに、単結晶島体積を増大できるため熱蓄積容量を大きくでき電力耐量を増加できるという特徴がある。この特徴は素子の耐圧が高くなるほどドリフト層が厚くなりその結果単結晶島が厚くなるので効果がより大きくなる。当然ながら、{11-22}以外でも{10-12}面や{10-11}面等{0-33-8}面よりも単結晶島表面に対して大きな傾斜角を有する結晶面を用いることにより同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態6は前実施の形態1から5のような貼り付け基板を用いた種々のメリットは享受できないが、本実施の形態の厚い素子集積基板を素子集積基板の分離領域形成用エピタキシャル時間を単に長くすることにより形成できるという製作工程数削減のメリットがある。
【0079】
(実施の形態7)
図7は実施の形態7にかかる半導体装置であり、耐圧1.2kV、電流容量30A級のSi半導体素子を用いて構成されたSi誘電体分離型単相インバータ集積回路半導体装置の1相分の出力素子構成を示す。出力用素子はいずれもトレンチゲート構造の逆導通Si-IGBTであり、上アームは縦型構造の逆導通Si-IGBT、下アームは横型構造の逆導通Si-IGBTである。図7では簡略化した素子構造を記載しており、各構造因子の番号と矢印は割愛しているが、横型構造の逆導通Si-IGBTは素子サイズとp型単結晶素子支持基板上に形成されている点を除けば図1の実施の形態1のIGBTと素子構成はほぼ同じであり、縦型構造の逆導通Si-IGBTも素子サイズを除けば図2の実施の形態2のIGBTと素子構成はほぼ同じである。
図7の素子構造の作製プロセスフローは図3のプロセスフローとほぼ同じである。すなわち図示されていないが、縦型構造の逆導通Si-IGBTよりも大きな横型構造逆導通Si-IGBT用の単結晶島を図3の小さな制御回路用素子の単結晶島260と同様に作成し、図3(5)の集積回路半導体装置用チップ製作用のウエーハを完成する。その後、単結晶島内に形成する縦型構造逆導通Si-IGBTの素子部分とほぼ同様のプロセスフローで単結晶島内に横型構造逆導通Si-IGBTも作成される。
【0080】
単相インバータの各相の上アームは電源の高電位の配線に各層の逆導通Si-IGBTの
コレクタが並列接続しているので、図2の第2主電極(コレクタ電極)203に素子支持
基板を介してコレクタ204が並列接続できる素子構造が好適である。一方、各相の下ア
ームは電源の低高電位の配線に並列接続されているがインバータの稼働中にコレクタの電
位は変化するので、第2主電極(コレクタ電極)203が他相から独立している横型構造
の逆導通Si-IGBTが好適である。このため、好適な1相分のアーム構造として図7
の構造を設定するものである。
縦型構造逆導通Si-IGBTに比べて横型構造逆導通Si-IGBTはドリフト抵抗が大きく、従って上下アームの1.2kV素子の電流容量をほぼ同じにするためオン抵抗をほぼ同等にできる3倍程度の素子面積にする必要がある。試算結果では、600V、5kW、PWM周波数20kHz級の1チップ単相インバータは20mmx20mmのチップサイズで実現できると見込める。
この結果、家電・事務・車両・産業用等の各種モータ搭載機器の小型軽量化・低損失化に多大の寄与が期待できる。
【0081】
(実施の形態8)
図8の実施の形態8にかかる半導体装置は、耐圧1.2kV、電流容量80A級のSiC
半導体素子を用いて構成されたSiC誘電体分離型3相インバータ集積回路半導体装置の
1相分の出力素子構成を示す。出力用素子はいずれもトレンチゲート構造であり、上アー
ムは縦型構造の逆導通SiC-MOSFET、下アームは横型構造の逆導通SiC-MOS
FETである。図8では簡略化した構造を記載しているが、縦型構造の逆導通SiC-M
OSFETは素子サイズを除けば図4の実施の形態3のSiC-MOSFETと素子構成
はほぼ同じである。また横型構造の逆導通SiC-IGBTはSiでなくSiC半導体で
構成しており、各構成因子の値がSiC素子に対応する値になることとその素子サイズを
除けば図1の実施の形態1のIGBTと単結晶島内の素子構成はほぼ同様である。
図8の素子構造の作製プロセスフローは図3のプロセスフローとほぼ同じである。すなわ
ち図示されていないが、縦型構造の逆導通SiC-MOSFETよりも大きな横型構造逆
導通SiC-MOSFET用の単結晶島を小さな制御回路用素子の単結晶島260と同様
に作成し、図3(5)の集積回路半導体装置用チップのウエーハを完成する。その後、単
結晶島内に形成する縦型構造逆導通SiC-MOSFETの素子部分とほぼ同様のプロセ
スフローで単結晶島内に横型構造逆導通SiC-MOSFETも作成される。
【0082】
3相インバータの各相の上アームは電源の高電位の配線に各層の逆導通SiC-MOSF
ETのコレクタが並列接続しているので、図2の第2主電極(ドレイン電極)203に素
子支持基板を介してドレイン204が並列接続できる素子構造が好適である。一方、各相
の下アームは電源の低高電位の配線に並列接続されているがインバータの稼働中にコレク
タの電位は変化するので、第2主電極(ドレイン電極)203が他相から独立している横
型構造の逆導通SiC-MOSFETが好適である。このため、最も好適な構造として図
8の構造を設定するものである。
縦型構造逆導通SiC-MOSFETに比べて横型構造逆導通SiC-MOSFETはドリ
フト抵抗が大きく、従って上下アームの1.2kV素子の電流容量をほぼ同じにするため
横型構造逆導通SiC-MOSFETの単結晶島サイズをオン抵抗がほぼ同等にできる約
1.9倍程度に大きくする必要がある。試算結果では600V、30kW、PWM周波数
20kHz級の1チップ3相インバータは、3相構成にも関わらず20mmx20mmの
チップサイズで実現できると見込める。
この結果、家電・事務・車両・産業用等の各種モータ搭載機器の小型軽量化・低損失化
・高信頼性化に多大の寄与ができる。
【0083】
(実施の形態9)
実施の形態9にかかる半導体装置は、図示していないが耐圧1.2kV、電流容量60A級のSiC半導体素子を用いて構成されたSiC誘電体分離型3相インバータ集積回路半導体装置である。
1相分を構成する出力用素子はいずれもトレンチゲート構造の逆導通SiC-IGBTで
あり、上アームは縦型構造の逆導通SiC-IGBT、下アームは横型構造の逆導通Si
C-IGBTである。素子支持基板はp+多結晶基板で構成される。縦型構造の逆導通Si
C-IGBTは図6の実施の形態5のIGBTと素子構成はほぼ同じである。
横型構造の逆導通SiC-IGBTは図1の実施の形態1と素子サイズとSiC半導体に
該当する値の構造因子を用いている点、p型単結晶素子支持基板上に形成されている点を
除けば同じである。その他、上記の実施の形態6との相異事項が少ないので説明は割愛す
るが、電流容量が60Aと大きく3相構成にも関わらずIGBTの電導度変調によるオン
抵抗低減効果が大きく寄与し、高温用途に適した600V、20kW、PWM周波数20
kHz級の1チップ3相インバータを20mmx20mmのチップサイズで実現できると
見込める。
この結果、家電・事務・車両・産業用等の各種モータ搭載機器の小型軽量化・低損失化
・高信頼性化に多大の寄与ができる。
【0084】
以上、第1から第9の実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらに限定
されるものではなく各種の変形応用が容易に出来ることは当業者には自明である。例えば
、構造諸元の数値の変更やセル構造の改修により、2kV以上の更に高い耐圧や逆に1k
Vの以下の低耐圧の逆導通半導体素子を出力素子とするパワー集積回路半導体装置に適用
できることは当然である。n型逆導通SiC-IGBTに言及したが、極性の異なるp型
逆導通SiC-IGBTにも同様に展開できることも自明である。セル形状も言及したス
トライブ形状以外にハニカム形状を含む各種のメッシュ形状に変形応用できることは当然
である。また、言及したトレンチゲート型IGBTやMOSFET以外にプレーナゲート
型等の各種ゲートの半導体素子に適用できることも当然である。
更に、逆導通半導体素子として逆導通SiC-IGBTと逆導通SiC-MOSFETに
ついて言及したが、静電誘導トランジスタや接合ゲートトランジスタなどの他のトランジ
スタ展開できることや、GaNやダイヤモンドといった他のワイドギャップ半導体を用い
た逆導通半導体素子にも展開できるものである。
また、EPICと呼ばれる誘電体絶縁分離型集積回路半導体装置について言及したが、その単結晶島の結晶面構成は本発明で言及した構成に限定されるものではなく、単結晶島の表面や裏面に対して特有の一定の結晶面角度を有する結晶面で側面を構成できることは当業者には容易に推敲できるものである。また、4H-SiCに関して言及したが、他のポリタイプのSiC結晶にも応用展開できることも容易に推敲できるものである。更に、EPIC以外のSOIやその他の誘電体絶縁分離型集積回路半導体装置にも適用できること、更にはpn接合分離型集積回路半導体装置にも変形応用できることは当業者には容易なことである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明はEVやHEV、電鉄車両などの各種インバータ等に利用でき、大幅な小型軽量化
や低損失化により、効率向上や走行距離の延長などが図れる。また、太陽光発電用や風力
発電用パワーコンディショナー等の小型軽量化や低損失化による効率向上が図れる。更に
、家電品や事務機器の電源やインバータなどに適用し小型軽量化や低損失化が図れる。こ
のように、産業上の利用可能性はすこぶる大きい。
【符号の説明】
【0086】
[1].101、201、301、401,501、601 :素子集積基板。
[2].102、202、302、402,502、602 :素子支持基板。
[3].103,203,303、403、503、603 :第1主電極。
[4].104,204,304、404、504、604 :p+コレクタ層。
[5].105,205,305、405、505、605 :n+短絡部又はn+ドレイン。
[6].106,206、306、406,506,606 :絶縁分離酸化膜。
[7].107,207、307、407、507,607 :nバッファー層。
[8].108,208,308、408、508、608 :nドリフト層。
[9].109,209,309、409、509、609 :pボディ領域。
[10].110,210,310、410、510、610 :n+エミッタ領域。
[11].111,211,311、411、511、611 :ゲート酸化膜。
[12].112,212、312、412、512、612 :多結晶Si電極。
[13].113,213,313、413、513、613 :ゲート電極。
[14].114,214,314、414、514、614 :層間絶縁膜。
[15].115、215,315、415、515、615 :第3主電極。
[16].116,216,316、416、516、616 :渡り配線。
[17].117,217,317、417、517、617 :分離領域。
[18].118,218、318、418、518、618 :渡り配線下絶縁膜。
[19].119、219、319、419、519,619 :内部配線。
[20].120,220,320、420、520、620 :第1主電極。
[21].121,221,321、421、521、621 :表面キャリア濃度低減電界緩和領域(SCaDFRR)。
[22].122,222、322、422、522、622 :制御回路用素子の電極。
[23].123、223、323,423、523、623 :フィールドプレート。
[24].124、224、324,424,524、624 :表面電界緩和層(略称FRR)。
[25].125,225,325,425、525、625 :傾斜チャネルストッパー
[26].140、240,340,440,540、640 :埋込み絶縁膜。
[27].230 :単結晶主基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2021-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
ところで、開示されている先行技術例1をはじめとするSi逆導通IGBTの場合、出力特性すなわちコレクターエミッタ間電圧(以下、Vceと記す)とコレクターエミッタ間電流(以下、Iceと記す)の間のIce-Vce特性には、オン直前のコレクターエミッタ間電圧がオン直後のコレクターエミッタ間電圧よりも大きいというスナップバック現象が発生し、各種の過渡現象を誘発し信頼性を損ねてしまう。オン直前のコレクターエミッタ間電圧を以下ではスナップバック電圧と呼びVsbと記述し、このVsbにおけるコレクターエミッタ間電流をスナップバック電流と呼びIsbと記述する。先行技術例2のSi逆導通IGBT(nチャネル型)は、複数の逆導通Si-IGBTセルから構成される逆導通Si-IGBT領域と1個のパイロットIGBTセルから構成されるパイロットIGBT領域とから構成されている。パイロットIGBTセルのコレクタの幅は逆導通IGBTセルのコレクタの幅よりも大幅に大きくすることにより短絡部間のバッファー層の横抵抗を大幅に大きくし、小さなIsbでパイロットIGBT領域が逆導通IGBT領域に先駆けてオンするようにしてタ-ンオンする際に発生するスナップッバック現象を抑制して過渡電圧や過渡電流による誤動作を抑え高信頼性化を図っている。なお、これらの開示されているIGBTはnドリフト層がn+短絡部によりコレクタ電極に短絡されているので、逆電圧に対する阻止能力がないために、逆導通IGBTと総称されている。それ故、以下ではいずれも逆導通IGBTと呼ぶ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
【非特許文献1】ハジメ・アキヤマ (Hajime AKIYAMA)、他5名、EFECTS OF SHORTED COLLECTOR ON CHARACTERISTICS OF IGBTS、プロシーディングス オブ ザ セカンド インターナショナル シンポジューム オン パワー セミコンダクタ デバイシズ アンド ICs (Proceedings of The 2nd International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs),1990年4月、p.131-136.
【非特許文献2】リウタウラス ストラスタ (Litauras Storasta),他2名、A Comparison of charge dynamics in the Reverse-Conducting RCIGBT and Bi-mode Insulated Gate Transistor BiGT、プロシーディングス オブ ザ トエンテイセカンド インターナショナル シンポジューム オン パワー セミコンダクタ デバイシズ アンド ICs (Proceedings of The 22nd International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs),1010年6月、p.391-394.
【非特許文献3】ミゾグチ(T.Mizoguchi)、シラサワ(T.Shirasawa)、モリ(M.Mori)、スガワラ(Y.Sugawara)、600V,25A Dielectrically-Isolated Power IC with Vertical IGBT、 プロシーディングス オブ ザ サード インターナショナル シンポジューム オン パワー セミコンダクタ デバイシズ アンド ICs (Proceedings of The 3rd International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs),1991年4月、p.40-44.
【非特許文献4】コータロウ カワハラ (Koutarou KAWAHARA)、他9名、6.5kV Schottky-Barrier-Diode-Embedded SiC-MOSFET for Comact Full-Unipolar Modeule.プロシーディングス オブ ザ セカンド インターナショナル シンポジューム オン パワー セミコンダクタ デバイシズ アンド ICs (Proceedings of The 29th International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs),2017年6月、p.41-44.
【手続補正書】
【提出日】2022-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
説明に先立ち、一部の用語の定義を行う。
集積回路半導体装置において、集積回路半導体装置チップから電極や配線や絶縁保護膜などを除いた半導体部分をチップ本体と定義してこの名称で記述する。
また、集積回路構成素子は他の集積回路構成素子と半導体チップ本体上の表面絶縁保護膜を介して配線により結線されており、半導体チップ本体内の表面に露出した構成素子間の分離領域と誘電体絶縁分離膜と傾斜チャネルストッパーとの上を渡る配線部分を渡り配線と定義する。
チップ本体は素子集積基板とその下に素子支持基板を重ねて構成されている。素子を形成した単結晶島が誘電体絶縁分離膜を介して敷き詰められた分離領域で構成されるチップ本体の上部を素子集積基板と定義し、この基板を支持するとともにその中の全部もしくは一部が素子の導電路および放熱路として機能するチップ本体の下部を素子支持基板と定義し、以下ではこれらの名称で記述する。
また単結晶島に集積された半導体素子において、入力電極と出力電極の両方がチップの一方の主表面、すなわち上記の素子集積基板にて素子支持基板とは反対側の表面Aに形成されている素子を横型半導体素子と定義する。また、入力電極と出力電極のいずれか一方の電極が素子集積基板の表面Aに形成されており、他方の電極がチップの他方の主表面、すなわち上記の素子支持基板にて素子集積基板とは反対側の表面Bに形成されている素子を縦型半導体素子と定義する。
なお、以下では煩雑さを避け理解を容易にするために、nチャネルタイプのIGBTとnチャネルタイプのMOSFETを電力容量の大きい構成素子(例えば出力用素子)とするパワー集積回路半導体装置を対象にして説明する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
本発明では、横型半導体素子のみで構成した集積回路半導体装置用には、多結晶貼り付け面を有する素子集積基板用ウエーハと単結晶貼り付け面を有する素子支持基板用ウエーハとを貼り合わせて半導体チップ形成用ウエーハを構成している。素子集積基板用ウエーハの素子集積基板用ウエーハの貼り付け前処理としては、例えば70℃のNH 4 OHとH 2 O 2 溶液で処理し超純水でリンスし更にスピンドライし、ついでこの素子集積基板用ウエーハ上に素子支持基板用単結晶Siウエーハをセットし酸化雰囲気で高温熱処理して貼り合わせる。
従来のエピタキシャル成長で両ウエーハを一体化して形成した場合に比べて、支持基板形成用の高温・長時間のエピタキシャル成長行程と大きな彎曲を平坦化するための成長後の研削・研磨行程等を割愛でき、パワー集積回路半導体装置製作プロセスの大幅な簡略化が達成できかなりの低コスト化ができるという利点がある。
一方、縦型半導体素子を含んで構成した集積回路半導体装置の形成用には、絶縁分離酸化膜を削除して縦型半導体素子を形成する領域の単結晶面と絶縁分離酸化膜上に形成した多結晶面が混在する貼り付け面を有する素子集積基板用ウエーハと、単結晶面のみの貼り付け面を有する素子支持基板用ウエーハを貼り付けて新規な半導体チップ形成用貼合わせ構造([0022]に記載のSP&S-DBS)のウエーハを実現している。単結晶面同士の貼り合わせ面部は単結晶面と多結晶面との貼り合わせ面部に比べて貼り合わせ強度は高いが、単結晶面同士の貼り合わせでは貼り合わせ境界にボイドが発生し貼り付け強度を低下させる傾向があるため、貼り付け温度や貼り付け圧力や貼り付け雰囲気ガスおよび前処理プロセスやその材料に工夫を凝らしてこれを克服している。
例えば、前処理プロセスとして研磨した単結晶面と多結晶面が混在する貼り付け面を有する素子集積基板用ウエーハと単結晶面のみの貼り付け面を有する素子支持基板用ウエーハ
の両ウエーハを貼り付け前に水素アニール等の還元性雰囲気で熱処理を行い、貼り付け面のSi原子のダングリンリングボンドに水素原子を結合させる。ついで両ウエーハの貼り付け工程は酸化性雰囲気で行い、この水素原子を酸素と結合させてH 2 Oとして取り除くとともに両ウエーハの貼り付け面のSi原子同士を結合させる。この結合により貼り付け強度を大きくするために貼り付け温度やウエーハに加える貼り付け圧力を本段落の初めに上記した多結晶貼り付け面と単結晶貼り付け面の貼り合わせに比べてより高くしている。
この結果上記の横型半導体素子のみの場合に比べて、貼り付け強度の高い単結晶面同士の貼り付け部分が存在しこの部分の貼り付け強度が向上するため貼り合わせウエーハ全体の貼り付け強度が向上するので、その後の素子製作工程における部分剥がれなどに起因する損傷が更に低減し良品歩留まりの向上が見込める。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
この発明にかかるパワー集積回路半導体装置は、上記した発明において、
前記集積回路半導体装置をSiC半導体のようなワイドギャップ半導体で構成している。
この結果、Si半導体を大幅に凌駕する更なる高耐圧、低損失、小チップ、高耐熱な
どの高性能を有する半導体装置が実現できる。また誘電体分離型パワー集積回路半導体装
置はpn分離型パワー集積回路半導体装置に比べて、リーク電流が高温でも極めて少ない
ため高耐圧・高耐熱達成に適しており、且つpn接合による素子分離に比べて素子間の分離領域の幅を大幅に狭くできるためチップの小型低損失化達成にも適している。従って両者を組合せて構成するSiC誘電体分離型パワー集積回路半導体装置は理想的なパワー半導体装置といえる。
なお、SiC半導体で構成するSP&S-DBSウエーハ構成の集積回路半導体装置の場合は、例えば一例として、貼り合わせ強度を高くするために〔0035〕記載のように、
前処理プロセスとして研磨した単結晶面と多結晶面が混在する貼り付け面を有する素子集積基板用ウエーハと単結晶面のみの貼り付け面を有する素子支持基板用ウエーハ
とを貼り付け前に、両ウエーハを水素アニール等の還元性雰囲気で熱処理を行い貼り付け面のSi原子や炭素原子(以下C原子と表記)のダングリンリングボンドに水素原子を結合させる。その後の貼り付け工程は酸化性雰囲気で行いこの水素原子を酸素と結合させてH 2 Oとして取り除くとともにSi原子とC原子を結合させる。この結合による貼り付け強度を大きくするために貼り付け温度やウエーハに加える貼り付け圧力を〔0035〕記載のSiの場合よりも高目にしている。
この前処理に先立つ両ウエーハの仕上げ研磨には、原子レベルの超高精細の研磨精度を有する触媒表面基準エッチング法(通称CARE法)などを適用するのが効果的である。
なお、上記の貼り付け前の還元性雰囲気での熱処理は、NOやN 2 O雰囲気での窒化処理でもよく、その後の貼り付け工程を同様に酸化性雰囲気で行うことによりダングリンリングボンドの窒素原子を酸素と結合させて取り除くとともに両ウエーハの貼り付け面のSi原子とC原子を結合させ貼り合わせを遂行できる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかるパワー集積回路半導体装置チップ100の主要部である
出力素子を中心に模式的に示した断面図である。図1に示す実施の形態1にかかる半導体
装置チップ100は、Si半導体を用いて作製された例えば設計耐圧1.2kV・3A級
の誘電体分離型パワー集積回路半導体装置チップであり、図1中には出力素子周辺も少し
示されている。出力用素子はトレンチゲート構造の逆導通IGBTであり、ストライブ形
状である。ストライブ状単結晶島にはストライブ状セルが25個形成されているが、煩雑
化を避けるために図には3セルしか記載していない。単結晶島幅は約520μm、単結晶
島長さは5mmである。
誘電体分離型はpn分離型に比べて、リーク電流が高温でも極めて少なく且つ素子間の絶
縁分離領域が大幅に小さくてすむので高耐圧化とチップサイズ低減が容易であり、高耐圧
パワー集積回路半導体装置には大変好適である。
なお、本実施の形態1のチップ本体は素子集積基板101と素子支持基板102とで構成
されており、両基板はウエーハ貼り付け技術で貼り合わされている。この用いたウエーハ
貼付け技術は本発明者等によって開発され、「NEW DIELECTRIC ISOLATION FOR HIGH VOLTAGE ICS BY SINGLE SILICON POLY SILICON DIRECT BONDING (SPSDB) TECHNIQUE」というタイトルで「Proceedings of 1992 International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs,1992年5月、p.316-321」において開示している。このウエーハ貼り付け技術による貼り付け構造は[0022]の名称の仕方を踏襲するといわばP&S-DBSと呼ぶべき構造であり、例えば[0035]の上部1~10行に記載の貼り付け方法とその前処理を用いて形成可能である。この構造の適用により、従来の誘電体分離型パワー積回路半導体装置製作プロセスにおける厚い素子支持基板形成用の1200℃以上の高温且つ長時間のエピタキシャル成長行程を割愛できる。この結果、パワー集積回路半導体装置製作プロセスの大幅な簡略化が達成できるとともに製作装置の大幅な簡略化と保守の簡易化ができ、大幅な低コスト化ができるという利点がある。なお、これまで開示されているSOIを含めた誘電体分離型パワー集積回路半導体装置の
各種貼り付け構造はほとんどP&S-DBSである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2にかかるSiパワー集積回路半導体装置チップ200の主要部である出力素子を中心に模式的に示した断面図である。図2に示す実施の形態2にかかる半導体装置チップ200は、Si半導体を用いて作製された例えば設計耐圧1.2kV・60A級の誘電体分離型パワー集積回路半導体装置チップであり、素子集積基板201と素子支持基板202とは本発明による新規な貼り付け構造(SP&S-DBS)を用いて貼り合わせて構成されている。
この構成は、例えば[0035]の上部19~26行に記載の貼り付け方法とその前処理を用いて形成可能である。
出力素子はトレンチゲート構造の縦型構造逆導通IGBTであり、本発明による新規な逆導通IGBT構造を用いており、素子集積基板201の誘電体絶縁分離単結晶島内と隣接する分離領域217とに集積されている。なお、出力素子はストライブ形状であり、ストライブ状単結晶島幅は約6.5mm、単結晶島長さは5mmである。ストライブ状単結晶島にはストライブ状セルが500個形成されているが、煩雑化を避けるために図には模式的に4セルしか記載していない。
前記のように誘電体分離型はpn分離型に比べて、リーク電流が高温でも極めて少なく且つ分離領域が大幅に小さくてすむので高耐圧化とチップサイズ低減が容易であり、高耐圧パワー集積回路半導体装置には好適である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
(実施の形態3)
一般に、SiC半導体素子はSi半導体素子に比べて、高耐圧・小型低損失・高耐熱・
高放熱、高電力耐量等の点で大幅に優れた性能を有しており、パワー素子に好適である。
特に、SiCの絶縁破壊電界強度が高いため素子のフィールド領域の幅をSiの一桁程度
小さくできるので同耐圧の場合大幅な素子面積の低減ができる。一方、誘電体分離型パワ
ー集積回路半導体装置はpn分離型パワー集積回路半導体装置に比べて、リーク電流が高
温でも極めて少ないため高耐圧・高耐熱達成に適しており、且つ素子分離領域の幅を
大幅に狭くできるため小型低損失の高耐圧集積回路半導体装置に好適である。これらの特
徴に注目した本発明者は本発明の目的を更によく達成するために、実施の形態1及び2で
示した本発明の新規な多結晶面・単結晶面混在貼り合わせ構造SP&S-DBSと新規な
SCaDFRR構造に加えて、SiC誘電体分離型パワー集積回路半導体装置に好適な新
規な単結晶島結晶面構造を考案し、これらを適用して本実施の形態3を構成した。
図4は、実施の形態3にかかるSiC半導体を用いて作製したSiC誘電体分離型パワー
集積回路半導体装置チップ300の主要部である出力素子を中心に示した模式的な断面図
である。集積回路半導体装置チップ300は素子集積基板301と素子支持基板302と
を本発明による新規な貼り付け構造SP&S-DBSを用いて貼り合わせて構成している。但し、現在のSiCバルク結晶はSiバルク結晶に比べて結晶品質が劣るので、例えば図3のプロセスフロー(IGBTのプロセスフローであるのでMOSFETとの相違を承知で参考にされたい。)の[1]([0057]に記載)において、スタートのn単結晶主基板230への分離溝形成用マスク形成の前に、SiC単結晶主基板(図3の230に相当)に所定の深さのV分離溝よりも厚いn型単結晶層のエピタキシャル成長を実施し、このエピタキシャル層に完成後の単結晶島全てが内蔵されるようにしている。この結果、SiCエピタキシャル単結晶層はSiCバルク結晶に比べて結晶品質がはるかに良好なので、エピタキシャル単結晶島に形成された各集積回路構成素子はSiCバルク結晶内に形成された場合に比べて格段に優れた特性を持つようにできる。なお当然ながら、SiC単結晶主基板は図3のプロセスフロー[5]の研磨工程で全て削除され素子集積基板の各単結晶島内にはエピタキシャル単結晶のみが残る。実施の形態4以降の素子集積基板も同様である。
なお、上記の新規なSiCの貼り付け構造SP&S-DBSは、例えば[0036]の上部11~18行に記載の貼り付け方法とその前処理を用いて形成可能である。なお、以降の実施の形態4、5、8のSiC誘電体分離型パワー集積回路半導体装置のSiCチップも同様である。