(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183530
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】真空パッド振れ防止機構
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B25J15/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097093
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 優
(72)【発明者】
【氏名】後藤 幸也
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707FS01
3C707FT02
3C707FT06
3C707FT16
3C707MT05
3C707NS26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ワークが高速で搬送されてワークに大きな加減速度が作用しても、ベローズの振れが確実に防止される真空パッドを提供する。
【解決手段】真空パッド12は、真空通路14aを有する支持部材14と、支持部材に取り付けられるベローズ16とを備え、カバー体は、円筒状の本体部32と、本体部の一端から突出する取付け部34と、本体部の他端から径方向外方に突出するフランジ部36とを備える。ベローズが収縮してワークを吸着保持したとき、カバー体がベローズの外側を覆う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー体が真空パッドに取り付けられた真空パッド振れ防止機構であって、
前記真空パッドは、真空通路を有する支持部材と、前記支持部材に取り付けられるベローズとを備え、前記カバー体は、円筒状の本体部と、前記本体部の一端から突出する取付け部と、前記本体部の他端から径方向外方に突出するフランジ部とを備え、前記ベローズが収縮してワークを吸着保持したとき、前記カバー体が前記ベローズの外側を覆い、前記カバー体は、前記取付け部が前記支持部材に螺合されることによって前記真空パッドに取り付けられ、前記真空パッドに対する前記カバー体の取付け位置を調整可能である真空パッド振れ防止機構。
【請求項2】
請求項1記載の真空パッド振れ防止機構において、
前記カバー体の前記本体部は、前記ベローズの取付け位置を外部から確認することが可能な窓部を有する真空パッド振れ防止機構。
【請求項3】
請求項1記載の真空パッド振れ防止機構において、
前記カバー体は、第1カバー体および第2カバー体を含み、前記第1カバー体および前記第2カバー体は、半円筒状の本体部を備える真空パッド振れ防止機構。
【請求項4】
請求項3記載の真空パッド振れ防止機構において、
前記第1カバー体および前記第2カバー体は、ヒンジ部を介して相対回動可能に連結される真空パッド振れ防止機構。
【請求項5】
請求項3記載の真空パッド振れ防止機構において、
前記第1カバー体および前記第2カバー体は、相互に分離可能な部材である真空パッド振れ防止機構。
【請求項6】
請求項3記載の真空パッド振れ防止機構において、
前記第1カバー体の前記本体部は係合片および係合凹部を備え、前記第2カバー体の前記本体部は係合片および係合凹部を備え、前記第1カバー体の前記本体部の前記係合片が前記第2カバー体の前記本体部の前記係合凹部に係合し、前記第2カバー体の前記本体部の前記係合片が前記第1カバー体の前記本体部の前記係合凹部に係合する真空パッド振れ防止機構。
【請求項7】
請求項3記載の真空パッド振れ防止機構において、
孔部を有する拡張プレートが前記カバー体に取り付けられる真空パッド振れ防止機構。
【請求項8】
請求項7記載の真空パッド振れ防止機構において、
前記カバー体の前記本体部は、外方に突出する複数の突出片を備え、前記複数の突出片は、周方向に等間隔に配置され、前記フランジ部と所定の隙間を隔てて向き合う真空パッド振れ防止機構。
【請求項9】
請求項8記載の真空パッド振れ防止機構において、
前記拡張プレートの前記孔部は、前記カバー体の前記本体部を挿通することが可能な中心孔部と、前記複数の突出片を挿通することが可能な複数の周辺孔部とを含み、前記拡張プレートは、前記複数の周辺孔部のうち互いに隣接する前記周辺孔部の間に差し込み部を有し、前記差し込み部は、前記複数の突出片が前記カバー体の前記フランジ部と向き合う隙間に入り込む真空パッド振れ防止機構。
【請求項10】
請求項9記載の真空パッド振れ防止機構において、
前記複数の突出片の一つは、先端にスリットが形成されたフック部を有し、前記拡張プレートが前記カバー体の軸心回りの所定位置にあるとき、前記拡張プレートの前記差し込み部に形成されたスリットに前記フック部が弾性的に係合する真空パッド振れ防止機構。
【請求項11】
請求項9記載の真空パッド振れ防止機構において、
前記複数の突出片の一つは、フック部と、前記フック部を持ち上げるためのレバー部とを備え、前記拡張プレートが前記カバー体の軸心回りの所定位置にあるとき、前記拡張プレートの前記差し込み部に形成されたスリットに前記フック部が弾性的に係合する真空パッド振れ防止機構。
【請求項12】
請求項9記載の真空パッド振れ防止機構において、
前記カバー体の前記本体部は係合レバーを備え、前記拡張プレートが前記カバー体の軸心回りの所定位置にあるとき、前記拡張プレートの前記差し込み部に形成されたピン孔に前記係合レバーに形成された球状の突部が係合する真空パッド振れ防止機構。
【請求項13】
請求項9記載の真空パッド振れ防止機構において、
前記カバー体の前記本体部は係合レバーを備え、前記拡張プレートが前記カバー体の軸心回りの所定位置にあるとき、前記拡張プレートの前記差し込み部に形成されたスリットに前記係合レバーのリブが係合する真空パッド振れ防止機構。
【請求項14】
請求項7記載の真空パッド振れ防止機構において、
前記拡張プレートは、プレート部と、前記プレート部の外周から延びる筒状のスカート部とから構成される真空パッド振れ防止機構。
【請求項15】
請求項7記載の真空パッド振れ防止機構において、
前記拡張プレートは、プレート本体と、前記プレート本体の板面に垂直な方向に配置される複数のガイド軸とを組み合わせて構成される真空パッド振れ防止機構。
【請求項16】
請求項15記載の真空パッド振れ防止機構において、
前記プレート本体は、外周縁から内方に向けて切り欠かれた複数のスリットを有し、雄ねじを有する前記ガイド軸は、前記複数のスリットに挿通され、一対のナットを用いて前記プレート本体に固定される真空パッド振れ防止機構。
【請求項17】
請求項3記載の真空パッド振れ防止機構において、
複数の前記カバー体が1つの拡張プレートに取り付けられる真空パッド振れ防止機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負圧(真空圧)による吸引力でワークを吸着保持する真空パッドの振れを防止する真空パッド振れ防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ベローズの内部に負圧を生成せしめ、ベローズの開口端部でワークを吸着保持する真空パッドが知られている。この真空パッドは、伸縮可能なベローズを備えているので、ワークの様々な形状に追従してワークを吸着することができ、また、傾斜した状態で置かれたワークを容易に吸着することができる。
【0003】
ベローズを備えた真空パッドにおいて、ワークに外力が作用しても、ワークが安定した状態で保持されるように工夫した技術も知られている。例えば、特許文献1には、ワークの傾きを防止するための固定ロッドをベローズ式吸着パッドの外側に配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベローズを備えた真空パッドを用いてワークを高速で搬送する場合、ワークに大きな加速度または減速度が作用したとき、ベローズが変形しながら激しく振れることがある。特許文献1に記載された技術は、このような事象に着目してなされたものではなく、ベローズの振れを防止する技術は、十分に開発されていない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る真空パッド振れ防止機構は、カバー体が真空パッドに取り付けられたもので、真空パッドは、真空通路を有する支持部材と、支持部材に取り付けられるベローズとを備え、カバー体は、円筒状の本体部と、本体部の一端から突出する取付け部と、本体部の他端から径方向外方に突出するフランジ部とを備える。ベローズが収縮してワークを吸着保持したとき、カバー体がベローズの外側を覆う。カバー体は、取付け部が支持部材に螺合されることによって真空パッドに取り付けられ、真空パッドに対するカバー体の取付け位置を調整可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る真空パッド振れ防止機構によれば、ベローズが収縮してワークを吸着保持したとき、カバー体がベローズの外側を覆う。このため、ワークが高速で搬送されてワークに大きな加減速度が作用しても、ベローズの変形がカバー体によって抑制され、ベローズの振れが確実に防止される。また、カバー体は、取付け部が支持部材に螺合されることによって真空パッドに取り付けられ、真空パッドに対するカバー体の取付け位置を調整可能である。このため、使用されるベローズの長さ等に応じて、カバー体の取付け位置を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る真空パッド振れ防止機構の外観図である。
【
図2】
図2は、
図1の真空パッド振れ防止機構をII-II線に沿って切断した断面図である。
【
図3】
図3は、ワーク吸着時における
図2に対応する図である。
【
図4】
図4は、
図1の真空パッド振れ防止機構のカバー体について、取り付け前の状態を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5の拡張プレートが
図1の真空パッド振れ防止機構のカバー体に取り付けられた状態を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6の拡張プレート付き真空パッド振れ防止機構の要部断面を含む図である。
【
図8】
図8は、
図5の拡張プレートの第1変形例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、
図5の拡張プレートの第2変形例を説明するための図である。
【
図12】
図12は、
図1の真空パッド振れ防止機構における拡張プレート位置決め構造の第1変形例を説明するための図である。
【
図13】
図13は、
図1の真空パッド振れ防止機構における拡張プレート位置決め構造の第2変形例を説明するための図(位置決め前の図)である。
【
図14】
図14は、
図1の真空パッド振れ防止機構における拡張プレート位置決め構造の第2変形例を説明するための図(位置決め後の図)である。
【
図15】
図15は、
図1の真空パッド振れ防止機構における拡張プレート位置決め構造の第3変形例を説明するための図(位置決め前の図)である。
【
図16】
図16は、
図1の真空パッド振れ防止機構における拡張プレート位置決め構造の第3変形例を説明するための図(位置決め後の図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1および
図2に示されるように、本発明の実施形態に係る真空パッド振れ防止機構10は、真空パッド12およびカバー体20を含む。
【0011】
真空パッド12は、内部に真空通路14aを有する円筒状の支持部材14と、支持部材14の下部に取り付けられるベローズ16とを備える。真空通路14aは、支持部材14の軸心Xに沿って延び、支持部材14の上下両端で開口する。真空通路14aの上端には、図示しない真空発生装置からの負圧が供給される。支持部材14は、所定長さに亘って外周に雄ねじ14bを有し、雄ねじ14bの下方において外周に凹溝14cを有する。支持部材14には、ロックナット18が螺合されている。
【0012】
ベローズ16は、シリコーン等のゴム材料または樹脂材料から筒状に構成される。ベローズ16は、外壁から突出するリング状の肉厚部16aと内壁から突出するリング状の肉厚部16bとが交互に形成された襞構造を有し、上下に伸縮可能である。ベローズ16の内部空間は、支持部材14の真空通路14aに連通する。ベローズ16は、下端面においてワークと接触する。ベローズ16の上端は、径方向内方に突出するフランジ部16cを有する。ベローズ16は、フランジ部16cが支持部材14の凹溝14cに嵌合することによって支持部材14に取り付けられる。
【0013】
図4に示されるように、カバー体20は、ヒンジ部40を介して相対回動可能に連結された第1カバー体22および第2カバー体30を含む。第1カバー体22および第2カバー体30は、半円筒状の本体部24、32と、本体部24、32の上端から縮径されて突出する取付け部26、34と、本体部24、32の下端から径方向外方に突出するフランジ部28、36とを備える。第1カバー体22および第2カバー体30の本体部24、32の内径は、ベローズ16の外径よりも僅かに大きい。
【0014】
以下において、第1カバー体22の本体部24および第2カバー体30の本体部32をまとめて、カバー体20の本体部24、32という場合がある。また、第1カバー体22の取付け部26および第2カバー体30の取付け部34をまとめて、カバー体20の取付け部26、34という場合がある。また、第1カバー体22のフランジ部28および第2カバー体30のフランジ部36をまとめて、カバー体20のフランジ部28、36という場合がある。
【0015】
カバー体20の取付け部26、34は、支持部材14の雄ねじ14bと螺合する雌ねじ26a、34aを有する。カバー体20のフランジ部28、36は、下端面においてワークと接触する。カバー体20の本体部24、32は、ヒンジ部40に近接する位置で互いに突き合う第1合わせ部24a、32aと、ヒンジ部40から離れた位置で互いに突き合う第2合わせ部24b、32bとを有する。
【0016】
第1カバー体22の本体部24は、第1合わせ部24aの近傍に係合凹部24cを備えるとともに、第2合わせ部24bから突出する一対の係合片24dを備える。第2カバー体30の本体部32は、第1合わせ部32aから突出する係合片32dを備えるとともに、第2合わせ部32bの近傍に一対の係合凹部32cを備える。第1カバー体22の各係合片24dは、第2カバー体30の各係合凹部32cに係合する。第2カバー体30の係合片32dは、第1カバー体22の係合凹部24cに係合する。
【0017】
第1カバー体22の本体部24の下部は、周方向中央から外方に突出する第1突出片24eと、第1合わせ部24aの近傍で外方に突出する第2突出片24fとを備える。第1突出片24eおよび第2突出片24fは、フランジ部28と所定の隙間を隔てて向き合う。第2カバー体30の本体部32の下部は、周方向中央から外方に突出する第3突出片32eと、第1合わせ部32aの近傍で外方に突出する第4突出片32fと、第2合わせ部32bの近傍で外方に突出する第5突出片32gとを備える。第3突出片32e、第4突出片32fおよび第5突出片32gは、フランジ部36と所定の隙間を隔てて向き合う。
【0018】
第1カバー体22および第2カバー体30が相互に突き合わされることによって、カバー体20の本体部24、32は円筒状に構成される。第1カバー体22および第2カバー体30が相互に突き合わされたとき、第1カバー体22の第2突出片24fおよび第2カバー体30の第4突出片32fは、一つの連続した突出片(以下「連続突出片」という)を形成する。第1突出片24e、連続突出片、第3突出片32eおよび第5突出片32gは、互いに同一形状であり、カバー体20の周方向に等間隔に(90度おきに)配置される。
【0019】
第5突出片32gは、後述する拡張プレート42を位置決め固定するためのフック部32hを備える。フック部32hの先端には、ドライバ等の工具を挿入可能なスリット32iが形成されている(
図7参照)。第1カバー体22および第2カバー体30の本体部24、32は、上下方向に延びる細長い窓部38を有する。作業者は、この窓部38を通してベローズ16の取付け位置を確認することができる。窓部38の脇には、目盛り39が表示されている。
【0020】
カバー体20は、例えば以下の手順で、真空パッド12に取り付けられる。第1カバー体22および第2カバー体30を相対回動して両者を大きく開き、第2カバー体30を真空パッド12の側方から真空パッド12に被せる。次に、第1カバー体22を真空パッド12に被せるため、第1カバー体22を閉じる方向に回動させる。
【0021】
第1カバー体22を閉じる方向に回動させると、第1カバー体22の各係合片24dが第2カバー体30の各係合凹部32cに係合し、第2カバー体30の係合片32dが第1カバー体22の係合凹部24cに係合する。また、第1カバー体22および第2カバー体30の第1合わせ部24a、32aが相互に突き合うとともに、第1カバー体22および第2カバー体30の第2合わせ部24b、32bが相互に突き合う。カバー体20の取付け部26、34は、螺合によって支持部材14に取り付けられる。このとき、カバー体20の軸心Xは、支持部材14の軸心Xと一致する。
【0022】
次に、ベローズ16が収縮してワークを吸着保持したときにカバー体20がベローズ16の外側を覆うように、支持部材14に対するカバー体20の取付け位置を調整する。真空パッド振れ防止機構10によって、例えば冷凍食品の一種であるワークWが吸着保持された様子が
図3に示されている。この場合、ベローズ16の下端面がベローズ16の収縮量Lだけ上方に変位したときにカバー体20のフランジ部28、36の下端面がベローズ16の下端面と整合するように、支持部材14の軸心X回りにカバー体20を回動し、取付け部26、34の螺合位置を調整する。
【0023】
作業者は、第1カバー体22または第2カバー体30の窓部38を通してベローズ16の位置を確認できるので、上記調整作業を容易に行うことができる。その後、ロックナット18を締め付けてロックナット18をカバー体20の取付け部26、34に圧接させ、カバー体20の取付けが完了する。
【0024】
なお、ベローズ16が収縮してワークを吸着保持したとき、カバー体20のフランジ部28、36の下端面がベローズ16の下端面と整合するとは限らない。例えば、ワークが袋状であってワーク自体が変形する場合は、ワークを吸着保持したときにワークの一部がカバー体20の内側に入り込むので、カバー体20のフランジ部28、36の下端面は、ベローズ16の下端面より下方に突出する。
【0025】
真空パッド12は、支持部材14の上端において、図示しない真空発生装置に取り付けられている。カバー体20の取付けに支障のない方向である真空パッド12の側方から第1カバー体22および第2カバー体30を被せるので、真空パッド12を真空発生装置から外すことなく、カバー体20のみを着脱することが可能である。
【0026】
ワークWの形状、大きさ等に応じた拡張プレートをカバー体20に取り付けるのが好ましい。
図5に円形の拡張プレート42が示されている。拡張プレート42は、中央に孔部44を有する。孔部44は、カバー体20の本体部24、32を挿通することが可能な中心孔部44aと、中心孔部44aから十字状に拡がる4つの周辺孔部44bとを含む。4つの周辺孔部44bは、互いに同一形状であって、カバー体20の第1突出片24e、連続突出片、第3突出片32eおよび第5突出片32gを挿通することが可能な形状を有する。また、各周辺孔部44bは、ヒンジ部40を挿通するのに十分な大きさを有している。
【0027】
拡張プレート42は、隣接する周辺孔部44bの間に差し込み部48を有する。各差し込み部48には、概ね径方向に延びるスリット46が形成されている。拡張プレート42の厚さは、第1突出片24e、連続突出片、第3突出片32eおよび第5突出片32gがカバー体20のフランジ部28、36と向き合う隙間と略等しい。
【0028】
次に、
図6および
図7を参照しながら、拡張プレート42をカバー体20に取り付ける手順について説明する。まず、カバー体20の上方から拡張プレート42をカバー体20に嵌め込む。すなわち、カバー体20の本体部24、32を拡張プレート42の中心孔部44aに挿通するとともに、ヒンジ部40、第1突出片24e、連続突出片、第3突出片32eおよび第5突出片32gを拡張プレート42の各周辺孔部44bに挿通する。この場合、4つの突出片は同一形状であり、4つの周辺孔部44bも同一形状であるから、各突出片を任意の周辺孔部に挿通すればよい。なお、ヒンジ部40および連続突出片は、1つの周辺孔部44bに挿通される。
【0029】
拡張プレート42がカバー体20に嵌め込まれると、拡張プレート42の下面は、カバー体20のフランジ部28、36の上面に当接する。その後、フック部32hのスリット32iに図示しないドライバの先端を差し込んで、フック部32hを持ち上げながら、拡張プレート42をカバー体20の軸心X回りに回転させる。拡張プレート42の差し込み部48は、第1突出片24e、連続突出片、第3突出片32eおよび第5突出片32gがカバー体20のフランジ部28、36と向き合う隙間に入り込む。拡張プレート42を略45度回転させると、フック部32hが拡張プレート42のスリット46の一つに弾性的に係合する。これにより、拡張プレート42がカバー体20に位置決めされ固定される。なお、拡張プレート42をカバー体20の軸心X回りに回転させる方向はいずれであってもよい。
【0030】
拡張プレート42をカバー体20から外す場合は、フック部32hのスリット32iにドライバの先端を差し込んでフック部32hを持ち上げ、拡張プレート42を回転させる。拡張プレート42を略45度回転させると、拡張プレート42の各周辺孔部44bがカバー体20の第1突出片24e、連続突出片、第3突出片32eおよび第5突出片32gと整合する。これにより、拡張プレート42をカバー体20から外すことができる。本実施形態の拡張プレート42は円形であるが、拡張プレートの形状は、ワークの形状に応じて、矩形状とする等、様々に設計することができる。
【0031】
本実施形態に係る真空パッド振れ防止機構10によれば、ベローズ16が収縮してワークを吸着保持したとき、ベローズ16の外側は、僅かな隙間を隔ててカバー体20によって覆われる。このため、ワークWが高速で搬送されてワークWに大きな加減速度が作用しても、ベローズ16の変形がカバー体20によって抑制され、ベローズ16の振れが確実に防止される。
【0032】
また、カバー体20は、取付け部26、34が支持部材14に螺合されることによって真空パッド12に取り付けられ、真空パッド12に対するカバー体20の取付け位置を調整可能である。しかも、カバー体20の本体部24、32は、ベローズ16の取付け位置を外部から確認できる窓部38を有する。このため、使用されるベローズ16の長さ等に応じて、カバー体20の取付け位置を容易に調整できる。
【0033】
また、ヒンジ部40を介して相対回動可能に連結された第1カバー体22および第2カバー体30を真空パッド12の側方から順次真空パッド12に被せることができるので、カバー体20のみを容易に着脱できる。
【0034】
(拡張プレートの第1変形例)
第1変形例に係る拡張プレート50を備えた真空パッド振れ防止機構10が
図8に示されている。この拡張プレート50は、円形のプレート部52と、プレート部52の外周から下方に延びる円筒状のスカート部54とから構成される。ワークの側方をスカート部54で覆うことができるので、ワークの吸着時およびワークの搬送時にワークが搬送する方向に横滑りするのを防ぐことができる。また、柔軟で傷つき易いワークを吸着するとき、ワークが押し潰されないように保護することができる。また、ワークの搬送時にワークが周囲の装置等に接触するのを防止できる。
【0035】
(拡張プレートの第2変形例)
第2変形例に係る拡張プレート60を備えた真空パッド振れ防止機構10が
図9に示されている。この拡張プレート60は、円形のプレート本体62と、プレート本体62の板面に垂直な方向に配置される複数のガイド軸66とを組み合わせて構成される。プレート本体62は、外周縁から径方向内方に向けて切り欠かれた複数のスリット64を有する。複数のスリット64は、円周方向に均等に配置されている。
【0036】
雄ねじを有するガイド軸66は、各スリット64に挿通され、一対のナット68を用いてプレート本体62に固定される。具体的には、一対のナット68が螺合されたガイド軸66がスリット64に挿通され、プレート本体62が一対のナット68で挟持される。これにより、ガイド軸66は、スリット64上の所望の位置でプレート本体62に固定され、かつ、プレート本体62から所望の長さだけ下方に突出した状態でプレート本体62に固定される。
【0037】
拡張プレート60によれば、ワークの外側に複数のガイド軸66が配置されるので、ワークの吸着時およびワークの搬送時にワークを保護し、また、ワークの横滑りを防止することができる。しかも、複数のガイド軸66の位置および高さを調整できるので、プレート本体62を交換することなく、異なる形状、大きさ等のワークに対応できる。
【0038】
(拡張プレートの第3変形例)
第3変形例に係る拡張プレート70を備えた真空パッド振れ防止機構10が
図10に示されている。この拡張プレート70は、規則的に配列された複数の孔部44を有する。複数の真空パッド振れ防止機構10のカバー体20が1つの拡張プレート70に取り付けられる。本変形例では、合計6個の真空パッド振れ防止機構10が配置されている。拡張プレート70によれば、複数の真空パッド振れ防止機構10を規則正しく配列できる。
【0039】
(カバー体の変形例)
カバー体20の変形例が
図11に示されている。上述した真空パッド振れ防止機構10のカバー体20は、第1カバー体22および第2カバー体30がヒンジ部40を介して相対回動可能に連結された構造を有する。しかしながら、
図11に示されるように、第1カバー体22および第2カバー体30は、分離可能な別部材であってもよい。
【0040】
(拡張プレート位置決め構造の第1変形例)
第1変形例に係る拡張プレート位置決め構造が
図12に示されている。第2カバー体30の第5突出片32gは、拡張プレート42を位置決め固定するためのフック部32hと、フック部32hを持ち上げるためのレバー部32jとを備える。レバー部32jを所定方向に倒せば、フック部32hが持ち上がる。
【0041】
(拡張プレート位置決め構造の第2変形例)
第2変形例に係る拡張プレート位置決め構造が
図13および
図14に示されている。第1カバー体22の本体部24の下部は、所定の弾性を有する係合レバー32kを備える。係合レバー32kの下面には、図示しない球状の突部が形成されている。拡張プレート42の各周辺孔部44bは、第5突出片32gおよび係合レバー32kを同時に挿通することができる大きさになっている。拡張プレート42の差し込み部48には、係合レバー32kの突部が係合可能なピン孔47が形成されている。
【0042】
拡張プレート42をカバー体20に取り付ける際には、カバー体20の第1突出片24e、連続突出片、第3突出片32e、第5突出片32gおよび係合レバー32kを拡張プレート42の各周辺孔部44bに挿通する。その後、係合レバー32kの先端に力を加えて係合レバー32kを持ち上げながら、拡張プレート42を回転させる。拡張プレート42を略45度回転させると、係合レバー32kの突部が拡張プレート42のピン孔47に係合する。これにより、拡張プレート42がカバー体20に位置決めされ固定される(
図14参照)。
【0043】
(拡張プレート位置決め構造の第3変形例)
第3変形例に係る拡張プレート位置決め構造が
図15および
図16に示されている。第1カバー体22の本体部24の下部は、所定の弾性を有する係合レバー32mを備える。係合レバー32mは、屈曲形状を有し、幅方向に沿って下方に突出するリブ32nを備える。拡張プレート42の各周辺孔部44bは、第5突出片32gおよび係合レバー32mを同時に挿通できる大きさになっている。また、拡張プレート42のスリット46は、係合レバー32mのリブ32nと同じ幅を有する。
【0044】
拡張プレート42をカバー体20に取り付ける際には、カバー体20の第1突出片24e、連続突出片、第3突出片32e、第5突出片32gおよび係合レバー32mを拡張プレート42の各周辺孔部44bに挿通する。その後、係合レバー32mの先端に力を加えて係合レバー32mを持ち上げながら、拡張プレート42を回転させる。拡張プレート42を略45度回転させると、係合レバー32mのリブ32nが拡張プレート42のスリット46に係合する。これにより、拡張プレート42がカバー体20に位置決めされ固定される(
図16参照)。
【0045】
本発明に係る真空パッド振れ防止機構は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0046】
10…真空パッド振れ防止機構 12…真空パッド
14…支持部材 14a…真空通路
16…ベローズ 20…カバー体
22…第1カバー体 24、32…本体部
24c、32c…係合凹部 24d、32d…係合片
24e…第1突出片(突出片) 24f…第2突出片(突出片)
26、34…取付け部 28、36…フランジ部
30…第2カバー体 32e…第3突出片(突出片)
32f…第4突出片(突出片) 32g…第5突出片(突出片)
32h…フック部 32i…(フック部の)スリット
32j…レバー部 32k、32m…係合レバー
32n…リブ 38…窓部
40…ヒンジ部 42、50、60、70…拡張プレート
44…孔部 44a…中心孔部
44b…周辺孔部 46…(差し込み部の)スリット
47…ピン孔 48…差し込み部
52…プレート部 54…スカート部
62…プレート本体 64…(プレート本体の)スリット
66…ガイド軸 68…ナット