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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183522
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】真空バルブ
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/668 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
H01H33/668 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097081
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】華表 宏隆
【テーマコード(参考)】
5G026
【Fターム(参考)】
5G026KA05
(57)【要約】
【課題】真空度の計測を容易にする。
【解決手段】真空バルブ10は、真空容器100と、この真空容器100に収められた固定電極110および可動電極120と、真空容器100の中に設けられ、固定電極110および可動電極120の周りに巻回され、マグネトロン方式による真空度の計測に用いられるコイル140と、を具備する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と、
前記真空容器に収められた固定電極および可動電極と、
前記真空容器の中に設けられ、前記固定電極および前記可動電極の周りに巻回され、マグネトロン方式による真空度の計測に用いられるコイルと、
を具備する真空バルブ。
【請求項2】
前記真空容器の中に設けられ、前記固定電極および前記可動電極を包囲する金属製の中間シールドを具備し、
前記中間シールドが前記コイルとして機能する、
請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項3】
前記中間シールドには、前記固定電極および前記可動電極の周りを螺旋状に延び、前記コイルを形成するスリットが設けられている
請求項2に記載の真空バルブ。
【請求項4】
前記スリットの幅は1mm以下である、
請求項3に記載の真空バルブ。
【請求項5】
前記スリットが前記固定電極および前記可動電極の周りを巻回する巻回数が5回以上である、
請求項3に記載の真空バルブ。
【請求項6】
前記固定電極および前記可動電極の間に対応する箇所において、前記スリットの巻回の間隔が他の箇所よりも広い
請求項3に記載の真空バルブ。
【請求項7】
前記真空容器の中の前記コイルに導通し、前記真空容器の外に露出した通電端子
を具備する
請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項8】
前記通電端子は、
前記真空容器の全周に亘って延びる環状である
請求項7に記載の真空バルブ。
【請求項9】
前記通電端子は、
直流電流を前記コイルに供給するコンタクトと接触する接触面積が10mm以上である、
請求項7に記載の真空バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真空バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
真空バルブの真空度を計測する方式の一つに、高真空領域の真空度の計測に対応したマグネトロン方式が知られている。マグネトロン方式は、真空容器内に配置された一対の電極間に電圧を印加した状態において、当該電極間に磁場を加え、当該電極間に流れる放電電流を計測することで真空度を算定する方式である。電極間に磁場を加える構成として、例えば特許文献1には、固体絶縁開閉器の真空遮断器の周囲にケーブルを巻回する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-216134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空バルブは、一般に、開閉装置などの他の装置に組み込まれた状態で現場に設置される。また、真空バルブの組み込み態様によっては真空バルブの外周に十分な隙間が確保されていない場合も多々ある。したがって、特許文献1に開示の技術を用いて真空度を計測する場合、作業員などは、真空度計測のためのケーブルを設置現場で真空バルブに簡単には巻回することができず、真空度の計測を容易には行うことができない。以上の事情を考慮して、本開示は、真空度の計測を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上課題を解決するために、本開示の1つの態様に係る真空バルブは、真空容器と、前記真空容器に収められた固定電極および可動電極と、前記真空容器の中に設けられ、前記固定電極および前記可動電極の周りに巻回され、マグネトロン方式による真空度の計測に用いられるコイルと、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る真空バルブを有した真空度計測システムの模式図である。
図2】真空バルブの内部構成を模式的に示す図である。
図3】中間シールドの構成を示す図である。
図4】第1通電端子および第2通電端子の模式図である。
図5】変形例における中間シールドの構成を示す図である。
図6】変形例における中間シールドおよびコイルの説明図である。
図7】変形例における中間シールドおよびコイルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、各図面においては、各要素の寸法および縮尺が実際の製品とは相違する場合がある。また、以下に説明する形態は、本開示を実施する場合に想定される例示的な一形態である。したがって、本開示の範囲は、以下に例示する形態には限定されない。
【0008】
1:実施形態
図1は、本実施形態に係る真空バルブ10を有した真空度計測システム1の模式図である。図2は、真空バルブ10の内部構成を模式的に示す図である。
図1に示される通り、真空度計測システム1は、真空バルブ10と、計測装置20とを具備する。
真空バルブ10は、例えば、電力を供給する回路網に組み込まれ、電力の供給および遮断を切替える開閉装置(真空遮断器とも称される)に用いられる。真空バルブ10は、図2に示される通り、内部が真空に維持された真空容器100と、当該真空容器100に収容された固定電極110および可動電極120と、を具備する。固定電極110および可動電極120が回路網に電気的に接続される。固定電極110および可動電極120は、いわゆる常閉の接点である。すなわち、可動電極120が固定電極110から離れることで、固定電極110と可動電極120との間の電流の流れが真空の高い絶縁性能によって遮断される。この電流の遮断時において、固定電極110と可動電極120との間に生じるアークは、真空の絶縁回復性能によって速やかに消滅する。なお、固定電極110に対する可動電極120の離接は、図1に示される通り、真空バルブ10の外部に設けられた絶縁性を有する可動部材が回路網の状態(例えば異常発生状態)に応じて可動電極120を可動させることによって制御される。
【0009】
計測装置20は、図1に示される通り、真空バルブ10に電気的に接続され、当該真空バルブ10の真空度をマグネトロン方式によって計測する装置である。マグネトロン方式は、固定電極110および可動電極120に直流電圧V1を印加した状態で、固定電極110および可動電極120に磁場を後述するコイル140によって加え、固定電極110と可動電極120の間を流れる直流電流Ahを計測し、この直流電流Ahの計測値に基づいて真空容器100の内部の真空度を計測する方式である。この直流電流Ahの計測値は、電子倍増数、すなわち分子密度(真空容器100の中の圧力)に比例し、この比例関係を用いて直流電流Ahの計測値から真空度が算定される。
【0010】
計測装置20は、上記マグネトロン方式による計測を実現するために、図1に示される通り、直流電圧源210と、直流電流源220と、直流電流計230と、を備える。
直流電圧源210は、固定電極110および可動電極120の間に直流電圧V1を印加する電圧源である。直流電流源220は、上記コイル140に磁場を発生させるために当該コイル140に直流電流A1を流す電流源である。直流電流計230は、固定電極110と可動電極120との間に流れる直流電流Ahを計測する電流計である。直流電圧源210の直流電圧V1は、第1ケーブルCA1および第2ケーブルCA2を介して真空バルブ10に供給され、また直流電流源220の直流電流A1は、第3ケーブルCA3および第4ケーブルCA4を介して真空バルブ10に供給される。なお、第1ケーブルCA1および第2ケーブルCA2においてどちらを陰極にするか、第3ケーブルCA3および第4ケーブルCA4においてどちらを陰極にするかは適宜である。
【0011】
次いで、真空バルブ10の構成について詳述する。
真空バルブ10の真空容器100は、図2に示される通り、両端が開口した略円筒状の絶縁容器101と、絶縁容器101の一方の開口101Aを閉塞する第1金属筐体102と、絶縁容器101の他方の開口101Bを閉塞する第2金属筐体103と、を具備する。絶縁容器101は、例えばアルミナ磁器などのセラミックを主材とする容器であり、高い絶縁性能を有する。第1金属筐体102および第2金属筐体103は金属製のフランジであり、例えば、ろう付けまたは融着を用いて絶縁容器101に気密に接合されている。真空容器100の内部は真空に維持されており、当該真空の真空度は、10-1Paから10-5Paの高真空領域の範囲の圧力(例えば6.7×10-2Pa)となっている。
【0012】
また、真空バルブ10は、図2に示される通り、第1通電軸112および第2通電軸122と、中間シールド130とを具備する。
第1通電軸112および第2通電軸122は、真空容器100の中に収められた固定電極110および可動電極120を支持し、かつ外部から供給される電圧を通電する部材である。詳細には、第1通電軸112は、固定電極110が一端112Aに接合された導電性材料から成る円柱状の部材である。第1通電軸112は、真空容器100の第1金属筐体102の略中央部を内部から外部に貫通し当該第1金属筐体102に固定される。第1通電軸112は、当該第1金属筐体102から外部に突出した端部に、拡径形状の第1端子部112Tを含み、真空度計測時には、当該第1端子部112Tに計測装置20の第1ケーブルCA1が接続される。第2通電軸122は、可動電極120が一端122Aに接合された導電性材料から成る円柱状の部材である。第2通電軸122は、真空容器100の第2金属筐体103の略中央部を内部から外部に貫通し当該第2金属筐体103に中心軸Cに沿って移動自在に設けられる。第2通電軸122は、当該第2金属筐体103から外部に突出した端部に、拡径形状の第2端子部122Tを含み、真空度計測時には、当該第2端子部122Tに計測装置20の第2ケーブルCA2が接続される。
第1通電軸112および第2通電軸122は、真空容器100の中において固定電極110および可動電極120が対向する姿勢で、かつ、真空容器100の中心軸Cに同軸に配置されている。
【0013】
中間シールド130は、固定電極110および可動電極120を包囲する金属製の部材であり、真空容器100の内側の面に固定されている。中間シールド130は、アークシールドとも呼ばれる部材であり、電流遮断時に固定電極110と可動電極120との間に発生する金属蒸気を捕捉し、金属蒸気が絶縁容器101の内側の面に付着することを防止する。金属蒸気の付着が防止されることで、絶縁容器101の絶縁性能が損なわれることが防止される。
【0014】
図3は、中間シールド130の構成を、固定電極110および可動電極120と、第1通電軸112および第2通電軸122とともに示す図である。
中間シールド130は、両端が開口した円筒状を成し、図3に示される通り、第1通電軸112、および第2通電軸122と同様に真空容器100の中心軸Cに同軸に配置される。この中間シールド130には、中心軸Cの周りを回転しながら一方の端部と他方の端部との間に亘って延びる、換言すれば螺旋状に延びるスリット132が形成されている。一方の端部を、以下、「第1端部130TA」といい、他方の端部を、以下、「第2端部130TB」という。中間シールド130において、このスリット132が形成されている範囲は、1本の薄い帯状の導電性の線材を螺旋状に巻回したコイル140として機能する。真空度計測時にはコイル140に、真空バルブ10の外部の計測装置20から直流電流A1が供給されることで、当該コイル140が磁場発生源となる。
【0015】
ただし、中間シールド130にスリット132を形成した場合、固定電極110と可動電極120との間に電流遮断時に発生した金属蒸気がスリット132を通り抜け、絶縁容器101の内側の面に付着することがある。したがって、金属蒸気の通り抜けを抑制するために、スリットの幅WSは1mm以下であることが望ましい。また、幅WSが1mm以下に制限されることで、固定電極110および可動電極120の近傍、ならびに、中間シールド130の表面への電界集中が一定レベル以下に抑制される。
【0016】
真空バルブ10は、図2に示される通り、真空バルブ10の外部から内部のコイル140に電流を流すための第1電流路151および第2電流路152を具備する。第1電流路151は、コイル140における第1端部130TAに対応するコイル端部140TAと真空容器100の外側との間に亘って通電する電流経路である。また、第2電流路152は、コイル140における第2端部130TBに対応するコイル端部140TBと真空容器100の外側との間に亘って通電する電流経路である。
【0017】
第1電流路151は、第1通電端子1510と、第1線材1512とを具備し、また、第2電流路152は、第2通電端子1520と、第2線材1522とを具備する。第1通電端子1510および第2通電端子1520は、真空容器100の外側に露出し、計測装置20から延びる第3ケーブルCA3および第4ケーブルCA4との電気的な接点として用いられる端子部材である。図1に示される通り、第1通電端子1510および第2通電端子1520はいずれも、真空容器100の表面において全周に亘って帯状に露出し、それぞれの露出した箇所に、第3ケーブルCA3および第4ケーブルCA4のそれぞれの先端のコンタクトCA3C、CA4Cが電気的に接続される。図2に示される通り、第1線材1512は、真空容器100の中を、第1通電端子1510とコイル端部140TAとの間に亘って延び両者を電気的に接続する導電性の部材である。第2線材1522は、真空容器100の中を、第2通電端子1520とコイル端部140TBとの間に亘って延び両者を電気的に接続する導電性の部材である。なお、第1線材1512および第2線材1522に所定の剛性を有する部材が用いられることで、第1線材1512および第2線材1522が中間シールド130を支持する支持材として用いられてもよい。
【0018】
図4は、第1通電端子1510および第2通電端子1520の模式図である。
図4に示される通り、第1通電端子1510および第2通電端子1520はいずれも所定の厚みの円環板状の金属製の部材である。第1通電端子1510および第2通電端子1520のそれぞれの外径は、真空容器100の外径以上となっており、第1通電端子1510および第2通電端子1520の外周面1510A、1520Aが真空容器100の外側の面と段差を生じさせない状態(いわゆる面一)、または、外側の面から突出した状態で露出する。外周面1510A、1520Aを含む露出した面が第3ケーブルCA3および第4ケーブルCA4のコンタクトCA3C、CA4Cとの接点となる。
【0019】
真空容器100において、図1図2および図4に示される通り、第1通電端子1510および第2通電端子1520の間には、絶縁性を有する円環状の絶縁スペーサ1530が設けられており、第1通電端子1510および第2通電端子1520の間の絶縁が確保されている。図1に示される通り、第1通電端子1510、絶縁スペーサ1530および第2通電端子1520は、真空容器100において3層の積層構造部1540を構成する。図2に示される通り、絶縁容器101は、中心軸Cが延びる方向において、第1金属筐体102が接合される第1容器体1011と、第2金属筐体103が接合される第2容器体1012とに分割されている。第1容器体1011および第2容器体1012の間に積層構造部1540が挟み込まれることで、当該積層構造部1540が真空容器100に組み込まれる。第1通電端子1510および第2通電端子1520が円環状の積層構造部1540であることで、絶縁容器101を内部から外部に貫通する棒状の通電端子を組み込む構成に比べ、第1通電端子1510および第2通電端子1520と、第1容器体1011および第2容器体1012との接合面に凹凸が生じることがなく、接合面の気密性の管理が容易となる。
【0020】
以上の構成において、マグネトロン方式による真空度の計測時には、図1に示される通り、計測装置20の第1ケーブルCA1、第2ケーブルCA2、第3ケーブルCA3および第4ケーブルCA4が作業員などによって真空バルブ10に電気的に接続される。具体的には、直流電圧源210から延びる第1ケーブルCA1および第2ケーブルCA2のうち、第1ケーブルCA1が第1通電軸112の第1端子部112Tに接続され、第2ケーブルCA2が第2通電軸122の第2端子部122Tに接続される。また、直流電流源220から延びる第3ケーブルCA3および第4ケーブルCA4のうち、第3ケーブルCA3が第1通電端子1510に接続され、第4ケーブルCA4が第2通電端子1520に接続される。
【0021】
計測装置20は、その後、第1通電端子1510および第2通電端子1520を通じて、中間シールド130が有するコイル140に直流電流源220の直流電流A1を流す。直流電流A1がコイル140を流れることで、アンペールの法則にしたがって固定電極110と可動電極120とを結ぶ方向(中心軸Cの方向)に直流の磁場が発生し、当該磁場が固定電極110と可動電極120の間に印加される。計測装置20は、当該磁場の印加状態において、第1端子部112Tおよび第2端子部122Tを通じて固定電極110および可動電極120の間に直流電圧源210の直流電圧V1を印加する。そして、計測装置20は、当該直流電圧V1の印加によって固定電極110および可動電極120の間に流れる直流電流Ahを直流電流計230によって計測し、この計測結果に基づいて真空度を算定する。
【0022】
マグネトロン方式による真空度の計測において、固定電極110と可動電極120の間に印加される磁場が強いほど、固定電極110および可動電極120の間に流れる直流電流Ahが大きくなるため計測が容易となる。コイル140が発生する磁場の強度は、当該コイル140を流れる直流電流A1、および、当該コイル140の巻回数にそれぞれ比例する。そこで、計測装置20は、直流電流源220から流す直流電流A1を50A(アンペア)以上の大電流とすることで磁場を強めている。ただし、直流電流源220から大電流を流す場合、第3ケーブルCA3および第4ケーブルCA4のコンタクトCA3C、CA4Cと、真空バルブ10の第1通電端子1510および第2通電端子1520との接点の接触面積の大きさによっては接点に損傷が生じる。そこで、第1通電端子1510および第2通電端子1520において、真空バルブ10から露出した箇所は、コンタクトCA3C、CA4Cとの接点の接触面積として10mm以上の面積が確保される寸法となっている。また、真空容器100において、磁場を強めるためにコイル140の巻回数は5回以上となっている。
【0023】
以上説明した通り、真空バルブ10は、真空容器100と、当該真空容器100に収められた固定電極110および可動電極120と、真空容器100の中に設けられ、固定電極110および可動電極120の周りに巻回され、マグネトロン方式による真空度の計測に用いられるコイル140と、を具備する。真空バルブ10の中にコイル140が予め設けられているため、特許文献1の技術のように真空度の計測の際に別途のコイルを真空容器100の周りに巻回する必要がない。したがって、真空バルブ10が開閉装置などの他の装置に組み込まれた状態で設置され、真空バルブ10の周りに十分な隙間がなくとも、作業者などは真空容器100のコイル140を用いて容易に真空度を計測できる。また、真空度の計測は、一般に、真空バルブ10の出荷試験時にも行われる。このときの真空度の計測においても、真空容器100の周囲にコイルを巻回する作業が不要となるため、真空度の計測が容易となる。
【0024】
また、真空バルブ10は、真空容器100の中に設けられ、固定電極110および可動電極120を包囲する金属製の中間シールド130を具備し、当該中間シールド130がコイル140として機能する。このため、真空度の計測時には、中間シールド130に直流電流A1を流すことで、マグネトロン方式の真空度を計測できる。また、中間シールド130がコイルと140として機能するため、中間シールド130とは別にコイルを設ける必要がなく、部品点数を削減できる。
【0025】
また、中間シールド130には、固定電極110および可動電極120の周りを螺旋状に延び、コイル140を形成するスリット132が設けられている。中間シールド130にスリット132を形成した簡単な構成によって中間シールド130をコイル140として機能させることができる。
【0026】
また、スリット132の幅WSは1mm以下であるため、固定電極110と可動電極120との間に電流遮断時に発生した金属蒸気がスリット132を通り抜け、絶縁容器101の内側の面に付着することを防止でき、また、固定電極110および可動電極120の近傍、ならびに、中間シールド130の表面への電界集中が一定レベル以下に抑制される。
【0027】
また、スリット132が固定電極110および可動電極120の周りを巻回する巻回数が5回以上であるため、コイル140によって十分に強い磁場が得られ、マグネトロン方式による真空度の計測が容易となる。なお、例えば、直流電流A1を増加させることで十分な強さの磁場が得られる場合は、巻回数は5回よりも小さくてもよい。
【0028】
また、真空バルブ10は、真空容器100の中のコイル140に導通し、真空容器100の外に露出した第1通電端子1510および第2通電端子1520を具備するため、計測装置20の第3ケーブルCA3および第4ケーブルCA4のコンタクトCA3C、CA4Cを第1通電端子1510および第2通電端子1520に接続して、コイル140に簡単に直流電流A1を流すことができる。
【0029】
また、第1通電端子1510および第2通電端子1520は、真空容器100の全周に亘って延びる環状であるため、通電端子が絶縁容器101を内部から外部に貫通する棒状である構成に比べ、第1通電端子1510および第2通電端子1520と、第1容器体1011および第2容器体1012との接合面に凹凸が生じることがなく、接合面の気密性の管理が容易となる。
【0030】
また、第1通電端子1510および第2通電端子1520はいずれも、第3ケーブルCA3および第4ケーブルCA4のコンタクトCA3C、CA4Cとの接触面積が10mm以上となる寸法に形成されている。したがって、コイル140によって十分に強い磁場を得るために、例えば50A(アンペア)以上の大電流を第3ケーブルCA3および第4ケーブルCA4のコンタクトCA3C、CA4Cから第1通電端子1510および第2通電端子1520に供給した場合でも、コンタクトCA3C、CA4Cと第1通電端子1510および第2通電端子1520との接点の損傷を防ぐことができる。なお、真空度の測定に十分な直流電流A1を流せるならば、接触面積は10mm未満でもよい。
【0031】
B:変形例
以上に例示した実施形態の態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0032】
(1)実施形態において、中間シールド130に形成されたコイル140は、中心軸Cの方向における巻回の間隔P(いわゆるピッチ)が略一定であるが、間隔Pは一定でなくてもよい。例えば、図5に示される通り、固定電極110および可動電極120の間に対応する箇所Qにおいて、コイル140の巻回の間隔Pが他の箇所よりも広くてもよい。この箇所Qにおいて、コイル140の巻回の間隔Pが広くなることで、固定電極110および可動電極120の間の周囲に開口するスリット132の面積が縮小、または、ゼロとすることができる。換言すれば、コイル140は、固定電極110および可動電極120の間の空間を包囲する円筒部と、円筒部から上記第1コイル端部140TAに亘る第1部分と、円筒部から上記第2コイル端部140TBに亘る第2部分と、を備える構成とも言える。
このコイル140の構成により、固定電極110と可動電極120との間に電流遮断時に発生した金属蒸気のスリット132の通り抜けを円筒部が抑制し、絶縁容器101の内側の面に付着することを抑制できる。
【0033】
(2)実施形態において、中間シールド130がコイル140として機能する構成を例示した。しかしながら、コイル140は中間シールド130とは別に設けられてもよい。例えば、図6に示される通り、固定電極110および可動電極120の周りに巻回されたコイル140を、中間シールド130の内側に設けてもよい。また例えば、図7に示される通り、当該コイル140を、中間シールド130の外側に設けてもよい。また例えば、コイル140が中間シールド130の代わりに用いられ得る場合は、真空バルブ10は中間シールド130を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…真空バルブ、100…真空容器、110…固定電極、120…可動電極、130…中間シールド、132…スリット、140…コイル、A1、Ah…直流電流、Q…間隔、WS…幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7