IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図1
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図2
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図3
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図4
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図5
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図6
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183623
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】現像装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
G03G15/08 221
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097227
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 尭洋
(72)【発明者】
【氏名】谷口 諒
(72)【発明者】
【氏名】和田 実
【テーマコード(参考)】
2H077
【Fターム(参考)】
2H077AB03
2H077AB14
2H077AC03
2H077AC04
2H077AD02
2H077AD06
2H077AD13
2H077AD17
2H077AD23
2H077AE03
2H077BA03
2H077EA15
2H077FA13
2H077FA16
2H077FA22
2H077FA26
(57)【要約】
【課題】現像ローラーの性能がばらつくことを抑制する。
【解決手段】現像装置は、トナーからなる一成分現像剤を収容する現像容器と、現像容器に回転可能に支持されるとともに、像担持体と対向して配置され、外周面に凹凸を有し、外周面にトナーを担持して回転することにより、像担持体にトナーを供給する現像ローラーと、外周面に接触することにより、外周面に形成されるトナー層の層厚を調整する規制ブレードと、を備え、現像ローラーは、外周面に透明部材の平面を50N/mの線圧で接触させたときの外周面と平面との間のニップ面積に対する外周面と平面とが実際に接触した面積の比率である接触面積率が10%以上20%以下となる凹凸を外周面に有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーからなる一成分現像剤を収容する現像容器と、
前記現像容器に回転可能に支持されるとともに、像担持体と対向して配置され、外周面に凹凸を有し、前記外周面に前記トナーを担持して回転することにより、前記像担持体に前記トナーを供給する現像ローラーと、
前記外周面に接触することにより、前記外周面に形成されるトナー層の層厚を調整する規制ブレードと、を備え、
前記現像ローラーは、前記外周面に透明部材の平面を50N/mの線圧で接触させたときの前記外周面と前記平面との間のニップ面積に対する前記外周面と前記平面とが実際に接触した面積の比率である接触面積率が10%以上20%以下となる凹凸を前記外周面に有する、現像装置。
【請求項2】
前記規制ブレードは、前記外周面に20N/m以上60N/m以下の線圧で接触する、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記透明部材は、側面視において二等辺三角形状のプリズムであり、
前記プリズムの互いに垂直な2面に挟まれた面を前記外周面に50N/mの線圧で接触させ、前記互いに垂直な2面のうち一方の面に光を入射したときの前記外周面と前記平面との接触状態を前記互いに垂直な2面のうち前記一方の面とは別の他方の面から観察して求められた前記接触面積率が10%以上20%以下である、請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の現像装置を備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の現像装置は、現像ローラー(現像剤担持体)を備える。現像ローラーは、外周面にトナーを担持して回転する。これにより、現像ローラーは、トナーを搬送する。また、従来の現像装置は、現像ローラーの外周面に接触する規制ブレード(現像剤規制部材)を備える。現像ローラーの外周面に規制ブレードが接触することにより、層厚が均一なトナー層が現像ローラーの外周面に形成される。このような現像装置は、たとえば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-177853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現像ローラーは、外周面に凹凸を有する。たとえば、現像ローラーの外周面の表面粗さが規定されており、現像ローラーの外周面は規定通りに形成される。しかし、現像ローラーはその外周面に規制ブレードが接触した状態で使用されるため、現像ローラーの外周面が規定通りに形成されても、現像ローラーのトナー搬送に関する性能のばらつきが大きくなることがある。これにより、現像ローラーのトナー搬送量を確実に制御できないという不都合がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、現像ローラーの性能がばらつくことを抑制することが可能な現像装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の局面による現像装置は、トナーからなる一成分現像剤を収容する現像容器と、現像容器に回転可能に支持されるとともに、像担持体と対向して配置され、外周面に凹凸を有し、外周面にトナーを担持して回転することにより、像担持体にトナーを供給する現像ローラーと、外周面に接触することにより、外周面に形成されるトナー層の層厚を調整する規制ブレードと、を備える。現像ローラーは、外周面に透明部材の平面を50N/mの線圧で接触させたときの外周面と平面との間のニップ面積に対する外周面と平面とが実際に接触した面積の比率である接触面積率が10%以上20%以下となる凹凸を外周面に有する。
【0007】
本発明の第2の局面による画像形成装置は、上記現像装置を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成では、現像ローラーの性能がばらつくことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による現像装置を備える画像形成装置の概略図である。
図2】一実施形態による現像装置の概略図である。
図3】一実施形態による現像装置の現像ローラーと規制ブレードとの接触位置の周辺の拡大図である。
図4】一実施形態による現像装置の現像ローラーにプリズムを接触させた状態の模式図である。
図5図4に示す測定方法で得られる結果の模式図である。
図6】現像ローラーの外周面の形成条件をプリズムとの接触面積率で規定した現像ローラーでの実験結果を示す図である。
図7】現像ローラーの外周面の形成条件を十点平均粗さで規定した現像ローラーでの実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態による現像装置を備える画像形成装置について、モノクロプリンターを例にとって説明する。
【0011】
<画像形成装置の全体構成>
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、現像装置1を備える。現像装置1は、画像(トナー像)を形成する。言い換えると、現像装置1は、静電潜像にトナーを供給して現像する。現像装置1の構成については、後に詳細に説明する。
【0012】
画像形成装置100には、給紙カセット200が着脱可能に装着される。給紙カセット200は、シート(図示せず)を収容する。画像形成装置100での印刷では、給紙カセット200内のシートが使用される。印刷で使用され得るシートとしては、コピー用紙、コート紙、OHPシート、厚紙、葉書およびトレーシングペーパーなどがある。
【0013】
給紙カセット200は、内部にリフト板201を有する。給紙カセット200内のシートは、リフト板201上に載置される。リフト板201は、一方端部(給紙方向上流側でありシート後端側)を支点とし、他方端部(給紙方向下流側でありシート前端側)を上下に振るように回動する。
【0014】
給紙カセット200の給紙方向下流側(シートの給紙口)には、給紙ローラー202が設けられる。リフト板201が上昇することにより、リフト板201上のシートが給紙ローラー202の外周面に接触する。給紙ローラー202は、シートが接触した状態で回転する。これにより、給紙カセット200からシートが送り出される。
【0015】
画像形成装置100は、画像形成部300を備える。画像形成部300は、給紙カセット200から送り出されたシートを受け入れる。画像形成部300は、トナー像を形成してシートに転写する。画像形成部300は、感光体ドラム301、転写ローラー302、帯電装置303および露光装置304を含む。感光体ドラム301は「像担持体」に相当する。なお、現像装置1は、画像形成部300の一構成要素である。
【0016】
感光体ドラム301は、回転可能に支持される。転写ローラー302は、感光体ドラム301の外周面に圧接し、感光体ドラム301との間で転写ニップを形成する。帯電装置303は、感光体ドラム301の外周面を帯電させる。露光装置304は、感光体ドラム301の外周面上に静電潜像を形成する。現像装置1は、感光体ドラム301の外周面上の静電潜像をトナー像に現像する。
【0017】
また、画像形成装置100は、定着部400を備える。定着部400は、定着ローラー401と加圧ローラー402とを含む。定着ローラー401は、ヒーターを内蔵する。加圧ローラー402は、定着ローラー401に圧接し、定着ローラー401との間で定着ニップを形成する。
【0018】
給紙カセット200から送り出されるシートは、転写ニップに進入する。シートが転写ニップを通過するとき、シートに対して画像が印刷される。具体的には、感光体ドラム301の外周面上のトナー像がシートに転写される。その後、シートは、定着ニップに進入し、加熱および加圧される。これにより、シートにトナー像が定着される。定着ニップを抜けた印刷済みのシートは、排出トレイETに排出される。
【0019】
<現像装置の構成>
図2に示すように、現像装置1は、現像容器10を備える。現像容器10は、トナーからなる一成分現像剤を収容する。具体的には、現像容器10は、支持部材110とカバー部材120とを含む。支持部材110とカバー部材120とを組み合わせることにより、内部に収容スペースを有する現像容器10が構成される。現像容器10の収容スペースには、トナーのみからなる非磁性一成分現像剤が収容される。
【0020】
現像容器10の収容スペースには、攪拌パドルSPが設けられる。攪拌パドルSPは、収容スペース内のトナーを攪拌する。なお、図示しないトナー補給装置により、トナーコンテナから現像容器10に対してトナーが補給される。
【0021】
現像容器10は、感光体ドラム301が配置される側に開口を有する。現像容器10の開口は、感光体ドラム301へのトナーの供給口となる。
【0022】
現像装置1は、供給ローラー11および現像ローラー12を備える。供給ローラー11および現像ローラー12は、この順番で、現像容器10の内部(すなわち、収容スペース)から外部に向かって並ぶ。現像ローラー12は、その外周面20が供給ローラー11の外周面と対向するよう配置される。また、現像ローラー12は、その外周面20が感光体ドラム301の外周面と対向するよう配置される。言い換えると、現像ローラー12は、供給ローラー11と感光体ドラム301との間に配置される。さらに言い換えると、供給ローラー11は、現像容器10の内部に配置され、現像ローラー12は、現像容器10の開口(トナーの供給口)に配置される。
【0023】
供給ローラー11は、支持部材110に回転可能に支持される。すなわち、供給ローラー11は、現像容器10に回転可能に支持される。供給ローラー11は、一方向(図2では、反時計回り方向)に回転する。また、供給ローラー11は、収容スペース内のトナーを外周面に担持する。供給ローラー11は、外周面にトナーを担持して回転することにより、現像ローラー12にトナーを供給する。
【0024】
現像ローラー12は、感光体ドラム301に対して所定の圧力で押圧される。また、現像ローラー12は、支持部材110に回転可能に支持される。すなわち、現像ローラー12は、現像容器10に回転可能に支持される。現像ローラー12は、供給ローラー11と同方向(図2では、反時計回り方向)に回転する。供給ローラー11と現像ローラー12との対向位置では、供給ローラー11の外周面の進行方向に対して現像ローラー12の外周面の進行方向が逆向きとなる。
【0025】
現像ローラー12は、供給ローラー11からトナーの供給を受け、外周面20にトナーを担持する。現像ローラー12は、外周面20にトナーを担持して回転することにより、感光体ドラム301にトナーを供給する。現像ローラー12から感光体ドラム301へのトナーの移動を効率的に行うため、現像ローラー12に対して所定の現像電圧を印加することが好ましい。
【0026】
現像ローラー12は、回転軸(符号省略)およびその回転軸に取り付けられるローラー部材(符号省略)を有する。ローラー部材は、回転軸と共に回転する。ローラー部材は、円筒状である。たとえば、ローラー部材は、シリコーンゴムなどの基材層の表面にウレタンコーティングを施した部材である。ローラー部材の外周面には、凹凸が形成される。すなわち、現像ローラー12は、その外周面20に凹凸を有する。これにより、現像ローラー12の外周面20にトナーが担持される。現像ローラー12の外周面20には、トナー層が形成される。
【0027】
ここで、現像装置1は、規制ブレード13を備える。規制ブレード13は、現像ローラー12の回転軸方向から見て、その一端側の部分が現像容器10に固定される。また、規制ブレード13は、現像ローラー12の回転軸方向から見て、現像容器10に対する取付箇所から現像ローラー12に向かって延びる。規制ブレード13のうち一端側(現像容器10に対する固定側)とは反対の他端側の部分が現像ローラー12の外周面20と接触する。言い換えると、規制ブレード13の一方端部は、固定端であり、現像容器10に固定される。規制ブレード13の一方端部とは反対側の他方端部は、自由端であり、現像ローラー12の外周面20に接触する。
【0028】
規制ブレード13は、板バネである。具体的には、規制ブレード13は、金属製の板状部材である。規制ブレード13は、薄板状であり、ステンレス板からなる。なお、規制ブレード13の構成材料は特に限定されない。
【0029】
規制ブレード13は、現像ローラー12と感光体ドラム301とが対向する位置よりも現像ローラー12の回転方向における上流側の位置で現像ローラー12の外周面に接触する。規制ブレード13は、所定の線圧(規制圧)で現像ローラー12の外周面20に接触し、撓む。現像ローラー12の外周面20に対する規制ブレード13の接触状態を図3に示す。たとえば、規制ブレード13の自由端側の先端30は、現像ローラー12の外周面20側とは反対側に曲げられる。
【0030】
なお、現像ローラー12の外周面20に対する規制ブレード13の線圧とは、現像ローラー12の外周面20と規制ブレード13との接触位置における規制ブレード13の単位長さあたりの接触圧である。規制ブレード13は、20N/m以上60N/m以下の線圧で現像ローラー12の外周面20に接触する。また、規制ブレード13は、所定のニップ幅で現像ローラー12の外周面20に接触する。ニップ幅とは、現像ローラー12の周方向における現像ローラー12の外周面20と規制ブレード13との間の接触幅である。後述するプリズム5を用いた測定では、現像ローラー12の周方向における現像ローラー12の外周面20とプリズム5の平面50との間の接触幅がニップ幅となる。図3では、ニップ幅を「W」で示す。
【0031】
現像ローラー12の外周面20に対して規制ブレード13を接触させることにより、現像ローラー12の外周面20にある余分なトナーが掻き取られる。その結果、現像ローラー12の外周面20に形成されるトナー層を均一な厚さに調整できる。すなわち、規制ブレード13は、現像ローラー12の外周面20に接触することにより、現像ローラー12の外周面20に形成されるトナー層の層厚を調整する。また、規制ブレード13がトナー層に当接することで生じる静電気により、トナー層が帯電する。
【0032】
図2に戻り、現像装置1は、シール部材14を備える。シール部材14は、現像ローラー12の外周面20に接触するよう支持部材110に固定される。シール部材14は、現像ローラー12の外周面20と支持部材110との隙間を塞ぐ。これにより、現像ローラー12の外周面20と支持部材110との隙間からのトナーの漏出を抑制できる。すなわち、現像容器10の内部から外部へのトナーの漏出を抑制できる。
【0033】
<現像ローラーの外周面>
現像ローラー12の外周面20に担持されるトナーの帯電性、搬送性および掻き取り性は、現像ローラー12の外周面20の表面形状(すなわち、表面粗さ)に依存する。トナーの帯電性、搬送性および掻き取り性の全てを目標範囲内にするには、現像ローラー12の外周面20の表面形状を精度良く制御する必要がある。
【0034】
ただし、現像ローラー12の外周面20には規制ブレード13が接触し、その状態で現像ローラー12が使用される。このため、たとえば、現像ローラー12の外周面20の表面粗さだけに着目して現像ローラー12の外周面20の形状を設計し、現像ローラー12の外周面20の形状を設計通りに形成しても、トナーの帯電性、搬送性および掻き取り性のいずれかが不十分になる場合がある。このことから、現像ローラー12の外周面20に規制ブレード13が接触しているときの現像ローラー12の外周面20の状態が目標状態になっているか否かが重要であると言える。
【0035】
そこで、現像ローラー12の製造工程において、現像ローラー12の外周面20を測定するとき、現像ローラー12の外周面20に規制ブレード13が接触した状態が再現される。言い換えると、現像ローラー12の外周面20に規制ブレード13が接触した状態での現像ローラー12の外周面20の表面形状が目標形状となるよう現像ローラー12が製造される。
【0036】
現像ローラー12の製造工程では、図4に示すような環境下で、現像ローラー12の外周面20の測定が行われる。図4は、現像ローラー12の外周面20の測定方法(測定機器)を模式的に示す図である。図4では、現像ローラー12の外周面20の測定に必要な要素が模式的に示される。
【0037】
なお、現像ローラー12の外周面20の測定方法は特に限定されない。現像ローラー12の外周面20を測定するとき、現像ローラー12の外周面20に規制ブレード13が接触した状態が再現できれば、他の測定方法が用いられてもよい。
【0038】
現像ローラー12の外周面20の測定では、プリズム5が用いられる。言い換えると、現像ローラー12の外周面20を測定するための測定機器は、プリズム5を構成要素として含む。
【0039】
プリズム5は、互いに非平行な3つの平面を有する三角柱である。プリズム5は、側面視において、二等辺三角形状である。具体的には、プリズム5は、側面視において、直角二等辺三角形状である。なお、プリズム5は「透明部材」に相当する。「透明部材」はプリズム5に限定されない。プリズム5とは異なる透明部材を現像ローラー12の外周面20の測定に用いてもよい。
【0040】
現像ローラー12の外周面20を測定するとき、プリズム5の互いに非平行な3つの平面のいずれか1つが現像ローラー12の外周面20に押し当てられる。以下の説明では、現像ローラー12の外周面20に押し当てられる平面に符号50を付す。プリズム5の平面50は、プリズム5の互いに非平行な3つの平面のうち、側面視において互いに垂直な2面に挟まれた面である。
【0041】
現像ローラー12の外周面20の測定では、光源6が用いられる。光源6は、プリズム5の互いに非平行な3つの平面のうち平面50とは別の平面に光を発する。当該平面に光源6の光が入射する。光源6としては、LEDおよび半導体レーザーなどが用いられてもよい。以下の説明では、プリズム5のうち光源6の光が入射する平面に符号51を付す。また、図4では、光源6から発せられてプリズム5を進む光を破線矢印で示す。プリズム5の平面51は、側面視において互いに垂直な2面のうち一方の面である。
【0042】
現像ローラー12の外周面20の測定では、プリズム5の互いに非平行な3つの平面のうち、平面50および51とは別の平面から、平面51に光を入射したときの現像ローラー12の外周面20とプリズム5の平面50との接触状態が観察される。以下の説明では、プリズム5のうち観察する面に符号52を付す。プリズム5の平面52は、側面視において互いに垂直な2面のうち一方の面とは別の他方の面である。
【0043】
プリズム5は、現像ローラー12の外周面20に規制ブレード13が接触した状態を再現するため、その平面50が現像ローラー12の外周面20に押し当てられる。これにより、プリズム5の平面50は、現像ローラー12の外周面20に接触する。
【0044】
なお、現像ローラー12は、外周面20に凹凸を有する。すなわち、現像ローラー12は、凹部および凸部を外周面20に有する。このため、プリズム5の平面50の全領域が現像ローラー12の外周面20に接触するわけではない。プリズム5の平面50のうち、現像ローラー12の外周面20に接触するのは凸部と対向する領域(以下、凸部領域と称する)であり、凹部と対向する領域(以下、凹部領域と称する)は現像ローラー12の外周面20には接触しない。現像ローラー12の外周面20とプリズム5の平面50の凹部領域との間には、隙間(空気)が生じる。
【0045】
これにより、プリズム5の平面50では、凹部領域であるか凸部領域であるかによって光の強弱に差が生じる。プリズム5の平面50のうち凹部領域では、光源6の光が全反射する。一方で、プリズム5の平面50のうち凸部領域には隙間が生じない。このため、プリズム5の平面50のうち凸部領域では、光源6の光が乱反射し、凹部領域よりも光が弱くなる。
【0046】
プリズム5の平面52を観察することにより、図5に示すように、平面50での反射光の陰影(暗い領域と明るい領域)を検出できる。凸部領域(プリズム5の平面50のうち現像ローラー12の外周面20に実際に接触した領域)は、暗い領域となって出現する。すなわち、凸部領域を検出できる。なお、図5は、プリズム5の平面52を観察することで得られる結果を模式的に示す図である。図5では、暗い領域を黒丸で示す。
【0047】
プリズム5の平面52を観察することにより、プリズム5の平面50のうち現像ローラー12の外周面20と実際に接触している領域を検出できる。また、その検出した領域の面積を求めることができる。すなわち、プリズム5の平面52を観察することにより、後述する接触面積率を求めることができる。
【0048】
現像ローラー12の外周面20の測定では、プリズム5の平面50が現像ローラー12の外周面20に50N/mの線圧で押し当てられる。なお、規制ブレード13は、現像ローラー12の外周面20に20N/m以上60N/m以下の線圧で接触する。そこで、現像ローラー12の外周面20にプリズム5の平面50を押し当てるときの線圧が20N/m以上60N/m以下に設定される。すなわち、現像ローラー12の外周面20に規制ブレード13が接触した状態を再現するため、現像ローラー12の外周面20にプリズム5の平面50を押し当てるときの線圧が20N/m以上60N/m以下に設定される。
【0049】
そして、プリズム5の平面50を現像ローラー12の外周面20に50N/mの線圧で接触させたときのニップ面積に対する実接触面積の比率が求められる。ニップ面積は、ニップ幅とニップ長さとの積である。ここでのニップ幅は、現像ローラー12の周方向における現像ローラー12の外周面20とプリズム5の平面50との間の接触幅である。ニップ長さは、現像ローラー12の回転軸方向における現像ローラー12の外周面20とプリズム5の平面50との間の接触長さである。
【0050】
また、実接触面積は、現像ローラー12の外周面20とプリズム5の平面50とが実際に接触した面積である。すなわち、実接触面積は、プリズム5の平面50のうち凸部領域の面積である。なお、プリズム5の平面50を現像ローラー12の外周面20に50N/mの線圧で接触させたときのニップ面積に対する実接触面積の比率は「接触面積率」に相当し、以下の説明では単に接触面積率と称する。
【0051】
ここで、現像装置1のメーカーにより予め、現像ローラー12の外周面20に担持され搬送されるトナー搬送量の目標範囲(上限値と下限値)が実験的または経験的に設定される。なお、トナー搬送量とは、現像ローラー12の外周面20における単位面積あたりのトナー量である。たとえば、所定画像の現像を行い、その現像中の現像ローラー12の外周面20のうち規制ブレード13とのニップ位置よりも現像ローラー12の回転方向における下流側でトナーを採取し、採取対象領域の面積S(m)と採取トナー量M(g)とからトナー搬送量(M/S)が求められる。トナー搬送量が目標範囲から外れると、画質が低下する場合がある。
【0052】
そこで、トナー搬送量が目標範囲内となる接触面積率の目標範囲(上限値と下限値)が予め設定される。具体的には、接触面積率の目標範囲としては、10%以上20%以下に設定される。そして、現像ローラー12の製造工程では、現像ローラー12の外周面20にプリズム5の平面50を50N/mの線圧で接触させたときの接触面積率が10%以上20%以下となるよう現像ローラー12が製造される。なお、接触面積率の目標範囲を10%以上20%以下にすることでトナー搬送量が目標範囲内となることは、現像装置1のメーカーにより、実験的または経験的に予め求められる。
【0053】
本実施形態では、上記のようにして現像ローラー12が製造されることにより、現像ローラー12は、その外周面20にプリズム5の平面50を50N/mの線圧で接触させたときの接触面積率が10%以上20%以下となる凹凸を外周面20に有する。そして、現像ローラー12は、その外周面20に規制ブレード13が20N/m以上60N/m以下の線圧で接触した状態でトナーを担持して搬送する。
【0054】
現像ローラー12の外周面20の形成条件をプリズム5との接触面積率で規定することにより、現像ローラー12の性能がばらつくことを抑制できる。これにより、現像ローラー12のトナー搬送量を確実に制御できる。言い換えると、現像ローラー12のトナー搬送量が目標範囲から外れることを抑制できる。
【0055】
また、現像ローラー12の外周面20に接触させる透明部材としてプリズム5を用いることにより、容易に、現像ローラー12の外周面20の状態(表面形状)を測定できる。
【0056】
以下、上記実施形態の効果(現像ローラー12の性能ばらつきに関する効果)を確認するために行った実験について説明する。
【0057】
確認実験では、外径が16mmで、コーテイング層の表面(外周面)のMD-1硬度が40°以上50°以下の現像ローラーを準備した。また、先端に曲げ加工が施されたステンレス板を規制ブレードとして準備した。
【0058】
ここで、現像ローラーとして、外周面の形成条件(表面粗さ)をプリズムとの接触面積率で規定した現像ローラーを複数準備した。また、外周面の形成条件(表面粗さ)を十点平均粗さRzで規定した現像ローラーを複数準備した。
【0059】
そして、各現像ローラーについて、トナー搬送量を確認した。このとき、図3に示される状態となるよう規制ブレードの平坦面を現像ローラーの外周面に接触させた。また、現像ローラーの外周面に対する規制ブレードの線圧(規制圧)は20N/m以上60N/m以下とした。トナーは正帯電性で、粒径が8.3μmである。
【0060】
外周面の形成条件をプリズムとの接触面積率で規定した現像ローラーでの実験結果(現像ローラーの外周面とプリズムとの間の接触面積率とトナー搬送量との関係)を図6に示す。また、外周面の形成条件を十点平均粗さRzで規定した現像ローラーでの実験結果(現像ローラーの外周面の十点平均粗さRzとトナー搬送量との関係)を図7に示す。
【0061】
図6に示すように、プリズムとの接触面積率が10%以上20%以下となる凹凸を外周面に有する現像ローラーを用いた場合、トナー搬送量(M/S)が目標範囲内(上限値と下限値との間)になることを確認できた。一方で、現像ローラーの外周面とプリズムとの間の接触面積率が20%を超えた場合には、トナー搬送量(M/S)が目標範囲の下限値を下回る可能性があることを確認できた。このことから、プリズムとの接触面積率が10%以上20%以下となる凹凸を外周面に有する現像ローラーを用いることが好ましいと言える。
【0062】
また、図6および図7に示すように、外周面の形成条件をプリズムとの接触面積率で規定した現像ローラーでは、外周面の形成条件を十点平均粗さRzで規定した現像ローラーに比べて、ばらつきが少なくなることを確認できた。現像ローラーの外周面の形成条件を十点平均粗さRzで規定した場合には、ばらつきが大きいため、現像ローラーの外周面を規定通りに形成しても(たとえば、十点平均粗さRzが3μm~9μmとなるよう現像ローラーの外周面を形成しても)、トナー搬送量(M/S)が目標範囲を外れるという不都合が生じる可能性がある。このことから、外周面の形成条件をプリズムとの接触面積率で規定した現像ローラーを用いることにより、トナー搬送量(M/S)を確実に制御できると言える。
【0063】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 現像装置
5 プリズム(透明部材)
10 現像容器
12 現像ローラー
13 規制ブレード
20 外周面
100 画像形成装置
301 感光体ドラム(像担持体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7