(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183532
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20231221BHJP
G06Q 30/0601 20230101ALI20231221BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q30/06 312
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097096
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】597151563
【氏名又は名称】株式会社ゼンリン
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】深田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】副島 佑介
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB53
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】セキュリティを確保しつつ、位置に関する情報の受け渡しを行う。
【解決手段】情報処理装置30において、位置情報取得部311は、対象の位置を示す位置情報を取得する。判定部315は、対象の位置に関する情報を提供する提供先に対する、位置に関する情報の提供レベルを判定するための判定基準に基づいて、提供先に対応する提供レベルを判定する。提供処理部317は、取得された位置情報と判定された提供レベルとに基づいて、判定された提供レベルに対応する位置に関する情報を、提供先へ提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記対象の位置に関する情報を提供する提供先に対する、前記位置に関する情報の提供レベルを判定するための判定基準に基づいて、前記提供先に対応する前記提供レベルを判定する判定部と、
取得された前記位置情報と判定された前記提供レベルとに基づいて、判定された前記提供レベルに対応する位置に関する情報を、前記提供先へ提供する処理を行う提供処理部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記判定部が判定する前記提供レベルには、
取得された前記位置情報に対して価値が付加された情報を前記位置に関する情報として前記提供先へ提供する第1レベルと、
取得された前記位置情報そのものを前記位置に関する情報として前記提供先へ提供する第2レベルと、
取得された前記位置情報から情報量が減少した情報を前記位置に関する情報として前記提供先へ提供する第3レベルとが含まれる、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記提供先に対応する前記提供レベルが前記第1レベルであると判定された場合、
前記提供処理部は、
取得された前記位置情報に関連する情報を、前記位置情報に対して価値が付加された付加情報として取得し、
前記位置情報と前記付加情報とを、前記位置に関する情報として前記提供先へ提供する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記提供先に対応する前記提供レベルが前記第2レベルであると判定された場合、
前記提供処理部は、
取得された前記位置情報を、前記位置に関する情報として前記提供先へ提供する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記提供先に対応する前記提供レベルが前記第3レベルであると判定された場合、
前記提供処理部は、
取得された前記位置情報が抽象化された情報を取得し、
前記抽象化された情報を、前記位置に関する情報として前記提供先へ提供する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
対象の位置を示す位置情報を取得するステップと、
前記対象の位置に関する情報を提供する提供先に対する、前記位置に関する情報の提供レベルを判定するための判定基準に基づいて、前記提供先に対応する前記提供レベルを判定するステップと、
取得された前記位置情報と判定された前記提供レベルとに基づいて、判定された前記提供レベルに対応する位置に関する情報を、前記提供先へ提供するステップと、
を有する、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
位置に関する情報を様々な目的で利用するための技術が知られている。例えば、特許文献1は、ユーザから収集される膨大な位置情報をその精度等に応じて抽象化することで、ユーザの位置情報を効率良く取得することができる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
位置に関する情報を様々な目的で利用するために、位置に関する情報の受け渡しを支援する技術が求められている。その一方で、位置に関する情報は個人情報、機密情報等に関わる情報であるため、その取り扱いにはセキュリティの確保が必要となる。このような事情のもと、セキュリティを確保しつつ、位置に関する情報の受け渡しを行うことが求められている。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためのものであり、セキュリティを確保しつつ、位置に関する情報の受け渡しを行うことが可能な情報処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る情報処理装置は、
対象の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記対象の位置に関する情報を提供する提供先に対する、前記位置に関する情報の提供レベルを判定するための判定基準に基づいて、前記提供先に対応する前記提供レベルを判定する判定部と、
取得された前記位置情報と判定された前記提供レベルとに基づいて、判定された前記提供レベルに対応する位置に関する情報を、前記提供先へ提供する処理を行う提供処理部と、
を備える。
【0007】
(2)上記(1)に記載の情報処理装置において、
前記判定部が判定する前記提供レベルには、
取得された前記位置情報に対して価値が付加された情報を前記位置に関する情報として前記提供先へ提供する第1レベルと、
取得された前記位置情報そのものを前記位置に関する情報として前記提供先へ提供する第2レベルと、
取得された前記位置情報から情報量が減少した情報を前記位置に関する情報として前記提供先へ提供する第3レベルとが含まれても良い。
【0008】
(3)上記(2)に記載の情報処理装置において、
前記提供先に対応する前記提供レベルが前記第1レベルであると判定された場合、
前記提供処理部は、
取得された前記位置情報に関連する情報を、前記位置情報に対して価値が付加された付加情報として取得し、
前記位置情報と前記付加情報とを、前記位置に関する情報として前記提供先へ提供しても良い。
【0009】
(4)上記(2)又は(3)に記載の情報処理装置において、
前記提供先に対応する前記提供レベルが前記第2レベルであると判定された場合、
前記提供処理部は、
取得された前記位置情報を、前記位置に関する情報として前記提供先へ提供しても良い。
【0010】
(5)上記(2)から(4)のいずれかに記載の情報処理装置において、
前記提供先に対応する前記提供レベルが前記第3レベルであると判定された場合、
前記提供処理部は、
取得された前記位置情報が抽象化された情報を取得し、
前記抽象化された情報を、前記位置に関する情報として前記提供先へ提供しても良い。
【0011】
(6)上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る情報処理方法は、
対象の位置を示す位置情報を取得するステップと、
前記対象の位置に関する情報を提供する提供先に対する、前記位置に関する情報の提供レベルを判定するための判定基準に基づいて、前記提供先に対応する前記提供レベルを判定するステップと、
取得された前記位置情報と判定された前記提供レベルとに基づいて、判定された前記提供レベルに対応する位置に関する情報を、前記提供先へ提供するステップと、
を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セキュリティを確保しつつ、位置に関する情報の受け渡しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る情報処理システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る情報処理装置の位置情報DBに記憶される情報の例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態において提供レベルに応じて提供される位置に関する情報の第1の例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態において提供レベルに応じて提供される位置に関する情報の第2の例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る情報処理装置の判定基準DBに記憶される判定基準の第1の例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る情報処理装置の判定基準DBに記憶される判定基準の第2の例を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る情報処理装置により実行される位置情報取得処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態に係る情報処理装置により実行される提供処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付す。
【0015】
図1に、本実施形態に係る情報処理システム1の全体構成を示す。情報処理システム1は、位置情報の提供者とその提供先との間における位置情報の受け渡しを仲介するシステムである。情報処理システム1は、様々な対象の位置を示す位置情報を取得し、取得した位置情報を様々な提供先に提供することができる。
【0016】
情報処理システム1は、複数のユーザ装置10A,10B,10C,…と、複数の事業者装置20A,20B,20C,…と、情報処理装置30と、を備える。これら各装置は、通信ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。通信ネットワークNWは、インターネットに代表される広域ネットワークである。
【0017】
複数のユーザ装置10A,10B,10C,…のそれぞれは、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ノート型PC(Personal Computer)、ウェアラブル端末等のような、ユーザに操作される端末装置である。各ユーザ装置10は、ユーザにより把持されて、ユーザが移動することに伴って移動する。或いは、複数のユーザ装置10A,10B,10C,…のそれぞれは、各種のIoT(Internet of Things)デバイスであっても良い。以下では、複数のユーザ装置10A,10B,10C,…のそれぞれを区別せずに総称する場合には、「ユーザ装置10」と称する。
【0018】
各ユーザ装置10は、図示を省略するが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)、表示部、操作部、通信インタフェース及び読み書き可能な不揮発性の半導体メモリ等を備える。各ユーザ装置10は、通信ネットワークNWを介して、複数の事業者装置20A,20B,20C,…及び情報処理装置30と通信可能に接続されている。
【0019】
各ユーザ装置10は、自装置の現在の位置を測定する測位部を備える。例えば、測位部は、GPS(Global Positioning System)衛星を用いて自装置の位置を測定する。或いは、測位部は、Wi-Fi(登録商標)通信機能を介して通信会社の基地局又はアクセスポイントとの距離を測ることにより自装置の位置を測定しても良いし、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)ビーコンの機能を利用して自装置の位置を測定しても良い。
【0020】
複数の事業者装置20A,20B,20C,…のそれぞれは、各種のサービスを提供する事業者により管理される装置である。以下では、複数の事業者装置20A,20B,20C,…のそれぞれを区別せずに総称する場合には、「事業者装置20」と称する。
【0021】
各事業者装置20は、例えば、行政、物流、交通、観光、防災、福祉、教育、金融等のような、様々な分野のサービスを提供する事業者(企業、自治体、機関等)により管理される。行政の分野における事業者は、例えば、政府、地方自治体等により運営される省庁、役所、警察、消防等である。物流の分野における事業者は、例えば、運送会社、郵便局等である。交通の分野における事業者は、例えば、道路会社、鉄道会社、バス会社、航空会社等である。観光の分野における事業者は、例えば、旅行会社、ホテル等である。防災の分野における事業者は、例えば、警備会社等である。福祉の分野における事業者は、例えば、病院、介護施設等である。教育の分野における事業者は、例えば、学校、保育園等である。金融の分野における事業者は、例えば、保険会社、証券会社、銀行等である。
【0022】
なお、これらの分野及び事業者は一例であって、事業者装置20は、どのような分野のどのような事業者により管理されるものであっても良い。
【0023】
各事業者装置20は、このような様々なサービスを提供する事業者の管理下に設置されたPC、サーバ等の情報処理装置である。各事業者装置20は、図示を省略するが、CPU、ROM、RAM、表示部、操作部、通信インタフェース及び読み書き可能な不揮発性の半導体メモリ等を備える。各事業者装置20は、通信ネットワークNWを介して、複数のユーザ装置10及び情報処理装置30と通信可能に接続されている。
【0024】
情報処理装置30は、複数のユーザ装置10及び複数の事業者装置20の間における位置情報の受け渡しを仲介する装置である。以下では、各ユーザ装置10と各事業者装置20とを区別せずに総称する場合には、「個別装置」と称する。情報処理装置30は、複数の個別装置(すなわち複数のユーザ装置10及び複数の事業者装置20)のうちのいずれかの個別装置から位置情報を取得し、取得した位置情報を別の個別装置に提供することで、複数の個別装置間における位置情報の受け渡しを仲介する。
【0025】
情報処理装置30は、適宜の場所に設置されたPC、サーバ等である。一例として、情報処理装置30は、クラウドネットワーク上に設置されたクラウドサーバであっても良い。より詳細には
図2に示すように、情報処理装置30は、制御部31と、記憶部33と、通信部35と、を備える。
【0026】
制御部31は、CPU、ROM及びRAMを備える。CPUは、マイクロプロセッサ等を備えており、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部であって、プロセッサと呼ぶこともできる。制御部31において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、情報処理装置30全体の動作を制御する。
【0027】
記憶部33は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリを備えており、いわゆる二次記憶装置又は補助記憶装置としての役割を担う。記憶部33は、制御部31が各種処理を行うために使用するプログラム及びデータを記憶する。また、記憶部33は、制御部31が各種処理を行うことにより生成又は取得するデータを記憶する。
【0028】
通信部35は、情報処理装置30の外部の機器と通信するための通信インタフェースを備える。通信部35は、公知の通信規格に則って通信ネットワークNWに接続し、複数のユーザ装置10及び複数の事業者装置20を含む外部の機器と通信する。例えば、通信部35は、複数のユーザ装置10及び複数の事業者装置20の間で、様々な対象の位置を示す位置情報を送受信する。
【0029】
なお、情報処理装置30は、図示を省略するが、操作部と表示部とを含むユーザインタフェースを備えていても良い。操作部は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパッド、タッチパネル等の入力装置を備えており、ユーザからの操作入力を受け付けて制御部31に送信する。表示部は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を備えており、制御部31による制御のもとで様々な画像を表示する。
【0030】
次に、情報処理装置30の機能的な構成について説明する。
図2に示すように、制御部31は、機能的に、位置情報取得部311と、変換部312と、付加部313と、統計処理部314と、判定部315と、基準設定部316と、提供処理部317と、を備える。制御部31において、CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して、そのプログラムを実行して制御することにより、これら各部として機能する。
【0031】
また、記憶部33は、位置情報DB(データベース)331と、判定基準DB332と、を備える。これら各データベースは、記憶部33内の適宜の記憶領域に構築される。
【0032】
位置情報取得部311は、複数の個別装置のうちの少なくとも1つから、対象の位置を示す位置情報を取得する。位置情報は、実空間において対象が存在している位置を示す情報であって、具体的には、対象が存在している位置座標、住所等の情報である。位置座標は、代表的には緯度及び経度により表される。
【0033】
対象は、位置情報を取得されるターゲットである。対象は、一般的には人間であるが、自動車、列車、郵送物、商品等のように人間以外であっても良い。また、対象は、時間に伴って位置を変化させる移動体であることに限らず、位置情報を有するものであれば、建物、土地等のような不動産であっても良い。
【0034】
第1に、位置情報取得部311は、複数のユーザ装置10A,10B,10C,…のそれぞれから位置情報を取得する。上述のように、各ユーザ装置10は、自装置の現在の位置を測定する測位部を備える。位置情報取得部311は、通信部35を介して各ユーザ装置10と通信し、各ユーザ装置10の測位部により測定された、各ユーザ装置10の位置を示す位置情報を取得する。各ユーザ装置10から取得される位置情報は、各ユーザ装置10を把持するユーザの位置を示す情報である。そのため、位置情報の対象はユーザである。
【0035】
第2に、位置情報取得部311は、複数の事業者装置20A,20B,20C,…のうちの少なくとも一部から位置情報を取得する。例えば、事業者装置20が運送会社、郵便局等により管理される場合、事業者装置20は、郵便物、商品等の配送状況を把握するため、多数の郵便物、商品等の位置情報を有している。或いは、事業者装置20が道路会社、鉄道会社等により管理される場合、事業者装置20は、道路、鉄道等の状況を把握するため、多数の自動車、列車等の位置情報を有している。また、事業者装置20が役所により管理される場合、事業者装置20は、住民の位置情報として住所の情報を有している。また、事業者装置20が警備会社、警察等により管理される場合、事業者装置20は、様々な場所に設置された監視カメラの撮影により、監視カメラの撮影範囲内を通る人間、自動車等の位置情報を取得する。
【0036】
このように、事業者装置20は、その事業者装置20を管理する事業者が提供するサービスの分野に応じて、様々な対象(郵便物、商品、自動車、列車、人間等)の位置情報を有する。位置情報取得部311は、通信部35を介してこのような事業者装置20と通信し、事業者装置20が有する位置情報を取得する。
【0037】
例えば、いずれかのユーザ装置10又はいずれかの事業者装置20から自発的に情報処理装置30に対して位置情報が送信された場合に、位置情報取得部311は、送信された位置情報を取得する。或いは、位置情報取得部311は、必要に応じて、いずれかのユーザ装置10又はいずれかの事業者装置20に対して位置情報の要求を送信し、要求に対する応答としてユーザ装置10又は事業者装置20から送信された位置情報を取得する。
【0038】
なお、位置情報の対象が時間と共に位置を移動させる移動体(人間、自動車等)である場合には、位置情報取得部311は、位置情報として、異なる複数のタイミングにおける位置情報、言い換えると位置情報の時系列データを取得する。
【0039】
変換部312は、位置情報取得部311により取得された位置情報を、統一された位置情報に変換する。上述のように、位置情報取得部311は、複数のユーザ装置10及び複数の事業者装置20という様々な種別の取得元から位置情報を取得する。そのため、取得される位置情報のデータ形式は、統一されておらず、様々である。変換部312は、位置情報取得部311により取得された位置情報のデータ形式を、その後に扱いやすい統一されたデータ形式に変換する。
【0040】
具体的に説明すると、変換部312は、位置情報取得部311により取得された位置情報に対してデータクレンジング処理を実行する。データクレンジング処理では、変換部312は、誤記、表記の揺れ、重複等を抽出して、削除、修正、正規化等の処理を実行する。
【0041】
例えば、住所の表記は、市町村合併等により変更する場合がある。そのため、取得された位置情報が古い住所の情報を含む場合、変換部312は、古い住所の表記を新しい住所の表記に変換する。また、変換部312は、住所における丁目、番地及び号を用いた表記と数字及びハイフンを用いた表記とを、どちらか一方の表記に統一する。
【0042】
更に、変換部312は、取得された位置情報が住所の情報を含まない場合、位置情報に住所の情報を付加し、取得された位置情報が緯度経度の情報を含まない場合、位置情報に緯度経度の情報を付加する。これにより、取得された位置情報が緯度経度の情報と住所の情報とをどちらも有するようになる。
【0043】
付加部313は、位置情報取得部311により取得された位置情報に、IDを付加する。IDは、複数の対象から取得された位置情報を一意に特定するためのユニークな識別情報である。
【0044】
付加部313は、位置情報が取得された対象ごとに異なるIDを付加する。例えば、対象が移動体である場合には時間経過により対象の位置が変化するが、付加部313は、1つの対象に1つのIDを付加する。また、対象が建物である場合において、1つの建物内に複数の部屋又はテナントが含まれる場合、付加部313は、部屋又はテナントごとに異なるIDを付加する。
【0045】
更に、付加部313は、位置情報取得部311により取得された位置情報に対して、付加情報を付加する。ここで、付加情報は、位置情報に関連する情報であって、対象の位置以外の情報である。言い換えると、住所、緯度及び経度が対象の位置を直接的に示す位置情報に対して、付加情報は、対象の位置を直接的に示す情報ではなく、位置情報に対して単なる位置情報以上の価値が付加された情報である。
【0046】
例えば対象が人間である場合、付加情報は、その人間の氏名、年齢、性別、電話番号、職業、商品の購買情報等の情報である。或いは、対象が建物である場合、付加情報は、その建物の名称、建物に入っているテナント等の情報である。このように、付加情報は、対象の属性、意味等の詳細な情報を示す。付加情報は、意味情報と呼んでも良い。
【0047】
位置情報取得部311は、ユーザ装置10又は事業者装置20から位置情報を取得する際に、このような付加情報を、ユーザ装置10又は事業者装置20から取得可能な範囲内で取得する。付加部313は、位置情報と共に取得された付加情報をその位置情報に付加することで、付加情報をその対象の位置情報に紐付ける。
【0048】
統計処理部314は、統計処理及び分析処理を実行する。具体的に説明すると、統計処理部314は、複数のユーザ装置10及び複数の事業者装置20から取得された複数の対象の位置情報を、点、線又は面を用いて統計化する。
【0049】
例えば、統計処理部314は、統計処理として、複数の対象の位置情報をエリアごと又は自治体ごとに集計する。そして、統計処理部314は、分析処理として、エリアごと又は自治体ごとの人間、自動車、建物等の密度を計算する。或いは、統計処理部314は、複数の対象の位置情報を道路ごと又は路線ごとに集計する。そして、統計処理部314は、分析処理として、道路ごと又は路線ごとの混雑状況を計算する。
【0050】
また、統計処理部314は、分析処理として、このような密度又は混雑状況を時系列的に計算することで、人間、自動車等の移動状況を分析しても良い。これにより、例えば、道路の渋滞情報、バスの遅延情報等を取得することができる。
【0051】
位置情報DB331は、位置情報取得部311により取得された位置情報を記憶する。具体的には
図3に示すように、位置情報DB331は、複数の対象のそれぞれの位置情報として、IDと、位置情報である住所、緯度及び経度と、付加情報と、の各情報を互いに紐付けて記憶している。
【0052】
位置情報DB331における住所、緯度及び経度は、位置情報取得部311により取得された生の位置情報から、変換部312により統一された形式に変換された後の位置情報である。また、ID及び付加情報は、付加部313により各位置情報に付加された情報である。このように、位置情報DB331は、位置情報取得部311により取得され、変換部312、付加部313及び統計処理部314による処理を施された後の位置情報を記憶する。
【0053】
なお、位置情報の対象が移動体である場合、位置情報は時間に伴って変化する。そのため、位置情報DB331は、図示は省略するが、対象が移動体である場合、その対象の住所、緯度及び経度の時系列データ、言い換えると複数のタイミングのそれぞれにおける位置情報を記憶する。
【0054】
図2に戻って、判定部315は、位置に関する情報を提供する提供先に対する、位置に関する情報の提供レベルを判定するための判定基準に基づいて、提供先に対応する提供レベルを判定する。
【0055】
ここで、提供先は、位置に関する情報を利用する企業、自治体、機関等である。具体的には、提供先は、位置に関する情報をサービスに利用することを求める事業者であって、事業者装置20の管理者である。
【0056】
いくつか例を挙げると、教育の分野において、学校が生徒の現在位置を把握するために、生徒の位置情報を利用する。福祉の分野において、介護施設が被介護者の現在位置を把握するために、被介護者の位置情報を利用する。物流の分野において、運送会社が荷物の届け先を特定するために、住所の情報を利用する。観光の分野において、旅行会社が自社のマーケティングのために、旅行者の位置情報を利用する。小売業の分野において、小売業者が自社のマーケティングのために、自社の商品がどこで買われたかを示す情報を利用する。金融の分野において、保険会社が自動車保険の金額を設定するために、自動車の位置情報を利用して、自動車が危険な速度で運転されていないか、危険な場所を運転していないか等の情報を取得する。このように、位置に関する情報は、様々な分野のサービスの品質を向上させたり、サービスの内容を充実させたりするために、活用することができる。
【0057】
なお、位置に関する情報の提供先は、このような事業者に限らず、ユーザ装置10の所持者であるユーザであっても良い。このように、各事業者装置20及び各ユーザ装置10は、位置情報の取得元になる場合と提供先になる場合と、のどちらもありうる。情報処理装置30は、複数の事業者装置20及び複数のユーザ装置10の間におけるこのような位置情報のやり取りを仲介する。
【0058】
その一方で、位置に関する情報は、個人情報、機密情報等に関わるため、位置に関する情報を提供先に提供するためには、セキュリティを確保する必要がある。このような位置に関する情報を提供先に提供する際におけるセキュリティを確保するため、判定部315は、位置に関する情報を提供先に提供する際に、位置に関する情報をどの程度まで詳細に提供するかを示す提供レベルを判定する。
【0059】
ここで、判定部315が判定する提供レベルには、第1レベルと、第2レベルと、第3レベルと、が含まれる。第1レベルでは、位置情報取得部311により取得された位置情報に対して価値が付加された情報が、位置に関する情報として提供先へ提供される。第2レベルでは、位置情報取得部311により取得された位置情報そのものが、位置に関する情報として提供先へ提供される。第3レベルでは、位置情報取得部311により取得された位置情報から情報量が減少した情報が、位置に関する情報として提供先へ提供される。位置に関する情報として提供先に提供される情報量の多さは、第1レベルが最も多く、第3レベルが最も少なく、第2レベルはそれらの中間である。
【0060】
具体的に、
図4に、位置情報として住所の情報を提供する場合における、提供レベルに応じて提供先に提供される位置に関する情報の例を示す。第1レベルでは、位置情報である住所の情報と、その位置情報に紐付けられた付加情報とが、提供先へ提供される。付加情報は、付加部313により位置情報に付加された、位置情報に対して位置以外の価値が付加された情報である。第1レベルでは、位置情報として、住所のうちの、提供可能な最も詳細な情報である丁目、番地、号まで含む情報が提供される。
【0061】
第2レベルでは、位置情報である住所の情報は、第1レベルと同様に、丁目、番地、号まで含む情報が提供先へ提供される。一方で、第2レベルでは、第1レベルとは異なり、付加情報は提供されない。言い換えると、第2レベルでは、位置情報取得部311により取得された生のデータである位置情報がそのまま提供される。
【0062】
第3レベルでは、付加情報は提供されず、位置情報である住所の情報のうちの一部が提供先へ提供される。具体的には、第3レベルでは、位置情報として、対象の住所のうちの丁目、番地、号を含まない情報、言い換えると、例えば「東京都新宿区」という自治体単位の情報が提供される。このように、第3レベルでは、位置情報として、第1レベル及び第2レベルよりも少ない情報量の情報が提供される。
【0063】
また、
図5に、位置情報として緯度及び経度の情報を提供する場合における、提供レベルに応じて提供先に提供される位置に関する情報の例を示す。この場合、第1レベル及び第2レベルでは、位置情報として、対象の緯度及び経度のうちの、提供可能な最も詳細な情報である全ての桁の数字が提供される。これに対して、第3レベルでは、位置情報として、対象の緯度及び経度のうちの下位の桁数の数字は提供されず、上位の桁数の数字のみが提供される。なお、付加情報の提供に関しては、
図4と
図5とで同様である。
【0064】
このように、第1レベル及び第2レベルでは、高い精度の位置情報が提供される。一方で、第3レベルでは、位置情報取得部311により取得された位置情報よりも情報量が減少した情報である、粗い精度の位置情報が提供される。
【0065】
なお、
図4及び
図5は一例であって、第3レベルにおいてどの程度まで詳細に位置情報を提供するかは、どのように決めてもよい。また、対象が移動体である場合には、第3レベルで提供される粗い精度の位置情報では、第1レベル及び第2レベルで提供される高い精度の位置情報よりも時系列データにおける時間刻みを粗くしても良い。
【0066】
判定部315は、このような3つの提供レベルのうちから、予め定められた判定基準に基づいて、提供先に対応する提供レベルを判定する。例えば、判定部315は、第1の提供先に対しての方が第2の提供先に対してよりも、位置に関する情報としてより多くの情報を提供するように、提供レベルを判定する。このように提供先に応じて提供レベルを異ならせることで、第2の提供先に対しては位置に関する情報の利用を制限しつつ、第1の提供先に対しては位置に関する情報の利用を促進させることができる。
【0067】
より詳細には、判定部315は、判定基準DB332に予め記憶された判定基準に基づいて、提供先に対応する提供レベルを判定する。判定基準DB332は、判定基準を記憶する。ここで、判定基準は、提供先に対する提供レベルを判定するための基準である。
【0068】
図6及び
図7に、判定基準DB332に記憶される判定基準の例を示す。判定基準DB332は、位置情報取得部311により取得された複数の対象の位置情報のそれぞれについて、提供先に対応する提供レベルを定める。
【0069】
判定基準DB332は、提供先の種別、又は、提供先による位置に関する情報の用途に応じて、提供レベルを定める。提供先の種別とは、例えば、提供先が個人であるか事業者であるか、提供先が公共サービスを提供する事業者であるか民間サービスを提供する事業者であるか、等である。また、提供先による位置に関する情報の用途とは、例えば、位置に関する情報を個人目的使用するか事業目的で使用するか、位置に関する情報を公共サービスのために使用するか民間サービスのために使用するか、等である。
【0070】
第1の例として、
図6は、提供先の種別又は位置に関する情報の用途が公共サービスに関するものであるか民間サービスに関するものであるに応じて提供レベルを定める例を示している。一部を説明すると、IDが「0001」の位置に関する情報の提供レベルは、種別又は用途が公共サービスに関する場合には第1レベルであり、種別又は用途が民間サービスに関する場合には第3レベルである。また、IDが「0002」の位置に関する情報の提供レベルは、種別又は用途が公共サービスに関する場合には第2レベルであり、種別又は用途が民間サービスに関する場合には第3レベルである。
【0071】
このような判定基準により、判定部315は、提供先が公共サービスを提供する事業者である場合には、提供先が民間サービスを提供する事業者である場合よりも、位置に関する情報としてより多くの情報を提供するように、提供レベルを判定する。このように判定基準を設定することにより、位置に関する情報が民間サービスに利用されることを制限しつつ、位置に関する情報が公共サービスに利用されることを促進させることができる。
【0072】
第2の例として、
図7は、提供先の種別又は位置情報の用途が行政、物流、交通、観光、防災、福祉、教育、金融等の分野のうちのどれに属するものであるかに応じて提供レベルを定める例を示している。一部を説明すると、IDが「0001」の位置に関する情報の提供レベルは、種別又は用途が行政の分野に関する場合には第1レベルであり、種別又は用途が物流の分野に関する場合には第3レベルであり、種別又は用途が観光の分野に関する場合には第2レベルである。
【0073】
このように、
図7の例では、
図6の例よりも細かい分野ごとに提供レベルを定める。これにより、位置に関する情報の利用を促進又は制限する分野を、より柔軟に設定することができる。
【0074】
一例として、提供先が位置情報の取得元と異なる分野のサービスを提供する事業者である場合には、提供先が位置情報の取得元と同じ分野のサービスを提供する事業者である場合よりも、位置に関する情報としてより多くの情報を提供するように、提供レベルを設定することができる。そして、判定部315は、このような判定基準に基づいて、提供レベルを判定することができる。このように提供レベルを設定することにより、競合他社には位置に関する情報の利用を制限しつつ、競合他社以外には位置に関する情報の利用を促進させることができる。
【0075】
図2に戻って、基準設定部316は、位置情報取得部311により取得された位置情報に対して、このような判定基準を設定する。
【0076】
具体的に説明すると、基準設定部316は、判定基準を、位置情報取得部311による位置情報の取得元の合意に基づいて設定する。ここで、位置情報の取得元の合意とは、位置情報がユーザ装置10から取得されたものである場合、そのユーザ装置10を所有するユーザの合意を意味し、位置情報が事業者装置20から取得されたものである場合、その事業者装置20を管理する事業者の合意を意味する。
【0077】
このような合意は、位置情報の取得元と情報処理装置30の管理者との間で結ばれた契約により得られる。例えば、位置情報取得部311が位置情報を取得する際に、ユーザ装置10又は事業者装置20の表示部にその位置情報の提供に関する判定基準を表示し、ユーザ装置10のユーザ又は事業者装置20の管理者に承認を得る。
【0078】
或いは、位置情報取得部311が位置情報を取得する前の適宜のタイミングで、その後に取得する位置情報の提供に関する判定基準に対する承認を得ても良い。更には、位置情報取得部311が位置情報を取得した後の、位置に関する情報をいずれかの提供先に提供する際に、その提供先に位置に関する情報としてどのくらい多くの情報を提供するかの判定基準を、その位置情報の取得元との間で決定しても良い。
【0079】
このようにして、基準設定部316は、位置情報DB331に記憶されている複数の対象の位置情報のそれぞれに対して、例えば
図6又は
図7に示したような判定基準を設定し、判定基準DB332に保存する。そして、判定部315は、判定基準DB332を参照して、提供先に対応する提供レベルを、その提供先の種別に応じて、又は、提供先による位置に関する情報の用途に応じて判定する。
【0080】
提供処理部317は、位置情報取得部311により取得された位置情報と、判定部315により判定された提供レベルと、に基づいて、判定された提供レベルに対応する位置に関する情報を、提供先へ提供する処理を行う。具体的に説明すると、提供処理部317は、通信部35を介して、複数のユーザ装置10及び複数の事業者装置20のうちの、位置に関する情報の提供先の個別装置と通信する。そして、提供処理部317は、判定部315により判定された提供レベルに対応する位置に関する情報を、提供先の個別装置に送信する。
【0081】
より詳細には、提供先に対応する提供レベルが第1レベルであると判定された場合、提供処理部317は、位置情報取得部311により取得された位置情報と、付加部313によりその位置情報に付加された付加情報とを、位置に関する情報として提供先へ提供する。
【0082】
この場合、提供処理部317は、位置情報DB331に記憶されている複数の対象の位置情報のうちから、提供する対象となる位置情報として、住所のうちの丁目、番地、号まで含む情報、又は、緯度経度のうちの細かい桁まで含む高い精度の情報を取得する。更に、提供処理部317は、位置情報DB331に記憶されている複数の対象の付加情報のうちから、提供する対象となる位置情報に紐付けられて記憶されている付加情報を取得する。そして、提供処理部317は、取得した位置情報と付加情報とを、提供先へ提供する。
【0083】
このように、提供先に対応する提供レベルが第1レベルであると判定された場合、提供処理部317は、位置情報取得部311により取得された位置情報と、その位置情報に対して価値が付加された付加情報とを、位置に関する情報として提供先へ提供する。
【0084】
提供先に対応する提供レベルが第2レベルであると判定された場合、提供処理部317は、位置情報取得部311により取得された位置情報を、位置に関する情報として提供先へ提供する。
【0085】
この場合、提供処理部317は、位置情報DB331に記憶されている複数の対象の位置情報のうちから、提供する対象となる位置情報として、住所のうちの丁目、番地、号まで含む情報、又は、緯度経度のうちの細かい桁まで含む高い精度の情報を取得する。そして、提供処理部317は、取得した位置情報を提供先へ提供する一方で、付加情報は提供しない。
【0086】
このように、提供先に対応する提供レベルが第2レベルであると判定された場合、提供処理部317は、位置情報取得部311により取得された位置情報そのものを、位置に関する情報として提供先へ提供する。
【0087】
提供先に対応する提供レベルが第3レベルであると判定された場合、提供処理部317は、位置情報取得部311により取得された位置情報が抽象化された情報を、位置に関する情報として提供先へ提供する。ここで、位置情報の抽象化は、位置情報により示される位置の正確な特定をしにくくするために、位置情報から情報量を減少させること、より具体的には、例えば位置情報により示される位置の精度を低下させて粗くすることを意味する。
【0088】
提供先に対応する提供レベルが第3レベルであると判定された場合、提供処理部317は、位置情報DB331に記憶されている複数の対象の位置情報のうちから、提供する対象となる位置情報として、位置情報取得部311により取得された位置情報が抽象化された情報を取得する。位置情報が抽象化された情報は、具体的には、
図4に示したように住所のうちの自治体単位の情報、又は、
図5に示したように緯度経度のうちの粗い精度の情報であって、位置情報DB331に記憶されている位置情報よりも位置の精度が低下した情報である。提供処理部317は、このような位置情報が抽象化された情報を取得すると、取得した情報を、位置に関する情報として提供先に提供する。その一方で、提供処理部317は、提供先に対応する提供レベルが第3レベルであると判定された場合、付加情報は提供先に提供しない。
【0089】
このように、提供先に対応する提供レベルが第3レベルであると判定された場合、提供処理部317は、位置情報取得部311により取得された位置情報から情報量が減少した情報を、位置に関する情報として提供先へ提供する。
【0090】
このようにして、提供処理部317は、提供先に要求された対象の位置情報のうちの、その提供先に応じた位置に関する情報をその提供先に提供する。このように、提供処理部317は、位置に関する情報として提供する情報量を提供先に応じて制限するため、セキュリティを確保しつつ、位置に関する情報をその提供先に対して提供することができる。
【0091】
なお、位置に関する情報を提供する際、提供処理部317は、提供先の個別装置に対して自発的に位置に関する情報を送信することに限らず、提供先の個別装置からの要求に応答する形式で位置情報を送信しても良い。例えば、提供処理部317は、提供先に対して、位置情報DB331に記憶されている位置情報及び付加情報のうちの提供が許可された部分にアクセスする権利を付与しても良い。この場合、提供先のユーザは、必要なタイミングで自身の個別装置から情報処理装置30にアクセスし、位置情報DB331から位置情報又は付加情報を取得する。
【0092】
次に、
図8及び
図9を参照して、情報処理装置30により実行される処理の流れを説明する。本実施形態に係る情報処理方法は、
図8及び
図9に示す各ステップの処理を実行することで実現される。
【0093】
第1に、
図8を参照して、位置情報取得処理について説明する。
図8に示す位置情報取得処理は、いずれかのユーザ装置10又はいずれかの事業者装置20から位置情報を取得するタイミングが到来した場合に、開始する。
【0094】
位置情報取得処理を開始すると、制御部31は、位置情報取得部311として機能し、対象の位置情報を取得する(ステップS101)。具体的に説明すると、制御部31は、通信ネットワークNWを介していずれかのユーザ装置10又はいずれかの事業者装置20と通信し、対象の緯度経度、住所等を示す位置情報を取得する。
【0095】
位置情報を取得すると、制御部31は、変換部312として機能し、取得された位置情報を統一された位置情報に変換する(ステップS102)。具体的に説明すると、制御部31は、データクレンジング処理を実行することにより、取得された位置情報のデータ形式を、統一されたデータ形式に変換する。
【0096】
取得された位置情報を統一された位置情報に変換すると、制御部31は、付加部313として機能し、統一された位置情報にID及び付加情報を付加する(ステップS103)。具体的に説明すると、制御部31は、統一された位置情報に対して、ユニークなIDと、ステップS101で取得した位置情報に関連する情報であって、対象の位置以外の情報と、を付加する。
【0097】
位置情報にID及び付加情報を付加すると、制御部31は、統計処理部314として機能し、統計処理及び分析処理を実行する(ステップS104)。具体的に説明すると、制御部31は、複数の対象の位置情報を、点、線又は面を用いて統計化する。そして、制御部31は、統計化した情報のデータ分析を行い、例えば、エリアごと、自治体ごと、道路ごと、路線ごと等の密度等を分析する。
【0098】
統計処理及び分析処理を実行すると、制御部31は、位置情報DB331を更新する(ステップS105)。具体的に説明すると、制御部31は、ステップS101で取得した生の位置情報に対して、ステップS102~104の処理を施した後の位置情報を位置情報DB331に保存する。
【0099】
統計処理及び分析処理を実行すると、制御部31は、基準設定部316として機能し、判定基準を設定する(ステップS106)。具体的に説明すると、制御部31は、ステップS101で位置情報を取得した対象の位置に関する情報を提供先に提供する際の提供レベルを、提供先の種別、又は、提供先による位置情報の用途に応じて設定する。これにより、制御部31は、例えば
図6又は
図7に示したような判定基準を設定する。
【0100】
判定基準を設定すると、制御部31は、設定した判定基準を判定基準DB332に保存することにより、判定基準DB332を更新する(ステップS107)。以上により、
図8に示した位置情報取得処理は終了する。
【0101】
第2に、
図9を参照して、提供処理について説明する。
図9に示す提供処理は、位置情報DB331に位置情報が記憶されている複数の対象のうちのいずれかの対象の位置に関する情報を提供先へ提供する際に、実行される。ここで、提供先は、複数の個別装置(事業者装置20又はユーザ装置10)のうちのいずれかの個別装置である。
【0102】
また、
図9に示す提供処理が開始するタイミングは、例えば、提供先がいずれかの対象の位置に関する情報を要求したタイミングである。個別装置(事業者装置20又はユーザ装置10)を操作するユーザは、位置情報DB331に位置情報が記憶されている複数の対象のうちのいずれかの対象の位置に関する情報の提供を望む場合、個別装置の操作部を操作して、情報処理装置30に位置情報の要求を送信する。このような要求を受けた場合に、制御部31は、この個別装置を提供先として、
図9に示す提供処理を開始する。或いは、
図9に示す提供処理が開始するタイミングは、提供先から要求を受けたタイミングに限らず、情報処理装置30がいずれかの対象の位置に関する情報を自発的に提供することを決定したタイミングであっても良い。
【0103】
提供処理を開始すると、制御部31は、判定部315として機能し、提供先に対応する提供レベルを判定する(ステップS201)。具体的に説明すると、制御部31は、判定基準DB332に記憶されている判定基準を参照する。そして、制御部31は、要求元の提供先に対して設定された、要求された対象の位置に関する情報の提供レベルが、第1レベルと第2レベルと第3レベルのうちのどれのレベルに該当するのかを特定する。
【0104】
提供先に対応する提供レベルが第1レベルに該当する場合(ステップS201;第1レベル)、制御部31は、提供処理部317として機能し、位置情報と付加情報を、提供先の個別装置に送信する(ステップS202)。具体的に説明すると、制御部31は、位置情報DB331に記憶されている複数の対象の位置情報のうちから、提供する対象となる位置情報として、住所のうちの丁目、番地、号まで含む情報、又は、緯度経度のうちの細かい桁まで含む高い精度の情報を取得する。更に、制御部31は、位置情報DB331に記憶されている複数の対象の付加情報のうちから、提供する対象となる位置情報に紐付けられて記憶されている付加情報を取得する。そして、制御部31は、取得した高い精度の位置情報と付加情報とを、提供先の個別装置に送信する。
【0105】
提供先に対応する提供レベルが第2レベルに該当する場合(ステップS201;第2レベル)、制御部31は、提供処理部317として機能し、位置情報そのものを、提供先の個別装置に送信する(ステップS203)。具体的に説明すると、制御部31は、位置情報DB331に記憶されている複数の対象の位置情報のうちから、提供する対象となる位置情報として、住所のうちの丁目、番地、号まで含む情報、又は、緯度経度のうちの細かい桁まで含む高い精度の情報を取得する。そして、制御部31は、取得した高い精度の位置情報を、提供先の個別装置に送信する。
【0106】
提供先に対応する提供レベルが第3レベルに該当する場合(ステップS201;第3レベル)、制御部31は、提供処理部317として機能し、抽象化された位置情報を、提供先の個別装置に送信する(ステップS204)。具体的に説明すると、制御部31は、位置情報DB331に記憶されている複数の対象の位置情報のうちから、提供する対象となる位置情報として、住所のうちの自治体単位の情報、又は、緯度経度のうちの粗い精度の情報を取得する。そして、制御部31は、取得した粗い精度の位置情報を、提供先の個別装置に送信する。以上により、
図9に示した提供処理は終了する。
【0107】
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置30は、対象の位置に関する情報の提供先に対応する提供レベルを判定し、判定された提供レベルに対応する位置に関する情報を提供先へ提供する。このように、位置に関する情報の提供レベルを提供先に応じて判定するため、セキュリティを確保しつつ、位置に関する情報の受け渡しを行うことができる。その結果として、位置に関する情報を安全に流通させることができ、位置に関する情報を様々な目的で利用することを支援することにつながる。
【0108】
(変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、各実施形態を組み合わせたり、各実施形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0109】
例えば、上記実施形態では、判定部315により参照される判定基準は、判定基準DB332において
図6又は
図7に例示したテーブルによって定められていた。しかしながら、判定基準はテーブルによって定められることに限らず、アルゴリズムによって定められても良い。例えば、提供先の種別又は提供先による位置に関する情報の用途が第1の条件に該当する場合に提供レベルが第1レベルであると判定し、種別又は用途が第2の条件に該当する場合に提供レベルが第2レベルであると判定し、種別又は用途が第3の条件に該当する場合に提供レベルが第3レベルであると判定する、というように、提供先に応じて提供レベルが第1レベルと第2レベルと第3レベルとのうちのどれに対応するかのルールを予め決めておく。第1、第2、第3の条件は、例えば、提供先が個人であるか事業者であるか、提供先が提供するサービスが公共サービスであるか民間サービスであるか、提供先が行政、物流、交通、観光、福祉、金融等のどの分野に属するか、等によって定めることができる。判定部315は、このようなルールにおいて提供先に該当する条件を判定し、該当する条件に対応する提供レベルを判定する。
【0110】
上記実施形態では、判定部315により判定される提供レベルは、第1レベルと第2レベルと第3レベルという3段階で定められた。しかしながら、このような3段階で提供レベルを定めることに限らず、より細かく又はより粗く提供レベルを定めても良い。例えば、提供レベルを3段階よりも多くの段階に分けることで、提供先に提供される位置に関する情報の情報量により細かい差を設けても良い。
【0111】
一例として、第1レベルを更に細かい複数のレベルに分けて、提供先に提供される付加情報の情報量に差を設けても良い。具体的に説明すると、第1の提供先に対しては、位置情報DB331において提供する対象となる位置情報に紐付けられた付加情報の全てが提供される。その一方で、第2の提供先に対しては、位置情報DB331において提供する対象となる位置情報に紐付けられた付加情報のうちの一部の情報(例えば、年齢、性別、職業、商品の購買情報等)が提供されるが、残りの情報(例えば、氏名、電話番号等)は提供されない。付加情報のうちの提供される情報と提供されない情報とは、その対象の位置情報の取得元との合意に基づいて、どのように決めても良い。このように、提供先に応じて提供される付加情報の情報量に差を設けることにより、位置に関する情報の受け渡しにおけるセキュリティをより柔軟に設定することができる。
【0112】
上記実施形態では、付加部313は、位置情報取得部311が位置情報を取得した際に、取得した位置情報に対して付加情報を付加した。しかしながら、付加部313は、提供処理部317が位置に関する情報を提供する際に、提供先に提供する位置情報に対して、位置に関する情報としてその位置情報と共に提供先に提供する付加情報を付加しても良い。また、付加情報には、統計処理部314により統計処理又は分析処理が行われた後の情報が含まれても良い。
【0113】
上記実施形態では、提供処理部317は、判定部315により提供先に対応する提供レベルが第3レベルであると判定された場合、位置情報取得部311により取得された位置情報が抽象化された情報として、住所のうちの自治体単位の情報、又は、緯度経度のうちの粗い精度の情報を取得し、提供先に提供した。しかしながら、提供処理部317は、位置情報取得部311により取得された位置情報が抽象化された情報として、位置情報により示される位置の精度を低下させて粗くする情報であれば、これら以外の情報を取得して提供先に提供しても良い。
【0114】
(1)例えば、提供処理部317は、位置情報が抽象化された情報として、位置情報取得部311により取得された位置情報をメッシュ化した情報を取得しても良い。具体的に説明すると、提供処理部317は、例えば一辺が500m~数kmのメッシュを生成する。そして、提供処理部317は、位置情報DB331に記憶されている提供する対象となる位置情報からメッシュよりも細かい位置を示す情報を削除し、メッシュの単位の精度で位置を示す情報を取得する。提供処理部317は、取得した情報を、位置を示す情報として、提供先に提供する。このようにメッシュ化した情報を取得することで、メッシュよりも細かい位置が特定されることを防止することができる。
【0115】
(2)或いは、提供処理部317は、位置情報が抽象化された情報として、位置情報取得部311により取得された位置情報から、他のエリアに比べて相対的に人数が少ない、又は密度が低いエリアの位置情報が削除された情報を取得しても良い。具体的に説明すると、提供処理部317は、統計処理部314の統計処理により集計されたエリア毎の人数又は密度を参照する。そして、提供処理部317は、あるエリアに存在する人数又はエリアの密度が予め定められた閾値よりも小さい場合、そのエリアに存在する対象の位置情報を、位置情報DB331に記憶されている提供する対象となる位置情報から削除する。提供処理部317は、このように人数が少ないエリアの位置情報が削除された情報を、位置を示す情報として、提供先に提供する。ここで、エリアは、一例として、上述したメッシュを用いることができる。このように人数が少ないエリアの位置情報を削除することで、統計的に少数であることに起因して個人が推測されやすくなることを防止することができる。
【0116】
(3)更に、提供処理部317は、位置情報が抽象化された情報として、位置情報取得部311により取得された位置情報から、対象の生活圏又は行動パターンを示す情報が削除された情報を取得しても良い。生活圏は、例えば自宅、職場等のような、対象が日常的に行動する範囲である。位置情報取得部311により取得された位置情報が、対象の生活圏又は行動パターンを推測することが可能な特徴的な履歴情報を含む場合、提供処理部317は、そのような履歴情報を、対象の生活圏又は行動パターンを示す情報として、位置情報DB331に記憶されている提供する対象となる位置情報から削除する。提供処理部317は、このように位置情報から生活圏又は行動パターンを示す情報が削除された情報を、位置を示す情報として、提供先に提供する。このように生活圏又は行動パターンを示す情報を削除することで、個人が推測されやすくなることを防止することができる。
【0117】
上記実施形態では、情報処理装置30は、位置情報取得部311、変換部312、付加部313、統計処理部314、判定部315、基準設定部316、提供処理部317、位置情報DB331、及び、判定基準DB332を備えていた。しかしながら、これら各部の全てが1つの装置に設けられていることに限らない。これら各部の少なくともいずれかが、通信ネットワークNWで通信可能に接続された異なる装置に分散して設けられていても良い。例えば、位置情報DB331又は判定基準DB332は、クラウドネットワーク上に設けられていても良い。制御部31の各部が複数の独立した装置に分散して設けられていており、通信ネットワークNWを介して必要なデータを送受信しながら、上記実施形態で説明した処理を実行しても良い。各部が複数の装置に分散して設けられている場合であっても、それら複数の装置を合わせて、情報処理装置30と呼ぶことができる。
【0118】
上記実施形態では、情報処理装置30の制御部31において、CPUがROM又は記憶部33に記憶されたプログラムを実行することによって、位置情報取得部311、変換部312、付加部313、統計処理部314、判定部315、基準設定部316、及び、提供処理部317のそれぞれとして機能した。しかしながら、制御部31は、専用のハードウェアであってもよい。専用のハードウェアとは、例えば単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらの組み合わせ等である。制御部31が専用のハードウェアである場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現してもよいし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現してもよい。
【0119】
また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現してもよい。このように、制御部31は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0120】
情報処理装置30の動作を規定するプログラムを、パーソナルコンピュータ、情報ユーザ装置等の既存のコンピュータに適用することで、当該コンピュータを、情報処理装置30のそれぞれとして機能させることも可能である。
【0121】
また、このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD-ROM(Compact Disk ROM)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
【0122】
以上、本発明の好ましい実施形態等について説明したが、本発明は上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0123】
1 情報処理システム、10(10A,10B,10C,…) ユーザ装置、20(20A,20B,20C,…) 事業者装置、30 情報処理装置、31 制御部、33 記憶部、35 通信部、311 位置情報取得部、312 変換部、313 付加部、314 統計処理部、315 判定部、316 基準設定部、317 提供処理部、331 位置情報DB、332 判定基準DB、NW 通信ネットワーク