IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図1
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図2
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図3
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図4
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図5
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図6
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図7
  • 特開-現像装置および画像形成装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183626
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】現像装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20231221BHJP
   G03G 9/093 20060101ALI20231221BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G03G15/08 235
G03G9/093
G03G9/097 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097232
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 諒
(72)【発明者】
【氏名】和田 実
(72)【発明者】
【氏名】大久保 尭洋
【テーマコード(参考)】
2H077
2H500
【Fターム(参考)】
2H077AB03
2H077AB14
2H077AC03
2H077AC04
2H077AD02
2H077AD06
2H077AD13
2H077AD17
2H077AD23
2H077AE03
2H077BA03
2H077EA15
2H077FA13
2H077FA16
2H077FA22
2H077FA26
2H500AA09
2H500EA03D
2H500EA60A
2H500EA62D
2H500FA07
(57)【要約】
【課題】規制ブレードにより高い帯電付与機能を持たせることでトナーの帯電不足を抑制する。
【解決手段】現像装置は、トナーからなる一成分現像剤を収容する現像容器と、外周面にトナーを担持して回転することにより、像担持体にトナーを供給する現像ローラーと、外周面に接触することにより、外周面に形成されるトナー層の層厚を調整する規制ブレードと、を備え、規制ブレードは、現像容器に一方端部が固定され、他方端部が外周面上に配置され、他方端部のうち先端よりも一方端部側の部分を外周面に接触させ、トナーは、トナーコアと、トナーコアを被覆するシェル層と、を有し、シェル層には、トナーとは逆極性の外添剤が外添されており、外添剤の遊離率は、25%以上65%以下である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーからなる一成分現像剤を収容する現像容器と、
前記現像容器に回転可能に支持されるとともに、像担持体と対向して配置され、外周面に凹凸を有し、前記外周面に前記トナーを担持して回転することにより、前記像担持体に前記トナーを供給する現像ローラーと、
前記外周面に接触することにより、前記外周面に形成されるトナー層の層厚を調整する規制ブレードと、を備え、
前記規制ブレードは、前記現像容器に一方端部が固定され、前記一方端部とは反対側の他方端部が前記外周面上に配置され、前記他方端部のうち先端よりも前記一方端部側の部分を前記外周面に接触させ、
前記トナーは、トナーコアと、前記トナーコアを被覆するシェル層と、を有し、
前記シェル層には、前記トナーとは逆極性の外添剤が外添されており、
前記外添剤の遊離率は、25%以上65%以下である、現像装置。
【請求項2】
前記現像ローラーの外周面の凹凸の平均間隔Smは、150μm以上である、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記トナーの水分散液を超音波処理する外添剤除去処理を行う前の前記トナーの外添剤粒子量を第1外添剤量A1とし、前記外添剤除去処理を行った後の前記トナーに残留する外添剤粒子量を第2外添剤量A2とするとき、前記外添剤の遊離率は、以下の式(1)により算出される、請求項1に記載の現像装置。
〔(A1-A2)/A1〕×100・・・(1)
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の現像装置を備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の現像装置は、現像ローラーを備える。現像ローラーは、外周面にトナーを担持して回転する。また、従来の現像装置は、現像ローラーの外周面に接触する規制ブレードを備える。現像ローラーの外周面に規制ブレードが接触することにより、層厚が均一なトナー層が現像ローラーの外周面に形成される。このような現像装置は、たとえば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-162774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、感光体の表層をトナーと逆極性とすることにより、感光体の表層に触れている間にトナーに帯電を付与する。しかし、感光体の表層にトナーと逆極性を持たせることは、感光体の帯電機能の阻害となり、帯電電流の増加およびそれに伴う放電生成物の増加など、別の問題が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、規制ブレードにより高い帯電付与機能を持たせることでトナーの帯電不足を抑制することが可能な現像装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の局面による現像装置は、トナーからなる一成分現像剤を収容する現像容器と、現像容器に回転可能に支持されるとともに、像担持体と対向して配置され、外周面に凹凸を有し、外周面にトナーを担持して回転することにより、像担持体にトナーを供給する現像ローラーと、外周面に接触することにより、外周面に形成されるトナー層の層厚を調整する規制ブレードと、を備える。規制ブレードは、現像容器に一方端部が固定され、一方端部とは反対側の他方端部が外周面上に配置され、他方端部のうち先端よりも一方端部側の部分を外周面に接触させる。トナーは、トナーコアと、トナーコアを被覆するシェル層と、を有する。シェル層には、トナーとは逆極性の外添剤が外添される。外添剤の遊離率は、25%以上65%以下である。
【0007】
本発明の第2の局面による画像形成装置は、上記現像装置を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成では、規制ブレードにより高い帯電付与機能を持たせることでトナーの帯電不足を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態による現像装置を備える画像形成装置の概略図である。
図2】実施形態による現像装置の概略図である。
図3】実施形態による現像装置の現像ローラーと規制ブレードとの接触位置の周辺の拡大図である。
図4】実施形態による現像装置に収容されるトナーの模式図である。
図5】実施形態の効果を確認するために行った実験結果を示すグラフ(印刷枚数とかぶり濃度との関係を示すグラフ)である。
図6】実施形態の効果を確認するために行った実験結果を示すグラフ(印刷枚数が1500枚に到達した時点でのかぶり濃度と外添剤の遊離率との関係を示すグラフ)である。
図7】実施形態の効果を確認するために行った実験結果を示すグラフ(印刷枚数と画像濃度との関係を示すグラフ)である。刷枚数と画像濃度との関係を示すグラフ)である。
図8】実施形態の効果を確認するために行った実験結果を示すグラフ(印刷枚数が1500枚に到達した時点での画像濃度と現像ローラーの粗さとの関係を示すグラフ)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態による現像装置を備える画像形成装置について、モノクロプリンターを例にとって説明する。
【0011】
<画像形成装置の全体構成>
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、現像装置1を備える。現像装置1は、画像(トナー像)を形成する。言い換えると、現像装置1は、静電潜像にトナーを供給して現像する。現像装置1の構成については、後に詳細に説明する。
【0012】
画像形成装置100には、給紙カセット200が着脱可能に装着される。給紙カセット200は、シート(図示せず)を収容する。画像形成装置100での印刷では、給紙カセット200内のシートが使用される。印刷で使用され得るシートとしては、コピー用紙、コート紙、OHPシート、厚紙、葉書およびトレーシングペーパーなどがある。
【0013】
給紙カセット200は、内部にリフト板201を有する。給紙カセット200内のシートは、リフト板201上に載置される。リフト板201は、一方端部(給紙方向上流側でありシート後端側)を支点とし、他方端部(給紙方向下流側でありシート前端側)を上下に振るように回動する。
【0014】
給紙カセット200の給紙方向下流側(シートの給紙口)には、給紙ローラー202が設けられる。リフト板201が上昇することにより、リフト板201上のシートが給紙ローラー202の外周面に接触する。給紙ローラー202は、シートが接触した状態で回転する。これにより、給紙カセット200からシートが送り出される。
【0015】
画像形成装置100は、画像形成部300を備える。画像形成部300は、給紙カセット200から送り出されるシートを受け入れる。画像形成部300は、トナー像を形成してシートに転写する。画像形成部300は、感光体ドラム301、転写ローラー302、帯電装置303および露光装置304を含む。感光体ドラム301は「像担持体」に相当する。なお、現像装置1は、画像形成部300の一構成要素である。
【0016】
感光体ドラム301は、回転可能に支持される。転写ローラー302は、感光体ドラム301の外周面に圧接し、感光体ドラム301との間で転写ニップを形成する。帯電装置303は、感光体ドラム301の外周面を帯電させる。露光装置304は、感光体ドラム301の外周面上に静電潜像を形成する。現像装置1は、感光体ドラム301の外周面上の静電潜像をトナー像に現像する。
【0017】
また、画像形成装置100は、定着部400を備える。定着部400は、定着ローラー401と加圧ローラー402とを含む。定着ローラー401は、ヒーターを内蔵する。加圧ローラー402は、定着ローラー401に圧接し、定着ローラー401との間で定着ニップを形成する。
【0018】
給紙カセット200から送り出されるシートは、転写ニップに進入する。シートが転写ニップを通過するとき、シートに対して画像が印刷される。具体的には、感光体ドラム301の外周面上のトナー像がシートに転写される。その後、シートは、定着ニップに進入し、加熱および加圧される。これにより、シートにトナー像が定着される。定着ニップを抜けた印刷済みのシートは、排出トレイETに排出される。
【0019】
<現像装置の構成>
図2に示すように、現像装置1は、非磁性一成分現像に向けた現像装置である。現像装置1は、現像容器10を備える。現像容器10は、トナーからなる一成分現像剤を収容する。具体的には、現像容器10は、支持部材110とカバー部材120とを含む。支持部材110とカバー部材120とを組み合わせることにより、内部に収容スペースを有する現像容器10が構成される。現像容器10の収容スペースにトナーが容される。
【0020】
現像容器10の収容スペースには、攪拌パドルSPが設けられる。攪拌パドルSPは、収容スペース内のトナーを攪拌する。なお、図示しないトナー補給装置により、トナーコンテナから現像容器10にトナーが補給される。
【0021】
現像容器10は、感光体ドラム301が配置される側に開口を有する。現像容器10の開口は、感光体ドラム301へのトナーの供給口となる。
【0022】
現像装置1は、供給ローラー11および現像ローラー12を備える。供給ローラー11および現像ローラー12は、この順番で、現像容器10の内部(すなわち、収容スペース)から外部に向かって並ぶ。現像ローラー12は、その外周面20が供給ローラー11の外周面と対向するよう配置される。また、現像ローラー12は、その外周面20が感光体ドラム301の外周面と対向するよう配置される。言い換えると、現像ローラー12は、供給ローラー11と感光体ドラム301との間に配置される。さらに言い換えると、供給ローラー11は、現像容器10の内部に配置され、現像ローラー12は、現像容器10の開口(トナーの供給口)に配置される。
【0023】
供給ローラー11は、支持部材110に回転可能に支持される。すなわち、供給ローラー11は、現像容器10に回転可能に支持される。供給ローラー11は、一方向(図2では、反時計回り方向)に回転する。また、供給ローラー11は、その外周面に収容スペース内のトナーを担持する。供給ローラー11は、外周面にトナーを担持して回転することにより、現像ローラー12にトナーを供給する。
【0024】
現像ローラー12は、感光体ドラム301に対して所定の圧力で押圧される。また、現像ローラー12は、支持部材110に回転可能に支持される。すなわち、現像ローラー12は、現像容器10に回転可能に支持される。現像ローラー12は、供給ローラー11と同方向(図2では、反時計回り方向)に回転する。供給ローラー11と現像ローラー12との対向位置では、現像ローラー12の外周面20の進行方向が供給ローラー11の外周面の進行方向に対して逆向きとなる。
【0025】
現像ローラー12は、供給ローラー11からトナーの供給を受け、外周面20にトナーを担持する。現像ローラー12は、外周面20にトナーを担持して回転することにより、感光体ドラム301にトナーを供給する。現像ローラー12から感光体ドラム301へのトナーの移動を効率的に行うため、現像ローラー12に対して所定の現像電圧を印加することが好ましい。
【0026】
現像ローラー12は、回転軸(符号省略)およびその回転軸に取り付けられるローラー部材(符号省略)を有する。ローラー部材は、回転軸と共に回転する。ローラー部材は、円筒状である。たとえば、ローラー部材は、シリコーンゴムなどの基材層の表面にウレタンコーティングを施した部材である。ローラー部材の外周面には、凹凸が形成される。すなわち、現像ローラー12は、その外周面20に凹凸を有する。現像ローラー12の外周面20には、トナー層が形成される。
【0027】
現像装置1は、規制ブレード13を備える。規制ブレード13は、板バネである。具体的には、規制ブレード13は、金属製の板状部材である。規制ブレード13は、薄板状であり、ステンレス板からなる。なお、規制ブレード13の構成材料は特に限定されない。
【0028】
規制ブレード13は、現像ローラー12の回転軸方向から見て、一方端部131が現像容器10に固定される。また、規制ブレード13は、現像ローラー12の回転軸方向から見て、現像容器10に対する固定箇所から現像ローラー12に向かって延び、一方端部131とは反対側の他方端部132が現像ローラー12の外周面20上に配置される。すなわち、一方端部131は固定端であり、他方端部132は自由端である。そして、規制ブレード13の他方端部132のうち、先端30(図3参照)よりも一方端部131側の部分が現像ローラー12の外周面20と接触する。
【0029】
規制ブレード13は、現像ローラー12と感光体ドラム301とが対向する位置よりも現像ローラー12の回転方向における上流側の位置で現像ローラー12の外周面20に接触する。規制ブレード13は、所定の線圧(規制圧)で現像ローラー12の外周面20に接触し、撓む。現像ローラー12の外周面20に対する規制ブレード13の接触状態を図3に示す。
【0030】
なお、規制ブレード13の他方端部132は、現像ローラー12の外周面20側とは反対側に曲げられる。言い換えると、規制ブレード13の他方端部132には、湾曲部が形成される。たとえば、他方端部132に形成される湾曲部の曲率半径は、0.1mm以上である。これにより、他方端部132の先端30は、現像ローラー12の外周面20側とは反対側に延びる。その結果、他方端部132の先端30は、現像ローラー12の外周面20には接触しない。規制ブレード13は、現像ローラー12の外周面20に対し、その先端30を接触させず、他方端部132のうち先端30よりも一方端部131側の部分を接触させる。
【0031】
現像ローラー12の外周面20に対して規制ブレード13を接触させることにより、現像ローラー12の外周面20にある余分なトナーが掻き取られる。その結果、現像ローラー12の外周面20に形成されるトナー層を均一な厚さに調整できる。規制ブレード13は、現像ローラー12の外周面20に接触することにより、現像ローラー12の外周面20に形成されるトナー層の層厚(すなわち、現像ローラー12の外周面20に担持されるトナー量)を調整する。現像ローラー12の外周面20上のトナー層が規制ブレード13を通過することで、規制ブレード13とトナー、および、現像ローラー12の外周面20とトナーとが摩擦帯電する。図3では、現像ローラー12の外周面20と規制ブレード13との間の現像ローラー12の周方向(回転方向)におけるニップ幅(接触幅)を幅Wで示す。
【0032】
図2に戻り、現像装置1は、シール部材14を備える。シール部材14は、現像ローラー12の外周面20に接触するよう支持部材110に固定される。シール部材14は、現像ローラー12の外周面20と支持部材110との隙間を塞ぐ。これにより、現像ローラー12の外周面20と支持部材110との隙間からのトナーの漏出を抑制できる。すなわち、現像容器10の内部から外部へのトナーの漏出を抑制できる。
【0033】
ここで、現像装置1による現像では、コアシェル構造のトナーが用いられる。コアシェル構造の模式図を図4に示す。図4では、トナーに符号50を付す。
【0034】
コアシェル構造のトナー50は、トナーコア51と、シェル層52と、を有する。シェル層52は、トナーコア51を被覆する。
【0035】
トナーコア51は、結着樹脂を含む。トナーコア51は、内添剤(たとえば、着色剤、離型剤、電荷制御剤および磁性紛)を含んでもよい。シェル層52としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の少なくとも一方が用いられてもよい。
【0036】
トナー50の表面には、外添剤(図示せず)が外添される。すなわち、シェル層52には、外添剤が外添される。外添剤の構成材料は、特に限定されない。たとえば、外添剤として、フッ素系樹脂の粒子を用いることができる。
【0037】
<外添剤の遊離率>
トナーの外添剤は、トナーの極性とは逆極性を有する。外添剤がナーから遊離し、現像ローラー12の外周面20および規制ブレード13などに外添剤が付着することにより、トナーの帯電性を上げることができる。この効果を得るには、外添剤の遊離率を適切に制御する必要がある。なお、外添剤の遊離率とは、トナーに外添されている外添剤の粒子量に対するトナーから遊離する外添剤の粒子量の比率を示す値である。言い換えると、外添剤の遊離率とは、トナーからどれだけ外添剤が遊離するかの度合いを示す値である。トナーに外添されている外添剤の粒子量に対するトナーから遊離する外添剤の粒子量の比率は百分率で示される。当該比率が高いほど、外添剤の遊離量が多く、当該比率が低いほど、外添剤の遊離量が少ない。
【0038】
外添剤の遊離率が低過ぎる場合には、規制ブレード13への外添剤の付着量が少なくなる。規制ブレード13への外添剤の付着量が少ない場合には、トナーの帯電性が低下し、かぶりが発生し易くなる。一方で、外添剤の遊離率が高過ぎる場合には、規制ブレード13への外添剤の付着量が多くなり、現像ローラー12の外周面20と規制ブレード13とのニップをトナーが通過し難くなる。この場合には、画像濃度(シートに転写されるトナー像の濃度)が低くなる。すなわち、外添剤の遊離率が高過ぎる場合および外添剤の遊離率が低過ぎる場合には、いずれも、シートに形成(印刷)される印刷画質が低下するという不都合が生じ得る。
【0039】
そこで、本実施形態では、規制ブレード13の他方端部132のうち先端30は現像ローラー12の外周面20に接触させずに先端30よりも一方端部131側の部分を現像ローラー12の外周面20に接触させる構成とされ、外添剤の遊離率が25%以上65%以下に設定される。これにより、規制ブレード13への外添剤の付着量が少な過ぎることに起因する画質低下(かぶりの発生)を抑制できる。また、規制ブレード13への外添剤の付着量が多過ぎることに起因する画質低下(画像濃度の低下)を抑制できる。すなわち、外添剤の遊離率を25%以上65%以下に設定することにより、規制ブレード13により高い帯電付与機能を持たせることができる。その結果、トナーの帯電不足を抑制できる。
【0040】
以下、本実施形態の効果を確認するために行った実験について説明する。
【0041】
確認実験では、図2に示す現像装置1を用いた。なお、規制ブレード13のうち他方端部132には、湾曲部の曲率半径が0.3mmとなるよう曲げ加工を施した。また、トナーの表面には、フッ素系樹脂の粒子を外添した。外添剤として、株式会社喜多村製の「KTL-500F」を用いた。そして、実施例1、実施例2、比較例および従来例のそれぞれについて、かぶり濃度および画像濃度を確認した。
【0042】
ここで、実施例1および2のそれぞれの外添剤の遊離率は互いに同じとした。比較例については、実施例1および2よりも外添剤の遊離率を高くした。従来例については、実施例1および2よりも外添剤の遊離率を低くした。
【0043】
まず、外添剤の遊離率の測定方法について説明する。
【0044】
外添剤の遊離率を測定するとき、イオン交換水100mlと10質量%のポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(トリトンX100、Acros Organics製)水溶液5.5mlとを200mlのガラス瓶に添加し、それで得られる混合液にトナー(外添剤が外添されたトナー)を5g添加した。そして、トナーが添加された混合液を30回攪拌し、1時間以上、静止させた。
【0045】
その後、トナーが添加された混合液を20回攪拌した。そして、超音波ホモジナイザーを用いて、ガラス瓶内の混合液に対して超音波エネルギーを1分間付与した。超音波ホモジナイザーは、SONICS&MATERIALS有限会社製の製品名「homogenizer(型式:VCX750、CV3)である。なお、混合液に対して超音波エネルギーを付与するとき、出力30%にダイヤルを設定し、以下の条件で測定を行った。
【0046】
振動時間:60秒連続
振幅:20W(30%)
振動開始温度:23±1.5℃
超音波振動子と容器底面との距離:10mm
【0047】
次に、ろ紙を用いて混合液を吸引ろ過し、イオン交換水で2回洗浄し、遊離した外添剤をろ過して除去する外添剤除去処理を行った後、トナーを乾燥させた。混合液をろ過するとき、アドバンテック東洋株式会社製のろ紙(商品名:定性ろ紙(No.2、110mm))を用いた。
【0048】
なお、外添剤除去処理(トナーの水分散液に超音波エネルギーを付与する超音波処理を含む)の前、外添剤除去処理を行う前のトナーの外添剤粒子量を蛍光X線法で定量した。また、外添剤除去処理の後、外添剤除去処理を行ったトナーに残留する外添剤粒子量を蛍光X線法で定量した。ここでは、便宜上、外添剤除去処理を行う前のトナーの外添剤粒子量を第1外添剤量と称し、外添剤除去処理を行った後のトナーの外添剤粒子量を第2外添剤量と称する。
【0049】
ここで、第1外添剤量をA1とし、第2外添剤量をA2とした場合、外添剤の遊離率(%)は、以下の式(1)に基づき求められる。
外添剤の遊離率=〔(A1-A2)/A1〕×100・・・(1)
式(1)で求められる値が外添剤の遊離率となる。
【0050】
確認実験では、表1に示すように、実施例1および2として、外添剤の遊離率が45%のトナーを用いた。比較例として、外添剤の遊離率が70%のトナーを用いた。従来例として、外添剤の遊離率が20%のトナーを用いた。また、現像ローラー12の外周面20の凹凸の平均間隔Smについては、実施例1、比較例および従来例では130μmとし、実施例2では180μmとした。
【0051】
【表1】
【0052】
そして、確認実験では、画像を印刷した用紙の非印字部の画像濃度D1および未印刷の用紙の画像濃度D2を濃度計で測定し、画像濃度D1から画像濃度D2を減じた値(=D1-D2)をかぶり濃度として求め、印刷枚数とかぶり濃度との関係を確認した。なお、かぶり濃度としては、狙い値(=0.01)以下であることが好ましい。図5は、印刷枚数とかぶり濃度との関係を確認した結果を示すグラフである。
【0053】
実施例1、実施例2および比較例では、印刷枚数が900枚に達しても、かぶり濃度が0.01以下であった。実施例1および2では、印刷枚数が1200枚に達しても、かぶり濃度が0.01以下であった。すなわち、実施例1および2では、印刷枚数が1200枚に達しても、かぶり濃度が高くなることを抑制できた。
【0054】
一方で、従来例では、印刷枚数が900枚に達して以降から、かぶり濃度が徐々に大きくなった。特に、従来例では、印刷枚数が1200枚に達すると、かぶり濃度が0.012となり、狙い値(=0.01)を超えた。
【0055】
これは、実施例1、実施例2および比較例では、トナーから遊離した外添剤が規制ブレード13に適切量付着したことにより、トナーの帯電性を上げることができたためと考えられる。一方で、従来例では、規制ブレード13への外添剤の付着量が少なかったため、実施例1、実施例2および比較例に比べて、トナーの帯電性が上がらなかったと考えられる。
【0056】
なお、印刷枚数が1500枚に達した時点では、かぶり濃度と外添剤の遊離率との関係が図6に示すようになる。これによると、印刷枚数が1500枚に達した時点では、外添剤の遊離率が25%よりも低い場合、かぶり濃度が狙い値(=0.01)を上回る。すなわち、外添剤の遊離率の下限値を25%とすることにより、印刷画質の経時的な低下を抑制できると言える。
【0057】
また、確認実験では、用紙に印刷した画像濃度を濃度計で測定し、印刷枚数と画像濃度との関係を確認した。なお、画像濃度としては、狙い値(=1.3)付近の値であることが好ましい。図7は、印刷枚数と画像濃度との関係を確認した結果を示すグラフである。
【0058】
実施例1および2では、画像濃度が経時的に低下することを抑制できた。なお、実施例1では、印刷枚数が300枚に達して以降に画像濃度が狙い値(=1.3)よりも低くなったが、その狙い値に対して大幅に低下することはなかった。言い換えると、実施例1では、印刷枚数が300枚に達して以降も、画像濃度が許容範囲に収まった。
【0059】
一方で、比較例では、画像濃度の低下が顕著であった。比較例では、印刷枚数が少ない時点から画像濃度が低下し、狙い値(=1.3)を大幅に下回った。
【0060】
これは、比較例では、外添剤の遊離率が70%と高かったため、現像ローラー12の外周面20と規制ブレード13とのニップでの外添剤の堆積量が多くなり過ぎたと考えられる。当該ニップに外添剤が堆積し過ぎると、当該ニップをトナーが通過し難くなるため、画像濃度の低下につながる。これにより、外添剤の遊離率を70%よりも低くすることにより、画像濃度が経時的に低下することを抑制できると言える。具体的には、外添剤の遊離率を65%以下とすることにより、確実に、画像濃度が経時的に低下することを抑制できる。
【0061】
これらの結果から、外添剤の遊離率を25%以上65%以下とすることにより、印刷画質の低下を抑制できることが確認できた。言い換えると、外添剤の遊離率を25%以上65%以下とすることにより、がぶり濃度が高くなることを抑制でき、かつ、画像濃度が低下することを抑制できることが確認できた。
【0062】
また、印刷枚数が1500枚に達した時点では、現像ローラー12の外周面20の凹凸の平均間隔Smと画像濃度との関係が図8に示すようになる。これによると、印刷枚数が1500枚に達した時点では、平均間隔Smが150μmを下回る場合、画像濃度が狙い値(=1.3)を下回る。すなわち、平均間隔Smの下限値を150μmとすることにより、印刷画像が経時的に低下することを抑制できた。
【0063】
これは、平均間隔Smを150μm以上とすることにより、現像ローラー12の外周面20と規制ブレード13とのニップにまで外添剤が到達することを抑制できたためと考えられる。このことから、平均間隔Smを150μm以上とすることにより、規制ブレード13への外添剤の付着量が多くなり過ぎることを抑制できると考えられる。
【0064】
この結果から、現像ローラー12の外周面20の凹凸の平均間隔Smを150μm以上とすることにより、印刷画質の低下をより抑制できることが確認できた。言い換えると、外添剤の遊離率が25%以上65%以下である構成におい、平均間隔Smを150μm以上とすることにより、画像濃度が低下することを抑制できることが確認できた。
【0065】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 現像装置
10 現像容器
12 現像ローラー
13 規制ブレード
20 外周面
30 先端
100 画像形成装置
131 一方端部
132 他方端部
301 感光体ドラム(像担持体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8