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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183564
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】紡績機
(51)【国際特許分類】
   D01H 1/36 20060101AFI20231221BHJP
   B65H 54/28 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
D01H1/36 C
B65H54/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097139
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】豊田 貴大
(72)【発明者】
【氏名】八木 宏幸
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA02
4L056AA18
4L056AA19
4L056BA05
4L056BC01
4L056BD12
4L056BE05
4L056BE09
4L056CA13
4L056CA70
4L056DA48
4L056FC06
(57)【要約】
【課題】接触ローラ及びそれを駆動するモータのメンテナンスコストを低減可能であり、モータの排熱性に優れ、かつ、適切な構成のベルト式のトラバース装置を備える紡績機を提供する。
【解決手段】紡績機は、紡績糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置を備える。巻取装置は、ベルト式のトラバース装置73と、接触ローラ72と、ローラ駆動モータ77と、を備える。トラバース装置73は、トラバースガイド67と、サーボモータ61と、ベルト64と、可動部材66と、ガイドレール65と、支持プレート60と、を備える。接触ローラ72の軸方向で見たときにおいて、接触ローラ72とパッケージの接点からトラバースガイド67までの距離が10mm以上15mm以下である。糸道に沿う方向で見たときに、接触ローラ72の面積の50%以上95%以下が支持プレート60と重なっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束をドラフトするドラフト装置と、
前記ドラフト装置から供給された繊維束を旋回空気流により紡績して糸を生成する空気紡績装置と、
糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、
糸走行方向において前記空気紡績装置と前記巻取装置との間に配置され、糸を一時的に貯留する糸貯留ローラと、
を備え、
前記巻取装置は、
ベルト式のトラバース装置と、
前記パッケージに接触して回転する接触ローラと、
前記接触ローラと同軸上であって、かつ、前記接触ローラの外側に配置され、前記接触ローラを回転駆動するローラ駆動モータと、
を備え、
前記トラバース装置は、
糸に接触して糸をトラバースするトラバースガイドと、
サーボモータと、
前記サーボモータにより駆動されるベルトと、
前記ベルト及び前記トラバースガイドに固定されて、前記ベルト及び前記トラバースガイドと一体的に移動する可動部材と、
前記ベルトの長手方向に沿って設けられ、前記可動部材を案内するガイドレールと、
少なくとも前記ガイドレールが取り付けられる支持プレートと、
を備え、
前記接触ローラの軸方向で見たときにおいて、前記接触ローラと前記パッケージの接点から前記トラバースガイドまでの距離が10mm以上15mm以下であり、
糸道に沿う方向で見たときに、前記接触ローラの面積の50%以上95%以下が前記支持プレートと重なっていることを特徴とする紡績機。
【請求項2】
請求項1に記載の紡績機であって、
前記ローラ駆動モータの外径が、前記接触ローラの外径よりも小さいことを特徴とする紡績機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の紡績機であって、
前記トラバースガイドのうち前記可動部材に接続される側を基端側とし、その反対側を先端側としたときに、
前記接触ローラの軸方向で見たときにおいて、前記トラバースガイドは、先端側に近づくにつれてサイズが小さくなる部分を含むことを特徴とする紡績機。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の紡績機であって、
少なくとも前記トラバース装置の前記サーボモータを制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記糸貯留ローラの貯留量、前記サーボモータの回転の検出結果、及び、前記接触ローラの回転の検出結果に基づいて、前記サーボモータを制御することを特徴とする紡績機。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の紡績機であって、
前記可動部材及び前記ガイドレールの一方は、第1突出部と、前記第1突出部とは突出方向が異なる第2突出部と、を備え、
前記可動部材及び前記ガイドレールの他方は、前記第1突出部を受ける第1溝と、前記第2突出部を受ける第2溝と、を備えることを特徴とする紡績機。
【請求項6】
請求項5に記載の紡績機であって、
前記第1突出部の突出方向と、前記第2突出部の突出方向と、が交わることを特徴とする紡績機。
【請求項7】
請求項6に記載の紡績機であって、
前記可動部材は、前記ベルトを挟み込むことにより固定していることを特徴とする紡績機。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の紡績機であって、
高さ方向において、前記巻取装置は、前記空気紡績装置よりも下方に配置されていることを特徴とする紡績機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、接触ローラを回転駆動して糸をパッケージに巻き取る紡績機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フリクションローラ(接触ローラ)を備える紡績機を開示する。フリクションローラは、パッケージに接触した状態でモータにより回転駆動される。これにより、パッケージを回転させて糸をパッケージに巻き取ることができる。フリクションローラは、固定軸と、固定軸に対してベアリングを介して取り付けられた回転部と、を備える。また、フリクションローラの内部にはモータのステータが配置されている。また、フリクションローラの回転部は、モータのロータとしても使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3-55954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、フリクションローラとモータが一体構成であるため、例えば、フリクションローラのみが破損した場合、又は、モータのみが破損した場合であっても、フリクションローラとモータの両方を交換する必要がある。その結果、メンテナンスコストが高くなることがあった。また、特許文献1では、フリクションローラの内部にモータの一部が配置されており、モータの熱が排出されにくいため、排熱の観点で改善の余地があった。
【0005】
また、紡績機は、糸をパッケージに巻き取る際に糸をトラバースさせるトラバース装置を備える。トラバース装置としては、ベルトを駆動してトラバースガイドを往復動させるベルト式が知られている。特許文献1は、ベルト式のトラバース装置の好ましい構成について開示していない。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、接触ローラ及びそれを駆動するモータのメンテナンスコストを低減可能であり、モータの排熱性に優れ、かつ、適切な構成のベルト式のトラバース装置を備える紡績機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の紡績機が提供される。即ち、紡績機は、ドラフト装置と、空気紡績装置と、巻取装置と、糸貯留ローラと、を備える。前記ドラフト装置は、繊維束をドラフトする。前記空気紡績装置は、前記ドラフト装置から供給された繊維束を旋回空気流により紡績して糸を生成する。前記巻取装置は、糸を巻き取ってパッケージを形成する。前記糸貯留ローラは、糸走行方向において前記空気紡績装置と前記巻取装置との間に配置され、糸を一時的に貯留する。前記巻取装置は、ベルト式のトラバース装置と、接触ローラと、ローラ駆動モータと、を備える。前記接触ローラは、前記パッケージに接触して回転する。前記ローラ駆動モータは、前記接触ローラと同軸上であって、かつ、前記接触ローラの外側に配置され、前記接触ローラを回転駆動する。前記トラバース装置は、トラバースガイドと、サーボモータと、ベルトと、可動部材と、ガイドレールと、支持プレートと、を備える。前記トラバースガイドは、糸に接触して糸をトラバースする。前記ベルトは、前記サーボモータにより駆動される。前記可動部材は、前記ベルト及び前記トラバースガイドに固定されて、前記ベルト及び前記トラバースガイドと一体的に移動する。前記ガイドレールは、前記ベルトの長手方向に沿って設けられ、前記可動部材を案内する。前記支持プレートは、少なくとも前記ガイドレールが取り付けられる。前記接触ローラの軸方向で見たときにおいて、前記接触ローラと前記パッケージの接点から前記トラバースガイドまでの距離が10mm以上15mm以下である。糸道に沿う方向で見たときに、前記接触ローラの面積の50%以上95%以下が前記支持プレートと重なっている。
【0009】
これにより、接触ローラの外側にローラ駆動モータが配置されるので、接触ローラとローラ駆動モータの何れか一方のみが破損したとしても、破損した何れか一方のみを簡単に交換できる。そのため、メンテナンスコストを低くすることができる。更に、接触ローラの内部にローラ駆動モータが配置される構成と比較して、ローラ駆動モータの熱が外部に放出され易い。また、接触ローラとパッケージの接点からトラバースガイドまでの距離が短いので、糸のフリーレングスを短くすることができ、形成するパッケージの品質を向上できる。また、接触ローラの広い範囲が支持プレートと重なっているので、支持プレートを用いて接触ローラを風綿等から十分に保護できる。
【0010】
前記の紡績機においては、前記ローラ駆動モータの外径が、前記接触ローラの外径よりも小さいことが好ましい。
【0011】
ローラ駆動モータの外径を接触ローラの外径よりも小さくすることにより、支持プレートを接触ローラの近くに配置し易い。その結果、接触ローラとパッケージの接点からトラバースガイドまでの距離が短くなるので、糸のフリーレングスを短くすることができる。その結果、形成するパッケージの品質を向上できる。
【0012】
前記の紡績機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記トラバースガイドのうち前記可動部材に接続される側を基端側とし、その反対側を先端側としたときに、前記接触ローラの軸方向で見たときにおいて、前記トラバースガイドは、先端側に近づくにつれてサイズが小さくなる部分を含む。
【0013】
これにより、トラバースガイドを接触ローラとパッケージの接点に近づけたとしても、トラバースガイドが接触ローラとパッケージに干渉しにくい。従って、糸のフリーレングスを短くすることができる。その結果、形成するパッケージの品質を向上できる。
【0014】
前記の紡績機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、紡績機は、少なくとも前記トラバース装置の前記サーボモータを制御する制御装置を備える。前記制御装置は、前記糸貯留ローラの貯留量、前記サーボモータの回転の検出結果、及び、前記接触ローラの回転の検出結果に基づいて、前記サーボモータを制御する。
【0015】
これにより、トラバース速度と巻取速度とを対応させたり、貯留量に応じて、トラバース速度及び巻取速度を変化させたりすることができる。その結果、紡績機が形成するパッケージの品質を向上できる。
【0016】
前記の紡績機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記可動部材及び前記ガイドレールの一方は、第1突出部と、前記第1突出部とは突出方向が異なる第2突出部と、を備える。前記可動部材及び前記ガイドレールの他方は、前記第1突出部を受ける第1溝と、前記第2突出部を受ける第2溝と、を備える。
【0017】
これにより、ガイドレールと可動部材の位置ズレが生じにくいので、トラバースガイドの位置ズレを軽減できる。その結果、トラバースガイドにより糸を正確にトラバースすることができ、パッケージの品質を向上できる。
【0018】
前記の紡績機においては、前記第1突出部の突出方向と、前記第2突出部の突出方向と、が交わることが好ましい。
【0019】
これにより、複数の方向において、ガイドレールと可動部材の位置ズレを回避できる。その結果、トラバースガイドにより糸を正確にトラバースすることができ、パッケージの品質を向上できる。
【0020】
前記の紡績機においては、前記可動部材は、前記ベルトを挟み込むことにより固定していることが好ましい。
【0021】
これにより、可動部材とベルトの位置ズレが生じにくいので、トラバースガイドの位置ズレを軽減できる。その結果、トラバースガイドにより糸を正確にトラバースすることができ、パッケージの品質を向上できる。また、挟み込む構成により可動部材を軽量化することができ、紡績機における消費電力を低減できる。更に、可動部材の軽量化により、トラバースガイドのトラバース端部での高速ターンを実現して、綾落ちを防止し、パッケージ端面の品質を向上できる。
【0022】
前記の紡績機においては、高さ方向において、前記巻取装置は、前記空気紡績装置よりも下方に配置されていることが好ましい。
【0023】
これにより、巻取装置が空気紡績装置よりも下方に配置される紡績機において、本発明の効果を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る紡績機の全体的な構成を示す正面図。
図2】紡績機における紡績ユニットを示す側面図。
図3】接触ローラ及びトラバース装置の斜視図。
図4】接触ローラ及びトラバース装置の側面図。
図5】接触ローラ及びローラ駆動モータの断面斜視図。
図6】接触ローラ及びトラバース装置を糸道に沿う方向で見た図。
図7】第1変形例の接触ローラ及びローラ駆動モータの断面斜視図。
図8】第2変形例の接触ローラ及びローラ駆動モータの断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係る紡績機(糸巻取機)1について、図面を参照して説明する。以下の説明において、「上流側」及び「下流側」とは、それぞれ、紡績糸(糸)5の巻取時における当該紡績糸5、スライバ4a又は繊維束4bの走行方向(糸走行方向)における上流側及び下流側を意味する。
【0026】
図1に示すように、紡績機1は、ブロアボックス111と、制御ボックス112と、複数の紡績ユニット2と、糸継台車90と、を備える。複数の紡績ユニット2は、所定の方向に並べて配置されている。各紡績ユニット2は、後述の空気紡績装置22等を用いて紡績を行う。本実施形態において、紡績機1は、空気紡績機である。
【0027】
ブロアボックス111内には、負圧源として機能するブロア113等が配置されている。
【0028】
制御ボックス112には、中央制御装置115と、表示部116と、操作部117と、が配置されている。
【0029】
中央制御装置115は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。図2に示すように、各紡績ユニット2は、ユニット制御部(制御装置)15を備える。中央制御装置115は、図略の信号線を介してユニット制御部15に接続されている。本実施形態では、それぞれの紡績ユニット2がユニット制御部15を備えているが、所定数(例えば、2つ又は4つ)の紡績ユニット2が1つのユニット制御部15を共用してもよい。
【0030】
表示部116は、紡績ユニット2に対する設定内容、及び/又は、各紡績ユニット2の状態に関する情報等を表示することができる。操作部117は、オペレータが紡績機1の設定を行うために、及び/又は、表示部116に表示する情報の選択を行うために操作される。表示部116と操作部117は、タッチパネルディスプレイにより構成されていてもよい。
【0031】
図2に示すように、各紡績ユニット2は、ドラフト装置21と、空気紡績装置22と、糸貯留装置23と、巻取装置25と、を備える。これらの装置は、紡績糸5等の走行方向において上流側から下流側へ向かって順に配置されている。図2に示すように、本実施形態では、高さ方向において、巻取装置25が空気紡績装置22よりも下方に配置されている。高さ方向とは、例えば、鉛直方向、紡績機1又は紡績ユニット2が立設する方向、又は、設置面に対して垂直な方向である。なお、本実施形態のレイアウトは一例であり、巻取装置25が空気紡績装置22と同じ高さか、空気紡績装置22よりも上方に配置されていてもよい。
【0032】
糸継台車90は、各紡績ユニット2に対して移動可能に設けられている。糸継台車90は、複数の紡績ユニット2に対して1つ備えられている。図1では1台の糸継台車90が図示されているが、紡績機1は、複数台の糸継台車90を備えていてもよい。
【0033】
ドラフト装置21は、複数のドラフトローラ対を備える。それぞれのドラフトローラ対は、2つのドラフトローラによって構成される。
【0034】
具体的には、ドラフト装置21は、4つのドラフトローラ対を備える。4つのドラフトローラ対は、上流側から下流側へ向かって順に配置された、バックローラ対41、サードローラ対42、ミドルローラ対43、及びフロントローラ対44である。ミドルローラ対43の各ドラフトローラには、エプロンベルト45が設けられている。
【0035】
4つのドラフトローラ対のそれぞれは、互いに対向する駆動ローラ及び従動ローラを有している。4つのドラフトローラ対に関して、それぞれの駆動ローラに、図略のモータ等の駆動源が設けられている。それぞれの駆動ローラは、駆動源によって当該駆動ローラの軸線を中心に回転駆動される。各ドラフトローラ対の従動ローラは、図略の軸受等を介して、当該従動ローラの軸線を中心に回転可能に設けられている。本実施形態では、紡績ユニット2毎に駆動ローラの駆動部が設けられる。そのため、ある紡績ユニット2のドラフトローラ対は、他の紡績ユニット2のドラフトローラ対に対して独立して動作可能である。なお、複数の紡績ユニット2のドラフトローラ対を共通の駆動部により駆動してもよい。あるいは、1つの紡績ユニット2において、例えば、バックローラ対41の駆動ローラと、サードローラ対42の駆動ローラとは、1つのモータにより駆動されてもよい。
【0036】
ドラフト装置21は、スライバ供給部20から供給されるスライバ4aを、各ドラフトローラ対のドラフトローラ同士の間(駆動ローラと従動ローラとの間)で挟み込んで搬送する。この過程で、スライバ4aが引き延ばされて繊維束4bとなる。ドラフト装置21は、繊維束4bが所定の繊維量となるまで引き延した後に、空気紡績装置22に繊維束4bを供給する。
【0037】
スライバ供給部20は、ドラフト装置21よりも上流側に配置されている。スライバ供給部20には、スライバ4aが収容される容器であるケンスが配置される。
【0038】
空気紡績装置22は、ドラフト装置21により生成された繊維束4b(ドラフトされたスライバ4a)に旋回空気流を作用させることにより、撚りを加えて紡績糸5を生成する。空気紡績装置22は、ドラフト装置21よりも下流側に配置されている。
【0039】
紡績ユニット2(紡績機1)において、空気紡績装置22からなる給糸装置は、紡績糸5を供給する。給糸装置によって供給された紡績糸5は、給糸装置から巻取装置25に向かって走行し、巻取装置25によって巻き取られる。給糸装置と巻取装置25との間には、紡績糸5が走行する糸経路が形成される。
【0040】
糸貯留装置23は、空気紡績装置22により生成された紡績糸5を空気紡績装置22から引き出して、引き出した紡績糸5を一時的に貯留する。糸貯留装置23は、給糸装置と巻取装置25との間に形成される糸経路の途中に配置されている。具体的には、糸貯留装置23は、空気紡績装置22よりも下流側に配置されている。
【0041】
糸貯留装置23は、糸貯留ローラ51と、電動モータ52と、糸掛け部材53と、ガイド54と、貯留量センサ56と、を備える。
【0042】
糸貯留ローラ51は、電動モータ52により回転駆動される。糸貯留ローラ51は、その外周面に紡績糸5を巻き付けて一時的に貯留する。糸貯留ローラ51は、外周面に紡績糸5を巻き付けた状態で所定の回転速度で回転することによって、空気紡績装置22から紡績糸5を所定の速度で引き出すことができる。
【0043】
糸掛け部材53は、紡績糸5を引っ掛けることができる。糸掛け部材53は、紡績糸5を引っ掛けた状態で糸貯留ローラ51と一体的に回転することにより、当該糸貯留ローラ51の外周面に紡績糸5を案内する。
【0044】
ガイド54は、糸貯留ローラ51よりも下流側に配置されている。ガイド54は、回転する糸掛け部材53によって振り回される紡績糸5の軌道を規制し、紡績糸5が走行する糸経路のうち当該ガイド54よりも下流側(巻取装置25側)の糸経路を安定させて紡績糸5を案内する。
【0045】
貯留量センサ56は、糸貯留ローラ51の糸貯留量を検知することができる。貯留量センサ56は、糸貯留ローラ51の外周面の適宜の位置に対向するように配置されている。貯留量センサ56は、この位置における紡績糸5の有無を検出する。貯留量センサ56は、検出した検出信号をユニット制御部15へ送信する。ユニット制御部15は、この検出信号に基づいて、糸貯留量が所定量以上であるか否かを検知することができる。
【0046】
糸貯留装置23は、糸貯留ローラ51の外周面に紡績糸5を一時的に貯留することができるので、紡績糸5の一種のバッファとして機能する。これにより、空気紡績装置22における紡績速度と、巻取速度(後述のパッケージ7に巻き取られる紡績糸5の走行速度)と、が何らかの理由により一致しないことによる不具合(例えば、紡績糸5の弛み等)を解消することができる。
【0047】
空気紡績装置22と糸貯留装置23との間には、糸監視装置47が設けられている。糸監視装置47は、糸貯留装置23よりも上流側(給糸装置側)で紡績糸5の状態を検知する。空気紡績装置22により生成された紡績糸5は、糸貯留装置23により貯留される前に糸監視装置47を通過する。
【0048】
糸監視装置47は、走行する紡績糸5の品質を光センサによって監視し、紡績糸5に含まれる糸欠陥を検出する。糸欠陥としては、例えば、紡績糸5の太さの異常、及び/又は、紡績糸5に含まれる異物等がある。糸監視装置47は、紡績糸5の糸欠陥を検出した場合、ユニット制御部15へ糸欠陥検出信号を送信する。糸監視装置47は、光センサの代わりに、例えば静電容量式のセンサを用いて紡績糸5の品質を監視してもよい。糸監視装置47は、これらの糸欠陥に代えて、或いは、これらの糸欠陥に加えて、紡績糸5のテンションの異常を検出するように構成されていてもよい。
【0049】
糸品質を維持するために、糸欠陥及び異常箇所を除去することが好ましい。ユニット制御部15は、糸監視装置47の検出結果に基づいて、紡績糸5を切断するか否かを判断する。紡績糸5の切断は、ユニット制御部15が、空気紡績装置22による紡績を停止するように制御することによって実現される。紡績糸5の切断は、ドラフト装置21によるドラフト(例えば、バックローラ対41の回転)を停止することによって実現されてもよい。ドラフト装置21から空気紡績装置22への繊維束4bの供給が停止される場合でも、空気紡績装置22による紡績は実質的に中断されることになる。紡績ユニット2にカッタを設け、ユニット制御部15がカッタにより紡績糸5の切断を行ってもよい。カッタによって紡績糸5が切断される場合でも、ユニット制御部15は、空気紡績装置22による紡績が実質的に中断するように制御する。
【0050】
巻取装置25は、糸貯留装置23を通過した紡績糸5を巻き取ってパッケージ7を形成する。巻取装置25は、糸貯留装置23よりも下流側に配置されている。巻取装置25は、クレードル71と、接触ローラ72と、トラバース装置73と、クレードルアーム74と、を備える。
【0051】
クレードル71は、1対のクレードルアーム74を備える。クレードル71は、紡績糸5を巻き取るためのボビン7a(ひいてはパッケージ7)を、1対のクレードルアーム74の間で回転可能に支持することができる。
【0052】
接触ローラ72は、ボビン7a又はパッケージ7の外周面に接触する。接触ローラ72は、後述する駆動部(ローラ駆動モータ77)により回転駆動される。トラバース装置73は、パッケージ7に巻き取られる紡績糸5に作用して、紡績糸5をパッケージ7の巻幅方向(パッケージ7の軸方向)に往復動させることができる。これにより、巻取装置25は、紡績糸5をトラバースしつつ、紡績糸5をパッケージ7に巻き取る。
【0053】
図1に示すように、紡績機1には、レール101が設けられている。レール101は、複数の紡績ユニット2が並ぶ方向に沿って延びるように配置されている。糸継台車90は、レール101の上を走行可能に構成されている。これにより、糸継台車90は、複数の紡績ユニット2に対して移動することができる。糸継台車90は、紡績糸5の分断が発生した紡績ユニット2に対応する作業位置まで走行して、当該紡績ユニット2において糸継処理を行う。
【0054】
糸継台車90は、走行車輪91と、糸継装置92と、サクションパイプ93と、サクションマウス94と、を備える。
【0055】
走行車輪91は、図略の駆動手段(例えばモータ)によって回転駆動可能に構成されている。走行車輪91が駆動されることによって、糸継台車90が複数の紡績ユニット2のそれぞれに対して走行することができる。
【0056】
サクションパイプ93は、パイプ状の部分を有する部材である。サクションパイプ93の先端には開口が形成されている。サクションパイプ93は、その先端に吸引空気流を発生させることができる。紡績糸5に分断が発生した後、サクションパイプ93は、空気紡績装置22に接近した位置で、空気紡績装置22側の紡績糸5を吸い込むことにより捕捉し、糸継装置92まで紡績糸5を案内することができる。
【0057】
サクションマウス94は、パイプ状の部分を有する部材である。サクションマウス94の先端には開口が形成されている。サクションマウス94は、その先端に吸引空気流を発生させることができる。紡績糸5に分断が発生した後、サクションマウス94は、巻取装置25に接近した位置で、巻取装置25側(パッケージ7側)の紡績糸5を先端から吸い込むことにより捕捉し、糸継装置92まで紡績糸5を案内することができる。
【0058】
糸継装置92は、紡績糸5の分断の発生後に、サクションパイプ93によって捕捉された空気紡績装置22側の紡績糸5と、サクションマウス94により捕捉されたパッケージ7側の紡績糸5と、の糸継ぎを行う。本実施形態において、糸継装置92は、旋回空気流により糸端同士を撚り合わせるスプライサ装置である。糸継装置92は、前記のスプライサ装置に限定せず、例えば機械式のノッタ等とすることもできる。
【0059】
次に、図3から図6を参照して、巻取装置25の詳細、特にトラバース装置73及び接触ローラ72について詳細に説明する。
【0060】
図3に示すように、トラバース装置73は、支持プレート60を備える。支持プレート60は、紡績ユニット2のフレーム等に支持されている。支持プレート60は、トラバース装置73を構成する各部品の支持及び取付けのための板状の部材である。
【0061】
支持プレート60には、サーボモータ61が取り付けられている。サーボモータ61は、支持プレート60の下側(第1側、糸道の下流側)の面に配置されている。サーボモータ61の出力軸は支持プレート60を貫通している。サーボモータ61の出力軸の方向は、支持プレート60の厚み方向と平行であり、かつ、接触ローラ72の軸方向と垂直である。サーボモータ61の出力軸には、駆動プーリ62が固定されている。駆動プーリ62は、サーボモータ61によって回転駆動される。サーボモータ61の出力軸又はその他の回転部分には、図略のエンコーダが取り付けられている。エンコーダは、サーボモータ61の回転の検出結果をユニット制御部15に出力する。
【0062】
支持プレート60の上側の面には、駆動プーリ62に加え、2つの従動プーリ63が配置されている。2つの従動プーリ63は、接触ローラ72の軸方向に並べて配置されている。駆動プーリ62及び2つの従動プーリ63にはベルト64が巻き掛けられている。ベルト64のうち、2つの従動プーリ63の間に位置する部分は、接触ローラ72の軸方向に平行である。サーボモータ61を駆動させて駆動プーリ62を回転させることにより、ベルト64を送ることができる。
【0063】
支持プレート60には、更に、ガイドレール65及び可動部材66が配置されている。ガイドレール65は、2つの従動プーリ63の間に配置されている。ガイドレール65は、ベルト64の長手方向に沿うように、かつ、少なくともトラバース範囲にわたって形成されている。ガイドレール65は、可動部材66の姿勢を安定させてスライドさせるための部材である。図4に示すように、ガイドレール65には、第1溝65aと、第2溝65bと、が形成されている。第1溝65aの深さ方向は、支持プレート60の表面に沿う方向、別の観点で言えばサーボモータ61に近づく方向である。第2溝65bの深さ方向は、支持プレート60の表面(上側の面)に直交する方向であり、更に詳細には支持プレート60に近づく方向である。第1溝65aの深さ方向と、第2溝65bの深さ方向と、は直交する。
【0064】
可動部材66は、接着剤又は固定具等によりベルト64に固定されている。これにより、ベルト64を送ることにより、ベルト64の経路に沿って可動部材66を移動させることができる。図4に示すように、可動部材66は、第1突出部66aと、第2突出部66bと、クランプ部66cと、アーム部66dと、を備える。
【0065】
第1突出部66aは、第1溝65aの深さ方向と同じ方向に突出する。第2突出部66bは、第2溝65bの深さ方向と同じ方向に突出する。第1突出部66aが第1溝65aに入り込んでおり、第2突出部66bが第2溝65bに入り込んでいる。従って、第1突出部66aの突出方向と、第2突出部66bの突出方向と、が直交している。この構成により、ガイドレール65に対して可動部材66の位置ズレが発生しにくい。第1突出部66aの突出方向と、第2突出部66bの突出方向と、は直交している代わりに、所定の角度範囲で交わっていればよい。
【0066】
クランプ部66cは、接触ローラ72の軸方向に沿ってみた場合、可動部材66のうち略U字状の部分である。クランプ部66cの略U字状部分は、支持プレート60側が開放されている。クランプ部66cは、ベルト64を厚み方向で挟み込むことにより、ベルト64を保持する。クランプ部66cは、ベルト64を保持可能であれば略U字状とは異なる形状であってもよい。例えば、クランプ部66cは、更にベルト64の支持プレート60側を覆うことによりベルト64の全周を覆う形状であってもよい。
【0067】
アーム部66dは、ガイドレール65に取り付けられている部分から、接触ローラ72及びパッケージ7の接点P1に向けて延びる部分である。
【0068】
ここで説明したガイドレール65及び可動部材66は、一例であり、変更可能である。例えば、ガイドレール65に突出部が形成され、可動部材66に溝が形成されてもよい。また、第1溝65aと第2溝65bが直交しなくてもよい。また、第1溝65aと第1突出部66aのうち一方を省略してもよい。クランプ部66cに代えて、ベルト64を挟み込まずにベルト64を保持する部分を可動部材66に設けてもよい。
【0069】
可動部材66のアーム部66dには、トラバースガイド67が取り付けられている。可動部材66がベルト64とともに移動することにより、トラバースガイド67は巻幅方向(トラバース方向)に往復動する。トラバースガイド67は、紡績糸5の巻幅方向の位置を規制する壁部を有する。以上により、トラバースガイド67が巻幅方向に往復動することにより、紡績糸5をトラバースさせることができる。
【0070】
以下、主に図3及び図5を参照して、接触ローラ72について説明する。本実施形態の接触ローラ72は、ローラ本体部72aと、ゴムバンド72bと、を備える。
【0071】
ローラ本体部72aの外周面には、段差が形成されておらず、フラット形状である。段差とは、例えば、ローラ本体部72aの周方向に沿って形成された溝等である。ローラ本体部72aはフラット形状であるため、ローラ本体部72aの軸方向において、ローラ本体部72aのうちパッケージ7と接触する部分は何れも直径が等しい円形である。これにより、溝等の縁とパッケージ7の接触によるパッケージ7の品質低下を回避できる。更に、溝等に風綿が堆積することも回避できる。なお、後述するように、ローラ本体部72aに溝が形成されていてもよい。
【0072】
ローラ本体部72aの外周面には、ゴムバンド72bが取り付けられている。ローラ本体部72aの外周面はフラット形状であるため、ゴムバンド72bが取り付けられた部分は、他の部分と比較して直径が大きい。そのため、接触ローラ72とパッケージ7は、ゴムバンド72bが取り付けられた箇所において強い摩擦力を及ぼし合う。これにより、接触ローラ72の回転駆動力を適切にパッケージ7に伝達することができる。更に、パッケージ7の外周面のうち、ゴムバンド72b以外に接触する部分へのダメージを軽減できる。
【0073】
接触ローラ72と同軸上であって、かつ、接触ローラ72の外側には、ローラ駆動モータ77が設けられている。ローラ駆動モータ77は、接触ローラ72を回転駆動する。ローラ駆動モータ77の出力軸又はその他の回転部分には、図略のエンコーダが取り付けられている。エンコーダは、ローラ駆動モータ77(接触ローラ72)の回転の検出結果をユニット制御部15に出力する。図5に示すように、ローラ駆動モータ77は、モータハウジング81と、コイル82と、マグネット83と、モータシャフト84と、を備える。
【0074】
モータハウジング81は、ローラ駆動モータ77が備える各部を収容するケース又はカバーである。コイル82及びマグネット83は、一方が固定子であり、他方が回転子である。本実施形態では、コイル82の径方向の外側にマグネット83が配置されている。コイル82には向き及び大きさが変化する電流が供給される。これにより、固定子に対して回転子を回転させることができる。また、回転子はモータシャフト84に固定されている。この構成により、ローラ駆動モータ77に電流を供給することにより、モータシャフト84を回転させることができる。
【0075】
モータシャフト84に駆動力が伝達されることにより、接触ローラ72が回転駆動される。具体的には、接触ローラ72の内部には、回転軸86と、動力伝達部87と、ベアリング88と、固定部材89と、が配置されている。
【0076】
回転軸86は、接触ローラ72の軸位置に設けられている。回転軸86はモータシャフト84に固定されている。モータシャフト84と回転軸86は、一体的に回転する。動力伝達部87は、接触ローラ72の軸方向において、ローラ駆動モータ77の反対側の端部に配置されている。動力伝達部87は、回転軸86及び接触ローラ72に固定されている。回転軸86、動力伝達部87、及び接触ローラ72は、一体的に回転する。以上のようにして、ローラ駆動モータ77は接触ローラ72を回転駆動する。
【0077】
また、モータハウジング81及び接触ローラ72の内部には、モータシャフト84等に対して相対回転可能に構成される固定部材89が配置されている。つまり、モータシャフト84等が回転しても固定部材89は回転しない。ローラ駆動モータ77と接触ローラ72の間において、固定部材89はローラ支持部78に取り付けられている。ローラ支持部78は、紡績機1のフレーム等に支持されている。この構成により、接触ローラ72及びローラ駆動モータ77が支持される。なお、ローラ支持部78は接触ローラ72の軸方向の一端のみに配置されている。言い換えれば、接触ローラ72は片持ち支持される。
【0078】
本実施形態の紡績機1では、特許文献1とは異なり、接触ローラ72とローラ駆動モータ77が別体である。そのため、接触ローラ72とローラ駆動モータ77の何れか一方が破損した場合、破損した一方だけを交換することができる。また、ローラ駆動モータ77が接触ローラ72の外部に露出しているので、接触ローラ72の内部に配置されている構成と比較して、ローラ駆動モータ77の放熱性を高くすることができる。
【0079】
ユニット制御部15は、貯留量センサ56による糸貯留ローラ51の貯留量の検出結果、前記サーボモータ61のエンコーダによる回転の検出結果、及び、ローラ駆動モータ77のエンコーダによる回転の検出結果に基づいて、サーボモータ61を制御する。ユニット制御部15は、例えば図略のモータドライバに指令を送信することにより、サーボモータ61を制御する。
【0080】
ユニット制御部15は、例えば以下のようにサーボモータ61を制御する。即ち、紡績糸5を巻き取る速度(巻取速度)と、トラバース速度(トラバースガイド67を往復動させる速度)と、は同期させることが好ましい。従って、ユニット制御部15は、巻取速度が変化した場合、その変化に合わせてトラバース速度が変化するように、サーボモータ61を制御する。また、糸貯留ローラ51の貯留量が少ない場合は、巻取速度を遅くして、貯留量を増やす必要がある。そのため、例えば、貯留量センサ56により紡績糸5が検出されない場合、巻取速度を低下させるとともに、サーボモータ61の回転速度を低下させる。なお、この制御は一例であり、様々な設定やセンサの検出結果等に応じて、異なる制御を行ってもよい。
【0081】
次に、主に図4及び図7を参照して、フリーレングスL1を短くするための構成と、可動部材66のアーム部66dを短くするための構成について説明する。
【0082】
図4(接触ローラ72の軸方向で見た図)に示すように、フリーレングスL1とは、トラバースガイド67から、接触ローラ72及びパッケージ7の接点P1までの長さである。フリーレングスL1を短くすることにより、パッケージ7に巻き取られる紡績糸5の挙動を安定させることができる。
【0083】
初めに、トラバースガイド67の形状に起因してフリーレングスL1が短くなることについて説明する。以下では、トラバースガイド67のうち、可動部材66に接続される側を基端側とし、その反対側を先端側とする。図4に示すように、トラバースガイド67は、先端側に近づくにつれてサイズが小さくなる部分を含む。サイズとは、長手方向(基端と先端を結ぶ方向)に垂直な方向の長さである。つまり、トラバースガイド67は先細り形状である。
【0084】
本実施形態ではトラバースガイド67が先細り形状であるため、トラバースガイド67を接点P1に近づけた場合においても、トラバースガイド67が接触ローラ72又はパッケージ7と干渉しにくい。その結果、図4に示すフリーレングスL1を短くすることができる。
【0085】
次に、ローラ駆動モータ77の大きさに起因してフリーレングスL1が短くなることについて説明する。本実施形態のローラ駆動モータ77の外径(即ちモータハウジング81の外径)は、接触ローラ72の外径よりも小さい。仮に、ローラ駆動モータ77の外径が接触ローラ72の外径よりも大きい場合は、ローラ駆動モータ77と支持プレート60の干渉を避けるために、支持プレート60を接触ローラ72から遠い位置に配置せざるを得ない場合がある。
【0086】
本構成のように、ローラ駆動モータ77の外径を接触ローラ72の外径よりも小さくすることにより、支持プレート60を接触ローラ72の近くに配置したとしても、支持プレート60と接触ローラ72との干渉が生じにくい。その結果、接触ローラ72とパッケージ7の接点P1からトラバースガイド67までの距離が短くなるので、紡績糸5のフリーレングスL1を短くすることができる。
【0087】
更に、支持プレート60を接触ローラ72の近くに配置した結果、可動部材66のアーム部66dの長さを短くすることができる。そのため、トラバースガイド67を往復動させた際のトラバースガイド67の慣性力を軽減できるので、トラバースガイド67を高速で動かすことが容易となる。
【0088】
次に、巻取装置25の駆動部が紡績ユニット2毎に設けられることに起因してフリーレングスL1が短くなることについて説明する。
【0089】
従来から、複数の紡績ユニット2の巻取装置25に共通の駆動部を設けた構成が知られている。少なくとも1つの紡績ユニット2において巻取りが行われる場合は、共通の駆動部を回転させ続ける必要がある。そのため、パッケージ7を回転させる必要がない場合は、パッケージ7を接触ローラ72から離間させる必要がある。例えば、クレードルアーム74を支点を中心に回転させることにより、パッケージ7を接触ローラ72から離間させることができる。しかし、この離間させる動作を安定して行わせるためには、パッケージ7とトラバースガイド67との間の距離を長くする必要がある。その結果、フリーレングスL1が長くなり易い。
【0090】
一方、本実施形態では紡績ユニット2毎にローラ駆動モータ77が設けられる。従って、パッケージ7を回転させる必要がない場合は、ローラ駆動モータ77の回転を停止させればよい。そのため、パッケージ7から接触ローラ72を離間させることが不要又は頻度が低い。そのため、パッケージ7とトラバースガイド67との間の距離を長くする必要がない。その結果、本実施形態では、フリーレングスL1を短くすることができる。
【0091】
以上により、本実施形態では、フリーレングスL1を短くすることができる。具体的には、本実施形態のフリーレングスL1は、10mm以上15mm以下である。
【0092】
次に、図6を参照して、支持プレート60と接触ローラ72の位置関係について説明する。
【0093】
図6に示すように、糸道の方向で見たときに、支持プレート60は、接触ローラ72の大部分を覆っている。詳細には、糸道の方向で見たときに、接触ローラ72の面積の50%以上95%以下を支持プレート60が覆うことが好ましく、接触ローラ72の面積の60%以上80%以下を支持プレート60が覆うことが更に好ましい。
【0094】
接触ローラ72の大部分が支持プレート60に覆われることにより、接触ローラ72及びトラバース装置73の近傍にある風綿が接触ローラ72に付着せずに支持プレート60上に堆積し易い。更に、本実施形態の接触ローラ72には溝等が形成されていないので、接触ローラ72に風綿が接触しても風綿が堆積しにくい。以上により、接触ローラ72に風綿が堆積しにくいので、接触ローラ72の清掃の頻度を低下させることができる。なお、接触ローラ72よりも上方にワキシング装置等が配置される場合は、ワキシング装置から落下したワックスは接触ローラ72ではなく支持プレート60により受け止められる可能性が高い。従って、ワックスからも接触ローラ72を保護できる。
【0095】
次に、図7を参照して、第1変形例について説明する。なお、以後の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0096】
第1変形例は、回転軸86と接触ローラ72との固定方法が上記実施形態とは異なる。第1変形例では、動力伝達部87を介さずに直接的に回転軸86と接触ローラ72が固定具により固定されている。固定具としては、頭部がないタイプのネジを用いることができる。また、第1変形例では、回転軸86の軸方向の中央を含む位置で、回転軸86と接触ローラ72が固定されている。
【0097】
更に、第1変形例では、接触ローラ72は両持ちである。具体的には、接触ローラ72のローラ駆動モータ77側は、上記実施形態と同様、固定部材89及びローラ支持部78によって支持されている。接触ローラ72のローラ駆動モータ77とは反対側の端部には、回転軸86にベアリング88が設けられている。ベアリング88は、ローラ支持部78によって支持されている。以上により、第1変形例では、接触ローラ72が両持ちで支持されている。
【0098】
次に、図8を参照して、第2変形例について説明する。
【0099】
第2変形例では、モータシャフト84に代えて、回転部材122がローラ駆動モータ77に対して設けられている。回転部材122は、筒状の部分を有する構成である。回転部材122は、連結部材123を介して、接触ローラ72に固定されている。この構成により、ローラ駆動モータ77は接触ローラ72を回転駆動する。
【0100】
また、ローラ駆動モータ77及び接触ローラ72のそれぞれの軸中心に沿って、固定軸121が設けられている。固定軸121は、例えば、ローラ支持部78に回転不能に固定されている。固定軸121には、ベアリング88を介して、回転部材122が取り付けられている。更に、固定軸121には、別のベアリング88を介して、接触ローラ72が取り付けられている。従って、回転部材122及び接触ローラ72が回転しても対して固定軸121は回転しない。接触ローラ72及びローラ駆動モータ77は、固定軸121を介してローラ支持部78に両持ちで支持されている。
【0101】
上述した、実施形態、第1変形例、及び第2変形例は適宜組み合わせることもできる。例えば、第1変形例及び第2変形例において、接触ローラ72を片持ちで支持してもよい。
【0102】
以上に説明したように、本実施形態の紡績機1は、ドラフト装置21と、空気紡績装置22と、巻取装置25と、糸貯留ローラ51と、を備える。ドラフト装置21は、繊維束4bをドラフトする。空気紡績装置22は、ドラフト装置21から供給された繊維束4bを旋回空気流により紡績して紡績糸5を生成する。巻取装置25は、紡績糸5を巻き取ってパッケージ7を形成する。糸貯留ローラ51は、糸走行方向において空気紡績装置22と巻取装置25との間に配置され、紡績糸5を一時的に貯留する。巻取装置25は、ベルト式のトラバース装置73と、接触ローラ72と、ローラ駆動モータ77と、を備える。接触ローラ72は、パッケージ7に接触して回転する。ローラ駆動モータ77は、接触ローラ72と同軸上であって、かつ、接触ローラ72の外側に配置され、接触ローラ72を回転駆動する。トラバース装置73は、トラバースガイド67と、サーボモータ61と、ベルト64と、可動部材66と、ガイドレール65と、支持プレート60と、を備える。トラバースガイド67は、紡績糸5に接触して紡績糸5をトラバースする。ベルト64は、サーボモータ61により駆動される。可動部材66は、ベルト64及びトラバースガイド67に固定されて、ベルト64及びトラバースガイド67と一体的に移動する。ガイドレール65は、ベルト64の長手方向に沿って設けられ、可動部材66を案内する。支持プレート60には、少なくともガイドレール65が取り付けられる。接触ローラ72の軸方向で見たときにおいて、接触ローラ72とパッケージ7の接点P1からトラバースガイド67までの距離が10mm以上15mm以下である。糸道に沿う方向で見たときに、接触ローラ72の面積の50%以上95%以下が支持プレート60と重なっている。
【0103】
これにより、接触ローラ72の外側にローラ駆動モータ77が配置されるので、接触ローラ72とローラ駆動モータ77の何れか一方のみが破損したとしても、破損した何れか一方のみを簡単に交換できる。そのため、メンテナンスコストを低くすることができる。更に、接触ローラ72の内部にローラ駆動モータ77が配置される構成と比較して、ローラ駆動モータ77の熱が外部に放出され易い。また、接触ローラ72とパッケージ7の接点からトラバースガイド67までの距離が短いので、紡績糸5のフリーレングスL1を短くすることがで、形成するパッケージ7の品質を向上できる。また、接触ローラ72の広い範囲が支持プレート60と重なっているので、支持プレート60を用いて接触ローラ72を風綿等から十分に保護できる。
【0104】
本実施形態の紡績機1において、ローラ駆動モータ77の外径が、接触ローラ72の外径よりも小さい。
【0105】
ローラ駆動モータ77の外径を接触ローラ72の外径よりも小さくすることにより、支持プレート60を接触ローラ72の近くに配置し易い。その結果、接触ローラ72とパッケージ7の接点P1からトラバースガイド67までの距離が短くなるので、紡績糸5のフリーレングスL1を短くすることができる。その結果、形成するパッケージ7の品質を向上できる。
【0106】
本実施形態の紡績機1において、トラバースガイド67のうち可動部材66に接続される側を基端側とし、その反対側を先端側としたときに、接触ローラ72の軸方向で見たときにおいて、トラバースガイド67は、先端側に近づくにつれてサイズが小さくなる部分を含む。
【0107】
これにより、トラバースガイド67を接触ローラ72とパッケージ7の接点P1に近づけたとしても、トラバースガイド67が接触ローラ72とパッケージ7に干渉しにくい。従って、紡績糸5のフリーレングスL1を短くすることができる。その結果、形成するパッケージ7の品質を向上できる。
【0108】
本実施形態の紡績機1は、少なくともトラバース装置73のサーボモータ61を制御するユニット制御部15を備える。ユニット制御部15は、糸貯留ローラ51の貯留量、サーボモータ61の回転の検出結果、及び、接触ローラ72の回転の検出結果に基づいて、サーボモータ61を制御する。
【0109】
これにより、トラバース速度と巻取速度とを対応させたり、貯留量に応じて、トラバース速度及び巻取速度を変化させたりすることができる。その結果、紡績機1が形成するパッケージ7の品質を向上できる。
【0110】
本実施形態の紡績機1において、可動部材66及びガイドレール65の一方は、第1突出部66aと、第1突出部66aとは突出方向が異なる第2突出部66bと、を備える。可動部材66及びガイドレール65の他方は、第1突出部66aを受ける第1溝65aと、第2突出部66bを受ける第2溝65bと、を備える。
【0111】
これにより、ガイドレール65と可動部材66の位置ズレが生じにくいので、トラバースガイド67の位置ズレを軽減できる。その結果、トラバースガイド67により紡績糸5を正確にトラバースすることができ、パッケージ7の品質を向上できる。
【0112】
本実施形態の紡績機1において、第1突出部66aの突出方向と、第2突出部66bの突出方向と、が交わる。
【0113】
これにより、複数の方向において、ガイドレール65と可動部材66の位置ズレを回避できる。その結果、トラバースガイド67により紡績糸5を正確にトラバースすることができ、パッケージ7の品質を向上できる。
【0114】
本実施形態の紡績機1において、可動部材66は、ベルト64を挟み込むことにより固定している。
【0115】
これにより、可動部材66とベルト64の位置ズレが生じにくいので、トラバースガイド67の位置ズレを軽減できる。その結果、トラバースガイド67により紡績糸5を正確にトラバースすることができ、パッケージ7の品質を向上できる。また、挟み込む構成により可動部材66を軽量化することができ、紡績機1における消費電力を低減できる。更に、可動部材66の軽量化により、トラバースガイド67のトラバース端部での高速ターンを実現して、綾落ちを防止し、パッケージ7の端面の品質を向上できる。
【0116】
本実施形態の紡績機1において、高さ方向において、巻取装置25は、空気紡績装置22よりも下方に配置されている。
【0117】
これにより、巻取装置25が空気紡績装置22よりも下方に配置される紡績機において、本実施形態の効果を発揮させることができる。
【0118】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0119】
紡績機1はサクションマウス94を備えるが、サクションマウス94に代えて又は加えて、糸道の近傍に配置される固定型の吸引捕捉装置を設けてもよい。吸引捕捉装置は、例えば、糸貯留装置23より下流であって巻取装置25より上流に配置される。
【0120】
上記実施形態でユニット制御部15が行う制御の一部を中央制御装置115又は別の制御装置が行ってもよい。
【0121】
糸貯留ローラ51に代えて、デリベリローラ対により紡績糸5を空気紡績装置22から引き出してもよい。この場合、デリベリローラ対よりも下流に、糸貯留装置23と、スラックチューブと、機械式コンペンセータの少なくとも何れか1つを設けてもよい。
【0122】
糸継台車90を省略し、各紡績ユニット2が糸継ぎに必要な装置を備えていてもよい。
【0123】
2つの従動プーリ63のうち、1つの従動プーリ63を省略し、その位置に駆動プーリ62を配置してもよい。
【0124】
支持プレート60の上側の面に配置される各部材を覆うように、カバー部材を設けてもよい。
【0125】
上記実施形態では、ローラ本体部72aにゴムバンド72bを取り付けることにより、接触ローラ72の軸方向中央部の外周面の摩擦係数が他の部分よりも高くなるように構成されている。ただし、ゴムバンド72bは必須の構成要素ではなく省略することができる。この場合、例えば、接触ローラ72の軸方向中央部の外周面のみ、表面状態を変えることにより、摩擦係数を高くしてもよい。具体的には、接触ローラ72の軸方向中央部の外周面が、荒らした表面として構成されていてもよい。あるいは、接触ローラ72は、高摩擦部分を備えずに、外周面全体にわたって均一に構成されていてもよい。例えば、接触ローラ72は全体としてフラットな表面を有するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0126】
1 紡績機
21 ドラフト装置
22 空気紡績装置
23 糸貯留装置
25 巻取装置
51 糸貯留ローラ
60 支持プレート
61 サーボモータ
62 駆動プーリ
63 従動プーリ
64 ベルト
65 ガイドレール
66 可動部材
67 トラバースガイド
72 接触ローラ
73 トラバース装置
77 ローラ駆動モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8