(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183573
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】粘着ラベル
(51)【国際特許分類】
G09F 3/10 20060101AFI20231221BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231221BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G09F3/10 J
B32B27/00 M
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097153
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 彩佳
(72)【発明者】
【氏名】河村 明
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AK42G
4F100AK42H
4F100AL06B
4F100AL06G
4F100AL06H
4F100AT00
4F100BA02
4F100CA02B
4F100CA02G
4F100CA02H
4F100CB02B
4F100CB02G
4F100CB02H
4F100EC183
4F100EC18B
4F100EC18G
4F100GB15
4F100JL16
(57)【要約】
【課題】マテリアルリサイクルを目的としてポリエステル系の樹脂基材と、ポリエステル系の樹脂基材の片面に配置されるポリエステル系粘着剤と、を有する粘着ラベルを用いた場合であっても、低温環境下、高温高湿環境下での打ち抜き加工性に優れた粘着ラベルを提供する。
【解決手段】ポリエステル系の樹脂基材と、粘着剤組成物から形成されてなるポリエステル系粘着剤層と、を有し、前記粘着剤組成物は、ポリエステル系粘着剤、キシリレンジイソシアネート系化合物およびトリレンジイソシアネート系化合物を含む、粘着ラベル。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系の樹脂基材と、粘着剤組成物から形成されてなるポリエステル系粘着剤層と、を有し、
前記粘着剤組成物は、ポリエステル系粘着剤、キシリレンジイソシアネート系化合物およびトリレンジイソシアネート系化合物を含む、粘着ラベル。
【請求項2】
前記キシリレンジイソシアネート系化合物および前記トリレンジイソシアネート系化合物の配合質量比が、キシリレンジイソシアネート系化合物:トリレンジイソシアネート系化合物=1:0.1~2である、請求項1に記載の粘着ラベル。
【請求項3】
ポリエステル系容器に貼付される粘着ラベルである、請求項1または2に記載の粘着ラベル。
【請求項4】
請求項1または2に記載の粘着ラベルが貼付されてなる、ポリエステル系容器。
【請求項5】
ポリエステル系の樹脂基材と、粘着剤組成物から形成されてなるポリエステル系粘着剤層と、剥離ライナーとを有するロール状の粘着シートから打ち抜き加工を行うことを有する、請求項1または2に記載の粘着ラベルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染、石油資源の枯渇などの問題から、ポリエステル系容器のリサイクル化が強く望まれている。ポリエステル系容器の中でも、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルのリサイクル化が望まれている。
【0003】
ポリエステル系容器のマテリアルリサイクル化においては、通常容器をフレーク状に破砕した後、加熱溶融して全体を均質化し、得られた再生樹脂をポリエステル系容器の素材として用いるものである。
【0004】
通常、PETボトルのようなポリエステル系容器には、その表面に様々な情報が記録された粘着ラベル(ラベルとも称する)が貼付されている。このようなラベル付PETボトルなどのポリエステル系容器をマテリアルリサイクル化する際に、ラベルの樹脂基材とポリエステル系容器を構成する樹脂とが相溶性を有しない場合には、ラベルを構成する樹脂基材および粘着剤が異物として作用し、再生樹脂の機械特性が低下するという問題が生じる。したがって、このような場合には、ポリエステル系容器に貼付されているラベルを剥離してから、フレーク状に破砕し、加熱溶融することが必要である。しかしながら、ポリエステル系容器からラベルを剥離する操作は、極めて煩雑で手間がかかるとともにリサイクル処理費が高くなり、作業上も経済上も不利になるという問題が生じている。
【0005】
これに関連して、例えば下記の特許文献1には、被着体であるポリエステル系容器と相溶性を有するポリエステル系の樹脂基材と、ポリエステル系の樹脂基材の片面に配置されるポリエステル系粘着剤と、を有する粘着ラベルが開示されている。このように構成されたラベルによれば、ポリエステル系容器と同素材からなる樹脂基材および粘着剤を使用することにより、ポリエステル系容器からラベルを剥がすことなくリサイクルが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粘着ラベルは、通常ロール状のシートからラベル形状に打ち抜き加工を行って製造されるため、良好な打ち抜き加工性を有することが求められる。良好な打ち抜き加工性とは、具体的には、ロール状のシートから粘着ラベル以外の部分をラベルカスとして剥離する際に、そのラベルカスと一緒に粘着ラベルが剥離してしまう、いわゆる共上がりが少ないことや、打ち抜き刃の汚染が少ないことなどが挙げられる。
【0008】
しかしながら、ポリエステル系粘着剤層を有する粘着ラベルの場合、汎用されるアクリル系粘着剤とくらべて、冬場や夏場に生産した場合、打ち抜き加工特性が低下するという問題があった。
【0009】
本発明者らは、冬場のような低温環境下あるいは夏場のような高温高湿環境下でポリエステル系粘着剤のエージングを行うと粘着剤が十分に架橋しないこと、打ち抜き加工の不具合が架橋不足に起因することを見出した。
【0010】
したがって、本発明は、低温環境下・高温高湿環境下でのポリエステル系粘着剤の架橋不足を解消し、ポリエステル系の樹脂基材と、ポリエステル系の樹脂基材の片面に配置されるポリエステル系粘着剤と、を有する粘着ラベルであっても、低温環境下エージング後、および高温高湿環境下エージング後の打ち抜き加工性に優れた粘着ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る粘着ラベルは、以下の構成を有する。
【0012】
1.ポリエステル系の樹脂基材と、粘着剤組成物から形成されてなるポリエステル系粘着剤層と、を有し、前記粘着剤組成物は、ポリエステル系粘着剤、キシリレンジイソシアネート系化合物およびトリレンジイソシアネート系化合物を含む、粘着ラベル。
【0013】
2.前記キシリレンジイソシアネート系化合物および前記トリレンジイソシアネート系化合物の含有質量比が、キシリレンジイソシアネート系化合物:トリレンジイソシアネート系化合物=1:0.1~2である、1.に記載の粘着ラベル。
【0014】
3.ポリエステル系容器に貼付される粘着ラベルである、1.または2.に記載の粘着ラベル。
【0015】
4.1.~3.のいずれか一に記載の粘着ラベルが貼付されてなる、ポリエステル系容器。
【0016】
5.ポリエステル系の樹脂基材と、粘着剤組成物から形成されてなるポリエステル系粘着剤層と、剥離ライナーとを有するロール状の粘着シートから打ち抜き加工を行うことを有する、1.~3.のいずれか一に記載の粘着ラベルの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の粘着ラベルによれば、ポリエステル系の樹脂基材と、ポリエステル系粘着剤層と、を有するため、粘着ラベルをポリエステル系容器から剥がすことなくポリエステル系容器のリサイクル処理が可能である。また、本発明の粘着ラベルによれば、低温環境下、高温高湿環境下で保管された場合であっても、打ち抜き加工性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る粘着ラベルを示す断面模式図である。
【
図2】
図2(A)は、ロール状の粘着シートの一実施形態を示す斜め上面方向からの模式図である。
図2(B)は、
図2(A)の粘着シートのB-B断面模式図である。
図2(C)は、
図2(A)の粘着シートのC-C断面模式図である。
図2(D)は、
図2(A)の粘着シートのD-D断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、ポリエステル系の樹脂基材(以下、単に樹脂基材とも称する)と、粘着剤組成物から形成されてなるポリエステル系粘着剤層と、を有し、粘着剤組成物は、ポリエステル系粘着剤、キシリレンジイソシアネート系化合物およびトリレンジイソシアネート系化合物を含む、粘着ラベルである。
【0020】
マテリアルリサイクルを目的としてポリエステル系の樹脂基材と、ポリエステル系の樹脂基材の片面に配置されるポリエステル系粘着剤を用いることを検討する中で、ポリエステル系粘着剤を用いた粘着ラベルにおいて、製造後に低温や高温高湿環境下でエージングを行った後に打ち抜き加工を行うと、共上がりや打ち抜き刃の汚染などの問題が生ずることを知見した。このような打ち抜き加工性は、粘着剤を架橋して硬さを上げることで向上することが多い。しかしながら、ポリエステル系粘着剤は、基本的には、ポリマー主鎖の末端にしか官能基(水酸基)を含有できないため、架橋剤によって架橋を進行させることが難しい。また、ポリエステル系粘着剤は、汎用粘着剤であるアクリル系粘着剤などと比較して分子量も低く、ゆえに粘着剤の凝集力を上げにくい。このような状況の下、本発明者らは、2種の特定のイソシアネート系架橋剤を組み合わせて用いることで、低温および高温高湿環境下でエージングを行っても、その後の打ち抜き加工性が高いことを見出した。これは、2種の特定のイソシアネート系架橋剤を組み合わせることで、エージング環境が低温環境または高温高湿環境下であっても架橋剤による架橋が適切に進行し、打ち抜き加工特性が顕著に向上するためであると考えられる。
【0021】
粘着ラベルの形状としては、特に限定されないが、積層方向から視て、長方形であることが一般的である。なお、粘着ラベルの形状は、三角形や円形状であってもよい。また、ポリエステル系粘着剤層は、例えば樹脂基材の全面に配置されている。
【0022】
粘着ラベルの粘着力は、PETボトルなどの被着体への接着性を考慮すると、3.5N/25mm以上であることが好ましく、5N/25mm以上であることがより好ましく、6.5N/25mm以上であることがさらにより好ましい。また、粘着ラベルの粘着力は、特に上限値の設定の必要はないが、30N/25mm以下であってもよく、20N/25mm以下であってもよい。なお、被着体への粘着力は、後述の実施例に記載の方法にしたがって測定された値を採用する。
【0023】
以下、
図1を参照して、粘着ラベルの構成について説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0024】
図1は、本実施形態に係る粘着ラベル10の断面概略図である。本発明の実施形態に係る粘着ラベル10は、
図1に示すように、上から順に、樹脂基材11と、粘着剤層12と、剥離ライナー13と、を有する。なお、粘着ラベル10は、樹脂基材11上、または各層間に他の機能層を有していてもよい。他の機能層としては、印刷層、プライマー層などが挙げられる。
【0025】
「ラベル」の概念には、フィルム、シート、テープ等と称されるものが包含される。
【0026】
以下、粘着ラベルの各構成要素について説明する。以下の説明においては被着体としてPETボトルを例に上げて説明するが、被着体はこれに限定されるものではない。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20~25℃)/相対湿度45~55%RHの条件で測定する。
【0027】
<樹脂基材>
樹脂基材として、被着体のPETボトルと相溶性を有する同じ素材であるポリエステル系フィルムを使用することが必要である。すなわち、樹脂基材は、ポリエステル系の樹脂基材である。再生樹脂の機械特性などの品質の点から、ポリエステル系フィルムの樹脂基材としては、PETボトルに使用されている樹脂の組成に近いものを用いることが特に有利である。このポリエステル系フィルムに使用される樹脂基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂を挙げることができ、これらの中から、被着体のPETボトルに使用されている樹脂の種類に応じて、それと相溶性のある樹脂基材が得られるように、一種又は二種以上を適宜選択して用いればよい。
【0028】
ここで、相溶性とは、PETボトルを加熱溶融する際の温度で溶融し、かつ溶融したPETボトルの樹脂基材と相溶性よく混和し、その再生品の特性を低下させないことを意味する。なお、PETボトルを構成する樹脂基材が、相溶性のある樹脂二種以上の混合物である場合、樹脂基材の樹脂としては、PETボトルを構成する樹脂混合物の中の1つの樹脂を用いることができる。
【0029】
樹脂基材の厚さは特に制限はなく、用途などに応じて適宜選定されるが、一般には25~100μmの範囲であることが好ましい。樹脂基材の厚みを25μm以上とすることで、ラベリング工程での剥離ライナーからの粘着ラベルの剥離性に優れる。また、樹脂基材の厚みを100μm以下とすることで、ラベリング装置に設置するロールの巻き長を十分に長くでき、ロールの交換頻度を下げて、作業効率を高めることができる。この樹脂基材としては、従来公知の方法、例えば押出し法、カレンダー法、溶液コーティング法、キャスティング法など、いずれの製膜方法により得られたものであってもよい。
【0030】
本発明においては、この樹脂基材には、その上に設けられるコート層や、反対面に設けられるポリエステル系粘着剤層との密着性を向上させる目的で、所望により、片面あるいは両面に表面処理を施すことができる。この表面処理方法としては、例えばサンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などが挙げられる。
【0031】
本発明においては、樹脂基材の片面に、印刷適性を有するコート層(印刷受理層)が設けられてもよい。この結果、樹脂基材の片面に印刷適性が付与されることとなる。このコート層は、樹脂基材の製膜時に混入した樹脂の未溶解部分による突起(フィッシュアイ)に起因する印刷時の抜けの発生を防止するとともに、印刷インキの密着性を向上させる効果を有している。
【0032】
<ポリエステル系粘着剤層>
次に、ポリエステル系粘着剤層について説明する。ポリエステル系粘着剤層は、ポリエステル系粘着剤(ポリエステル系樹脂)を含む粘着剤組成物から形成される。
【0033】
粘着剤組成物は、ポリエステル系粘着剤、キシリレンジイソシアネート系化合物およびトリレンジイソシアネート系化合物を含む。
【0034】
本発明で用いられるポリエステル系粘着剤は、構成原料として、多価カルボン酸成分(A1)及びポリオール成分(A2)を含む共重合成分を共重合することにより得られる。
【0035】
〔多価カルボン酸成分(A1)〕
本発明で用いられる多価カルボン酸成分(A1)としては、例えば、
テレフタル酸、イソフタル酸、ベンジルマロン酸、ジフェン酸、4、4′-オキシジ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;
マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2、2-ジメチルグルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、チオジプロピオン酸、ジグリコール酸等の脂肪族ジカルボン酸;
1、3-シクロペンタンジカルボン酸、1、2-シクロヘキサンジカルボン酸、1、3-シクロペンタンジカルボン酸、1、4-シクロヘキサンジカルボン酸、2、5-ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;
等の二価カルボン酸があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0036】
これらの中でも、凝集力を付与する点から、芳香族ジカルボン酸を含むことが好ましい。
【0037】
かかる芳香族ジカルボン酸の含有割合としては、多価カルボン酸成分(A1)全体に対して、50モル%以下であることが好ましく、特に好ましくは5~40モル%、更に好ましくは10~30モル%である。かかる含有割合が多すぎるとガラス転移温度が高くなり、充分な粘着性能が得られなくなる傾向がある。
【0038】
また、タック感を付与する点からは、脂肪族ジカルボン酸を含むことが好ましく、特には炭素数が4~12の脂肪族ジカルボン酸を含むことが好ましい。
【0039】
かかる脂肪族ジカルボン酸の含有割合としては、多価カルボン酸成分(A1)全体に対して、20モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは60モル%~95モル%、更に好ましくは70~90モル%である。かかる含有割合が低すぎるとガラス転移温度が高くなり充分な粘着力が得られなくなる傾向があり、かかる含有割合が高すぎると密着成分が少なくなることにより、極性被着体への粘着力が低下する傾向がある。
【0040】
本発明においては、粘着物性のバランスの点から、多価カルボン酸成分(A1)として、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸を併用することが好ましく、含有比率(モル比)としては、芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸=1/99~90/10であることが好ましく、特に好ましくは芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸=5/95~40/60、更に好ましくは芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸=10/90~30/70である。
【0041】
なお、ポリエステル系粘着剤中に分岐点を増やす目的で、三価以上の多価カルボン酸を用いることもでき、かかる三価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、アダマンタントリカルボン酸、トリメシン酸等があげられる。中でも比較的、ゲル化が発生しにくい点でトリメリット酸を用いることが好ましい。かかる三価以上の多価カルボン酸の含有割合としては、粘着剤の凝集力を高めることができる点で、多価カルボン酸成分(A1)全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%であり、かかる含有量が多すぎるとポリエステル系粘着剤の製造時にゲル化が生じやすい傾向がある。
【0042】
〔ポリオール成分(A2)〕
本発明で用いられるポリオール成分(A2)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2、4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1、3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1、3-シクロブタンジオール等の脂環族ジオール;4,4′-チオジフェノール、4,4′-メチレンジフェノール、4,4′-ジヒドロキシビフェニル、o-、m-及びp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール及びそれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体等の芳香族ジオール;等の二価アルコールが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0043】
これらの中でも、反応性に優れる点で、脂肪族ジオール、脂環族ジオールが好ましく、特に好ましくは、脂肪族ジオールとしてはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールであり、脂環族ジオールとしては1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1、4-シクロヘキサンジメタノールである。
【0044】
また、ポリエステル系粘着剤中に分岐点を増やす目的で三価以上の多価アルコールを用いることもでき、三価以上の多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1、3、6-ヘキサントリオール、アダマンタントリオール等があげられる。かかる三価以上の多価アルコールの含有割合としては、ポリオール成分(A2)全体に対して、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは0.1~5モル%であり、かかる含有割合が多すぎるとポリエステル系粘着剤の製造が困難となる傾向がある。
【0045】
多価カルボン酸成分(A1)とポリオール成分(A2)の配合割合としては、多価カルボン酸成分(A1)1当量あたり、ポリオール成分(A2)が1~2当量であることが好ましく、特に好ましくは1.1~1.7当量である。ポリオール成分(A2)の含有割合が低すぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、高すぎると収率が低下する傾向がある。
【0046】
本発明で用いられるポリエステル系粘着剤は、上記多価カルボン酸成分(A1)とポリオール成分(A2)を任意に選び、これらを触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより製造される。
【0047】
本発明で用いられるポリエステル系粘着剤の数平均分子量は、凝集力、耐熱性、機械的強度、粘着性などの観点から、5,000~150,000であることが好ましく、特に好ましくは10,000~100,000、更に好ましくは15,000~100,000である。
【0048】
なお、上記の数平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による数平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(東ソー社製、「HLC-8320GPC」)に、カラム「TSK guard column super H-H」1本、「TSK gel super HM-H」2本直列、「TSK gel super H2000」1本を用いることにより測定されるものである。
【0049】
ポリエステル系粘着剤のガラス転移温度は、粘着物性の点から-80~20℃であることが好ましく、より好ましくは-75~10℃、さらに好ましくは-70~-20℃、さらにより好ましくは-65~-30℃、特に好ましくは-55~-40℃である。ガラス転移温度がこのような範囲にあることで、初期粘着性が担保され、また、粘着剤が適度な凝集力を有する。ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計DSCを用いて、測定温度範囲-90~100℃、温度上昇速度10℃/分で測定した値である。
【0050】
ポリスエテル系粘着剤の酸価は10mgKOH/g以下であることが好ましく、3mgKOH/g以下であることがより好ましく、1.5mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。上記範囲内にあることで、加水分解が抑制され、凝集力を維持しやすくなる。
【0051】
ポリスエテル系粘着剤の水酸基価は1~50mgKOH/gであることが好ましく、1~30mgKOH/gであることがより好ましく、1~20mgKOH/gであることがさらにより好ましく、2~15mgKOH/gであることが特に好ましい。水酸基価がこのような範囲にあることで、本発明の効果が一層得られやすくなる。
【0052】
ポリエステル系粘着剤の酸価、水酸基価は、JIS K 0070:1992に基づき中和滴定により求められるものである。
【0053】
ポリエステル系粘着剤の含有量は、粘着性の点から、粘着剤組成物中、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。また、ポリエステル系粘着剤の含有量は、架橋剤の添加量などによって適宜調整されるが、例えば、粘着剤組成物中、99質量%以下である。
【0054】
キシリレンジイソシアネート系化合物は、キシリレンジイソシアネートおよびその変性体である。キシリレンジイソシアネートとしては、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネートなどが挙げられる。キシリレンジイソシアネートの変性体としては、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体などが挙げられる。キシリレンジイソシアネート系化合物は、1種単独で用いてもよいいし、2種以上併用してもよい。
【0055】
キシリレンジイソシアネート系化合物の粘着剤組成物中の含有量は、低温環境下での加工特性を考慮すると、ポリエステル系粘着剤100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、0.8質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらにより好ましい。また、キシリレンジイソシアネート系化合物の粘着剤組成物中の配合量は、ポリエステル系粘着剤100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。
【0056】
トリレンジイソシアネート系化合物は、トリレンジイソシアネートおよびその変性体である。トリレンジイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)などが挙げられる。トリレンジイソシアネートの変性体としては、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体などが挙げられる。トリレンジイソシアネート系化合物は、1種単独で用いてもよいいし、2種以上併用してもよい。
【0057】
トリレンジイソシアネート系化合物の粘着剤組成物中の含有量は、高温高湿環境下での加工特性を考慮すると、粘着剤100質量部に対して、0.3質量部以上であることが好ましい。また、トリレンジイソシアネート系化合物の粘着剤組成物中の含有量は、粘着剤100質量部に対して、4質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましい。
【0058】
キシリレンジイソシアネート系化合物およびトリレンジイソシアネート系化合物の粘着剤組成物中の含有質量比は、本発明の効果の点から、キシリレンジイソシアネート系化合物:トリレンジイソシアネート系化合物=1:0.1~2であることが好ましく、1:0.3~1.5であることがより好ましい。
【0059】
キシリレンジイソシアネート系化合物およびトリレンジイソシアネート系化合物は、ポリエステル系粘着剤の分子量と用途目的により適宜配合量を設定できるが、ポリエステル系粘着剤100質量部に対して、合計で、0.5~5質量部であることが好ましく、0.8~5質量部であることがより好ましく、1~3質量部であることがさらにより好ましく、1.5~3質量部であることが特に好ましい。なお、本発明の効果を考慮すると、ポリエステル系粘着剤100質量部に対して、キシリレンジイソシアネート系化合物の粘着剤組成物中の含有量が、0.8質量部以上で、かつ、キシリレンジイソシアネート系化合物およびトリレンジイソシアネート系化合物の合計で1.5質量部以上であってもよく、ポリエステル系粘着剤100質量部に対して、キシリレンジイソシアネート系化合物の粘着剤組成物中の含有量が、1量部以上で、かつ、キシリレンジイソシアネート系化合物およびトリレンジイソシアネート系化合物の合計で1.5質量部以上であってもよい。
【0060】
粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、従来公知の、加水分解抑制剤、軟化剤、紫外線吸収剤、安定剤、耐電防止剤、粘着付与剤などの添加剤を配合することができる。
【0061】
ポリエステル系粘着剤層の形成方法は、特に限定されるものではないが、樹脂基材上に粘着剤組成物を直接塗工してポリエステル系粘着剤層を形成してもよく、また、剥離ライナー上にポリエステル系粘着剤層を形成した後、これを樹脂基材と貼合してもよい。具体的には、剥離ライナー上に粘着剤組成物を塗布・乾燥し、粘着剤組成物からなるポリエステル系粘着剤層を樹脂基材上に転写する方法が挙げられる。
【0062】
粘着剤組成物の基材または剥離ライナーへの塗布方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーターなどの公知の塗布装置を用いて塗布することができる。乾燥条件としては特に限定されず、通常60~150℃にて10~90秒の条件で行われる。
【0063】
粘着剤層の厚み(乾燥後膜厚)は、通常5~100μm、好ましくは10~50μmである。
【0064】
<剥離ライナー>
剥離ライナーは、ポリエステル系粘着剤層を保護し、粘着性の低下を防止する機能を有する部材である。そして、剥離ライナーは、被着体に貼付する際に粘着シートから剥離される。このため、本発明における粘着シートは、剥離ライナーを有していないものも包含される。
【0065】
剥離ライナーとしては、特に限定されるものではないが、上質紙、グラシン紙、クレーコート紙、ポリエチレンラミネート紙などの紙;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルム;などが挙げられる。
【0066】
剥離ライナーの厚みは、通常10~400μm程度である。また、剥離ライナーの表面には、ポリエステル系粘着剤層の剥離性を向上させるためのシリコーンなどから構成される剥離剤からなる層が設けられてもよい。かような層が設けられる場合の当該層の厚みは、通常0.01~5μm程度である。
【0067】
<製造方法>
粘着ラベルの製造方法は、特に限定されるものではないが、ロール状の粘着シートを作製した後、必要に応じ印刷、半抜き加工、カス上げを行い、粘着ラベルを製造する方法が挙げられる。ロール状の粘着シートの製造方法は、(1)剥離ライナー上にポリエステル系粘着剤組成物を塗工してポリエステル系粘着剤層を形成した後、これを樹脂基材に貼り合わせる方法、(2)樹脂基材上にポリエステル系粘着剤組成物を直接塗工してポリエステル系粘着剤層を形成した後に剥離ライナーを貼り合わせる方法等が挙げられる。
【0068】
図2(A)は、ロール状の粘着シートの一実施形態を示す斜め上面方向からの模式図である。
図2(A)では、ロール状に巻回された粘着シートが例えば搬送ロール等によりA方向(長手方向)に送り出される様子を示している。
図2(B)は、
図2(A)の粘着シートのB-B断面模式図である。
図2(B)に示されるように、粘着シート20は、剥離ライナー23、ポリエステル系粘着剤層22、および樹脂基材21がこの順に積層されてなる積層体である。送り出された粘着シートは、粘着シートの剥離ライナーに対して、例えば、打ち抜き刃25を用いて、積層方向に沿って切り込み線24が入れられる(打ち抜き加工)。
図2(C)は、
図2(A)の粘着シートのC-C断面模式図である。
図2(C)の粘着シート30は、積層方向にポリエステル系粘着剤層22および剥離ライナー23の界面にまで切り込み線24が入れられている。このようにして、積層方向に沿って設けられた切り込み線24によって、ラベル部と不要部が形成される。不要部はカス上げによって除去される。
図2(D)は、
図2(A)の粘着シートのD-D断面模式図である。カス上げによって不要部が除去され、PETボトルに貼付されるラベル部となる、樹脂基材21’およびポリエステル系粘着剤層22’と剥離ライナー23とで形成されている。
【0069】
本発明の粘着ラベルは、低温、高温高湿環境でエージングを行っても、ポリエステル系粘着剤層の保持力が高く、ゆえに、上記のような打ち抜き加工を行っても共上がりや、打ち抜き刃の汚染がない、または少ない。
【0070】
<ポリエステル系容器>
粘着ラベルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルのようなポリエステル系容器に貼付されることが好ましい。本発明は、上記粘着ラベルが貼付されてなる、ポリエステル系容器をも提供する。ポリエステル系容器とは、ポリエステル系樹脂から構成される容器を指す。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。容器は、ポリエステル系樹脂を射出成形、真空成形、圧空成形等することにより製造することができる。
【実施例0071】
次に実施例について説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0072】
(実施例1)
ポリエステル系樹脂(三菱ケミカル社製、商品名「NP-110S50EO」、ガラス転移温度-50℃)100質量部(固形分)に対し、キシリレンジイソシアネート系化合物(キシリレンジイソシアネートトリメチロールプロパン付加物、固形分濃度75質量%)0.8質量部(固形分)、トリレンジイソシアネート系化合物(トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパン付加物:東ソー社製、商品名「コロネート(登録商標)L」、固形分濃度75質量%)0.6質量部(固形分)、酢酸エチル35質量部を添加・混合して粘着剤組成物を調製した。
【0073】
得られた粘着剤組成物を、剥離ライナーの剥離剤層上にナイフコーターにより乾燥後の膜厚が15μmとなるように塗布した後、90℃下で1分間乾燥させ粘着剤層を形成した。
【0074】
粘着剤層上に50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付し、実施例1の粘着ラベルを得た。
【0075】
(実施例2~7、比較例1、2)
キシリレンジイソシアネート系化合物およびトリレンジイソシアネート系化合物の添加量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして粘着ラベルを得た。
【0076】
(比較例3、4)
トリレンジイソシアネート系化合物を添加せず、キシリレンジイソシアネート系化合物のみを1質量部添加した粘着剤組成物(比較例3)、キシリレンジイソシアネート系化合物を添加せず、トリレンジイソシアネート系化合物のみを0.6質量部添加した粘着剤組成物(比較例4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着ラベルを得た。当該ラベルは、23℃で7日間静置したあとの保持力が5,000秒以下であり、室温エージングですら十分な保持力を発揮しなかった。このため、比較例3、4については、低温、高温エージング後の保持力試験は行わなかった。
【0077】
(測定方法1:直後粘着力)
粘着ラベルについて、(1)10℃環境下で7日間静置したもの(低温)、(2)30℃80%RH環境下で7日間静置したもの(高温高湿)の2種類準備した。各粘着ラベルから剥離ライナーを剥がした後、23℃50%RH環境下でポリエチレンテレフタレート板に粘着剤層面を貼付した(貼付条件:2kgゴムローラー 片道貼付)。貼付した直後に、JIS Z0237:2009に従い、粘着力を測定した。具体的には、引張試験機により、180°方向に試験速度0.3m/分でシートを引き剥がし、粘着力を測定した。数値は、シート幅25mm当たりの引き剥がし力に換算したもの(N/25mm)である。結果を表1に示す。
【0078】
(測定方法2:保持力試験)
保持力試験は、JIS Z0237:2009に準拠して行った。
【0079】
粘着ラベルについて、(1)10℃環境下で7日間静置したもの、(2)30℃80%RH環境下で7日間静置したものの2種類準備した。粘着ラベルから剥離ライナーを剥がした後、23℃50%RH環境下でステンレス板(SUS)に粘着剤層面を貼付し(貼付条件:2kgゴムローラー5往復)、サンプル貼付面積25mm×25mm、荷重9.8N、温度40℃で試験を行った。結果を表1に示す。
【0080】
なお、保持力試験は、裁断、ラベル加工性の指標となりうる。
【0081】
【0082】
上記で示されるように、実施例の粘着ラベルは、低温および高温高湿環境下でエージングを行ったものであっても保持力が高い。このため、打ち抜き加工時の共上がりや打ち抜き刃の汚染等の不具合の発生が低くなる。
【0083】
なお、いずれの実施例の粘着ラベルも、初期粘着力は6.5N/25mm以上であり、直後粘着力は十分に担保されていた。