(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183592
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】可動式通路
(51)【国際特許分類】
B61B 1/02 20060101AFI20231221BHJP
B61B 1/00 20060101ALI20231221BHJP
B64F 1/305 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B61B1/02
B61B1/00 Z
B64F1/305
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097182
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591136458
【氏名又は名称】株式会社ジャバラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】石原 啓守
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 啓明
(72)【発明者】
【氏名】青木 優介
(72)【発明者】
【氏名】増田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】井本 清紀
(72)【発明者】
【氏名】山川 弘平
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】堂城 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】敏森 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】古澤 孝
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101AD01
3D101AD03
(57)【要約】
【課題】外側通路と内側通路との間をシールするシール部材を摩耗し難くできる可動式通路を提供すること。
【解決手段】中間通路30(外側通路)の内側に先端通路40(内側通路)が挿入され、先端通路40のうち中間通路30から離れた先端部44と中間通路30の先端部44とが、前後方向に伸縮可能な筒状の伸縮シール70で全周に亘って連結される。これにより、中間通路30に対する先端通路40の張出量L2に関わらず、伸縮シール70によって中間通路30と先端通路40との間をシールできる。更に、中間通路30の内周面とと先端通路40の外周面との間で径方向に挟んだシール部材と比べて、伸縮シール70はそれらの間に挟まれないので、伸縮シール70を摩耗し難くできる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホームの前方に停車した車両に当接される伸長状態と、その伸長状態に対し前記ホーム側へ短縮した短縮状態と、を切り換えて前後方向に伸縮する可動式通路であって、
前後方向に延びた筒状の外側通路と、
その外側通路の内側に挿入されて前記外側通路の前後方向の先端部から前後方向へ張り出す筒状の内側通路と、
前記外側通路に対する前記内側通路の張出量を大きくすることで前記短縮状態から前記伸長状態へ切り換える駆動機構と、
前記内側通路のうち前記外側通路から離れた外周部と前記外側通路の前記先端部とを全周に亘って連結して前後方向に伸縮可能な筒状の伸縮シールと、を備えることを特徴とする可動式通路。
【請求項2】
前記伸縮シールの左右両側にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられて前記外側通路の前記先端部と前記内側通路の前記外周部との間を連結する複数のパンタグラフ機構を備え、
そのパンタグラフ機構は、左右方向に沿った左右軸で互いに軸支されてその左右軸に垂直に延びる複数のアームを備え、それら複数のアーム同士の角度を変えることで、前記先端部と前記外周部との上下方向の相対位置を維持しつつ前後方向に伸縮することを特徴とする請求項1記載の可動式通路。
【請求項3】
前記先端部および前記外周部に対し前記アームを左右方向に揺動可能な球面軸受を介して、前記アームが前記先端部および前記外周部にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の可動式通路。
【請求項4】
複数の前記アーム同士は、前記左右軸を前後に揺動不可能な非球面軸受を介して接続されていることを特徴とする請求項3記載の可動式通路。
【請求項5】
前記パンタグラフ機構は、前記伸縮シールの左右両側それぞれにおいて上下に複数並んで設けられることを特徴とする請求項2記載の可動式通路。
【請求項6】
上下に並んだ複数の前記パンタグラフ機構同士は、それぞれの前後方向の伸縮量を同期させるリンク部材で繋がれていることを特徴とする請求項5記載の可動式通路。
【請求項7】
前記伸縮シールは、山および谷が前後方向に交互に配置された蛇腹状に形成されると共に、前記山または前記谷の全周に設けられる複数の環状の剛体枠で補強され、
前後方向に隣り合う前記剛体枠それぞれの間にはヒンジが配置され、
そのヒンジは、2枚の板部の一端縁同士を上下方向に沿った第1軸で軸支すると共に、前記第1軸に平行な第2軸で前記板部の他端縁を前後の前記剛体枠にそれぞれ軸支することで形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の可動式通路。
【請求項8】
前記剛体枠は、前記伸縮シールの前記山に設けられ、
前記ヒンジが前記伸縮シールの径方向外側に配置され、前記第2軸に対して前記伸縮シールから離れた側に前記第1軸が位置することを特徴とする請求項7記載の可動式通路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側通路に内側通路が挿入された可動式通路に関し、特に外側通路と内側通路との間をシールするシール部材を摩耗し難くできる可動式通路に関する。
【背景技術】
【0002】
駅のホームに取り付けられる可動式通路には、筒状の外側通路に対する筒状の内側通路の前後方向の張出量を変化させて伸縮可能としたものがある(特許文献1)。この可動式通路は、外側通路に対し内側通路を前後方向に張り出させて伸長状態とされ、外側通路に内側通路を入り込ませることで短縮状態とされる。伸長状態の可動式通路はホームに停車した車両の乗降口に当接され、この可動式通路を通ってホームと車両との間で乗客が乗降する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
停車した車両とホームとを繋いだ伸長状態の可動式通路の外部では、駅を他の車両が通過すること等に起因して気圧が変化することがある。そこで、この気圧の変化が可動式通路の外部から内部へ伝播することを抑制するために、外側通路と内側通路との間をシールすることが考えられる。
【0005】
しかし、外側通路の内周面と内側通路の外周面との間で径方向にシール部材を挟むと、外側通路に対する内側通路の張出量を変化させるときにシール部材が擦れ、シール部材が摩耗し易くなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、外側通路と内側通路との間をシールするシール部材を摩耗し難くできる可動式通路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の可動式通路は、ホームの前方に停車した車両に当接される伸長状態と、その伸長状態に対し前記ホーム側へ短縮した短縮状態と、を切り換えて前後方向に伸縮するものであって、前後方向に延びた筒状の外側通路と、その外側通路の内側に挿入されて前記外側通路の前後方向の先端部から前後方向へ張り出す筒状の内側通路と、前記外側通路に対する前記内側通路の張出量を大きくすることで前記短縮状態から前記伸長状態へ切り換える駆動機構と、前記内側通路のうち前記外側通路から離れた外周部と前記外側通路の前記先端部とを全周に亘って連結して前後方向に伸縮可能な筒状の伸縮シールと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の可動式通路によれば、前後方向に延びた筒状の外側通路の内側に筒状の内側通路が挿入され、外側通路の前後方向の先端部から前後方向へ内側通路が張り出す。駆動機構によって外側通路に対する内側通路の前後方向の張出量を大きくすることで、可動式通路が短縮状態から伸長状態へ切り換えられる。前後方向に伸縮可能な筒状の伸縮シールは、内側通路のうち外側通路から離れた外周部と外側通路の先端部とを全周に亘って連結する。これにより、外側通路に対する内側通路の張出量に関わらず、伸縮シールによって外側通路と内側通路との間をシールできる。更に、外側通路の内周面と内側通路の外周面との間で径方向に挟んだシール部材と比べて、伸縮シールはそれらの間に摺動部分がないので、伸縮シールを摩耗し難くできる。
【0009】
請求項2記載の可動式通路によれば、請求項1記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。伸縮シールの左右両側にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられる複数のパンタグラフ機構によって外側通路の先端部と内側通路の外周部とが連結される。そのパンタグラフ機構は、左右方向に沿った左右軸で互いに軸支されてその左右軸に垂直に延びる複数のアームを備え、それら複数のアーム同士の角度を変えることで、先端部と外周部との上下方向の相対位置を維持しつつ前後方向に伸縮する。これにより、外側通路に対する内側通路の張出量に合わせて伸縮するパンタグラフ機構によって、先端部および外周部のうちホーム側に対し車両側を垂れ下がり難くできる。
【0010】
請求項3記載の可動式通路によれば、請求項2記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。先端部および外周部に対しアームを左右方向に揺動可能な球面軸受を介して、アームが先端部および外周部にそれぞれ取り付けられている。これにより、パンタグラフ機構によって連結された先端部および外周部のうちホーム側に対し車両側を左右方向にずらして可動式通路を左右方向に曲げることができる。その結果、例えばホームと車両とが非平行である場合でも可動式通路を左右方向に曲げることにより、伸長状態の可動式通路を車両に当接できる。
【0011】
請求項4記載の可動式通路によれば、請求項3記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。複数のアーム同士は、左右軸を前後に揺動不可能な非球面軸受を介して接続されている。これにより、球面軸受によって可動式通路を左右方向に曲げるときでも、アーム同士を左右方向に揺動し難くでき、パンタグラフ機構の伸縮時にアーム同士を干渉し難くできる。よって、パンタグラフ機構の伸縮をスムーズにできる。
【0012】
請求項5記載の可動式通路によれば、請求項2記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。パンタグラフ機構は、伸縮シールの左右両側それぞれにおいて上下に複数並んで設けられる。その結果、外側通路に対する内側通路の張出量が上下でずれて傾くことを複数のパンタグラフ機構によって抑制できる。
【0013】
請求項6記載の可動式通路によれば、請求項5記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。上下に並んだ複数のパンタグラフ機構同士は、それぞれの前後方向の伸縮量を同期させるリンク部材で繋がれている。これにより、外側通路に対する内側通路の張出量を上下でよりずれ難くでき、外側通路に対し内側通路を更に上下方向に傾き難くできる。
【0014】
請求項7記載の可動式通路によれば、請求項1から6のいずれかに記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。伸縮シールは、山および谷が前後方向に交互に配置された蛇腹状に形成される。この山または谷の全周に設けられる複数の環状の剛体枠で伸縮シールが補強される。前後方向に隣り合う剛体枠それぞれの間にはヒンジが配置される。このヒンジは、2枚の板部の一端縁同士を上下方向に沿った第1軸で軸支すると共に、第1軸に平行な第2軸で板部の他端縁を前後の剛体枠にそれぞれ軸支することで形成されている。これにより、伸縮シールの伸縮に伴う剛体枠の間隔の変化に応じてヒンジが開閉しつつ、ヒンジによって複数の剛体枠の上下方向のずれを抑制できる。その結果、伸縮シールの前後方向の中央部分が垂れ下がることを抑制できる。
【0015】
請求項8記載の可動式通路によれば、請求項7記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。剛体枠は、伸縮シールの山に設けられる。ヒンジが伸縮シールの径方向外側に配置され、そのヒンジの第2軸に対して伸縮シールから離れた側に第1軸が位置する。これにより、各々の剛体枠間の複数のヒンジが第1軸を山とし第2軸を谷とした蛇腹状に形成されると共に、複数のヒンジによる山および谷と伸縮シールの山および谷とが互い違いに配置される。その結果、剛体枠間の伸縮シールにヒンジを接触し難くできるので、これらの接触に起因して伸縮シールが破れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態における可動式通路の斜視図である。
【
図3】伸縮シールを拡大して示した可動式通路の部分拡大側面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線における可動式通路の部分拡大断面図である。
【
図5】(a)は
図3の伸長状態から短縮状態まで短縮した可動式通路の部分拡大側面図であり、(b)は
図5(a)のVb-Vb線における可動式通路の部分拡大断面図である。
【
図6】
図3のVI-VI線における可動式通路の部分拡大断面図である。
【
図7】
図3のVII-VII線における可動式通路の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず
図1を参照して、第1実施形態における可動式通路10の全体構成について説明する。
図1は、可動式通路10の斜視図である。なお
図1では、可動式通路10を最大まで伸長した状態を図示すると共に、可動式通路10の一部(例えば側壁22の上端同士を繋ぐ天井24等)を省略して模式的に図示している。
【0018】
また、
図1を含む各図面の矢印F-Bは、可動式通路10の伸縮方向を示しており、矢印F側が伸縮方向における前方側であり、矢印B側が伸縮方向における後方側である。また、矢印L-Rは、可動式通路10の伸縮方向と垂直な水平方向を示し、矢印U-Dは、伸縮方向および水平方向と垂直な可動式通路10の上下方向を示している。また、以下の説明においては、可動式通路10の伸縮方向を単に「前後方向」と記載して説明する。
【0019】
図1に示す通り、可動式通路10は、駅のホーム2に固定される固定通路20と、その固定通路20から前方(矢印F方向)へ張り出す中間通路30と、その中間通路30から前方へ張り出す先端通路40と、固定通路20に対する中間通路30の前後方向の張出量L1を変化させる第1駆動機構50と、中間通路30に対する先端通路40の前後方向の張出量L2を変化させる第2駆動機構60と、を備える可動式の通路である。
【0020】
第1駆動機構50によって張出量L1を大きくし、第2駆動機構60によって張出量L2を大きくすることで可動式通路10が伸長状態となる。この伸長状態において、ホーム2の前方に停車した車両4(
図2参照)の乗降口に先端通路40の先端部44が当接される。これにより、伸長状態の可動式通路10を通ってホーム2と車両4との間で乗客の乗降が可能になる。
【0021】
一方、第1駆動機構50及び第2駆動機構60によって張出量L1,L2が最小となるように、可動式通路10をホーム2側へ短縮させた状態が短縮状態である。ホーム2の前方を車両4が走行するときは、可動式通路10が短縮状態となっている。
【0022】
図1に加えて
図2を参照しながら可動式通路10の各部について更に詳しく説明する。
図2は可動式通路10の断面図である。なお
図2では、
図1の左右方向(矢印L-R)方向と直交する断面であって可動式通路10の左右方向の略中央で切断した断面を図示すると共に、張出量L1,L2を最大にした伸長状態を図示している。
【0023】
図1及び
図2に示す通り、固定通路20には左右方向に延びる仕切壁21が形成され、この仕切壁21によってホーム2側と車両4の走行路側とが仕切られる。仕切壁21は、固定通路20の前方側の先端部を構成し、略矩形の開口21aが形成されている。この開口21aから中間通路30が前方へ張り出す。
【0024】
仕切壁21の後面から後方側へ側壁22が延びている。側壁22は、開口21aを挟んで左右一対に設けられる。これら一対の側壁22の各々の内面(中間通路30側を向く壁面)には、前後方向に延びるレール23が固定される。
【0025】
一対の側壁22の上端同士は天井24によって繋がれ、その天井24と一対の側壁22とホーム2とによって固定通路20が前後方向に延びた四角筒状に形成される。なお、固定通路20の下部はホーム2に限らず、ホーム2上に固定した別部材から構成しても良い。
【0026】
中間通路30は、固定通路20の開口21aに挿入される通路である。中間通路30は、下面を構成する床部31と、左右両面をそれぞれ構成する一対の壁部32と、上面を構成する天部33とによって、前後両側にそれぞれ開口した四角筒状に形成されている。
【0027】
中間通路30の先端部34(前側の端部)は、壁部32及び天部33に対し径方向内側へ張り出し、先端通路40が挿入される開口を狭めている。壁部32の上側には、前後方向に延びるレール36が固定される。
【0028】
中間通路30の後端部35は、床部31、壁部32及び天部33に対し径方向外側へフランジ状に張り出している。この後端部35の左右両縁の上部が側壁22のレール23にスライド可能に係合している。これにより、固定通路20に対する中間通路30の前後方向の移動がガイドされる。
【0029】
仕切壁21の後面には、開口21aの縁の全周に亘って環状の固定シール21bが取り付けられている。固定シール21bは、ゴム等の弾性体からなる部材であり、張出量L1が最大となった伸長状態において、仕切壁21と中間通路30の後端部35との間で前後方向に挟まれる。これにより、固定通路20と中間通路30との間が全周に亘ってシールされる。
【0030】
ここで、ホーム2と車両4とを繋いだ伸長状態の可動式通路10の外部では、駅を他の車両が通過すること等に起因して気圧が変化することがある。この気圧の変化が可動式通路10の外部から内部へ固定通路20と中間通路30との間を介して伝播することを、簡素な固定シール21bで抑制できる。
【0031】
先端通路40は、中間通路30に挿入される通路であり、中間通路30よりも一回り小さい。中間通路30と同様に、先端通路40は、下面を構成する床部41と、左右両面をそれぞれ構成する一対の壁部42と、上面を構成する天部43とによって、前後両側にそれぞれ開口した四角筒状に形成されている。
【0032】
先端通路40の先端部44は、車両4に当接される部位であり、床部41、壁部42及び天部43に対し径方向外側へフランジ状に張り出している。更に先端部44の後面を左右外側に延長するように延長部44aが形成されている。
【0033】
先端通路40の後端部45は、床部41、壁部42及び天部43に対し径方向外側へフランジ状に張り出している。この後端部45の左右両縁の上部が中間通路30のレール36にスライド可能に係合している。これにより、中間通路30に対する先端通路40の前後方向の移動がガイドされる。
【0034】
第1駆動機構50は、シリンダ51に対しピストンロッド52を出没させることで伸縮するエアシリンダである。その伸縮方向を前後方向に向けた状態で、シリンダ51が固定通路20の仕切壁21を貫通しつつ仕切壁21に取り付けられ、ピストンロッド52の先端(前端)が中間通路30の先端部34側に取り付けられる。第1駆動機構50は、可動式通路10の左右両側にそれぞれ対称に配置される。
【0035】
第2駆動機構60は、シリンダ61に対しピストンロッド62を出没させることで伸縮するエアシリンダであり、可動式通路10の左右両側にそれぞれ対称に配置される。第2駆動機構60の伸縮方向を前後方向に向けた状態で、シリンダ61の後端が中間通路30の壁部32に取付具63を介して取り付けられ、ピストンロッド62の先端(前端)が先端通路40の先端部44に取付具64を介して取り付けられる。
【0036】
取付具63,64は、シリンダ61やピストンロッド62を左右方向に揺動可能に支持する。これにより、左右の第2駆動機構60の伸縮量に差を持たせて、中間通路30に対し先端通路40を左右方向に曲げることができる。よって、例えばホーム2と車両4とが非平行である場合でも可動式通路10を左右方向に曲げることにより、伸長状態の可動式通路10を車両4に当接できる。
【0037】
また、ホーム2の形状や車両4の幅などに応じてホーム2から車両4までの前後方向の距離が変動することがある。更に、車両4の空気ばね(図示せず)の影響により、停車時においても車両4が幅方向(可動式通路10の前後方向)に揺動することがある。
【0038】
このホーム2から車両4までの距離は、車両4が走行する軌道に設置された車両位置検知装置(リミットスイッチ等、図示せず)によって検知される。検知された距離に応じて可動式通路10の伸長状態の張出量L1,L2が調整可能とされている。
【0039】
但し、本実施形態における可動式通路10では、伸長状態において、第1駆動機構50による張出量L1が、ホーム2から車両4までの距離に関わらず最大まで伸長される。一方、伸長状態において、第2駆動機構60による伸長状態の張出量L2が、ホーム2から車両4までの距離に応じて調整される。
【0040】
よって、ホーム2から車両4までの前後方向の距離が変動する場合には、第1駆動機構50による張出量L1を調整しなくて済み、第2駆動機構60による張出量L2を調整することで、伸長状態の可動式通路10の長さを調整できる。このように、張出量L2だけを調整すれば良いので伸長状態の可動式通路10の長さを調整し易くできる。
【0041】
特に、この張出量L2の調整を、第2駆動機構60のシリンダ61からピストンロッド62が前後方向に突出する量を調整することで行っている。この突出する量と張出量L2とが略同等となるため、第2駆動機構60による張出量L2の調整によって可動式通路10の長さを調整し易くできる。
【0042】
また、固定通路20と中間通路30との間の固定シール21bを伸長状態で機能させるには張出量L1を最大にする必要があるが、伸長状態の張出量L1が最大に特定されて固定通路20と中間通路30との前後方向の相対位置が決まっているため、伸長状態では確実に固定シール21bによるシール機能を発揮できる。
【0043】
次に
図3から
図7を参照して、先端通路40を覆う伸縮シール70について詳しく説明する。
図3は、伸縮シール70を拡大して示した可動式通路10の部分拡大側面図である。
図4は
図3のIV-IV線における可動式通路10の部分拡大断面図である。
図5(a)は
図3の伸長状態から短縮状態まで短縮した可動式通路10の部分拡大側面図である。
図5(b)は
図5(a)のVb-Vb線における可動式通路10の部分拡大断面図である。
図6は
図3のVI-VI線における可動式通路10の部分拡大断面図である。
図7は
図3のVII-VII線における可動式通路10の部分拡大断面図である。
【0044】
図3及び
図4に示す通り、伸縮シール70は、中間通路30と先端通路40との間をシールするための蛇腹状の筒体である。伸縮シール70は、中間通路30の環状の先端部34と、先端通路40の環状の先端部44とを全周に亘って連結し、先端通路40の外周側を覆う。
【0045】
伸縮シール70は、複数の環状の剛体枠71を前後方向に略等間隔に離して配置し、それら剛体枠71の間の各々を気密性の環状の布部材72で連結することで形成されている。剛体枠71とゴム製のライナ73との間に布部材72を挟み、それらをリベット74で貫通して締結することによって、剛体枠71と布部材72との間を気密にしている。その結果、伸縮シール70が全長に亘って気密性を有する。
【0046】
また、布部材72は、ライナ73から径方向内側に延びており、その内側へ撓み変形可能に構成されている。これにより、伸縮シール70は、山および谷が前後方向に交互に配置された蛇腹状に形成され、
図3から
図5(b)に示す通り、剛体枠71で補強された山同士の距離を変化させることで前後方向に伸縮する。中間通路30に対する先端通路40の張出量L2に応じて伸縮シール70が伸縮するので、その張出量L2に関わらず、伸縮シール70によって中間通路30と先端通路40との間を全周に亘ってシールできる。
【0047】
中間通路30と先端通路40との間のシールは上記方法に限らず、例えば中間通路30と先端通路40との間で径方向にシール部材を挟んでシールしても良い。しかし、この場合には張出量L2を変化させるときにシール部材が擦れて摩耗し易くなるおそれがある。このシール部材と比べて、伸縮シール70は中間通路30と先端通路40との間に摺動部分がないので、伸縮シール70を摩耗し難くできる。
【0048】
更に
図3及び
図4に示す通り、可動式通路10には、伸縮シール70の前後方向の中央部分を垂れ下がり難くするための複数のヒンジ80と、中間通路30に対して先端通路40の先端部44を垂れ下がり難くするためのパンタグラフ機構90とが設けられている。
【0049】
複数のヒンジ80は、前後方向に隣り合う複数の剛体枠71の間にそれぞれ配置される。更に、最前部の剛体枠71と先端通路40の先端部44(延長部44a)との間、及び、最後部の剛体枠71と中間通路30の先端部34との間にもそれぞれヒンジ80が配置される。各々のヒンジ80は、伸縮シール70の左右両側に対称に配置されると共に、伸縮シール70の上下方向の中央に前後方向に並んで配置される。
【0050】
ヒンジ80は、剛体枠71又は先端部34,44に重ねて取り付けられる2枚の取付部81と、その2枚の取付部81を連結するように互いに軸支(回転可能に支持)される2枚の板部82と、を備える。取付部81及び板部82は、いずれも上下方向に延びた板状に形成される。ボルト又はリベットからなる複数の締結部材83によって取付部81が剛体枠71又は先端部34,44に締結固定される。
【0051】
2枚の板部82の一端縁(剛体枠71又は先端部34,44から離れた側の縁)同士が上下方向に沿った第1軸84で軸支される。更に、第1軸84に平行な第2軸85で、板部82の他端縁(剛体枠71又は先端部34,44側の縁)の各々が、前後の取付部81の伸縮シール70側の縁に軸支される。即ち、2枚の板部82が取付部81を介して剛体枠71又は先端部34,44に軸支される。
【0052】
これにより、伸縮シール70が
図3及び
図4に示す伸長状態から
図5(a)及び
図5(b)に示す短縮状態へ切り換えるとき、剛体枠71の間隔に応じ、2枚の板部82を近づけてヒンジ80を閉じる(畳む)ことができる。逆に短縮状態から伸長状態へ切り換えるとき、2枚の板部82を遠ざけるようにヒンジ80を開くことができる。
【0053】
これにより、伸縮シール70の伸縮に伴う剛体枠71の間隔の変化に応じてヒンジ80が開閉しつつ、ヒンジ80によって複数の剛体枠71の上下方向のずれを抑制できる。その結果、伸縮シール70の前後方向の中央部分が垂れ下がることを抑制できる。
【0054】
また、前後方向に並んだ複数のヒンジ80が、第1軸84を山(左右方向外側へ凸)とし第2軸85を谷とした蛇腹状に形成されている。更に、この複数のヒンジ80による山および谷と、伸縮シール70の山および谷とが互い違いに配置される。その結果、伸縮シール70の伸縮時(ヒンジ80の開閉時)に、剛体枠71間の伸縮シール70にヒンジ80を接触し難くできるので、これらの接触に起因して伸縮シール70の布部材72が破れることを抑制できる。
【0055】
特に、張出量L2を最大にして剛体枠71同士の間隔を最大にしても、ヒンジ80の第1軸84が第2軸85の左右方向外側に位置する状態(第1軸84が山である状態)を維持できるように、板部82の寸法が設定されている。これにより、伸縮シール70にヒンジ80をより接触し難くでき、伸縮シール70をより破れ難くできる。
【0056】
また、板部82には、ヒンジ80を閉じたとき、締結部材83が干渉しない(挿入される)ように複数の貫通孔82aが形成されている。これにより、閉じたヒンジ80の前後方向の寸法を小さくできるので、短縮状態における剛体枠71同士の間隔(先端通路40の張出量L2)を小さくして、ホーム2から短縮状態の可動式通路10の前方への張り出しを最小限に留めることができる。
【0057】
図3に示す通り、パンタグラフ機構90は、伸縮シール70の左右両側にそれぞれ2つずつ設けられ、その2つが上下に並んでいる。パンタグラフ機構90は、中間通路30の先端部34と先端通路40の先端部44とを連結し、先端部34に対し先端部44を垂れ下がり難くするための機器である。
【0058】
各々のパンタグラフ機構90は、左右方向に沿った左右軸91で互いに中央部が軸支される同じ長さの2本のアーム92と、2本のアーム92の下端をそれぞれ軸支する2つの固定支持部93と、2本のアーム92の上端をそれぞれ軸支する2つの可動支持部95と、それら2つの可動支持部95がそれぞれ上下方向にスライド可能に係合される2つの支持ガイド97と、を備える。
【0059】
2本のアーム92は、左右軸91に垂直にそれぞれ延び、左右方向視においてX字状に配置されている。2つの固定支持部93は、先端部34の前面および先端部44(延長部44a)の後面にそれぞれ固定され、前後方向に対称に配置されている。
【0060】
固定支持部93には、左右軸91に平行な固定軸94でアーム92の下端が軸支されている。また、可動支持部95には、左右軸91及び固定軸94に平行な可動軸96でアーム92の上端が軸支される。なお、2つの固定軸94及び2つの可動軸96は、左右方向視における長方形の各頂点に位置する。
【0061】
支持ガイド97は、上下方向に延びたレールであり、先端部34の前面および先端部44(延長部44a)の後面にそれぞれ固定される。2つの支持ガイド97は、前後方向に対称に配置され、固定支持部93の上側に配置されている。
【0062】
また、上側のパンタグラフ機構90の固定支持部93よりも下方であって、下側のパンタグラフ機構90の支持ガイド97よりも上方にヒンジ80が配置されている。これにより、支持ガイド97の上端まで可動支持部95がスライドした場合でも、パンタグラフ機構90とヒンジ80とを干渉し難くできる。
【0063】
このパンタグラフ機構90は、
図3に示す伸長状態において、支持ガイド97の下端側に可動支持部95が位置し、固定軸94と可動軸96とが近づいている。この場合、2本のアーム92がなす前後方向両側の角度が小さくなって、アーム92の両端間の前後方向の寸法が大きくなり、パンタグラフ機構90が伸長する。
【0064】
この伸長状態から
図5(a)に示す短縮状態に切り換えるとき、可動支持部95が支持ガイド97に沿って上方へスライドし、左右軸91周りに2本のアーム92が相対的に回動(回転)してアーム92同士の角度が変化する。これにより、アーム92の両端間の前後方向の寸法が小さくなり、パンタグラフ機構90が短縮する。この動作の逆が短縮状態から伸長状態への切り換え時に起こる。
【0065】
このように、中間通路30に対する先端通路40の張出量L2に合わせてパンタグラフ機構90が伸縮する。この伸縮時には、2つの固定軸94(固定支持部93)及び2つの可動軸96(可動支持部95)を頂点とした長方形の各辺の長さが変わるだけであり、各辺同士の角度が変化しないため、先端部34と先端部44との上下方向の相対位置が維持される。そのため、パンタグラフ機構90によって可動式通路10の先端部34に対し先端部44を垂れ下がり難くできる。
【0066】
ここで、アーム92が長い程、固定軸94と可動軸96とが上下方向に離れるため、1つのパンタグラフ機構90によって、中間通路30に対する先端通路40の張出量L2が上下でずれて傾くことを抑制できる。但し、複数(本実施形態では2つ)のパンタグラフ機構90を上下に並べることで、各々のアーム92が短くても中間通路30に対する先端通路40の張出量L2が上下でずれて傾くことを抑制できる。なお、アーム92を短くすることでアーム92を座屈し難くできる。
【0067】
張出量L2を変化させるための第2駆動機構60は、例えば砂埃を内部に入り込み難くするため、可動式通路10の上側に配置されている。しかし、この場合、第2駆動機構60で中間通路30に対し先端通路40の上側を押し引きすることとなり、先端通路40の上側に対し下側が遅れて移動し易く、先端通路40が上下方向に傾き易くなるおそれがある。即ち、複数のパンタグラフ機構90の伸縮量がずれて可動式通路10が上下方向に傾くおそれがある。
【0068】
この対策として、上下に並んだ複数のパンタグラフ機構90同士は、それぞれの可動支持部95がリンク部材98で繋がれている。リンク部材98によって、各々のパンタグラフ機構90の固定支持部93から可動支持部95までの距離が同期し、各々のパンタグラフ機構90における前後方向の伸縮量が同期する。これにより、中間通路30に対する先端通路40の張出量L2を上下でよりずれ難くでき、中間通路30に対し先端通路40を更に上下方向に傾き難くできる。
【0069】
特に、前後両側のそれぞれでリンク部材98が複数の可動支持部95を上下に繋いでいるので、各々のパンタグラフ機構90における前後方向の伸縮量をより均一にできる。その結果、中間通路30に対し先端通路40をより一層上下方向に傾き難くできる。
【0070】
図6に示すように、アーム92と可動支持部95とは球面軸受99を介して接続されている。図示しないが、アーム92と固定支持部93とも球面軸受99を介して接続されている。可動支持部95側の球面軸受99近傍の構成と、固定支持部93側の球面軸受99近傍の構成とは同一であるため、可動支持部95側を説明し、固定支持部93側の説明を一部省略する。
【0071】
可動支持部95は、アーム92の端部を左右方向に挟む一対の挟持部を有して上面視U字状に形成されている。この一対の挟持部の片方の外側にリンク部材98が固着され、そのリンク部材98及び挟持部を可動軸96が貫通している。可動軸96は、軸部が左右方向に沿ったボルト96aとナット96bとによって形成されている。
【0072】
球面軸受99は、ボルト96aの軸部が挿入される内輪99aと、アーム92の端部に貫通形成された取付孔92aに嵌まる外輪99bと、を備える。内輪99aの内周面はボルト96aに密着し、内輪99aの外周面は球面状に形成されている。外輪99bの内周面は内輪99aの外周面と略同一の球面状に形成され、外輪99bの外周面は取付孔92aの内周面に密着している。なお、内輪99aと外輪99bとの間には潤滑油が注入されている。
【0073】
このような球面軸受99によれば、可動軸96を中心としてアーム92を上下方向に回動させるだけでなく、可動支持部95に対しアーム92を左右方向に揺動させることができる。同様に球面軸受99は、固定軸94を中心としてアーム92を上下方向に回動させるだけでなく、固定支持部93に対しアーム92を左右方向に揺動させることができる。
【0074】
これにより、パンタグラフ機構90によって連結された先端部34に対し先端部44を左右方向にずらして可動式通路10を左右方向に曲げることができる。その結果、例えばホーム2と車両4とが非平行である場合でも可動式通路10を左右方向に曲げることによって、伸長状態の可動式通路10を車両4に当接できる。
【0075】
球面軸受99の内輪99aと、可動支持部95の一対の挟持部との間にはそれぞれスペーサ99cが挟まれ、一対の挟持部の中央に内輪99aが位置決めされている。更に、外輪99bは、取付孔92aの段差と蓋とによって左右方向に挟まれ、取付孔92aの左右方向の中央に位置決めされている。これにより、可動支持部95の一対の挟持部の間でアーム92を左右方向に揺動させるスペースを確保しつつ、可動支持部95に対しアーム92をがたつき難くできる。
【0076】
図7に示すように、2本のアーム92の中央部同士は、左右軸91を前後に揺動不可能な非球面軸受92bを介して接続されている。具体的に例えば、非球面軸受92bは、内輪92cと外輪92dとの間に複数の転動体92eが配置されたラジアルベアリングである。ボルト状の左右軸91によって内輪92cが右側のアーム92に固定され、外輪92dが左側のアーム92に固定されている。
【0077】
このような非球面軸受92bを介して接続された2本のアーム92は、球面軸受99によって可動式通路10を左右方向に曲げるときでも、互いに左右方向に揺動し難く上面視において平行に維持され易い。よって、パンタグラフ機構90の伸縮時にアーム92同士を干渉し難くでき、その伸縮をスムーズにできる。
【0078】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0079】
上記実施形態では、第1駆動機構50及び第2駆動機構60がエアシリンダである場合を説明したが、これらを油圧シリンダや電動シリンダ等で構成しても良い。更に、回転運動を直線運動に変換して張出量L1,L2を変化させる機構など、その他の既知のアクチュエータで第1駆動機構50や第2駆動機構60を構成しても良い。
【0080】
伸長状態において、第1駆動機構50による張出量L1が最大に特定されると共に、ホーム2から車両4までの距離に応じて第2駆動機構60による張出量L2が調整される場合に限らず、その距離に応じて張出量L1を調整すると共に張出量L2を最大に特定しても良い。更に、張出量L1,L2の両方を特定しても調整しても良い。また、伸長状態で特定される張出量L1を最大以外の値としても良い。
【0081】
また、先端通路40の内側に中間通路30を挿入し、中間通路30の内側に固定通路20を挿入するように、各通路の大小関係を変更しても良い。この場合でも、固定通路20に対する中間通路30の張出量L1は固定通路20の前端から中間通路30の前端までを指し、張出量L2は中間通路30の前端から先端通路40の前端までを指す。
【0082】
なお、固定通路20に対する中間通路30の前方への張出量L1を変化させることは、中間通路30に対する固定通路20の後方への張出量を変化させることと同義である。同様に、中間通路30に対する先端通路40の前方への張出量L2を変化させることは、先端通路40に対する中間通路30の後方への張出量を変化させることと同義である。
【0083】
上記実施形態では、固定通路20、中間通路30及び先端通路40の1つずつが入れ子構造となって2段階に伸縮可能な可動式通路10について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、先端通路40を省略し(中間通路30を車両4に当接するようにし)たり、固定通路20を省略して中間通路30をホーム2に固定したりすることで、可動式通路10の伸縮を1段階にしても良い。
【0084】
また、固定通路20と先端通路40との間に、入れ子構造となった複数の中間通路30を設けることにより、可動式通路10の伸縮を3段階以上にしても良い。複数の中間通路30による入れ子構造は、第1駆動機構50や第2駆動機構60、その他のアクチュエータによって張出量が変化(伸縮)する。その張出量を伸長状態で特定しても調整しても良い。
【0085】
上記実施形態では、第1駆動機構50のシリンダ51を固定通路20に取り付けてピストンロッド52を中間通路30に取り付ける場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、シリンダ51を中間通路30に取り付けて、ピストンロッド52を固定通路20に取り付けても良い。同様に、第2駆動機構60のシリンダ61を先端通路40に取り付けて、ピストンロッド62を中間通路30に取り付けても良い。第1駆動機構50や第2駆動機構60を中間通路30の上側や下側に配置しても良い。
【0086】
上記実施形態では、固定シール21bが固定通路20の仕切壁21に取り付けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、中間通路30の後端部35の前面に固定シール21bを取り付けても良い。また、前後方向に挟まれる固定シール21bによって、中間通路30と先端通路40との間をシールしても良い。また、伸縮シール70によって固定通路20と中間通路30との間をシールしても良い。これら固定シール21b及び伸縮シール70以外の構成によって、固定通路20と中間通路30との間や、中間通路30と先端通路40との間をシールしても良い。
【0087】
上記実施形態では、伸縮シール70の前端を先端通路40の先端部44に連結する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、先端部44以外の先端通路40の外周面からフランジ状に外周部を張り出させ、その外周部に伸縮シール70を全周に亘って連結しても良い。
【0088】
上記実施形態では、蛇腹状の伸縮シール70の山が剛体枠71で補強される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、伸縮シール70の谷を剛体枠71で補強しても良く、山および谷の両方を剛体枠71で補強しても良い。
【0089】
上記実施形態では、非球面軸受92bがラジアルベアリングである場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、非球面軸受92bをスラストベアリング等の既知の軸受から構成しても良い。また、球面軸受99の詳細構成を適宜変更しても良い。
【0090】
上記実施形態では、各々のパンタグラフ機構90のアーム92が2本である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、X字状に配置された2本のアーム92を前後方向に複数並べ、それらのアーム92の前後方向の端部同士を左右軸91で軸支したリンク機構によりパンタグラフ機構90を形成しても良い。
【0091】
また、左右軸91で互いに軸支された複数のアーム92同士の角度を変えることで、先端部34と先端部44との上下方向の相対位置を維持しつつ前後方向に伸縮する機構であれば、既知のリンク機構をパンタグラフ機構90に用いても良い。例えば、上記実施形態の上下に並んだ2つのパンタグラフ機構90から可動支持部95、可動軸96及び支持ガイド97を省略し、上下2つの左右軸91を別の1本のアームで繋いで形成した1つのリンク機構が挙げられる。
【0092】
上記実施形態では、可動式通路10がホーム2と車両4とを繋ぐものである場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば可動式通路10は、第1部と第2部との間を繋ぎ、第1部に固定されるものであれば良い。この第1部や第2部としては、建築物、自動車、航空機、船舶、地面などが挙げられる。なお、第1部と第2部とが同種のものでも良い。例えば、建築物間を繋ぐ可動式通路10でも同様に、各通路間をシールして気密性を確保することが求められる。
【符号の説明】
【0093】
2 ホーム
4 車両
10 可動式通路
30 中間通路(外側通路)
34 先端部
40 先端通路(内側通路)
44 先端部(外周部)
60 第2駆動機構(駆動機構)
70 伸縮シール
71 剛体枠
80 ヒンジ
82 板部
84 第1軸
85 第2軸
90 パンタグラフ機構
91 左右軸
92 アーム
92b 非球面軸受
98 リンク部材
99 球面軸受
L2 張出量