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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183576
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】データ収集装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20231221BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20231221BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G08G1/00 A
H04Q9/00 301B
B60R16/023 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097158
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 洋平
(72)【発明者】
【氏名】田原 淳
【テーマコード(参考)】
5H181
5K048
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB17
5H181FF10
5H181FF27
5K048BA42
5K048EB02
5K048EB10
5K048FC03
5K048GC01
(57)【要約】
【課題】通信負荷や車外装置の処理負担を低減しつつ、当該車外装置のニーズに応じた有用な情報を車両から車外装置に提供可能にする。
【解決手段】本開示のデータ収集装置は、車両に搭載され、当該車両の状態に関するデータを収集するものであり、車外装置からデータの集計形式を取得すると共に、車両から収集したデータを集計して当該車外装置によって指定された集計形式の集計結果を生成し、生成した集計結果を車外装置に送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の状態に関するデータを収集するデータ収集装置であって、
車外装置から前記データの集計形式を取得すると共に、前記車両から収集した前記データを集計して前記車外装置により指定された集計形式の集計結果を生成し、前記集計結果を前記車外装置に送信するデータ収集装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ収集装置において、
それぞれ前記データを集計して互いに異なる前記集計形式の前記集計結果を生成する複数の演算モジュールを含むデータ収集装置。
【請求項3】
請求項2に記載のデータ収集装置において、
前記集計形式に加えて、少なくとも集計項目、前記集計項目の属性、集計軸情報、集計周期および集計の前提条件を含む集計条件を前記車外装置から取得すると共に、取得した前記集計形式と前記集計条件とを紐付けして記憶装置に記憶させ、前記車外装置からの前記集計形式に対応した前記演算モジュールに、前記集計形式に紐付けられた前記集計条件に従って前記データを集計させるデータ収集装置。
【請求項4】
請求項3に記載のデータ収集装置において、
前記データ収集装置は、それぞれ割り当てられた前記データを取得する前記車両の複数の機器からCAN通信により前記データを収集し、
前記CAN通信のフレームは、前記データ収集装置により受信される前記データが格納されるデータ収集フレームと、車両診断用の前記データが格納される診断記録フレームと、任意のデータが格納される汎用フレームとを含み、
前記集計条件は、前記CAN通信の前記フレームに格納されるべき前記データのIDと、前記データが格納されるべき前記データ収集フレーム、前記診断記録フレームまたは前記汎用フレームのIDと、前記データ収集フレーム、前記診断記録フレームまたは前記汎用フレームにおける前記データが格納されるべきアドレスとを含み、
前記複数の機器は、それぞれ取得した前記データを前記車外装置からの前記集計条件に従って前記CAN通信の前記フレームに格納するデータ収集装置。
【請求項5】
請求項1から3の何れか一項に記載のデータ収集装置において、
前記車外装置は、前記車両に搭載された通信装置を介して前記データ収集装置から情報を取得して管理する管理サーバおよび前記車両の故障診断のために前記通信装置を介して前記データ収集装置に接続される端末の少なくとも何れか一方であるデータ収集装置。
【請求項6】
車両の状態に関するデータを収集するデータ収集方法であって、
車外装置から前記データの集計形式を前記車両に送信し、
前記車両から収集された前記データを前記車両側で集計して前記車外装置により指定された集計形式の集計結果を生成し、
前記集計結果を前記車両から前記車外装置に送信するデータ収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載され、当該車両に関する複数のデータを収集するデータ収集装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サービスプロバイダ、開発者、運転者といった利用者の端末(車外装置)からデータの収集要求を受け付けると共に、受け付けた収集要求に基づいて車載装置からデータを収集し、収集したデータを当該利用者に提供するデータ収集装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このデータ収集装置は、利用者から収集対象となる対象データの収集条件を含む収集要求を受け付ける受付部と、受付部によって受け付けられた収集条件を満たす車両を選択する選択部と、選択部によって選択された車両の車載装置へ収集条件に基づく指定されたデータ種別の選別要求を送信する選別要求送信部と、選別要求に基づいて選別されたデータの送信要求を送信する送信要求送信部とを含む。かかるデータ収集装置により選択された車載装置は、データ収集装置からの選別要求に基づいて上記収集条件を満たすデータ種別を選別したり、当該選別要求によって指定されたデータ種別のデータの記録を開始したりする。そして、当該車載装置は、データ収集サーバからの送信要求に応じて、選別したデータをデータ収集装置へ送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-038407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のデータ収集装置の利用者は、収集要求における収集条件として、データ種別に関する情報や、収集対象となる車両に関する情報、収集期間、収集量の上限、収集地域等を指定することができる。ただし、車載装置からデータ収集装置に送信されるデータは、当該車載装置に接続されたセンサやカメラ等により取得された実データおよび対応する実データのインデックスデータ(タグ情報)である。このため、データ容量の増加を抑制しつつ情報量を確保することが困難になり、データ収集装置と車載装置との間の通信負荷が過大になってしまう。また、車載装置からの実データの活用に際しては、車外装置側で当該データに何らかの処理を施すことが必要となり、車外装置の処理負荷が過大になってしまう。
【0005】
そこで、本開示は、通信負荷や車外装置の処理負担を低減しつつ、当該車外装置のニーズに応じた有用な情報を車両から車外装置に提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のデータ収集装置は、車両に搭載され、前記車両の状態に関するデータを収集するデータ収集装置であって、車外装置から前記データの集計形式を取得すると共に、前記車両から収集した前記データを集計して前記車外装置により指定された集計形式の集計結果を生成し、前記集計結果を前記車外装置に送信するものである。
【0007】
また、本開示のデータ収集方法は、車両の状態に関するデータを収集するデータ収集方法であって、車外装置から前記データの集計形式を前記車両に送信し、前記車両から収集された前記データを前記車両側で集計して前記車外装置により指定された集計形式の集計結果を生成し、前記集計結果を前記車両から前記車外装置に送信するものである。
【0008】
本開示のデータ収集装置および方法によれば、通信負荷や車外装置の処理負担を低減しつつ、当該車外装置のニーズに応じた有用な情報を車両から車外装置に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示のデータ収集装置を含む車両を示す概略構成図である。
図2】本開示のデータ収集装置により用いられる通信フレームを例示する説明図である。
図3】本開示のデータ収集装置により用いられる複数の集計条件を例示する説明図である。
図4】本開示のデータ収集装置により実行されるデータ集計ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図5】本開示のデータ収集装置により車外装置から取得される新規集計条件テーブルを例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示のデータ収集装置を含む車両Vを示す概略構成図である。同図に示す車両Vは、例えば、何れも図示しないエンジン(内燃機関)、モータジェネレータ、インバータ、バッテリ等を含むハイブリッド車両である。図示するように、車両Vは、複数の電子制御装置(以下、「ECU」という。)1,2,3,4,…と、車載通信装置20と、本開示のデータ収集装置として機能する集計電子制御装置(以下、「集計ECU」という。)30とを含む。
【0012】
複数のECU1,2,3,4,…は、何れも図示しないCPU,ROM,RAM、入出力インターフェース等を有するマイクロコンピュータ(図示省略)と、不揮発性メモリ(NVRAM)等の記憶装置1M,2M,3M,4M,…とを含む。本実施形態において、ECU1は、車両全体を統括的に制御するものである。また、ECU2は、車両Vのエンジンを制御するものである。更に、ECU3は、車両Vのモータジェネレータを駆動するインバータ等を制御するものである。また、ECU4は、車両Vのバッテリを管理するものである。
【0013】
車載通信装置20は、図1に示す管理サーバ100や、車両販売店や車両整備工場の端末150(携帯端末を含む。)といった車外装置との間で無線または有線による高速データ通信(パケット通信)により各種情報をやり取りする。集計ECU30は、図示しないCPU,ROM,RAM、入出力インターフェース等を有するマイクロコンピュータ(図示省略)と、不揮発性メモリ(NVRAM)等の記憶装置30Mを含むものである。集計ECU30は、各ECU1,2,3,4,…により取得されたデータに基づく時系列データを集計して複数の集計結果を生成する。
【0014】
これらのECU1,2,3,4,…、車載通信装置20および集計ECU30は、LoおよびHiの2本の通信線(ワイヤーハーネス)を含むCANバスである車両Vの共用通信線に接続されている。複数のECU1,2,3,4,…、車載通信装置20および集計ECU30は、当該共用通信線を介してCAN通信により相互に情報(通信フレーム)をやり取りする。本実施形態において、CAN通信のフレームFは、図2に示すように、ECU1,2,3,4,…によりデータが格納されるデータ収集フレームFtと、主にECU1,2,3,4,…により車両診断用のデータ等が格納される診断記録フレームFdと、任意のデータが格納される汎用フレームFfとを含む。
【0015】
また、ECU1,2,3,4,…は、図1に示すように、各々にインストールされたプログラム(ソフトウェア)と、CPU,ROM,RAMといったハードウェアとの協働により構築されたデータ処理モジュール1P,2P,3P,4P,…を含む。データ処理モジュール1P,2P,3P,4P,…は、それぞれ予め定められたサンプリング周期(例えば、数msecから数十msec)で各々に割り当てられた車両Vの状態に関する複数のデータ(車速、エンジン回転数、モータ回転数といった物理量や設定状態等)を取得(検出または算出)する。更に、データ処理モジュール1P,2P,3P,4P,…は、所定のタイミングで、取得したデータをCAN通信のフレームFのデータ収集フレームFt、診断記録フレームFdまたは汎用フレームFfに格納する。また、データ処理モジュール1P,2P,3P,4P,…は、各々に割り当てられた車両Vの状態に関する複数のデータを当該サンプリング周期よりも長い基準記録周期(例えば、500msec)で取得し、取得したデータを車両診断用のデータとしてCAN通信のフレームFの診断記録フレームFdに格納する。
【0016】
更に、集計ECU30は、図1に示すように、インストールされたプログラム(ソフトウェア)と、CPU,ROM,RAMといったハードウェアとの協働により構築された集計処理モジュール30Pおよび複数の演算モジュール31,32,…3nを含む。集計ECU30の集計処理モジュール30Pは、CAN通信のフレームFのデータ収集フレームFt等からECU1,2,3,4,…により格納されたデータを受信(取得)して記憶装置30Mに時系列データ(履歴情報)として記憶させる。また、集計処理モジュール30Pは、CAN通信のフレームFの診断記録フレームFdからECU1,2,3,4,…により格納されたデータを受信(取得)して記憶装置30Mに車両診断用の時系列データとして記憶させる。更に、集計処理モジュール30Pは、複数の演算モジュール31,32,…と協働して、ECU1,2,3,4,…から取得したデータに基づく時系列データの集計処理を実行する。
【0017】
集計ECU30の演算モジュール31,32,…は、各々に対応した演算プログラム(汎用ロジック)を実行し、ECU1,2,3,4,…からのデータに基づく時系列データを集計して互いに異なる集計形式の集計結果を生成する。本実施形態において、複数の演算モジュール31,32,…における時系列データの集計形式には、最大値、最小値、平均値、積算値、一次元頻度分布、二次元頻度分布等が含まれる。すなわち、演算モジュール31,32,…は、指定されたデータ(例えばエンジン回転数等の物理量等)の指定された条件下における最大値、最小値、平均値あるいは積算値を抽出または算出して集計結果として出力したり、指定された1つまたは2つのデータの指定された条件下における一次元頻度分布や二次元頻度分布を集計結果として作成したりする。
【0018】
また、集計ECU30の記憶装置30Mは、図3に例示する複数の集計条件(データセット)を集計形式に紐付けして記憶(格納)している。図3に示す複数の集計条件は、それぞれ目的の集計結果を得るために予め定められたものであり、例えば車両Vの製造段階で記憶装置30Mに記憶される。複数の集計条件は、図示するように、集計における変数(集計項目)の車両Vにおいて定められているデータIDや属性、集計軸情報、演算周期(集計周期)、集計の前提条件、付随情報等をそれぞれ含む。
【0019】
集計における変数(集計項目)は、車速、エンジン回転数、モータ回転数といった多数の物理量や多数の設定状態の中から選択され、当該変数の属性は、生値、極値、平均値等の中から選択される。集計軸情報は、縦軸(X軸)や横軸(Y軸)の上限値、下限値、目盛りの間隔等を含む。演算周期は、例えばXY座標上に値をプロットする周期等を示す。前提条件は、例えば集計における車速範囲や温度範囲等を規定するものであり、少なくとも1つの条件変数、条件変数間の大小関係等を示す等号・不等号、複数の前提条件間の関係(“AND”,“OR”等)を含む。付随情報は、例えば、集計を開始/終了させる時間、車速、走行距離等を含む集計処理に関連した任意の情報である。
【0020】
更に、複数の集計条件には、識別子としての集計IDが付与されている。本実施形態において、集計IDは、各集計条件に割り当てられた番号であり、番号順にそれぞれ空番を含む複数のグループに分割されている。そして、集計IDの各グループには、1つの集計形式が割り当て(紐付け)られている。例えば、n番からn+α番までの集計IDのグループには、“二次元頻度分布”が割り当てられる。これにより、複数の集計条件の各々が対応する集計形式に紐付けられる。なお,集計条件は、図3に例示したものに限られず、集計形式等に応じて任意に定めることができる。
【0021】
続いて、図4を参照しながら、集計ECU30によるデータの集計手順について説明する。図4は、予め定められたタイミングで集計ECU30すなわち集計処理モジュール30Pと複数の演算モジュール31,32,…とにより実行されるデータ集計ルーチンを示すフローチャートである。
【0022】
データ集計ルーチンの実行タイミングが到来すると、集計ECU30の集計処理モジュール30Pは、繰り返し変数iを“1”に設定し(ステップS100)、記憶装置30Mから1番目すなわち最小の集計IDをもった集計条件を読み出してRAMに展開する(ステップS110)。また、集計処理モジュール30Pは、演算モジュール31,32,…の中から、ステップS110にて読み出した集計条件の集計ID(番号)に紐付けられた集計形式に対応する1つを選択し(ステップS120)、選択した演算モジュール31,32,…の何れか1つにデータの集計の実行を指示する。
【0023】
当該演算モジュール31,32,…の何れか1つは、ステップS110にて読み出された集計条件により指定されているデータ(変数)を記憶装置30Mから読み出し、当該集計条件に従って集計IDに紐付けられた集計形式の集計結果を生成する(ステップS130)。演算モジュール31,32,…の何れか1つにより集計結果が生成されると、集計処理モジュール30Pは、生成された集計結果を記憶装置30Mに記憶させる(ステップS140)。更に、集計処理モジュール30Pは、記憶装置30Mに記憶されているすべての集計条件についての集計が完了したか否かを判定する(ステップS150)。
【0024】
すべての集計条件についての集計が完了していない場合(ステップS150:NO)、集計処理モジュール30Pは、繰り返し変数iをインクリメントした上で(ステップS160)、ステップS110-S150の処理を実行する。また、すべての集計条件についての集計が完了した場合(ステップS150:YES)、集計処理モジュール30Pは、図4のデータ集計ルーチンを終了させる。なお、図4のルーチンは、ステップS110,S120,S130およびS140の処理のそれぞれがすべての集計IDについて順番に実行されるように改変されてもよい。
【0025】
図4のデータ集計ルーチンの実行により生成された時系列データの集計結果は、車両診断用の時系列データと同様に、例えば管理サーバ100からの送信要求に応じて、あるいは予め定められた周期で当該集計ECU30から車載通信装置20に送信され、車載通信装置20から管理サーバ100に送信される。これにより、複数の集計結果を得るための時系列データを車両V(集計ECU30)から管理サーバ100に送信する場合に比べて、車両V(車載通信装置20)から管理サーバ100に送信される情報のデータ容量を大幅に削減することが可能となる。更に、管理サーバ100では、車両V(集計ECU30)からのデータを集計する必要がなくなり、集計結果を基本的にそのまま活用することができる。
【0026】
一方、管理サーバ100は、例えば車両Vを製造する車両製造者により設置・管理されるものであり、CPU,ROM,RAM、入出力装置等を有するコンピュータや、車両V等の車載通信装置20と通信するための通信モジュール、各種情報を記憶する記憶装置100M等を含む。管理サーバ100は、車両Vを含む多数の車両から送信される車両診断用の時系列データや上記時系列データの集計結果を当該車両V等の車台番号や車両番号といった車両情報に紐付けして記憶装置100Mに記憶させる。また、上記車両製造者の開発者や、車両販売店または整備工場の担当者等は、自己の端末等を介して管理サーバ100にアクセスし、当該管理サーバ100により管理される車両診断用の時系列データや集計結果を閲覧したり、ダウンロードしたりすることができる。これにより、管理サーバ100により管理されている情報を新型車両の開発や、市場調査、車両で発生した異常の原因の解析等に役立たせることが可能となる。
【0027】
ここで、新型車両の開発や、市場調査、車両で発生した異常の原因の解析等には、できるだけ多くの実測データを確保することが求められる。しかしながら、集計ECU30の記憶装置30Mに記憶された集計条件が車両Vの製造段階で用意されたものだけである場合、開発者等が希望する集計結果を車両V側から得られなくなるおそれがある。これを踏まえて、管理サーバ100は、開発者等からの新規集計結果の取得要請を受け付けて、車両V側に開発者等の要請に応じた新たな集計条件および集計形式を通知するように構成されている。更に、車両Vは、集計ECU30が管理サーバ100から通知された新たな集計条件および集計形式に従って時系列データを集計することができるように構成されている。
【0028】
本実施形態において、管理サーバ100の記憶装置100Mには、車種ごとに複数のECUによるデータ処理や車内データ通信に関する情報が予め記憶されている。管理サーバ100は、開発者等から車両Vについての新規集計結果の取得要請を受け付けた場合、記憶装置100Mに記憶された当該情報を参照しながら、図5に示すような新規集計条件テーブルを作成し、作成した新規集計条件テーブルを車両Vの車載通信装置20に送信する。新規集計条件テーブルは、開発者等により要求された新規集計結果を得るための集計条件を当該新規集計結果の集計形式に紐付けしたものである。
【0029】
図5に示すように、管理サーバ100により作成される新規集計条件テーブルも、集計における変数(集計項目)、変数(集計項目)の属性、集計軸情報、演算周期(集計周期)、集計の前提条件、付随情報等を含む。また、管理サーバ100は、新規集計条件テーブルにおいて、集計項目となる変数(図5における変数1,2)や前提条件(図5における条件変数1,2)のデータIDを指定すると共に、当該データIDに対応したデータが格納されるべきデータ収集フレームFt、診断記録フレームFdまたは汎用フレームFfのID、データ収集フレームFt、診断記録フレームFdまたは汎用フレームFfにおける当該データが格納されるべきアドレス(先頭アドレス)、データ長を指定する。
【0030】
ただし、新規集計条件テーブルの集計項目となる変数や前提条件を規定する条件変数の指定欄には、データIDの代わりに、当該データIDに対応したデータが格納されている記憶装置1M,2M,3M,4M,…のアドレスが記述されてもよい。また、新規集計条件テーブルは、図5に例示したものに限られず、車両V側で取り扱い可能な範囲内で任意に定めることができる。
【0031】
また、車両Vの車載通信装置20は、管理サーバ100からの新規集計条件テーブルを受信すると、受信した新規集計条件テーブルを集計ECU30に送信する。更に、車載通信装置20は、必要に応じて、当該新規集計条件テーブルにより指定された変数や条件変数に対応するデータをCAN通信の汎用フレームFfに格納させるための処理を実行する。これにより、それまで集計ECU30に提供(送信)されていなかったデータをECU1,2,3,4,…によりCAN通信のフレームFに格納させることが可能となる。
【0032】
また、集計ECU30の集計処理モジュール30Pは、車載通信装置20から受信した新規集計条件テーブルにより規定された新たな集計条件に集計ID(例えば、指定された集計形式の番号の範囲における最小の空番)を付与し、新たな集計条件と集計形式とを紐付けして記憶装置30Mに記憶させる。更に、集計処理モジュール30Pは、CAN通信のフレームFのデータ収集フレームFt、診断記録フレームFdおよび汎用フレームFfからECU1,2,3,4,…により格納されたデータを取得(受信)して記憶装置30Mに時系列データ(履歴情報)として記憶させる。これにより、車載通信装置20により管理サーバ100からの新規集計条件テーブルが受信された後、集計ECU30により図4のデータ集計ルーチンが実行されると、既存の集計条件に対応した集計結果に加えて、新規集計条件テーブルにより規定された新たな集計条件に対応した集計結果、すなわち管理サーバ100から指定された集計形式の集計結果が集計ECU30により生成されることになる。
【0033】
上述のように、データ収集装置としての集計ECU30は、車外装置である管理サーバ100から車載通信装置20に新規集計条件テーブルが送信されると、車両Vから収集した時系列データを集計して当該管理サーバ100により指定された集計形式の集計結果を生成し、車載通信装置20を介して集計結果を管理サーバ100に送信する。これにより、当該新規集計条件テーブルに対応した集計結果を得るためのデータを車両Vから管理サーバ100に送信する場合に比べて、車両V(車載通信装置20)から管理サーバ100に送信される情報のデータ容量を大幅に削減することが可能となる。更に、管理サーバ100では、車両V(集計ECU30)からのデータを集計する必要がなくなり、新規集計条件テーブルに対応した集計結果を基本的にそのまま活用することができる。この結果、集計ECU30を車両Vに搭載することで、通信負荷や管理サーバ100の処理負担を低減しつつ、当該管理サーバ100(開発者等)のニーズに応じた有用な情報を車両Vから管理サーバ100に提供することが可能となる。
【0034】
また、上記実施形態において、集計ECU30は、それぞれ時系列データを集計して互いに異なる集計形式の集計結果を生成する複数の演算モジュール31,32,…,3nを含む。これにより、管理サーバ100(開発者等)の様々なニーズに応じた有用な集計結果を車両Vから当該管理サーバ100に提供することが可能となる。
【0035】
更に、集計ECU30の集計処理モジュール30Pは、少なくとも集計項目となる変数、集計項目(変数)の属性、集計軸情報、演算周期(集計周期)および集計の前提条件を含むと共に、開発者等により要求された集計形式に紐付けられた新規集計条件テーブル(図5参照)を管理サーバ100から取得する。また、集計処理モジュール30Pは、新規集計条件テーブルにより規定された新たな集計条件と集計形式とを紐付けして記憶装置30Mに記憶させる。更に、集計処理モジュール30Pは、管理サーバ100からの集計形式に対応した演算モジュール31,32,…の何れか1つに、当該集計形式に紐付けられた新たな集計条件に従って時系列データを集計させる(図4)。これにより、該当する演算モジュール31,32,…の何れか1つに適正な集計処理を実行させて、管理サーバ100(開発者等)のニーズに応じた有用な集計結果を得ることが可能となる。
【0036】
また、上記実施形態において、集計ECU30は、それぞれ割り当てられたデータを取得する車両Vの複数のECU1,2,3,4,…からCAN通信によりデータを収集する。また、CAN通信のフレームFは、集計ECU30により受信されるデータが格納されるデータ収集フレームFtと、車両診断用のデータ等が格納される診断記録フレームFdと、任意のデータが格納される汎用フレームFfとを含む。更に、新規集計条件テーブルにより規定される新たな集計条件は、CAN通信のフレームFに格納されるべきデータのデータIDと、当該データが格納されるべきデータ収集フレームFt、診断記録フレームFdまたは汎用フレームFfのIDと、データ収集フレームFt、診断記録フレームFdまたは汎用フレームFfにおける当該データが格納されるべきアドレスとを含む。そして、複数のECU1,2,3,4,…は、それぞれ取得したデータを管理サーバ100からの新たな集計条件に従ってCAN通信のフレームFに格納する。これにより、刻々と変化する管理サーバ100側(開発者等)のニーズに応じて、集計ECU30により収集されるデータや集計結果を柔軟に変更していくことが可能となる。
【0037】
なお、図3に例示した複数の集計条件は、必ずしも車両Vの製造段階で記憶装置30Mに記憶される必要はなく、例えばユーザへの車両Vの引き渡し後等に、車外装置から指定されたものが記憶装置30Mに順次記憶されていってもよい。また、車外装置は、上記管理サーバ100や車両販売店や車両整備工場の端末150に限られるものではなく、車両Vの故障診断のために有線または無線通信により車載通信装置20に接続される図示しない専用端末であってもよい。更に、集計ECU30は、車両Vに搭載されて複数のデータを予め定められた周期で常時記録するデータロガーとして構成されてもよい。また、集計ECU30の機能が、ECU1,2,3,4,…の何れかに組み込まれてもよい。更に、車両Vは、ハイブリッド車両に限られるものではなく、エンジンのみを動力発生源とする車両であってもよく、電気自動車(燃料電池車両を含む。)であってもよい。
【0038】
以上説明したように、本開示のデータ収集装置は、車両(V)に搭載され、前記車両(V)の状態に関するデータを収集するデータ収集装置(30)であって、車外装置(100,150)から前記データの集計形式を取得すると共に、前記車両(V)から収集した前記データを集計して前記車外装置(100,150)により指定された集計形式の集計結果を生成し、前記集計結果を前記車外装置(100,150)に送信するものである。
【0039】
本開示のデータ収集装置は、車両から収集したデータを集計して車外装置により指定された集計形式の集計結果を生成し、生成した集計結果を車外装置に送信するものである。これにより、当該集計結果を得るためのデータを車両から車外装置に送信する場合に比べて、車両から車外装置に送信される情報のデータ容量を大幅に削減することが可能となる。更に、車外装置では、車両(データ収集装置)からのデータを集計する必要がなくなり、集計結果を基本的にそのまま活用することができる。この結果、本開示のデータ収集装置によれば、通信負荷や車外装置の処理負担を低減しつつ、当該車外装置のニーズに応じた有用な情報を車両から車外装置に提供することが可能となる。
【0040】
また、前記データ収集装置(30)は、それぞれ前記データを集計して互いに異なる前記集計形式の前記集計結果を生成する複数の演算モジュール(31,32,…,3n)を含むものであってもよい。
【0041】
これにより、車外装置の様々なニーズに応じた有用な集計結果を車両から当該車外装置に提供することが可能となる。
【0042】
更に、前記データ収集装置(30)は、前記集計形式に加えて、少なくとも集計項目、前記集計項目の属性、集計軸情報、集計周期および集計の前提条件を含む集計条件を前記車外装置(100,150)から取得すると共に、取得した前記集計形式と前記集計条件とを紐付けして記憶装置(30M)に記憶させ、前記車外装置(100,150)からの前記集計形式に対応した前記演算モジュール(31,32,…,3n)に、前記集計形式に紐付けられた前記集計条件に従って前記データを集計させるものであってもよい。
【0043】
これにより、該当する演算モジュールに適正な集計処理を実行させて、車外装置のニーズに応じた有用な集計結果を得ることが可能となる。
【0044】
また、前記データ収集装置(30)は、それぞれ割り当てられた前記データを取得する前記車両の複数の機器(1,2,3,4,…)からCAN通信により前記データを収集するものであってもよく、前記CAN通信のフレーム(F)は、前記データ収集装置により受信される前記データが格納されるデータ収集フレーム(Ft)と、車両診断用の前記データが格納される診断記録フレーム(Fd)と、任意の前記データが格納される汎用フレーム(Ff)とを含むものであってもよく、前記集計条件は、前記CAN通信の前記フレーム(F)に格納されるべき前記データのIDと、前記データが格納されるべき前記データ収集フレーム(Ft)、前記診断記録フレーム(Fd)または前記汎用フレーム(Ff)のIDと、前記データ収集フレーム(Ft)、前記診断記録フレーム(Fd)または前記汎用フレーム(Ff)における前記データが格納されるべきアドレスとを含むものであってもよく、前記複数の機器(1,2,3,4,…)は、それぞれ取得した前記データを前記車外装置(100,150)からの前記集計条件に従って前記CAN通信の前記フレーム(F)に格納するものであってもよい。
【0045】
これにより、刻々と変化する車外装置側のニーズに応じて、データ収集装置により集計されるデータや集計結果を柔軟に変更していくことが可能となる。
【0046】
また、前記車外装置は、前記車両(V)に搭載された通信装置(20)を介して前記データ収集装置(30)から情報を取得して管理する管理サーバ(100)および前記車両(V)の故障診断のために前記通信装置(20)を介して前記データ収集装置(30)に接続される端末(150)の少なくとも何れか一方であってもよい。
【0047】
本開示のデータ収集方法は、車両(V)の状態に関するデータを収集するデータ収集方法であって、車外装置(100,150)から前記データの集計形式を前記車両(V)に送信し、前記車両(V)から収集された前記データを前記車両(V)側で集計して前記車外装置(100,150)により指定された集計形式の集計結果を生成し、前記集計結果を前記車両(V)から前記車外装置(100,150)に送信するものである。
【0048】
かかる方法によれば、通信負荷や車外装置の処理負担を低減しつつ、当該車外装置のニーズに応じた有用な情報を車両から車外装置に提供することが可能となる。
【0049】
ただし、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示の発明は、車両の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1,2,3,4 電子制御装置(ECU)、1M,2M,3M,4M,30M,100M 記憶装置、1P,2P,3P,4P データ処理モジュール、20 車載通信装置、30 集計電子制御装置(データ収集装置)、30P 集計処理モジュール、31,32,3n 演算モジュール、100 管理サーバ(車外装置)、150 端末、F フレーム、Fd 診断記録フレーム、Ff 汎用フレーム、Ft データ収集フレーム、V 車両。
図1
図2
図3
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図5