(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183540
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】排ガスの処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 45/06 20060101AFI20231221BHJP
B01D 50/00 20220101ALI20231221BHJP
B01D 51/10 20060101ALI20231221BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B01D45/06 ZAB
B01D50/00 501C
B01D50/00 501F
B01D51/10 A
B01D53/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097109
(22)【出願日】2022-06-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・第32回廃棄物資源循環学会研究発表会、岡山コンベンションセンター、2021年(令和3年)10月25日開催 ・第43回全国都市清掃研究・事例発表会講演論文集、第186~188頁、公益社団法人全国都市清掃会議、2021年(令和3年)12月20日発行 ・第32回廃棄物資源循環学会研究発表会講演集、第285~286頁、一般社団法人廃棄物資源循環学会 2021年(令和3年)12月27日公開
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 亮
(72)【発明者】
【氏名】福田 尚倫
【テーマコード(参考)】
4D002
4D031
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA12
4D002AA19
4D002AA21
4D002AA28
4D002AA29
4D002AB01
4D002AC04
4D002AC07
4D002AC10
4D002BA04
4D002BA14
4D002CA07
4D002CA08
4D002DA41
4D002EA01
4D002EA02
4D002EA05
4D002EA13
4D002HA00
4D002HA08
4D031AB11
4D031BA06
4D031BA10
4D031DA01
4D031DA05
(57)【要約】
【課題】ろ過式集塵器を用いる排ガスの処理において、圧力損失や設置スペースの増大を抑制しつつ、ろ過式集塵器における集塵灰発生量を削減する。
【解決手段】ろ過式集塵器K1を備える排ガスの処理装置Kにおいて、ろ過式集塵器K1の前段に排ガス中のダストを捕捉するダストキャッチャ1を配置する。このダストキャッチャ1は、ガス導入管4よりケーシング3内に導入された排ガスが、鉛直管2の上部22へ導入され鉛直管2内を下向きに流れて鉛直管2の下部から流出し、その後、ケーシング3の底部で反転し、更に上部開口33からエジョクション効果により鉛直管2の上部22に導入されることで、ケーシング3内で排ガスの鉛直循環流が形成されるように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中のダストを集塵するろ過式集塵器を備える排ガスの処理装置において、
前記ろ過式集塵器の前段に排ガス中のダストを捕捉するダストキャッチャを配置し、
前記ダストキャッチャは、鉛直管と、前記鉛直管を囲むように配置されたケーシングとを有し、
前記ケーシングは、排ガス導入管に接続される排ガス導入口と、前記ろ過式集塵器へ通じる排ガス排出管に接続される排ガス排出口とを有し、かつ前記ケーシング内に前記鉛直管の上部へ通じる上部開口を有し、
前記ダストキャッチャは、前記排ガス導入管より前記ケーシング内に導入された排ガスが、前記鉛直管の上部へ導入され当該鉛直管内を下向きに流れて当該鉛直管の下部から流出し、その後、前記ケーシングの底部で反転し、更に前記上部開口からエジョクション効果により前記鉛直管の上部に導入されることで、前記ケーシング内で排ガスの鉛直循環流が形成されるように構成されている、排ガスの処理装置。
【請求項2】
前記上部開口は、前記鉛直管又は前記排ガス導入管の中心軸周りの回転対称の位置に複数個設けられている、請求項1に記載の排ガスの処理装置。
【請求項3】
前記鉛直管の中心軸と前記排ガス導入管の中心軸が同一軸線上にある、請求項1又は2に記載の排ガスの処理装置。
【請求項4】
前記鉛直管の上部は、当該鉛直管の本体部の上端から上方に向けて拡大する拡大部であり、前記排ガス導入管の下端部が前記拡大部に挿入され、前記上部開口は、前記排ガス導入管の下端部の外周面と前記拡大部の内周面との間の隙間部に設けられている、請求項3に記載の排ガスの処理装置。
【請求項5】
前記鉛直管の本体部の水平断面形状と前記排ガス導入管の下端部の水平断面形状が同一形状である、請求項4に記載の排ガスの処理装置。
【請求項6】
前記排ガス導入管は、前記鉛直管の上部へ排ガス処理剤を導入するための処理剤導入部を有する、請求項1又は2に記載の排ガスの処理装置。
【請求項7】
前記ダストキャッチャは、前記排ガス導入管を兼ねるエコノマイザの下部に、連続して設置され、
前記エコノマイザは、廃棄物溶融炉から排出された排ガスから熱回収するボイラの後段に設けられている、請求項1又は2に記載の排ガスの処理装置。
【請求項8】
排ガス中のダストを集塵するろ過式集塵器を備える排ガスの処理装置における排ガスの処理方法であって、
前記ろ過式集塵器の前段に排ガス中のダストを捕捉するダストキャッチャを配置し、
前記ダストキャッチャは、鉛直管と、前記鉛直管を囲むように配置されたケーシングとを有し、
前記ケーシングは、排ガス導入管に接続される排ガス導入口と、前記ろ過式集塵器へ通じる排ガス排出管に接続される排ガス排出口とを有し、かつ前記ケーシング内に前記鉛直管の上部へ通じる上部開口を有し、
前記ダストキャッチャにおいて、前記排ガス導入管より前記ケーシング内に導入された排ガスが、前記鉛直管の上部へ導入され当該鉛直管内を下向きに流れて当該鉛直管の下部から流出し、その後、前記ケーシングの底部で反転し、更に前記上部開口からエジョクション効果により前記鉛直管の上部に導入されることで、前記ケーシング内で排ガスの鉛直循環流が形成されるようにする、排ガスの処理方法。
【請求項9】
前記鉛直管の上部へ排ガス処理剤を導入する、請求項8に記載の排ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスの処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ、産業廃棄物等の可燃性廃棄物の焼却、ガス化、溶融の各種工程から排出される排ガス、スクラップ熔解やアルミ精錬等の各種金属精錬過程で排出される排ガス、更には各種製造工場、化学工場、発電設備等で排出される排ガスには、ダスト(煤塵)のほか、HClやSOx等の酸性ガス、窒素酸化物、水銀等の重金属、ダイオキシン類及びその前駆物質等の有機ハロゲン化合物など、さまざまな有害物質が含まれている。
【0003】
このようにダストに加えてさまざまな有害物質を含む排ガスを処理する方法の一つとして、ろ過式集塵器を用いる方法がある(例えば特許文献1)。すなわち、この処理方法では、ろ過式集塵器によってダストを集塵(回収)する際に、ダストに随伴する各種有害物質を同時に集塵(回収)する。したがって、この処理方法においてろ過式集塵器の集塵灰には各種有害物質が含まれている。そのため、その集塵灰は最終処分場へ排出されることになる。
【0004】
集塵灰の最終処分にはコストがかかり、また近年ゼロエミッションへの取り組みが求められていることから、排ガスの処理にあたり、ろ過式集塵器における集塵灰発生量の削減が強く求められている。
【0005】
ろ過式集塵器における集塵灰発生量を削減するためには、単純にはろ過式集塵器の前段にサイクロンなどの別の集塵器を設置することが考えられる。しかし、単純にろ過式集塵器の前段に別の集塵器を設置した場合、圧力損失が大きくなって消費動力の増大を招いたり、設置スペースの増大を招いたりする問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ろ過式集塵器を用いる排ガスの処理において、圧力損失や設置スペースの増大を抑制しつつ、ろ過式集塵器における集塵灰発生量を削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明者らが試験及び検討を重ねたところ、ろ過式集塵器の前段に、鉛直循環流を伴う循環沈降式のダスト捕捉機能(ダストキャッチャ)を配置することが有効であるとの知見を得、本発明を想到するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一観点によれば、次の排ガスの処理装置が提供される。
排ガス中のダストを集塵するろ過式集塵器を備える排ガスの処理装置において、
前記ろ過式集塵器の前段に排ガス中のダストを捕捉するダストキャッチャを配置し、
前記ダストキャッチャは、鉛直管と、前記鉛直管を囲むように配置されたケーシングとを有し、
前記ケーシングは、排ガス導入管に接続される排ガス導入口と、前記ろ過式集塵器へ通じる排ガス排出管に接続される排ガス排出口とを有し、かつ前記ケーシング内に前記鉛直管の上部へ通じる上部開口を有し、
前記ダストキャッチャは、前記排ガス導入管より前記ケーシング内に導入された排ガスが、前記鉛直管の上部へ導入され当該鉛直管内を下向きに流れて当該鉛直管の下部から流出し、その後、前記ケーシングの底部で反転し、更に前記上部開口からエジョクション効果により前記鉛直管の上部に導入されることで、前記ケーシング内で排ガスの鉛直循環流が形成されるように構成されている、排ガスの処理装置。
【0010】
本発明の他の観点によれば、次の排ガスの処理方法が提供される。
排ガス中のダストを集塵するろ過式集塵器を備える排ガスの処理装置における排ガスの処理方法であって、
前記ろ過式集塵器の前段に排ガス中のダストを捕捉するダストキャッチャを配置し、
前記ダストキャッチャは、鉛直管と、前記鉛直管を囲むように配置されたケーシングとを有し、
前記ケーシングは、排ガス導入管に接続される排ガス導入口と、前記ろ過式集塵器へ通じる排ガス排出管に接続される排ガス排出口とを有し、かつ前記ケーシング内に前記鉛直管の上部へ通じる上部開口を有し、
前記ダストキャッチャにおいて、前記排ガス導入管より前記ケーシング内に導入された排ガスが、前記鉛直管の上部へ導入され当該鉛直管内を下向きに流れて当該鉛直管の下部から流出し、その後、前記ケーシングの底部で反転し、更に前記上部開口からエジョクション効果により前記鉛直管の上部に導入されることで、前記ケーシング内で排ガスの鉛直循環流が形成されるようにする、排ガスの処理方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ろ過式集塵器を用いる排ガスの処理において、圧力損失や設置スペースの増大を抑制しつつ、ろ過式集塵器における集塵灰発生量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態である排ガスの処理装置を適用したシャフト炉式ガス化溶融システムの概念図。
【
図2】本発明の一実施形態である排ガスの処理装置の構成例を概念的に示す透視斜視図。
【
図5】処理剤導入部の配置パターンを概念的に示す水平断面図。
【
図6】排ガスの処理装置内の流動解析結果を示し、(a)は実施例1、(b)は実施例2、(c)は実施例3、(d)は比較例の流動解析結果。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本発明の一実施形態である排ガスの処理装置を適用したシャフト炉式ガス化溶融システムを概念的に示している。
同図において、廃棄物ピットAに都市ごみ等の廃棄物Bが貯留されている。この廃棄物ピットAから、廃棄物クレーンCのバケットC1により所定量の廃棄物Bが切り出され、廃棄物投入ホッパDへ投入される。廃棄物投入ホッパDへ投入された廃棄物は、この廃棄物投入ホッパDの下部に配置されている廃棄物供給機Eにより、シャフト炉式の廃棄物溶融炉Fの炉頂部からコークス・石灰石とともに廃棄物溶融炉F内へ投入される。廃棄物は乾燥・予熱帯で水分が蒸発された後、可燃分が熱分解・ガス化される。コークスは廃棄物溶融炉Fの下部に設置された羽口(送風ノズル)F1から供給される空気及び酸素により燃焼され、高温の溶融帯を形成し灰分は完全に溶融される。溶融物は廃棄物溶融炉Fの底部出湯口F2から水砕ピットF3に排出・急冷され粒状のスラグとメタルとなり磁選機F4で分離回収後有効利用される。
【0014】
一方、廃棄物溶融炉F内で発生した可燃性ガスは、サイクロンGにてダストの一部が除去されたのち、サイクロンGを通過した可燃性ダストとともに後段の二次燃焼室Hに導入され完全燃焼される。二次燃焼室Hで発生した燃焼排ガスは後段のボイラIに導入され熱回収される。ボイラIの後段にはエコノマイザJが設けられており、このエコノマイザJの下部に本発明の一実施形態である排ガスの処理装置(以下「排ガス処理装置」という。)Kの構成要素であるダストキャッチャ1が連続して設置されている。そして、ダストキャッチャ1の後段には排ガス処理装置Kの構成要素であるろ過式集塵器K1が設置されている。ろ過式集塵器K1内の複数のろ布K2によって集塵(回収)されたダスト、すなわち集塵灰には上述の通り各種有害物質が含まれていることから、その集塵灰は集塵灰貯留槽K3に貯留され、加湿混練等の処理を施した後に最終処分場へ排出される。
一方、ろ過式集塵器K1を通過した排ガスは、誘引送風機L及び触媒反応塔Mを経て煙突Nから放散される。
【0015】
次に、排ガス処理装置Kの構成例について説明する。
図2に、排ガス処理装置Kの構成例を透視斜視図で概念的に示している。また
図3には
図2のX-X断面を示し、
図4には
図2のY-Y断面を示している。
排ガス処理装置Kは、ろ過式集塵器K1の前段において排ガス中のダストを捕捉するダストキャッチャ1を備えている。ダストキャッチャ1は、鉛直管2と、鉛直管2を囲むように配置されたケーシング3とを有する。ケーシング3は、排ガス導入管4に接続される排ガス導入口31と、ろ過式集塵器K1へ通じる排ガス排出管5に接続される排ガス排出口32とを有し、かつケーシング3内に鉛直管2の上部へ通じる上部開口33を有する。
そしてこのダストキャッチャ1は、排ガス導入管4よりケーシング3内に導入された排ガスが、鉛直管2の上部へ導入され鉛直管2内を下向きに流れて鉛直管2の下部から流出し、その後、ケーシング3の底部で反転し、更に上部開口33からエジョクション効果により鉛直管2の上部に導入されることで、ケーシング3内で排ガスの鉛直循環流が形成されるように構成されている。
【0016】
本実施形態において排ガス導入管4は、エコノマイザJの下部である上部管4Aと、この上部管4Aの下端部に溶接されてケーシング3内に位置する下部管4Bとで形成されている。また上部管4Aの下端部は、ケーシング3の排ガス導入口31を囲むようにケーシング3の上端部にも溶接されている。このように、本実施形態においてエコノマイザJの下部は排ガス導入管4を兼ねている。
なお、以下の本実施形態の説明では上部管4Aと下部管4Bとを区別することなく、これらを総称して「排ガス導入管4」と表記する。
【0017】
本実施形態において鉛直管2の上部は、鉛直管2の本体部21の上端から上方に向けて拡大する拡大部22となっており、この拡大部22に排ガス導入管4の下端部が挿入されている。そして上部開口33は、排ガス導入管4の下端部の外周面と拡大部22の内周面との間の隙間部に設けられている。
本実施形態において、鉛直管2の中心軸と排ガス導入管4の中心軸は同一軸線上にある。そして上部開口33は、鉛直管2と排ガス導入管4の中心軸周りの回転対称の位置に2個設けられている。このように上部開口33を、鉛直管2と排ガス導入管4の中心軸周りの回転対称の位置に複数個設けることで、ケーシング3内の排ガスが、これら上部開口33からエジョクション効果により鉛直管2の上部に円滑に導入される。これによりケーシング3内で排ガスの鉛直循環流を安定的に形成することができる。
【0018】
また、本実施形態において鉛直管2の本体部21の水平断面形状と排ガス導入管4の下端部の水平断面形状は同一形状で、具体的には正方形である。このように鉛直管2の本体部21の水平断面形状と排ガス導入管4の下端部の水平断面形状を同一形状とすることで、鉛直管2内の排ガスの流れが円滑となり、上述のエジョクション効果を安定的に得ることができる。したがって本実施形態ではこのことによっても、ケーシング3内で排ガスの鉛直循環流を安定的に形成することができる。
ここで、排ガス導入管4の下端部及び鉛直管2の本体部21の水平断面形状の大きさは、排ガス導入管4の下端部及び鉛直管2の本体部21内での排ガスの流速が従来の煙道並みの流速(例えば15~20m/s程度)となるように設定することができる。これにより、ダストキャッチャ1の設置による圧力損失の増大を抑制することができるとともに、上述のエジョクション効果を安定的に得ることができる。
【0019】
本実施形態において排ガス導入管4は、
図2に概念的に示しているように、鉛直管2の上部へ排ガス処理剤を導入するための処理剤導入部6を有する。具体的に本実施形態では
図5(a)に更に概念的に示しているように、排ガス導入管4の4つの隅部のうち、排ガス排出口32側の2つの隅部に、それぞれ処理剤導入部6を設けている。また、本実施形態では、処理剤導入部6から排ガス処理剤として活性炭を導入するようにしている。ただし、排ガス処理剤は活性炭のみには限定されず、排ガスを無害化するための各種薬剤を単独で又は活性炭と併用して鉛直管2の上部へ導入することもできる。また、処理剤導入部6への排ガス処理剤の導入経路は
図5(a)中の黒塗り矢印又は白抜き矢印の経路とすることができる。いずれにしても処理剤導入部6への排ガス処理剤の導入経路はケーシング3を貫通して設けられる。なお、
図3及び
図4では処理剤導入部6を省略している。
【0020】
以上の構成を有するダストキャッチャ1においては、排ガス導入管4よりケーシング3内に導入された排ガスが、鉛直管2の上部へ導入され鉛直管2内を下向きに流れて鉛直管2の下部から流出し、その後、ケーシング3の底部で反転し、更に上部開口33からエジョクション効果により鉛直管2の上部に導入されることで、ケーシング3内で排ガスの鉛直循環流が形成される。このようにケーシング3内で排ガスの鉛直循環流が形成されると、排ガス中のダストは鉛直循環流に沿って循環しながら、ダスト同士の干渉作用、衝突減衰、付着等により徐々に沈降し、ケーシング3の底部に堆積して捕捉される。これにより、ろ過式集塵器K1における集塵灰発生量を削減することができる。
なお、ケーシング3の底部に堆積して捕捉されたダストは、例えば
図3に表れているようにスクリューコンベア7等の粉体搬送手段によって一旦系外に排出され、
図1に概念的に示しているように二次燃焼室H及びボイラIの底部から排出されたダストと合流させて、加湿混練等の処理を施した後に廃棄物ピットAに戻したり、羽口F1から空気及び酸素とともに廃棄物溶融炉F内へ吹き込んだりすることで、再利用・再処理される。
【0021】
また、ダストキャッチャ1の基本構造は、鉛直管2とケーシング3とからなる二重構造という単純な構造であるから、圧力損失や設置スペースの増大を抑制することができる。加えて本実施形態ではダストキャッチャ1を、排ガス導入管4を兼ねるエコノマイザJの下部に連続して設置しているから、設置スペースの増大を実質的になくすことができる、
【0022】
更に本実施形態では、排ガス導入管4に、鉛直管2の上部へ排ガス処理剤を導入するための処理剤導入部6を設けているところ、導入された排ガス処理剤は鉛直循環流に沿って循環し、排ガス中に均一に分散する。そのため、少量の排ガス処理剤でも鉛直循環流により高濃度を維持することができる。また、鉛直循環流に沿って循環する排ガス処理剤の一部は、排ガス排出口32から排ガスとともに排出され排ガス導入管4を経由してろ過式集塵器K1へ導入される。このろ過式集塵器K1へ導入された排ガス中には上述の通り排ガス処理剤が均一に分散しているから、排ガス処理剤はろ過式集塵器K1内の複数のろ布K2全体に行き渡り、ムラのない付着層を形成する。そのため、ろ過式集塵器K1での除去対象物の除去率が高まり、排ガス処理剤の使用量を削減できる。このように本実施形態によれば、排ガス処理剤の循環利用によって排ガス処理剤の使用量を削減することができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
例えば本実施形態では、シャフト炉式ガス化溶融システムで排出される排ガスを処理対象としたが、上述の通りスクラップ熔解やアルミ精錬等の各種金属精錬過程で排出される排ガス、更には各種製造工場、化学工場、発電設備等で排出される排ガスを処理対象とすることもできる。
【0024】
また、本実施形態においてダストキャッチャ1は、排ガス導入管4を兼ねるエコノマイザJの下部に連続して設置したが、本発明においてダストキャッチャの設置位置はこれに限定されず、要するにろ過式集塵器の前段であればよい。ただし、エコノマイザを備えるシステムや設備に本発明を適用する場合、ダストキャッチャは、設置スペースの増大を抑制する観点から、本実施形態のように排ガス導入管を兼ねるエコノマイザの下部に連続して設置することが好ましい。
また本実施形態では、エコノマイザJの下部である上部管4Aと、この上部管4Aの下端部に溶接されてケーシング3内に位置する下部管4Bとによって排ガス導入管4を形成したが、エコノマイザJの下部をそのまま同部材で延長して排ガス導入管4を形成することもできる。
更に本実施形態において排ガス導入管4は、一観点からいえばエコノマイザJの構成要素の一つ(一部)であるが、他の観点からいえばダストキャッチャ1の構成要素の一つ(一部)でもある。
【0025】
また、本実施形態において上部開口33は、排ガス導入管4の下端部の外周面と拡大部22の内周面との間の隙間部において鉛直管2と排ガス導入管4の中心軸周りの回転対称の位置に2個設けたが、上部開口の個数は2個に限定されず、1個でも3個以上でもよい。また、1個の場合、上述の隙間部全体を上部開口としてもよいし、上述の隙間部の一部を上部開口としてもよい。すなわち、上部開口の個数や形状は本実施形態に限定されず、上述のエジョクション効果を得ることのできる範囲内で、適宜設定することができる。ただし、上部開口は上述のエジョクション効果を安定的に得る観点から、本実施形態のように鉛直管2と排ガス導入管4の中心軸周りの回転対称の位置に複数個設けることが好ましい。
また、上部開口の位置も上述の隙間部には限定されない。例えば、本実施形態において鉛直管の上部である拡大部22を省略し、鉛直管の本体部21と排ガス導入管4とを連続させたうえで、鉛直管の本体部21の上部又はケーシング3内の排ガス導入管4に上部開口を設けることもできる。要するに本発明において上部開口の位置は、ケーシング内で鉛直管の上部へ通じる位置であればよい。言い換えると本発明において上部開口の位置は、上述のエジョクション効果を得ることのできる範囲内で適宜設定することができる。
【0026】
なお、本実施形態において鉛直管2の中心軸と排ガス導入管4の中心軸は同一軸線上にあるが、鉛直管の中心軸と排ガス導入管4の中心軸は必ずしも同一軸線上にある必要はない。ただし、鉛直管内の排ガスの流れを円滑とし、上述のエジョクション効果を安定的に得る観点から、鉛直管の中心軸と排ガス導入管の中心軸は同一軸線上にあることが好ましく、装置設計上もその方が自然である。
また、本実施形態において鉛直管2の本体部21の水平断面形状と排ガス導入管4の下端部の水平断面形状は同一形状であるが、これら水平断面形状は必ずしも同一形状である必要はない。ただし、鉛直管内の排ガスの流れを円滑とし、上述のエジョクション効果を安定的に得る観点から、鉛直管の本体部の水平断面形状と排ガス導入管の下端部の水平断面形状は同一形状であることが好ましい。
更に、本実施形態において鉛直管2の水平断面形状と排ガス導入管4の水平断面形状は正方形、ケーシング3の水平断面形状は長方形としたが、これには限定されず、例えば円形や楕円形とすることもできる。ただし、ケーシング内で排ガスの鉛直循環流を安定的に形成する観点から、鉛直管の水平断面形状と排ガス導入管の水平断面形状が方形の場合、ケーシングの水平断面形状も方形とし、鉛直管の水平断面形状と排ガス導入管の水平断面形状が円形や楕円形の場合、ケーシングの水平断面形状も円形や楕円形とすることが好ましい。
【実施例0027】
<実施例A>
ダストキャッチャ1によるダスト捕捉機能を確認するために、
図1に示したシャフト炉式ガス化溶融システムにおいてダストキャッチャ1の設置前と設置後とで、ろ過式集塵器K1の集塵灰発生量を比較した。その結果、ダストキャッチャ1を設置することでろ過式集塵器K1の集塵灰発生量を10~20%程度削減できることが確認された。
【0028】
<実施例B>
処理剤導入部6から導入する活性炭による排ガスの無害化機能を確認するために、
図1に示したシャフト炉式ガス化溶融システムにおいてろ過式集塵器K1の入口における排ガス中の水銀濃度及び煙突Nから排出される排ガス中の水銀濃度を連続分析計で測定した。その結果を表1に示している。また、
図1に示したシャフト炉式ガス化溶融システムにおいて煙突Nから排出される排ガス中の水銀濃度を定期的に測定した。その結果を表2に示している。
表1及び表2からわかるように、保証値を十分に満足する水銀除去機能が得られることが確認された。
【0029】
【0030】
【0031】
<実施例C>
図1に示したシャフト炉式ガス化溶融システムにおいて、活性炭を導入する処理剤導入部6の配置パターン(位置及び数)を変更して排ガス処理装置内の流動解析を行った。また、比較例として、活性炭を導入する処理剤導入部の位置をろ過式集塵器K1の入口部へ変更したときの排ガス処理装置内の流動解析を行った。
図6に、これら流動解析結果を示しており、(a)は
図5(a)に示しているように排ガス導入管4の4つの隅部のうち排ガス排出口32側の2つの隅部に2つの処理剤導入部6を設けた例(実施例1)、(b)は
図5(b)に示しているように排ガス導入管4の排ガス排出口32側の側面に1つの処理剤導入部6を設けた例(実施例2)、(c)は
図5(c)に示しているように排ガス導入管4の排ガス排出口32側の側面に3つの処理剤導入部6を設けた例(実施例3)、(d)は活性炭を導入する処理剤導入部の位置をろ過式集塵器K1の入口部へ変更した例(比較例)である。なお、
図6において処理剤導入部は○で示している。
【0032】
図6より、実施例1~3における活性炭の滞留時間は、実施例3<実施例2<実施例1であることがわかる。すなわち、排ガス導入管4の4つの隅部のうち排ガス排出口32側の2つの隅部に2つの処理剤導入部6を設けた実施例1が、最も滞留時間が長く循環距離も長い。ただし、実施例2及び実施例3であっても比較例に比べると、滞留時間が長く循環距離も長くなっていることがわかる。
このように、鉛直管2の上部へ排ガス処理剤を導入するための処理剤導入部6を設けることで、ろ過式集塵器K1の入口部へ排ガス処理剤を導入するための処理剤導入部を設けた場合に比べ、排ガス処理剤の滞留時間及び循環距離を長くすることができることが確認された。ろ過式集塵器を含む排ガス処理装置内での排ガス処理剤の滞留時間及び循環距離を長くすることは、ろ過式集塵器での除去対象物の除去率向上と排ガス処理剤の使用量削減に大きく寄与する。