(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183501
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】洗濯機および洗濯機用の回転翼盤
(51)【国際特許分類】
D06F 17/10 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
D06F17/10 A
D06F17/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097047
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】前田 繁
(72)【発明者】
【氏名】門傳 陽平
(72)【発明者】
【氏名】宗野 義徳
(72)【発明者】
【氏名】住吉 宏介
(72)【発明者】
【氏名】山口 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】大林 史朗
(72)【発明者】
【氏名】北 慎勇希
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博紀
【テーマコード(参考)】
3B168
【Fターム(参考)】
3B168AA12
3B168AA15
3B168AE01
3B168AE02
3B168AE07
3B168BA08
3B168CE02
3B168CE04
(57)【要約】
【課題】低コスト化しつつ、衣類の傷みを低減する洗濯機および洗濯機用の回転翼盤を提供する。
【解決手段】本発明の回転翼盤は、上面に隆起部および谷部を複数形成する翼ベースと、前記駆動部の動力により回転する軸を支持する軸受と、前記翼ベースの下面において、前記軸受の径方向外側に設けられる複数の第1羽根と、を備え、前記翼ベース、前記軸受および前記第1羽根は、一体であり、周方向に隣り合う前記第1羽根の間には、前記翼ベースを上下に貫通する複数の第1貫通孔が形成され、前記第1羽根は、鉛直方向に対し傾斜して突出している。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯槽と、
前記洗濯槽の底部に設けられた回転翼盤と、
前記洗濯槽を内包し洗濯水を溜める外槽と、
前記洗濯槽および前記回転翼盤を回転駆動する駆動部と、を備え、
前記回転翼盤は、
上面に隆起部および谷部を複数形成する翼ベースと、
前記駆動部の動力により回転する軸を支持する軸受と、
前記翼ベースの下面において、前記軸受の径方向外側に設けられる複数の第1羽根と、を備え、
前記翼ベース、前記軸受および前記第1羽根は、一体であり、
周方向に隣り合う前記第1羽根の間には、前記翼ベースを上下に貫通する複数の第1貫通孔が形成され、
前記第1羽根は、鉛直方向に対し傾斜して突出していることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機であって、
前記回転翼盤は、前記翼ベースの下面において、前記第1羽根の径方向外側に設けられる複数の第2羽根をさらに備え、
前記第2羽根は、鉛直方向に突出していることを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項2に記載の洗濯機であって、
前記第2羽根は、径方向に延び、外径端における下方への突出量が内径側よりも大きいことを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項2に記載の洗濯機であって、
前記回転翼盤は、前記翼ベースの下面において、周方向に延びる複数の第3羽根をさらに備え、
前記第1羽根は、前記第1羽根と前記軸受との境界に設けられた内径側の第3羽根と、前記第1羽根と前記第2羽根の境界に設けられた外径側の第3羽根と、の間を接続していることを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記第1羽根の上端面には、外径側に向けて低くなる段差が形成されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項6】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記谷部は、前記翼ベースを上下に貫通する複数の第2貫通孔を有し、
前記第1羽根は、前記谷部の径方向内側に形成されることを特徴とする洗濯機。
【請求項7】
上面に隆起部および谷部を複数形成する翼ベースと、
洗濯機の駆動部の動力により回転する軸を支持する軸受と、
前記翼ベースの下面において、前記軸受の径方向外側に設けられる複数の第1羽根と、を備え、
前記翼ベース、前記軸受および前記第1羽根は、一体であり、
周方向に隣り合う前記第1羽根の間には、前記翼ベースを上下に貫通する複数の第1貫通孔が形成され、
前記第1羽根は、鉛直方向に対し傾斜して突出していることを特徴とする洗濯機用の回転翼盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機および洗濯機に用いられる回転翼盤に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯槽を縦に置いた洗濯機は、洗濯槽の底部に回転翼盤を設け、この回転翼盤を正逆回転させて洗濯を行っている。特許文献1には、回動によって流体を攪拌するための攪拌翼(回転翼)の中央部に、該攪拌翼本体と共に一体となって回動して水流をおこすスクリューを設けた洗濯機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された洗濯機は、水流を発生させるスクリューが、攪拌翼本体(ベース)と別体で構成されているため、部品点数が多くなり、組み立て工数も増加してしまう。また、スクリューを攪拌翼本体にネジで固定する場合、ネジ穴を形成するために水平方向のスペースが必要となり、スクリューを構成する各ブレード間の隙間が小さくなる。すなわち、各ブレードの間に設けられて攪拌翼本体を上下に貫通する貫通孔の総面積も小さくなるため、スクリューにより発生する水流が弱くなり、洗浄に要する時間が長くなる可能性がある。その結果、特許文献1に記載の技術では、衣類どうしが擦れる時間も長くなり、布が傷みやすくなる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、低コスト化しつつ、衣類の傷みを低減する洗濯機および洗濯機用の回転翼盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転翼盤は、上面に隆起部および谷部を複数形成する翼ベースと、前記駆動部の動力により回転する軸を支持する軸受と、前記翼ベースの下面において、前記軸受の径方向外側に設けられる複数の第1羽根と、を備え、前記翼ベース、前記軸受および前記第1羽根は、一体であり、周方向に隣り合う前記第1羽根の間には、前記翼ベースを上下に貫通する複数の第1貫通孔が形成され、前記第1羽根は、鉛直方向に対し傾斜して突出している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低コスト化しつつ、衣類の傷みを低減する洗濯機および洗濯機用の回転翼盤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る回転翼盤が搭載される洗濯機を示す右側縦断面図。
【
図7】
図6のB-Bで切断した回転翼盤の断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥を行うことができる洗濯機S(いわゆる、縦型の洗濯乾燥機)を例に挙げて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る回転翼盤が搭載される洗濯機を示す右側縦断面図である。
図1に示すように、洗濯機Sは、筐体の外枠1、洗濯水を貯留する外槽2、洗濯兼脱水槽3(洗濯槽)、回転翼盤4(パルセータ)、および駆動モータ(駆動部)10を備えている。
【0011】
外枠1は、板金(鉄板)をプレス加工等によって四角筒状に形成したものである。また、外枠1の下部には、合成樹脂製のベース32が設けられている。また、外枠1の上部には、合成樹脂製のトップカバー(上板)6が設けられている。なお、図示していないが、外枠1の内部は、補強部材を用いて外枠1が補強されている。また、ベース32は、内部に格子状のリブなどを設けて補強されている。
【0012】
外槽2は、合成樹脂製であり、有底略円筒状を呈し、外枠1内の中央において、防振装置(不図示)を介して支持されている。防振装置は、バネや弾性ゴムからなり、外枠1内の上部から外槽2を吊り下げ支持している。
【0013】
洗濯兼脱水槽(洗濯槽)3は、洗濯、脱水、乾燥される洗濯物(衣類)を収容する有底円筒形状を有する。また洗濯兼脱水槽3は、回転軸が略鉛直方向を向いている。また、洗濯兼脱水槽3は、外槽2の内部中央に設けられ、外槽2内において回転自在に支持される。また、洗濯兼脱水槽3は、その外周壁に通水および通風のための多数の小さな貫通孔3a(
図1では一部のみ図示)を有している。また、洗濯兼脱水槽3は、その底壁に通水および通風のための複数の貫通孔3bを有している。また、洗濯兼脱水槽3の上縁部には、流体バランサー3cを備えている。また、洗濯兼脱水槽3の底部には、洗濯水を攪拌して、洗いやすすぎなどを行う回転翼盤4が回動自在に設けられている。
【0014】
回転翼盤4は、洗濯兼脱水槽3の底部中央に回転可能に設置されており、洗濯運転時および乾燥運転時に、正転/逆転を繰り返す動作が行われる。
なお、回転翼盤4の詳細については後述する。
【0015】
駆動モータ10は、外枠1内に設けられ、回転翼盤4および洗濯兼脱水槽3を選択的に回転駆動する。また、駆動モータ10は、例えばDCブラシレスモータが使用される。DCブラシレスモータは、ベクトル制御によって制御が行われる。また、駆動モータ10は、回転翼盤4および洗濯兼脱水槽3をダイレクトドライブするものであってもよく、ベルトなどの減速機構を用いて駆動してもよい。
【0016】
外枠1の上部には、開閉自在な外蓋5が設けられている。外蓋5は、外枠1の上部に設けられたトップカバー6に後側が軸支持されている。外槽2の上部には、外蓋5の下方に、内蓋34が後側の軸周りに開閉自在に設けられている。洗濯兼脱水槽3に対する洗濯物の出し入れは、外蓋5および内蓋34を開くことで行われる。
【0017】
外枠1内には、トップカバー6の外蓋5の後側に、給水ユニット7が設けられている。給水ユニット7は、内部に複数の水路を有する給水ボックス(図示せず)を有している。給水ユニット7は、トップカバー6から上方に突き出る給水ホース接続口8から供給される。この給水ホース接続口8から水道水や風呂水が供給され、外槽2の内部に注がれる。また、トップカバー6の前側には、洗剤および仕上剤の投入装置35が設けられている。洗剤および仕上剤は、投入ホース36により、外槽2と洗濯兼脱水槽3の間に注がれる。
【0018】
また、洗濯機Sは、洗濯物を乾かす乾燥機構9を備えている。乾燥機構9は、洗濯兼脱水槽3内の洗濯物を乾燥する乾燥用空気の循環送風や除湿を行う。乾燥機構9は、大部分が乾燥用空気循環路で占められている。乾燥用空気循環路は、外槽2の底部に連通する底部循環路20と、底部循環路20から上向きに延びる除湿用縦通路21とを備える。
【0019】
また、乾燥機構9は、洗濯機Sの乾燥運転において、乾燥風を作る送風機22およびヒータ(不図示)を有する。送風機22の下部の吸込側は、除湿用縦通路21の上端部に接続される。送風機22と除湿用縦通路21の間には乾燥フィルタ54が配置され、送風機22に異物が流入しないようになっている。送風機22の前部の排出側は、戻り接続循環路25と接続され連通している。戻り接続循環路25は、その一部の上部蛇腹ホース23を介して、外槽2の上部に連通する。戻り接続循環路25には、乾燥風を洗濯兼脱水槽3内に吐出する吐出口23aが形成されている。吐出口23aからは、
図1において矢印で示すように、乾燥風が上部蛇腹ホース23から洗濯兼脱水槽3内に鉛直方向下方に向けて吐出され、回転翼盤4の外周領域に吹き付けられるようになっている。
【0020】
底部循環路20は、その一部の下部蛇腹ホース26を介して、外槽2の底部に連通している。下部蛇腹ホース26は、外槽2の底落込部31に接続されている。底落込部31は、排水時のみ開弁される常閉型の排水弁53を介して、排水用の洗濯水排水路52に連通する。
【0021】
排水弁53は、洗濯運転時や乾燥運転時には閉じられている。排水弁53は、洗濯水を排水する排水時に開いて、外槽2に溜まっている洗濯水や濯ぎ水を、洗濯水排水路52から洗濯機Sの外部(機外)に排出する。
【0022】
洗濯機Sは、外槽2に溜まる洗濯水や濯ぎ水の水位を検知する水位センサ55を備えている。外槽2の底部近傍にはエアートラップ50が設けられている。エアートラップ50に連通してエアーチューブ56が接続されており、このエアーチューブ56の上端には水位センサ55が連通して接続される。
【0023】
外槽2に溜まる洗濯水や濯ぎ水は、循環水路51a、61aから循環水路51b、61bに流入し、循環水路51b、61b内を上方へ向かって流れる。循環水路51bを上昇した洗濯水は、糸くずが糸くずフィルタ33で取り除かれ、洗濯兼脱水槽3内に入る。一方、循環水路61bを上昇した洗濯水は、スリット状の吐出口61cから洗濯兼脱水槽3内の中央付近にシャワー状に散水される。
【0024】
次に、本実施形態に係る洗濯機Sの洗濯運転および乾燥運転における動作について説明する。
【0025】
洗い工程では、まず、給水ユニット7が、投入装置35に給水することで、洗剤と水道水等が外槽2内に供給される。そして、個体洗剤は水道水等で溶かされ、液体洗剤は水道水等で希釈され、高濃度洗剤液が生成される。このとき、必要に応じて、駆動モータ10が回転翼盤4を回転し、後述する第1羽根43および第2羽根44による水流を発生させることで、高濃度洗剤液を生成しても良い。給水ユニット7は、回転翼盤4の下面(裏面)の第1羽根43および第2羽根44が浸かる程度の第1水位になると、給水を停止する。なお、第1水位は、回転翼盤4の上面を超えない低い水位が望ましいが、回転翼盤4の上面を僅かに超える水位であっても良い。
【0026】
第1水位において駆動モータ10が回転翼盤4を回転させると、外槽2の底に溜まっている高濃度洗剤液が、循環水路51b、61bを上方へ向かって流れ、洗濯兼脱水槽3内に供給される。このように、高濃度洗剤液を洗濯物に降り掛けるように循環させながら、回転翼盤4を正逆方向に交互に回転させて隆起部40aが洗濯物に上向きの力を繰り返し作用させることによって押し洗いする(前洗い)。その後、給水ユニット7が、第1水位より高い第2水位になるまで給水し、駆動モータ10が洗濯兼脱水槽3および回転翼盤4を正逆方向に交互に回転させ、高水位での洗いが行われる(本洗い)。
【0027】
すすぎ工程では、洗い工程と同様に、外槽2の底部に溜まるように給水した濯ぎ水を洗濯物に降り掛けるように循環させながら回転翼盤4を正逆方向に回転させて、洗濯物に含まれる洗剤成分を取り除く、すすぎを行う。脱水工程では、駆動モータ10が洗濯兼脱水槽3および回転翼盤4を一方向(逆回転の向き)に高速回転させることで、洗濯物に含まれる水分が遠心力によって脱水される。この脱水工程が終了すると、洗濯運転から乾燥運転に移行する。乾燥運転では、回転翼盤4を正逆方向に回転させながら外槽2内の空気を吸い出して水冷除湿した後に加熱して洗濯兼脱水槽3内に吹き込むように循環させて洗濯物を乾燥させる。
【0028】
ここで、
図2および
図3を用いて、回転翼盤4の上面側の形状について、詳細に説明する。
図2は回転翼盤の上面側の形状を示す斜視図であり、
図3は回転翼盤の上面図である。回転翼盤4の上面側の形状は、前述した洗濯運転および乾燥運転において、洗濯物の動きに影響を与える。
【0029】
図2および
図3に示すように、回転翼盤4の翼ベース40の上面には、回転翼盤4の中心周辺から外径側へ延びる4つの隆起部40aと、周方向に隣り合う隆起部40aの間に位置する4つの谷部40bと、が形成されている。本実施形態では、隆起部40aおよび谷部40bをそれぞれ4つとした回転翼盤4の例を示すが、隆起部40aおよび谷部40bの個数は4つに限定されない。
【0030】
隆起部40aは、周方向について相対的に高い稜線40a1と、その周方向両側にあって連続的に下る凸状傾斜面40a2と、を有している。このため、回転翼盤4が回転すると、凸状傾斜面40a2によって、回転翼盤4上に載っている洗濯物に上向きの分力が繰り返し作用する。
【0031】
谷部40bは、隆起部40aと比べて相対的に低い凹状傾斜面(谷状の凹曲面)を有しており、径方向の中央部分が低く、内径側部分と外径側部分が高い、所謂お椀状となっている。また、谷部40bは、通水および通風のために翼ベース40を上下に貫通する多数の第2貫通孔40b1も有している。ここで、第2貫通孔40b1は、隆起部40aに形成しないことで、洗濯物との引っ掛かりを抑えることができ、洗濯物の布痛みを軽減できる。
【0032】
洗い工程時に回転翼盤4が回転すると、隆起部40aの凸状傾斜面40a2によって洗濯物が押し上げられる。このときに押し上げられた洗濯物が落下するときのたたき洗い効果と、回転翼盤4と洗濯物との間の摩擦力によるこすり洗い効果により洗浄力が向上する。また、乾燥運転時に回転翼盤4が回転すると、隆起部40aの凸状傾斜面40a2により、洗濯物が押し上げられ、上下の洗濯物の入れ替わりが促進される。この洗濯物の入れ替わりにより、洗濯物の乾燥むらが低減する。
【0033】
なお、本実施形態では、隆起部40aと谷部40bとが、それぞれ回転中心に対して点対称に設けられている。そのため、回転翼盤4を正回転させても逆回転させても、洗濯物の動きが変わらないので、布絡みや布片寄りが生じ難く、洗いむらや布傷みを抑制できる。
【0034】
図4は
図3のA-Aで切断した回転翼盤の断面図であり、
図5は回転翼盤の正面図である。
図4に示すように、回転翼盤4は、その回転中心の周辺に、上方へ膨出する膨出部41を有しており、膨出部41の内部には、駆動モータ10の動力により回転する軸を支持する軸受42が形成されている。また、翼ベース40の下面には、突条部を成す(リブ状の)裏羽根として、第1羽根43、第2羽根44および第3羽根45が形成されている。各羽根は下方へ突出し、その下端は、略同一平面上に位置している。これらの裏羽根は、回転翼盤4の強度を補強する役割を果たすとともに、特に第1羽根43および第2羽根44は、洗い工程およびすすぎ工程において、外槽2の底部に溜まった洗剤液や濯ぎ水に水流を発生させる役割も果たす。
【0035】
以下、
図6~
図9を用いて、回転翼盤4の下面側の形状について、詳細に説明する。
図6は回転翼盤の下面側の形状を示す斜視図であり、
図7は
図6のB-Bで切断した回転翼盤の断面斜視図である。また、
図8は回転翼盤の下面図であり、
図9は
図8の破線で囲った領域の拡大図である。
【0036】
第1羽根43は、径方向に延びる裏羽根であり、軸受42の外径端よりも径方向外側に複数設けられ、翼ベース40の強度を向上させている。さらに、第1羽根43は、洗い工程等において、回転翼盤4の回転に伴い、外槽2の底部に溜まった洗剤液等を主に外径側に押し出し、その勢いで循環水路51b、61bを経由して、洗濯兼脱水槽3内に洗剤液等を供給する。なお、本実施形態では、第1羽根43が周方向に6枚形成された回転翼盤4の例を示すが、第1羽根43の枚数は6枚に限定されない。
【0037】
また、周方向に隣り合う第1羽根43の間には、翼ベース40を上下に貫通する複数の第1貫通孔40cが形成されている。この第1貫通孔40cにより、周方向に隣り合う第1羽根43の間に、洗剤液等が流れ込みやすくなり、洗剤液等を外径側に押し出す勢いも強くなるので、洗剤液等の循環流量の増大に寄与する。
【0038】
第2羽根44は、径方向に延びる裏羽根であり、第1羽根43と異なる(径方向にずれた)位置、具体的には、第1羽根43の外径端よりも径方向外側に設けられ、翼ベース40の強度を向上させている。第2羽根44も、洗い工程等において、回転翼盤4の回転に伴い、外槽2の底部に溜まった洗剤液等を主に外径側に押し出し、その勢いで循環水路51b、61bを経由して、洗濯兼脱水槽3内に洗剤液等を供給する。特に、翼ベース40の上面に形成される谷部40bが、前述したように所謂お椀状であるため、第2羽根44の下方への突出量は、外径端において内径側よりも大きくなる。このため、第1羽根43によって外径側に押し出された洗剤液等が、さらに外径側にかき出され易く、循環水路51b、61bへ導かれ易くなっている。
【0039】
第3羽根45は、周方向に延びる裏羽根であり、同心円状に複数設けられ、翼ベース40の強度を向上させている。また、第3羽根45は、第1羽根43と軸受42との境界に設けられた内径側の羽根45aと、第1羽根43と第2羽根44の境界に設けられた外径側の羽根45bと、さらにその外径側に設けられた羽根と、で構成されている。
【0040】
ここで、第1羽根43も第2羽根44も、前述したように、外槽2の底部に溜まった洗剤液等を循環させる役割を果たすが、第2羽根44は鉛直方向下方に突出しているのに対して、第1羽根43は鉛直方向に対して傾斜して下方に突出している点で、異なっている。また、第1羽根43の上端面には、外径側に向けて低くなる段差が形成されている。
【0041】
本実施形態では、特に、下方から見て時計回り(逆回転の向き、
図9の矢印の向き)に回転翼盤4が回転するとき、第1羽根43が洗剤液等を外径側に押し出す勢いがより強くなり、第2羽根44による押し出す勢いとの相乗効果で、中心付近から外径側に向かう洗剤液等の流れが格段に大きくなる。その結果、循環水路51b、61bを経由して洗濯兼脱水槽3内に循環する洗剤液等の流量が増加し、洗浄力が向上する。また、下方から見て反時計回り(正回転の向き)に回転翼盤4が回転するときは、翼ベース40の下面から上面に向かう力が洗剤液等に作用するが、第1貫通孔40cを通る流れと第2貫通孔40b1を通る流れにより、外槽2の底部に溜まった洗剤液等の流れ全体が活性化し、洗浄力が向上する。したがって、洗い工程およびすすぎ工程において回転翼盤4の回転数を変えずに費やす時間だけを短くしても、一定の洗浄力を維持できる。すなわち、洗い工程等において回転翼盤4が回転する時間を短くできるので、洗濯物どうしが擦れる時間も短くでき、布傷みを低減し、糸くずの発生量を少なくすることが可能である。
【0042】
また、本実施形態では、第2羽根44や第3羽根45だけでなく第1羽根43も、翼ベース40と一体に形成されているので、部品点数や組み立て工数が増加することはない。第1羽根43を翼ベース40に固定するネジ穴も不要であるため、隣り合う第1羽根43の間の隙間を大きくでき、第1貫通孔40cの数や大きさを増やすことが可能となり、発生する水流を強くできる。
【0043】
ここで、第1羽根43は、第3羽根45のうち内径側の羽根45aと外径側の羽根45bとの間を径方向に接続しているので、前述のように第1貫通孔40cの総面積を大きくした場合でも、翼ベース40の強度を保つことができる。
【0044】
さらに、本実施形態の第1羽根43は、谷部40bが存在する領域よりも径方向内側にある膨出部41に形成されるので、下方への突出量を大きくできる。その結果、翼ベース40の強度がより向上し、発生する水流がより強くなる。
【0045】
また、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施形態では、乾燥機構を備える洗濯乾燥機について説明したが、乾燥機構を備えない全自動洗濯機に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0046】
S 洗濯機
1 外枠
2 外槽
3 洗濯兼脱水槽(洗濯槽)
4 回転翼盤
10 駆動モータ(駆動部)
23a 吐出口
40 翼ベース
40a 隆起部
40a1 稜線
40a2 凸状傾斜面
40b 谷部
40b1 第2貫通孔
40c 第1貫通孔
41 膨出部
42 軸受
43 第1羽根
43a 段差
44 第2羽根
45 第3羽根
45a 羽根(内径側の第3羽根)
45b 羽根(外径側の第3羽根)