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特開2023-183555画像形成装置及び転写バイアス制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183555
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】画像形成装置及び転写バイアス制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20231221BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20231221BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G15/00 303
G03G15/01 114
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097128
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】六川 洋
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
2H300
【Fターム(参考)】
2H200FA18
2H200GA06
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA33
2H200HA02
2H200HB12
2H200JA29
2H200JB07
2H200MB04
2H200MB06
2H200NA09
2H200PA05
2H270KA28
2H270LC02
2H270MA24
2H270MB27
2H270MB55
2H270MH09
2H270PA16
2H270QA43
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC08
2H300EA12
2H300EB04
2H300EB07
2H300EB12
2H300ED05
2H300EF02
2H300EF08
2H300EF14
2H300QQ04
2H300QQ26
2H300QQ29
2H300TT03
2H300TT04
(57)【要約】
【課題】調整対象の転写部の転写バイアスの調整時に上流側の転写部における転写不良の発生を防ぐ。
【解決手段】画像形成装置(1)は、複数の像担持体(22K、22Y、22M、22C)と、複数の転写部(40K、40Y、40M、40C)と、複数の転写部の各々に転写バイアスを印加する転写電圧発生部(75)と、制御部(90)とを備え、制御部は、複数の転写部(40K、40Y、40M、40C)のうちの調整対象の転写部に印加する転写バイアスである第1の転写バイアスの調整の指令を受け取った場合に、指令の内容に基づいて第1の転写バイアスの絶対値を増加又は減少させる第1の調整を実行し、指令の内容に基づいて調整対象の転写部の上流側の転写部に印加する転写バイアスである第2の転写バイアスの絶対値を増加又は減少させる第2の調整を実行する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体の搬送方向に並んで配置され、複数の現像剤像をそれぞれ担持する複数の像担持体と、
前記複数の像担持体と対向して配置され、転写バイアスによって前記複数の現像剤像を前記印刷媒体上に順次転写する複数の転写部と、
前記複数の転写部の各々に前記転写バイアスを印加する転写電圧発生部と、
前記転写電圧発生部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数の転写部のうちの調整対象の転写部に印加する前記転写バイアスである第1の転写バイアスの調整の指令を受け取った場合に、
前記指令の内容に基づいて前記第1の転写バイアスの絶対値を増加又は減少させる第1の調整を実行し、
前記指令の内容に基づいて前記調整対象の転写部の上流側の転写部に印加する前記転写バイアスである第2の転写バイアスの絶対値を増加又は減少させる第2の調整を実行する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記指令を受け取った場合に、記憶部に予め記憶されている調整量情報を用いて前記指令の内容に基づく第1の調整量を決定し、前記第1の調整量を用いて前記第1の転写バイアスの絶対値についての前記第1の調整を実行し、
前記調整量情報を用いて前記指令の内容に基づく第2の調整量を決定し、前記第2の調整量を用いて前記第2の転写バイアスの絶対値についての前記第2の調整を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記印刷媒体の種類を示す種類情報を受け取り、
前記種類情報に基づいて、記憶部に予め記憶されている複数の調整量情報から対象の調整量情報を選択し、
前記指令を受け取った場合に、前記対象の調整量情報を用いて前記指令の内容に基づく第1の調整量を決定し、前記第1の調整量を用いて前記第1の転写バイアスの絶対値についての前記第1の調整を実行し、
前記対象の調整量情報を用いて前記指令の内容に基づく第2の調整量を決定し、前記第2の調整量を用いて前記第2の転写バイアスの絶対値についての前記第2の調整を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記印刷媒体の種類を示す種類情報を受け取り、
前記種類が予め決められた値以上の体積抵抗率を持つ高抵抗印刷媒体であり且つ前記第1の調整で前記第1の転写バイアスの絶対値を増加させる場合には、前記第2の調整に際し前記第2の転写バイアスの絶対値を減少させ、
前記種類が前記予め決められた値未満の体積抵抗率を持つ低抵抗印刷媒体であり且つ前記第1の調整で前記第1の転写バイアスの絶対値を増加させる場合には、前記第2の調整に際し前記第2の転写バイアスの絶対値を増加させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記印刷媒体の種類を示す種類情報を受け取り、
前記印刷媒体が樹脂製のフィルムを含む媒体であり且つ前記第1の調整で前記第1の転写バイアスの絶対値を増加させる場合には、前記第2の調整に際し前記第2の転写バイアスの絶対値を減少させ、
前記印刷媒体が紙製の媒体であり且つ前記第1の調整で前記第1の転写バイアスの絶対値を増加させる場合には、前記第2の調整に際し前記第2の転写バイアスの絶対値を増加させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
ユーザ操作を受け付ける操作部を更に有し、
前記制御部は、前記操作部から前記調整対象の転写部についての前記指令を受け取る
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
ユーザ操作を受け付ける操作部を更に有し、
前記制御部は、前記操作部から前記印刷媒体の種類を示す種類情報を受け取る
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記上流側の転写部は、前記複数の転写部のうちの、前記調整対象の転写部に最も近い上流側の転写部を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記上流側の転写部は、前記複数の転写部のうちの、前記調整対象の転写部に近い上流側の複数の転写部を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項10】
印刷媒体の搬送方向に並んで配置され、複数の現像剤像をそれぞれ担持する複数の像担持体と、前記複数の像担持体と対向して配置され、転写バイアスによって前記複数の現像剤像を前記印刷媒体上に順次転写する複数の転写部と、前記複数の転写部の各々に前記転写バイアスを印加する転写電圧発生部とを備えた画像形成装置によって実施される転写バイアス制御方法であって、
前記複数の転写部のうちの調整対象の転写部に印加する前記転写バイアスである第1の転写バイアスの調整の指令を受け取るステップと、
前記指令の内容に基づいて前記第1の転写バイアスの絶対値を増加又は減少させる第1の調整を実行するステップと、
前記指令の内容に基づいて前記調整対象の転写部の上流側の転写部に印加する前記転写バイアスである第2の転写バイアスの絶対値を増加又は減少させる第2の調整を実行するステップと
を有することを特徴とする転写バイアス制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置及び転写バイアス制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置では、複数の感光ドラム上にそれぞれ形成された複数のトナー像を、複数の転写部(例えば、複数の転写ローラ)に印加された転写バイアスによって印刷媒体上に順次転写することで、印刷媒体上に複数のトナー像からなるカラー画像を形成している。各色用の転写ローラに印加される適切な転写バイアスは印刷媒体の種類によって異なるため、画像形成装置では、各色用の転写ローラに印加される転写バイアスの値を変更するためのユーザ操作が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005―077598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の画像形成装置において、複数の転写部のうちの調整対象の転写部の転写バイアスを変更するユーザ操作が行われると、その影響で、他の転写部(特に、調整対象の転写部の上流側の転写部)で転写不良が発生することがある。そのため、転写バイアスを適切に調整することが難しいという問題があった。
【0005】
本開示は、調整対象の転写部の転写バイアスの調整時に他の転写部における転写不良の発生を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の画像形成装置は、印刷媒体の搬送方向に並んで配置され、複数の現像剤像をそれぞれ担持する複数の像担持体と、前記複数の像担持体と対向して配置され、転写バイアスによって前記複数の現像剤像を前記印刷媒体上に順次転写する複数の転写部と、前記複数の転写部の各々に前記転写バイアスを印加する転写電圧発生部と、前記転写電圧発生部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数の転写部のうちの調整対象の転写部に印加する前記転写バイアスである第1の転写バイアスの調整の指令を受け取った場合に、前記指令の内容に基づいて前記第1の転写バイアスの絶対値を増加又は減少させる第1の調整を実行し、前記指令の内容に基づいて前記調整対象の転写部の上流側の転写部に印加する前記転写バイアスである第2の転写バイアスの絶対値を増加又は減少させる第2の調整を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の画像形成装置及び転写バイアス制御方法によれば、調整対象の転写部の転写バイアスの調整時に他の転写部における転写不良の発生を防ぐことできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る画像形成装置の構成を概略的に示す縦断面図である。
図2】実施の形態に係る画像形成装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態に係る画像形成装置における転写バイアスの調整メニューの項目を示す図である。
図4】転写バイアスの基本テーブルの例を示す図である。
図5】高抵抗印刷媒体用の転写バイアス調整量テーブルの例を示す図である。
図6】低抵抗印刷媒体用の転写バイアス調整量テーブルの例を示す図である。
図7】(A)は、印刷媒体に帯電した電荷量の減衰曲線を示す図であり、(B)は、印刷媒体に帯電した電荷量の時間変化を表形式で示す図である。
図8】実施の形態に係る画像形成装置における転写バイアスの算出処理を具体的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態に係る画像形成装置及び画像形成装置によって実施される転写バイアス制御方法を、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は、例にすぎず、本開示の範囲内で種々の変更が可能である。なお、以下の説明では、像担持体としての感光ドラム上に供給される現像剤(すなわち、トナー)が負に帯電している負帯電性現像剤である例を説明する。ただし、本発明は、感光ドラム上に供給される現像剤が正に帯電している正帯電性現像剤である画像形成装置にも適用可能である。
【0010】
《画像形成装置1の構成》
図1は、実施の形態に係る画像形成装置1の構成を概略的に示す縦断面図である。図2は、画像形成装置1の制御系の構成を示すブロック図である。画像形成装置1は、例えば、電子写真方式を用いて印刷媒体上に画像を形成するカラープリンタである。画像形成装置1の内部には、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)に対応した4つの独立した印刷機構である複数の画像形成ユニット20K、20Y、20M、20Cが、無端状のベルトである転写ベルト50による印刷媒体の搬送方向D1に並ぶように配置されている。転写ベルト50は、搬送ベルトとも呼ばれる。
【0011】
画像形成ユニット20K、20Y、20M、20Cの各々は、イメージドラム(ID)ユニットとも呼ばれる。画像形成ユニット20Kは、ブラックの現像剤像(トナー像)を形成する印刷機構であり、画像形成ユニット20Yは、イエローのトナー像を形成する印刷機構であり、画像形成ユニット20Mは、マゼンタのトナー像を形成する印刷機構であり、画像形成ユニット20Cは、シアンのトナー像を形成する印刷機構である。なお、画像形成ユニットの個数は、4個に限定されない。また、画像形成ユニット20K、20Y、20M、20Cの配列の順番は、図1の例のものに限定されない。また、画像形成ユニット20K、20Y、20M、20Cによって使用される現像剤の色は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンに限定されない。
【0012】
画像形成ユニット20K、20Y、20M、20Cの構造は、収容されているトナーの色を除いて、互いに同じ又は同様である。画像形成ユニット20K、20Y、20M、20Cは、帯電部材としての帯電ローラ21K、21Y、21M、21Cと、帯電ローラ21K、21Y、21M、21Cにより表面が一様に帯電される像担持体としての感光ドラム22K、22Y、22M、22Cとをそれぞれ有している。また、画像形成ユニット20K、20Y、20M、20Cは、現像ローラ23K、23Y、23M、23Cと、現像ブレード24K、24Y、24M、24Cと、供給ローラ25K、25Y、25M、25Cと、クリーニングブレード26K、26Y、26M、26Cと、トナーカートリッジ27K、27Y、27M、27Cとをそれぞれ有している。現像ローラ23K、23Y、23M、23Cと、現像ブレード24K、24Y、24M、24Cと、供給ローラ25K、25Y、25M、25Cとは、感光ドラム22K、22Y、22M、22C上にトナーを供給する現像部を構成している。
【0013】
トナーカートリッジ27K、27Y、27M、27Cからトナー収容部内に供給されたトナーは、供給ローラ25K、25Y、25M、25Cと現像ローラ23K、23Y、23M、23Cとによって強く擦られて摩擦帯電される。トナーは、供給ローラ25K、25Y、25M、25Cを経て現像ローラ23K、23Y、23M、23Cに供給され、現像ブレード24K、24Y、24M、24Cによって現像ローラ23K、23Y、23M、23C上において薄層化され、感光ドラム22K、22Y、22M、22Cとの接触部に運ばれる。
【0014】
画像形成ユニット20K、20Y、20M、20Cの感光ドラム22上には、印刷ヘッドとしてのLED(発光ダイオード)ヘッド30K、30Y、30M、30Cが配置されている。印刷ヘッドは、露光装置とも呼ばれる。LEDヘッド30K、30Y、30M、30Cは、LEDアレイと、LEDアレイを駆動するドライブIC及びデータ保持用のレジスタ群を搭載した基板と、LEDアレイから出射された光を集光する正立等倍結像レンズアレイとを有している。LEDヘッド30は、インタフェース部91(図2)から入力される画像データに応じてLEDヘッド30K、30Y、30M、30Cを発光させる。印刷ヘッドは、LEDヘッド30K、30Y、30M、30Cに限定されず、発光サイリスタアレイを用いた発光サイリスタヘッド、又は半導体レーザを備えたレーザ走査光学系、などであってもよい。
【0015】
画像形成ユニット20K、20Y、20M、20CのLEDヘッド30K、30Y、30M、30Cには、カラー画像データのうちブラック画像データ、マゼンタ画像データ、イエロー画像データ、シアン画像データがそれぞれ入力される。画像形成ユニット20K、20Y、20M、20Cでは、一様帯電されている感光ドラム22K、22Y、22M、22Cの表面がLEDヘッド30K、30Y、30M、30Cの発光により露光され、感光ドラム22K、22Y、22M、22Cの表面に静電潜像が形成される。
【0016】
現像ローラ23K、23Y、23M、23C上のトナーは、静電気力によって感光ドラム22K、22Y、22M、22C上に移動し、静電潜像に応じたトナー像が形成される。トナーカートリッジ27K、27Y、27M、27Cには、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのトナーがそれぞれ収容されている。また、画像形成ユニット20K、20Y、20M、20Cの各々の感光ドラム22K、22Y、22M、22Cの下方には、転写ベルト50を挟んで転写部として転写ローラ40K、40Y、40M、40Cが配置されている。転写ローラ40K、40Y、40M、40Cは、転写ベルト50を挟んで感光ドラム22K、22Y、22M、22Cに押し付けられており、転写ニップ部が形成されている。感光ドラム22K、22Y、22M、22C上に形成されたトナー像は、転写ニップ部で用紙などの印刷媒体上に転写される。転写ローラ40K、40Y、40M、40Cは、転写ローラ40とも表記される。
【0017】
転写ベルト50は、駆動ローラ51及び従動ローラ52によって所定のテンションを持って張架される。駆動ローラ51は、ベルトモータ83(図2)により回転し、転写ベルト50を移動させて、印刷媒体を搬送方向D1に搬送する。従動ローラ52は、転写ベルト50に連れ回りする。転写ベルト50は、光沢のある表面を有しており、濃度センサ53の赤外LEDの発光電流の調整の基準反射物として用いられる。
【0018】
画像形成装置1の筐体内の下部には、搬送路に供給される印刷媒体(例えば、紙製の媒体、樹脂製のフィルム、など)を収容する収容カセット11と、収容カセット11に収容されている印刷媒体を1枚ずつ送り出すホッピングローラ12と、印刷媒体のスキュー(すなわち、斜め送りされる状態)を修正するレジストローラ13、14と、印刷媒体を転写ベルト50へと案内するガイド15と、印刷媒体を検知する媒体センサ16、17とが備えられている。
【0019】
転写ベルト50より下流側(すなわち、図1において左側)には、印刷媒体が転写ベルト50から適切に分離されなかった状態を検出するための、又は、通過した用紙の後端位置を検出するための排出センサ18が設けられている。
【0020】
転写ベルト50を通過して、トナー像が形成された印刷媒体は、転写ベルト50から分離されて、定着器60へ搬送される。
【0021】
定着器60は、ヒートローラ61と、加圧ローラ62とを有している。ヒートローラ61は、ヒータモータ84(図2)によって駆動され、加圧ローラ62は、ヒートローラ61に連れ回りする。ヒートローラ61は、熱源として機能するハロゲンランプからなるヒータ61a(図2)を内蔵する。定着器60は、印刷媒体上のトナー像を加熱、溶融し、印刷媒体上にトナー像を定着させる。ヒートローラ61の表面近くには、定着サーミスタ64が配置され、ヒートローラ61の温度を監視している。
【0022】
定着器60の下流側には、印刷媒体を検出する媒体センサ65が設けられており、定着器60におけるジャムの発生又は用紙のヒートローラ61への巻き付きの発生の有無を監視している。媒体センサ65の下流側には、印刷媒体を画像形成装置1の筐体の上部のスタッカ67上へと搬送するガイド66が設けられている。画像が形成され定着された印刷媒体、すなわち、印刷済みの印刷媒体は、スタッカ67上に排出される。
【0023】
転写ベルト50の下部には、転写ベルト50上に残留したトナーを除去するクリーニングブレード55が配置される。クリーニングブレード55は、可撓性のゴム材又はプラスチック材からなり、転写ベルト50に接触して転写ベルト50上のトナーを掻き落とす。掻き落とされたトナーは、廃トナー収容部56に収容される。
【0024】
また、転写ベルト50の下部には、転写ベルト50と対向する位置に濃度センサ53が配置されている。濃度センサ53は、転写ベルト50上に転写された濃度検出用パターンの反射光の強度を測定することで、濃度検出用パターンの濃度を検出するために用いられる。
【0025】
図2において、操作部95は、例えば、画像形成装置1の状態や各種設定を確認するための表示パネルと各種設定を変更する操作ボタンで構成される。操作部95は、タッチパネルであってもよい。各種設定メニューには、画像の印刷に使用される印刷媒体の種類(「用紙種類」ともいう。)を設定する「印刷媒体の種類」メニューと、転写バイアスの調整量を設定する「転写バイアスの調整」メニューとが含まれている。「印刷媒体の種類」メニューでは、「普通紙」と「フィルム」といったように、印刷媒体の種類をユーザが選択するための選択肢が表示される。フィルムは、例えば、樹脂製のシートである。印刷媒体の種類は、「普通紙」と「フィルム」に限定されない。また、印刷媒体の種類は、2種類に限定されない。
【0026】
図3は、画像形成装置1における転写バイアスの調整メニューの項目を示す図である。「転写バイアスの調整」メニューは、ユーザが印刷をした結果を見て、調整対象の色の印刷結果に不満がある場合(印刷結果が異常である場合を含む)に、転写バイアスを調整するために、色ごとに転写バイアスを変更することができるメニュー項目である。「転写バイアスの調整」メニューは、図3に示されるように、「転写バイアスの調整」メニューを選択すると、「ブラック」、「イエロー」、「マゼンタ」、「シアン」のメニューが選択できるようにトナーの色の情報が表示され、各色のメニューを選択すると、「-2」、「-1」、「0」、「+1」、「+2」の転写バイアスの選択値(-2が最小転写バイアス、+2が最大転写バイアス)が選択できるようになっている。本実施の形態では、「印刷媒体の種類」メニューの設定と「転写バイアスの調整」メニューでの設定から、機構制御部94内の記憶部としてのメモリ94aに記録された転写バイアステーブルを参照して、転写バイアスの調整量を決定する。ただし、記憶部として、画像形成装置1と通信可能なネットワーク上のサーバの記憶装置を使用することも可能である。
【0027】
インタフェース部91は、ホストコンピュータとのインタフェース部であり、コネクタ及び通信用のチップで構成される。コマンド/画像処理部92は、ホスト側からのコマンド及び画像データをビットマップに展開する部分であり、図示しないマイクロプロセッサ、RAM(random access memory)及び展開のためのハードウェア等からなり、画像形成装置1の全体を制御する。LEDヘッドインタフェース部93は、コマンド/画像処理部92からのビットマップに展開された画像データを、LEDヘッド30K、30Y、30M、30Cのインタフェースに合わせて加工する。
【0028】
機構制御部94は、コマンド/画像処理部92からの指令に従い、ホッピングモータ81、レジストモータ82、ベルトモータ83、ヒータモータ84、ドラムモータ85を駆動し、各モータに対応したホッピングローラ12、レジストローラ14、駆動ローラ51、ヒートローラ61、感光ドラム22K、22Y、22M、22Cを回転させる。また、機構制御部94は、コマンド/画像処理部92からの指令に従い、ヒータ61aを制御し、高圧制御部71を制御する。コマンド/画像処理部92と機構制御部94とは、装置全体の動作を制御する制御部90を構成する。
【0029】
高圧制御部71は、画像形成ユニット20K、20Y、20M、20Cに対する帯電電圧、現像電圧、供給電圧、転写電圧の生成を行う。帯電電圧発生部72は、帯電ローラ21K、21Y、21M、21Cへの帯電電圧の生成と停止を行う。現像電圧発生部73は、現像ローラ23K、23Y、23M、23Cへの現像電圧の生成と停止を行う。供給電圧発生部74は、供給ローラ25K、25Y、25M、25Cへの供給電圧の生成と停止を行う。転写電圧発生部75は、転写ローラ40K、40Y、40M、40Cへの転写電圧の生成と停止を行う。本実施の形態において、転写電圧発生部75として、最大出力5000[V]の高圧電源を使用する。
【0030】
図4は、転写バイアスの基本テーブル101の例を示す図である。図5は、高抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブル102の例を示す図であり、図6は、低抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブル103の例を示す図である。機構制御部94のメモリ94aには、転写バイアスの算出に用いる情報である転写バイアステーブルとして、基本テーブル101と調整量テーブル102、103が記録されている。図4から図6の転写バイアスの基本テーブル101の値は、各印刷媒体に合わせて、実験から適正な値が決められている。
【0031】
画像データがホストコンピュータからインタフェース部91を経由してコマンド/画像処理部92に送信されると、画像形成装置1の印刷動作が開始する。コマンド/画像処理部92において画像データが展開されると、各モータ等が駆動することで、印刷媒体の搬送と、画像形成ユニット20K、20Y、20M、20Cによるトナー像の形成が行われる。トナー像形成動作が開始されると、転写バイアスの算出が開始され、印刷媒体が各色の転写ニップ部へ到達するタイミングに合わせて、転写電圧発生部75が算出した転写バイアスを各転写ローラ40K、40Y、40M、40Cに印加するよう、コマンド/画像処理部92が制御を行う。
【0032】
例えば、高抵抗印刷媒体は、体積抵抗率が予め定められた閾値Rt以上の印刷媒体であり、低抵抗印刷媒体は、体積抵抗率が閾値Rt未満の印刷媒体である。閾値Rtとしては、例えば、1.0×1012[Ω・cm]を用いることが可能である。ただし、閾値Rtの値、この値に限定されない。
【0033】
高抵抗印刷媒体は、例えば、樹脂製のフィルムを含む媒体である。具体的な高抵抗印刷媒体としては、以下の(H1)~(H4)のものがある。
(H1) 種類「耐水紙」、商品名「レーザーピーチ WETY-145」、メーカー「ダイオーミウラ」、体積抵抗率(実測値)「1.9×1016[Ω・cm]」、素材「ポリエステルフィルム」
(H2) 種類「耐水紙」、商品名「ラミフリー」、メーカー「中川製作所」、体積抵抗率(実測値)「5.7×1014[Ω・cm]」、素材「ベース紙にフィルム貼り合わせ」
(H3) 種類「耐水紙」、商品名「カレカ」、メーカー「国際紙パルプ商事」、体積抵抗率(実測値)「8.2×1014[Ω・cm]」、素材「ベース紙にフィルム貼り合わせ」
(H4) 種類「OHP(overhead projector sheet)」、商品名「CG3500」、メーカー「3M」、体積抵抗率(実測値)「1.2×1015[Ω・cm]」、素材「フィルム」
【0034】
低抵抗印刷媒体は、例えば、紙の媒体である。具体的な低抵抗印刷媒体としては、以下の(L1)、(L2)のものがある。
(L1) 種類「普通紙」、商品名「エクセレントホワイト」、メーカー「OKI」、体積抵抗率(実測値)「3.5×1010[Ω・cm]」、素材「ポリエステルフィルム」
(L2) 種類「普通紙」、商品名「エクセレントペーパー」、メーカー「OKI」、体積抵抗率(実測値)「2.5×1011[Ω・cm]」、素材「ベース紙にフィルム貼り合わせ」
【0035】
印刷媒体に転写バイアスを印加することで、印刷媒体に溜まった電荷が抜けていく様子は、電気抵抗と静電容量成分で決まる時定数τで考えることができる。刷媒体に溜まった電荷の電荷量Qは、以下の式(1)で表される。
Q=Q・e(-t/τ) …(1)
ここで、Qは、電荷量[C]であり、Qは、初期電荷量[C]であり、tは、経過時間[s]であり、τは、時定数[s]である。
【0036】
Rが抵抗値[Ω]であり、Cが静電容量[F]であり、ρが体積抵抗率[Ω・cm]であり、εが誘電率[F/cm]である場合、時定数τは以下の式(2)で表される。
τ=RC=ρε …(2)
ここで、真空の誘電率ε=8.85×10-12[F/m]と、紙の比誘電率εを2程度と仮定すれば、概ね、
ε=ε×ε≒1×10-11[F/m]=1×10-13(=1E-13)[F/cm]
である。
【0037】
体積抵抗率ρ[Ω・cm]が1011(=1E+11)の場合、1012(=1E+12)の場合、1013(=1E+13)の場合、1014(=1E+14)の場合のそれぞれについて、式(1)のQを計算した結果(ただし、Q=1とする。)を、図7(A)及び(B)に示す。図7(A)及び(B)から、体積抵抗率ρ[Ω・cm]が低い印刷媒体ほど電荷量Qの減衰が早いことがわかる。ここで、印刷媒体の搬送速度を100[mm/s]、調整対象の色と転写ローラとその下流側の色の転写ローラとの間の距離(間隔)を100[mm]と仮定すると、以下の経過時間ta[s]の時点で、印刷媒体に電荷が残っている場合に、調整対象の転写ローラの転写バイアスを調整すると、他の転写ローラの転写バイアスが影響を受けやすい。
ta=(100[mm])/(100[mm/s])=1[s]
であるから、印刷媒体が高抵抗印刷媒体であるか低抵抗印刷媒体であるかの境界値である閾値Rtとして、例えば、1.0×1012[Ω・cm]を用いることが可能である。
【0038】
《実施の形態の動作》
実施の形態1では、制御部90は、複数の転写ローラ40K、40Y、40M、40Cのうちの調整対象の転写ローラに印加する転写バイアスである調整対象の転写バイアス(第1の転写バイアス)の調整の指令を受け取った場合に、指令の内容に基づいて調整対象の転写バイアスの絶対値を増加又は減少させる第1の調整を実行し、指令の内容に基づいて調整対象の転写部の上流側の転写ローラ(例えば、最も近い上流側の転写ローラ)に印加する転写バイアスである第2の転写バイアスの絶対値を増加又は減少させる第2の調整を実行する。
【0039】
例えば、制御部90は、転写バイアスの調整の指令を受け取った場合に、記憶部としてのメモリ94aに予め記憶されている調整量情報であるテーブル(図4図6)を用いて指令の内容に基づく第1の調整量を決定し、第1の調整量を用いて第1の転写バイアスの絶対値についての第1の調整を実行し、調整量情報を用いて指令の内容に基づく第2の調整量を決定し、第2の調整量を用いて第2の転写バイアスの絶対値についての第2の調整を実行する。
【0040】
また、制御部90は、印刷媒体の種類を示す種類情報を受け取り、種類情報に基づいて、メモリ94aに予め記憶されている複数の調整量情報である複数のテーブル(例えば、調整量テーブル102、103)から対象の調整量情報を選択し、指令を受け取った場合に、対象の調整量情報を用いて指令の内容に基づく第1の調整量を決定し、第1の調整量を用いて第1の転写バイアスの絶対値についての第1の調整を実行し、対象の調整量情報を用いて指令の内容に基づく第2の調整量を決定し、第2の調整量を用いて前記第2の転写バイアスの絶対値についての第2の調整を実行してもよい。
【0041】
例えば、制御部90は、印刷媒体の種類を示す種類情報を受け取り、この種類が予め決められた値以上の体積抵抗率を持つ高抵抗印刷媒体であり且つ第1の調整で第1の転写バイアスの絶対値を増加させる場合には、第2の調整に際し第2の転写バイアスの絶対値を減少させ、種類が予め決められた値未満の体積抵抗率を持つ低抵抗印刷媒体であり且つ第1の調整で第1の転写バイアスの絶対値を増加させる場合には、第2の調整に際し第2の転写バイアスの絶対値を増加させる制御を行うことができる。
【0042】
また、制御部90は、印刷媒体の種類を示す種類情報を受け取り、印刷媒体が樹脂製のフィルムを含む媒体であり且つ第1の調整で第1の転写バイアスの絶対値を増加させる場合には、第2の調整に際し第2の転写バイアスの絶対値を減少させ、印刷媒体が紙製の媒体であり且つ第1の調整で第1の転写バイアスの絶対値を増加させる場合には、第2の調整に際し第2の転写バイアスの絶対値を増加させる制御を行うことができる。
【0043】
次に、実施の形態1の動作をより具体的に説明する。図8は、画像形成装置1における転写バイアスV(K)、V(Y)、V(M)、V(C)の算出処理を具体的に示すフローチャートである。
【0044】
画像形成装置1が、画像データを受信し印刷動作を開始すると(ステップS1)、制御部90のコマンド/画像処理部92は、ユーザによって操作部95で予め設定された「印刷媒体の種類」メニューの設定を確認する(ステップS2)。なお、印刷媒体の種類の設定は、画像データの送信時に、プリンタドライバによって行われてもよい。
【0045】
次に、コマンド/画像処理部92は、「印刷媒体の種類」メニューの設定を確認し、図4の転写バイアスの基本テーブル101を参照し、転写バイアスの調整メニューの調整量が適用される前の各色の転写バイアスを決定する(ステップS3)。
【0046】
本実施の形態では、「印刷媒体の種類」メニューによる設定において、「印刷媒体の種類」として普通紙が選択された場合、ブラック用の転写ローラ40Kの基本の転写バイアスV(K)は、V(K)=2000[V]、イエロー用の転写ローラ40Yの基本の転写バイアスV(Y)は、V(Y)=2200[V]、マゼンタ用の転写ローラ40Kの基本の転写バイアスV(M)は、V(M)=2400[V]、シアン用の転写ローラ40Cの基本の転写バイアスV(C)は、V(C)=2600[V]と設定される。ただし、これらの電圧値は、一例にすぎず、基本の転写バイアスは、これらの値に限定されない。
【0047】
また、「印刷媒体の種類」メニューによる設定において、「印刷媒体の種類」としてフィルムが選択された場合、ブラック用の転写ローラ40Kの基本の転写バイアスV(K)は、V(K)=3900[V]、イエロー用の転写ローラ40Yの基本の転写バイアスV(Y)は、V(Y)=4300[V]、マゼンタ用の転写ローラ40Mの基本の転写バイアスV(M)は、V(M)=4700[V]、シアン用の転写ローラ40Cの基本の転写バイアスV(C)は、V(C)=5000[V]と設定される。ただし、これらの電圧値は、一例にすぎず、基本の転写バイアスは、これらの値に限定されない。
【0048】
図4の転写バイアスの基本テーブル101の値は、各印刷媒体に合わせて、実験から適正な値が決められている。なお、本実施の形態では、「印刷媒体の種類」メニューは、普通紙とフィルムの2種類としたが、この2つに限定されるものではなく、3種類以上の印刷媒体の種類があってよい。また、図4の転写バイアスの基本テーブル101は、印刷速度ごとに、又は温湿度ごとに、又は印刷媒体の厚さごとに、又はこれらの条件のうちの2つ以上の組合せごとに、異なるテーブルであってもよい。さらに、本工程における転写バイアスの算出は、転写バイアスの印加前のタイミング、印刷前の予備動作において転写ローラの抵抗値情報を測定し、その結果を反映するようにしてもよい。
【0049】
次に、コマンド/画像処理部92は、ユーザによって操作部95で予め設定された「印刷媒体の種類」メニューの設定を確認し、高抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブルを使用するか、低抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブルを使用するかを判断する(ステップS4)。
【0050】
本実施の形態に係る画像形成装置1は、高抵抗印刷媒体であるか低抵抗印刷媒体であるかによってそれぞれ「転写バイアスの調整」メニューの各色の調整量は、別のテーブルを参照する。本実施の形態では、「印刷媒体の種類」メニューの設定が「フィルム」の場合は高抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブル102(図5)を使用し、設定が「普通紙」の場合は、低抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブル103(図6)を使用する。なお、本実施の形態においては、フィルムを高抵抗印刷媒体としたが、その他の高抵抗印刷媒体の一例としては、OHPシート、耐水紙、合成紙、フィルムラベル、合成紙ラベルと称されるものなどが挙げられる。また、低抵抗印刷媒体の一例としては、普通紙、薄紙、再生紙、封筒、はがき、と称されるものなどが挙げられる。
【0051】
なお、本実施の形態においては、体積抵抗率の境界値として、印刷媒体の体積抵抗率がおおよそ1.0×1012[Ω・cm]以上の印刷媒体を高抵抗印刷媒体、それ未満のものを低抵抗印刷媒体としている。媒体抵抗値が高い印刷媒体は、転写バイアスが印加した際に印刷媒体に堆積した電荷が印刷媒体から抜ける時間が遅いため、下流での転写バイアスに影響を及ぼす。詳細は後述するが、この印刷媒体への電荷蓄積の影響を考慮して転写バイアスの調整量テーブルの変更が必要になる。
【0052】
ここで、図5に示す高抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブル102の特徴は、調整対象の色の転写ローラの転写バイアスを高くしたとき、調整対象の色の転写ローラの上流側の色の転写ローラの転写バイアスを低くし、調整対象の色の転写ローラの下流側の色は、転写バイアスを高くするようにテーブルの値が調整されている点である。図6に示す低抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブル103の特徴は、調整対象の色の転写ローラの転写バイアスを高くしたとき、調整対象の色の転写ローラの上流側の色は、転写バイアスの絶対値を高くし、調整対象の色の転写ローラの下流側の色は、転写バイアスの絶対値を高くするようにテーブルの値が調整されている点である。
【0053】
次に、「印刷媒体の種類」メニューでフィルム(高抵抗印刷媒体)が設定された場合の転写バイアスの決定手順と、「印刷媒体の種類」メニューで普通紙が設定された(低抵抗印刷媒体)場合の転写バイアスの決定手順について説明する。
【0054】
印刷する印刷媒体が高抵抗印刷媒体であるフィルムの場合(「印刷媒体の種類」メニューでフィルムが設定された場合)、図5に示す高抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブル102を使用する(ステップS5)。
【0055】
高抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブル102では、「転写バイアスの調整」メニューで調整対象の色の転写ローラの設定値がマイナス方向に設定されると調整対象の色の転写ローラの転写バイアスが低くなり、調整対象の色の転写ローラの設定値がプラス方向に設定されると調整対象の色の転写ローラの転写バイアスが高くなるように設定されている。さらに、調整対象の色の転写ローラの転写バイアスを高くした場合は、調整対象の色の転写ローラの上流側の色は、転写バイアスが低くなるよう値が設定されており、調整対象の色の転写ローラの下流側の色は、転写バイアスが高くなるよう値が設定されている。
【0056】
例えば、マゼンタ(M)の転写バイアスの調整で「+2」が設定された場合の転写バイアスの調整量は、調整対象の色であるマゼンタ(M)は、M=+500[V]、調整対象の色の転写ローラの上流側のイエロー(Y)は、Ym=-200[V]、調整対象の色の転写ローラの下流側のシアン(C)は、Cm=+250[V]となる。
【0057】
ここで、調整対象の色の転写ローラの上流側の色の転写バイアスと下流側の色の転写バイアスの調整について説明する。高抵抗な印刷媒体は、転写バイアスを印加することで印刷媒体に電荷が蓄積する。高抵抗な印刷媒体は、次に転写を行う下流側の色に到達するまで蓄積した電荷が印刷媒体に留まるため、次に転写を行う際に必要になる転写バイアスが高くなる。そのため、調整対象の色の転写ローラの転写バイアスを高くすると、調整対象の色の転写ローラの下流側の色を適切に転写するための転写バイアスが増えるため、調整対象の色の転写ローラの下流側の色の転写バイアスを上げる必要がある。
【0058】
また、高抵抗な印刷媒体は、適切に転写を行うために必要な転写バイアスが高いため、転写バイアスを印加するための高圧電源の出力スペックの最大付近を使用する。この場合、転写バイアスの調整メニューで転写バイアスを高くしようとしても電圧不足で高くできないことがある。本実施の形態においては、高圧電源の出力可能な転写バイアスの上限が5000[V]の電源を使用しているため、マゼンタ及びシアンについては、転写バイアスを高くしても電源のスペック上限に達する場合があり、さらに高い転写バイアスを使用するためには、よりハイスペックな高圧電源が必要になり、コストアップするという課題が発生する。しかしながら、本実施の形態のように、調整対象の色の転写ローラの上流側の色の転写バイアスを下げることで、印刷媒体に蓄積する電荷量を減らすことができ、調整対象の色で必要になる転写バイアスを下げることができる。
【0059】
次に、コマンド/画像処理部92は、ユーザによって操作部95で予め設定された「転写バイアスの調整」メニューの各色の調整量を確認し、低抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブル103と転写バイアスの調整メニューの調整量から、各色の転写バイアス調整量を算出する(ステップS6)。
【0060】
なお、転写バイアスの調整メニューの調整が複数の色で行われた場合は、各テーブル値の調整値の和によって、各色の転写バイアス調整量が決定される。従って、高抵抗印刷媒体の場合は、図5の転写バイアスの調整量テーブルを参照し、各色の転写バイアスの調整量ΔV(K)、ΔV(Y)、ΔV(M)、ΔV(C)は、以下の式(3)~(6)ように決定される。
ΔV(K)=K +Ky+Km+Kc …(3)
ΔV(Y)=Yk+Y +Ym+Yc …(4)
ΔV(M)=Mk+My+M +Mc …(5)
ΔV(C)=Ck+Cy+Cm+C …(6)
【0061】
そして、図8の転写バイアス算出フローチャートのステップS3で決定した転写バイアス値とS7で決定した転写バイアスの調整量の和である以下の式(7)~(10)で転写バイアスV(K)、V(Y)、V(M)、V(C)を決定する(ステップS7)。
V(K)=V(K)+ΔV(K) …(7)
V(Y)=V(Y)+ΔV(Y) …(8)
V(M)=V(M)+ΔV(M) …(9)
V(C)=V(C)+ΔV(C) …(10)
【0062】
印刷する印刷媒体が低抵抗印刷媒体である普通紙の場合(「印刷媒体の種類」メニューで普通紙が設定された場合)、図6に示す低抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブル103を使用する(ステップS8)。
【0063】
低抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブル103は、「転写バイアスの調整」メニューで調整対象の色の転写ローラの設定値がマイナス方向に設定されると調整対象の色の転写ローラの転写バイアスが低くなり、調整対象の色の転写ローラの設定値がプラス方向に設定されると調整対象の色の転写ローラの転写バイアスが高くなるように設定されている。さらに、調整対象の色の転写ローラの転写バイアスを高くした場合は、調整対象の色の転写ローラの上流側の色は、転写バイアスが高くなるよう値が設定されており、また、調整対象の色の転写ローラの下流側の色は、転写バイアスが高くなるよう値が設定されている。
【0064】
例えば、マゼンタ(M)の転写バイアスの調整で「+2」が設定された場合の転写バイアスの調整量は、調整対象の色であるマゼンタ(M)は、M=+600[V]、調整対象の色の転写ローラの上流側のイエロー(Y)は、Ym=+200[V]、調整対象の色の転写ローラの下流側のシアン(C)は、Cm=+200[V]である。
【0065】
ここで、調整対象の色の転写ローラの上流側の色の転写バイアスと下流側の色の転写バイアスの調整について説明する。普通紙においては、調整対象の色の転写ローラの転写バイアスを高くすると、調整対象の色の転写ローラの上流側の色のトナーが調整対象の色の転写ローラの転写ニップ部を通過する際の逆転写が増加するため、調整対象の色の転写ローラの上流側の色の濃度が薄くなるという現象が発生する。ここで、逆転写とは、転写ベルト50又は記録媒体上に、転写されたトナー画像が、その下流側の色の転写ニップ部を通過する際に感光ドラム側に転移する現象である。トナーには、帯電分布があり、正規帯電であるマイナス帯電トナーの中には逆極性に帯電したプラス帯電トナーがある程度存在しており、逆転写するトナーは、主に逆極性のプラス帯電トナーが感光ドラムに転移するために生じると考えられる。そのため、調整対象の色の転写ローラの転写バイアスを高くすると、調整対象の色の転写ローラの上流側の色のプラス帯電トナーが感光ドラムに転移しやすくなるため、逆転写が増加する。
【0066】
逆転写を低減させるためには、調整対象の色の転写ローラの上流側の色の転写バイアスを高くするという方法がある。高い転写バイアスで転写を行うと、転写ニップ部の近傍での放電が発生しやすくなりトナーの帯電量が高くなる。トナーは、正規帯電のマイナス方向に帯電が高くなるためトナーの帯電分布としては、マイナス側にシフトするため、プラス帯電トナーが少なくなり逆転写量が減ると考えられる。そのため、調整対象の色の転写ローラの上流側の色のトナーの逆転写を低減するために、調整対象の色の転写ローラの転写バイアスを高くするのに合わせて調整対象の色の転写ローラの上流側の色の転写バイアスも高くする。
【0067】
また、調整対象の色の転写ローラの転写バイアスを高くすることで、調整対象の色の転写ローラのトナーの下流側での逆転写が減少し、調整対象の色の濃度が高くなる。そのため、調整対象の色の濃度が高くなることを防ぐために、調整対象の色の転写ローラの下流側の色の転写バイアスを高くする。
【0068】
次に、コマンド/画像処理部92は、ユーザによって操作部95で予め設定された「転写バイアスの調整」メニューの各色の調整値を確認し、低抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブル103と転写バイアスの調整メニューの調整値(例えば、-2、-1、0、+1、+2のいずれか)から、各色の転写バイアス調整量を算出する(ステップS9)。
【0069】
なお、転写バイアスの調整メニューの調整が複数の色で行われた場合は、各テーブル値の調整値の和によって、各色の転写バイアス調整量が決定される。したがって、低抵抗印刷媒体の場合は、図6の低抵抗用の転写バイアスの調整量テーブル103を参照し、各色の転写バイアスの調整量ΔV(K)、ΔV(Y)、ΔV(M)、ΔV(C)は、以下の式(11)~(14)ように決定される。
ΔV(K)=K +Ky+Km+Kc …(11)
ΔV(Y)=Yk+Y +Ym+Yc …(12)
ΔV(M)=Mk+My+M +Mc …(13)
ΔV(C)=Ck+Cy+Cm+C …(14)
【0070】
そして、図8のフローチャートのステップS3で決定した転写バイアスV(K)、V(Y)、V(M)、V(C)とステップS9で決定した転写バイアスの調整量ΔV(K)、ΔV(Y)、ΔV(M)、ΔV(C)の和を計算する以下の式(15)~(18)で、転写バイアスV(K)、V(Y)、V(M)、V(C)を決定する(ステップS10)。
V(K)=V(K)+ΔV(K) …(15)
V(Y)=V(Y)+ΔV(Y) …(16)
V(M)=V(M)+ΔV(M) …(17)
V(C)=V(C)+ΔV(C) …(18)
【0071】
なお、高抵抗用の転写バイアスの調整量テーブル102と低抵抗用の転写バイアスの調整量テーブル103について、調整対象の色の転写ローラの転写バイアスを高くしたとき、変更する調整対象の色の転写ローラの上流側及び下流側の転写バイアス調整量は、実験結果に基づいて調整されている。
【0072】
「転写バイアスの調整」メニューの各色の設定値は、ユーザによって操作部95で予め設定された「転写バイアスの調整」メニューの各色の調整値を確認するとしたが、画像データの送信時にプリンタドライバ等から設定されてもよい。
【0073】
「印刷媒体の種類」メニューの設定から、高抵抗用の転写バイアスの調整量テーブル102と低抵抗用の転写バイアスの調整量テーブル103を選択するようにしたが、転写ニップ部に印刷媒体が通過するときに転写バイアスと転写電流値の情報から媒体の抵抗値情報を取得し、転写バイアスの調整量テーブルを選択するようにしてもよい。また、高抵抗用の転写バイアスの調整量テーブル102と低抵抗用の転写バイアスの調整量テーブル103は、2種類に限るものではなく、複数の転写バイアスの調整量テーブルを持つ構造としてもよい。
【0074】
《実施の形態の効果》
以上に説明したように、本実施の形態によれば、調整対象の色の転写ローラに印加される転写バイアスの絶対値を増加又は減少させたときに、調整対象の色の転写ローラの上流側の転写ローラの転写バイアスの絶対値を増加又は減少させている。
【0075】
具体的には、印刷媒体が高抵抗印刷媒体であるときに、調整対象の色の転写ローラの上流側の転写ローラの転写バイアスの絶対値を低くすることで、高抵抗印刷媒体において調整対象の色の転写ローラの転写バイアスの絶対値を高くした際の電圧不足を防ぐ効果が得られる。
【0076】
また、印刷媒体が低抵抗印刷媒体であるときに、調整対象の色の転写ローラの上流側の転写ローラの転写バイアスの絶対値を高くすることで、低抵抗印刷媒体において調整対象の色の転写ローラの転写バイアスの絶対値を高くした際の濃度低下を防ぐ効果が得られる。
【0077】
このように、調整対象の色の転写ローラの転写バイアスの絶対値を変更したときに、調整対象の色の転写ローラの上流側の転写ローラの転写バイアスの絶対値も合わせて適切に変更されるため、ユーザによる転写バイアスの調整が容易になるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0078】
1 画像形成装置、 20K、20Y、20M、20C 画像形成ユニット、 21K、21Y、21M、21C 帯電ローラ、 22K、22Y、22M、22C 感光ドラム(像担持体)、 23K、23Y、23M、23C 現像ローラ、 24K、24Y、24M、24C 現像ブレード、 25K、25Y、25M、25C 供給ローラ、 26K、26Y、26M、26C クリーニングブレード、 27K、27Y、27M、27C トナーカートリッジ、 30K、30Y、30M、30C LEDヘッド、 40K、40Y、40M、40C 転写ローラ(転写部)、 50 転写ベルト、 60 定着器、 90 制御部、 91 インタフェース部、 92 コマンド/画像処理部、 94 機構制御部、 94a メモリ、 101 転写バイアスの基本テーブル、 102 高抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブル、 103 低抵抗印刷媒体用の転写バイアスの調整量テーブル、 D1 搬送方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8