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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183571
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】可動式通路
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B61B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097151
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】石原 啓守
(72)【発明者】
【氏名】北森 達也
(72)【発明者】
【氏名】池田 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 啓明
(72)【発明者】
【氏名】青木 優介
(72)【発明者】
【氏名】増田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】井本 清紀
(72)【発明者】
【氏名】山川 弘平
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】堂城 昌宏
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101AA02
3D101AA05
3D101AA24
3D101AA37
3D101AA39
(57)【要約】
【課題】駆動機構を前後方向に小型化できる可動式通路を提供すること。
【解決手段】固定通路20に対する中間通路30の張出量L1を大きくすることで可動式通路10を短縮状態から伸長状態へ切り換える回転式駆動機構60は、アーム61の一端部61aが固定通路20に軸支され、アーム61の他端部61bにスライダ63が軸支される。中間通路30に取り付けられるスライドガイド64にはスライダがスライド可能に係合される。駆動部65によりアーム61を回動させると、スライドガイド64上をスライダ63がスライドしつつ、一端部61aに対し他端部61bが前後方向に移動するため張出量L1が変化する。この回転式駆動機構60で変化可能な張出量L1の範囲の約半分がアーム61の長さとなるので、回転式駆動機構60を前後方向に小型化できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホームの前方に停車した車両に当接される伸長状態と、その伸長状態に対し前記ホーム側へ短縮した短縮状態と、を切り換えて前後方向に伸縮する可動式通路であって、
前後方向に延びた第1通路と、
その第1通路から前後方向へ張り出す第2通路と、
前記第1通路に対する前記第2通路の前後方向の張出量を大きくすることで前記短縮状態から前記伸長状態へ切り換える回転式駆動機構と、を備え、
その回転式駆動機構は、
前後方向に垂直な第1軸で前記第1通路に一端部が軸支されるアームと、
前記第1軸に平行な第2軸で前記アームの他端部に軸支されるスライダと、
前記第2軸に垂直な方向であって前後方向と交わる方向へスライド可能に前記スライダが係合されて前記第2通路に取り付けられるスライドガイドと、
前記第1軸または前記第2軸を中心として前記アームを回動させる駆動部と、を備えることを特徴とする可動式通路。
【請求項2】
前記第1通路は、前記ホームに固定され、
前記駆動部は、前記第1通路に取り付けられて前記第1軸の周りに前記アームを駆動させることを特徴とする請求項1記載の可動式通路。
【請求項3】
前記アーム、前記スライダ、前記スライドガイド及び前記駆動部は、複数組設けられ、
各組の前記駆動部による前記アームの回動が連結ロッドによって同期されることを特徴とする請求項1記載の可動式通路。
【請求項4】
前記回転式駆動機構は、前記伸長状態において前記第1軸または前記第2軸を中心とした前記アームの回動を止めるブレーキを備えることを特徴とする請求項1記載の可動式通路。
【請求項5】
前記ブレーキは、非通電時に前記アームの回動を止める無励磁型の電磁ブレーキであることを特徴とする請求項4記載の可動式通路。
【請求項6】
前記回転式駆動機構は、前記アームの回動に同期して回転する回転軸と、前記駆動部によって回転される駆動軸と、前記ブレーキによって回転が止められる制動軸と、それらの軸とは異なる連結軸と、を4つのマイタギヤで互いに連結して回転を同期させるギヤボックスを備え、
前記アーム、前記スライダ、前記スライドガイド、前記駆動部、前記ブレーキ及び前記ギヤボックスは、複数組設けられ、
各組の前記ギヤボックスの前記連結軸の回転が連結ロッドによって同期されることを特徴とする請求項4記載の可動式通路。
【請求項7】
前記第1通路および前記第2通路の一方から他方とは反対側へ張り出す第3通路と、
前記第1通路および前記第2通路の一方に対する前記第3通路の前後方向の張出量を大きくすることで前記短縮状態から前記伸長状態へ切り換えると共に、前記伸長状態におけるその張出量が、前記ホームから前記車両までの距離に応じて調整される調整駆動機構と、を備え、
前記回転式駆動機構は、前記伸長状態において、前記第1軸と前記第2軸とが前後方向に並ぶことで前記第1通路に対する前記第2通路の張出量が最大にされることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の可動式通路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動機構によって伸縮する可動式通路に関し、特にその駆動機構を小型化できる可動式通路に関する。
【背景技術】
【0002】
駅のホームに取り付けられる可動式通路には、複数の通路を入れ子構造にして前後方向に伸縮可能としたものがある(特許文献1)。この可動式通路は、外側の通路に対し内側の通路を前後方向に張り出させて伸長状態とされ、外側の通路に内側の通路を入り込ませることで短縮状態とされる。伸長状態の可動式通路はホームに停車した車両の乗降口に当接され、この可動式通路を通ってホームと車両との間で乗客が乗降する。
【0003】
従来、可動式通路の短縮状態と伸長状態とを切り換えるために、複数の通路のうち第1通路に対する第2通路の張出量を変化させる駆動機構としては、前後方向に伸縮するエアシリンダや油圧シリンダ等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04-325365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術において、エアシリンダや油圧シリンダ等の駆動機構は、前後方向に伸縮するものであるため、その駆動機構の配置に必要な前後方向のスペースが大きくなり易く、可動式通路が大型化するおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、駆動機構を小型化できる可動式通路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の可動式通路は、ホームの前方に停車した車両に当接される伸長状態と、その伸長状態に対し前記ホーム側へ短縮した短縮状態と、を切り換えて前後方向に伸縮するものであって、前後方向に延びた第1通路と、その第1通路から前後方向へ張り出す第2通路と、前記第1通路に対する前記第2通路の前後方向の張出量を大きくすることで前記短縮状態から前記伸長状態へ切り換える回転式駆動機構と、を備え、その回転式駆動機構は、前後方向に垂直な第1軸で前記第1通路に一端部が軸支されるアームと、前記第1軸に平行な第2軸で前記アームの他端部に軸支されるスライダと、前記第2軸に垂直な方向であって前後方向と交わる方向へスライド可能に前記スライダが係合されて前記第2通路に取り付けられるスライドガイドと、前記第1軸または前記第2軸を中心として前記アームを回動(回転)させる駆動部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の可動式通路によれば、第1通路に対する第2通路の張出量を大きくすることで可動式通路を短縮状態から伸長状態へ切り換える回転式駆動機構は、アームとスライダとスライドガイドと駆動部とを備える。前後方向に垂直な第1軸でアームの一端部が第1通路に軸支され、第1軸に平行な第2軸でアームの他端部にスライダが軸支される。第2通路に取り付けられるスライドガイドには、第2軸に垂直な方向であって前後方向と交わる方向へスライド可能にスライダが係合される。駆動部により第1軸または第2軸を中心としてアームを回動させると、スライドガイド上をスライダがスライドしつつ、第1軸(アームの一端部)に対し第2軸(アームの他端部)が前後方向に移動するため、第1通路に対して第2通路の張出量が変化する。
【0009】
第1軸と第2軸とが前後方向に並んだときに、第1通路に対する第2通路の張出量が最大または最小となる。その最大と最小との差が、回転式駆動機構で変化可能な張出量の範囲であり、その範囲の約半分がアームの長さとなる。これにより、前後方向に伸縮するエアシリンダ等では張出量を大きくする分とほぼ同じだけ自身を伸ばす必要があるのに比べ、回転式駆動機構を小型化できる。
【0010】
請求項2記載の可動式通路によれば、請求項1記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。ホームに第1通路が固定されるため、短縮状態と伸長状態との切り換え時にホームに対し第2通路が移動する。駆動部は、第1通路に取り付けられて第1軸の周りにアームを駆動させる。これにより、第2通路に駆動部が取り付けられる場合と比べて第2通路を軽量化できる。その結果、第2通路を移動させるために必要な力を小さくできるので、その力を生み出す駆動部を小型化できると共に、その力を伝達するアーム等に必要な剛性を低減できる。
【0011】
請求項3記載の可動式通路によれば、請求項1記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。アーム、スライダ、スライドガイド及び駆動部は、複数組設けられるので、第1通路に対し第2通路の張出量を変化させるために必要な駆動部の力を小さくし易い。そのため、駆動部を小型化し易くできると共に、アーム等に必要な剛性を低減し易くできる。
【0012】
更に、これら各組の駆動部によるアームの回動が連結ロッドによって同期される。これにより、例えば一部の組の駆動部が故障した場合でも、その組のアームを他の組の駆動部で回動させることができる。また、各組の駆動部が正常に動作している場合、複数のアームの回動に差を生じ難くでき、第1通路に対する第2通路の張出量の変化をスムーズにできる。
【0013】
請求項4記載の可動式通路によれば、請求項1記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。回転式駆動機構は、伸長状態において第1軸または第2軸を中心としたアームの回動を止めるブレーキを備えるので、その回動により第1通路に対する第2通路の張出量が変化することを止めることができる。その結果、伸長状態の可動式通路と車両との当接の意図しない解除を抑制できる。
【0014】
請求項5記載の可動式通路によれば、請求項4記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。ブレーキは、非通電時にアームの回動を止める無励磁型の電磁ブレーキであるので、停電時に自動的にアームの回動を止めることができる。その結果、停電時において第1通路に対する第2通路の張出量の変化を抑制できる。
【0015】
請求項6記載の可動式通路によれば、請求項4記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。回転式駆動機構は、アームの回動に同期して回転する回転軸と、駆動部によって回転される駆動軸と、ブレーキによって回転が止められる制動軸と、それらの軸とは異なる連結軸と、を4つのマイタギヤで互いに連結して回転を同期させるギヤボックスを備える。このアーム、スライダ、スライドガイド、駆動部、ブレーキ及びギヤボックスは、複数組設けられ、各組のギヤボックスの連結軸の回転が連結ロッドによって同期される。これにより、アームの回動や停止のために各組の駆動部やブレーキで必要な力を小さくできると共に、複数のアームの回動に差を生じ難くして第1通路に対する第2通路の張出量の変化をスムーズにできる。
【0016】
更に、回転軸、駆動軸、制動軸および連結軸が4つのマイタギヤにより一か所で連結されているので、駆動軸、制動軸および連結軸を個別に回転軸と連結させる場合と比べて回転式駆動機構を小型化できる。
【0017】
請求項7記載の可動式通路によれば、請求項1から6のいずれかに記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1通路および第2通路の一方から他方とは反対側へ第3通路が張り出す。第1通路および第2通路の一方に対する第3通路の前後方向の張出量を大きくすることで短縮状態から伸長状態へ切り換える調整駆動機構は、伸長状態におけるその張出量をホームから車両までの距離に応じて調整する。これにより、第3通路の張出量によってホームから車両までの可動式通路の長さを調整できる。
【0018】
回転式駆動機構は、伸長状態において、第1軸と第2軸とが前後方向に並ぶことで第1通路に対する第2通路の張出量が最大にされる。この場合、例えば地震などで車両が揺れることによって第1通路に対し第2通路へ、可動式通路が伸縮する方向の力が加わっても、第1軸および第2軸周りにアームが回動し難いので、第1通路から第2通路を最大まで張り出させた状態を維持し易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態における可動式通路の斜視図である。
図2】可動式通路の背面図である。
図3図2のIII-III線における可動式通路の断面図である。
図4図3のIV-IV線における可動式通路の断面図である。
図5】(a)は図3及び図4の伸長状態から可動式通路を所定量短縮した状態を示す可動式通路の断面図であり、(b)は短縮状態まで短縮した可動式通路の断面図である。
図6】可動式通路の電気的構成を示したブロック図である。
図7】可動式通路の制御装置で実行されるメイン処理のフローチャートである。
図8】第2実施形態における可動式通路の斜視図である。
図9】可動式通路の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず図1を参照して、第1実施形態における可動式通路10の全体構成について説明する。図1は、可動式通路10の斜視図である。なお図1では、可動式通路10を最大まで伸長した状態を図示すると共に、可動式通路10の一部(例えば側壁22の上端同士を繋ぐ天井24等)を省略して模式的に図示している。
【0021】
また、図1を含む各図面の矢印F-Bは、可動式通路10の伸縮方向を示しており、矢印F側が伸縮方向における前方側であり、矢印B側が伸縮方向における後方側である。また、矢印L-Rは、可動式通路10の伸縮方向と垂直な水平方向を示し、矢印U-Dは、伸縮方向および水平方向と垂直な可動式通路10の上下方向を示している。また、以下の説明においては、可動式通路10の伸縮方向を単に「前後方向」と記載して説明する。
【0022】
図1に示す通り、可動式通路10は、駅のホーム2に固定される固定通路20と、その固定通路20から前方(矢印F方向)へ張り出す中間通路30と、その中間通路30から前方へ張り出す先端通路40と、を備える可動式の通路である。
【0023】
固定通路20に対する中間通路30の前方への張出量L1を大きくし、中間通路30に対する先端通路40の前方への張出量L2を大きくすることで可動式通路10が伸長状態となる。この伸長状態において、ホーム2の前方に停車した車両4(図3参照)の乗降口に先端通路40の先端部44が当接する。これにより、伸長状態の可動式通路10を通ってホーム2と車両4との間で乗客の乗降が可能になる。
【0024】
一方、張出量L1,L2が最小となるように、可動式通路10をホーム2側へ短縮させた状態が短縮状態である。ホーム2の前方を車両4が走行するときは、可動式通路10が短縮状態となっている。
【0025】
固定通路20には左右方向(矢印L-R方向)に延びる仕切壁21が形成され、この仕切壁21によってホーム2側と車両4の走行路側とが仕切られる。仕切壁21は、固定通路20の前方側の先端部を構成し、略矩形の開口21aが形成されている。この開口21aから中間通路30が前方へ張り出す。
【0026】
仕切壁21の後面から後方側へ側壁22が延びている。側壁22は、開口21aを挟んで左右一対に設けられる。これら一対の側壁22の各々の内面(中間通路30側を向く壁面)には、前後方向に延びるレール23が固定される。
【0027】
一対の側壁22の上端同士は天井24(図2参照)によって繋がれ、その天井24と一対の側壁22とホーム2とによって固定通路20が前後方向に延びた四角筒状に形成される。なお、固定通路20の下部はホーム2に限らず、ホーム2上に固定した別部材から構成しても良い。
【0028】
中間通路30は、固定通路20の開口21aに挿入される通路である。中間通路30は、下面を構成する床部31と、左右両面をそれぞれ構成する一対の壁部32と、上面を構成する天部33とによって、前後両側にそれぞれ開口した四角筒状に形成されている。
【0029】
先端通路40は、中間通路30に挿入される通路であり、中間通路30よりも一回り小さい。中間通路30と同様に、先端通路40は、下面を構成する床部41と、左右両面をそれぞれ構成する一対の壁部42と、上面を構成する天部43とによって、前後両側にそれぞれ開口した四角筒状に形成されている。
【0030】
次いで図2及び図3を参照し、可動式通路10の各部について更に詳しく説明する。図2は可動式通路10の背面図である。図3図2のIII-III線における可動式通路10の断面図である。なお図3に示す伸長状態の可動式通路10では、固定通路20に対する中間通路30の張出量L1と、中間通路30に対する先端通路40の張出量L2とが最大になっている。
【0031】
図2及び図3に示す通り、中間通路30の先端部34(前側の端部)は、壁部32及び天部33に対し径方向内側へ張り出し、先端通路40が挿入される開口を狭めている。壁部32の上側には、前後方向に延びるレール36が固定される。
【0032】
中間通路30の後端部35は、床部31、壁部32及び天部33に対し径方向外側へフランジ状に張り出している。この後端部35の左右両縁の上部には、側壁22のレール23にスライド可能に係合するブロック35aがそれぞれ取り付けられる。このレール23及びブロック35aによって固定通路20に対する中間通路30の前後方向の移動がガイドされる。
【0033】
仕切壁21の後面には、開口21aの縁の全周に亘って環状の固定シール21bが取り付けられている。固定シール21bは、ゴム等の弾性体からなる部材であり、張出量L1が最大となった伸長状態において、仕切壁21と中間通路30の後端部35との間で全周に亘って前後方向に挟まれる。これにより、固定通路20と中間通路30との間が全周に亘ってシールされる。
【0034】
ここで、ホーム2と車両4とを接続した伸長状態の可動式通路10の外部では、駅を他の車両が通過すること等に起因して気圧が変化することがある。この気圧の変化が可動式通路10の外部から内部へ固定通路20と中間通路30との間を介して伝播することを、簡素な固定シール21bで抑制できる。
【0035】
先端通路40の先端部44は、車両4に当接される部位であり、床部41、壁部42及び天部43に対し径方向外側へフランジ状に張り出している。先端通路40の後端部45は、壁部42及び天部43に対し径方向外側へフランジ状に張り出している。この後端部45の左右両縁の上部には、中間通路30のレール36にスライド可能に係合するブロック45aがそれぞれ取り付けられる。このレール36及びブロック45aによって中間通路30に対する先端通路40の前後方向の移動がガイドされる。
【0036】
中間通路30と先端通路40との間は、これらの通路とは別部材からなる伸縮シール50によってシールされている。伸縮シール50は、中間通路30の環状の先端部34と、先端通路40の環状の先端部44とを全周に亘って連結し、先端通路40の外周側を覆う蛇腹状の筒体である。
【0037】
伸縮シール50は、複数の環状の剛体枠51を前後方向に離間して配置し、それら剛体枠51の間の各々を気密性の環状の布部材52で気密に連結することで形成されている。この布部材52は内側へ撓み変形可能に構成されている。
【0038】
これにより、伸縮シール50は、山および谷が前後方向に交互に配置された蛇腹状に形成され、剛体枠51で補強された山同士の距離を変化させることで前後方向に伸縮する。中間通路30に対する先端通路40の張出量L2に応じて伸縮シール50が伸縮するので、その張出量L2に関わらず、伸縮シール50によって中間通路30と先端通路40との間を全周に亘ってシールできる。
【0039】
中間通路30と先端通路40との間のシールは上記方法に限らず、例えば中間通路30と先端通路40との間で径方向にシール部材(例えば図9のシール部材83)を挟んでシールしても良い。しかし、この場合には張出量L2を変化させるときにシール部材が擦れて摩耗し易くなるおそれがある。このシール部材に対して、先端通路40の外周側を覆う伸縮シール50は摩耗し難い。よって、可動式通路10の外部での気圧の変化が可動式通路10の内部へ中間通路30と先端通路40との間を介して伝播することを、高耐久性の伸縮シール50で抑制できる。
【0040】
次いで、図2に加えて図4,5を参照し、可動式通路10を伸縮させる駆動機構について説明する。図4図2のIV-IV線における可動式通路10の断面図である。図5(a)は図3及び図4の伸長状態から可動式通路10を所定量短縮した状態を示す可動式通路10の断面図である。図5(b)は短縮状態までホーム2側に短縮した可動式通路10の断面図である。なお、図5(a)及び図5(b)では、図4に対して開口21aよりも紙面手前側の仕切壁21、側壁22及び回転式駆動機構60の一部を省略している。
【0041】
図4に示す通り、可動式通路10は、固定通路20に対する中間通路30の張出量L1を変化させる回転式駆動機構60と、中間通路30に対する先端通路40の張出量L2を変化させる直動式駆動機構70と、を備える。
【0042】
なお、回転式駆動機構60は可動式通路10の左右両側にそれぞれ配置され、直動式駆動機構70は可動式通路10の左右両側にそれぞれ配置されている。より具体的に、直動式駆動機構70は左右対称に配置され、回転式駆動機構60は一部(ブレーキ67近傍)を除き左右対称に配置されている。以下、ブレーキ67近傍以外は、右側の回転式駆動機構60及び直動式駆動機構70のみを説明し、左側の説明を省略する。
【0043】
直動式駆動機構70は、シリンダ71に対しピストンロッド72を出没させることで伸縮するエアシリンダである。その伸縮方向を前後方向に向けた状態で、シリンダ71が中間通路30の壁部32に取り付けられ、ピストンロッド72の先端が先端通路40の先端部44に取り付けられる。
【0044】
図4の状態から、図示しない給排部によってシリンダ71内の空気を排出することで、図5(a)、図5(b)の順に示すよう、直動式駆動機構70が短縮して張出量L2が小さくなる。一方、図5(b)の状態から給排部によってシリンダ71内へ空気を供給することで、図5(a)、図4の順に示すよう、直動式駆動機構70が伸長して張出量L2が大きくなる。
【0045】
図4に戻って説明する。回転式駆動機構60は、アーム61の回動(回転)を、一度上下の垂直運動へ変換し、レール23及びブロック35aの作用により張出量L1を変化させるクランク・スライダ機構を採用している。アーム61の一端部61aは、左右方向に沿った第1軸A1で、固定通路20に設けた支持部62に軸支(回動可能に支持)される。なお回動とは、一回転せずに、正逆両方向に回転可能なことを言う。本実施形態におけるアーム61は、第1軸A1を中心に最大で約180°回動する。
【0046】
支持部62は、中間通路30(開口21a)の上下方向の中央よりも若干下方に位置するように固定通路20の仕切壁21の前面に固定され、この固定部分から左右方向外側へ突出する。更に、支持部62の左右方向外側の端部から後方へ回転軸62aが突出し、回転軸62aが仕切壁21を貫通する(仕切壁21に設けた貫通孔を通る)。この回転軸62aの回転に同期して、支持部62の内部に設けたギヤにより第1軸A1を中心としてアーム61が回動する。
【0047】
アーム61の他端部61bは、第1軸A1と平行な第2軸A2で回動自在にスライダ63に軸支される。スライダ63は、中間通路30の壁部32に取り付けられるスライドガイド64に係合される。スライドガイド64は、中間通路30に対して垂直に配設され、スライダ63を前後から挟んで上下方向に延びるレールである。このスライドガイド64に沿ってスライダ63が上下方向にスライドする。
【0048】
回転式駆動機構60には、第1軸A1を中心にアーム61を回動させるための駆動力を発生させる駆動部65が設けられている。駆動部65は、電動モータからなり、仕切壁21の後面に取り付けられる。
【0049】
駆動部65の駆動力をアーム61へ伝達する機構については後述し、まずアーム61の回動に伴う可動式通路10の動作を説明する。図4に示す可動式通路10の伸長状態では、第1軸A1(アーム61の一端部61a)の前方に第2軸A2(アーム61の他端部61b)が位置してそれらが前後方向に並び、スライダ63がスライドガイド64の下端に位置し、張出量L1が最大となっている。
【0050】
この状態から、第1軸A1を中心に他端部61b(第2軸A2)を上方および後方へ回動させると、図5(a)に示す通り、その他端部61bが軸支されたスライダ63がスライドガイド64に沿って上方へスライドしつつ、そのスライドガイド64を他端部61bが後方へ引っ張る。これにより、スライドガイド64が取り付けられた中間通路30が後方へ移動して張出量L1が小さくなる。
【0051】
第1軸A1の上方に第2軸A2が位置する図5(a)の状態で、張出量L1が最大値の半分である。ここから更に、第1軸A1を中心に他端部61bを後方および下方へ回動させると、スライドガイド64に沿ってスライダ63が下方へスライドしつつ、中間通路30が後方へ移動して張出量L1が小さくなる。このとき、アーム61の他端部61b側が仕切壁21の開口21a内に入り込むように、壁部32と開口21aの縁との間隔が設定されている。
【0052】
図5(b)に示す通り、この張出量L1が最小となった可動式通路10の短縮状態では、第1軸A1の後方に第2軸A2が位置する。このとき、張出量L1は負の値となる。つまり固定通路20の内部へ中間通路30が退いている。これにより、ホーム2から短縮状態の可動式通路10の前方への張り出しを最小限に留めることができる。
【0053】
可動式通路10を図5(b)の短縮状態から図4の伸長状態へ切り換えて張出量L1を大きくするには、上記説明と逆に、第1軸A1を中心に他端部61bを前方へ180°回動させれば良い。このように、図4における張出量L1の最大と、図5(b)における張出量L1の最小との差が、回転式駆動機構60で変化可能な張出量L1の範囲であり、この範囲の約半分がアーム61の長さ(第1軸A1から第2軸A2までの距離)となる。
【0054】
これに対し、前後に伸縮する直動式駆動機構70では、中間通路30に対する先端通路40の張出量L2を大きくする分とほぼ同じだけ直動式駆動機構70を伸ばす必要がある。特に、直動式駆動機構70を最も短くした場合でも、直動式駆動機構70で変化可能な張出量L2の範囲と直動式駆動機構70の長さとが略同一となる。よって、このような前後方向に伸縮する直動式駆動機構70と比べ、回転式駆動機構60を前後方向に小型化できる。
【0055】
また、ホーム2に固定通路20が固定されるため、可動式通路10の伸長状態と短縮状態との切り換え時には、ホーム2に対し中間通路30が移動する。更に、固定通路20の仕切壁21に駆動部65が取り付けられているため、駆動部65が中間通路30に取り付けられる場合と比べて中間通路30を軽量化できる。
【0056】
その結果、中間通路30を移動させるために必要な力を小さくできるので、その力を生み出す駆動部65を小型化できると共に、その力を伝達するアーム61等に必要な剛性を低減できる。加えて、駆動部65に電力供給するための配線を中間通路30と一緒に移動させずに済むので、その電力供給用の構成を簡素化できる。
【0057】
次いで駆動部65の駆動力をアーム61へ伝達する機構について説明する。図2及び図4に示す通り、駆動部65から上方へ駆動軸65aが突出する。駆動部65は、電力を変換した駆動力によって駆動軸65aを回転駆動させる。この駆動軸65aは、回転軸62aに回転(駆動力)を伝達するためのギヤボックス66に接続される。
【0058】
ギヤボックス66は、仕切壁21を貫通した回転軸62aが接続される位置で仕切壁21の後面に取り付けられる。ギヤボックス66の内部には、駆動軸65aの上端に固定されるマイタギヤ66aと、回転軸62aの後端に固定されるマイタギヤ66bと、前後方向に延びる制動軸67aの前端に固定されるマイタギヤ66cと、上下方向に延びる連結軸68aの下端に固定されるマイタギヤ66dと、が設けられる。
【0059】
マイタギヤ66a~66dは、互いに垂直な2軸間の回転を伝達する傘状の歯車である。マイタギヤ66aにマイタギヤ66b,66cが噛み合い、マイタギヤ66b,66cにマイタギヤ66dが噛み合う。これにより、十字に配置された駆動軸65aと回転軸62aと制動軸67aと連結軸68aとが互いに同期する。その結果、駆動部65が駆動軸65aを回転させると回転軸62aが回転し、上述した通り回転軸62aの回転に応じてアーム61が回動する。
【0060】
制動軸67aは、ブレーキ67による制動力によって回転が止められる。ブレーキ67によって制動軸67aの回転を止めると、同期する回転軸62aの回転も止まってアーム61の回動も止まる。これにより、伸長状態の可動式通路10でホーム2と車両4とを接続したとき、アーム61の回動により固定通路20に対する中間通路30の張出量L1が変化することをブレーキ67によって止めることができる。その結果、伸長状態の可動式通路10と車両4との当接の意図しない解除を抑制できる。
【0061】
ブレーキ67は、非通電時に制動軸67a(アーム61)の回転を止めて通電時に制動軸67aの回転を許容する無励磁型の電磁ブレーキである。そのため、停電時に自動的にアーム61の回動を止めることができ、停電時に張出量L1が変化して可動式通路10が伸縮することを抑制できる。
【0062】
なお、左右に設けられた回転式駆動機構60のうち右側では、ブレーキ67がギヤボックス66の後部に取り付けられ、制動軸67aの後端がブレーキ67に直接接続される。これに対し、左側の回転式駆動機構60では、ギヤボックス66の後部に取り付けた伝達部69に制動軸67aの後端が接続される。
【0063】
この伝達部69は、制動軸67aから左方へ延びている。制動軸67aの左端部には、制動軸67aに平行な手動軸69aが設けられ、手動軸69aと制動軸67aとが伝達部69によって同期される。左側の回転式駆動機構60のブレーキ67は、この手動軸69aの前端に接続されることで、伝達部69を介して制動軸67aに制動力を伝達する。
【0064】
手動軸69aの後端には、手動軸69aを手動で回転させるためのハンドル69bが接続されている。左右両側のブレーキ67のレバー67bをそれぞれ操作し、ブレーキ67によるアーム61の回動の停止を解除した状態で、ハンドル69bを作業員などが手回しすることによって停電時などでもアーム61を回動させて張出量L1を変化させることができる。
【0065】
以上のようなアーム61、支持部62、スライダ63、スライドガイド64、駆動部65、ギヤボックス66及びブレーキ67による1組の回転式駆動機構60は、上述した通り左右両側に略対称に設けられる。これにより、固定通路20に対する中間通路30の張出量L1を変化させるために必要な駆動部65の駆動力を小さくし易い。同様に、アーム61の回動を止めるために必要なブレーキ67の制動力を小さくし易い。これらの結果、駆動部65やブレーキ67を小型化し易くできると共に、アーム61等に必要な剛性を低減し易くできる。
【0066】
これら各組の回転式駆動機構60は、連結ロッド68によって連結されている。連結ロッド68は、左右の各組のギヤボックス66から上方へ突出する2本の連結軸68aと、それら2本の連結軸68aに垂直な同期軸68bと、を備える。
【0067】
連結軸68aの上端は、固定通路20の天井24よりも上方へ延び、マイタギヤ68cが固定される。同期軸68bは、天井24の上方に配置され、両端にマイタギヤ68dがそれぞれ固定される。これらのマイタギヤ68c,68dが噛み合うことで、同期軸68bを介して2本の連結軸68aの回転が同期し、各組のアーム61の回動が連結ロッド68によって同期する。
【0068】
これにより、例えば左右いずれかの組の駆動部65やブレーキ67が故障した場合でも、その組のアーム61を他の組の駆動部65で回動させたり、アーム61の回動を他の組のブレーキ67で止めたりできる。また、各組の駆動部65が正常に動作している場合、複数のアーム61の回動に差を生じ難くでき、固定通路20に対する中間通路30の張出量L1の変化をスムーズにできる。
【0069】
各組の回転軸62a、駆動軸65a、制動軸67a及び連結軸68aが4つのマイタギヤ66a~66dで一か所(ギヤボックス66内)で連結されている。そのため、これらの駆動軸65a、制動軸67a及び連結軸68aを個別に回転軸62aと連結させる場合と比べて回転式駆動機構60を小型化できる。
【0070】
次に、ホーム2と車両4との前後方向の距離が変動する場合の可動式通路10の動作について説明する。ホーム2から車両4までの前後方向の距離は、ホーム2の形状や車両4の幅などに応じて変動することがある。また、車両4の空気ばね(図示せず)の影響により、停車時においても車両4が幅方向(可動式通路10の前後方向)に揺動することがある。
【0071】
このホーム2から車両4までの距離は、車両4が走行する軌道に設置された車両位置検知装置(リミットスイッチ等、図示せず)によって検知される。検知された距離に応じて可動式通路10の伸長状態の張出量L1,L2が調整可能とされている。
【0072】
但し、本実施形態における可動式通路10では、伸長状態において、回転式駆動機構60による張出量L1が、ホーム2から車両4までの距離に関わらず最大まで伸長される。一方、伸長状態において、直動式駆動機構70による伸長状態の張出量L2が、ホーム2から車両4までの距離に応じて調整される。
【0073】
なお、回転式駆動機構60、固定通路20及び中間通路30により形成されて伸長状態の張出量L1が最大に特定された部分を第1伸縮部11と称す。また、直動式駆動機構70、中間通路30及び先端通路40により形成されて伸長状態の張出量L2が調整される部分を第2伸縮部12と称す。
【0074】
よって、ホーム2から車両4までの前後方向の距離が変動する場合には、第1伸縮部11の張出量L1を調整しなくて済み、第2伸縮部12の張出量L2を調整することで、伸長状態の可動式通路10の長さを調整できる。このように、張出量L2を調整すれば良いので伸長状態の可動式通路10の長さを調整し易くできる。
【0075】
特に、この張出量L2の調整は、直動式駆動機構70のシリンダ71からピストンロッド72が前後方向に突出する量を調整することで行っている。この突出する量と張出量L2とが略同等となるため、回転式駆動機構60による張出量L1の調整のみや、張出量L1,L2の調整を組み合わせて可動式通路10の長さを調整する場合と比べ、直動式駆動機構70による張出量L2を調整する方が可動式通路10の長さを調整し易くできる。
【0076】
また、伸長状態における第2伸縮部12の張出量L2は変動するが、その張出量L2に関わらず伸縮シール50で第2伸縮部12の中間通路30と先端通路40との間を容易にシールできる。これに対し、第1伸縮部11の固定シール21bを伸長状態で機能させるには張出量L1を最大にする必要がある。しかし、本実施形態では、伸長状態の張出量L1が最大に特定されて固定通路20と中間通路30との前後方向の相対位置が決まっているため、伸長状態では確実に固定シール21bによるシール機能を発揮できる。
【0077】
更に、張出量L1が最大となる伸長状態において、回転式駆動機構60の第1軸A1(アーム61の一端部61a)と第2軸A2(アーム61の他端部61b)とが前後方向に並ぶ。そのため、例えば地震などで車両4が揺れて可動式通路10を短縮させるような前後方向の力が加わっても、第1軸A1及び第2軸A2周りにアーム61が回動し難い。
【0078】
加えて、スライダ63のスライド方向(スライドガイド64の延びた方向)が前後方向と垂直であるので、可動式通路10を短縮させるような前後方向の力によってスライダ63をスライドし難くでき、そのスライドに伴うアーム61の回動を抑制できる。
【0079】
これらの結果、伸長状態において、最大に特定された張出量L1を維持し易くでき、可動式通路10と車両4との意図しない解除を抑制できる。更に、伸長状態ではアーム61が回動し難いので、その回動を止めるために必要なブレーキ67の制動力を小さくし易い。その結果、ブレーキ67を小型化し易くできる。
【0080】
可動式通路10では、ホーム2側に第1伸縮部11が設けられ、最も車両4側に第2伸縮部12が設けられている。そのため、第1伸縮部11の張出量L1を変化させるとき、回転式駆動機構60によって、固定通路20に対し中間通路30だけでなく先端通路40及び直動式駆動機構70(第2伸縮部12)も一緒に前後方向へ移動させる必要がある。
【0081】
これに比べ、車両4側の第2伸縮部12では、張出量L2を変化させるときに、直動式駆動機構70によって中間通路30に対し先端通路40を前後方向へ移動させるだけで済み、その張出量L2の変化に必要な直動式駆動機構70の力を小さくできる。よって、張出量L2を直動式駆動機構70で調整しながら第2伸縮部12を小さい力で車両4に押し当てることができる。
【0082】
特に、直動式駆動機構70がエアシリンダであるため、この第2伸縮部12を車両4に押し当てたとき、直動式駆動機構70のシリンダ71内の空気が圧縮されクッションとして機能する。その結果、第2伸縮部12と車両4との当接時の衝撃を低減できる。
【0083】
次に図6,7を参照して、可動式通路10の伸縮の制御についてより詳しく説明する。図6は可動式通路10の電気的構成を示したブロック図である。可動式通路10は、各部を制御する制御装置13を備える。
【0084】
可動式通路10の制御装置13は、CPU14と、ストレージ15と、CPU14のプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであるRAM16とを有し、これらはバスライン17を介して、入出力ポート18にそれぞれ接続されている。
【0085】
入出力ポート18には、更に、回転式駆動機構60と、直動式駆動機構70と、通信装置19と、がそれぞれ接続されている。通信装置19は、車両4の停車や発進などを制御する上位制御装置Sと通信するための機器である。また、制御装置13は、図示しない車両位置検知装置で検知したホーム2から車両4までの距離を、上位制御装置Sや通信装置19を介して受信する。
【0086】
CPU14は、バスライン17により接続された各部を制御する演算装置である。ストレージ15は、CPU14により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能な不揮発性のメモリであり、制御プログラム15aが設けられる。CPU14によって制御プログラム15aが実行されると、図7のメイン処理が実行される。
【0087】
このメイン処理について説明する。図7は、可動式通路10の制御装置13で実行されるメイン処理のフローチャートである。制御装置13のメイン処理は、可動式通路10の電源が投入されている間、定期的(例えば10m秒毎)に実行される。なお、可動式通路10は、電源オン時に短縮状態とされる。
【0088】
制御装置13のメイン処理は、まず、上位制御装置Sから通信装置19を介して、可動式通路10の前に車両4が停車したことを示す信号を受信したかを確認する(S11)。なおS11の処理では、この信号の代わりに、図示しないリモコンや、車両4から発生する無線、車両4の車体に描いたマーク等を用いて車両4が停止したかを判断しても良い。
【0089】
信号などに応じて車両4が停止したと判断された場合には(S11:Yes)、可動式通路10を短縮状態から伸長状態に切り換えるため、まずはホーム2から車両4までの前後方向(車両4の幅方向)の距離を取得する(S12)。S12の処理では上述した通り、車両位置検知装置で検知した距離を上位制御装置Sや通信装置19を介して取得(受信)する。
【0090】
次いで、回転式駆動機構60を動作させて固定通路20に対する中間通路30の張出量L1を最大にする(S13)。その後、S12の処理で取得したホーム2から車両4までの距離に応じて、直動式駆動機構70により張出量L2を大きくする(S14)。例えば具体的に、先端通路40の先端部44に取り付けたクッション(図示せず)がある程度(例えば2~3cm)潰れるまで先端部44を車両4の乗降口に押し付けるように張出量L2を決定し、伸長状態への切り換えを終了する。
【0091】
なお、車両4の空気ばね(図示せず)の影響により、可動式通路10を車両4に当接している乗降時に、車両4が幅方向に揺れてホーム2から車両4までの距離が変動することがある。本実施形態では、先端通路40の先端部44に取り付けたクッションがある程度潰れるように、伸長状態の張出量L2を決定していたが、停車時のS14の処理において張出量L2の基準を決定し、このメイン処理以外の処理において、ホーム2から車両4までの距離の変動に応じて張出量L2を補正しても良い。
【0092】
以上のように制御装置13は、短縮状態から伸長状態に切り換えるとき、回転式駆動機構60による張出量L1を最大まで伸長した後で、直動式駆動機構70による張出量L2を先端通路40が車両4に当たるまで大きくすれば良いので、張出量L1,L2の調整の制御を容易にできる。
【0093】
更に、回転式駆動機構60は、駆動部65による駆動軸65aの回転を複数のギヤで減速してアーム61に伝達するので、固定通路20に対し中間通路30を移動させて張出量L1を変更するための力が大きくなり易い。伸長状態への切り換え時に、先に張出量L1を最大まで伸長した後で直動式駆動機構70による張出量L2を調整するので、回転式駆動機構60による強い力を車両4に加わり難くできると共に、直動式駆動機構70による弱い力で可動式通路10を車両4に押し当てることができる。
【0094】
なお、S11の処理において車両4が停止したと判断されていない場合には(S11:No)、即ち例えば車両4が既に停車中の場合や車両4が駅を通過する場合には、可動式通路10を短縮状態から伸長状態に切り換えるタイミングが到来していないので、S12~S14の処理をスキップし、S15の処理に移行する。また、S14の処理後にもS15の処理に移行する。
【0095】
S15の処理では、上位制御装置Sから通信装置19を介して、伸長状態の可動式通路10を通ってホーム2と車両4との間で乗客の乗降が完了したことを示す信号を受信したかを確認する。なおS15の処理では、この信号の代わりに、図示しないリモコンや、車両4から発生する無線、車両4の車体に描いたマーク等を用いて乗降が完了したかを判断しても良い。
【0096】
S15の処理で乗降が完了したと判断された場合には(S15:Yes)、回転式駆動機構60及び直動式駆動機構70を同時に作動させ、各々による張出量L1,L2の両方を最小まで短縮し(S16)、メイン処理を終了する。これにより、可動式通路10を伸長状態から短縮状態へ短時間で切り換えることができる。
【0097】
一方、S15の処理において、乗降が完了したと判断されていない場合には(S15:No)、即ち例えば乗降中である場合や可動式通路10が短縮状態である場合には、可動式通路10を伸長状態から短縮状態に切り換えるタイミングが到来していないので、S16の処理をスキップし、可動式通路10を伸長状態のまま維持する。なお、短縮状態にしてから次に可動式通路10の前に車両4が停車するまでの間であって、車両4が通過している間は(S11:No、S15:No)、可動式通路10を短縮状態のまま維持する。
【0098】
次に図8及び図9を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、第1伸縮部11及び第2伸縮部12で2段階に可動式通路10を伸縮させる場合について説明した。これに対し、第2実施形態では、第1実施形態の回転式駆動機構60を持つ第2伸縮部84により1段階で伸縮する可動式通路80について説明する。なお、第2実施形態の可動式通路80の各部のうち、第1実施形態の可動式通路10の各部と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0099】
図8は第2実施形態における可動式通路80の斜視図である。図9は可動式通路80の断面図である。可動式通路80は、駅のホーム2に固定される固定通路20と、その固定通路20から前方へ張り出す先端通路81と、固定通路20に対する先端通路81の前方への張出量L1を変化させる回転式駆動機構60と、を備える可動式の通路である。
【0100】
なお、第1実施形態では、回転式駆動機構60による伸長状態の張出量L1が最大に特定されている。これに対し、第2実施形態では、ホーム2から車両4までの前後方向の距離に応じ、回転式駆動機構60による張出量L1を調整することで、先端通路81を車両4に当接させる。即ち、固定通路20、先端通路81及び回転式駆動機構60によって、張出量L1が調整される伸縮部84が形成される。
【0101】
なお、回転式駆動機構60による伸長状態の張出量L1を最大まで伸長しない場合には、アーム61の一端部61a(第1軸A1)に対し他端部61b(第2軸A2)が斜め上前方に位置する。この場合、例えば地震などで車両4が揺れて伸長状態の可動式通路10を短縮させるような前後方向の力が加わっても、第1軸A1を中心にアーム61が回動し難くなるよう、ブレーキ67による制動力を強くすることが好ましい。
【0102】
また、第2実施形態でも第1実施形態と同様に、ホーム2から車両4までの距離を車両位置検知装置で検知しても良い。また、先端通路81の先端部34に、車両4の形状に合わせた部材(例えば第1実施形態の先端部44など)を取り付けても良い。
【0103】
先端通路81は、第1実施形態における中間通路30と略同一に形成されている。先端通路81の後端部35の前面からは、その先端通路81の全周に亘って環状の当接部82が前方へ突出している。当接部82の下部は先端通路81の床部31と重なり、当接部82の上部および側部は、天部33及び壁部32と径方向に隔てて配置される。更に、可動式通路80の伸長状態において、当接部82と、固定通路20の開口21aの縁との間は全周に亘り径方向に隔てられている。
【0104】
開口21aの縁(固定通路20の内周面の一部)の全周から径方向内側(先端通路81側)へ環状のシール部材83が突出し、伸長状態ではシール部材83の内縁が全周に亘って当接部82の外周面に接触する。これにより、伸長状態における固定通路20と先端通路81との間がシール部材83でシールされる。なお、ホーム2から車両4までの距離が変化し得る範囲の全域(伸長状態の張出量L1が変化し得る全範囲)において、シール部材83が当接部82に接触するように、後端部35から当接部82の前端までの前後方向の寸法が設定されている。
【0105】
シール部材83は、ゴム等の弾性体からなる部材であり、特に耐摩耗性の高い素材や自己潤滑性を有する素材であることが好ましい。これにより、固定通路20に対する先端通路81の張出量L1が変化するときに、シール部材83の内縁が当接部82に対し擦れても、そのシール部材83を摩耗し難くできる。
【0106】
また、シール部材83を挟む当接部82の外周面は、その部分よりも前側の先端通路81の外周面に対し径方向外側へ配置されている。そのため、当接部82よりも前側では、張出量L1が変化するときに先端通路81の外周面に対しシール部材83を擦れ難くできる。
【0107】
加えて、開口21aの縁は、その部分よりも後側の固定通路20の内周面に対し径方向内側へ配置されている。これらの結果、シール部材83が挟まれない部分の先端通路81の外周面と固定通路20の内周面とを互いに径方向に離し易くできる。よって、固定通路20と先端通路81とを接触させないために、径方向に対向する相手に対し高い加工精度が必要となる部分を、当接部82の外周面および開口21aの縁などの少ない範囲に限定でき、固定通路20及び先端通路81を製造し易くできる。
【0108】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0109】
上記実施形態では、固定通路20に対する中間通路30の張出量L1を回転式駆動機構60によって変化させ、中間通路30に対する先端通路40の張出量L2を直動式駆動機構70によって変化させる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、張出量L1を直動式駆動機構70によって変化させても良く、張出量L2を回転式駆動機構60によって変化させても良い。また、直動式駆動機構70は、エアシリンダに限らず油圧シリンダや電動シリンダ等で構成しても良い。更に、その他の既知のアクチュエータによって張出量L1,L2を変化させても良い。
【0110】
伸長状態において、張出量L1が最大に特定されると共に、ホーム2から車両4までの距離に応じて張出量L2が調整される場合に限らず、その距離に応じて張出量L1を調整すると共に張出量L2を最大に特定しても良い。更に、張出量L1,L2の両方を特定しても調整しても良い。
【0111】
また、先端通路40の内側に中間通路30を挿入し、中間通路30の内側に固定通路20を挿入するように、各通路の大小関係を変更しても良い。この場合でも、固定通路20に対する中間通路30の張出量L1は固定通路20の前端から中間通路30の前端までを指し、張出量L2は中間通路30の前端から先端通路40の前端までを指す。
【0112】
なお、固定通路20に対する中間通路30の前方への張出量L1を変化させることは、中間通路30に対する固定通路20の後方への張出量を変化させることと同義である。同様に、中間通路30に対する先端通路40の前方への張出量L2を変化させることは、先端通路40に対する中間通路30の後方への張出量を変化させることと同義である。
【0113】
上記第1実施形態では、固定通路20、中間通路30及び先端通路40の1つずつが入れ子構造となって2段階に伸縮可能な可動式通路10について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、固定通路20と先端通路40との間に、入れ子構造となった複数の中間通路30を設けることにより、可動式通路10の伸縮を3段階以上にしても良い。複数の中間通路30による入れ子構造は、回転式駆動機構60や直動式駆動機構70、その他のアクチュエータによって張出量が変化(伸縮)する。その張出量を伸長状態で特定しても調整しても良い。
【0114】
上記実施形態では、回転式駆動機構60のアーム61の一端部61aが固定通路20に軸支され、他端部61b側のスライドガイド64が中間通路30に取り付けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、一端部61aを中間通路30に軸支し、スライドガイド64を固定通路20に取り付けても良い。また、固定通路20や中間通路30の上面や下面に、一端部61aを第1軸A1で軸支したり、スライドガイド64を取り付けても良い。この場合、第1軸A1及び第2軸A2を上下方向に沿った軸とし、スライダ63が左右方向へスライドするようにスライドガイド64を配置する。スライドガイド64を前後方向に傾斜させたり湾曲させても良い。
【0115】
また、直動式駆動機構70のシリンダ71を先端通路40に取り付けて、ピストンロッド72の先端を中間通路30に取り付けても良い。中間通路30や先端通路40の上面や下面にシリンダ71やピストンロッド72を取り付けても良い。
【0116】
上記実施形態では、駆動部65によって第1軸A1周りにアーム61を回動させることで、第2軸A2によりスライダ63に対しアーム61が回動する場合について説明した。これに対し例えば、スライダ63に内蔵した駆動部65によって第2軸A2周りにアーム61を回動させ、第1軸A1により支持部62に対しアーム61を回動させても良い。
【0117】
上記実施形態では、ブレーキ67が無励磁型の電磁ブレーキである場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、油圧や空圧などを用いた既知のブレーキを用いても良い。
【0118】
上記実施形態では、アーム61の一端部61a及び他端部61bが前後方向に並んだときが張出量L1を最小にした短縮状態である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。それらが前後方向に並ばずに最小以外の所定の張出量L1にした状態を短縮状態としても良い。同様に、伸長状態で特定される張出量L1を、最大以外の特定の値としても良い。
【0119】
上記実施形態では、固定シール21bが固定通路20の仕切壁21に取り付けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、中間通路30の後端部35の前面に固定シール21bを取り付けても良い。また、前後方向に挟まれる固定シール21bによって、中間通路30と先端通路40との間や固定通路20と先端通路81との間をシールしても良い。また、伸縮シール50によって固定通路20と中間通路30又は先端通路81との間をシールしても良く、シール部材83によって中間通路30と先端通路40との間をシールしても良い。
【0120】
上記実施形態では、伸縮シール50の前端を先端通路40の先端部44に連結する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、先端部44以外の先端通路40の外周面からフランジ状に外周部を張り出させ、その外周部に伸縮シール50を全周に亘って連結しても良い。
【0121】
上記実施形態では、レール23及びブロック35aによる1組のガイド機構によって固定通路20に対する中間通路30の前後方向の移動をガイドし、レール36及びブロック45aによる1組のガイド機構によって中間通路30に対する先端通路40の前後方向の移動をガイドする場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、中間通路30にレール23を設けて固定通路20にブロック35aを設けたり、先端通路40にレール36を設けて中間通路30にブロック45aを設けても良い。また、中間通路30や先端通路40の上面や下面、左右両面に1又は複数組のガイド機構を設けても良い。
【符号の説明】
【0122】
2 ホーム
4 車両
10,80 可動式通路
20 固定通路(第1通路)
30 中間通路(第2通路)
40 先端通路(第3通路)
60 回転式駆動機構
61 アーム
61a 一端部
61b 他端部
62a 回転軸
63 スライダ
64 スライドガイド
65 駆動部
65a 駆動軸
66 ギヤボックス
66a~66d マイタギヤ
67 ブレーキ
67a 制動軸
68 連結ロッド
68a 連結軸
70 直動式駆動機構(調整駆動機構)
81 先端通路(第2通路)
A1 第1軸
A2 第2軸
L1,L2 張出量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9