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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183567
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】押さえローラー
(51)【国際特許分類】
   F16C 13/02 20060101AFI20231221BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
F16C13/02
F16C33/76 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097144
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】申 浩男
【テーマコード(参考)】
3J103
3J216
【Fターム(参考)】
3J103AA02
3J103AA12
3J103AA23
3J103AA37
3J103DA05
3J103FA22
3J103FA26
3J103GA02
3J216AA02
3J216AA12
3J216AB01
3J216AB31
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA05
3J216CB04
3J216CC48
(57)【要約】
【課題】軸受取付部材の外側面側から軸受との間へ異物が侵入することを抑制する押さえローラーを提供する。
【解決手段】フランジ付き軸受15を挿入した2つの軸受取付部材(第1軸受取付部材11、第2軸受取付部材12)に両端部が挿入されて軸受15で軸支されて所定方向に回転する軸本体110と、軸受取付部材の外側で軸本体110に装着されるカバー120と、を備えた押さえローラー100であって、カバー120が、軸本体110を挿通する軸挿通部121と、この軸挿通部121より軸本体110の軸中心C側に突出する環状凸部122と、を有し、カバー120の環状凸部122の少なくとも一部が、軸受取付部材の外側面に形成された環状凹部に挿入されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受を挿入した2つの軸受取付部材に両端部が挿入されて前記軸受で軸支されて所定方向に回転する軸本体と、前記軸受取付部材の外側で前記軸本体に装着されるカバーと、を備えた押さえローラーであって、
前記カバーが、前記軸本体を挿通する軸挿通部と、前記軸挿通部より前記軸本体の軸中心側に突出する環状凸部と、を有し、
前記カバーの環状凸部の少なくとも一部が、前記軸受取付部材の外側面に形成された環状凹部に挿入されている、押さえローラー。
【請求項2】
前記軸受取付部材の環状凹部の外周面と離隔対向する前記カバーの環状凸部の外表面に、前記軸本体の軸中心から前記軸本体の軸長手方向に異物を遠ざけて前記カバーから前記異物を排出する異物排出構造が形成されている、請求項1に記載の押さえローラー。
【請求項3】
前記カバーが、前記軸本体と一体になって回転し、
前記軸本体が前記所定方向に回転する際に前記軸本体の軸中心から前記軸本体の軸長手方向に遠ざかるように進む溝が、前記カバーの環状凸部の外表面に前記異物排出構造として形成されている、請求項2に記載の押さえローラー。
【請求項4】
前記軸本体および前記カバーを前記軸受取付部材の外側から覆い、前記軸受取付部材に着脱自在なローラー保護部材を備えている、請求項1または請求項2に記載の押さえローラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受によって軸支されて所定方向に回転する押さえローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバテープ心線の加工装置において、光ファイバテープ心線を押さえる押さえローラーとして、軸受を挿入した2つの軸受取付部材に両端部が挿入されると共に、軸受によって軸支されて所定方向に回転する押さえローラーであって、所定方向に回転する際に、軸中心に向かって進む螺旋溝を軸受取付部材と対向する位置に有しているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-084989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、光ファイバテープ心線の加工装置では、光ファイバテープ心線の加工時に樹脂粉などが飛び散ることがあるが、上述の構造であれば、加工装置の内側(すなわち、2つの軸受取付部材の対向面)から押さえローラーと軸受との間に樹脂粉などが侵入したとしても除去できる。
一方で、加工装置の外側(すなわち、軸受取付部材の外側面)から樹脂粉が押さえローラーと軸受との間に侵入することに対しては、改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は軸受取付部材の外側面側から軸受との間へ異物が侵入することを抑制する押さえローラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の押さえローラーは、軸受を挿入した2つの軸受取付部材に両端部が挿入されて前記軸受で軸支されて所定方向に回転する軸本体と、前記軸受取付部材の外側で前記軸本体に装着されるカバーと、を備えた押さえローラーであって、前記カバーが、前記軸本体を挿通する軸挿通部と、前記軸挿通部より前記軸本体の軸中心側に突出する環状凸部と、を有し、前記カバーの環状凸部の少なくとも一部が、前記軸受取付部材の外側面に形成された環状凹部に挿入されている。
【発明の効果】
【0007】
上記によれば、軸受取付部材の外側面側から軸受との間へ異物が侵入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】光ファイバテープ心線の加工装置を示す斜視外観図である。
図2図1における仮想面PをII方向から見た加工装置の側面図である。
図3図2のIII-III線に沿って見た加工装置の断面図である。
図4図3のIV拡大図である。
図5図1に示す押さえローラーの要部拡大斜視図である。
図6】軸受取付部材と軸本体の螺旋溝およびカバーのねじれ溝とによる異物の排出を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様の内容を列記して説明する。
本開示の押さえローラーは、(1)軸受を挿入した2つの軸受取付部材に両端部が挿入されて前記軸受で軸支されて所定方向に回転する軸本体と、前記軸受取付部材の外側で前記軸本体に装着されるカバーと、を備えた押さえローラーであって、前記カバーが、前記軸本体を挿通する軸挿通部と、前記軸挿通部より前記軸本体の軸中心側に突出する環状凸部と、を有し、前記カバーの環状凸部の少なくとも一部が、前記軸受取付部材の外側面に形成された環状凹部に挿入されている。
このようにカバーが、軸本体を挿通する軸挿通部と、この軸挿通部より軸本体の中心に向かって突出する環状凸部とを有し、カバーの環状凸部の少なくとも一部が、軸受取付部材の外側面に形成された環状凹部に挿入されていることにより、軸受取付部材の厚み方向と直交する方向から見てカバーの環状凸部と軸受取付部材の環状凹部との間にラビリンス構造が形成されるため、軸受取付部材の外側面側から軸受との間へ異物が侵入することを防止することができる。
【0010】
(2)上記(1)において、前記軸受取付部材の環状凹部の外周面と離隔対向する前記カバーの環状凸部の外表面に、前記軸本体の軸中心から前記軸本体の軸長手方向に異物を遠ざけて前記カバーから前記異物を排出する異物排出構造が形成されている。
これにより、カバーの環状凸部の外表面または軸受取付部材の環状凹部の外周面に異物に付着したとしても、異物排出構造によって異物が軸本体の軸中心から軸本体の軸長手方向に遠ざかる方向に排出されるため、軸受取付部材の外側面側から軸受との間へ異物が侵入することをより確実に防止することができる。
【0011】
(3)上記(2)において、前記カバーが、前記軸本体と一体になって回転し、前記軸本体が前記所定方向に回転する際に前記軸本体の軸中心から前記軸本体の軸長手方向に遠ざかるように進む溝が、前記カバーの環状凸部の外表面に異物排出構造として形成されている。
軸本体が所定方向に回転する際に軸本体の軸中心から軸本体の軸長手方向に遠ざかるように進む溝が、カバーの環状凸部の外表面に形成されていることにより、軸本体が回転するだけでカバーの環状凸部の外表面または軸受取付部材の環状凹部の外周面に付着した異物が軸受取付部材から遠ざける方向に排出されるため、軸受取付部材の外側面側から軸受との間へ異物が侵入することを簡単な構造で防止することができる。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つにおいて、前記軸本体および前記カバーを前記軸受取付部材の外側から覆い、前記軸受取付部材に着脱自在なローラー保護部材を備えている。
これにより、ローラー保護部材で軸受取付部材の外方にある軸本体およびカバーが完全に覆われるため、軸受取付部材の外側面側から軸受との間へ異物が侵入することをさらに確実に防止することができる。
【0013】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係る押さえローラーについて説明する。
【0014】
<1.光ファイバテープ心線の加工装置の概要>
まず、図1から図4に基づいて、本発明の一実施形態である押さえローラー100が搭載される光ファイバテープ心線の加工装置10の概要を説明する。
図1は光ファイバテープ心線の加工装置を示す斜視外観図であり、図2図1における仮想面PをII方向から見た加工装置の側面図であり、図3図2のIII-III線に沿って見た加工装置の断面図であり、図4図3のIV拡大図である。
【0015】
図1に示すように、加工装置10は、軸受取付部材としての、矩形板状の第1軸受取付部材11および第2軸受取付部材12を備えている。
この第1軸受取付部材11および第2軸受取付部材12は、左右方向に離隔対向して配置されている。
すなわち、図3に示すように、第1軸受取付部材11の内側面11Aは、第2軸受取付部材12の内側面12Aと離隔対向している。
【0016】
また、第1軸受取付部材11には厚み方向に伸びる貫通孔11aが形成されており、第2軸受取付部材12には厚み方向に伸びる貫通孔12aが形成されている。
この第1軸受取付部材11の貫通孔11aの直径Dおよび中心軸は、第2軸受取付部材12の貫通孔12aの直径Dおよび中心軸と一致している。
【0017】
さらに、この第1軸受取付部材11(第2軸受取付部材12)の貫通孔11a(貫通孔12a)の外方には、貫通孔11a(貫通孔12a)を取り囲む環状の環状凹部11Ba(環状凹部12Ba)が形成されている。
この第1軸受取付部材11の環状凹部11Baおよび第2軸受取付部材12の環状凹部12Baの中心軸は、第1軸受取付部材11の貫通孔11aおよび第2軸受取付部材12の貫通孔12aの中心軸と一致している。
【0018】
第1軸受取付部材11の内側面11Aの下部には、図1等に示すように、前後方向に伸びるガイド部材13が当接している。
このガイド部材13には、光ファイバテープ心線(テープ心線)RFの左右方向の位置を規制するガイド溝13aが前後方向に伸びている。
テープ心線RFは、このガイド溝13a内を走行する。
さらに、ガイド部材13には、図2等に示すように、後述するカッター刃14aとガイド部材13との接触を防ぐための切込用凹部13bと、後述する押さえローラー100の下部を収容するローラー収容凹部13cとが形成されている。
【0019】
加工装置10は、図1等に示すように、テープ心線RFに切込を入れるための切込機構14を複数備えている。
この切込機構14は、ガイド部材13と同様に、第1軸受取付部材11と第2軸受取付部材12との間に配置されている。
【0020】
この切込機構14は、テープ心線RFに切込を入れるカッター刃14a(図2等参照)と、このカッター刃14aを収容および揺動させる刃ホルダー14bと、この刃ホルダー14bを回動自在に支持するホルダー支持軸14cとを備えている。
ホルダー支持軸14cの端部は、共に第1軸受取付部材11および第2軸受取付部材12に挿入され、回転自在に支持されている。
【0021】
加工装置10は、さらに、フランジ付き軸受(軸受)15を備えている。
フランジ付き軸受15は、第1軸受取付部材11の貫通孔11aおよび第2軸受取付部材12の貫通孔12aに外側から挿入され、固定されている。
【0022】
<2.押さえローラー>
加工装置10は、さらに、テープ心線RFのバタつきを抑えるためにテープ心線RFを押さえる押さえローラー100を複数備えている。
そこで、以下、図1から図5に基づいて、本発明の一実施形態である押さえローラー100について詳説する。
図5は、図1に示す押さえローラーの要部拡大斜視図である。
【0023】
押さえローラー100は、図3から図5に示すように、円柱状の軸本体110と、軸受取付部材の外側で軸本体110に装着されるカバー120と、軸本体110とカバー120とを軸受取付部材の外側から覆うローラー保護部材130と、を備えている。
また、テープ心線RFは、図1図2に示すように、後方から前方に向かって走行するため、押さえローラー100の回転方向は、図2に示すような一方向Rになる。
すなわち、押さえローラー100は、所定方向Rに回転する。
【0024】
<2.1.軸本体>
軸本体110は、図3に示すように、第1軸受取付部材11および第2軸受取付部材12にその両端部が挿入され、第1軸受取付部材11および第2軸受取付部材12に挿入されたフランジ付き軸受15によって軸支されている。
この軸本体110の両端側には、図3および図5等に示すように、外表面に雄ネジ111が形成されている。
【0025】
そして、この雄ネジ111より内側(軸本体110の長手方向の中心である軸中心Cに向かう方向の側)には、軸本体110がR方向に回る際に軸中心Cに向かって進む螺旋溝(左側螺旋溝112Lおよび右側螺旋溝112R)が形成されている。
すなわち、左側螺旋溝112Lの旋回方向は、右側螺旋溝112Rの旋回方向と逆向きとなっている。
なお、押さえローラー100が軸受取付部材に固定された際、図3に示すように、軸本体110の右側螺旋溝112Rは、第2軸受取付部材12より内側に突出している。
【0026】
螺旋溝(左側螺旋溝112Lおよび右側螺旋溝112R)は、山部と谷部とから形成されており、本実施形態においては、山部の直径は全て等しく、谷部の直径も全て等しい。
換言すれば、螺旋溝の外径は一定であり、谷径も一定である。
なお、山部の直径および谷部の直径(螺旋溝の外径および谷径)は、上記に限定されるものではない。
【0027】
そして、左側螺旋溝112Lにおける山部112Laおよび右側螺旋溝112Rの内側端部における山部112Raの直径(端部直径)φSは、軸本体110の軸径dよりも大きくなっている。
【0028】
また、螺旋溝の山部の直径φSは、第1軸受取付部材11の貫通孔11aおよび第2軸受取付部材12の12aの直径Dよりも小さくなっている。
したがって、螺旋溝(左側螺旋溝112Lおよび右側螺旋溝112R)の山部と軸受取付部材(第1軸受取付部材11および第2軸受取付部材12)の貫通孔11a、12aとの間には、隙間Gが形成されている。
この隙間Gは、隙間Gへの異物混入の可能性と隙間Gの作製精度の兼ね合いから0.5mm以下であることが好ましい。
【0029】
<2.2.カバー>
カバー120は、図4に示すように、軸本体110を挿通する軸挿通部121と、この軸挿通部121より軸本体110の軸中心C側に突出する環状凸部122と、を有している。
【0030】
軸挿通部121は円環状であり、軸本体110の雄ネジ111を挿通自在としている。
なお、カバー120を軸本体110に装着した場合において、軸挿通部121の中心軸は、軸本体110の中心軸と一致する。
【0031】
環状凸部122の外表面には、ねじれ歯122aが複数、等間隔で形成されている。
このねじれ歯122aは、歯筋が軸挿通部121の中心軸に対して捩られて螺旋状になっている。
したがって、環状凸部122の外表面には、隣接するねじれ歯122aにより、ねじれ溝(溝)122bが形成されている。
このねじれ溝122bの断面形状は、図5に示すように矩形状になっている。
そして、ねじれ溝122bは、カバー120がR方向に回る際に、軸本体110の軸中心Cから遠ざかる方向に向かって進むように形成されている。
【0032】
環状凸部122の外径φFoは、図4に示すように、軸受取付部材の環状凹部12Baの外径Roよりも僅かに小さくなっている。
また、環状凸部122の内径φFiは、図4に示すように、軸受取付部材の環状凹部12Baの内径Riよりも僅かに大きくなっている。
そして、環状凸部122のねじれ歯122aと軸受取付部材の環状凹部12Baの外周面12Ba1との間の隙間の大きさは、環状凸部122の内表面122Aと軸受取付部材の環状凹部12Baの内周面12Ba2との間の隙間の大きさとほぼ等しくなっている。
【0033】
なお、押さえローラー100が軸受取付部材に固定された際、押さえローラー100のカバー120の環状凸部122は、図3および図4に示すように、軸受取付部材の外側面11B、12Bに形成された環状凹部11Ba、12Baに一部が挿入されている。
したがって、カバー120の環状凸部122は、図4等に示すように、軸受取付部材の環状凹部12Baの外周面12Ba1と離隔対向することになる。
さらに、軸受取付部材の厚み方向と直交する方向から見て、カバー120の環状凸部122と軸受取付部材の環状凹部12Baとの間にラビリンス構造が形成されることになる。
なお、押さえローラー100のカバー120と軸受取付部材の環状凹部12Baとの長手方向(軸受取付部材の厚み方向)の距離は、環状凸部122のねじれ歯122aと軸受取付部材の環状凹部12Baの外周面12Ba1との間の隙間の大きさ、および、環状凸部122の内表面122Aと軸受取付部材の環状凹部12Baの内周面12Ba2との間の隙間の大きさとほぼ等しくなっている。
【0034】
<2.3.ローラー保護部材>
ローラー保護部材130は、図3等に示すように、第1軸受取付部材11の外側面11Bおよび第2軸受取付部材12の外側面12BにボルトBによって着脱自在に取り付けられている。
【0035】
<2.4.押さえローラーの取り付け>
押さえローラー100を加工装置10に取り付けるには、軸本体110を軸受取付部材(第1軸受取付部材11および第2軸受取付部材12)に挿入すると共にフランジ付き軸受15に挿入する。
この状態で押さえローラー100の両端をワッシャーWに挿通した上で、カバー120に挿通し、ナットNを雄ネジ111に螺入する。
【0036】
そして、ナットNを締め付けることで、押さえローラー100が軸受取付部材(第1軸受取付部材11および第2軸受取付部材12)に固定され、加工装置10における押さえローラー100の位置が定まる。
この状態において、カバー120はナットNとワッシャーWに挟まれ、軸本体110の軸方向に移動することがなくなり、カバー120は軸本体110と一体になって回転する。
【0037】
その後、ローラー保護部材130に設けられたボルト挿入孔131にボルトBを挿通して、第1軸受取付部材11の外側面11Bに設けられたネジ孔および第2軸受取付部材12の外側面12Bに設けられたネジ孔にボルトBを螺合させることでローラー保護部材130が第1軸受取付部材11および第2軸受取付部材12に装着される。
【0038】
<4.押さえローラーによる異物の排出>
次に、図6に基づいて、押さえローラー100による異物の排出について説明する。
図6は、軸受取付部材と軸本体の螺旋溝およびカバーのねじれ溝とによる異物の排出を説明する図である。
なお、押さえローラー100は左右対称であるため、以下、第2軸受取付部材12側で説明する。
【0039】
<4.1.軸受取付部材および軸本体の螺旋溝による異物の排出>
まず、軸受取付部材および軸本体110の螺旋溝による異物の排出について説明する。
図6に示すように、第2軸受取付部材12と軸本体110の右側螺旋溝112Rとの間に異物Xが存在した場合、押さえローラー100がR方向に回転すると、軸本体110がR方向に回転した際に軸本体110の軸中心Cに向かって進むように右側螺旋溝112Rが形成されているため、異物Xは軸本体110の軸中心に向かって軸受取付部材から排出される。
【0040】
<4.2.軸受取付部材およびカバーのねじれ溝による異物の排出>
次に、軸受取付部材およびカバー120のねじれ溝122bによる異物の排出について説明する。
図6に示すように、第2軸受取付部材12とカバー120のねじれ溝122bとの間に異物Xが存在した場合、押さえローラー100がR方向に回転すると、カバー120がR方向に回転した際に軸本体110の軸中心Cから遠ざかる方向に向かって進むようにねじれ溝122bが形成されているため、ねじれ溝122bに沿って異物Xが軸受取付部材から遠ざかる方向に排出される。
すなわち、カバー120のねじれ溝122bは、異物を軸本体110の軸中心から軸本体110の軸長手方向に遠ざけてカバー120から排出する異物排出構造として機能する。
また、カバー120のねじれ溝122bと軸本体110の螺旋溝とは、押さえローラー100がR方向に回転する際に逆方向に向かって進むことになる。
【0041】
<5.作用効果>
このようにして得られた本発明の一実施形態の押さえローラー100は、カバー120が、軸本体110を挿通する軸挿通部121と、この軸挿通部121より軸本体110の軸中心C側に突出する環状凸部122とを有し、カバー120の環状凸部122の少なくとも一部が、軸受取付部材(第1軸受取付部材11、第2軸受取付部材12)の外側面に形成された環状凹部11Ba、12Baに挿入されていることにより、軸受取付部材の厚み方向と直交する方向から見てカバー120の環状凸部122と軸受取付部材の環状凹部との間にラビリンス構造が形成されるため、軸受取付部材の外側面側から軸受であるフランジ付き軸受15と押さえローラー100との間へ異物が侵入することを防止することができる。
【0042】
さらに、軸本体110が所定方向に回転する際に軸本体110の軸中心Cから軸本体110の軸長手方向に遠ざかるように進む溝であるねじれ溝122bが、カバー120の環状凸部122の外表面に形成されていることにより、軸本体110が回転するだけでカバー120の環状凸部122の外表面または軸受取付部材の環状凹部の外周面に付着した異物が軸受取付部材から遠ざける方向に排出されるため、軸受取付部材の外側面側からフランジ付き軸受15と押さえローラー100との間へ異物が侵入することを簡単な構造で防止することができる。
【0043】
また、軸本体110およびカバー120を覆い軸受取付部材に着脱自在なローラー保護部材130を備えている。
これにより、ローラー保護部材130で軸受取付部材の外方にある軸本体110およびカバー120が完全に覆われるため、軸受取付部材の外側面側からフランジ付き軸受15と押さえローラー100との間へ異物が侵入することをさらに確実に防止することができる。
【0044】
[変形例]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。
また、前述した実施形態が備える各要素は技術的に可能である限り組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0045】
例えば、第1軸受取付部材と第2軸受取付部材とは、対向して配置されていれば、同形状でなくてもよい。
また、上述した実施形態において、第1軸受取付部材および第2軸受取付部材の形状は矩形板状であったが、上述した第1軸受取付部材および第2軸受取付部材の形状は一例にすぎず、矩形板状に限定されるものではない。
【0046】
例えば、切込機構や押さえローラーの数は、図1等のように2つに限定されるものではない。
【0047】
例えば、切込機構は、テープ心線に切り込みを入れられれば、カッター刃を揺動させてテープ心線に切り込みを入れるものでなくてもよい。
【0048】
例えば、軸受は、フランジ付き軸受でなくてもよいし、シールド付きの軸受であってもよい。
【0049】
例えば、上述した実施形態において、軸本体110に螺旋溝が直接形成されていたが、螺旋溝は軸本体110に直接形成されなくてもよい。
すなわち、螺旋溝を設けない軸本体と、この軸本体に挿入される外周に螺旋溝を刻んだ溝部材とに分離し、消耗しやすい軸本体のみを交換可能にしてもよい。
【0050】
例えば、軸本体の螺旋溝の山部の直径および谷部の直径(すなわち、螺旋溝の外径および谷径)は、すべて等しくなくてもよい。
【0051】
例えば、ガイド部材を第2軸受取付部材に当接させて、押さえローラーの軸本体の左側螺旋溝を、第1軸受取付部材から突出させてもよいし、ガイド部材と第1軸受取付部材および第2軸受取付部材との間に間隙を設け、押さえローラーの軸本体の左側螺旋溝を第1軸受取付部材から突出させると共に軸本体の右側螺旋溝を第2軸受取付部材から突出させてもよい。
【0052】
例えば、上述した実施形態において、カバー120における異物排出構造はねじれ溝122bであったが、カバーにおける異物排出構造はこのねじれ溝に限定されるものではなく、軸受取付部材から遠ざける方向に異物を排出することができれば、いかなる構造であってもよい。
【0053】
例えば、上述した実施形態において、カバー120のねじれ歯122aの高さ(ねじれ溝122bの深さ)は一様であったが、カバーのねじれ歯の高さ(ねじれ溝の深さ)は一様でなくてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 ・・・ 加工装置
11 ・・・ 第1軸受取付部材(軸受取付部材)
11A ・・・ 内側面
11B ・・・ 外側面
11Ba ・・・ 環状凹部
11a ・・・ 貫通孔
12 ・・・ 第2軸受取付部材(軸受取付部材)
12A ・・・ 内側面
12B ・・・ 外側面
12Ba ・・・ 環状凹部
12Ba1 ・・・ 外周面
12Ba2 ・・・ 内周面
12a ・・・ 貫通孔
13 ・・・ ガイド部材
13a ・・・ ガイド溝
13b ・・・ 切込用凹部
13c ・・・ ローラー収容凹部
14 ・・・ 切込機構
14a ・・・ カッター刃
14b ・・・ 刃ホルダー
14c ・・・ ホルダー支持軸
15 ・・・ フランジ付き軸受(軸受)
16 ・・・ ローラー保護部材
16a ・・・ ボルト挿入孔

100 ・・・ 押さえローラー
110 ・・・ 軸本体
111 ・・・ 雄ネジ
112L ・・・ 左側螺旋溝(螺旋溝)
112La ・・・ 内側端部における山部
112R ・・・ 右側螺旋溝(螺旋溝)
112Ra ・・・ 内側端部における山部
120 ・・・ カバー
121 ・・・ 軸挿通部
122 ・・・ 環状凸部
122A ・・・ 内表面
122a ・・・ ねじれ歯
122b ・・・ ねじれ溝

RF ・・・ テープ心線
W ・・・ ワッシャー
N ・・・ ナット
B ・・・ ボルト
G ・・・ 隙間
C ・・・ 軸中心
X ・・・ 異物
R ・・・ 押さえローラーの回転方向
P ・・・ 仮想面

D ・・・ 貫通孔の直径
d ・・・ 軸径
Ro ・・・ 環状凹部の外径
Ri ・・・ 環状凹部の内径

φS ・・・ 端部直径
φFo ・・・ 環状凸部の外径
φFi ・・・ 環状凸部の内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6