(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183591
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】情報処理装置、車両及び遮光方法
(51)【国際特許分類】
B60J 3/04 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B60J3/04
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097181
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】榎本 光洋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康宏
(72)【発明者】
【氏名】宇野 淳
(57)【要約】
【課題】車両に乗車する者に操作を強いることなく、車両に到来する光を遮光することを可能にする技術を提供すること。
【解決手段】1以上の光源を含む現実空間を仮想化した仮想空間を生成する生成部と、前記現実空間を走行する第1車両の位置を取得する取得部と、前記第1車両の位置に対応する前記仮想空間の位置に前記第1車両を配置し、配置した前記第1車両の位置と前記仮想空間に存在する光の位置との関係に基づいて、前記現実空間における前記第1車両に対する光の到来方向を検出する検出部と、前記第1車両に対する光の到来方向を示す光情報を前記第1車両に通知する通知部と、を有するデジタルツイン情報処理装置を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の光源を含む現実空間を仮想化した仮想空間を生成する生成部と、
前記現実空間を走行する第1車両の位置を取得する取得部と、
前記第1車両の位置に対応する前記仮想空間の位置に前記第1車両を配置し、配置した前記第1車両の位置と前記仮想空間に存在する光の位置との関係に基づいて、前記現実空間における前記第1車両に対する光の到来方向を検出する検出部と、
前記第1車両に対する光の到来方向を示す光情報を前記第1車両に通知する通知部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記仮想空間に存在する光の位置には、少なくとも、前記第1車両以外の第2車両のヘッドライトの位置が含まれており、
前記検出部は、前記現実空間における前記第1車両に対する光の到来方向として、少なくとも、前記第2車両のヘッドライトにより発せられた光の到来方向を検出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記仮想空間に存在する光の位置には、少なくとも、太陽光の位置が含まれており、
前記検出部は、前記現実空間における前記第1車両に対する光の到来方向として、少なくとも、前記太陽光の到来方向を検出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記仮想空間に存在する光の位置には、前記仮想空間に存在する反射物に反射した光が含まれており、
前記検出部は、前記現実空間における前記第1車両に対する光の到来方向として、前記反射物に反射した光の到来方向を検出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記仮想空間に存在する光には、光の強さを示す情報が対応づけられており、
前記通知部は、前記第1車両に対する光の到来方向及び当該光の強さを示す前記光情報を、前記第1車両に通知する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記仮想空間に存在する光には、当該光を発する光源の重要度を示す情報が対応づけられており、
前記通知部は、当該光の重要度を示す情報を含む前記光情報を、前記第1車両に通知する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置と通信する車両であって、
前記情報処理装置から、当該車両に対する光の到来方向を示す光情報を受信する受信部と、
当該車両に乗車する人物の位置を取得する取得部と、
前記光の到来方向に基づいて、当該光が前記人物の位置に向かう際に前記車両のフロントガラスを通過する前記フロントガラス上の位置を検出する検出部と、
前記フロントガラス上の位置を通過する光を遮光する制御部と、
を有する車両。
【請求項8】
前記受信部は、前記車両に対する光の到来方向及び当該光の強さを示す前記光情報を受信し、
前記制御部は、前記光の強さに基づいて、前記フロントガラス上の位置を通過する光を遮光する度合いを制御する、
請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記受信部は、前記車両に対する光の到来方向及び当該光の重要度を示す前記光情報を受信し、
前記制御部は、前記光の重要度が所定値以上である場合、該重要度が所定値以上である光を遮光しないように制御する、
請求項7に記載の車両。
【請求項10】
前記人物の位置は、前記人物の瞳の位置を含む、
請求項7に記載の車両。
【請求項11】
情報処理装置と通信する車両が実行する遮光方法であって、
前記情報処理装置から、当該車両に対する光の到来方向を示す光情報を受信するステップと、
当該車両に乗車する人物の位置を取得するステップと、
前記光の到来方向に基づいて、当該光が前記人物の位置に向かう際に前記車両のフロントガラスを通過する前記フロントガラス上の位置を検出するステップと、
前記フロントガラス上の位置を通過する光を遮光するステップと、
を含む、遮光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、車両及び遮光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車両前方からの直射日光等を遮光することが可能なサンバイザーが取り付けられている(例えば特許文献1参照)。運転者及び同乗者等の車両に乗車する者は、サンバイザーを使用することで、直射日光が直接目に入ることを防ぐことができ、前方の視界を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に乗車する者は、前方の光が眩しいと感じた場合、光を遮る位置にサンバイザーを移動させる必要がある。すなわち、車両に乗車する者は、車両に乗車中にサンバイザーの操作を強いられることになる。
【0005】
そこで、本発明は、車両に乗車する者に操作を強いることなく、車両に到来する光を遮光することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、1以上の光源を含む現実空間を仮想化した仮想空間を生成する生成部と、前記現実空間を走行する第1車両の位置を取得する取得部と、前記第1車両の位置に対応する前記仮想空間の位置に前記第1車両を配置し、配置した前記第1車両の位置と前記仮想空間に存在する光の位置との関係に基づいて、前記現実空間における前記第1車両に対する光の到来方向を検出する検出部と、前記第1車両に対する光の到来方向を示す光情報を前記第1車両に通知する通知部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両に乗車する者に操作を強いることなく、車両に到来する光を遮光することを可能にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る遮光システムの一例を示す図である。
【
図2】情報処理装置及び車載装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】情報処理装置の機能ブロック構成例を示す図である。
【
図4】車載装置の機能ブロック構成例を示す図である。
【
図5】車両の走行位置を収集する処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【
図6】遮光システムが遮光処理を行う際の処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【
図7】車載装置が、フロントガラスを遮光する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】フロントガラスを通過する光を遮光する処理の具体例を示す図である。
【
図9】光の到来方向及びフロントガラスの遮光状態を説明する図である。
【
図10】光の到来方向及びフロントガラスの遮光状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0010】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る遮光システム1の一例を示す図である。遮光システム1は、情報処理装置10と、車載装置20と、カメラ30と、フロントガラス40と、車両50Aとを含む。車載装置20と、カメラ30と、フロントガラス40とは、車両50Aに搭載される。また、人物60は、車両50Aに乗車している者である。人物60は、車両50Aを運転する運転者であってもよいし、車両50Aの最前列又は助手席に座っている同乗者又は乗客であってもよい。
【0011】
本実施形態では、現実世界を走行する多数の車両のうち、情報処理装置10からの情報に基づいて遮光を行う車両を車両50Aと呼ぶ。また、現実世界を走行する多数の車両のうち、車両50A以外の車両を、車両50Bと呼ぶ。なお、本実施形態において、車両50Aと車両50Bを特に区別しない場合、車両50と呼ぶ。また、車両50A及び車両50Bを、それぞれ、第1車両及び第2車両と呼んでもよい。
【0012】
車両50は、自動車、トラック、バス等を想定しているが、これらに限定されるものではない。車両50には、列車、自動二輪車及び自転車等が含まれていてもよい。
【0013】
フロントガラス40は、調光可能な複数の領域(area)が全面に並べられており、複数の領域のうち任意の領域を、遮光状態及び透過状態に切り替えることができる。例えば、各領域は四角形であり、フロントガラス40の前面に複数の領域が格子状に並べられていてもよい。若しくは、各領域は、例えば六角形であり、フロントガラス40の前面に複数の領域がハニカム状に並べられていてもよい。なお、各領域の形状及び並び方は一例に過ぎず、これらに限定されるものではない。また、フロントガラス40は、光が透過する量を複数段階又は無段階に変化させることが可能であってもよい。例えば、光を完全に遮光するのではなく、一部の光を透過させることが可能であってもよい。フロントガラス40は、部分光遮断ガラスと呼ばれてもよい。又は、フロントガラス40は、通常のフロントガラスに遮光装置を取り付けたものであってもよい。なお、車両50が自動二輪車の場合、フロントガラス40に代えて、遮光機能を有するフロントスクリーンが用いられてもよい。
【0014】
カメラ30は、人物60を撮影することで、車両50Aに乗車する人物60の位置を検出する。なお、本実施形態において、人物60の位置は、より具体的には人物60の頭の位置であってもよいし、人物60の目の位置であってもよいし、人物60の瞳の位置であってもよい。カメラ30は、例えばドライブレコーダーであってもよいし、遮光システム1に用いるための専用のカメラであってもよい。
【0015】
車載装置20は、情報処理装置10から、車両50Aに対する光の到来方向を示す情報を受信し、受信した情報に基づいて、当該光が人物60の目に入らないようにフロントガラス40を制御する。
【0016】
情報処理装置10は、現実空間を走行する複数の車両50から受信する、走行位置等のデータ、現実空間に存在するビル、建物、信号及び道路標識などの位置データ、及び、太陽光の位置を示すデータ等の様々なデータに基づいて、仮想空間の中で現実空間を再現する。仮想空間の中で現実空間を再現することは、仮想空間の中に現実空間をコピーすることに相当することから、「デジタルツイン(デジタルの双子)」と呼ばれる。
【0017】
また、情報処理装置10は、仮想空間の中で車両50A及び車両50Bを走行させることで、現実空間において、車両50Aに対して、車両50Bのヘッドライト及び太陽などを含む様々な光源からの光が到来する方向を検出し、検出した“光が到来する方向を示す情報”を、車両50Aに搭載される車載装置20に送信する。
【0018】
<ハードウェア構成>
図2は、情報処理装置10及び車載装置20のハードウェア構成例を示す図である。情報処理装置10及び車載装置20は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)等のプロセッサ11、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置12、有線又は無線通信を行う通信IF(Interface)13、入力操作を受け付ける入力デバイス14、及び情報の出力を行う出力デバイス15を有する。入力デバイス14は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等である。出力デバイス15は、例えば、ディスプレイ、タッチパネル及び/又はスピーカ等である。車載装置20の通信IFは、更に、位置情報を測定するためのGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機又はGPS(Global Positioning System)受信機を接続可能であってもよい。若しくは、車載装置20は、GNSS受信機又はGPS受信機を備えていてもよい。
【0019】
情報処理装置10は、1又は複数の物理的なサーバ等から構成されていてもよいし、ハイパーバイザー(hypervisor)上で動作する仮想的なサーバを用いて構成されていてもよいし、クラウドサーバを用いて構成されていてもよい。
【0020】
また、車載装置20は、車載可能な情報処理装置であれば、どのようなハードウェアで構成されていてもよい。例えば、持ち運び可能なパーソナルコンピュータ(Personal Computer)であってもよいし、カーナビゲーションシステムであってもよいし、車載用のコンピュータ等であってもよい。
【0021】
<機能ブロック構成>
(情報処理装置)
図3は、情報処理装置10の機能ブロック構成例を示す図である。情報処理装置10は、記憶部100と、生成部101と、取得部102と、検出部103と、通知部104とを含む。記憶部100は、情報処理装置10が備える記憶装置12を用いて実現することができる。また、生成部101と、取得部102と、検出部103と、通知部104とは、情報処理装置10のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0022】
記憶部100は、仮想空間DB100aを記憶する。仮想空間DB100aは、仮想空間の中で現実世界を再現するために必要な各種のデータを格納する。例えば、仮想空間DB100aには、現実世界を走行している複数の車両50の走行位置、走行方向、車速及びライトの点灯状態等のデータ、道路データ、現実空間に存在するビル、建物、信号及び道路標識などの位置及び形状データ、太陽光の位置を示すデータ、光を反射する面(例えばビルのガラス面など)の位置及び範囲並びに光の反射率等のデータ、及び、気象データ等が含まれる。
【0023】
生成部101は、仮想空間DB100aを参照し、1以上の光源を含む現実空間を仮想化した仮想空間を生成する。
【0024】
取得部102は、現実空間を走行する車両50A(第1車両)の位置を取得する。
【0025】
検出部103は、現実空間における車両50A(第1車両)の位置に対応する仮想空間の位置に車両50Aを配置し、配置した車両50Aの位置と仮想空間に存在する光の位置との関係に基づいて、現実空間における車両50Aに対する光の到来方向を検出する。
【0026】
通知部104は、車両50A(第1車両)に対する光の到来方向を示す情報(以下、「光情報」と言う。)を、車両50Aに通知する。
【0027】
(車載装置)
図4は、車載装置20の機能ブロック構成例を示す図である。車載装置20は、記憶部200と、送信部201と、受信部202と、取得部203と、検出部204と、制御部205とを含む。記憶部200は、車載装置20が備える記憶装置12を用いて実現することができる。また、送信部201と、受信部202とは、車載装置20の通信IF13を用いて実現することができる。また、取得部203と、検出部204と、制御部205とは、情報処理装置10のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0028】
記憶部200は、情報処理装置10から受信した各種の情報を記憶する。また、車載装置20がフロントガラス40を制御するために必要な各種の情報等を記憶する。
【0029】
送信部201は、GNSS又はGPSを用いて測定した車両50の現在位置を示す情報を、情報処理装置10に送信する。また、送信部201は、車両50に搭載されたナビゲーションシステム等が示す走行経路を示す情報を、情報処理装置10に送信するようにしてもよい。
【0030】
受信部202は、情報処理装置10から、車両50Aに対する光の到来方向を示す光情報を受信する。
【0031】
取得部203は、車両50Aを運転する人物60の位置を取得する。例えば、取得部203は、車両50Aの室内に設置されたカメラ30で撮影された画像を分析することで、車両50Aの室内における人物60の位置を示す座標を取得するようにしてもよい。若しくは、記憶部200には、人物60の位置を示す情報が予め記憶されており、取得部203は、当該情報を読み出すことで、人物60の位置を取得するようにしてもよい。すなわち、人物60の位置は、車両50Aごとに予めプリセットされていてもよい。
【0032】
検出部204は、受信部202で受信した光の到来方向に基づいて、当該光が人物60の位置に向かうときに車両50Aのフロントガラス40を通過する際の当該フロントガラス40上の位置を検出する。
【0033】
制御部205は、検出部204で検出されたフロントガラス40上の位置を通過する光を遮光するように、フロントガラス40を制御する。
【0034】
<処理手順>
(走行位置の収集)
図5は、車両50Bの走行位置を収集する処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【0035】
ステップS10で、現実世界を走行する各車両50Bは、情報処理装置10に、現在の走行位置、走行速度及び走行方向等を含む走行情報を周期的に送信する。走行情報には、現在の走行位置、走行速度及び走行方向に加えて、将来の走行位置、走行速度及び走行方向の推定を可能にする情報が含まれていてもよい。例えば、走行情報には、ナビゲーションシステムで案内中の走行経路を示す情報等が含まれていてもよい。
【0036】
ステップS11で、情報処理装置10の取得部102は、各車両50Bから取得した走行情報を、仮想空間DB100aに格納する。
【0037】
(車両の走行位置に基づく遮光処理)
図6は、遮光システム1が遮光処理を行う際の処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【0038】
ステップS20で、車両50Aに搭載された車載装置20の送信部201は、情報処理装置10に、現在の走行位置、走行速度及び走行方向等を含む走行情報を周期的に送信する。走行情報には、現在の走行位置、走行速度及び走行方向に加えて、将来の走行位置、走行速度及び走行方向の推定を可能にする情報が含まれていてもよい。例えば、走行情報には、ナビゲーションシステムで案内中の走行経路を示す情報等が含まれていてもよい。情報処理装置10の取得部102は、車載装置20から取得した走行情報を、仮想空間DB100aに格納するようにしてもよい。また、送信部201は、車載装置20の取得部203で取得された人物60の位置を示す情報を、情報処理装置10に送信するようにしてもよい。
【0039】
ステップS21で、情報処理装置10の検出部103は、仮想空間DB100aに格納された、各車両50Bの走行情報を含む各種のデータと、ステップS20の処理手順で取得した車両50Aの走行情報とを用いて、仮想空間に現実空間を再現し、車両50Aに対して光が到来する方向を検出する。光の到来方向は、車両50Aに対して、光源からの光がどの方向で進入するのかを表現することができる情報であれば、どのように表現されてもよい。例えば、光の到来方向は、車両50Aの基準位置を中心とする球面座標を利用して表現するようにしてもよい。例えば、光の到来方向は、北方向を0度として時計回りを正とする第1角度と、水平面を0度として上方向を正とする第2角度を用いて到来方向を表現するようにしてもよい。また、車両50Aの基準位置は、人物60の位置とするようにしてもよい。車両50A内における人物60の位置は、車両50Aの車種等に応じて予め定められていてもよいし、車載装置20の取得部203により取得され、情報処理装置10に通知された位置であってもよい。
【0040】
例えば、検出部103は、仮想空間に車両50A及び各車両50Bを配置し、車両50Aの位置を基準とした場合に、ライトを点灯中である車両50Bのヘッドライトから発せられた光が当該車両50Aに到達する様子を仮想空間内で再現することで、現実空間において当該光が車両50Aに到来する方向を検出するようにしてもよい。すなわち、仮想空間に存在する光の位置には、少なくとも、車両50A(第1車両)以外の車両50B(第2車両)のヘッドライトの位置が含まれており、検出部103は、現実空間における車両50Aに対する光の到来方向として、少なくとも、車両50Bのヘッドライトにより発せられた光の到来方向を検出するようにしてもよい。
【0041】
また、検出部103は、仮想空間に車両50A及び太陽を配置し、太陽から発せられた光が車両50Aに到達する様子を仮想空間内で再現することで、車両50Aの位置を基準とした場合に、太陽から発せられた光が当該車両50Aに到来する方向を検出するようにしてもよい。すなわち、仮想空間に存在する光の位置には、少なくとも、太陽光の位置が含まれており、検出部103は、現実空間における車両50Aに対する光の到来方向として、少なくとも、太陽光の到来方向を検出するようにしてもよい。
【0042】
また、検出部103は、仮想空間に光を反射するビルやミラー等の反射物を配置し、車両50Aの位置を基準とした場合に、太陽から発せられた光又は車両50Bのヘッドライトから発せられた光が当該反射物で反射されて当該車両50Aに到達する様子を仮想空間内で再現することで、当該光が車両50Aに到来する方向を検出するようにしてもよい。すなわち、仮想空間に存在する光の位置には、仮想空間に存在する反射物に反射した光が含まれており、検出部103は、現実空間における車両50Aに対する光の到来方向として、反射物に反射した光の到来方向を検出するようにしてもよい。なお、仮想空間で光が反射する様子を再現することは、例えば、レイトレーシング技術を利用することで実現可能である。
【0043】
ステップS22で、情報処理装置10の通知部104は、ステップS21の処理手順で検出された、車両50Aに対して光が到来する方向を示す光情報を、車両50Aに送信する。例えば、光情報には、太陽光の到来方向、車両50Bのヘッドライトから発せられた光の到来方向、及び/又は、反射物で反射された光の到来方向等が含まれていてもよい。
【0044】
なお、生成部101が生成する仮想空間では、現実空間における光の強弱が再現されてもよい。光の強弱を再現するために、仮想空間DB100aには、光源から発せられる光の強さを光源ごとに定義する定義データが格納されていてもよい。また、通知部104は、光が到来する方向に加えて、当該光の強さを示す情報を光情報に含めて、車両50Aの車載装置20に通知するようにしてもよい。すなわち、仮想空間に存在する光には、光の強さを示す情報が対応づけられており、通知部104は、車両50Aに対する光の到来方向及び当該光の強さを示す光情報を、車両50Aに通知するようにしてもよい。
【0045】
光の強さを示す情報は、例えば、光が弱い順に1~NのN段階で表現されてもよい。例えば、N=5であり、晴天時における太陽光は5であり、晴天時における太陽光の反射光は4であり、夜間におけるヘッドライト光は3であり、夜間におけるヘッドライト光の反射光は1であるといったように表現されてもよい。また、ヘッドライトであっても、ハイビームは、ロービームよりも強い光であることが定義されていてもよい。なお、反射光の強さについて、仮想空間DB100aには、反射により光の強さが弱まる度合いを定義するデータが反射物ごとに格納されていてもよい。
【0046】
また、生成部101が生成する仮想空間では、現実空間における光の重要度が再現されてもよい。光の重要度を再現するために、仮想空間DB100aには、光源から発せられる光の重要度を光源ごとに定義する定義データが格納されていてもよい。また、通知部104は、光が到来する方向に加えて、当該光の重要度を示す情報を光情報に含めて、車両50Aの車載装置20に通知するようにしてもよい。すなわち、仮想空間に存在する光には、当該光を発する光源の重要度を示す情報が対応づけられており、通知部104は、当該光の重要度を示す情報を含む光情報を、車両50Aに通知するようにしてもよい。
【0047】
光の重要度は、運転に大きな影響を及ぼす光であるか否かに応じて定義されてもよい。例えば、反射物で反射した太陽光は重要度を低くし、ミラーに反射した他車両50のヘッドライト光については、他の車両50が接近していることを人物60に通知するものであるから、重要度を高くするということが考えられる。
【0048】
ステップS23で、車両50Aの車載装置20の制御部205は、車両50Aに到来する光が人物60の目に直接入らないようにするため、ステップS22の処理手順で通知された光情報に基づいて、車両50Aのフロントガラス40を遮光状態にする。
【0049】
(遮光処理の詳細)
図7は、車載装置20が、フロントガラス40を遮光する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートは、
図6のステップS23の処理手順を詳細化したものである。
【0050】
ステップS30で、受信部202は、情報処理装置10から、車両50Aに対する光の到来方向を示す光情報を取得する。なお、光情報には、光の到来方向に加えて、光の強さを示す情報が含まれていてもよい。また、光情報には、光の到来方向に加えて、光の重要度を示す情報が含まれていてもよい。また、光情報には、光の到来方向に加えて、光の強さを示す情報及び光の重要度を示す情報が含まれていてもよい。
【0051】
ステップS31で、取得部203は、車両50Aの室内における人物60の位置を取得する。前述した通り、人物60の位置は、例えば、人物60の頭の位置であってもよいし、人物60の目の位置であってもよいし、人物60の瞳の位置であってもよい。なお、目の位置は、両目の位置を含んでもよいし、両目の中間位置を、人物60の目の位置としてもよい。同様に、瞳の位置は、両目の瞳の位置を含んでもよいし、両目の瞳の中間位置を、人物60の瞳の位置としてもよい。
【0052】
ステップS32で、検出部204は、受信部202で受信した光の到来方向に基づいて、当該光が人物60の位置に向かう際に車両50Aのフロントガラス40を通過する際の当該フロントガラス40上の位置を検出する。より具体的には、検出部204は、光情報に含まれる光の到来方向から、ステップS31の処理手順で取得した人物60の位置に向かう線が、車両50Aのフロントガラス40を通過する際の当該フロントガラス40上の位置を検出する。当該フロントガラス40上の位置は、例えば、フロントガラス40の左上を基準としてx軸、y軸の座標などで表されてもよい。
【0053】
ステップS33で、制御部205は、ステップS32の処理手順で検出されたフロントガラス40上の位置を含む所定領域を遮光状態にする。ここで、フロントガラス40は、光を遮光する度合いを調整可能であってもよい。制御部205は、情報処理装置10から受信した光情報に光の強弱を示す情報が含まれる場合、光の強さに応じて遮光する度合いを変更するようにしてもよい。すなわち、受信部202は、車両50Aに対する光の到来方向及び当該光の強さを示す光情報を受信し、制御部205は、当該光の強さに基づいて、フロントガラス40上の位置を通過する光を遮光する度合いを制御するようにしてもよい。
【0054】
例えば、晴天時における太陽光の強さは5であり、晴天時における太陽光の反射光の強さは4であり、夜間におけるヘッドライト光の強さは3であり、夜間におけるヘッドライト光の反射光の強さは1であるものとする。また、フロントガラス40は、5段階の遮光度(数字が大きいほど強く遮光)で遮光することが可能であるものとする。この場合、制御部205は、晴天時における太陽光については遮光度5で遮光し、晴天時における太陽光の反射光については遮光度4で遮光し、夜間におけるヘッドライト光については遮光度3で遮光し、夜間におけるヘッドライト光の反射光については遮光度1で遮光するようにしてもよい。
【0055】
また、制御部205は、情報処理装置10から受信した光情報に光の強弱を示す情報が含まれる場合、光の強さが所定の閾値以上である光を遮光し、光の強さが所定の閾値未満である光については遮光しないようにしてもよい。すなわち、受信部202は、車両50Aに対する光の到来方向及び当該光の強さを示す光情報を受信し、制御部205は、当該光の強さに基づいて、フロントガラス40上の位置を通過する光を遮光するか否かを切り替えるようにしてもよい。
【0056】
例えば、晴天時における太陽光の強さは5であり、晴天時における太陽光の反射光の強さは4であり、夜間におけるヘッドライト光の強さは3であり、夜間におけるヘッドライト光の反射光の強さは1であり、所定の閾値が3に設定される場合、制御部205は、晴天時における太陽光、晴天時における太陽光の反射光、及び、夜間におけるヘッドライト光を遮光し、夜間におけるヘッドライト光の反射光は遮光しないようにしてもよい。
【0057】
また、制御部205は、情報処理装置10から受信した光情報に光の重要度を示す情報が含まれる場合、光の重要度が所定値以上である光を遮光し、光の重要度が所定値未満である光については遮光しないようにしてもよい。すなわち、受信部202は、車両50Aに対する光の到来方向及び当該光の重要度を示す光情報を受信し、制御部205は、光の重要度が所定値以上である場合、当該光を遮光しないように制御するようにしてもよい。
【0058】
ステップS34で、車載装置20は、車両50Aの走行を終了する場合は処理を終了し、車両50Aの走行を終了しない場合、ステップS30~ステップS33の処理手順を繰り返し実行する。
【0059】
(遮光処理の具体例)
図8は、フロントガラス40を通過する光を遮光する処理の具体例を示す図である。領域D10、領域D20及び領域D30は、フロントガラス40のうち遮光状態に切り替えられた領域を示す。領域D10が遮光状態に切り替わることで、光源L1から発せられた光は領域D10に遮られ、人物60の目に入らない状態になる。同様に、光源L2及び光源L3から発せられた光は、それぞれ領域D20及び領域D30に遮られ、人物60の目に入らない状態になる。
【0060】
図9は、光の到来方向及びフロントガラス40の遮光状態を説明する図である。
図9は、車両50Aを上から見下ろした状態を示す。なお、
図8と同一の光源及びフロントガラス40上の領域については同一の符号を付してある。
図9において、光源L1は太陽であり、光源L2は、光を反射するビルBのガラス面であり、光源L3は車両50Bのヘッドライトである。また、ビルBのガラス面から発せられる光は、太陽光(光源L1)が反射した光である。また、方向D1は、光源L1から車両50Aに到来する光の到来方向を示す。同様に、方向D2は、光源L2から車両50Aに到来する光の到来方向を示し、方向D3は、光源L3から車両50Aに到来する光の到来方向を示す。位置P1は人物60の目又は瞳の位置を示す。
図9によれば、方向D1から到来する光は、人物60の目又は瞳に届く前に、フロントガラスの領域D10で遮られることになる。また、方向D2から到来する光は、人物60の目又は瞳に届く前に、フロントガラスの領域D20で遮られることになる。方向D3から到来する光は、人物60の目又は瞳に届く前に、フロントガラスの領域D30で遮られることになる。なお、人物60の目(又は瞳)が、人物60の両目(又は両目の瞳)である場合、方向D1、D2及びD3は、それぞれ、光源から右目及び光源から左目(又は光源から右目の瞳及び光源から左目の瞳)に向けた2つの方向を含むこととしてもよい。また、領域D10、D20及びD30についても、それぞれ、右目及び左目(又は右目の瞳及び左目の瞳)に対応する2つの領域を含むこととしてもよい。
【0061】
車両50Aが走行中である場合、光の到来方向は逐一変化する。また、車両50Bが移動した場合も、光源L3からの光の到来方向D3は変化する。したがって、領域D10、領域D20及び領域D30は、光源L1、光源L2及び光源L3からの光の到来方向D1、D2及びD3の変化に追従して移動することになる。
【0062】
図10は、光の到来方向及びフロントガラス40の遮光状態を説明する図である。
図10は、車両50Aを横から見た状態を示す。なお、
図8及び
図9と同一の光源及びフロントガラス40上の領域等については同一の符号を付してある。具体的な説明は、
図9と同一であるため省略する。
【0063】
(変形例)
情報処理装置10の検出部103は、現在時刻から所定時間後(例えば数秒後など)に、車両50Aに到来する光の到来方向を検出するようにしてもよい。すなわち、本実施形態において、光情報で通知される光の到来方向は、現在時刻から所定時間後に到来する光の到来方向を示すものであってもよい。例えば、検出部103は、車両50A及び車両50Bの車速及び進行方向から所定時間後における車両50A及び車両50Bの位置を推定し、推定した車両50Aの位置及び車両50Bの位置に基づいて、現在時刻から所定時間後に、車両50Aに到来する光の到来方向を検出するようにしてもよい。また、通知部104は、現在時刻から所定時間後に、車両50Aに到来する光の到来方向を示す情報を光情報に含めて車両50Aに通知するようにしてもよい。
【0064】
これにより、光情報が車両50Aに通知され、遮光が完了するまでの間にタイムラグが生じる場合であっても、到来する光が人物60の目に入る前に遮光を完了させることが可能になる。
【0065】
また、情報処理装置10が備える機能部の全部又は一部を、車載装置20が備えることで、情報処理装置10が実行する処理手順の全部又は一部を、車載装置20が実行することとしてもよい。例えば、情報処理装置10の検出部103が行う処理を車載装置20が実行することで、情報処理装置10から車載装置20に光情報を通知する際のタイムラグを削減することが可能になる。
【0066】
また、フロントガラス40は、光を遮光することに加えて、光を増幅する機構を備えていてもよい。例えば、光情報に、光の強さは弱いものの重要度が高い光に関する情報が含まれている場合、フロントガラス40は、当該光がフロントガラス40を通過する際に光の強さを強くするようにしてもよい。これにより、人物60が、重要な情報を見落とすリスクを削減することが可能になる。
【0067】
<まとめ>
以上説明した実施形態によれば、デジタルツイン技術を利用して現実世界を再現することで、光の到来方向を検出し、検出した到来方向からの光を遮断するようにフロントガラス40を制御するようにした。これにより、人物60に操作を強いることなく、車両50に到来する光を遮光することが可能になる。また、本実施形態によれば、デジタルツイン技術を利用して現実世界を再現することで、太陽光、他の車両50のヘッドライト及び反射光を含む様々な光を遮光することが可能になる。また、本実施形態では、フロントガラス40の全面を遮光するのではなく、光が通過する位置を含む所定領域を遮光するようにした。これにより、人物60の視認性を低下させることなく、光を遮光することが可能になる。また、本実施形態では、人物60の瞳の位置を検出し、フロントガラス40の全面を遮光するのではなく、人物60の瞳に届く光が通過する位置を含む所定領域を遮光するようにした。これにより、フロントガラスの遮光すべき箇所を最小限に抑えることが可能になる。また、本実施形態によれば、現在時刻から所定時間後に到来する光の到来方向を車載装置20に通知することで、到来する光が人物60の目に入る前に遮光を完了させることが可能になる。また、本実施形態に係る技術は、運転者の安全運転に寄与し交通事故を減少させることに繋がるので、持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「すべての人に健康と福祉を」の達成に貢献することができる。
【0068】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…遮光システム、10…情報処理装置、11…プロセッサ、12…記憶装置、13…通信IF(Interface)、14…入力デバイス、15…出力デバイス、20…車載装置、30…カメラ、40…フロントガラス、50…車両、60…人物、100…記憶部、100a…仮想空間DB、101…生成部、102…取得部、103…検出部、104…通知部、200…記憶部、201…送信部、202…受信部、203…取得部、204…検出部、205…制御部