(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183580
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】読取方法、マーカーおよび読取装置
(51)【国際特許分類】
G06K 7/12 20060101AFI20231221BHJP
G06K 19/06 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G06K7/12
G06K19/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097165
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】鄭 暁光
(72)【発明者】
【氏名】曽根 康介
(72)【発明者】
【氏名】大野 真実
(72)【発明者】
【氏名】戴 桂明
(72)【発明者】
【氏名】細谷 俊史
(72)【発明者】
【氏名】柿井 俊昭
(57)【要約】
【課題】より遠くからでもマーカーを読み取りやすい読取方法、マーカーおよび読取装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る読取方法は、対象品に付されるマーカーであって、波長λ1から波長λn(nは2以上)の光それぞれに対する反応形態に基づいて規定される情報コードを示すコード領域を有するマーカーの読取方法であって、波長λ1から波長λnの光を互いに異なるタイミングで対象品に照射して得られる対象品の第1画像から第n画像を用いて、波長λ1から波長λnの光それぞれに対するコード領域の反応形態を取得する反応形態取得工程と、波長λ1から波長λnの光に対して得られた反応形態に基づいて、情報コードを取得する情報コード取得工程と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象品に付されるマーカーであって、波長λ1から波長λn(nは2以上)の光それぞれに対する反応形態に基づいて規定される情報コードを示すコード領域を有する前記マーカーの読取方法であって、
前記波長λ1から前記波長λnの光を互いに異なるタイミングで前記対象品に照射して得られる前記対象品の第1画像から第n画像を用いて、前記波長λ1から前記波長λnの光それぞれに対する前記コード領域の反応形態を取得する反応形態取得工程と、
前記波長λ1から前記波長λnの光に対して得られた前記反応形態に基づいて、前記情報コードを取得する情報コード取得工程と、
を備える、読取方法。
【請求項2】
波長λ1から波長λnの光を照射していない状態の前記対象品の初期画像を取得する工程を更に備え、
前記反応形態取得工程は、前記第1画像から前記第n画像それぞれと、前記初期画像との差分画像に基づいて、前記波長λ1から前記波長λnの光に対する前記コード領域の前記反応形態を取得する、
請求項1に記載の読取方法。
【請求項3】
前記コード領域は、複数の領域を有し、
前記複数の領域の少なくとも1つの領域は、前記波長λ1から前記波長λnの光を吸収または反射する領域である、
請求項1または請求項2に記載の読取方法。
【請求項4】
前記マーカーが有する基準領域を特定する基準領域特定工程であって、前記基準領域は波長λ0の光に反応する前記基準領域であり、前記波長λ0の光を前記対象品に照射して得られる前記対象品の第0画像を用いて画像空間における前記基準領域を特定する前記基準領域特定工程を更に備え、
前記波長λ0および前記波長λ1から波長λnの光は、非可視光であり、
前記反応形態取得工程では、前記対象品の第1画像から第n画像を用いて前記画像空間における前記基準領域に対する前記コード領域を特定する、
請求項1に記載の読取方法。
【請求項5】
前記波長λ0および前記波長λ1から前記波長λnの光を照射していない状態の前記対象品の初期画像を取得する工程を更に備え、
前記コード領域は、複数の領域を有し、
前記複数の領域の少なくとも1つの領域は、前記波長λ1から前記波長λnの光を吸収または反射する領域であり、
前記基準領域特定工程では、前記初期画像と前記第0画像との差分画像に基づいて前記基準領域を特定し、
前記反応形態取得工程は、
波長λiの光(iは1以上n以下)を前記対象品に照射して前記波長λiの光に対する前記対象品の第i画像を取得する第i画像取得工程と、
前記初期画像と前記第i画像の第i差分画像を生成する第i差分画像生成工程と、
前記第i差分画像における前記波長λiの光に対する反応状態に基づいて前記第i画像における前記基準領域に対する前記複数の領域を特定するとともに、前記複数の領域それぞれの前記波長λiの光に対する反応状態で表される反応パターンを前記反応形態として取得する、反応パターン取得工程と、
を有し、
前記反応形態取得工程では、前記第i画像取得工程、前記第i差分画像生成工程および前記反応パターン取得工程それぞれを、前記iが1からのnのそれぞれの場合に対して実施し、
前記情報コード取得工程では、前記反応形態取得工程で得られた前記波長λ1から前記波長λnの光に対する前記コード領域の前記反応パターンに基づいて、前記情報コードを取得する、
請求項4に記載の読取方法。
【請求項6】
前記複数の領域は、前記基準領域に対して一方向に沿って配置されている、
請求項5に記載の読取方法。
【請求項7】
前記基準領域の材料は、波長λ0の光を吸収または反射する透明塗料であり、
前記コード領域の少なくとも一部の材料は、波長λ1から波長λnの何れかの光を吸収または反射する透明塗料である、
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の読取方法。
【請求項8】
前記対象品は、ハーネスである、
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の読取方法。
【請求項9】
波長λ1から波長λn(nは2以上)の光それぞれに対する反応形態に基づいて規定される情報コードを示すコード領域を備え、
前記コード領域は、複数の領域を有し、
前記複数の領域の少なくとも1つの領域は、前記波長λ1から前記波長λnの光を吸収または反射する領域である、
マーカー。
【請求項10】
波長λ0の光に反応する基準領域を更に備え、
前記基準領域の材料は、波長λ0の光を吸収または反射する透明塗料であり、
前記コード領域の少なくとも一部の材料は、波長λ1から波長λnの何れかの光を吸収または反射する透明塗料であり、
前記波長λ0、前記波長λ1から波長λnの光は、非可視光である、
請求項9に記載のマーカー。
【請求項11】
波長λ1から波長λn(nは2以上)の光それぞれに対する反応形態に基づいて規定される情報コードを示すコード領域を有するマーカーの読取装置であって、
波長λ1から波長λnの光を出力する光出力部と、
前記マーカーの画像を取得する撮像部と、
前記波長λ1から前記波長λnの光それぞれを異なるタイミングで前記マーカーに照射しながら、前記波長λ1から前記波長λnの光に対する前記マーカーの画像を取得するように前記光出力部および前記撮像部を制御するとともに、前記波長λ1から前記波長λnの光に対する前記マーカーの画像を解析して、前記情報コードを取得する制御装置と、
を備える、
読取装置。
【請求項12】
前記マーカーは、波長λ0の光に反応する基準領域を更に有し、
前記出力部は、前記波長λ0の光を更に出力し、
前記波長λ0、前記波長λ1から波長λnの光は、非可視光であり、
前記制御装置は、前記波長λ0、前記波長λ1から前記波長λnの光それぞれを異なるタイミングで前記マーカーに照射しながら、前記波長λ0、前記波長λ1から前記波長λnの光に対する前記マーカーの画像を取得するように前記光出力部および前記撮像部を制御するとともに、前記波長λ0、前記波長λ1から前記波長λnの光に対する前記マーカーの画像を解析して、前記情報コードを取得する、
請求項11に記載の読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取方法、マーカーおよび読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象品(商品、部品等)を識別するため、特許文献1に記載されているようなバーコードが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されているように、バーコードは白黒パターンで情報を表している。そのため、対象品に応じて、バーコードは異なる白黒パターンを要する。この場合、バーコードのサイズが同じであれば、種々のパターンを得るために、白領域と黒領域のサイズは、小さくなる。そのため、バーコードの読取装置は、バーコード近傍に配置されていた。
【0005】
本開示は、より遠くからでもマーカーを読み取りやすい読取方法、マーカーおよび読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る読取方法は、対象品に付されるマーカーであって、波長λ1から波長λn(nは2以上)の光それぞれに対する反応形態に基づいて規定される情報コードを示すコード領域を有する前記マーカーの読取方法であって、前記波長λ1から前記波長λnの光を互いに異なるタイミングで前記対象品に照射して得られる前記対象品の第1画像から第n画像を用いて、前記波長λ1から前記波長λnの光それぞれに対する前記コード領域の反応形態を取得する反応形態取得工程と、前記波長λ1から前記波長λnの光に対して得られた前記反応形態に基づいて、前記情報コードを取得する情報コード取得工程と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、より遠くからでもマーカーを読み取りやすい読取方法、マーカーおよび読取装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るマーカーの読取方法を説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、読取装置の一例の構成を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る読取方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は、先頭領域の特定方法を説明するための図面である。
【
図5】
図5は、波長λ1の光に対して反応する領域をマーカーが有するか否かを特定する方法を説明するための図面である。
【
図6】
図6は、波長λ2の光に対して反応する領域をマーカーが有するか否かを特定する方法を説明するための図面である。
【
図7】
図7は、波長λ3の光に対して反応する領域をマーカーが有するか否かを特定する方法を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の一側面に係る読取方法は、
(1)対象品に付されるマーカーであって、波長λ1から波長λn(nは2以上)の光それぞれに対する反応形態に基づいて規定される情報コードを示すコード領域を有する前記マーカーの読取方法であって、前記波長λ1から前記波長λnの光を互いに異なるタイミングで前記対象品に照射して得られる前記対象品の第1画像から第n画像を用いて、前記波長λ1から前記波長λnの光それぞれに対する前記コード領域の反応形態を取得する反応形態取得工程と、前記波長λ1から前記波長λnの光に対して得られた前記反応形態に基づいて、前記情報コードを取得する情報コード取得工程と、を備える。
【0010】
上記読取方法では、波長λ1から波長λnの光を異なるタイミングで対象品に照射することによって、各波長の光に対するマーカーの情報が得られる。得られた各波長の光に対する情報に基づいてマーカーで示される情報コードが取得される。すなわち、上記読取方法では、異なる波長の光に対するマーカーの反応の違いに基づいて、情報コードを取得している。よって、対象品を区別するための情報コードの数が多くても、情報コードを表現するための領域を大きくすることができる。したがって、より遠くからでもマーカーを読み取り易い。
【0011】
(2)上記(1)に記載の読取方法は、波長λ1から波長λnの光を照射していない状態の前記対象品の初期画像を取得する工程を更に備え、前記反応形態取得工程は、前記第1画像から前記第n画像それぞれと、前記初期画像との差分画像に基づいて、前記波長λ1から前記波長λnの光に対する前記コード領域の前記反応形態を取得してもよい。上記のように差分画像を用いることによって、波長λ1から波長λnの光に反応する領域が特定され易い。その結果、情報コードを読み取ることが容易である。
【0012】
(3)上記(1)または(2)において、前記コード領域は、複数の領域を有し、前記複数の領域の少なくとも1つの領域は、前記波長λ1から前記波長λnの光を吸収または反射する領域であってもよい。この場合、マーカーによって表す情報コードの数を容易に増やすことが可能である。
【0013】
(4)上記(1)に記載の読取方法は、前記マーカーが有する基準領域を特定する基準領域特定工程であって、前記基準領域は波長λ0の光に反応する前記基準領域であり、前記波長λ0の光を前記対象品に照射して得られる前記対象品の第0画像を用いて画像空間における前記基準領域を特定する前記基準領域特定工程を更に備え、前記波長λ0および前記波長λ1から波長λnの光は、非可視光であり、前記反応形態取得工程では、前記対象品の第1画像から第n画像を用いて前記画像空間における前記基準領域に対する前記コード領域を特定してもよい。
【0014】
上記読取方法で読み取るべきマーカーは、実質的に不可視なマーカーとして構成され得る。そのため、対象品にマーカーを付しても対象品の外観の変化が生じ難い。上記読取方法では、波長λ0の光が対象品に照射されることによって得られる対象品の第0画像に基づいて、基準領域が特定される。そのため、マーカーが、実質的に不可視なマーカーであっても、基準領域に対してコード領域が特定できることから、波長λ1から波長λnの光それぞれに対するコード領域の反応形態を取得することが可能である。
【0015】
(5)上記(4)において、前記波長λ0および前記波長λ1から前記波長λnの光を照射していない状態の前記対象品の初期画像を取得する工程を更に備え、前記コード領域は、複数の領域を有し、前記複数の領域の少なくとも1つの領域は、前記波長λ1から前記波長λnの光を吸収または反射する領域であり、前記基準領域特定工程では、前記初期画像と前記第0画像との差分画像に基づいて前記基準領域を特定し、前記反応形態取得工程は、波長λiの光(iは1以上n以下)を前記対象品に照射して前記波長λiの光に対する前記対象品の第i画像を取得する第i画像取得工程と、前記初期画像と前記第i画像の第i差分画像を生成する第i差分画像生成工程と、前記第i差分画像における前記波長λiの光に対する反応状態に基づいて前記第i画像における前記基準領域に対する前記複数の領域を特定するとともに、前記複数の領域それぞれの前記波長λiの光に対する反応状態で表される反応パターンを前記反応形態として取得する、反応パターン取得工程と、を有し、前記反応形態取得工程では、前記第i画像取得工程、前記第i差分画像生成工程および前記反応パターン取得工程それぞれを、前記iが1からのnのそれぞれの場合に対して実施し、前記情報コード取得工程では、前記反応形態取得工程で得られた前記波長λ1から前記波長λnの光に対する前記コード領域の前記反応パターンに基づいて、前記情報コードを取得してもよい。
【0016】
この場合、コード領域が複数の領域を有することから、マーカーによって表す情報コードの数を容易に増やすことが可能である。更に、上記のように差分画像を用いることから、波長λ0および波長λ1から波長λnの光に反応する領域を特定することが容易である。その結果、情報コードが取得され易い。
【0017】
(6)上記(5)において、前記複数の領域は、前記基準領域に対して一方向に沿って配置されていてもよい。この場合、たとえば、対象品がハーネスのような、一方向に延在する部材である場合に有効である。
【0018】
(7)上記(4)から(6)のいずれかに1つにおいて、前記基準領域の材料は、波長λ0の光を吸収または反射する透明塗料であり、前記コード領域の少なくとも一部の材料は、波長λ1から波長λnの何れかの光を吸収または反射する透明塗料であってもよい。この場合、対象品に対してマーカーが目立ちにくい。
【0019】
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記対象品の例は、ハーネスである。
【0020】
本開示の他の側面に係るマーカーは、
(9)波長λ1から波長λn(nは2以上)の光それぞれに対する反応形態に基づいて規定される情報コードを示すコード領域を備え、前記コード領域は、複数の領域を有し、前記複数の領域の少なくとも1つの領域は、前記波長λ1から前記波長λnの光を吸収または反射する領域である。
【0021】
このようなマーカーでは、コード領域に対して、波長λ1から波長λn(nは2以上)の光に対する情報が重畳されている。上記マーカーでは、波長λ1から波長λnの光をマーカーに照射することで、マーカーの情報コードを読み取ることが可能である。そのため、情報コードを区別するために、コード領域の大きさ等の影響が低減される。たとえば、白黒のパターンで情報コードを表現するバーコードでは、多くの情報コードを表す場合、白黒のパターンにおける白領域および黒領域を小さくする必要がある。これに対して、上記マーカーでは、より多くの情報コードを表現する場合でもコード領域が有する複数の領域のサイズは、維持されるかまたはより大きくなる。そのため、より遠くからでもマーカーを読み取ることが可能である。
【0022】
(10)上記(9)に記載のマーカーは、波長λ0の光に反応する基準領域を更に備え、前記基準領域の材料は、波長λ0の光を吸収または反射する透明塗料であり、 前記コード領域の少なくとも一部の材料は、波長λ1から波長λnの何れかの光を吸収または反射する透明塗料であり、前記波長λ0、前記波長λ1から波長λnの光は、非可視光であってもよい。この場合、対象品に対してマーカーが目立ちにくい。
【0023】
本開示の更に他の側面に係る読取装置は、
(11)波長λ1から波長λn(nは2以上)の光それぞれに対する反応形態に基づいて規定される情報コードを示すコード領域を有するマーカーの読取装置であって、波長λ1から波長λnの光を出力する光出力部と、前記マーカーの画像を取得する撮像部と、前記波長λ1から前記波長λnの光それぞれを異なるタイミングで前記マーカーに照射しながら、前記波長λ1から前記波長λnの光に対する前記マーカーの画像を取得するように前記光出力部および前記撮像部を制御するとともに、前記波長λ1から前記波長λnの光に対する前記マーカーの画像を解析して、前記情報コードを取得する制御装置と、を備える。
【0024】
この場合、波長λ1から波長λnの光に対するマーカーの画像を取得することができる。更に、取得された画像が解析されることによって、情報コードを取得することが可能である。そのため上記読取装置は、上記読取方法に適した装置であるとともに、上記(9)または上記(10)に示したマーカーの読み取りに適した装置である。
【0025】
(12)上記(11)に記載の読取装置において、前記マーカーは、波長λ0の光に反応する基準領域を更に有し、前記出力部は、前記波長λ0の光を更に出力し、前記波長λ0、前記波長λ1から波長λnの光は、非可視光であり、前記制御装置は、前記波長λ0、前記波長λ1から前記波長λnの光それぞれを異なるタイミングで前記マーカーに照射しながら、前記波長λ0、前記波長λ1から前記波長λnの光に対する前記マーカーの画像を取得するように前記光出力部および前記撮像部を制御するとともに、前記波長λ0、前記波長λ1から前記波長λnの光に対する前記マーカーの画像を解析して、前記情報コードを取得してもよい。この場合、上記読取装置で読み取るべきマーカーは、実質的に不可視なマーカーとして構成され得る。そのため、対象品にマーカーを付しても対象品の外観の変化が生じ難い。上記読取装置では、光出力部が波長λ0の光が対象品に照射されることによって撮像部が取得するマーカーの画像に基づいて、制御装置が基準領域を特定できる。そのため、マーカーが、実質的に不可視なマーカーであっても、制御装置が基準領域に対してコード領域が特定できることから、読取装置は、波長λ1から波長λnの光それぞれに対するコード領域の反応形態を取得することが可能である。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
図1は、一実施形態に係るマーカー10の読取方法を説明するための模式図である。本実施形態において説明するマーカー10は、対象品1に対する情報コードとして対象品1を識別するための識別コードを示すマーカーである。
図1は、マーカー10を読み取る読取装置20が、ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)2に搭載されている形態を例示している。
図1において、HMD2は、対象品1を識別する必要を有する作業者3に装着されている。
【0028】
マーカー10が付される対象品1は限定されない。対象品1は、販売される日常品でもよいし、工業用の装置でもよいし、装置を製造するための部品でもよい。対象品1の形状も限定されない。
図1では、対象品1が一方向に延在する部材(たとえば、ハーネス)である例を示している。
【0029】
マーカー10は、対象品1を識別する機能を有する。本実施形態で説明するマーカー10は、人が肉眼で見た場合に実質的に透明である。すなわち、マーカー10は、実質的に肉眼で不可視なマーカー10である。
【0030】
マーカー10は、先頭領域(基準領域)11と、コード領域12とを有する。先頭領域11は、非可視光領域内の波長λ0の光を選択的に吸収する領域である。コード領域12は、非可視光領域内の波長λ1から波長λn(nは2以上の整数)の何れかの光を選択的に吸収する領域を少なくとも1つ有する。非可視光領域の例は、赤外領域(波長780nm以上2000nm以下)である。
【0031】
以下では、コード領域12が第1領域121と第2領域122とを有しており、波長λ0、波長λ1、波長λ2および波長λ3の光を用いてマーカー10を読み取る形態を説明する。マーカー10は、先頭領域11と、第1領域121と、第2領域122とを有する。先頭領域11、第1領域121および第2領域122は、この順に一方向に配置されている。
【0032】
先頭領域11は、マーカー10の読取過程(或いは識別コードの読取過程)において、コード領域12の位置を特定するための領域である。本実施形態のように、不可視のマーカー10の場合、先頭領域11は、マーカー10が対象品1に付されているか否かを判定するためにも使用されてもよい。先頭領域11は、前述したように、非可視光領域内の波長λ0の光を選択的に吸収する。
【0033】
コード領域12は、マーカー10が付された対象品1を識別する識別コード(情報コード)を示す領域である。コード領域12が有する第1領域121および第2領域122は、波長λ1、波長λ2および波長λ3の何れかの光を選択的に吸収する。マーカー10では、識別コードを示すために、波長λ1、波長λ2および波長λ3の光に対する第1領域121および第2領域122の反応状態(吸収の有無)に対して表1に示す状態コードを割り当てている。表1では、波長λ1、波長λ2および波長λ3の光に対する吸収を有する場合の状態コードとして、「1」、「2」および「3」が割り当てられており、波長λ1、波長λ2および波長λ3の光に対する吸収を有しない状態を示す状態コードに「0」が割り当てられている。
【表1】
【0034】
表1に基づけば、第1領域121および第2領域122の波長λ1、波長λ2および波長λ3の光に対する反応状態の組み合わせによって、9種類の識別コードが規定される。
【0035】
先頭領域11、第1領域121および第2領域122は、たとえば、波長λ0、波長λ2および波長λ3を選択的に吸収する透明塗料が対象品1に塗布されることによって形成され得る。この場合、先頭領域11、第1領域121および第2領域122の材料は、上記透明塗料である。このような塗料は、たとえば、波長λ0、波長λ2および波長λ3に対して吸収ピークを有する吸収剤を含む透明インクである。上記吸収剤の例は、波長λ0、波長λ2および波長λ3に対して吸収ピークを有するように分子設計されたセシウム酸化タングステンである。
【0036】
マーカー10は、たとえば透明なシールまたは対象品1におけるマーカー10と同じ色のシールを有してもよい。この場合、上記シールの表面に上記波長λ0、波長λ2および波長λ3を選択的に吸収する透明塗料が印刷されることによってマーカー10が得られる。マーカー10が上記シールを有する場合、上記シールが対象品1に貼り付けられることで対象品1にマーカー10が取り付けられる。
【0037】
図2は、読取装置20の一例の構成を説明するための模式図である。読取装置20は、光出力部21、撮像部22と、制御装置23と有する。
【0038】
光出力部21は、波長λ0、波長λ1、波長λ2および波長λ3の光それぞれを出力する。光出力部21は、たとえば、
図2に示したように、光源21a、光源21b、光源21cおよび光源21dを有する。光源21aは、波長λ0の光を出力する。光源21bは、波長λ1の光を出力する。光源21cは、波長λ2の光を出力する。光源21dは、波長λ3の光を出力する。光源21a、光源21b、光源21cおよび光源21dの例は、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)等である。
【0039】
撮像部22は、波長λ0、波長λ1、波長λ2または波長λ3の光が照射された対象品1を撮像するデバイスである。後述するように、撮像部22は、波長λ0、波長λ1、波長λ2または波長λ3の光を照射していない場合の対象品1も撮像可能に構成されている。撮像部22の例は、赤外線カメラである。
【0040】
制御装置23は、波長λ0および波長λ1から波長λ3の光それぞれを異なるタイミングでマーカー10に照射しながら、波長λ0および波長λ1から波長λ3の光に対するマーカー10の画像を取得するように光出力部21および撮像部22を制御する機能を有する。制御装置23は、波長λ0および波長λ1から波長λ3の光に対するマーカー10の画像を解析して、識別コードを取得する機能も有する。制御装置23は、たとえば、上記機能を実現可能に構成されたマイクロコンピュータである。制御装置23は、読取装置専用の装置でよい。
図1に示したように、読取装置20がHMD2に搭載されている場合、HMD2に内蔵されているコンピュータが所定のプログラムを実施することによって、上記コンピュータが制御装置23として機能してもよい。
【0041】
図2を利用して制御装置23の一例を説明する。制御装置23は、制御部23aおよびデータ処理部23bを有する。制御装置23は、
図2に示したように記憶部23cを有してもよい。本実施形態の説明では、制御装置23が記憶部23cを有する場合を説明する。
【0042】
制御部23aは、波長λ0、波長λ1、波長λ2または波長λ3の光が照射された対象品1の画像(マーカ-10の画像を含む)を取得するように、光出力部21および撮像部22を制御する。具体的には、波長λ0、波長λ1、波長λ2および波長λ3の光を異なるタイミングで対象品1に照射するように光出力部21を制御する。制御部23aは、波長λ0、波長λ1、波長λ2および波長λ3の光それぞれを対象品1に照射した時点で、撮像部22を制御して対象品1の画像を取得する。
【0043】
データ処理部23bは、撮像部22で取得した画像を解析して、マーカー10で規定される識別コードを取得(或いは解読)する機能を有する。
【0044】
記憶部23cは、データ処理部23bにおいて、識別コードの取得に必要な情報を保存する。記憶部23cは、表1に示した状態コードの割り当て情報、および、その状態コードを用いて規定されるコード領域の識別コードの情報、マーカー10が有する各領域のサイズ情報などである。記憶部23cは、コンピュータを制御装置23として機能させるためのマーカー読取プログラムを格納していてもよい。
【0045】
次に、マーカー10の読取方法の一例を説明する。第1領域121が波長λ3の光を吸収し、第2領域122が波長λ2の光を吸収するように構成されたマーカー10を読み取る場合を説明する。
【0046】
以下の説明における各種の画像(第0画像、第1画像、第2画像など)は、同じ画像空間で表される画像である。異なる画像が同じ画像空間で表されることは、対象品1が実質的に移動していない場合において、異なるタイミングで取得した対象品1の2つの画像における対象品1の位置座標が同じであることを意味する。
【0047】
マーカー10の読取方法は、
図3のフローチャートに示したように、先頭領域特定工程(基準領域特定工程)S10と、反応形態取得工程S20と、識別コード取得工程(情報コード取得工程)S30とを有する。
【0048】
[先頭領域取得工程]
先頭領域取得工程S10では、読取装置20が波長λ0の光を対象品1に照射する。読取装置20は、波長λの光に対する対象品1の画像を用いて、先頭領域11を、マーカー10における基準領域として特定する。基準領域特定工程S10の一例を具体的に説明する。
【0049】
まず、読取装置20が、波長λ0および波長λ1から波長λ3の光を照射していない状態の対象品1の画像(以下、「第0初期画像」と称す)を取得する(第0初期画像取得工程S11)。次に、読取装置20は、波長λ0の光を対象品1に照射することによって、波長λ0の光に対する対象品1の画像(以下、「第0画像」と称す)を取得する(第0画像取得工程S12)。その後、読取装置20は、第0初期画像および第0画像の差分画像を生成する(差分画像生成工程S13)。本実施形態では、読取装置20は、第0初期画像および第0画像をグレースケール画像に変換した後に、それらの差分画像を生成する。
【0050】
上記のように生成した差分画像に基づいて、読取装置20が、先頭領域11を特定し、先頭領域11の情報を取得する(情報取得工程S14)。具体的には、読取装置20は、生成した差分画像を2値化処理した画像(以下、「A画像30A」と称す)を生成する。上記2値化処理における閾値は、たとえば、グレースケール画像における差分の最大値の70%とし得る。画像を、8bitで表すことを前提とした場合、グレースケール画像において上記差分の最大値の70%以下である箇所を255(白)とし、70%を超えている箇所を0(黒)とすることによって、A画像30Aが得られる。
【0051】
図4は、A画像30Aの模式図である。先頭領域11は、波長λ0の光を吸収する。そのため、第0画像において、先頭領域11は周囲より暗く表示されることから、上記手順で示した2値化処理を差分画像に施して得られるA画像30Aでは、先頭領域11に対応する領域が黒く表される。したがって、A画像30Aにおける黒領域31が先頭領域11として特定され得る。実際には、A画像30Aにおいて、黒領域31が現れる一方、対象品1の他の箇所は現れない。しかしながら、説明の都合上、
図4では、対象品1、第1領域121および第2領域122が二点鎖線で示されている。
【0052】
情報取得工程S14では、読取装置20が、黒領域31の情報を先頭領域11の情報として取得する。先頭領域11の情報は、先頭領域11の差分画像を示す画像空間における位置座標を含む。先頭領域11の情報は、先頭領域11の差分画像を示す画像空間におけるサイズ情報等も含んでよい。
【0053】
[反応形態取得工程]
波長λ1から波長λ3を波長λi(iは1,2,3の何れか)と称して、反応形態取得工程S20の概略を説明する。
【0054】
読取装置20が、波長λ0および波長λ1から波長λ3の光を照射していない状態の対象品1の画像(以下、「第i初期画像」と称す)を取得する(第i初期画像取得工程S21)。次に、読取装置20は、波長λiの光を対象品1に照射することによって、波長λiの光に対する対象品1の画像(以下、「第i画像」と称す)を取得する(第i画像取得工程S22)。その後、読取装置20は、第i初期画像および第i画像の第i差分画像を生成する(第i差分画像生成工程S23)。
【0055】
読取装置20は、上記第i差分画像に基づいて波長λiに対する第iコード要素を取得する(第iコード要素取得工程S24)。第iコード要素取得工程では、読取装置20は、第i差分画像における波長λiに対する光に対する反応状態(吸収の有無)に基づいて、第i画像に対応する差分画像における先頭領域11に対する第1領域121および第2領域122を特定する。読取装置20は、このように特定された第1領域121および第2領域122それぞれの反応状態に対して表1の状態コードを割り当て、コード領域12に対するコード要素を取得する。このコード要素が、波長λiの光に対する反応形態を示す反応パターンに対応する。
【0056】
反応形態取得工程S20では、工程S25で示すように、読取装置20が、全てのコード要素(すなわち、第1コード要素から第3コード要素)を判定して、全てのコード要素を取得するまで、上記第i初期画像取得工程S21、第i画像取得工程S22、第i差分画像生成工程S23および第iコード要素取得工程S24を繰り返す。
【0057】
上記反応形態取得工程S20の一例を具体的に説明する。
【0058】
読取装置20が、波長λ0および波長λ1から波長λ3の光を照射していない状態の対象品1の第1初期画像を取得する(第1初期画像取得工程)。次に、読取装置20は、波長λ1の光を対象品1に照射することによって、波長λ1の光に対する対象品1の第1画像を取得する(第1画像取得工程)。その後、読取装置20は、第1初期画像および第1画像の第1差分画像を生成する(第1差分画像生成工程)。ここでは、読取装置20は、第1初期画像および第1画像をグレースケール画像に変換した後に、それらの第1差分画像を生成する。
【0059】
読取装置20は、上記第1差分画像に基づいて、先頭領域11に対する第1領域121および第2領域122を特定する。第1領域121および第2領域122の特定は、次のように実施され得る。
【0060】
読取装置20は、生成した第1差分画像を2値化処理した画像(以下、「B画像30B」と称す)を生成する。
図5は、B画像30Bの模式図である。
図5では、
図4の場合と同様に、説明の便宜のため、対象品1、第1領域121および第2領域122は二点鎖線で示されている。
【0061】
マーカー10が波長λ1の光を吸収する第1吸収領域を有する場合、第1画像において第1吸収領域は周囲より暗く表示される。そのため、先頭領域取得工程S10における先頭領域11の場合と同じ理由によって、マーカー10が第1吸収領域を有する場合、第1吸収領域は、第1差分画像に対応するB画像30Bに黒色領域として現れる。
【0062】
しかしながら、第1領域121が波長λ3の光を吸収し、第2領域122が波長λ2の光を吸収するように構成されたマーカー10の場合、マーカー10は、第1領域121を有しない。すなわち、
図5に示したように、B画像30Bには黒領域は存在しない。その結果、B画像30Bに基づいて、読取装置20は、マーカー10が有する第1領域121および第2領域122を、波長λ1の光を吸収しない領域と判定する。この場合、表1に示した状態コードの割り当てに応じて、波長λ1に対する第1コード要素として、「00」が得られる(第1コード要素取得工程)。第1コード要素が「00」であることは、表1に基づけば、第1領域121および第2領域122が波長λ1の光を吸収しない領域であることを示している。
【0063】
続いて、読取装置20は、波長λ0および波長λ1から波長λ3の光を照射していない状態の対象品1の第2初期画像を取得する(第2初期画像取得工程)。次に、読取装置20は、波長λ2の光を対象品1に照射することによって、波長λ2の光に対する対象品1の第2画像を取得する(第2画像取得工程)。その後、読取装置20は、第2初期画像および第2画像の第2差分画像を生成する(第2差分画像生成工程)。ここでは、読取装置20は、第2初期画像および第2画像をグレースケール画像に変換した後に、それらの第2差分画像を生成する。
【0064】
読取装置20は、上記第2差分画像に基づいて、先頭領域11に対する第1領域121および第2領域122を特定する。第1領域121および第2領域122の特定は、次のように実施され得る。
【0065】
読取装置20は、生成した第2差分画像を2値化処理した画像(以下、「C画像30C」と称す)を生成する。
図6は、C画像30Cの模式図である。
図6では、
図4の場合と同様に、説明の便宜のため、対象品1および第1領域121が二点鎖線で示されている。
【0066】
マーカー10が波長λ2の光を吸収する第2吸収領域を有する場合、第2画像において第2吸収領域は周囲より暗く表示される。そのため、先頭領域取得工程S10における先頭領域11の場合と同じ理由によって、マーカー10が第2吸収領域を有する場合、第2吸収領域は、第2差分画像に対応するC画像30Cに黒領域として現れる。読み取っているマーカー10は、第2領域122が波長λ2の光を吸収する。そのため、
図6に示したように、C画像30Cに、第2領域122に対応した黒領域32が生じる。
【0067】
読取装置20は、先頭領域特定工程S10で取得した先頭領域11の情報に基づいて、C画像30Cにおける黒領域32が第1領域121であるか第2領域122であるかを判定する。たとえば、読取装置20は、先頭領域11の位置に対する黒領域32の配置関係(先頭領域11に対して配置されている方向、距離など)に基づいて、上記判定を実施する。この際、読取装置20は、黒領域32のサイズと、第1領域121および第2領域122のサイズも対比して上記判定を実施する。これは、第1領域121および第2領域122の両方が波長λ2の光を吸収する場合と区別するためである。すなわち、上記サイズを用いて判定することが可能な理由は、第1領域121および第2領域122の両方が波長λ2の光を吸収する場合の黒領域は、第2領域122(または第1領域121)が波長λ2の光を吸収する場合の黒領域よりサイズが大きくなるからである。参照する第1領域121および第2領域122のサイズは、たとえば、記憶部23cに予め格納されていればよい。
【0068】
上記のように、読取装置20が、黒領域32が第1領域121であるか第2領域122であるかを判定することによって、C画像30Cにおける黒領域32が第2領域122に対応することとともに、第1領域121に対応する位置に黒領域が存在しないことが判定される。
【0069】
この判定結果および表1に示した状態コードの割り当てに応じて、波長λ2に対する第2コード要素として、「02」が得られる(第2コード要素取得工程)。第2コード要素が「02」であることは、表1に基づけば、第1領域121が波長λ2の光を吸収しない領域であり、第2領域122が波長λ1の光を吸収する領域であることを示している。
【0070】
更に、読取装置20は、波長λ0および波長λ1から波長λ3の光を照射していない状態の対象品1の第3初期画像を取得する(第3初期画像取得工程)。次に、読取装置20は、波長λ3の光を対象品1に照射することによって、波長λ3の光に対する対象品1の第3画像を取得する(第3画像取得工程)。その後、読取装置20は、第3初期画像および第3画像の第3差分画像を生成する(第3差分画像生成工程)。ここでは、読取装置20は、第3初期画像および第3画像をグレースケール画像に変換した後に、それらの第3差分画像を生成する。
【0071】
読取装置20は、上記第3差分画像に基づいて、先頭領域11に対する第1領域121および第2領域122を特定する。第1領域121および第2領域122の特定は、次のように実施され得る。
【0072】
読取装置20は、生成した第3差分画像を2値化処理した画像(以下、「D画像30D」と称す)を生成する。
図7は、D画像30Dの模式図である。
図7では、
図4の場合と同様に、説明の便宜のため、対象品1および第2領域122が二点鎖線で示されている。
【0073】
マーカー10が波長λ3の光を吸収する第3吸収領域を有する場合、第3画像において第3吸収領域は周囲より暗く表示される。そのため、先頭領域取得工程S10における先頭領域11の場合と同じ理由によって、マーカー10が第3吸収領域を有する場合、第3吸収領域は、第3差分画像に対応するD画像30Dに黒領域として現れる。読み取っているマーカー10は、第1領域121が波長λ3の光を吸収する。そのため、
図7に示したように、D画像30Dに黒領域33が生じる。
【0074】
読取装置20は、先頭領域取得工程S10で取得した先頭領域11の情報に基づいて、D画像30Dにおける黒領域33が第1領域121であるか第2領域122であるかを判定する。たとえば、読取装置20は、先頭領域11の位置に対する黒領域33の配置関係(先頭領域11に対して配置されている方向、距離など)に基づいて判定する。この際、第2差分画像に関する場合と同じ理由により、読取装置20は、黒領域33のサイズと、第1領域121および第2領域122のサイズも対比して判定する。これにより、D画像30Dにおける黒領域33が第1領域121に対応すること、および、第2領域122に対応する位置に黒領域が存在しないことが判定される。この判定結果および表1に示した状態コードの割り当てに応じて、波長λ3に対する第3コード要素として、「30」が得られる(第3コード要素取得工程)。第3コード要素が「30」であることは、表1に基づけば、第1領域121が波長λ3の光を吸収する領域であり、第2領域122が波長λ3の光を吸収しない領域域であることを示している。
【0075】
上記のように、読取装置20が、波長λ1、波長λ2および波長λ3の光を対象品1に照射することによって、表2に示した第1コード要素、第2コード要素および第3コード要素が得られる。
【表2】
【0076】
[識別コード取得工程]
識別コード取得工程S30では、読取装置20は、反応形態取得工程S20で取得した波長λ1から波長λ3の光に対するコード領域12の反応パターンに基づいて、識別コードを取得する。たとえば、表2に示した第1コード要素、第2コード要素および第3コード要素を反応パターンに割り当てている場合、それらの論理和によって、マーカー10の識別コード:32(式1参照)が得られる。
識別コード=“00”&“02”&“30”=“32”・・・(式1)
【0077】
上記読取方法で読み取られた識別コードは、たとえば、ディスプレイなどに表示され得る。
図1に示したように、HMD2に読取装置20が搭載されている形態では、HMD2が有する表示装置を用いて、読取装置20は、使用者に識別コードを示すことができる。使用者が視認するディスプレイには、マーカー10の読み取り過程で得られた黒領域に基づいて、読取装置20が、肉眼では不可視のマーカー10をディスプレイに表示してもよい。これにより、作業者3が、マーカー10およびそれに対応する対象品1を追跡可能である。
【0078】
上記読取方法の説明において、光を対象品1に照射して対象品1の画像を取得する処理は、たとえば、制御装置23が有する制御部23aが光出力部21および撮像部22を制御することによって実施され得る。このように取得した画像を解析して、識別コードを取得する処理は、データ処理部23bの機能として実施され得る。したがって、上記読取装置20は、マーカー10の読取方法に有効な構成を有する。
【0079】
波長λ1から波長λnの光として、n=3の場合、すなわち、波長λ0、波長λ1、波長λ2および波長λ3の光を用いてマーカー10を読み取る方法の一例を説明した。しかしながら、nの数は3に限定されない。
【0080】
上記読取方法では、読取装置20は、波長λ0、波長λ1、波長λ2および波長λ3の光を異なるタイミングで対象品1に照射する。違う波長の光を照射するタイミングは、たとえば、対象品1が読取装置20に対して実質的に動いていないように作業者3が認識可能な範囲であればよい。たとえば、違う波長の光を照射する間隔は、1/1000秒以下とし得る。このような間隔であれば、対象品1が読取装置20に対して実質的に動いていないように作業者3が認識可能であり、その結果、前述したように、画像中の先頭領域11の位置に基づいて、読取装置20は、第1領域121および第2領域122を特定可能である。
【0081】
反応形態取得工程S20の一例では、
図3に示したように第i初期画像を取得する場合を例示した。このような形態では、n=3の場合、第1初期画像から第3初期画像をそれぞれ取得する。しかしながら、第1初期画像から第3初期画像は、先頭領域特定工程S20で取得する第0初期画像と同じとみなせる。そのため、第i初期画像に変えて、第0初期画像を用いてもよい。
【0082】
図3に示した形態では、第i初期画像取得工程S21、第i画像取得工程S22、第i差分画像生成工程S23および第iコード要素取得工程S24をこの順に実施する形態に対応する。しかしながら、上記読取方法では、たとえば、第i初期画像取得工程S21および第i画像取得工程S22を、iが1から3の場合に実施した後に、それらで得られたデータを用いて、iが1から3の場合に対する第i差分画像生成工程S23および第iコード取得工程S24それぞれが実施されてもよい。
【0083】
上記マーカー10の読取方法で読み取るマーカー10は、先頭領域11と、コード領域12を有する。先頭領域11は、波長λ0の光を選択的に吸収する。コード領域12は、波長λ1から波長λnの光の何れかを吸収する領域を少なくとも1つ有する。そのため、上記読取装置20および読取方法では、読取装置20は、波長λ0の光を、対象品1に照射し、先頭領域11を特定する。更に、読取装置20は、波長λ1から波長λnの光を異なるタイミングで対象品1に照射し、波長λ1から波長λnの光それぞれに対する対象品1の画像を得る。このようにして得られた各画像には、波長λ1から波長λnの光それぞれに対する反応状態が現れる。すなわち、各画像は、波長λ1から波長λnの光に反応した領域が存在するかしないかの情報を有する。そのため、読取装置20は、各画像を解析して、波長λ1から波長λnの光に反応した領域の存在の有無および存在する場合に先頭領域11に対する位置関係を特定できる。その結果、読取装置20は、各画像に対応するコード領域12の反応パターンを取得可能である。各反応パターンに予め設定されているコード要素が各反応パターンに対応づけられるとによって、マーカー10のコード領域12で示される各コード要素が得られる。その結果、読取装置20および読取方法では、得られたコード要素の組み合わせによって表される識別コードを得ることができる。
【0084】
このように、上記読取装置20および読取方法では、読取装置20が、波長λ0および波長λ1から波長λnの光をマーカー10に照射することによって、マーカー10が有する識別コードを読み取る。そのため、コード領域12に複数の波長の光に対する情報が重畳されているマーカー10を読み取ることが可能である。
【0085】
たとえば、白黒のパターンで表されるバーコードの場合、単一波長のレーザ光でバーコードを走査することによって白黒のパターンが読み取られる。この場合、対象品1の数が多くなればそれに応じた異なる白黒のパターンを有するバーコードが必要である。そのため、バーコード全体の大きさが一定である場合、複数の白黒のパターンを準備するために、より小さい黒領域および白領域を用いてバーコードを構成しなければならない。その結果、読み取り装置などをバーコードに近づけないとバーコードが読み取れない。
【0086】
これに対して、上記読取装置20および読取方法では、読取装置20が、波長λ0および波長λ1から波長λnの光を異なるタイミングで対象品1に照射し、各波長の光に対する情報を読み取る。そして、読取装置20は、得られた各波長の光に対する情報に基づいてマーカー10で示される識別コードを取得する。そのため、識別コードの数に対するコード領域12の大きさの影響が低減する。具体的には、たとえば、コード領域12が単一領域であっても使用する波長の数を増やせば、多くの識別コードを表すことが可能である。更に、コード領域12が複数の領域を有する場合、複数の領域の数と、使用する波長の数との組み合わせで、識別コードの数が決定される。そのため、対象品1を区別するための識別コードの数が多くても、識別コードを表現するための領域を大きくすることができる。したがって、上記バーコードの場合より読取装置20が対象品1から離れていても、読取装置20は、マーカー10を読み取ることが可能である。そのため、
図1に示したように、HMD2に搭載された読取装置20がマーカー10を読み取ることができる。たとえば、工場で扱う部品などをマーカー10で識別する場合、作業者が、読取装置20が内蔵されたHMD2を装着した状態で、部品を識別できる。
【0087】
上記読取装置20および読取方法では、読取装置20が、波長λ0および波長λ1から波長λnの光を対象品1に対して照射することで波長λ0および波長λ1から波長λnの光に対する対象品1の画像を取得している。この場合、対象品1には、周囲環境の照明に加えて波長λ0および波長λ1から波長λnの光が照射された状態であることから照明だけの場合に比べてマーカー10の光に対する反応状態に変化が生じている。そのため、対象品1の周囲環境の照明の影響を低減できる。この点でも、読取装置20が、マーカー10からより離れた箇所からでもマーカー10を読み取りやすい。特に、波長λ0から波長λ3の光が非可視光である場合、非可視光を照射したことによって生じる反応パターンに基づいて読取装置20がマーカー10を読み取る。そのため、マーカー10を読み取ることに対する周囲環境の照明の影響がより低減される。そのため、読取装置20がマーカー10からより離れていても、読取装置20がマーカー10を読み取りやすい。
【0088】
波長λ0および波長λ1から波長λ0が非可視光領域(たとえば、赤外領域)である場合、マーカー10が不可視のマーカー10として構成され得る。この場合、肉眼では対象品1に付されたマーカー10は実質的に認識されない。よって、マーカー10が付されていることに伴う対象品1の意匠性などの低下が防止され得る。
【0089】
例示したように、先頭領域11の材料が、波長λ0の光を吸収する透明塗料であり、コード領域の材料が、波長λ1から波長λnの何れかの光を吸収する透明塗料である形態では、マーカー10が対象品1に対して目立ちにくい。よって、マーカー10が付されていることに伴う対象品1の外観の変化が抑制され得る。
【0090】
コード領域12が第1領域121および第2領域122を有する形態であって、先頭領域11、第1領域121および第2領域122が一方向に沿って配置されている形態では、一方向に延在する対象品1に対してマーカー10が適用され易い。たとえば、一方向に沿って配置された先頭領域11、第1領域121および第2領域122を有するマーカー10は、ハーネスに対して有効である。
【0091】
先頭領域11は、マーカー10におけるコード領域12の位置を特定するための領域である。本実施形態のように、不可視のマーカー10の場合、先頭領域11は、マーカー10が対象品1に付されているか否かを判定するためにも使用されてもよい。先頭領域11は、波長λ0の光を吸収する領域である。
【0092】
コード領域12が複数の領域を有する場合、前述したように、複数の領域と、使用する波長の組み合わせで、表現すべき識別コードの数を増やすことが可能である。そのため、マーカー10のサイズを維持しながら識別コードの数を増やしやすい。また、たとえば、前述したバーコードでは白黒のパターンで識別コードが表されており且つ読み取りに同じ波長の光が使用されることから、識別コードの数を増やすためには、黒領域の数を増やす必要が生じる。この場合、黒領域を形成するための材料コストが増大しやすい。更に、上記バーコードでは、白黒のパターンで識別コードを表すため、識別コードの数を増やす場合において、白黒のパターンの設計が煩雑になる。これに対して、コード領域12が複数の領域を有する形態では、複数の領域と使用する波長の組み合わせで表現すべき識別コードの数を容易に増やすことが可能であることから、マーカー10を形成する場合のコストの低減および煩雑さの回避を図ることが可能である。
【0093】
前述したように、差分画像を用いる形態では、波長λ0および波長λ1から波長λnの光に対する反応領域が特定され易い。その結果、より確実にマーカー10が示す識別コードを読み取ることが可能である。
【0094】
先頭領域11を特定するため、先頭領域11の向きに応じて対象品1の向きを把握することができる。
【0095】
図2に示した読取装置20の構成では、マーカー10の読取方法によってマーカー10を読み取ることが可能である。
【0096】
以上、本開示の種々の実施形態を説明したが、本開示に係る読取方法、マーカーおよび読取装置は、例示した実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0097】
たとえば、上記実施形態では、マーカーの基準領域が波長λ0の光を吸収し、コード領域が波長λ1から波長λnの光の何れかを吸収する形態を説明した。しかしながら、基準領域は、波長λ0の光を反射するように構成されていてもよい。コード領域は、波長λ1から波長λnの光の何れかを反射するように構成されていてもよい。この場合、マーカーにおいて、光を反射しない領域が、上述した差分画像において、黒領域として現れる。
【0098】
コード領域が複数の領域を有し且つ基準領域および複数の領域が一方向に沿って配置されている形態において、基準領域の位置は、上記複数の領域を特定可能であれば、マーカーの先頭領域(端)に限定されない。
【0099】
マーカーは、たとえば、2次元コードとして形成されていてもよい。たとえば、コード領域が複数の領域を有する場合、複数の領域は基準領域に対して、2次元的に配置され得る。
【0100】
波長λ0および波長λ1から波長λnの光は、可視光でもよい。この場合でも、波長λ0および波長λ1から波長λnの光を対象品に照射することによって得られる画像を用いて識別コードを読み取る。そのため、前述したように、遠くからでもマーカーを容易に読み取ることが可能である。
【0101】
マーカーが、シールを有し、シールの表面に波長λ0の光に反応する領域および波長λ1から波長λnの光の何れかに反応する領域を形成する形態において、シールは、透明シールに限定されない。たとえば、シールは、白色のシールでもよい。
【0102】
マーカーを構成する材料は、例示した塗料に限定されない。マーカーを構成する材料は、異なる波長に対して吸収(または反射)特性を区別可能な材料であればよい。
【0103】
情報コードは、識別コードに限定されず、対象品に関する情報を含むコードであればよい。
【0104】
異なる複数の波長の光が対象品に異なるタイミングで照射されることによって、コード領域を特定できることから、マーカーは、基準領域を有しなくてもよい。マーカーが不可視のマーカーである場合、基準領域(上記実施形態では先頭領域)を有することによって、上記実施形態で説明したように、対象品にマーカーが付されているか否かを判定し易いとともに、コード領域の反応パターンが特定され易い。
【0105】
以上説明した種々の実施形態および変形例は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1…対象品
2…HMD(ヘッドマウントディスプレイ)
3…作業者
10…マーカー
11…先頭領域(基準領域)
12…コード領域
20…装置
21…光出力部
21a…光源
21b…光源
21c…光源
21d…光源
22…撮像部
23…制御装置
23a…制御部
23b…データ処理部
23c…記憶部
30A…A画像
30B…B画像
30C…C画像
30D…D画像
31…黒領域
32…黒領域
33…黒領域
121…第1領域
122…第2領域