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特開2023-183500金属下地屋根における軽量な高断熱耐火構造及び該構造の施工方法
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  • 特開-金属下地屋根における軽量な高断熱耐火構造及び該構造の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183500
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】金属下地屋根における軽量な高断熱耐火構造及び該構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/35 20060101AFI20231221BHJP
   E04D 1/28 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
E04D3/35 Q
E04D1/28 F
E04D3/35 F
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097046
(22)【出願日】2022-06-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 北海道建設新聞 令和3年12月10日付第3面
(71)【出願人】
【識別番号】520508941
【氏名又は名称】山川 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】弁理士法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】山川 孝幸
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AZ01
2E108BN02
2E108BN03
2E108CC01
2E108CC02
2E108CC07
2E108FF11
2E108FG03
2E108GG10
(57)【要約】
【課題】 断熱パネルを貫通するビスを用いることなく複数の断熱パネルを金属下地屋根に積層させることによって、軽量な高断熱耐火構造を提供する。
【解決手段】 断熱耐火構造は、建築物の梁の上に積層された複数の断熱層を備える。複数の断熱層の各々は、立ち上がり部を少なくとも有する複数の基礎部材と、立ち上がり部に結合される結合部と該結合部の上部に位置するパネル載置部とを各々が有し、互いに平行に配置された複数のレール部材とを有する。複数の基礎部材と、それらに結合される複数のレール部材とによって、複数の母屋が形成される。複数の断熱層の各々は、パネル載置部の上に配置される複数の断熱パネルを有し、複数の断熱パネルとパネル載置部とは複数の固定部材によって固定される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属下地屋根において施工される断熱耐火構造であって、
建築物の梁の上に積層された複数の断熱層を備え、前記複数の断熱層のうち最下層の断熱層が建築物の梁に固定されており、
前記複数の断熱層の各々は、
立ち上がり部を少なくとも有する複数の基礎部材と、
前記立ち上がり部に結合される結合部と該結合部の上部に位置するパネル載置部とを各々が有し、互いに平行に配置された複数のレール部材と、
前記パネル載置部の上に配置される複数の断熱パネルと、
前記レール部材に連結され、前記複数の断熱パネルを前記パネル載置部に固定する、複数の固定部材と
を含む断熱耐火構造。
【請求項2】
前記複数の断熱層において、上下に隣接する断熱層のそれぞれの前記複数のレール部材が、互いに直交する方向に配置される、
請求項1に記載の断熱耐火構造。
【請求項3】
前記複数のレール部材が有する前記パネル載置部の各々は複数の受け部を有し、前記複数の固定部材の各々は連結部を有しており、
前記複数の受け部のそれぞれに前記連結部を係合させることによって、前記複数の断熱パネルが前記パネル載置部に固定される、
請求項1又は請求項2に記載の断熱耐火構造。
【請求項4】
前記複数の受け部の各々は、2つのスリットと、前記2つのスリットの間において前記パネル載置部の面から隆起するように設けられた隆起部とを有し、
前記連結部は、前記2つのスリットを通して前記隆起部の下に挿入される、
請求項3に記載の断熱耐火構造。
【請求項5】
前記連結部は、挿入後に前記連結部が前記受け部から外れないようにするためのストッパを有する、
請求項3に記載の断熱耐火構造。
【請求項6】
前記立ち上がり部は、板状体であり、
前記結合部は、前記板状体の厚みに対応する間隔で配置された2つの挟持壁からなる、
請求項1又は請求項2に記載の断熱耐火構造。
【請求項7】
前記立ち上がり部と前記結合部とは、それぞれ対応する位置に1つ又は複数の貫通孔を有し、該1つ又は複数の貫通孔に締結部材を挿通させることによって互いに結合される、
請求項1又は請求項2に記載の断熱耐火構造。
【請求項8】
前記基礎部材は、略L字又は略I字の横断面形状を有し、
前記レール部材は、略T字の横断面形状を有する
請求項1又は請求項2に記載の断熱耐火構造。
【請求項9】
前記複数の断熱パネルにおける隣接する2つの断熱パネルは、一方の断熱パネルの端部に凸部を有し、他方の断熱パネルの端部に凸部に対応する形状の凹部を有して、凸部と凹部とが嵌合することによって互いに組み合わされる構造であり、
前記複数の固定部材は、少なくとも一部が前記凸部と前記凹部との嵌合部に対応する形状を有する、
請求項1又は請求項2に記載の断熱耐火構造。
【請求項10】
前記固定部材の前記少なくとも一部は、前記嵌合部に挟まれた状態のときに隣接する断熱パネルの一方又は両方に挿入される挿入部をさらに有する、
請求項9に記載の断熱耐火構造。
【請求項11】
前記複数の断熱層のうち最上層の断熱層は、内部に傾斜面を有する樋状のガーターパネルを含む、
請求項1又は請求項2に記載の断熱耐火構造。
【請求項12】
金属下地屋根において複数の断熱層を含む断熱耐火構造を施工する方法であって、
(a)立ち上がり部を少なくとも有する複数の基礎部材を建築物の梁に取り付ける工程と、
(b)結合部及び該結合部の上部に位置するパネル載置部を各々が有する複数のレール部材を、前記結合部と前記立ち上がり部とを結合することによって、互いに平行に配置されるように前記複数の基礎部材に取り付ける工程と、
(c)前記レール部材に連結される複数の固定部材を用いて、複数の断熱パネルを前記複数のレール部材に固定する工程と、
(d)前記複数の固定部材に、立ち上がり部を少なくとも有する別の複数の基礎部材を取り付ける工程と、
(e)結合部及び該結合部の上部に位置するパネル載置部を各々が有する別の複数のレール部材を、前記結合部と前記立ち上がり部とを結合することによって、互いに平行に、かつ、前記(b)の工程で配置された複数のレール部材と直交するように、前記別の複数の基礎部材に取り付ける工程と、
(f)前記別のレール部材に連結される別の複数の固定部材を用いて、別の複数の断熱パネルを前記別の複数のレール部材に固定する工程と
を含む方法。
【請求項13】
前記(f)の工程の後に、前記(d)及び前記(e)の工程をさらに繰り返すことによって、1つ又は複数の断熱層さらに積層させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記(f)の工程は、樋状に形成された1つ又は複数のガーターパネルを前記別の複数のレール部材に固定することを含む、請求項12又は請求項13に記載の方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属下地屋根における断熱構造に関し、より具体的には、金属下地屋根の上に、固定用ビスを用いることなく複数の断熱パネルを積層させた軽量な高断熱耐火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋根の施工方法として、近年、金属下地の上に、ボード又はパネル状に成形された断熱材を敷設し、その上に防水層を施す工法が多く採用されるようになっている。このような工法として、機械的固定工法が用いられている。機械的固定工法は、例えば特許文献1又は非特許文献1において提案される工法や、特許文献2又は非特許文献2において提案される工法である。
【0003】
特許文献1又は非特許文献1に提案される工法は、母屋上に配置された折れ板状の金属板の上に断熱材を敷設し、固定用ビスで断熱材を貫通させて金属板に固定し、さらにその上に防水シートを配置して固定用ディスクで支持するものである。特許文献2又は非特許文献2に提案される工法は、例えば断熱材を鋼板で挟んだボード又はパネルを母屋上に敷設し、ボード又はパネルを貫通する固定用ビスでこれらを母屋に固定し、さらにその上に防水シートを配置して固定用ディスクで支持するものである。
【0004】
一方、近年、地球温暖化の進行を抑制することが急務となっており、これに対応するため、各業界で、例えばカーボンニュートラルや脱炭素などといった概念が取り入れられている。学校などの公共施設や中・大規模の民間建築物についても、温暖化ガスの低減を目指して、高断熱かつ高気密の建築物が必要とされている。こうした状況下で、公共施設などの既存建築物においては、一般に、コンクリートで屋根を作り、断熱材を敷いた後に防水を施工し、天井裏にグラスウールなどの断熱材を施すことによって断熱効果を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-1533号公報
【特許文献2】特開2002-294940号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】住ベシート防水株式会社ウェブサイト「防水システム、屋上防水、サンブリッド-金属下地」、<URL:http://www.sunloid-dn.jp/products/roof/sunbrid/>
【非特許文献2】住ベシート防水株式会社ウェブサイト「防水システム、屋上防水、サンブリッド-ルーフボード下地」、<URL:http://www.sunloid-dn.jp/products/roof/roofboard/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び非特許文献1に提案される工法、並びに特許文献2及び非特許文献2に提案される工法は、いずれも、断熱材、ボード又はパネルなどの断熱パネル部材を固定する多数のビスと、防水シートを支持するディスクを固定する多数のビスが用いられる。したがって、断熱パネル部材の下面には、これらを貫通して多くのビスが突出し、多数のビスの存在によって結露が発生する可能性がある。また、これらの固定用のビスは、建築物の微振動によって抜けかかる場合があり、抜けかかったビスが打ち込まれている断熱パネル部材の貫通孔を通して漏水が発生するおそれがある。さらに、多数のビスを施工するため、工程が多くなる。
【0008】
また、従来の屋根における断熱構造、すなわち、コンクリートで屋根を作り、断熱材を敷いた後に防水を施工し、天井裏にグラスウールなどの断熱材を施すことによって断熱効果を得る構造は、重量が大きくなり、大地震の際などに倒壊のおそれがある。
【0009】
さらに、特許文献1及び非特許文献1に提案される工法、並びに特許文献2及び非特許文献2に提案される工法では、固定用ビスで断熱材を貫通させて固定するため、火事の際に固定用ビスがヒートブリッジになって断熱材のウレタンに熱を与え、断熱材の燃焼を促進するおそれがある。
【0010】
本発明は、断熱パネルを貫通するビスを用いることなく複数の断熱パネルを金属下地屋根に積層させることによって、軽量な高断熱耐火構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、金属下地屋根において施工される断熱耐火構造を提供する。断熱耐火構造は、建築物の梁の上に積層された複数の断熱層を備え、複数の断熱層のうち最下層の断熱層が建築物の梁に固定される。複数の断熱層の各々は、立ち上がり部を少なくとも有する複数の基礎部材と、立ち上がり部に結合される結合部と該結合部の上部に位置するパネル載置部とを各々が有し、互いに平行に配置された複数のレール部材とを有する。複数の基礎部材と、それらに結合される複数のレール部材とによって、複数の母屋が形成される。複数の断熱層の各々は、パネル載置部の上に配置される複数の断熱パネルを有し、複数の断熱パネルとパネル載置部とは複数の固定部材によって固定される。
【0012】
一実施形態では、複数の断熱層において、上下に隣接する断熱層のそれぞれの複数のレール部材が、互いに直交する方向に配置される。
【0013】
一実施形態では、複数のレール部材が有するパネル載置部の各々は複数の受け部を有し、複数の固定部材の各々は連結部を有する。複数の受け部のそれぞれに連結部を係合させることによって、複数の断熱パネルがパネル載置部に固定される。複数の受け部の各々は、2つのスリットと、2つのスリットの間においてパネル載置部の面から隆起するように設けられた隆起部とを有し、連結部は、2つのスリットを通して隆起部の下に挿入されることが好ましい。これによって、断熱パネルがパネル載置部に固定される。連結部は、挿入後に連結部が前記受け部から外れないようにするためのストッパを有することが好ましい。
【0014】
一実施形態において、基礎部材の立ち上がり部は、板状体であり、レール部材の結合部は、板状体の厚みに対応する間隔で配置された2つの挟持壁からなることが好ましい。立ち上がり部と結合部とは、それぞれ対応する位置に1つ又は複数の貫通孔を有し、該1つ又は複数の貫通孔に締結部材を挿通させることによって互いに結合される。基礎部材は、略L字又は略I字の横断面形状を有し、レール部材は、略T字の横断面形状を有することが好ましい。
【0015】
一実施形態において、複数の断熱パネルにおける隣接する2つの断熱パネルは、一方の断熱パネルの端部に凸部を有し、他方の断熱パネルの端部に凸部に対応する形状の凹部を有して、凸部と凹部とが嵌合することによって互いに組み合わされる構造である。この場合、複数の固定部材は、少なくとも一部が凸部と凹部との嵌合部に対応する形状を有する。固定部材の少なくとも一部は、嵌合部に挟まれた状態のときに隣接する断熱パネルの一方又は両方に挿入される挿入部をさらに有することが好ましい。
【0016】
一実施形態において、複数の断熱層のうち最上層の断熱層は、内部に傾斜面を有する樋状のガーターパネルを含むことが好ましい。
【0017】
本発明の別の態様は、 金属下地屋根において複数の断熱層を含む断熱耐火構造を施工する方法を提供する。この方法は、(a)立ち上がり部を少なくとも有する複数の基礎部材を建築物の梁に取り付ける工程と、(b)結合部及び該結合部の上部に位置するパネル載置部を各々が有する複数のレール部材を、結合部と立ち上がり部とを結合することによって、互いに平行に配置されるように複数の基礎部材に取り付ける工程と、(c)複数の固定部材を用いて、複数の断熱パネルを複数のレール部材に固定する工程と、(d)複数の固定部材に、立ち上がり部を少なくとも有する別の複数の基礎部材を取り付ける工程と、(e)結合部及び該結合部の上部に位置するパネル載置部を各々が有する別の複数のレール部材を、結合部と立ち上がり部とを結合することによって、互いに平行に、かつ、上記(b)の工程で配置された複数のレール部材と直交するように、別の複数の基礎部材に取り付ける工程と、(f)別のレール部材に連結される別の複数の固定部材を用いて、別の複数の断熱パネルを別の複数のレール部材に固定する工程とを含む。一実施形態においては、上記(f)の工程の後に、(d)及び(e)の工程をさらに繰り返すことによって、1つ又は複数の断熱層さらに積層させることができる。
【0018】
一実施形態において、上記(f)の工程は、樋状に形成された1つ又は複数のガーターパネルを別の複数のレール部材に固定することを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、固定用ビスを用いることなく複数の断熱パネルを積層させるため、固定用ビスがヒートブリッジとなることによる断熱性能の低下を抑制するともに、火災の際に熱が固定用ビスを伝って断熱パネルの内部を燃焼させることを防止することが可能な、軽量な金属下地屋根を施工することができる。また、本発明によれば、固定用ビスを用いることなく複数の断熱パネルを母屋に固定することができるため、多数のビスを用いる従来方法で問題となる結露、ビスの抜け、漏水などを発生させることがなく、不具合の少ない軽量な金属下地屋根を施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態による、複数の断熱層を含む断熱耐火構造が建築物の梁に積層された状態を示す斜視図であり、(a)は、梁の上に取り付けられる第1断熱層、(b)は第1断熱層の上に積層される第2断熱層を示す。
図2】本発明の一実施形態による断熱耐火構造を構成する1つの断熱層に用いられる基礎部材及びレール部材の構造を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態による断熱耐火構造を構成する固定部材の斜視図及び固定部材が挿入される受け部が配置されたレール部材を示す斜視図(a)と、固定部材がレール部材に連結された状態を示す斜視図(b)である。
図4】本発明の別の実施形態による断熱耐火構造を構成する固定部材の斜視図(a)及び三面図(b)である。
図5】本発明の一実施形態による断熱耐火構造の固定部材が断熱パネルに取り付けられた状態の側面図を示し、(a)は図3に示される固定部材を用いた場合であり、(b)は図4に示される固定部材を用いた場合である。
図6A】本発明の一実施形態による断熱耐火構造の施工手順を示す図である。
図6B】本発明の一実施形態による断熱耐火構造の施工手順を示す図である。
図6C】本発明の一実施形態による断熱耐火構造の施工手順を示す図である。
図6D】本発明の一実施形態による断熱耐火構造の施工手順を示す図である。
図6E】本発明の一実施形態による断熱耐火構造の施工手順を示す図である。
図7】本発明の別の実施形態による断熱耐火構造を示し、第2断熱層の一部にガーターパネルが設置された状態の断熱耐火構造である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0022】
[高断熱耐火構造]
図1は、本発明の一実施形態による、複数の断熱層を含む断熱耐火構造1が建築物の梁2に積層された状態を示す斜視図である。図1(a)は、梁2の上に取り付けられる第1断熱層1Aを示し、図1(b)は、第1断熱層1Aの上に積層される第2断熱層1Bを示す。図2は、断熱耐火構造1を構成する1つの断熱層に用いられる基礎部材11及びレール部材12の構造を示す斜視図である。図3は、本発明の一実施形態による断熱耐火構造1を構成する固定部材20の斜視図及び固定部材20が挿入される受け部122cが配置されたレール部材12を示す斜視図(a)と、固定部材20がレール部材12に連結された状態を示す図(b)である。図4は、本発明の別の実施形態による断熱耐火構造1を構成する固定部材20の斜視図(a)及び三面図(b)である。図5は、本発明の一実施形態による断熱耐火構造1の固定部材20が断熱パネル30に取り付けられている状態を示す図である。
【0023】
本発明に係る断熱耐火構造1は、図1に示されるように、建築物の梁2に第1断熱層1Aを固定し、第1断熱層1Aの上に第2断熱層1Bを固定することによって、2層の断熱層が2の上に固定された構造を有する。積層される断熱層の数は、2層に限定されるものではなく、任意の数の断熱層を積層することができる。以下においては、2層の断熱層からなる断熱耐火構造1を説明する。なお、図1においては、図面の最も手前の2つの基礎部材11A以外の基礎部材11Aは、レール部材12Aに隠れているため、図示されていない。また、図1及び図2においては、構造をわかりやすくするために、母屋10、10A、10Bを図面の手前側で切断した状態で描かれている。
【0024】
第1断熱層1Aは、複数列の母屋10Aを有する。複数列の母屋10Aは、それぞれ梁2の長さ方向と直交する方向に延び、梁2の長さ方向に沿って間隔を空けて互いに平行に配置される。母屋10Aの各々の列は、複数の基礎部材11Aと1つ又は複数のレール部材12Aとを有する。母屋10Aの各々の列は、複数のレール部材12Aが長さ方向に連続して構成されたものであっても、1つのレール部材12Aで構成されたものであってもよい。複数の基礎部材11Aは、複数の梁2の各々の同じ位置に、梁2の長さ方向に沿って間隔を空けて取り付けられる。レール部材12Aは、複数の梁2にわたって梁2の長さ方向と直交するように配置され、それぞれの梁2に取り付けられた複数の基礎部材11Aと結合される。
【0025】
第1断熱層1Aは、レール部材12Aの上に配置された断熱パネル30Aを備える。レール部材12Aと断熱パネル30Aとは、固定部材20Aを介して互いに固定され、複数の断熱パネル30Aが、レール部材12Aの上に敷き詰められるように配置される。断熱パネル30Aは、典型的には断熱材を鋼板で挟んだボード又はパネルとすることができるが、これに限定されるものではなく、例えば、断熱材を鋼板で挟み、さらに一方の鋼板に防水層を施工したパネルなどを用いることもできる。この場合、パネルに施工される防水層は、限定されるものではなく、例えばウレタン防水、アスファルト防水、シート防水などを適宜用いることができる。
【0026】
第1断熱層1Aの上に、第2断熱層1Bが配置される。第2断熱層1Bの構造は、第1断熱層1Aと同じであり、基礎部材11B及びレール部材12Bを含む母屋10B、固定部材20B、並びに断熱パネル30Bを備える。第1断熱層1Aの複数の固定金具20Aの各々に、第2断熱層1Bの基礎部材11Bが取り付けられる。基礎部材11Bには、レール部材12Bが結合される。第2断熱層1Bでは、複数のレール部材12Bが、第1断熱層1Aのレール部材12Aと直交するように(すなわち、梁2と平行に)、間隔を空けて互いに平行に配置される。1つのレール部材12Bは、第1断熱層1Aの隣接するレール部材12Aの同じ位置に固定された固定金具20Aに取り付けられた複数の基礎部材11Bと結合される。レール部材12Bの上には、断熱パネル30Bが配置される。レール部材12Bと断熱パネル30Bとは、固定部材20Bを介して互いに固定され、複数の断熱パネル30Bが、レール部材12Bの上に敷き詰められるように配置される。
【0027】
第1断熱層1A及び第2断熱層1Bのそれぞれにおける、基礎部材11A、11B及びレール部材12A、12Bの数、レール部材12A、12Bの間隔、断熱パネル30A、30Bの数及び大きさ、並びに固定部材20A、20Bの数及び隣接する固定部材20A、20Bの間隔は、いずれも特に限定されるものではなく、建築物の用途、大きさ、構造、強度等の条件に応じて適宜決定されればよい。
【0028】
本発明における複数の断熱層の基本的な構造は、いずれも同一とすることができる。以下においては、複数の断熱層に用いることができる共通の構造を説明する。
【0029】
図2は、複数の基礎部材11と1つのレール部材12とを含む母屋10を示す。複数の基礎部材11の各々は、本実施形態においては、略L字の横断面形状を有する鋼材とすることができる。基礎部材11は、長方形状の板状体である取付部111と、取付部111の一方の長辺から立ち上がるように形成された長方形状の板状体である立ち上がり部112とを有する。取付部111と立ち上がり部112との間の角度は、90°であることが好ましいが、屋根の構造によっては90°に限定されるものではない。基礎部材11の各々は、梁2とレール部材12とが交わる位置(図1参照)にそれぞれ配置されることが好ましい。取付部111は、溶接、ボルト及びナットなどの汎用的な手段を用いて、梁2に取り付けることができる。
【0030】
立ち上がり部112は、本実施形態においては長辺が取付部111と同じ長さの長方形状の板状体であるが、これに限定されるものではなく、母屋10として必要な強度及び施工性を維持する事ができる範囲で、例えば取付部111の長さ方向(すなわち、母屋10の長さ方向)に間隔を空けて配置された複数の板状体として構成することもできる。また、立ち上がり部112は、本実施形態においては取付部111の一方の長辺から立ち上がるように形成されているが、これに限定されるものではなく、母屋10として必要な強度及び施工性を維持する事ができる範囲で、例えば取付部111の幅方向(すなわち、母屋10の幅方向)の中央部分から立ち上がるように形成することもできる。
【0031】
別の実施形態において、基礎部材11は、母屋10として必要な強度及び施工性を維持する事ができる範囲で、略I字の断面形状を有するもの、すなわち長方形状の板状体を梁2の上に立設させたものとすることもできる。この場合、板状体が梁2と接する部分の両側を、例えば隅肉溶接によって梁2に固定することができる。この形態においては、板状体が梁2と接する部分が取付部として機能し、取付部から梁2の上面に垂直な方向に延びる部分が立ち上がり部として機能することになる。
【0032】
レール部材12は、図2に示されるように、略T字の横断面形状を有するものとすることができる。1つのレール部材12は、結合部121と、結合部121の上部に位置するパネル載置部123とを有する。結合部121は、間隔を空けて主面が向かい合うように配置された細長い長方形状の2枚の板状体からなる挟持壁121a、121bである。挟持壁121a、121bの間には、基礎部材11の立ち上がり部112が挿入できるようになっており、したがって、挟持壁121aと挟持壁121bとの間隔は、立ち上がり部112の厚みに対応するように適宜設定される。基礎部材11の立ち上がり部112を、結合部121の挟持壁121a、121bの間に挟むことによって、より安定した状態で基礎部材11とレール部材12とを結合することができる。
【0033】
結合部121の上には、上板122が設けられる。結合部121は、上板122の下面122a、122bの幅方向中央部から下方に延びるように連続する。上板122には、パネル載置部123を構成する部材が、その縁部が上板122の縁部を包み込むようにして取り付けられる。パネル載置部123は、断熱パネル30をその上に安定して載置する事ができるように、細長い長方形状の面として形成されている。
【0034】
結合部121は、本実施形態においては挟持壁121a、121bとして構成されているが、これに限定されるものではなく、母屋10として必要な強度及び施工性を維持する事ができる範囲で、例えば1枚の板状体として形成してもよい。この場合、例えば板状体である結合部121の一方の主面を、立ち上がり部112のいずれかの主面と接するように対向させ、両者を何らかの公知の手段(例えば、締結部材13のような手段)を用いて結合させればよい。また、結合部121は、本実施形態においては2枚の板状体からなる挟持壁121a、121bとして構成されているが、これに限定されるものではなく、母屋10として必要な強度及び施工性を維持する事ができる範囲で、例えば挟持壁121a、121bをそれぞれ複数の板状体として形成してもよい。
【0035】
本実施形態におけるレール部材12は、3枚の板を折り曲げ加工することによって、挟持壁121a、121bと、上板122と、パネル載置部123とを有する構造としているが、これに限定されるものではない。別の実施形態においては、例えば、間隔を空けて設けられた挟持壁121a、121bの上端に1枚の板状体を溶接してパネル載置部123を設けた構造とすることもできる。さらに別の実施形態においては、1枚の板を折り曲げ加工することによって、挟持壁121a、121b及びパネル載置部123を一体的に形成するようにしてもよい。
【0036】
立ち上がり部112には、その両面を貫通する1つ又は複数の貫通孔112hが形成されることが好ましい。また、結合部121にも、2つの挟持壁121a、121bを貫通する1つ又は複数の貫通孔121hが形成されることが好ましい。立ち上がり部112の貫通孔112hと結合部121の貫通孔121hは、結合部121の挟持壁121a、121bの間に立ち上がり部112が挿入されたときに対応する位置に設けられている。これらの貫通孔112h、121hに、例えばボルト及びナットなどの締結部材13を挿通させ、立ち上がり部112と結合部121とを締結することによって、両者を互いに結合することができる。
【0037】
貫通孔112hと貫通孔121hのいずれか一方又は両方は、ルーズホールであることが好ましい。貫通孔112h、121hをルーズホールとして形成することによって、施工条件等に応じてパネル載置部123の高さを微調整することができる。
【0038】
レール部材12のパネル載置部123には、幅方向の概ね中央部分に、受け部124が配置される。図2においては、図面を簡単にするために1つの受け部124のみが描かれているが、実際には、パネル載置部123の長さ方向に複数の受け部124が設けられる。受け部124は、パネル載置部123を貫通するように設けられた幅方向に延びる2つのスリット124a、124bと、2つのスリット124a、124bの間に設けられた隆起部124cとを有する。2つのスリット124a、124bには、後述されるように、固定部材20の連結部201が挿入され、受け部124は、連結部201の係合部201bと連結される。2つのスリット124a、124b及び隆起部124cの高さ及び幅は、係合部201bに対応するように設定される。これらの長さ(レール部材12の長さ方向の長さ)は、連結部201のベース201aの長さより短い限り特に限定されるものではない。
【0039】
レール部材12は、結合部121の下部からパネル載置部123と平行に突出する突出部125をさらに有することが好ましい。一実施形態においては、突出部125は、挟持壁121aの下辺から挟持壁121aの面に垂直に突出する板状体125aと、挟持壁121bの下辺から挟持壁121bの面に垂直に、板状体125aとは反対の方向に突出する板状体125bとからなる。突出部125を設けることによって、断熱パネル30とは別のパネルを、隣接する母屋10の間に配置することができる。
【0040】
断熱耐火構造1は、断熱パネル30と母屋10とを固定するための固定部材20を備える。固定部材20は、図1に示されるように、母屋10のレール部材12に所定の間隔で連結され、所定の間隔は、通常、断熱パネル30の幅に対応する距離とすることができる。固定部材20は、図3(a)に示されるように、レール部材12に連結するための連結部201と、断熱パネル30を取り付けるための取付部202とを有する。図3の実施形態では、連結部201と取付部202とが一体に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、連結部201と取付部202とを別の部材で作製し、これらを例えば溶接などによって接続してもよい。固定部材20の材料は、本発明の目的を達成することができる限り特に限定されるものではなく、金属、樹脂などを適宜用いることができる。
【0041】
連結部201は、パネル載置部123に設けられた受け部124に挿入されるベース201aを有する。図3(a)に示されるように、ベース201aが、スリット124aと124bとを通して受け部124に挿入されることによって、固定部材20とレール部材12とが連結される。ベース201aの長さは、受け部124、すなわち2つのスリット124a、124b及び隆起部124cに確実に挿入することができ、固定部材20とレール部材12との連結が確実に実現できるものであれば、特に限定されるものではない。ベース201aにおいては、受け部124に挿入されたときに隆起部124cによって隠れる部分が、係合部201bとなる。
【0042】
係合部201bには、係合部201bの下面から下方に突出するストッパ201cが設けられていることが好ましい。ストッパ201cは、連結部201の先端(取付部202とは反対の方向)から後方(取付部202の方向)に向かって滑らかに下方に突出するように形成されるとともに、後方が垂直に切り立った端面として形成される。したがって、ベース201aを受け部124に一旦挿入すると、ストッパ201cの切り立った端面がスリット124aの下縁に引っかかり、連結部201が受け部124から容易に外れなくなる。ストッパ201cの数は1つに限定されるものではなく、ベース201aの幅方向に2つのストッパを並べて設けてもよい。
【0043】
ベース201aの上面には、連結部201の強度を向上させるためのリブ201dが設けられることが好ましい。リブ201dの位置、数、長さ及び高さなどは、特に限定されるものではなく、連結部201の補強に有効であればよい。係合部201bにおけるベース201aからリブ201dの頂部までの高さは、2つのスリット124a、124b及び隆起部124cに対応するように設定される。
【0044】
固定部材20の取付部202は、1枚の板状体が複数箇所で折り曲げられた状態でベース201aに連続している。この折り曲げられた取付部202が、隣接する断熱パネル30の対向する端部間に挟まれることによって、固定部材20が断熱パネル30に取り付けられるようになっている。すなわち、図5(a)に示されるように、隣接する2つの断熱パネル30は、一方の断熱パネル30の端部31に凸部31aを有し、他方の断熱パネル30の端部32に、凸部31aに対応する形状の凹部32aを有するように加工されている。隣接する断熱パネル30は、この凸部31aと凹部32aとを嵌合させることによって互いに組み合わされる構造になっている。固定部材20の取付部202は、凸部31a及び凹部32aが嵌合した部分の形状に対応するように折り曲げられており、組み合わされた断熱パネル30の嵌合部分に取付部202を折り込むように挟むことによって、固定部材20を断熱パネル30に取り付けることができる。
【0045】
取付部202には、図4に示されるように、複数のピン形態の挿入部202aが設けられることが好ましい。挿入部202aは、取付部202の垂直面202cから突出するように設けられる。挿入部202aは、取付部202の垂直面202cにくさび形状の切り込みを形成しておき、施工時に切り込みから起こして使用することができる(挿入部202aを起こした後には、開口202bが形成される)。図4では、垂直面202cの一方の面側に6つの挿入部202aが起こされているが、これに限定されるものではなく、垂直面202cの両面にそれぞれ3つの挿入部202aが起こされてもよい。なお、挿入部202aは、図4に示される形態に限定されるものではなく、垂直面202cにピンを溶接することなどによって形成してもよい。また、挿入部202aの数は、6つに限定されるものではなく、長さも限定されるものではない。さらに、図4では、6つの挿入部202aが高さ方向に異なる位置に設けられているが、これに限定されるものではなく、同じ高さに設けられてもよい。
【0046】
取付部202を隣接する断熱パネル30の端部間で挟んだときに、挿入部202aが断熱パネル30の断熱層に挿入されることによって、断熱パネル30と固定部材20とを、より強固に固定するとともに、パネルの浮き上がりをより効果的に防止することができる。また、断熱パネル30が断熱材を2枚の鋼板で挟んだものである場合には、熱による鋼板の伸縮に起因する断熱パネル30の動きを抑制することができる。
【0047】
固定部材20は、図3及び図4に示される構造に限定されるものではない。例えば、隣接する2つの断熱パネル30が、一方の断熱パネル30の端部31に2つ以上の凸部31aを有し、他方の断熱パネル30の端部32に、凸部31aに対応する数及び形状の2つ以上の凹部32aを有するように加工されていてもよい。このような構造の断熱パネル30が用いられる場合には、固定部材20は、断熱パネル30の端部31、32の形状に対応する形状に複数箇所で折り曲げられた取付部202を備えるものとすることができる。
【0048】
[断熱耐火構造の施工方法]
次に、図6A図6Eを用いて、本発明の一実施形態による断熱耐火構造1の施工方法を説明する。ここでは、2つの断熱層1A、1Bが積層された形態の断熱耐火構造1を例として説明する。なお、以下の説明においては、第1断熱層1Aを構成する部材の参照番号には「A」を付し、第2断熱層1Bを構成する部材の参照番号には「B」を付している。また、図面が煩雑にならないように、以下の説明における部材や参照番号は、すべてが図面に示されているわけではない。
【0049】
まず、図6Aに示されるように、第1断熱層1Aの母屋10Aを構成する基礎部材11Aを、建築物の梁2の所定の位置に取り付ける。母屋10Aは、上述のように、基礎部材11Aとレール部材12Aとを組み合わせた構造である。したがって、母屋10Aを構成する基礎部材11Aをあらかじめ建築現場に搬入しておき、鉄骨工事の際に作業者が基礎部材11Aの取付部111を溶接やボルトなどを用いて梁2に取り付けることができる。基礎部材11Aは、あらかじめ梁2に取り付けておき、その後建築現場に搬入するようにしてもよい。
【0050】
次に、梁2に取り付けられた基礎部材11Aにレール部材12Aを結合して、母屋10Aを完成させる。基礎部材11Aの立ち上がり部112Aを、結合部121Aに挿入するようにレール部材12Aを配置し、立ち上がり部112Aに設けられた貫通孔112hAと、結合部121Aに設けられた貫通孔121hAとを位置合わせし、位置合わせされた貫通孔112hA、121hAにボルト及びナットなどの締結部材13Aを挿通して締結することによって、基礎部材11Aとレール部材12Aとを連結することができる。なお、貫通孔112hA、121hAは、ルーズホールとして形成されているので、必要に応じて、レール部材12Aの高さを微調整する。このようにして、母屋10Aが完成する。なお、母屋10Aは、梁2と直交する方向に延びている(すなわち、図6Aでは、紙面に垂直な方向に延びている)。
【0051】
完成した母屋10Aに、次に、断熱パネル30Aを載置する。まず、固定部材20Aの連結部201をレール部材12Aの受け部124Aに挿入して、図6Bに示されるように、固定部材20Aとレール部材12Aとを連結する。次いで、固定部材20Aの取付部202Aを、隣接する断熱パネル30Aの対向する端部31A、32A間に挟んで、一方の端部31Aの凸部31aAと他方の端部32Aの凹部32aAとの間に折り込むようにして、複数の断熱パネル30Bを配置していく。このとき、固定部材20Aの挿入部202aAが、断熱パネル30Bの端面に挿入される。このようにして、第1断熱層1Aが完成する。
【0052】
次いで、第1断熱層1Aの上に、第2断熱層1Bを積層する。まず、図6Cに示されるように、第1断熱層1Aの各固定部材20Aの上面202dAに、第2断熱層1Bの基礎部材11Bを取り付ける。固定部材20Aと基礎部材11Bとの固定は、公知の方法を用いることができ、例えば、図6Cに示されるように、固定部材20Aの上面202dAと基礎部材11Bの取付部111Bとを締結部材14で連結する方法を用いることができる。
【0053】
取り付けられた基礎部材11Bにレール部材12Bを結合して、図6Dに示されるように、母屋10Bを完成させる。基礎部材11Bとレール部材12Bとの結合は、第1断熱層1Aの場合と同様である。母屋10Bは、梁2と平行に延びている(すなわち、図6Dでは、紙面の左右の方向に延びている)。
【0054】
完成した母屋10Bに、次に、断熱パネル30Bを載置する。第1断熱層1Aの場合と同様、図6Eに示されるように、固定部材20Bを受け部124Bに挿入して固定部材20Bとレール部材12Bとを連結し、固定部材20Bの取付部202Bを、隣接する断熱パネル30Bの対向する端部31B、32B間に挟むようにして、複数の断熱パネル30Bを配置していく。このようにして、第2断熱層1Bが完成する。
【0055】
必要に応じて、第2断熱層1Bの断熱パネル30Bの連結部分(目地)4にはアルミテープ(図示せず)を貼り付け、断熱パネル30Bの上面全体にウレタン防水層を形成する。
【0056】
[ガーターパネルの配置]
図7は、第2断熱層の一部に樋状のガーターパネル50が配置された実施形態を示す。ガーターパネル50は、図7の紙面に垂直な方向に長さを有し、幅方向両端部に端部壁51、52を有するとともに、端部壁51、52の間に傾斜面50cを有する樋形状の部材であり、断熱パネル30と同様の断熱材を用いて成型することができる。ガーターパネル50は、図7でみて長さ方向奥側に高端部50aを、長さ方向手前側に低端部50bを有し、高端部50aから低端部50bにかけて低くなるように形成された傾斜面50cが続いており、内部に入った雨水などが高端部50aから傾斜面50cを流れて低端部50bに向かうようになっている。低端部50bまで流れた雨水は、低端部50bに連結された排水経路(図示せず)から排出される。
【0057】
ガーターパネル50の端部壁51、52は、断熱パネル30Bと同様の端部構造を有しており、断熱パネル30Bと同様にして固定される。すなわち、固定部材20Bの取付部202Bを、隣接する断熱パネル30Bの端部31Bとガーターパネル50の端部壁52との間に挟み、端部31Bの凸部31aBと端部壁52の凹部52aとの間に折り込む。同様に、固定部材20Bの取付部202Bを、隣接する断熱パネル30Bの端部32Bとガーターパネル50の端部壁51との間に挟み、端部32Bの凹部32aBと端部壁51の凸部51aとの間に折り込む。このとき、このとき、固定部材20Bの挿入部202aBが、断熱パネル30Bの端部31Bとガーターパネル50の端部壁51に挿入される。このようにして、第2断熱層1Bにガーターパネル50が配置される。
【符号の説明】
【0058】
1 断熱耐火構造
2 梁

1A 第1断熱層
10A 母屋
11A 基礎部材
12A レール部材
20A 固定部材
30A 断熱パネル
1B 第2断熱層
10B 母屋
11B 基礎部材
12B レール部材
20B 固定部材
30B 断熱パネル

10 母屋
11 基礎部材
111 取付部(板状体)
112 立ち上がり部(板状体)
112h 貫通孔(ルーズホール)
12 レール部材
121 結合部
121h 貫通孔(ルーズホール)
121a、121b 挟持壁(板状体)
122 上板
122a、122b 下面
123 パネル載置部
124 受け部
124a、124b スリット
124c 隆起部
125 突出部
13 締結部材
14 締結部材
20 固定部材
201 連結部
201a ベース
201b 係合部
201c ストッパ
201d リブ
202 取付部
202a 挿入部
202b 開口
202c 垂直面
202d 上面
30 断熱パネル
31 一方の端部
31a 凸部
32 他方の端部
32a 凹部
40 目地
50 ガーターパネル
50a 高端部
50b 底端部
50c 傾斜面
51 一方の端部壁
51a 凸部
52 他方の端部壁
52a 凹部

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属下地屋根において施工される断熱耐火構造であって、
建築物の梁の上に積層された複数の断熱層を備え、前記複数の断熱層のうち最下層の断熱層が建築物の梁に固定されており、
前記複数の断熱層の各々は、
立ち上がり部を少なくとも有する複数の基礎部材と、
前記立ち上がり部に結合される結合部と該結合部の上部に位置するパネル載置部とを各々が有し、互いに平行に配置された複数のレール部材と、
前記パネル載置部の上に配置される複数の断熱パネルと、
前記レール部材に連結され、前記複数の断熱パネルを前記パネル載置部に固定する、複数の固定部材と
を含む断熱耐火構造。
【請求項2】
前記複数の断熱層において、上下に隣接する断熱層のそれぞれの前記複数のレール部材が、互いに直交する方向に配置される、
請求項1に記載の断熱耐火構造。
【請求項3】
前記複数のレール部材が有する前記パネル載置部の各々は複数の受け部を有し、前記複数の固定部材の各々は連結部を有しており、
前記複数の受け部のそれぞれに前記連結部を係合させることによって、前記複数の断熱パネルが前記パネル載置部に固定される、
請求項1又は請求項2に記載の断熱耐火構造。
【請求項4】
前記複数の受け部の各々は、2つのスリットと、前記2つのスリットの間において前記パネル載置部の面から隆起するように設けられた隆起部とを有し、
前記連結部は、前記2つのスリットを通して前記隆起部の下に挿入される、
請求項3に記載の断熱耐火構造。
【請求項5】
前記連結部は、挿入後に前記連結部が前記受け部から外れないようにするためのストッパを有する、
請求項3に記載の断熱耐火構造。
【請求項6】
前記立ち上がり部は、板状体であり、
前記結合部は、前記板状体の厚みに対応する間隔で配置された2つの挟持壁からなる、
請求項1又は請求項2に記載の断熱耐火構造。
【請求項7】
前記立ち上がり部と前記結合部とは、それぞれ対応する位置に1つ又は複数の貫通孔を有し、該1つ又は複数の貫通孔に締結部材を挿通させることによって互いに結合される、
請求項1又は請求項2に記載の断熱耐火構造。
【請求項8】
前記基礎部材は、略L字又は略I字の横断面形状を有し、
前記レール部材は、略T字の横断面形状を有する
請求項1又は請求項2に記載の断熱耐火構造。
【請求項9】
前記複数の断熱パネルにおける隣接する2つの断熱パネルは、一方の断熱パネルの端部に凸部を有し、他方の断熱パネルの端部に凸部に対応する形状の凹部を有して、凸部と凹部とが嵌合することによって互いに組み合わされる構造であり、
前記複数の固定部材は、少なくとも一部が前記凸部と前記凹部との嵌合部に対応する形状を有する、
請求項1又は請求項2に記載の断熱耐火構造。
【請求項10】
前記固定部材の前記少なくとも一部は、前記嵌合部に挟まれた状態のときに隣接する断熱パネルの一方又は両方に挿入される挿入部をさらに有する、
請求項9に記載の断熱耐火構造。
【請求項11】
前記複数の断熱層のうち最上層の断熱層は、内部に傾斜面を有する樋状のガーターパネルを含む、
請求項1又は請求項2に記載の断熱耐火構造。
【請求項12】
金属下地屋根において複数の断熱層を含む断熱耐火構造を施工する方法であって、
(a)立ち上がり部を少なくとも有する複数の基礎部材を建築物の梁に取り付ける工程と、
(b)結合部及び該結合部の上部に位置するパネル載置部を各々が有する複数のレール部材を、前記結合部と前記立ち上がり部とを結合することによって、互いに平行に配置されるように前記複数の基礎部材に取り付ける工程と、
(c)前記レール部材に連結される複数の固定部材を用いて、複数の断熱パネルを前記複数のレール部材に固定する工程と、
(d)前記複数の固定部材に、立ち上がり部を少なくとも有する別の複数の基礎部材を取り付ける工程と、
(e)結合部及び該結合部の上部に位置するパネル載置部を各々が有する別の複数のレール部材を、前記結合部と前記立ち上がり部とを結合することによって、互いに平行に、かつ、前記(b)の工程で配置された複数のレール部材と直交するように、前記別の複数の基礎部材に取り付ける工程と、
(f)前記別のレール部材に連結される別の複数の固定部材を用いて、別の複数の断熱パネルを前記別の複数のレール部材に固定する工程と
を含む方法。
【請求項13】
前記(f)の工程の後に、前記(d)前記(e)及び前記(f)の工程をさらに繰り返すことによって、1つ又は複数の断熱層さらに積層させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記(f)の工程は、樋状に形成された1つ又は複数のガーターパネルを前記別の複数のレール部材に固定することを含む、請求項12又は請求項13に記載の方法。