(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183610
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
G03G15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097210
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道下 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】大羽 圭介
(72)【発明者】
【氏名】宇野 浩二
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA44
2H200JB10
2H200JB13
2H200JB41
2H200JC04
(57)【要約】
【課題】中間転写方式において、トナー像が二次転写された後の記録媒体を過不足なく除電可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、複数の画像形成部と、中間転写ベルトと、一次転写部材と、二次転写ローラーと、対向ローラーと、除電装置と、を備える。二次転写ローラーは、中間転写ベルトに一次転写されたトナー像を記録媒体上に二次転写する。対向ローラーは、中間転写ベルトを介して二次転写ローラーに圧接されることにより二次転写ニップ部を形成する。除電装置は、先端部を記録媒体の搬送方向の下流側に向けて配置され、グランドに接続された除電針と、二次転写ニップ部を通過した記録媒体と対向するガイド面を有し、記録媒体と除電針との間隔を一定に維持する除電針保護カバーと、を含み、二次転写ニップ部を通過した記録媒体の残留電荷を除去する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光層が形成された像担持体と、
前記像担持体の表面を所定の表面電位に帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像担持体に光を照射して帯電が減衰した静電潜像を形成する露光装置と、
前記像担持体の表面に形成された前記静電潜像をトナー像に現像する現像装置と、
を有する複数の画像形成部と、
前記画像形成部に隣接して配置され、前記像担持体の表面に形成された前記トナー像が外周面に一次転写される無端状の中間転写ベルトと、
前記像担持体の表面に形成された前記トナー像を前記中間転写ベルトに一次転写する一次転写部材と、
前記中間転写ベルトとの間に形成される二次転写ニップ部において前記中間転写ベルトに一次転写された前記トナー像を記録媒体上に二次転写する二次転写ローラーと、
前記中間転写ベルトを介して前記二次転写ローラーに圧接されることにより前記二次転写ニップ部を形成する対向ローラーと、
前記二次転写ニップ部を通過した前記記録媒体の残留電荷を除去する除電装置と、
を備えた画像形成装置において、
前記除電装置は、
前記記録媒体の搬送方向と直交する幅方向の全域に亘って先端部を前記記録媒体の搬送方向の下流側に向けて一定間隔で多数配置され、グランドに接続された除電針と、
前記二次転写ニップ部を通過した前記記録媒体と対向するガイド面を有し、前記記録媒体と前記除電針との間隔を一定に維持する除電針保護カバーと、
を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記二次転写ニップ部を通る前記二次転写ローラーと前記対向ローラーの接線を引いたとき、前記除電装置は、前記接線に対する前記除電針の先端部の傾斜角が、前記先端部が前記接線から遠ざかる方向に傾斜する場合は30°以下、前記先端部が前記接線に近づく方向に傾斜する場合は15°以下となるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記除電針保護カバーの前記二次転写ニップ部側の端部には、前記搬送方向の下流側に向かって前記接線に近づく方向に傾斜する傾斜面が形成されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記除電装置は、前記記録媒体の搬送方向に沿って複数配置されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記除電装置は、前記搬送方向の上流側に配置される第1除電装置と、下流側に配置される第2除電装置と、を有し、
前記第1除電装置における前記除電針保護カバーからの前記除電針の突出量が0以下であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記二次転写ニップ部を通る前記二次転写ローラーと前記対向ローラーの接線を引いたとき、前記第2除電装置は、前記第1除電装置に比べて前記接線から遠い位置に配置されることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ガイド面には、前記除電針保護カバーよりも摩擦係数の小さいシート部材が貼り付けられることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記シート部材の摩擦係数が0.3以下であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記対向ローラーの外径が16mm以下であり、前記二次転写ローラーのアスカーC硬度が30°以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いた複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に関し、特に、中間転写体に一次転写されたトナー像を記録媒体に二次転写する中間転写方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置では、感光体等からなる像担持体上に形成した静電潜像を、現像装置により現像し、トナー像として可視化する。このような画像形成装置として、感光体から中間転写ベルト等の中間転写体上に一次転写されたトナー像を用紙等の記録媒体に二次転写する中間転写方式の画像形成装置が広く用いられている。
【0003】
中間転写方式の画像形成装置においては、中間転写ベルト上のトナー像を用紙へ二次転写する二次転写ニップ部の直後に、用紙分離用の直流電圧・交流電圧が印加される分離器又は、グランドに接地(アース)された除電器が配置される。例えば、特許文献1には、中間転写ベルト上のトナー像を転写紙に二次転写する二次転写装置と、二次転写を終えた転写紙の裏面を除電して中間転写ベルトからの分離をし易くするための除電針と、を備えた画像形成装置が開示されている。
【0004】
特許文献1の構成では、除電針の先端部は、二次転写ニップ部を通過した用紙に対して垂直に近い状態で配置されている。除電針は、用紙に電荷を付与するか、若しくは用紙の電荷を除去し、中間転写ベルトと用紙との静電吸着力を低下させて用紙を中間転写ベルトから分離させる。中間転写ベルトから用紙を分離する方法としては、除電器を用いる方法の他に、二次転写ローラーと対向する中間転写ベルトの駆動ローラー(対向ローラー)の小径化による曲率分離を用いる方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二次転写ローラーと対向する中間転写ベルトの駆動ローラーの直径が小さく、且つ二次転写ローラーの硬度が大きくなると、用紙の分離方向が二次転写ローラー側に偏る。このとき中間転写ベルトと用紙との間で発生する剥離放電により、用紙全体がトナーと同極性に帯電する。この場合、従来と同様の除電器を用いて用紙を分離・除電する構成では、除電効率が高すぎるため、用紙に二次転写されたトナー像の飛散が発生する。交流電圧によって除電する場合はトナー像の飛散は発生し難いが、画像全体がぼやけた画像になり易い。また、除電器に交流電圧を印加するための高圧電源が大型化し、装置のコストアップにも繋がる。
【0007】
一方、駆動ローラーが小径化することにより用紙が曲率分離し易くなるため、中間転写ベルトから用紙を分離させる機構は不要となる。しかし、用紙の帯電量が大きい状態で定着装置に搬送されることになるため、定着処理時に静電オフセットが発生し易くなる。そのため、トナー像が二次転写された後の用紙を過不足なく適度に除電する必要があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、中間転写方式において、トナー像が二次転写された後の記録媒体を過不足なく除電可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、複数の画像形成部と、中間転写ベルトと、一次転写部材と、二次転写ローラーと、対向ローラーと、除電装置と、を備えた画像形成装置である。画像形成部は、表面に感光層が形成された像担持体と、像担持体の表面を所定の表面電位に帯電させる帯電装置と、帯電装置により帯電された像担持体に光を照射して帯電が減衰した静電潜像を形成する露光装置と、像担持体の表面に形成された静電潜像をトナー像に現像する現像装置と、を有する。中間転写ベルトは、無端状であって画像形成部に隣接して配置され、像担持体の表面に形成されたトナー像が外周面に一次転写される。一次転写部材は、像担持体の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルトに一次転写する。二次転写ローラーは、中間転写ベルトとの間に形成される二次転写ニップ部において中間転写ベルトに一次転写されたトナー像を記録媒体上に二次転写する。対向ローラーは、中間転写ベルトを介して二次転写ローラーに圧接されることにより二次転写ニップ部を形成する。除電装置は、二次転写ニップ部を通過した記録媒体の残留電荷を除去する。除電装置は、除電針と、除電針保護カバーと、を含む。除電針は、記録媒体の搬送方向と直交する幅方向の全域に亘って先端部を記録媒体の搬送方向の下流側に向けて一定間隔で多数配置され、グランドに接続される。除電針保護カバーは、二次転写ニップ部を通過した記録媒体と対向するガイド面を有し、記録媒体と除電針との間隔を一定に維持する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の構成によれば、除電装置は、先端部を記録媒体の搬送方向の下流側に向けて配置された除電針と、二次転写ニップ部を通過した記録媒体と対向するガイド面を有する除電針保護カバーとを含む。これにより、除電針保護カバーのガイド面に沿って搬送される記録媒体と除電針との距離を一定に維持することができ、記録媒体の電荷を除電する際に均一な除電性能を得ることができる。従って、除電過剰による除電ムラや、除電不足による静電飛散の発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置100の全体構成を示す概略断面図
【
図2】第1実施形態の画像形成装置100における用紙搬送路19、両面搬送路20周辺の部分断面図
【
図3】
図2における二次転写ニップ部N周辺の拡大図
【
図5】第1実施形態の画像形成装置100の二次転写ニップ部N周辺の拡大図であって、除電針33の先端部33aを、二次転写ニップ部Nを通る接線Lから離間する方向に傾斜させた変形例を示す図
【
図6】第1実施形態の画像形成装置100の二次転写ニップ部N周辺の拡大図であって、除電針33の先端部33aを、二次転写ニップ部Nを通る接線Lに近づく方向に傾斜させた変形例を示す図
【
図9】二次転写ニップ部Nを通る接線Lと除電針33の先端部33aとの角度θ1、θ2の適切な範囲を示す図
【
図10】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置100における二次転写ニップ部N周辺の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の内部構造を示す断面図である。画像形成装置100(ここではカラープリンター)本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、PcおよびPdが、搬送方向上流側(
図1では左側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa~Pdは、異なる4色(イエロー、シアン、マゼンタおよびブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像および転写の各工程によりイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックの画像を順次形成する。
【0013】
これらの画像形成部Pa~Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム(像担持体)1a、1b、1cおよび1dが配設されている。さらにベルト駆動モーター(図示せず)により
図1において反時計回り方向に回転する中間転写ベルト(中間転写体)8が各画像形成部Pa~Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a~1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a~1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次一次転写されて重畳される。その後、中間転写ベルト8上に一次転写されたトナー像は、二次転写ローラー9によって記録媒体の一例としての転写紙P上に二次転写される。さらに、トナー像が二次転写された転写紙Pは、定着部13においてトナー像が定着された後、画像形成装置100本体より排出される。感光体ドラム1a~1dを
図1において時計回り方向に回転させながら、各感光体ドラム1a~1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0014】
トナー像が二次転写される転写紙Pは、画像形成装置100の本体下部に配置された用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラー12およびレジストローラー対13を介して、用紙搬送路19に沿って二次転写ローラー9と中間転写ベルト8の駆動ローラー11とのニップ部へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。また、二次転写ローラー9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナー等を除去するためのブレード状のベルトクリーナー25が配置されている。
【0015】
次に、画像形成部Pa~Pdについて説明する。回転可能に配設された感光体ドラム1a~1dの周囲および下方には、感光体ドラム1a~1dを帯電させる帯電装置2a、2b、2cおよび2dと、各感光体ドラム1a~1dに画像情報を露光する露光装置5と、感光体ドラム1a~1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3cおよび3dと、感光体ドラム1a~1d上に残留した現像剤(トナー)等を除去するクリーニング装置7a、7b、7cおよび7dが設けられている。
【0016】
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、帯電装置2a~2dによって感光体ドラム1a~1dの表面を一様に帯電させる。次いで露光装置5によって画像データに応じて光照射し、各感光体ドラム1a~1d上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置3a~3dには、それぞれイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックのトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a~3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ4a~4dから各現像装置3a~3dにトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a~3dにより感光体ドラム1a~1d上に供給され、静電的に付着する。これにより、露光装置5からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0017】
そして、一次転写ローラー6a~6dにより一次転写ローラー6a~6dと感光体ドラム1a~1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a~1d上のイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの画像は、予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、一次転写後に感光体ドラム1a~1dの表面に残留したトナー等がクリーニング装置7a~7dにより除去される。
【0018】
中間転写ベルト8は、上流側の従動ローラー10と、下流側の駆動ローラー11とに掛け渡されている。ベルト駆動モーター(図示せず)による駆動ローラー11の回転に伴い中間転写ベルト8が反時計回り方向に回転を開始すると、転写紙Pがレジストローラー対13から所定のタイミングで駆動ローラー11と、これに隣接して設けられた二次転写ローラー9との二次転写ニップ部N(
図2参照)へ搬送される。そして、中間転写ベルト8上のトナー像が二次転写ニップ部Nを通過する転写紙P上に二次転写される。
【0019】
トナー像が二次転写された転写紙Pは定着部14へと搬送される。定着部14は、定着ベルト14aと加圧ローラー14b(いずれも
図2参照)を有する。定着ベルト14aは、ヒーターや誘導加熱部等の加熱装置(図示せず)によって加熱される。加圧ローラー14bは、定着ベルト14aに圧接されて定着ニップ部を形成し、定着ベルト14aに回転駆動力を付与する。
【0020】
定着部14に搬送された転写紙Pは、定着ベルト14aおよび加圧ローラー14bにより加熱および加圧されてトナー像が転写紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Pは、複数方向に分岐した分岐部15によって搬送方向が振り分けられ、そのまま(或いは、両面搬送路20に送られて両面に画像が形成された後に)、排出ローラー対17によって排出トレイ18に排出される。
【0021】
図2は、第1実施形態の画像形成装置100における用紙搬送路19、両面搬送路20周辺の部分断面図である。側面カバー21は、画像形成装置100の側面102を構成し、画像形成装置100本体の下方に設けられたカバー支軸21aに回動可能に支持されている。
【0022】
側面カバー21の側端縁にはフック22が設けられている。フック22は、画像形成装置100本体の正面側フレームおよび背面側フレームに設けられた係合ピン(図示せず)に係合することにより側面カバー21を閉状態に保持する。側面カバー21の内側面は両面搬送路20の一方の搬送面を構成している。
【0023】
側面カバー21の内側には搬送ユニット23が配置されている。搬送ユニット23はユニット支軸23aを中心として画像形成装置100本体に回動可能に支持されており、両面搬送路20と用紙搬送路19の搬送面の一部を構成する。両面搬送路20は、側面カバー21の内側面と搬送ユニット23の外側面との間で画像形成装置100の側面102に沿って上下方向に延び、略C字状に湾曲して用紙搬送路19に合流する構造となっている。搬送ユニット23の内側面には、転写紙Pの搬送方向上流側(
図2の下側)から順に、レジストローラー対13を構成する片側のローラー13b、二次転写ローラー9が付設されている。
【0024】
画像形成装置100に対し側面カバー21のみを開方向に回動させることにより、両面搬送路20が広範囲に露出する。また、側面カバー21を搬送ユニット23と共に開方向に回動させることにより、搬送ユニット23が画像形成装置100本体側から離間して用紙搬送路19が広範囲に露出する。一方、側面カバー21を搬送ユニット23と共に閉方向に回動させることにより、搬送ユニット23が画像形成装置100本体側に当接し、二次転写ローラー9が中間転写ベルト8を介して駆動ローラー11に押圧される。
【0025】
搬送ユニット23には搬送ガイド30が配置されている。搬送ガイド30は、二次転写ローラー9の下流側の用紙搬送路19において二次転写ニップ部Nを通過した転写紙Pをガイドして定着部14に案内する。二次転写ローラー9と搬送ガイド30の間には、除電装置31が配置されている。
【0026】
図3は、
図2における二次転写ニップ部N周辺の拡大図である。
図4は、除電装置31の側面図である。除電装置31は、除電針33と、除電針保護カバー34とを有する。除電針33は、転写紙Pの搬送方向と直交する幅方向(
図3の紙面と垂直な方向)の全域に亘って一定間隔で多数配置されている。除電針33は、二次転写ニップ部Nを通過する転写紙Pの残留電荷を除去して転写紙P上に二次転写されたトナー像の飛散(静電飛散)や静電オフセットを抑制する。除電針33は画像形成装置100の本体フレーム(図示せず)に接続されてグランド(GND)状態となっている。
【0027】
除電針保護カバー34は樹脂製であり、二次転写ニップ部Nを通過した転写紙Pと除電針33との間に配置されることにより転写紙Pと除電針33との間隔を一定に維持する。転写紙Pと対向する除電針保護カバー34のガイド面(搬送面)34aは、用紙搬送路19の一部を構成しており、用紙搬送路19を通過する転写紙Pの搬送ガイドとしての機能を有する。除電針保護カバー34の材質としては、例えばABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂やPC(ポリカーボネート)樹脂が挙げられる。
【0028】
除電針保護カバー34の二次転写ニップ部N側の端部には傾斜面34bが形成されている。傾斜面34bは、二次転写ニップ部Nを通る二次転写ローラー9と駆動ローラー11との接線Lを引いたとき、転写紙Pの搬送方向(
図3の右上方向)の下流側に向かって接線Lに近づく方向に傾斜する。二次転写ニップ部Nを通過した転写紙Pの先端は、傾斜面34bに沿ってガイド面34aに円滑に案内される。これにより、転写紙Pと除電装置31との干渉による紙詰まり(ジャム)を抑制することができる。
【0029】
除電針33は、除電針保護カバー34のガイド面34aと反対側の面に、先端部(針先)33aを転写紙Pの搬送方向の下流側に向けて配置されている。この構成により、除電針33の先端部33aは二次転写ニップ部Nを通過した転写紙Pに接触しない。
【0030】
前述したように、中間転写ベルト8からの転写紙Pの分離性は、二次転写ローラー9と対向する中間転写ベルト8の駆動ローラー11の直径、および二次転写ローラー9の硬度によって変化する。駆動ローラー11の直径および二次転写ローラー9のアスカーC硬度と分離性との関係を表1に示す。分離性は、レーザー変位計を用いて二次転写ニップ部Nからの転写紙Pの排出角度を測定し、排出角度が理想排出角度(接線L方向)から中間転写ベルト8側に8°以上傾斜している場合を×、中間転写ベルト8側への傾斜が8°より小さいか、若しくは二次転写ローラー9側に傾斜している場合を〇とした。
【0031】
【0032】
表1に示すように、中間転写ベルト8からの転写紙Pの良好な分離性を保つためには、駆動ローラー11の直径を16mm以下、二次転写ローラー9のアスカーC硬度を30°以上とすることが必要である。
【0033】
また、駆動ローラー11の直径および二次転写ローラー9のアスカーC硬度によって、静電飛散、静電オフセットの発生状況も変化する。駆動ローラー11の直径および二次転写ローラー9のアスカーC硬度と静電飛散、静電オフセットとの関係を表2に示す。静電飛散、静電オフセットは、ハーフトーン画像を印刷して目視により観察し、静電飛散、静電オフセットが発生している場合を×、発生していない場合を○とした。
【0034】
【0035】
表2に示すように、駆動ローラー11の直径を16mm以下、二次転写ローラー9のアスカーC硬度を30°以上としたときの画像を確認すると、静電飛散、静電オフセットが発生している。
【0036】
次に、画像不具合の発生している条件、および発生していない条件での転写紙P全体の帯電を確認した。その結果、画像不具合の発生している条件では、転写紙P全体の帯電が+3kV以上であり、画像不具合の発生していない条件は+2kV以下、若しくは負(-)帯電であった。このことから、トナーの帯電極性が正極性(+)であるため、転写紙P全体が強く正(+)帯電している場合、同極性(+)のトナーを保持する力が弱くなり、静電飛散や静電オフセットを発生させていると推定される。
【0037】
以上の結果より、中間転写ベルト8に対する転写紙Pの良好な分離性を維持しつつ、画像不具合の発生を抑制するためには、転写紙Pの電荷を適切に除電する必要があることがわかる。しかし、除電針33の先端部33aが転写紙Pに対して垂直に近い状態で配置される従来の構成では、除電効率が高くなり過ぎて除電ムラが発生し、画像濃度ムラとなるおそれがあった。
【0038】
そこで、本実施形態では、
図3に示すように除電針33の先端部33aを転写紙Pの搬送方向の下流側に向けて搬送方向と略平行に配置し、除電針保護カバー34の除電針33と反対側の面を転写紙Pの搬送ガイドとなるガイド面34aとしている。これにより、除電針保護カバー34のガイド面34aに沿って搬送される転写紙Pと除電針33との距離を一定に維持することができ、転写紙Pの電荷を除電する際に均一な除電性能を得ることができる。
【0039】
除電装置31による除電効果の強さ(除電量)は、除電針保護カバー34のガイド面34aからの除電針33の突出量d(
図4参照)によって調整することができる。突出量dが大きくなるほど除電効果は強くなり、突出量dが小さくなるほど除電効果は弱くなる。
【0040】
図4に示すように、除電針保護カバー34のガイド面34aにはシート部材35が貼り付けられている。ガイド面34aは、除電針保護カバー34の材料であるABS樹脂やPC樹脂等であってもよいが、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート(No.903白、Nitto社製)やUPE(超高分子量ポリエチレン)シート(No.440白、Nitto社製)等の、除電針保護カバー34よりも摩擦係数の小さいシート部材35をガイド面34aに貼り付けて摺動性を向上させることが好ましい。シート部材35の摩擦係数は0.3以下であることが好ましい。
【0041】
これにより、転写紙Pの搬送負荷を低減することができ、転写紙Pが除電針保護カバー34のガイド面34aに面接触することによる搬送負荷の増大に起因する転写紙Pの紙詰まり(ジャム)やシワの発生を抑制することができる。除電針保護カバー34のガイド面34aの材質と摩擦係数を表3に示す。摩擦係数は、転写紙(C2紙、Xerox社製)を荷重5[N]、20[mm/s]で摺動させて測定した。
【0042】
【0043】
図5および
図6は、除電針33の先端部33aを、二次転写ニップ部Nを通る接線Lに対して傾斜させた変形例を示す図である。
図5は、除電針33の先端部33aを接線Lから遠ざかる方向に傾斜させた状態を示しており、
図6は、除電針33の先端部33aを接線Lに近づく方向に傾斜させた状態を示している。
【0044】
除電針33は、転写紙Pの理想排出角度(接線L方向)に対して完全に平行に配置する必要はなく、
図5、
図6のように所定角度傾斜していてもよい。転写紙Pの理想排出角度に対する除電針33の先端部33aの角度と画像不具合の発生状況との関係を表4に示す。除電針33の先端部33aの傾斜角は、先端部33aが接線Lから遠ざかる方向の傾斜角(
図5のθ1)をプラス(+)、先端部33aが接線Lに近づく方向の傾斜角(
図6のθ2)をマイナス(-)として区別している。画像不具合は、駆動ローラー11の直径を16mm、二次転写ローラー9のアスカーC硬度を40°としたときのハーフトーン画像を目視により観察して評価した。
【0045】
【表4】
※1;画像筋(除電針ピッチムラ)、※2;静電飛散
【0046】
表4に示すように、先端部33aの傾斜角が-15°~+30°までは画像不良の発生がなく、転写紙Pを適切に除電できているが、傾斜角が-15°よりも小さく(-方向に大きく)なると除電効果が過剰となり、
図7に示すような画像筋が除電針33のピッチ(間隔)で発生した。一方、傾斜角が+30°よりも大きくなると除電効果が不足し、
図8に示すような斑点状の静電飛散が発生した。
【0047】
表4に示す結果より、除電針33の先端部33aが接線Lから遠ざかる方向に配置した場合(
図5参照)は、接線Lと先端部33aとの角度θ1を30°以下とすることが好ましい。また、除電針33の先端部33aが接線Lに近づく方向に配置した場合(
図6参照)は、接線Lと先端部33aとの角度θ2を15°以下とすることが好ましい。二次転写ニップ部Nを通る接線Lと除電針33の先端部33aとの傾斜角θ1、θ2の適切な範囲を
図9に示す。
【0048】
図10は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置100における二次転写ニップ部N周辺の拡大図である。本実施形態では、転写紙Pの搬送方向に沿って上流側から順に第1除電装置31a、第2除電装置31bが配置されている。第1除電装置31a、第2除電装置31bの構成は
図4に示した第1実施形態の除電装置31と同様である。
【0049】
第1除電装置31aの除電針33に近接して第2除電装置31bを配置すると、第1除電装置31aの除電針33と転写紙Pとの間での放電空間が無くなり、転写紙Pの電荷を効率よく除電することができない。そこで、
図10に示すように、第2除電装置31bを第1除電装置31aに比べて接線Lからの距離が遠い位置に配置し、第1除電装置31aの除電針33と転写紙Pとの間での放電空間を確保している。
【0050】
本実施形態では、転写紙Pの搬送方向に沿って2つの第1除電装置31a、第2除電装置31bを配置することにより、上流側の第1除電装置31aによって転写紙Pの帯電電位を高電位レベルから中電位レベルまで低下させ、下流側の第2除電装置31bによって転写紙Pの帯電電位を中電位レベルから低電位レベル(ゼロ付近)までさらに低下させる。即ち、転写紙Pの残留電荷を段階的に低下させることで、転写紙Pの帯電電位の急激な低下による画像筋の発生を抑制しつつ、転写紙Pの除電効率を高めて静電飛散の発生を抑制することができる。
【0051】
また、第1除電装置31aと第2除電装置31bとで除電針33の突出量dを変更することで、転写紙Pの除電効果を調整して画像不具合の発生をより効果的に抑制することができる。第1除電装置31aと第2除電装置31bにおける除電針33の突出量と、除電効果および画像不具合との関係を表5に示す。
【0052】
表5において、除電針33の突出量dは、
図4に示したように、除電針33の先端部33aと除電針保護カバー34のガイド面34aの端縁との距離となる。より詳細には、除電針33の先端部33aがガイド面34aの端縁よりも外側に突出している場合をプラス(+)、ガイド面34aの内側に退避している場合をマイナス(-)で表す。
【0053】
【表5】
※1;画像筋(除電針ピッチムラ)、※2;静電飛散
【0054】
表5に示すように、第1除電装置31aのみを配置した試験例1~3では、除電針33の突出量が0mmのとき適切な除電量となり画像不具合は発生しなかった(試験例2)。しかし、除電針33の突出量が-1mmのときは除電量不足による静電飛散が発生した(試験例1)。また、除電針33の突出量が1mmのときは除電量過剰による画像筋が発生した(試験例3)。
【0055】
これに対し、第1除電装置31aと第2除電装置31bを配置した試験例4~12では、第1除電装置31aの除電針33の突出量が-1mmまたは0mmのときは、第2除電装置31aの除電針33の突出量に関係なく適切な除電量となり画像不具合は発生しなかった(試験例4~9)。しかし、第1除電装置31aの除電針33の突出量が1mmのときは、第2除電装置31aの除電針33の突出量に関係なく除電量過剰による画像筋が発生した(試験例10~12)。
【0056】
なお、試験例9と試験例10とを比較すると、除電後の転写紙の電位がどちらも1.1kV、除電量が4.9kVで同一であるにも係わらず、試験例9では画像不具合が発生していないのに対し試験例10では過剰除電による画像筋が発生している。これは、第1除電装置31aと第2除電装置31bのトータルの除電量は同一であるが、試験例10では第1除電装置31aの除電針33の突出量が1mmであるため、第1除電装置31aによる除電量が大きくなって過剰除電が発生したものと考えられる。試験例6と試験例11、12についても同様である。
【0057】
以上の結果より、第1除電装置31aと第2除電装置31bを配置する第2実施形態では、第1除電装置31aの除電針33の突出量が0以下となるように配置することで、第2除電装置31bの除電針33の突出量のマージン(裕度)を大きくすることができる。従って、第1除電装置31a、第2除電装置31bの位置精度や、除電針33または除電針保護カバー34の寸法公差等に係わらず、転写紙Pの段階的な除電を安定して行うことができ、画像不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0058】
その他本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記第2実施形態では、転写紙Pの搬送方向に沿って第1除電装置31a、第2除電装置31bを配置したが、転写紙Pの搬送方向に沿って3つ以上の除電装置31を配置することもできる。除電装置31を増設することによる画像への影響はないが、除電装置31を増設するとコストアップに繋がるため、必要に応じて設置数を決定することが好ましい。
【0059】
また、上記実施形態では、中間転写ベルト8を駆動する駆動ローラー11を二次転写ローラーに対向する対向ローラーとし、中間転写ベルト8を介して二次転写ローラー9に駆動ローラー11を圧接して二次転写ニップ部Nを形成したが、二次転写ローラー9に対向する対向ローラーは駆動ローラー11以外のローラーであってもよい。
【0060】
また、上記各実施形態では、画像形成装置100として
図1に示したようなカラープリンターを例に挙げて説明したが、本発明はカラープリンターに限らず、カラー複写機、カラー複合機等、中間転写方式の画像形成装置に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、中間転写方式の画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、トナー像が二次転写された後の記録媒体を過不足なく除電可能な画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0062】
Pa~Pd 画像形成部
1a~1d 感光体ドラム(像担持体)
6a~6d 一次転写ローラー(一次転写部材)
7a~7d クリーニング装置
8 中間転写ベルト
9 二次転写ローラー
11 駆動ローラー(対向ローラー)
14 定着部
19 用紙搬送路
23 搬送ユニット
30 搬送ガイド
31 除電装置
31a 第1除電装置
31b 第2除電装置
33 除電針
33a 先端部
34 除電針保護カバー
34a ガイド面
34b 傾斜面
35 シート部材
100 画像形成装置
N 二次転写ニップ部
P 転写紙(記録媒体)