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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183627
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/08 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B43K24/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097234
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【弁護士】
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】田島 聡之
(72)【発明者】
【氏名】神山 武之
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA01
2C353HA09
2C353HC04
2C353HC16
2C353HG03
2C353HJ07
(57)【要約】
【課題】「使用済」の筆記具の表示を誤って「消毒済」としてしまう事態を回避できる表示変更式の筆記具を提供する。
【解決手段】ペン芯の出没機構に連動して軸筒の窓孔の表示を変更する表示変更機構と、ペン芯を突出状態でロックするロック機構と、前記ロック機構を解除するロック解除部とを有する筆記具である。ロック解除部を構成するロック片41を、ロック状態において指先が入らない窪んだ位置に設けることにより、使用者が誤ってロックを解除して「消毒済」としてしまう事態を防止した。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン芯の出没機構に連動して軸筒の窓孔の表示を変更する表示変更機構と、ペン芯を突出状態でロックするロック機構と、前記ロック機構を解除するロック解除部とを有する筆記具であって、前記ロック解除部は、ロック状態において指先が入らない窪んだ位置に設けられていることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記ロック機構が、軸筒に設けた孔部と、筆記具レフィルと連動して前記孔部に係止されるロック解除部としてのロック片とからなり、前記ロック片はロック状態において前記孔部の外表面よりも内方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記孔部の径が、前記ペン芯の径よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン芯の出没機構に連動して軸筒の窓穴の表示を変更する表示変更機構を備えた筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペン芯の出没機構に連動して軸筒の窓穴の表示を変更する表示変更機構を備えた筆記具は、特許文献1-3に示すように従来から知られている。これらは、軸筒の内部にペン芯の出没機構に連動して動く中筒を設け、中筒に印刷した表示が軸筒の窓孔から見える構造としたものである。
【0003】
一方、役所の窓口に備え付けのボールペンなどの筆記具は、昨今の衛生上の観点から、使用した後は「使用済」のペン立てに入れ、消毒済みのものは「消毒済」のペン立てに分けて入れていることが多い。この区別をより明確にするために、筆記具の表示変更機構を利用することが考えられる。すなわち、ペン芯を突出させて使用状態とすると「使用済」の表示が現れ、消毒した後にペン芯を後退させて「消毒済」の表示に切り替えることが考えられる。
【0004】
しかし従来の表示変更機構を備えた筆記具は、使用者がペン芯を容易に出没できる構造であるから、「使用済」から「消毒済」に容易に切り替えができてしまう。そのため、使用者が使用済みの筆記具を無意識に「消毒済」に戻してしまい、その結果、使用済みの筆記具を不特定多数の人が使用する状況が発生するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62-80685号公報
【特許文献2】実開昭50-37635号公報
【特許文献3】実開昭54-64527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、使用済みの筆記具の表示を誤って消毒済みとしてしまう事態を回避できる新規な筆記具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、ペン芯の出没機構に連動して軸筒の窓孔の表示を変更する表示変更機構と、ペン芯を突出状態でロックするロック機構と、前記ロック機構を解除するロック解除部とを有する筆記具であって、前記ロック解除部は、ロック状態において指先が入らない窪んだ位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
なお、前記ロック機構が、軸筒に設けた孔部と、筆記具レフィルと連動して前記孔部に係止されるロック解除部としてのロック片とからなり、前記ロック片はロック状態において前記孔部の外表面よりも内方に位置していることが好ましい。また、前記孔部の径が、前記ペン芯の径よりも小さいことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の筆記具は、ロック解除部をロック状態において指先が入らない窪んだ位置に設けたので、使用者が誤ってロックを解除してしまうことがない。しかも消毒処理を行った後に細い棒状部材を用いてロックを解除することはできるから、再使用が可能であって、使い捨てとする必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態の筆記具のペン芯後退状態を示す平面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】第1の実施形態の筆記具のペン芯突出状態を示す平面図である。
図4図3のB-B断面図である。
図5】回転筒の平面図とそのC-C断面図である。
図6】ノック棒の正面図である。
図7】第2の実施形態の筆記具のペン芯後退状態を示す平面図である。
図8図8のD-D断面図である。
図9】第2の実施形態の筆記具のペン芯突出状態を示す平面図である。
図10図9のE-E断面図である。
図11】第2の実施形態のノック体及びノック棒の平面図である。
図12図11のF-F断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態の基本構造)
先ず、第1の実施形態の筆記具の基本構造を説明する。図1図6に示す第1の実施形態は、ノック・回転式の筆記具であり、図1はその平面図、図2はそのA-A断面図である。図1図2において、10は軸筒であり、その先端側部には先口11が螺着されている。軸筒10は先口11に近いグリップ部12は細径であるが後方部13は太径であって、それらの中間部はテーパ状の変径部14となっている。軸筒10の後端側部にはクリップ19が設けられている。
【0012】
軸筒10の内部中心には、筆記具レフィル15が内装されている。この実施形態では筆記具レフィル15はボールペン筆記具レフィルであり、その先端のペン芯16は先口11の中心孔17に挿入されている。先口11の後部には円筒状のペン軸ホルダー18が形成され、筆記具レフィル15を出没自在に支持している。
【0013】
20は軸筒10の内部をスライドすることができるノック体である。ノック体20は中空の先端側部21と中実の後端側部22とからなる。筆記具レフィル15の後端はノック体20の後端側部22の内部に密に挿入されており、筆記具レフィル15はノック体20とともに出没するようになっている。
【0014】
ノック体20の先端側部21の内部空間24には、コイルスプリング25が収納されている。コイルスプリング25の先端はペン軸ホルダー18に密着し、後端は内部空間24の後壁に密着している。このコイルスプリング25の力により、筆記具レフィル15及びノック体20は常に後方に弾発されている。
【0015】
ノック体20の後端側部22の外周には、表示回転筒30が配置されている。表示回転筒30の先端は軸筒10の段部23に接しており、表示回転筒30の後端は軸筒10の後部に挿入された後部キャップ35に接している。このため表示回転筒30は軸方向に移動することはなく、軸筒10の内部の一定位置で回転のみを行う。表示回転筒30の外周面には「使用済」、「消毒済」の表示部36、37が形成されている。この実施形態では表示回転筒30の上下側面に「消毒済」の表示部37が形成され、左右側面に「使用済」の表示部36が形成されている。軸筒10の後方部13の上下面には表示部が見えるように表示窓38が凹設されているが、この部分を透明としても差し支えない。
【0016】
図5に示すように、表示回転筒30の先端側と後端側の内面には、V字状の溝カム31、32が形成されている。これらは表示回転筒30の肉厚の約半分の深さを有し、軸に対して傾斜したカム面33、34を備えている。この実施形態では表示回転筒30は90°回転型であり、表示回転筒30の端面における第1辺と第2辺の位置は、90°離れている。これらの溝カム31、32の作用については後述する。
【0017】
図1図2に示すように、軸筒10の後端にはノック棒40が設けられている。ノック棒40の形状を図6に示す。ノック棒40は後部キャップ35を貫通してノック体20の後端側部22に接している。このためノック棒40を押し込むことにより、軸筒10の内部でノック体20と筆記具レフィル15を移動させ、図3図4に示すようにペン芯16を先口11から突出させた筆記可能な状態とすることができる。
【0018】
(ロック機構)
筆記具レフィル15を筆記可能な突出位置に保持するためのロック機構は、図4に示すようにノック体20の先端側部21に設けられたロック片41と、軸筒10のテーパ状の変径部14に形成された孔部42とからなる。図2に示すようにノック体20が後退した状態では、ロック解除部としてのロック片41は軸筒10の太径の後方部13の内部にある。しかし図4のようにノック体20が先端側に押し出されると、ノック体20のロック片41は軸筒10の孔部42に嵌まって係止され、ペン芯16を突出状態でロックする。なお、ロック片41が図2に示す位置と図4に示す位置との間で弾性的に移動できるように、ロック片41の周囲には切欠き43が形成されている。
【0019】
(ロック解除部)
上記したロック解除部としてのロック片41は、ロック状態において指先が入らない窪んだ位置に設けられており、孔部42の外表面よりも内方に位置している。ロック解除は孔部42の外側からロック片41を内側に押し込み、両者の係止を解除することによって行われる。本実施形態において孔部の形状は1辺が3mmの略正方形とし、指先が入らない程度であれば適宜変更可能であり、1辺の長さは1mmから5mmが好ましく、1mmから3mmがより好ましい。尚、孔部の形状は丸型に変更可能であり丸型の場合も同様、孔部の径は1mmから5mmが好ましく、1mmから3mmがより好ましい。
【0020】
このように本発明の筆記具はロック片41を窪んだ位置に設け、ロック解除が無意識にまたは不用意には行えない構造とした。ロック解除を行うには細い棒でロック片41を内側に押し込む必要がある。孔部42の径をペン芯16の径よりも小さくしておけば、他の筆記着を用いて簡単にロック解除を行うことができなくなる。細い棒などを用いてロック片41を内側に押し込みロック解除を行えば、コイルスプリング25の弾発力により、筆記具レフィル15及びノック体20は図1図2に示す位置まで後退する。
【0021】
(表示変更機構)
前記したように、表示回転筒30の先端側と後端側の内面には、V字状の溝カム31、32が形成されており、図1に示すように先端側の溝カム31には、ノック体20の後端側筒部22の外周に突設された第1突起44が嵌まっている。また後端側の溝カム32には、ノック棒40の外周に突設された第2突起45が嵌まっている。次に表示変更機構の動きを説明する。
【0022】
図1の状態においては、第1突起44は表示回転筒30の溝カム31の後部位置(図5中に点Aとして示す)にあり、第2突起45は表示回転筒30の溝カム32の後部位置(図5中に点Bとして示す)にある。この状態からノック棒40を図4の位置まで前方に押し込むと、図6に示すようにノック棒40の第2突起45が溝カム32の傾斜したカム面34を押圧しながら、点Dに移動する。このため、表示回転筒30は先端側から見て時計方向に90°回転する。なおこれとともに第1突起44も点Aから前方に移動するが、表示回転筒30が回転するため第1突起44は点Aから点Cに移動することとなる。これが図4に示す筆記可能なロック状態である。
【0023】
次に、図3図4のロック状態を解除すると、ノック体20はコイルスプリング25の弾発力により図1図2の位置まで後退する。このとき、ノック体20の第1突起44は図5に示す点Cから点Aまで戻るのであるが、その行程において溝カム31のカム面33を押圧するので、表示回転筒30は逆方向に90°回転する。このようにして、ノック棒40を押し込むときに表示回転筒30は90°回転し、ロックを解除したとき逆方向に90°回転して元の位置に戻る。
【0024】
本発明の筆記具は、上記した表示回転筒30の往復回転を利用して、表示を変更する。このため図5に示すように表示回転筒30の外周面に「使用済」と「消毒済」の表示部36、37を90°間隔で形成しておき、軸筒10の表示窓38から見えるようにしておく。このように構成することにより、ノック棒40を押し込んで筆記可能な状態とすると「使用済」の表示部36が表示され、ロック状態を解除すると「消毒済」の表示部37が表示されるようにすることができる。
【0025】
なお、この第1の実施形態では90°回転型の溝カム31、32を用いたので表示回転筒30は90°回転するが、回転角度はこれに限定されるものではなく、例えば120°回転型とすることもできる。その場合は「使用済」と「消毒済」の表示部36、37も120°間隔で形成しておけばよい。
【0026】
(効果)
上記したように、この筆記具は「使用済」と「消毒済」の表示部36、37が交互に表示されるものであるが、ロック解除部のロック片41はロック状態において指先が入らない窪んだ位置に設けられている。管理者が消毒を行った後にロック解除を行うには、孔部42の外側から細い棒でロック片41を内側に押し込む。このため、使用者が無意識にロックを解除してしまうことがなくなり、使用済みの筆記具を不特定多数の人が使用してしまう危険を防止することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
図7図12に示す第2の実施形態は、表示部を回転させないノック・ロック式の筆記具である。この第2の実施形態は第1の実施形態の表示回転筒30をなくし、押し込みのストロークを大きくしたものである。なお、第1の実施形態と共通する部材については共通する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0028】
図8に示すように、軸筒10の内部に先口11、筆記具レフィル15、ノック体50が収納されていることは第1の実施形態と同様であるが、ノック体50は先端側部51と、後端側部52とからなるシンプルな形状となっている。ノック体50の内部空間24にはコイルスプリング25が収納され、ノック体50を常に後方に弾発している点は第1の実施形態と同様である。
【0029】
図8図10に示すように、ノック体50の先端側部51の後端にはロック片53が設けられており、軸筒10の表面に設けた孔部42に前記ロック片が篏合したロック状態において、ロック解除部としての前記ロック片は孔部42の外表面より内方に位置している。ノック棒60は第1の実施形態のノック棒40よりも長く、その押し込みストロークも大きくなっている。またノック棒60の先端は、ノック体50の後端側部52と直接接している。
【0030】
図11図12に示すように、第2の実施形態ではノック棒60の筒部61の上下表面に、表示部62、63が形成されている。これらの表示部62、63は軸方向の前後位置にあり、先端側が「消毒済」の表示部62であり、後方側が「使用済」の表示部63である。図7図9に示すように、軸筒10の後方部13には表示窓38が形成されている。
【0031】
この第2の実施形態では、図7図8に示す状態では筆記具レフィル15とノック体50はコイルスプリング25の弾発力により後退した位置にあり、「消毒済」の表示部62が見えている。しかしノック棒60を図9図10のように大きく押し込むと、筆記具レフィル15とノック体50は先端側に移動し、ロック片53が孔部42に嵌まって筆記可能状態でロックされるとともに、「使用済」の表示部63が表示される。この第2の実施形態も、「使用済」と「消毒済」の表示部が交互に表示されるものであるが、ロック解除部のロック片41はロック状態において指先が入らない窪んだ位置に設けられているため、使用者が無意識にロックを解除してしまうことがなくなり、使用済みの筆記具を不特定多数の人が使用してしまう危険を防止することができる。
【0032】
以上に説明した各実施形態では、ロック解除部を軸筒の変径部14の内側に形成した。しかしロック解除部はロック状態において指先が入らない窪んだ位置に設ければよく、必ずしも軸筒の変径部14に限定されるものではない。
【0033】
以上に説明したように、本発明の筆記具は「使用済」と「消毒済」の表示ができるうえ、使用者が無意識にロックを解除してしまうことがなくなり、使用済みの筆記具を不特定多数の人が使用してしまう危険を防止することができる。また、消毒後に「消毒済」の表示に切り替え可能であるから、筆記具を使い捨てにする無駄も防止することができるなど、多くの利点がある。
【符号の説明】
【0034】
10 軸筒
11 先口
12 グリップ部
13 後方部
14 変径部
15 筆記具レフィル
16 ペン芯
17 中心孔
18 ペン軸ホルダー
19 クリップ
20 ノック体(第1の実施形態)
21 先端側部
22 後端側部
23 段部
24 内部空間
25 コイルスプリング
30 表示回転筒
31 溝カム
32 溝カム
33 傾斜したカム面
34 傾斜したカム面
35 後部キャップ
36 表示部
37 表示部
38 表示窓
40 ノック棒
41 ロック片
42 孔部
43 切欠き
44 第1突起
45 第2突起
50 ノック体(第2の実施形態)
51 先端側部
52 後端側部
53 ロック片
60 ノック棒
61 筒部
62 表示部
63 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12