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特開2023-183602製紙用シームフェルト及びその接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183602
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】製紙用シームフェルト及びその接合方法
(51)【国際特許分類】
   D21F 7/10 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
D21F7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097200
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000229852
【氏名又は名称】日本フエルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 茂人
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055CE40
4L055CF31
(57)【要約】
【課題】芯線をループ内に挿通する作業を容易に行うことができる製紙用シームフェルトを提供する。
【解決手段】製紙用シームフェルト1は、丈方向の両端部にループが設けられたフェルト本体2と、両端部のループを互いにかみ合わせるために使用される1対の仮接合具3と、ループ7の近傍においてフェルト本体2の幅方向の曲げ剛性を補強する補剛具4とを備える。1対の仮接合具3が互いに接合され、フェルト本体2の両端部の所定の範囲に設けられて突き合わせ部9が山形状になるように、フェルト本体2の両端部が互いに突き合わされる。この時、補剛部4によって、幅方向の曲げ剛性が補強されているため、幅方向に整合したループ7が曲がり難く、芯線8のループ7内への挿通作業が容易になる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
丈方向の両端部に互いにかみ合わされるべき複数のループが設けられ、前記丈方向において、前記両端部から前記丈方向の中央に向かって所定の範囲に画定された1対の突き合わせ部と、前記1対の突き合わせ部の間に画定された中間部とに区画されたフェルト本体と、
前記フェルト本体における前記1対の突き合わせ部と前記中間部との境界に取り外し可能に取り付けられており、互いに係合及び離脱が可能であり、互いに係合した状態において、前記1対の突き合わせ部が山形状をなすように前記両端部を互いに突き合わせた状態に保持する1対の仮接合具と、
前記1対の突き合わせ部の少なくとも一方に取り付けられて、前記1対の突き合わせ部の前記少なくとも一方における幅方向の曲げ剛性を補強する補剛具と
を備える、製紙用シームフェルト。
【請求項2】
前記補剛具は、板形状をなし、前記1対の突き合わせ部の前記少なくとも一方に直接に縫い付けられた、請求項1に記載の製紙用シームフェルト。
【請求項3】
前記1対の突き合わせ部の前記少なくとも一方に直接に縫い付けられて、前記補剛具を保持する保持部材を更に備える、請求項1に記載の製紙用シームフェルト。
【請求項4】
前記保持部材は、前記フェルト本体における前記1対の仮接合具が取り付けられた側との反対側の表面に、前記幅方向に開口する筒を画成するように、その両端部が重ねられた状態で前記1対の突き合わせ部の前記少なくとも一方に直接に縫い付けられ、
前記補剛具は、前記保持部材の前記筒内に挿通された、請求項3に記載の製紙用シームフェルト。
【請求項5】
前記保持部材は、前記1対の突き合わせ部の前記少なくとも一方に直接に縫い付けられた第1保持部材と、前記補剛具が取り付けられた第2保持部材とを含み、
前記第1及び第2保持部材は、面ファスナーによって互いに係合する、請求項3に記載の製紙用シームフェルト。
【請求項6】
前記補剛具に貼り付けられたLEDテープを更に備える、請求項1に記載の製紙用シームフェルト。
【請求項7】
前記補剛具の前記ループに対する近位側の端縁は、前記ループの基端から前記丈方向に1cm以上離れており、前記補剛具の前記ループに対する遠位側の端縁は、前記ループの前記基端から前記丈方向に10cm以内の範囲に位置する、請求項1~6の何れか1項に記載の製紙用シームフェルト。
【請求項8】
前記補剛具の前記幅方向の曲げ剛性は、前記フェルト本体の前記幅方向の曲げ剛性の80%以上かつ300%以下であり、
前記補剛具の前記ループに対する近位側の端縁は、前記ループの前記基端から前記丈方向に2cm以上離れており、前記補剛具の前記ループに対する遠位側の端縁は、前記ループの前記基端から前記丈方向に5cm以内の範囲に位置する、請求項7に記載の製紙用シームフェルト。
【請求項9】
請求項1に記載の製紙用シームフェルトの前記両端部の接合方法であって、
前記両端部を互いに突き合わせて、前記1対の仮接合具を互いに係合させるステップと、
複数の前記ループを互いにかみ合わせて、かみ合わされた複数の前記ループの孔に芯線を挿通するステップと、
前記1対の仮接合具及び前記補剛具を前記フェルト本体から取り外すステップと
を備える製紙用シームフェルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端部を互いに接合するための補助具が設けられた製紙用シームフェルト及びその接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙用フェルトは、製紙マシンのプレスパートで使用され、搾水される湿紙を運搬する。製紙用フェルトを製紙マシンに取り付ける際の作業性を向上させるため、フェルトの走行経路、いわゆるフェルトランに有端のフェルトを引き込んだ上でその両端部を互いに接合して無端とする、いわゆるシームフェルトが広く普及している。この種のシームフェルトでは、基布を構成する経糸の折り返しにより丈方向の端部に形成されたループを、互いのループ孔が整合するように交互にかみ合わせ、これにより形成された共通孔に芯線を通して両端部を接合する構成が一般的である。
【0003】
このようなシームフェルトの接合は緻密な手作業となるため、フェルトの端部を安定させて作業を行うことが望まれる。また、ループのかみ合い状態や芯線の挿通状態を目視で確認し易くするため、フェルトの端部を山形状に突き合わせることが望まれる。そこで、スライド式のファスナーを備えた仮接合具を予めフェルトの端部に縫い付けておき、フェルトの引き込みが終了したところで、ファスナーを掛けることで、フェルトの両端部を仮止めするとともに、フェルトの両端が山形状に突き合わせた状態に保持されるようにすることが知られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-250294号公報
【特許文献2】特開2005-264402号公報
【特許文献3】特開2010-275671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、製紙マシンの要求により、軽量化したシームフェルトの需要が増加している。軽量化したシームフェルトは、従来品に比べて剛性が低下している。特に幅方向の曲げ剛性が低いと、シームフェルトの端部を山形状に突き合わせた時に、ループを幅方向に整合させ難くなって、芯線に連結したリードワイヤーをループに挿通することが難くなるとともに、既にリードワイヤーを挿通した部分においても、幅方向に並んだループの列が折れ曲がることによってリードワイヤーとループとの摩擦抵抗が大きくなって、ループの孔にリードワイヤーを挿通する作業が困難となる。ループをかみ合わせてリードワイヤーを通す作業は、比較的重く剛性の高いシームフェルトでは、1m当たり10分以内に行えるのに対して、比較的軽く剛性の低いシームフェルトでは、1m当たり30分以上かかることもあり、最悪の場合、芯線の挿通が完了せず、掛け外されることもあった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、ループをかみ合わせて芯線をループ内に挿通する作業を容易に行うことができる製紙用シームフェルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様に係る製紙用シームフェルト(1,21,31,41)は、丈方向の両端部に互いにかみ合わされるべき複数のループ(7)が設けられ、前記丈方向において、前記両端部から前記丈方向の中央に向かって所定の範囲に画定された1対の突き合わせ部(9)と、前記1対の突き合わせ部の間に画定された中間部(10)とに区画されたフェルト本体(2)と、前記フェルト本体における前記1対の突き合わせ部と前記中間部との境界に取り外し可能に取り付けられており、互いに係合及び離脱が可能であり、互いに係合した状態において、前記1対の突き合わせ部が山形状をなすように前記両端部を互いに突き合わせた状態に保持する1対の仮接合具(3)と、前記1対の突き合わせ部の少なくとも一方に取り付けられて、前記1対の突き合わせ部の前記少なくとも一方における幅方向の曲げ剛性を補強する補剛具(4,32)とを備える。
【0008】
この態様によれば、補剛具によって、フェルト本体のループの近傍部分の幅方向の曲げ剛性が補強されるため、ループの孔が幅方向に略真っ直ぐに整合した状態が維持され易くなり、ループをかみ合わせて芯線をループの孔に通す作業が容易になり、作業時間が短縮される。
【0009】
上記の態様の製紙用シームフェルト(1)において、前記補剛具(4)は、板形状をなし、前記1対の突き合わせ部(9)の前記少なくとも一方に直接に縫い付けられても良い。
【0010】
この態様によれば、補剛具が突き合わせ部に直接に縫い付けられるため、部品点数の増加を抑制できる。
【0011】
上記の態様の製紙用シームフェルト(21、31,41)において、前記1対の突き合わせ部(9)の前記少なくとも一方に直接に縫い付けられて、前記補剛具(4,32)を保持する保持部材(22,33,42)を更に備えても良い。
【0012】
この態様によれば、比較的剛性を高くする必要のある補剛具を縫い付ける必要がなく、保持部材として縫い付けの容易な素材を選択できるため、縫い針を損傷させずに、かつ比較的容易な縫い付け作業によって、補剛具を突き合わせ部に取り付けることができる。
【0013】
上記の態様の製紙用シームフェルト(31)において、前記保持部材(33)は、前記フェルト本体(2)における前記1対の仮接合具(3)が取り付けられた側との反対側の表面に、前記幅方向に開口する筒を画成するように、その両端部が重ねられた状態で前記1対の突き合わせ部の前記少なくとも一方に直接に縫い付けられ、前記補剛具(32)は、前記保持部材の前記筒内に挿通されてもよい。
【0014】
この態様によれば、保持部材に包まれた補剛具をつまみとして利用できる。すなわち、フェルト本体の丈方向の両端部に設けられたループを互いにかみ合わせる時に、作業員の手がループに代えて補剛具に触れるように作業を行え、作業員の手汗によるループの吸湿変形や、手で押し込まれることによるループの変形が防止され、ループのかみ合わせ作業や芯線の挿通作業が容易になる。
【0015】
上記の態様の製紙用シームフェルト(41)において、前記保持部材(42)は、前記1対の突き合わせ部(9)の前記少なくとも一方に直接に縫い付けられた第1保持部材(43)と、前記補剛具(4)が取り付けられた第2保持部材(44)とを含み、前記第1及び第2保持部材は、面ファスナーによって互いに係合しても良い。
【0016】
この態様によれば、補剛具の厚さが制限されない。また、ループのかみ合わせ作業がし易いように、補剛具を幅方向に分割して、かみ合わせ作業の進捗に応じて補剛具を部分的に着脱することができる。
【0017】
上記の態様の製紙用シームフェルト(1,21、31,41)において、補剛具(4,32)に貼り付けられたLEDテープ(15)を更に備えても良い。
【0018】
この態様によれば、LEDテープを点灯させると、光ファイバー効果でループが発光するので、視覚的にループをかみ合わせることが容易になる。
【0019】
上記の態様の製紙用シームフェルト(1,21、31,41)において、前記補剛具(4,32)の前記ループ(7)に対する近位側の端縁は、前記ループの基端から前記丈方向に1cm以上離れており、前記補剛具の前記ループに対する遠位側の端縁は、前記ループの前記基端から前記丈方向に10cm以内の範囲に位置しても良い。
【0020】
このような位置に補剛具を配置することにより、フェルト本体2におけるループ近傍部分の幅方向の剛性を強化するとともに、ループにある程度の動きが許容されることにより、ループのかみ合わせ作業が容易になる。
【0021】
上記の態様の製紙用シームフェルト(1,21、31,41)において、前記補剛具(4,32)の前記幅方向の曲げ剛性は、前記フェルト本体の前記幅方向の曲げ剛性の80%以上かつ300%以下であり、前記補剛具の前記ループ(7)に対する近位側の端縁は、前記ループの前記基端から前記丈方向に2cm以上離れており、前記補剛具の前記ループに対する遠位側の端縁は、前記ループの前記基端から前記丈方向に5cm以内の範囲に位置しても良い。
【0022】
この態様によれば、剛性とループの動きの許容性とのバランスが更に良くなり、ループのかみ合わせ作業が容易になる。
【0023】
本発明のある態様は、上記の態様の製紙用シームフェルト(1,21、31,41)の前記両端部の接合方法であって、前記両端部を互いに突き合わせて、前記1対の仮接合具(3)を互いに係合させるステップと、複数の前記ループ(7)を互いにかみ合わせて、かみ合わされた複数の前記ループの孔に芯線(8)を挿通するステップと、前記1対の仮接合具及び前記補剛具(4、32)を前記フェルト本体(2)から取り外すステップとを備える。
【0024】
この態様によれば、ループをかみ合わせて芯線をループ孔に挿通する作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
以上の態様によれば、軽量化した剛性の低いシームフェルトであっても、ループをかみ合わせて芯線をループ孔に挿通する作業を容易に行うことができる接合補助具が取り外し可能に取り付けられた製紙用シームフェルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る製紙用シームフェルトを示す斜視図
図2】第1実施形態に係る製紙用シームフェルトのフェルト本体を示す斜視図
図3】第1実施形態に係る製紙用シームフェルトの接合部周辺を示す縦断面図
図4】第1実施形態に係る製紙用シームフェルトの突き合わせ部を示す平面図
図5】第2実施形態に係る製紙用シームフェルトの突き合わせ部を示す平面図
図6】第3実施形態に係る製紙用シームフェルトの突き合わせ部を示す平面図
図7】第3実施形態に係る製紙用シームフェルトの接合部周辺を示す縦断面図
図8】第4実施形態に係る製紙用シームフェルトの突き合わせ部を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図1は、第1実施形態に係る製紙用シームフェルト1の接合部を示す斜視図である。以下の説明において、「丈方向」という用語は、製紙用シームフェルト1の丈方向(経方向)を意味し、「幅方向」という用語は、製紙用シームフェルト1の幅方向(緯方向)を意味する。
【0028】
図1に示すように、製紙用シームフェルト1は、抄紙機やパルプマシン等の製紙マシン(図示せず)に取り付けられて搾水される湿紙を運搬するフェルト本体2と、フェルト本体2の丈方向の両端部を接合するために用いられ、両端部の接合後に取り外される1対の仮接合具3と、両端部の接合作業時にフェルト本体2の幅方向の曲げ剛性を補強して、両端部の接合後に取り外される補剛具4とを備える。
【0029】
図2は、フェルト本体2の斜視図である。図2に示すように、フェルト本体2は、基布5と、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂の短繊維シートを基布5にニードリングして形成したバット繊維層6とを含む。基布5の丈方向の両端部には、それぞれ、複数のループ7が形成されている。フェルト本体2は、製紙マシンのプレスパートで使用され、両端部に設けられたループ7を互いにかみ合わせて、芯線8(図3参照)をループ7が画成する孔に挿通して両端部を接合することにより無端状にされ、その内側(走行面側)表面が製紙マシンのロール(図示せず)等に支持され、その外側(製紙面側)表面が湿紙を支持する。各々のループ7は、基布5における経糸が折り返されることにより形成される。ループ7は、バット繊維層6から突出している。以下の説明において、ループ7の「基端」とは、ループ7におけるバット繊維層6から突出し始める部分を意味する。
【0030】
図3は、製紙用シームフェルト1の接合部周辺の縦断面図である。図1及び図3に示すように、フェルト本体2は、丈方向において、両端部から丈方向の中央に向かって所定の範囲に画定された1対の突き合わせ部9と、1対の突き合わせ部9の間に画定された中間部10とに区画される。1対の突き合わせ部9の丈方向の長さは、互いに等しくても良く、互いに異なっても良い。
【0031】
1対の仮接合具3は、それぞれ、フェルト本体2の表面に固定される布地部11と、布地部11の一端縁に取り付けられたファスナーエレメント部12とを含む。また、1対のファスナーエレメント部12の何れか一方には、1対のファスナーエレメント部12を互いにかみ合わせるための、また、そのかみ合わせを解除するためのスライダー13がスライド可能に取り付けられている。すなわち、1対の仮接合具3は、線ファスナー(スライド式ファスナー)によって互いに接合される。
【0032】
1対の仮接合具3は、それぞれ、布地部11におけるファスナーエレメント部12が取り付けられた端縁とは反対側の端縁の近傍において、互いのファスナーエレメント部12が向き合うことができるように、糸14によって、フェルト本体2によって縫い付けられている。ファスナーエレメント部12は、幅方向に平行に延在する。布地部11をフェルト本体2に縫い付けた糸14の縫製ラインは、幅方向に延在し、フェルト本体2における突き合わせ部9と中間部10との境界となる。この縫製ラインからファスナーエレメント部12までの距離は、この縫製ラインからループ7までの距離よりも短い。このため、1対の仮接合具3のファスナーエレメント部12を互いに係合させ、かつフェルト本体2の丈方向の両端部を互いに突き合わせると、突き合わせ部9は、突き合わさった両端部を頂点とする山形状をなす。仮接合具3をフェルト本体2に縫い付ける糸14の縫い方は、ミシンによる二重環縫いであることが好ましい。
【0033】
図4は、一方の突き合わせ部9付近の平面図である。図1図3及び図4に示すように、補剛具4は、板形状の部材であって、糸14'によってフェルト本体2の突き合わせ部9に縫い付けられている。補剛具4は、丈方向に約3cm以上かつ約10cm以下の長さを有する。補剛具4は、ループ7の基端と、布地部11をフェルト本体2に縫い付ける糸14との間に配置される。ループ7にある程度の動きの余裕がないとループ7のかみ合わせ作業が困難になるため、補剛具4のループ7に対する近位側の端縁は、ループ7の基端から丈方向の中央に向かって1cm以上離れていることが好ましく、2cm以上離れていることが更に好ましい。補剛具4のループ7に対する遠位側の端縁は、ループ7の基端から丈方向に10cm以内の範囲に位置することが好ましく、5cm以内の範囲に位置することが更に好ましい。補剛具4における幅方向の両端部は、フェルト本体2の両端部に整合するか、フェルト本体2の両端部よりも幅方向の外方に位置することが好ましい。補剛具4は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂、厚紙、又は、樹脂加工された不織布若しくは織布を素材とする。
【0034】
補剛具4は、ミシン針を損傷しない程度の硬さを有する。補剛具4の幅方向の曲げ剛性は、補剛具4が取り付けられる部分におけるフェルト本体2の幅方向の曲げ剛性の80%以上かつ300%以下であり、好ましくは90%以上かつ200%以下であり、更に好ましくは、100%以上かつ150%以下である。補剛具4は、フェルト本体2における1対の仮接合具3が取り付けられる側の面とは反対側の面に取り付けられることが好ましい。補剛具4は、ミシン針を損傷しない程度の硬さを有する。補剛具4をフェルト本体2に縫い付けた糸14'の縫製ラインは、幅方向に延在することが好ましく、補剛具4とフェルト本体2とが互いに重なっている部分の全幅に渡って延在することが更に好ましい。補剛具4をフェルト本体2に縫い付ける糸14'の縫い方は、ミシンによる二重環縫いであることが好ましい。
【0035】
補剛具4の裏面にLEDテープ15を貼り付けても良い。その場合、LEDテープ15は補剛具4とフェルト本体2の間に配置され、かつLEDはフェルト本体2側を向くことで、フェルト本体2側が発光することとなる。LEDテープ15は、多数のLEDを配線とともに平たいテープ状に加工したものである。フェルト本体2の両端部に取り付けられる補剛具4の一方にのみLEDテープ15が取り付けられても良く、2つの補剛具4に対して互いに異なる色のLEDテープ15が取り付けられても良い。
【0036】
図1及び図3を参照して、製紙用シームフェルト1の丈方向の両端部の接合方法について説明する。
【0037】
製紙用シームフェルト1の製造工場にて、フェルト本体2の製造後、1対の仮接合具3及び補剛具4は、フェルト本体2に縫い付けられる。製紙用シームフェルト1は、製造工場から出荷されて製紙工場に運搬される。作業員は、製紙工場にて以下の作業を行う。
【0038】
まず、製紙用シームフェルト1を製紙マシンの走行経路に引き込み、フェルト本体2の両端部を近接対向させる。
【0039】
次に、1対の仮接合具3において、スライダー13を1対のファスナーエレメント部12上をスライド移動させて、ファスナーエレメント部12を互いにかみ合わせる。1対の仮接合具3は、フェルト本体2の両端部の近傍に取り付けられているため、フェルト本体2の両端部を付き合せた状態に保持できる。この時、1対の仮接合具3をフェルト本体2に縫い付けている糸14の縫製ラインからファスナーエレメント部12までの距離は、この縫製ラインからループ7までの距離よりも短いため、突き合わせ部9は、仮接合具3とは反対側に凸をなす山形状をなす。
【0040】
次に、幅方向の一方の端部から他方の端部に向かって、丈方向の両端部のループ7が交互に配置されるようにループ7の孔を幅方向に整合させながら、ループ7の孔に、芯線8に連結したリードワイヤー(図示せず)を通す。リードワイヤーが幅方向の他方の端部に到達したら、リードワイヤーを引いて、ループ7の孔に芯線8を通す。
【0041】
その後、スライダー13を逆方向にスライド移動させ、ファスナーエレメント部12のかみ合わせを解除する。更に、糸14,14'を解いて、仮接合具3及び補剛具4をフェルト本体2から取り外す。
【0042】
上記実施形態の作用効果について説明する。
【0043】
補剛具4によって、フェルト本体2のループ7の近傍部分の幅方向の曲げ剛性が補強されるため、ループ7の孔が幅方向に略真っ直ぐに整合した状態が維持され易くなり、リードワイヤー及び芯線8をループ7の孔に通す作業が容易になり、作業時間が短縮される。
【0044】
また、補剛具4は、板形状をなすため、フェルト本体2のループ7の近傍部分の幅方向の曲げ剛性だけでなく、丈方向の曲げ剛性を補強する。このため、突き合わせ部9を山形状に突き合わせた時に、突き合わせ部9が丈方向において反り返ることが抑制され、リードワイヤー及び芯線8をループ7の孔に通す作業が容易になる。
【0045】
補剛具4が直接にフェルト本体2に縫い付けられているため、部材点数の増加が抑制される。
【0046】
補剛具4によって曲げ剛性を高めているため、フェルト本体2を樹脂加工して曲げ剛性を高める場合に比べて製造工程に対する負荷が少ない。
【0047】
糸14,14'の縫い方が二重環縫いであるため、二重環縫いを構成する縫い糸の一方を引くことにより、糸14,14'が容易に解け、仮接合具3及び補剛具4をフェルト本体2から取り外す作業が容易になる。
【0048】
補剛具4にLEDテープ15を取り付けた場合は、ループ7のかみ合わせ時にLEDテープ15を点灯させることにより、光ファイバー効果でループ7が発光するので、視覚的にループ7をかみ合わせることが容易になる。LEDテープ15を製紙用シームフェルト1の両端部における一方の補剛具4にのみ設けた場合や、両端部で色違いのLEDテープ15を設けた場合は、各端部のループ7が、明暗差や色の違いによって視覚的に区別され、両者を交互に配置されているか否かを確認することが容易になる。
【0049】
図5を参照して、第2実施形態に係る製紙用シームフェルト21を説明する。説明にあたって、説明済みの実施形態と共通する構成については同じ符号を付し、説明を省略する(第3及び第4実施形態の説明においても同じ)。図5は、製紙用シームフェルト21の一方の突き合わせ部9付近の平面図である。第2実施形態に係る製紙用シームフェルト21は、補剛具4の取り付け方において第1実施形態と相違する。
【0050】
製紙用シームフェルト21は、フェルト本体2と、1対の仮接合具3(図1参照)と、補剛具4と、フェルト本体2に糸14'によって縫い付けられて、補剛具4を保持する保持部材22とを備える。
【0051】
保持部材22は、不織布や織布等の布状の部材であり、好ましくは、スパンボンド不織布である。保持部材22を不織布とした場合の材質は、特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル等を使用できる。例えば、保持部材22として、40g/mの目付を有するポリプロピレン製の不織布を使用しても良い。保持部材22の丈方向の長さは、補剛具4の丈方向の長さよりも長い。保持部材22の幅方向の両端部は、フェルト本体2の両端部に整合するか、フェルト本体2の両端部よりも幅方向の外方に位置することが好ましい。
【0052】
保持部材22は、互いに補剛具4の丈方向の長さよりも離間した2か所で、糸14'によって突き合わせ部9に縫い付けられており、糸14'の縫製ラインは幅方向に延在する。このように縫い付けられることによって、保持部材22は、突き合わせ部9の表面に幅方向の両端部が開口したポケット状の部分を形成している。補剛具4は、フェルト本体2に直接に取り付けられるのではなく、このポケット状の部分内に保持されることにより、保持部材22を介してフェルト本体2に取り付けられる。補剛具4がフェルト本体2に対して第1実施形態と同様の位置に配置されるように、保持部材22のフェルト本体2に対する位置が定められる。なお、2か所の糸14'の一方は、仮接合具3と保持部材22との双方をフェルト本体2に縫い付けるものであっても良い。フェルト本体2の丈方向の両端部を互いに接合した後、保持部材22をフェルト本体2から取り外すことにより、補剛具4は保持部材22をフェルト本体2から取り外される。
【0053】
このような構成によれば、所定の剛性を有することが求められる補剛具4を直接にフェルト本体2に縫い付ける必要がない。このため、第1実施形態に比べて補剛具4の厚さが制限されないとともに、保持部材22として縫い付けやすい素材の物を使用することにより、補剛具4のフェルト本体2への取り付け作業が容易になり、ミシン針を損傷することが抑制される。
【0054】
保持部材22としてスパンボンド不織布を使用した場合は、保持部材22が軽くなる、適度な伸縮性を有するため補剛具4をゆるみなく保持できる、ミシンで縫い付けやすい、縫った後に縫い目で千切れ難い、という効果が得られる。第1実施形態と同様に補剛具4にLEDテープ15(図4参照)を取り付けても良く、この場合、第1実施形態のLEDテープ15と同様の効果が得られるとともに、補剛具4が縫い付けられないためLEDテープ15付きの補剛具4を繰り返し利用できる。
【0055】
図6及び図7を参照して、第3実施形態に係る製紙用シームフェルト31を説明する。図6は、製紙用シームフェルト31の一方の突き合わせ部9付近の平面図であり、図7は、製紙用シームフェルト31の接合部近傍の縦断面図である。
【0056】
製紙用シームフェルト31は、フェルト本体2と、1対の仮接合具3(図1参照)と、棒形状又はチューブ形状の補剛具32と、フェルト本体2に糸14'によって縫い付けられて、補剛具32を保持する保持部材33とを備える。
【0057】
補剛具32の幅方向の長さは、フェルト本体2の幅方向の長さ以上であることが好ましい。補剛具32として、例えば、その直径(外径)が6mm以上8mm以下のポリウレタンチューブを用いても良い。補剛具32の剛性とフェルト本体2に対する位置とは、第1及び第2実施形態の補剛具4(図4及び図5参照)と同様である。
【0058】
保持部材33は、第2実施形態の保持部材22(図5参照)と同様の素材によって形成された布状の部材である。保持部材33は、折り目が幅方向に平行になるように2つに折り畳まれた状態で、糸14'によってフェルト本体2に縫い付けられている。保持部材33は、折り目と糸14'との間に筒状の部分を画成しており、この筒状の部分に保持部材33が保持されている。
【0059】
このような構成によれば、第2実施形態の説明で記載したことと同様の効果が得られる。また、保持部材33に包まれた補剛具32をつまみとして利用できる。すなわち、フェルト本体2の丈方向の両端部に設けられたループ7を互いにかみ合わせる時に、作業員の手がループ7に代えて補剛具32に触れるように作業を行え、作業員の手汗によるループ7の吸湿変形や、手で押し込まれることによるループ7の変形が防止され、ループ7のかみ合わせ作業や芯線8の挿通作業が容易になる。
【0060】
図8を参照して、第4実施形態に係る製紙用シームフェルト41を説明する。図8は、製紙用シームフェルト41の一方の突き合わせ部9付近の縦断面図である。
【0061】
製紙用シームフェルト41は、フェルト本体2と、1対の仮接合具3(図1参照)と、補剛具4と、突き合わせ部9に取り付けられて補剛具4を保持する保持部材42とを備える。
【0062】
保持部材42は、糸14'によってフェルト本体2に縫い付けられた第1保持部材43と、補剛具4が固定された第2保持部材44とを有する。第1及び第2保持部材43,44は、第1保持部材43におけるフェルト本体2に面する側と反対側の面と、第2保持部材44における補剛具4が固定された側とは反対側の面とが互いに係合する面ファスナーである。
【0063】
このような構成によれば、第1実施形態に比べて、補剛具4の厚さが制限されない。また、ループ7のかみ合わせ作業がし易いように、補剛具4を幅方向に分割して、かみ合わせ作業の進捗に応じて補剛具4を部分的に着脱することができる。
【0064】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。1対の仮接合具は、線ファスナーに代えて、複数のスナップボタン等が設けられた点ファスナーによって仮接合されても良く、面ファスナーによって仮接合されても良く、仮接合具本体の各々に複数の孔が設けられ、これらの孔に挿通される紐等によって仮接合されても良い。補剛具は、1対の突き合わせ部の双方に取り付けられることに代えて、1対の突き合わせ部の一方にのみ取り付けられても良い。LEDテープは、第2~第4実施形態の補剛具に取り付けられても良い。
【符号の説明】
【0065】
1,21,31,41:製紙用シームフェルト
2:フェルト本体
3:仮接合具
4,32:補剛具
7:ループ
8:芯線
9:突き合わせ部
10:中間部
14,14':糸
15:LEDテープ
22,33,42:保持部材
43:第1保持部材
44:第2保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8