(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183568
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】制御装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B63H 21/21 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B63H21/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097145
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】川崎 直行
(72)【発明者】
【氏名】川谷 聖
(57)【要約】
【課題】本発明の目的の一つは、主機の負荷上げを実施する際の操船者の作業負担を軽減する技術を提供することにある。
【解決手段】本発明のある態様の制御装置100は、船舶の主機の回転数及び燃料噴射量の少なくとも1つの目標値を取得する取得部101と、取得した目標値及び主機の実際の負荷の少なくとも1つが第1負荷上げ閾値よりも小さい状態で主機を運転する低負荷運転の継続時間と、現在の時刻と、現在の船位と、の少なくとも1つに基づいて主機の負荷上げを実施するか否かを判定する判定部103と、負荷上げを実施すると判定された場合に主機の負荷を増大させるように取得した目標値を変更する変更部104と、負荷上げを実施すると判定された場合に変更された目標値に基づいて主機を制御する制御部105と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の主機の回転数及び燃料噴射量の少なくとも1つの目標値を取得する取得部と、
前記取得した目標値及び前記主機の実際の負荷の少なくとも1つが第1負荷上げ閾値よりも小さい状態で前記主機を運転する低負荷運転の継続時間と、現在の時刻と、現在の船位と、の少なくとも1つに基づいて前記主機の負荷上げを実施するか否かを判定する判定部と、
前記負荷上げを実施すると判定された場合に前記主機の負荷を増大させるように前記取得した目標値を変更する変更部と、
前記負荷上げを実施すると判定された場合に前記変更された目標値に基づいて前記主機を制御する制御部と、
を備える、制御装置。
【請求項2】
前記判定部は前記低負荷運転の継続時間が負荷上げ間隔時間を超える場合に前記負荷上げを実施すると判定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記低負荷運転の継続時間を計数する計数部を備え、
前記計数部は前記目標値及び前記実際の負荷の少なくとも1つが前記第1負荷上げ閾値以上となった場合に前記低負荷運転の継続時間の計数値をリセットする、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記判定部は前記取得した目標値及び前記実際の負荷の少なくとも1つが相対的に大きい場合には前記取得した目標値及び前記実際の負荷の少なくとも1つが相対的に小さい場合に比べて前記負荷上げ間隔時間を大きく設定する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記実際の負荷が第2負荷上げ閾値よりも大きい状態で前記主機を運転する高負荷運転の継続時間を計数する計数部を備え、
前記判定部は前記高負荷運転の継続時間が所定時間を超えた場合に前記負荷上げを実施すると判定する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記判定部は前記負荷上げ間隔時間と前記低負荷運転の継続時間との差分が相対的に大きい場合には前記差分が相対的に小さい場合に比べて前記第2負荷上げ閾値を大きく設定する、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記船舶の出発地点又は現在の船位から前記船舶の到着地点までの航路を含む航海計画と、前記航路周辺の気象及び海象をそれぞれ示す気象情報及び海象情報の少なくとも1つの情報と、を取得し、
前記航海計画及び前記少なくとも1つの情報に基づいて前記船舶が進行する際に船舶の船体が受ける外乱が基準よりも大きい前記航路の外乱箇所を判断する外乱箇所判断部と、
前記判定部は前記外乱箇所においては前記外乱箇所ではない箇所で使用される前記第2負荷上げ閾値よりも小さい前記第2負荷上げ閾値を使用する、
請求項5又は6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記取得部は、前記船舶の出発地点又は現在の船位から前記船舶の到着地点までの航路を含む航海計画と、前記航路周辺の気象及び海象をそれぞれ示す気象情報及び海象情報の少なくとも1つの情報と、を取得し、
前記航海計画及び前記少なくとも1つの情報に基づいて前記航海計画の前記航路を航行するのに必要な前記主機の燃料消費量が基準値以下となるように前記負荷上げを実施する時刻及び船位の少なくとも1つを指定する指定情報を生成する生成部を備え、
前記判定部は現在の時期及び現在の船位の少なくとも1つが前記指定情報で指定された時刻及び船位の少なくとも1つに到達した場合に前記負荷上げを実施すると判定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記取得した目標値及び前記主機の実際の負荷の少なくとも1つに応じて設定される値を所定時間毎に積算する積算部を備え、
前記判定部は前記積算結果が前記負荷上げ開始閾値よりも大きい場合に前記負荷上げを実施すると判定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項10】
前記積算部は前記取得した目標値及び前記主機の実際の負荷の少なくとも1つが所定値以上の場合には負の値を用いて積算する、
請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記判定部は前記積算結果が前記負荷上げ開始閾値よりも小さい負荷上げ終了閾値を下回った場合、前記主機の負荷上げを終了すると判定し、
前記制御部は前記負荷上げを終了すると判定された場合に前記取得した目標値を用いて前記主機を制御する、
請求項9又は10に記載の制御装置。
【請求項12】
船舶の主機の回転数及び燃料噴射量の少なくとも1つの目標値を取得するステップと、
前記取得した目標値及び前記主機の実際の負荷の少なくとも1つが第1負荷上げ閾値よりも小さい状態で前記主機を運転する低負荷運転の継続時間と、現在の時刻と、現在の船位と、の少なくとも1つに基づいて前記主機の負荷上げを実施するか否かを判定するステップと、
前記負荷上げを実施すると判定された場合に前記主機の負荷を増大させるように前記取得した目標値を変更するステップと、
前記負荷上げを実施すると判定された場合に前記変更された目標値に基づいて前記主機を制御するステップと、
を備える、
方法。
【請求項13】
コンピュータに、
船舶の主機の回転数及び燃料噴射量の少なくとも1つの目標値を取得するステップと、
前記取得した目標値及び前記主機の実際の負荷の少なくとも1つが第1負荷上げ閾値よりも小さい状態で前記主機を運転する低負荷運転の継続時間と、現在の時刻と、現在の船位と、の少なくとも1つに基づいて前記主機の負荷上げを実施するか否かを判定するステップと、
前記負荷上げを実施すると判定された場合に前記主機の負荷を増大させるように前記取得した目標値を変更するステップと、
前記負荷上げを実施すると判定された場合に前記変更された目標値に基づいて前記主機を制御するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料費削減等の観点から、船舶の低負荷運転(減速運転)が要求されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、船舶の推進を担う主機の多くでは、比較的高い負荷(75%~90%など)で最適な性能が得られるよう設計及び仕様の最適化が実施されている。そのため、設計ポイントとは異なる低負荷域を多用する低負荷運転を実施する場合、実際の運航に応じた運用及び整備が必要となる。中でも、主機の性能を良好に保ち、主機の各部の汚損を軽減するため,定期的な負荷上げが操船者によるテレグラフ装置の操作ハンドルの手動操作によって実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記負荷上げを実施する際にテレグラフ装置の操作ハンドルを操作する作業が操船者にとって負担になるという問題があった。
【0006】
上記を鑑み、本発明の目的は、主機の負荷上げを実施する際の操船者の作業負担を軽減する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御装置は、船舶の主機の回転数及び燃料噴射量の少なくとも1つの目標値を取得する取得部と、前記取得した目標値及び前記主機の実際の負荷の少なくとも1つが第1負荷上げ閾値よりも小さい状態で前記主機を運転する低負荷運転の継続時間と、現在の時刻と、現在の船位と、の少なくとも1つに基づいて前記主機の負荷上げを実施するか否かを判定する判定部と、前記負荷上げを実施すると判定された場合に前記主機の負荷を増大させるように前記取得した目標値を変更する変更部と、前記負荷上げを実施すると判定された場合に前記変更された目標値に基づいて前記主機を制御する制御部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様の方法は、船舶の主機の回転数及び燃料噴射量の少なくとも1つの目標値を取得するステップと、前記取得した目標値及び前記主機の実際の負荷の少なくとも1つが第1負荷上げ閾値よりも小さい状態で前記主機を運転する低負荷運転の継続時間と、現在の時刻と、現在の船位と、の少なくとも1つに基づいて前記主機の負荷上げを実施するか否かを判定するステップと、前記負荷上げを実施すると判定された場合に前記主機の負荷を増大させるように前記取得した目標値を変更するステップと、前記負荷上げを実施すると判定された場合に前記変更された目標値に基づいて前記主機を制御するステップと、を備える。
【0009】
本発明のさらに別の態様のプログラムは、コンピュータに、船舶の主機の回転数及び燃料噴射量の少なくとも1つの目標値を取得するステップと、前記取得した目標値及び前記主機の実際の負荷の少なくとも1つが第1負荷上げ閾値よりも小さい状態で前記主機を運転する低負荷運転の継続時間と、現在の時刻と、現在の船位と、の少なくとも1つに基づいて前記主機の負荷上げを実施するか否かを判定するステップと、前記負荷上げを実施すると判定された場合に前記主機の負荷を増大させるように前記取得した目標値を変更するステップと、前記負荷上げを実施すると判定された場合に前記変更された目標値に基づいて前記主機を制御するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【0010】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、主機の負荷上げを実施する際の操船者の作業負担を軽減する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の船舶の構成を概略的に例示する。
【
図2】第1実施形態の制御装置の機能ブロック図である。
【
図3】主機の負荷の範囲毎の主機の負荷上げ要領を例示する図である。
【
図4】第1実施形態の制御装置の処理を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態の制御装置の処理における取得した回転数の目標値と変更後の回転数の目標値とを例示する図である。
【
図6】第1実施形態における回転数の範囲と負荷上げ間隔時間との関係を示す表である。
【
図7】第2実施形態の制御装置の処理を示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態の制御装置の高負荷側負荷上げ判定処理を示すフローチャートである。
【
図9】第2負荷上げ閾値の設定手法の例を説明するための図である。
【
図10】第3実施形態の船舶の航海システムを例示する図である。
【
図11】第3実施形態の制御装置の機能ブロック図である。
【
図12】第3実施形態の制御装置の高負荷側負荷上げ判定処理を示すフローチャートである。
【
図13】第4実施形態の制御装置の機能ブロック図である。
【
図14】第4実施形態の制御装置の処理を示すフローチャートである。
【
図15】第5実施形態の制御装置の機能ブロック図である。
【
図16】第5実施形態の制御装置の処理を示すフローチャートである。
【
図17】回転数及び燃料噴射量と積算する値との関係を示すカウンタテーブルを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0014】
また、共通点のある別々の構成要素には、名称の冒頭に「第1、第2」等と付して区別し、総称するときはこれらを省略する。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0015】
第1実施形態
【0016】
図1は、第1実施形態の船舶20の構成を概略的に例示する。船舶20は、主機30と、テレグラフ装置50と、制御装置100と、を含む。
【0017】
主機30は、船舶20を推進させる推進力を生じさせる。本実施形態の主機30は、原動機としてディーゼルエンジンを備える。主機30によってシャフトを駆動することによりプロペラを回転させることで、船舶20の推進力が得られる(シャフト及びプロペラのいずれも不図示)。
【0018】
テレグラフ装置50は、操作ハンドル51を含む。テレグラフ装置50は、船舶20のブリッジ等に設置される。テレグラフ装置50は、操作ハンドル51の位置(以下、「ハンドル位置P」という)に応じて推進力の大きさを指令する指令信号を制御装置100に送信する。操船者は、操作ハンドル51の位置を変えることによって、主機30の推進力を、ゼロ、前進及び後進を含む所定の範囲内で変更できる。本実施形態の指令信号は、主機30の回転数の目標値を含む。主機30の回転数の目標値は、テレグラフ装置50においてハンドル位置Pに基づいて公知の方法により生成される。
【0019】
操作ハンドル51は、操縦装置に対して操縦者が操作を入力できるものであればよく、その形態に限定はない。例えば、操作ハンドル51は、可動な操作部を備えてもよいし、備えなくてもよい。例えば、操作ハンドル51は、タッチパネルのタッチ位置から指令を検知するものであってもよい。
【0020】
制御装置100は、テレグラフ装置50の指令信号に応じて主機30に発生させる推進力を制御する。本実施形態の制御装置100は、テレグラフ装置50の指令信号に基づいて主機30の燃料噴射量を制御することにより、主機30の回転数を制御(増減、停止等)する。
【0021】
図2は、第1実施形態の制御装置100の機能ブロック図である。第1実施形態の制御装置100は、取得部101と、計数部102と、判定部103と、変更部104と、制御部105と、記憶部106と、を備える。以下の各図に示す各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0022】
取得部101は、船舶20の回転数の目標値を取得する。計数部102は、取得した回転数の目標値が負荷上げ閾値よりも小さい状態の継続時間を計数する。判定部103は、主機30の負荷上げ(以下、単に負荷上げという場合がある)を実施するか否かを判定する。負荷上げの実施可否の判定方法については後述する。変更部104は、負荷上げを実施すると判定された場合に主機30の負荷を増大させるように取得した目標値を変更する。制御部105は、基本的には回転数の目標値に基づいて主機30を制御する。本実施形態の制御部105は、負荷上げを実施すると判定された場合に変更部104によって変更された回転数の目標値に基づいて主機30を制御する。記憶部106は、制御装置100の各種処理を実行するためのプログラム等を記憶している。例えば、記憶部106は、主機30の負荷上げを実施する際の主機30の回転数(以下、負荷上げ時回転数という)、計数部102による計数値、後述の負荷上げ間隔時間及び負荷上げ実施時間、各種閾値等を記憶している。
【0023】
ここで、船舶20の低負荷運転(減速運転)及び負荷上げについて説明する。船舶20の推進を担う主機30の多くは、比較的高い負荷(75%~90%)で最適な性能を発揮するよう設計及び最適化されているが、このような比較的大きい負荷又は高い船速で運航する場合、例えば船舶20が到着時間よりも早く目的地に到着してしまって湾港内で船舶20を待機させる必要が生じ、燃料を余計に消費してしまう。一方で、低負荷運転は、到着時間ちょうどに目的地に到着するように低速で運航することにより湾港内での船舶20の待機時間を低減することで燃料費を削減する運航手法であり、燃料価格の高騰等を背景に採用が急速に進んでいる。
【0024】
ところで、低負荷運転は上述したように比較的高い負荷での最適な運転領域とは異なる低負荷域を多用するため、実際の運航に応じた運用・整備が必要となる。中でも、主機30の性能を良好に保ち主機30各部の汚損を軽減するため、主機30の定期的な負荷上げが実施されている。定期的な負荷上げは、主機30の排気通路、過給機、排ガスエコノマイザ、煙道に堆積した煤等の付着物を除去することを主な目的としている。負荷上げによって主機30のシリンダライナやピストンリングなどの摩耗が促進されるため、負荷上げは、必要最小限に留めることが望ましく、例えば主機30のメーカより発行された負荷上げ要領に従い、徐々に負荷を上げるように実施される。
【0025】
図3は主機30の負荷の範囲毎の主機30の負荷上げ要領を例示する。
図3の例では、主機30の負荷の範囲LはA%~B%未満(A<B)の負荷の範囲を示し、負荷の範囲MはB%~C%未満(B<C)の負荷の範囲を示し、負荷の範囲HはC%以上の負荷の範囲を示す。負荷の範囲Lでは、例えば、数時間に1回の負荷上げが推奨される。負荷の範囲Mでは、例えば、数日に1回の負荷上げが推奨される。負荷の範囲Hでは、例えば、負荷上げをせずに連続運転が可能とされている。
【0026】
従来、負荷上げは、テレグラフ装置50の操作ハンドル51を操船者がマニュアルで操作(操作ハンドル51を上げたり下げたり)することで実施していた。しかし、通常、平穏な海象では操作ハンドル51を一定の位置のまま航行し続けるため、本来負荷上げがなければ操作ハンドル51を操作する必要がない操船者にとって、負荷上げの操作は作業負担となってきた。
【0027】
上記を踏まえて、本発明の第1実施形態の処理を説明する。
図4は、第1実施形態の制御装置100の処理S100を示すフローチャートである。処理S100は、所定の時間間隔(例えば、数マイクロ秒)で実行される。
図5は、第1実施形態の制御装置100の処理S100における取得した回転数の目標値と変更後の回転数の目標値とを例示する。
【0028】
ステップS101で、取得部101は、主機30の回転数の目標値を取得する。回転数の目標値は、テレグラフ装置50の指令信号から取得される。ステップS101の後、処理S100はステップS102に進む。
【0029】
ステップS102で、計数部102は、取得した目標値が第1負荷上げ閾値よりも小さいか否かを判定する。本実施形態の第1負荷上げ閾値は、予め設定される。目標値が第1負荷上げ閾値よりも小さい場合(ステップS102のY)、処理S100はステップS103に進む。目標値が第1負荷上げ閾値よりも小さくない場合(ステップS102のN)、処理S100はステップS104に進む。
【0030】
ステップS103で、計数部102は、取得した回転数の目標値が第1負荷上げ閾値よりも小さい状態での低負荷運転の継続時間の計数を開始するか(低負荷運転の継続時間の計数が開始されていない場合)、又は低負荷運転の継続時間の計数を継続する(低負荷運転の継続時間の計数が既に開始されている場合)。低負荷運転の継続時間の計数値は記憶部106に記憶される。
図5の例では、時刻t1で、取得した目標値が第1負荷上げ閾値よりも小さくなったため、低負荷運転の継続時間の計数が開始される。
【0031】
一方、ステップS104で、計数部102は、低負荷運転の継続時間の計数値を0にリセットする。ステップS104の後、処理S100はステップS105に進む。
【0032】
ステップS105で、制御部105は、ステップS101で取得した回転数の目標値に基づいて、主機30を制御する。したがって、負荷上げは実施されず、主機30は通常通り制御されることになる。ステップS105の後、処理S100は終了する。
【0033】
ステップS103に戻ると、ステップS103の後、処理S100はステップS106に進む。ステップS106で、判定部103は、低負荷運転の継続時間の計数値に基づいて低負荷運転の継続時間が負荷上げ間隔時間を超えるか否かを判定することにより、負荷上げを実施するか否かを判定する。
【0034】
図6を用いて、第1実施形態の負荷上げ間隔時間について説明する。
図6は、第1実施形態における回転数の範囲と負荷上げ間隔時間との関係を示す表である。
図6に示すように、本実施形態の負荷上げ間隔時間は、主機30の回転数の目標値の範囲毎に設定され、主機30の回転数の目標値が大きいほど負荷上げ間隔時間が大きくなるように負荷上げ間隔時間が段階的に設定される。
図6の例では、回転数の目標値の範囲が0%~30%での低負荷運転の場合、負荷上げ間隔時間は12時間とされる。また、回転数の目標値の範囲が30%~50%での低負荷運転の場合、負荷上げ間隔時間は72時間とされる。
【0035】
上記継続時間が負荷上げ間隔時間を超える場合(ステップS106のY)、判定部103は負荷上げを実施すると判定し、処理S100はステップS107に進む。上記継続時間が負荷上げ間隔時間を超えない場合(ステップS106のN)、判定部103は負荷上げを実施しないと判定し、処理S100はステップS105に進む。
【0036】
ステップS107で、変更部104は、取得した回転数の目標値を変更する。本実施形態では、変更部104は、ステップS101で取得した回転数の目標値を、記憶部106に記憶された負荷上げ時回転数に変更する。
図5の例では、時刻t2で、低負荷運転の継続時間の計数値が負荷上げ間隔時間を超えたため、回転数の目標値が負荷上げ時回転数に変更されている。ステップS107の後、処理S100はステップS108に進む。
【0037】
ステップS108で、制御部105は、変更された回転数の目標値(負荷上げ時回転数)に基づいて主機30を制御する。これにより、負荷上げが実施される。ステップS108の後、処理S100はステップS109に進む。
【0038】
ステップS109で、制御部105は、負荷上げを開始してから負荷上げ実施時間を経過したか否かを判定する。負荷上げ実施時間は、例えば、低負荷運転で用いられる負荷の範囲(例えば、
図3参照)や低負荷運転の継続時間に応じて定められる。負荷上げを開始してから負荷上げ実施時間を経過した場合(ステップS109のY)、処理S100は終了する。負荷上げが負荷上げ実施時間継続することになり、負荷上げが完了する。負荷上げを開始してから負荷上げ実施時間を経過しない場合(ステップS109のN)、処理S100はステップS108に戻り、負荷上げを開始してから負荷上げ実施時間を経過するまで、変更された回転数の目標値に基づく負荷上げが実施される。
図5の例では、負荷上げを開始した時刻t2から負荷上げ実施時間が経過した時刻t3まで、負荷上げが実施される。
【0039】
ステップS109の後、処理S100は終了する。
【0040】
このように、本実施形態では、低負荷運転の継続時間に基づいて負荷上げを実施するか否かが判定され、負荷上げを実施すると判定された場合には主機30の負荷を増大させるように変更された目標値に基づいて主機30を制御することにより、負荷上げが実施される。本構成によると、負荷上げが自動的に実施されるため、負荷上げを実施する際の操船者の作業負担を軽減することが可能となる。
【0041】
本実施形態では、計数部102は目標値が負荷上げ閾値以上となった場合に計数をリセットする。本構成によると、主機30の過度の負荷上げを抑制できるため、適切なタイミングで負荷上げを実施でき、それにより主機30のシリンダ等の摩耗を抑制できる。
【0042】
以下、変形例について説明する。
【0043】
実施形態では、目標値として主機30の回転数が取得されたが、これに限定されず、主機30の燃料噴射量が取得されてもよい。また、主機30の回転数及び燃料噴射量の両方の目標値が取得されてもよい。したがって、主機30の回転数及び燃料噴射量の少なくとも1つの目標値が取得されてもよい。以下、目標値とは、主機30の回転数及び燃料噴射量の少なくとも1つを示すものとする。
【0044】
実施形態では、目標値に基づいて負荷上げを実施するか否かが判断されたが、これに限定されない。主機30の実際の負荷に基づいて負荷上げを実施するか否かが判断されてもよい。
【0045】
実施形態では、目標値はテレグラフ装置50において生成されたが、これに限定されない。目標値は、例えば、制御装置100においてハンドル位置Pに基づいて公知の方法により生成されてもよい。
【0046】
実施形態では、低負荷運転における目標値が大きいほど負荷上げ間隔時間が大きくなるように負荷上げ間隔時間が段階的に設定されたが、これに限定されない。例えば、判定部103は、目標値及び主機30の実際の負荷の少なくとも1つが大きいほど負荷上げ間隔時間が大きくなるように、負荷上げ間隔時間が目標値及び主機30の実際の負荷の少なくとも1つに比例して設定してもよい。まとめると、判定部103は取得した目標値及び主機30の実際の負荷の少なくとも1つが相対的に大きい場合には取得した目標値及び主機30の実際の負荷の少なくとも1つが相対的に小さい場合に比べて負荷上げ間隔時間を大きく設定することができる。ここで、低負荷運転における目標値や主機30の実際の負荷が大きいほど、主機30の最適な運転領域により近い運転領域での運転が可能となる。そのため、主機30各部の汚損やそれに伴う性能劣化が生じにくくなることから、より長期間の負荷上げ間隔時間を採用してもよいことになる。本構成によると、負荷上げをより適切なタイミングを実施できるため、主機30のシリンダ等の摩耗を抑制しつつ、主機30の性能を良好に保ち易くなる。
【0047】
第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0048】
第2実施形態では、取得部101は、主機30の回転数の目標値に加えて、主機30の実際の回転数である実回転数を取得する。本実施形態の計数部102は、実回転数が第2負荷上げ閾値よりも大きい状態での高負荷運転の継続時間をさらに計数する。判定部103は高負荷運転の継続時間が所定時間を超えた場合に負荷上げを実施すると判定する、
【0049】
ここで、航海においては、例えば荒天、向かい風、時化や当て潮などの気象や海象次第で主機30の回転数が小さくても負荷を大きくしなければ船舶20が十分に進行できない場合がある。このようなもともと比較的大きな負荷が必要であるような場合において負荷上げを実施すれば、平穏時などの比較的小さい負荷で船舶20が十分に進行できるような場合において負荷上げを実施するよりも、より少ない燃料消費量で負荷上げの際に必要となる負荷に到達しやすくなり、負荷上げによる燃料消費量の増大を低減できる。
【0050】
そのため、第2実施形態では、判定部103は後述の高負荷運転の継続時間が所定時間を超えた場合に負荷上げを実施すると判定する。本構成によると、負荷上げの際の燃料消費を抑制できる。
【0051】
図7は、第2実施形態の制御装置100の処理S200を示すフローチャートである。
図7のステップS201~S209は、特に言及する点を除いて
図4のステップS101~S109と基本的に同様であるため、重複する説明を省略する場合がある。
【0052】
ステップS201で、取得部101は、主機30の回転数の目標値及び実回転数を取得する。実回転数は、例えば主機30に設けられた回転数検出器(不図示)から取得される。
【0053】
ステップS202で、計数部102は、取得した実回転数が第1負荷上げ閾値よりも小さいか否かを判定する。実回転数が第1負荷上げ閾値よりも小さい場合(ステップS202のY)、処理S200はステップS203に進む。実回転数が第1負荷上げ閾値よりも小さくない場合(ステップS202のN)、処理S200はステップS204に進む。ステップS204の後、処理S200はステップS210に進む。
【0054】
ステップS210で、高負荷側負荷上げ判定処理が実施される。以下、
図8を用いて、高負荷側負荷上げ判定処理について説明する。
図8は、第2実施形態の制御装置100の高負荷側負荷上げ判定処理S210を示すフローチャートである。
【0055】
ステップS211で、判定部103は、取得した実回転数が第2負荷上げ閾値よりも大きいか否かを判定する。第2負荷上げ閾値は、例えば、第1負荷上げ閾値以上の値に予め設定される。実回転数が第2負荷上げ閾値よりも大きい場合(ステップS211のY)、高負荷側負荷上げ判定処理S210はステップS203に進む。実回転数が第2負荷上げ閾値よりも大きくない場合(ステップS211のN)、高負荷側負荷上げ判定処理S210はステップS205に進み、取得した回転数の目標値に基づいて主機30が制御される(ステップS205)。
【0056】
ステップS212で、判定部103は、取得した実回転数が第2負荷上げ閾値よりも大きい状態での高負荷運転の継続時間の計数を開始するか(高負荷運転の継続時間の計数が開始されていない場合)、又は高負荷運転の継続時間の計数を継続する(高負荷運転の継続時間の計数が既に開始されている場合)。高負荷運転の継続時間の計数値は記憶部106に記憶される。ステップS212の後、高負荷側負荷上げ判定処理S210はステップS213に進む。
【0057】
ステップS213で、判定部103は、高負荷運転の継続時間の計数値に基づいて高負荷運転の継続時間が所定時間を超えるか否かを判定することにより、負荷上げを実施するか否かを判定する。高負荷運転の継続時間が所定時間を超える場合(ステップS213のY)、負荷上げを実施すると判定し、高負荷側負荷上げ判定処理S210はステップS207に進み、回転数の目標値が変更されて(ステップS207)、負荷上げが実施される(ステップS208及びS209)。高負荷運転の継続時間が所定時間を超えない場合(ステップS213のN)、負荷上げを実施しないと判定し、高負荷側負荷上げ判定処理S210はステップS205に進み、取得した回転数の目標値に基づいて主機30が制御される(ステップS205)。なお、高負荷運転の継続時間が所定時間を超えるか否かが判定されることにより、気象や海象によって瞬時に負荷が増大した場合などの本来負荷上げが必要でない場合にまで負荷上げが実施されてしまうことが抑制される。
【0058】
その後、処理S200は終了する。
【0059】
以下、変形例について説明する。
【0060】
第2実施形態では、第2負荷上げ閾値は予め設定された値としたが、これに限定されない。低負荷運転の継続時間と負荷上げ間隔時間との差分(すなわち、低負荷運転の継続時間に対する負荷上げ間隔時間の残り時間)に基づいて第2負荷上げ閾値が設定されてよい。
図9は、第2負荷上げ閾値の設定手法の例を説明するための図である。
図9の実線で表される第2負荷上げ閾値Thaのように、例えば低負荷運転の継続時間に対する負荷上げ間隔時間の残り時間が大きいほど、第2負荷上げ閾値Thaを大きく設定してもよい。また、他の例として、第2負荷上げ閾値は、低負荷運転の継続時間と負荷上げ間隔時間との差分が大きいほど第2負荷上げ閾値が大きくなるように、第2負荷上げ閾値が段階的に設定されてもよい。まとめると、低負荷運転の継続時間と負荷上げ間隔時間との差分が相対的に大きい場合には、低負荷運転の継続時間と負荷上げ間隔時間との差分が相対的に小さい場合に比べて、第2負荷上げ閾値が大きく設定されてもよい。本構成によると、低速運転の継続時間が負荷上げ間隔時間に近づいて(上記差分が小さくなって)負荷上げの必要性が高まるほど、第2負荷上げ閾値が大きくなって負荷上げが実施されやすくなるため、より適切なタイミングで負荷上げが実施されやすくなる。
【0061】
第3実施形態
以下、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態の図面および説明では、第2実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第2実施形態と重複する説明を適宜省略し、第2実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0062】
図10は、第3実施形態の船舶20の航海システム1を例示する。
図10の航海システム1は、陸上に設置された管理センタ10と、海上を運航する船舶20と、を含む。第4実施形態では、管理センタ10は、航海計画作成装置11を含む。管理センタ10及び船舶20は、互いに通信可能に構成される。
【0063】
航海計画作成装置11は、航海条件データを取得する。航海条件データは、船舶20の識別情報、船舶20の出発地点および到着地点(発着地点)と、出発時刻および目標到着時刻(発着時刻)と、を含む。航海条件データは、例えば、経由地点やその経由地点の発着時刻を含んでもよい。航海条件データは、例えば、管理センタ10に設けられたPCなどのユーザ入力装置(不図示)を介してオペレータ等によって入力される。航海条件データは、例えば、船舶20に設けられたPCなどのユーザ入力装置(不図示)を介して船舶20の船長/乗組員などによって入力されて船舶20から管理センタ10に送信されてもよい。
【0064】
航海計画作成装置11は、取得した航海条件データに基づいて船舶20の航海計画を作成する。この航海計画は、例えば、発着地点間の航路と、航路中のウェイポイント(変針点)、航路のウェイポイント間の船速及び回転数の推奨値と、各ウェイポイントの到着時刻と、船舶20の識別情報(船舶20の名前や識別番号など)と、船舶20の出発地点および到着地点(発着地点)と、出発時刻および目標到着時刻(発着時刻)と、その航路を運航した場合に予想される船舶20の燃料消費量等を含む。航海計画作成装置11は、例えば、発着地点間において発着時刻内で航行され得る複数の航海計画を公知の方法を用いて作成し、その作成した航海計画のうち、燃料消費量が最も少ない航路を含む航海計画を決定する。航海計画作成装置11は、決定した航海計画を船舶20に送信することができる。
【0065】
図11は、第3実施形態の制御装置100の機能ブロック図である。第3実施形態の記憶部106は、航海計画作成装置11から送信された航海計画と、外乱箇所において用いられる第2負荷上げ閾値(例えば
図9の第2負荷上げ閾値Tha)と、外乱箇所ではない箇所において用いられる第2負荷上げ閾値(例えば
図9の第2負荷上げ閾値Thb)とを記憶している。外乱箇所において用いられる第2負荷上げ閾値は、外乱箇所ではない箇所において用いられる第2負荷上げ閾値よりも小さい。第3実施形態の取得部101は、船舶20の出発地点から船舶20の到着地点までの航路を含む航海計画と、航路周辺の気象及び海象をそれぞれ示す気象情報及び海象情報と、を取得する。また、
図11に示すように、第3実施形態の制御装置100は、航海計画、気象情報及び海象情報に基づいて船舶20が進行する際に船舶20の船体が受ける外乱が基準よりも大きい航路の外乱箇所を判断する外乱箇所判断部107を備える。本明細書において外乱とは、例えば、航行時の潮流、風等の海象、気象要因によって生じるものとする。本実施形態の判定部103は、外乱箇所においては外乱箇所ではない箇所で使用される第2負荷上げ閾値よりも小さい第2負荷上げ閾値を使用する。
【0066】
ここで、荒天、向かい風、時化や当て潮などの気象や海象においては、船舶20の船体が外乱を受けやすくなり、それに伴い主機30も大きい負荷が必要となる。一方、第3実施形態では、航海計画中の航路において船舶20の船体が受ける外乱が基準よりも大きい航路の外乱箇所を判断し、外乱箇所において比較的大きい第2負荷上げ閾値を使用する。これにより、外乱箇所において負荷上げを実施しやすくなるため、負荷上げによる燃料消費量の増大を効果的に抑えることができる。
【0067】
第3実施形態の制御装置100の処理について説明する。第3実施形態の制御装置100の処理は、高負荷側負荷上げ判定処理S210を除いて第2実施形態の制御装置100の処理S200と基本的に同様である。以下、
図12を用いて、第3実施形態の高負荷側負荷上げ判定処理S210について説明する。
図12は、第3実施形態の高負荷側負荷上げ判定処理S210を示すフローチャートである。
図12のステップS226~S228は、特に言及する点を除いて
図9のステップS211~S213と基本的に同様であるため、重複する説明を省略する場合がある。
【0068】
ステップS221で、取得部101は、航海計画、気象情報、海象情報及び現在の船舶20の位置(以下、現在の船位という)を取得する。ここで、航海計画は記憶部106から読み出すことにより取得される。また、航海計画中の航路周辺の気象データ及び海象データは外部の気象データサーバ及び海象データサーバ(いずれも不図示)から取得される。第3実施形態では、気象データとして風向きを示す風向きデータが用いられ、海象データとして波高と波周期とを示す波浪データ及び潮の向きを示す潮流データが用いられる。気象データ及び海象データは、現在の気象及び海象の状況に関する情報のみならず、将来の気象及び海象の状況に関する情報も含んでよい。現在の船位は、衛星航法システム、例えばGPS用の衛星から送信される衛星航法システム用信号、例えばGPS信号を受信する例えばGPS受信機(図示せず)の受信信号に基づいて取得され、例えば船の緯度及び経度などを示す。ステップS221の後、高負荷側負荷上げ判定処理S210はステップS222に進む。
【0069】
ステップS222で、外乱箇所判断部107は、航海計画中の航路周辺の気象データ及び海象データに基づいて航海計画中の航路の外乱箇所を判断する。例えば、外乱箇所判断部107は、航路中において、向かい風である箇所、当て潮である箇所、波高がその基準よりも大きい箇所等を、船舶20が進行する際に船舶20の船体が受ける外乱が基準よりも大きい外乱箇所として判断する。しかし、これらに限定されず、他の手法により外乱箇所が判断されてもよい。外乱箇所は、記憶部106に記憶される。ステップS222の後、高負荷側負荷上げ判定処理S210はステップS223に進む。
【0070】
ステップS223で、判定部103は、現在の船位が外乱箇所であるか否かを判断する。現在の船位が外乱箇所である場合(ステップS223のY)、高負荷側負荷上げ判定処理S210はステップS224に進む。現在の船位が外乱箇所ではない場合(ステップS223のN)、高負荷側負荷上げ判定処理S210はステップS225に進む。
【0071】
ステップS224で、判定部103は、外乱箇所で用いられる比較的小さい第2負荷上げ閾値を使用する。これにより、ステップS226以降の処理で、負荷上げが実施されやすくなる。ステップS224の後、高負荷側負荷上げ判定処理S210はステップS226に進む。
【0072】
ステップS225で、判定部103は、外乱箇所ではない箇所で用いられる比較的大きい第2負荷上げ閾値を使用する。これにより、ステップS226以降の処理で、負荷上げが実施されにくくなる。ステップS225の後、高負荷側負荷上げ判定処理S210はステップS226に進む。ステップS226以降の処理は説明を省略する。
【0073】
以下、変形例について説明する。
【0074】
第3実施形態では、航海計画作成装置11は、管理センタ10に設けられたが、これに限定されず、例えば、船舶20に設けられてもよい。
【0075】
第3実施形態では、航海計画は、船舶20の出発地点から船舶20の到着地点までの航路を含むが、例えば航海中に航海計画を作成する場合などにおいては、船舶20の現在の船位から船舶20の到着地点までの航路を含むものであってもよい。
【0076】
第3実施形態では、気象情報及び海象情報が取得されたが、気象情報及び海象情報のうちの少なくとも1つの情報が取得されてもよい。この場合、取得した少なくとも1つの情報に基づいて外乱箇所が判断されればよい。
【0077】
第4実施形態
以下、本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態の図面および説明では、第3実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第3実施形態と重複する説明を適宜省略し、第3実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0078】
図13は、第4実施形態の制御装置100の機能ブロック図である。第4実施形態の取得部101は、航海計画と、航海計画中の航路周辺の気象情報及び海象情報と、を取得する。
図13に示すように、第3実施形態の制御装置100は、航海計画、気象情報及び海象情報に基づいて航海計画の航路を航行するのに必要な主機30の燃料消費量が最小となるように負荷上げを実施する時期及び船位を指定する指定情報を生成する生成部108を備える。第4実施形態の記憶部106は、生成した指定情報を記憶している。第4実施形態の判定部103は、現在の時刻及び現在の船位が指定情報で指定された時刻及び船位に到達した場合に負荷上げを実施すると判定する。なお、第4実施形態の制御装置100は、計数部102を有さない。
【0079】
ここで、航海計画中の航路においては、上述したような気象や海象の要因により船舶20の船体が外乱を比較的受けやすい箇所が存在するため、その箇所で負荷上げを実施する方が負荷上げによる燃料消費量の増大を抑制する観点から好ましい。
【0080】
上記を踏まえて、第4実施形態の制御装置100の処理について説明する。
図14は、第4実施形態の制御装置100の処理S300を示すフローチャートである。
図14のステップS303~S306は、特に言及する点を除いて
図4のステップS105、及びS107~S109と基本的に同様であるため、重複する説明を省略する場合がある。
【0081】
ステップS301で、取得部101は、現在の時刻及び現在の船位を取得する。ステップS301の後、処理S300はステップS302に進む。
【0082】
ステップS302で、判定部103は、現在の時刻及び現在の船位が指定情報で指定された時刻及び船位に到達したか否かを判定する。ここで、本実施形態の指定情報では、負荷上げの実施を前提として、航海計画の航路を航行する際に必要な燃料消費量が最小となるように負荷上げを実施する時刻及び船位(例えば、ウェイポイントとその到達時刻)が指定される。指定情報を生成する際に用いられる燃料消費量は、例えば、航海計画における船速及び回転数の推奨値、負荷上げの際に要求される回転数等に基づいて公知の手法により算出される。指定された時刻及び船位に到達した場合(ステップS302のY)、処理S300はステップS304に進む。指定された時刻及び船位に到達していない場合(ステップS302のN)、処理S300はステップS303に進む。
【0083】
ステップS303~S306の後、処理S300は終了する。
【0084】
第4実施形態では、現在の時刻及び現在の船位に基づいて負荷上げを実施するか否かが判定され、負荷上げを実施すると判定された場合には主機30の負荷を増大させるように変更された目標値に基づいて主機30を制御することにより、負荷上げが実施される。本構成によると、負荷上げの時刻及び船位を予め指定することにより負荷上げが自動的に実施されるため、負荷上げを実施する際の操船者の作業負担を軽減することが可能となる。
【0085】
。第4実施形態では、航海計画の航路を航行するのに必要な主機30の燃料消費量が最小となるように負荷上げを実施する時刻及び船位の少なくとも1つを指定され、現在の時期及び現在の船位の少なくとも1つが指定された時刻及び船位の少なくとも1つに到達した場合に負荷上げを実施すると判定される。本構成によると、負荷上げによる燃料消費量の増大を効果的に抑制することができる。
【0086】
以下、変形例について説明する。
【0087】
第4実施形態では、指定情報は、主機30の燃料消費量が最小となるように負荷上げを実施する時期及び船位を指定したが、これに限定されず、航海計画の航路を航行するのに必要な主機30の燃料消費量が基準値以下となるように負荷上げを実施する時期及び船位を指定するものであってもよい。燃料消費量が基準値以下となるように負荷上げの時刻及び船位を予め指定することにより、負荷上げによる燃料消費量の増大を効果的に抑制することができる。
【0088】
第4実施形態では、指定情報は、負荷上げを実施する時刻及び船位を指定したが、これら時刻及び船位の少なくとも1つを指定するものであってもよい。この場合、現在の時刻及び現在の船位の少なくとも1つが指定情報で指定された時刻及び船位の少なくとも1つに到達したか否かが判断されればよい。
【0089】
第4実施形態では、生成部108が指定情報を生成したが、これに限定されず、航海計画作成装置11において指定情報が生成されて、航海計画に指定情報が含まれていてもよい。
【0090】
第5実施形態
以下、本発明の第5実施形態を説明する。第5実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0091】
図15は、第5実施形態の制御装置100の機能ブロック図である。第5実施形態の取得部101は、主機30の回転数の目標値に加えて、主機30の燃料噴射量の目標値を取得する。
図15に示すように、第5実施形態の制御装置100は、実回転数に応じて設定される値を所定時間毎に積算する積算部109を含む。第5実施形態の判定部103は、その積算結果が負荷上げ開始閾値を超えた場合に負荷上げを実施すると判定する。第5実施形態の記憶部106は、回転数及び燃料噴射量と積算する値との関係を示すカウンタテーブル(
図17参照)と、負荷上げ開始閾値と、負荷上げ終了閾値と、を記憶している。
【0092】
図16は、第5実施形態の制御装置100の処理S400を示すフローチャートである。
図16のステップS406~S408は、特に言及する点を除いて
図4のステップS105、及びS107~S108と基本的に同様であるため、重複する説明を省略する場合がある。
【0093】
ステップS401で、取得部101は、主機30の回転数及び燃料噴射量の目標値を取得する。ステップS401の後、処理S400はステップS402に進む。
【0094】
ステップS402で、積算部109は、回転数及び燃料噴射量の目標値に応じて設定される値を積算する。例えば、本実施形態の積算部109は、記憶部106に記憶されたカウンタテーブルを用いて求めた値を積算してその積算結果を記憶部106に記憶する。
【0095】
図17は、回転数及び燃料噴射量と積算する値との関係を示すカウンタテーブルを例示する。
図17に示すように、回転数の目標値が0%以上20%未満及び40%以上60%未満の範囲では燃料噴射量の目標値の範囲にかかわらず、積算する値は0に設定される。回転数の目標値が20%以上40%未満の範囲では燃料噴射量の目標値が0%以上20%未満の範囲及び20%以上100%以下の範囲でそれぞれ積算する値は0.1及び1に設定される。また、回転数の目標値が40%以上60%未満の範囲では燃料噴射量の目標値の範囲にかかわらず、積算する値は0.5に設定される。
【0096】
一方、
図17に示すように、回転数の目標値が80%以上の範囲で、積算する値は負の値に設定される。具体的には、回転数の目標値が60%以上80%未満の範囲では燃料噴射量の目標値が0%以上60%未満の範囲及び60%以上100%以下の範囲でそれぞれ積算する値は-6及び-8に設定される。また、回転数の目標値が80%以上100%以下の範囲では燃料噴射量の目標値が0%以上60%未満の範囲及び60%以上100%以下の範囲でそれぞれ積算する値は-8及び-10に設定される。ステップS402の後、処理S400はステップS403に進む。
【0097】
ステップS403で、判定部103は、積算結果が負荷上げ開始閾値よりも大きいか否かを判定する。負荷上げ開始閾値は適宜設定される。積算結果が負荷上げ開始閾値よりも大きい場合(ステップS403のY)、処理S400はステップS407に進む。積算結果が負荷上げ開始閾値よりも大きくない場合(ステップS403のN)、処理S400はステップS404に進む。
【0098】
ステップS404で、判定部103は、負荷上げを実施中であるか否かを判定する。負荷上げを実施中である場合(ステップS404のY)、処理S400はステップS405に進む。負荷上げを実施中ではない場合(ステップS404のN)、処理S400はステップS406に進む。
【0099】
ステップS405で、判定部103は、積算結果が負荷上げ終了閾値よりも小さいか否かを判定する。負荷上げ終了閾値は、負荷上げ開始閾値よりも小さい値に適宜設定される。積算結果が負荷上げ終了閾値よりも小さい場合(ステップS405のY)、負荷上げを終了すると判定し、処理S400はステップS406に進む。これにより、負荷上げが終了され、取得した目標値を用いて主機30が制御される(ステップS406)。積算結果が負荷上げ終了閾値よりも小さくない場合(ステップS405のN)、処理S400はステップS407に進む。これにより、負荷上げが継続される(ステップS407及びS408)。
【0100】
ステップS406~S408の後、処理S400は終了する。
【0101】
第5実施形態では、取得した目標値に応じて設定される値が所定時間毎に積算され、積算結果が負荷上げ開始閾値よりも大きい場合に負荷上げを実施すると判定される。本構成によると、負荷上げが自動的に実施されるため、負荷上げを実施する際の操船者の作業負担を軽減することが可能となる。
【0102】
第5実施形態では、積算部109は取得した目標値が所定値以上の場合には負の値を用いて積算する。本構成によると、高負荷で運転された場合には負荷上げが実施されにくくなるため、より適切なタイミングで負荷上げを実施できる。
【0103】
第5実施形態では、積算結果が負荷上げ開始閾値よりも小さい負荷上げ終了閾値を下回った場合、負荷上げを終了すると判定し、制御部105は負荷上げを終了すると判定された場合に取得した目標値を用いて主機30を制御する。本構成によると、積算結果が十分に小さくなり、負荷上げが十分に実施されたタイミングで負荷上げを終了できるため、主機30のシリンダ等が不必要に摩耗してしまうことを抑制できる。
【0104】
以下、変形例について説明する。
【0105】
第5実施形態では、主機30の回転数及び燃料噴射量の目標値が取得されたが、これに限定されず、主機30の実際の負荷が取得されてもよいし、主機30の回転数及び燃料噴射量の少なくとも1つの目標値と主機30の実際の負荷との少なくとも1つが取得されてもよい。
【0106】
以上の各実施形態で説明したように、低負荷運転の継続時間と、現在の時刻と、現在の船位と、の少なくとも1つに基づいて負荷上げを実施するか否かが判定され、負荷上げを実施すると判定された場合に目標値が変更されて負荷上げが実施される。本構成によると、負荷上げを実施する際の操船者の作業負担を軽減することが可能となる。
【0107】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0108】
上述した各実施形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0109】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0110】
1 航海システム、 10 管理センタ、 20 船舶、 30 主機、 50 テレグラフ装置、 51 操作ハンドル、 100 制御装置、 101 取得部、 102 計数部、 103 判定部、 104 変更部、 105 制御部、 106 記憶部、 107 外乱箇所判断部、 108 生成部、 109 積算部。