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特開2023-183632積層体及びその製造方法、並びに、包装袋
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183632
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法、並びに、包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20231221BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231221BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097244
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】北原 吏里
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮太
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E064BA26
3E064BB03
3E064BC01
3E064BC08
3E064BC18
3E086AA23
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB62
3E086DA08
4F100AK05A
4F100AK06D
4F100AK51C
4F100AK51G
4F100AK63D
4F100AT00
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA15
4F100CB02C
4F100CB02E
4F100CB02G
4F100EC182
4F100EC18C
4F100EC18E
4F100EC18G
4F100GB15
4F100HB31B
4F100JD03
4F100JK01
4F100JK06
4F100JL01
4F100JL16
(57)【要約】
【課題】印刷絵柄の寸法安定性及びラミネート強度が良好である積層体を提供すること。
【解決手段】基材層と、印刷層と、第1の接着剤層と、シーラント層と、がこの順で積層された構造を有し、基材層が無延伸ポリエチレンフィルムから構成されており、第1の接着剤層が無溶剤型接着剤を用いて形成された層であり、積層体に占めるポリエチレンの割合が90質量%以上である、積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、印刷層と、第1の接着剤層と、シーラント層と、がこの順で積層された構造を有し、
前記基材層が無延伸ポリエチレンフィルムから構成されており、
前記第1の接着剤層が無溶剤型接着剤を用いて形成された層であり、
積層体に占めるポリエチレンの割合が90質量%以上である、積層体。
【請求項2】
前記基材層が高密度ポリエチレン又は中密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記シーラント層が低密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材層は、70℃の温度環境下で100N/mの張力をかけて引張った場合に、引張方向に3%以上伸びる、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
溶剤含有量が5mg/m以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記無溶剤型接着剤がアジピン酸とイソフタル酸とを含むウレタン系接着剤である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記無溶剤型接着剤がグリシドキシアルキルアルコキシシランを含まない、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記シーラント層が無延伸ポリエチレンフィルムから構成されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
前記基材層と、前記印刷層と、前記第1の接着剤層と、中間層と、第2の接着剤層と、前記シーラント層と、がこの順で積層された構造を有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
前記第2の接着剤層が、ガスバリア性接着剤を用いて形成されたガスバリア性接着剤層である、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記第1の接着剤層と前記シーラント層との間に無機酸化物層を備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の積層体を製袋してなる包装袋。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の積層体の製造方法であって、
前記基材層上にインキを用いた印刷法により前記印刷層を形成して印刷基材を得る印刷工程と、
前記印刷基材と、前記シーラント層を含む積層フィルム又は前記シーラント層とを、前記無溶剤型接着剤を用いて貼り合わせる貼合工程と、
を有する積層体の製造方法。
【請求項14】
前記貼合工程において、前記無溶剤型接着剤の加熱温度を、該加熱温度における前記無溶剤型接着剤の粘度が200~2000mPa・sとなるように、50~90℃の範囲内で設定する、請求項13に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体及びその製造方法、並びに、包装袋に関する。より詳しくは、本開示は、材料のリサイクル適性に優れる環境負荷の小さな積層体及びその製造方法、並びに、包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋は、包装する内容物の性質、内容物の量、内容物の変質を防ぐための後処理、包装袋を運搬する形態、包装袋を開封する方法、廃棄する方法などによって、さまざまな素材が組み合わせて用いられている。
【0003】
たとえば、積層したフィルムを用いるフレキシブルパッケージの包装袋においては、包装袋の機械的強度を得るためにポリプロピレンやポリエステルなどの二軸延伸フィルムを用い、包装袋として内容物を封止するためにポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体などをヒートシール材料とするなどの組み合わせにより用いられている。また、内容物の劣化を抑制するために、アルミ箔や、エチレンビニルアルコール共重合体を積層するなども行われている。
【0004】
上記の機能分離した各種素材を用いた積層体は、内容物の包装から、輸送、保管、開封などの各過程での適性に重点をおいて設計されたものである。しかしながら、近年の環境問題への意識の高まりから、各種製品の省資源、リサイクル適性などの機能に重点がおかれるようになり、包装袋に用いられる積層体にも同様の機能が求められてきている。一般に、包装材料に含まれる主要な樹脂の割合が90質量%以上であるとリサイクル性が高いと考えられているが、従来の包装材料の多くは複数の樹脂材料や場合により紙、金属材料を含んで構成されており、かつこの基準を満たしていないため、リサイクルされていないのが現状である。
【0005】
そこで、特許文献1には、基材と、接着層と、ヒートシール層とを備えた積層体において、基材及びヒートシール層をポリエチレンから構成することが記載されている。基材及びヒートシール層を同一材料で構成することにより、上記リサイクル性の基準をクリアしやすくなる。また、特許文献1では、基材として延伸ポリエチレンフィルムを使用することが提案されており、それによって印刷適性を向上できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-55157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
積層体の基材層としてポリエチレンフィルムを用いた場合、素材の特徴である柔らかく熱融着しやすい性質に起因して、熱乾燥を伴う積層体製造工程において基材層が熱変形しやすい。基材層が熱変形すると、基材層に印刷した絵柄の寸法に伸び縮みが生じ、外観不良や、アイマークがずれて製袋ができないという不具合が発生することとなる。
【0008】
また、基材層に延伸ポリエチレンフィルムを用いた場合、基材層の伸び縮みを抑制しやすいが、基材層と中間層やシーラント層(ヒートシール層)との密着性が不十分であり、包装袋を形成した場合に破袋しやすいという問題がある。
【0009】
本開示は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、印刷絵柄の寸法安定性及びラミネート強度が良好である積層体及びその製造方法、並びに、上記積層体を用いた包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示は、以下の積層体及びその製造方法、並びに、包装袋を提供する。
【0011】
[1]基材層と、印刷層と、第1の接着剤層と、シーラント層と、がこの順で積層された構造を有し、上記基材層が無延伸ポリエチレンフィルムから構成されており、上記第1の接着剤層が無溶剤型接着剤を用いて形成された層であり、積層体に占めるポリエチレンの割合が90質量%以上である、積層体。
[2]上記基材層が高密度ポリエチレン又は中密度ポリエチレンを含む、上記[1]に記載の積層体。
[3]上記シーラント層が低密度ポリエチレンを含む、上記[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]上記基材層は、70℃の温度環境下で100N/mの張力をかけて引張った場合に、引張方向に3%以上伸びる、上記[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]溶剤含有量が5mg/m以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]上記無溶剤型接着剤がアジピン酸とイソフタル酸とを含むウレタン系接着剤である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]上記無溶剤型接着剤がグリシドキシアルキルアルコキシシランを含まない、上記[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
[8]上記シーラント層が無延伸ポリエチレンフィルムから構成されている、上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[9]上記基材層と、上記印刷層と、上記第1の接着剤層と、中間層と、第2の接着剤層と、上記シーラント層と、がこの順で積層された構造を有する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の積層体。
[10]上記第2の接着剤層が、ガスバリア性接着剤を用いて形成されたガスバリア性接着剤層である、上記[9]に記載の積層体。
[11]上記第1の接着剤層と上記シーラント層との間に無機酸化物層を備える、上記[1]~[10]のいずれかに記載の積層体。
[12]上記[1]~[11]のいずれかに記載の積層体を製袋してなる包装袋。
[13]上記[1]~[11]のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、上記基材層上にインキを用いた印刷法により上記印刷層を形成して印刷基材を得る印刷工程と、上記印刷基材と、上記シーラント層を含む積層フィルム又は上記シーラント層とを、上記無溶剤型接着剤を用いて貼り合わせる貼合工程と、を有する積層体の製造方法。
[14]上記貼合工程において、上記無溶剤型接着剤の加熱温度を、該加熱温度における上記無溶剤型接着剤の粘度が200~2000mPa・sとなるように、50~90℃の範囲内で設定する、上記[13]に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、印刷絵柄の寸法安定性及びラミネート強度が良好である積層体及びその製造方法、並びに、上記積層体を用いた包装袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の積層体の一実施形態を示す断面模式図である。
図2】本開示の積層体の一実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、場合により図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<積層体>
本実施形態に係る積層体は、基材層と、印刷層と、第1の接着剤層と、シーラント層と、がこの順で積層された構造を有し、基材層が無延伸ポリエチレンフィルムから構成されており、第1の接着剤層が無溶剤型接着剤を用いて形成された層であり、積層体に占めるポリエチレンの割合が90質量%以上である、積層体である。上記積層体によれば、基材層として無延伸ポリエチレンフィルムを用いることで、延伸ポリエチレンフィルムを用いた場合と比較して、基材層とシーラント層又は中間層との密着性が向上し、良好なラミネート強度が得られる。また、上記積層体によれば、無溶剤型接着剤を用いて第1の接着剤層が形成されていることで、第1の接着剤層形成時に溶剤型接着剤を用いた場合のように溶剤を除去するための熱乾燥(オーブン乾燥等)が施されず、且つ、第1の接着剤層に残存溶剤が存在しない。そのため、基材層として無延伸ポリエチレンフィルムを用いた場合であっても、基材層の伸び縮みを抑制することができ、印刷絵柄の良好な寸法安定性を得ることができる。また、第1の接着剤層に残存溶剤が存在しないことで、包装袋にした後、溶剤による内容物の変質を防ぎ、においが内容物に移らず、食品の場合は風味を損なうことがない。更に、上記構成を有する積層体は柔軟性に優れ、良好な耐圧強度を得ることができる。
【0016】
図1及び図2はそれぞれ、本開示の積層体の一実施形態を示す断面模式図である。図1に示す積層体1は、基材層10と、印刷層12と、第1の接着剤層40と、シーラント層30とを備える。図2に示す積層体2は、基材層10と、印刷層12と、第1の接着剤層40と、中間層20と、アンカーコート層13と、無機酸化物層14と、第2の接着剤層50と、シーラント層30とを備える。ここで、基材層10は、無延伸ポリエチレンフィルムから構成されている。また、第1の接着剤層40は、無溶剤型接着剤を用いて形成された層である。また、積層体に占めるポリエチレンの割合は、90質量%以上である。以下、各層について説明する。
【0017】
(基材層)
基材層10は、無延伸ポリエチレンフィルムから構成された層である。基材層10は、積層体1,2を用いて包装袋を形成する際に外面となる部分である。
【0018】
基材層10としては、強度及び耐熱性の観点から、高密度ポリエチレン(密度0.94g/cm以上)、又は、中密度ポリエチレン(密度0.925~0.945g/cm)からなるフィルムを用いることができる。これらの材料は、石油由来からなるものでも、植物由来からなるものでもよく、これらの混合物であってもよい。また、基材層10の表面には、コロナ処理、大気圧プラズマ処理などの乾式の表面処理により易接着処理を施すことができる。また、密度が異なるポリエチレンを共押出法により押出した多層構造の無延伸ポリエチレンフィルムを基材層10として用いることも可能である。
【0019】
ここで、無延伸ポリエチレンフィルムとは、成膜時に延伸処理が行われず、ランダムに折りたたまれたポリエチレン分子鎖により構成された10~100μm程度の球状の結晶(球晶)が、非結晶性分子で繋ぎあった構造となっているポリエチレンフィルムをいう。無延伸ポリエチレンフィルムは、強い衝撃を受けた場合、球晶が破壊されて、分子鎖が配向して延伸することにより、フィルム自体が破れることを防止できるという性質を有する。そのため、基材層10及びシーラント層30として無延伸ポリエチレンフィルムを積層した積層体、又は、基材層10、中間層20及びシーラント層30として無延伸ポリエチレンフィルムを積層した積層体で作製された包装体(包装袋を作製し、内容物を充填して密封したもの)は、落袋強度に優れるという特徴がある。
【0020】
基材層10の厚さは、10μm以上50μm以下であることが好ましく、12μm以上35μm以下であることがより好ましい。基材層10の厚さを10μm以上とすることにより、積層体1,2の強度を向上できる。基材層10の厚さを50μm以下とすることにより、積層体1,2の加工適性を向上できる。
【0021】
基材層10は、ポリエチレンをTダイ法又はインフレーション法などにより製膜することで作製できる。Tダイ法により基材層10を作製する場合、ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、3g/10分以上、20g/10分以下であることが好ましい。MFRを3g/10分以上とすることにより、積層体の加工適性を向上することができる。また、MFRを20g/10分以下とすることにより、作製された基材層10が破断してしまうことを防止できる。
【0022】
インフレーション法により基材層10を作製する場合、ポリエチレンのMFRは、0.5g/10分以上、5g/10分以下であることが好ましい。MFRを0.5g/10分以上とすることにより、積層体の加工適性を向上することができる。また、MFRを5g/10分以下とすることにより、製膜性を向上することができる。
【0023】
基材層10として用いられる高密度ポリエチレン及び中密度ポリエチレンの融点は、概ね120℃から140℃である。一方、後述するシーラント層30として用いられる低密度ポリエチレンの融点は、概ね90℃から120℃である。これら基材層10及びシーラント層30の積層体をヒートシールするために、ヒートシール機の治具であるヒートシールバーは130℃から140℃程度に加熱され、基材層10や後述する中間層20を通してシーラント層30に熱が伝えられ、熱溶着される。
【0024】
基材層10は、70℃の温度環境下で100N/mの張力をかけて引張った場合に、引張方向に3%以上伸びることが好ましい。基材層10は無延伸ポリエチレンフィルムから構成されることから、上記条件で引張った際に3%以上の伸び率を有することができる。上記伸び率を有する基材層は、伸び率が3%未満である延伸ポリエチレンフィルムから構成された基材層と比較して、シーラント層30又は中間層20との密着性に優れる。基材層10の伸び率は3%以上であることが好ましいが、4%以上、又は、4.5%以上であってもよい。また、基材層10の伸び率は、10%以下、又は、8%以下であってもよい。基材層10の伸び率の測定は、例えば熱分析装置を用いて行うことができる。
【0025】
(印刷層)
印刷層12は、基材層10の第1の接着剤層40側の表面に形成される。絵柄の形成方法は、特に限定されることなく通常のグラビア印刷やフレキソ印刷などの印刷法により、それぞれに応じたインキを用いて形成することができる。インキとしては、溶剤系インキと、水系インキとがあるが、環境面から水系インキを用いることが好ましい。また、基材層10の表面には、印刷層12の密着性を向上させるために、コロナ処理やプラズマ処理などの表面処理を行ってもよい。
【0026】
(第1の接着剤層)
第1の接着剤層40は無溶剤型接着剤を用いて形成された層であり、基材層10とシーラント層30又は中間層20との間に設けられて両者を接合する。無溶剤型接着剤としては、1液硬化型又は2液硬化型のいずれの接着剤も使用できる。無溶剤型接着剤としては、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられるが、耐衝撃性の観点から、ウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のウレタン系接着剤が特に好ましい。
【0027】
2液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤は、主剤であるポリオール成分と、硬化剤であるポリイソシアネート成分とを含む。
【0028】
ポリオール成分は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリウレタンポリオールからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物であってよい。
【0029】
ポリエステルポリオールは、例えば、多価カルボン酸、多価カルボン酸のジアルキルエステル及びこれらの混合物と、グリコール系溶媒とのエステル反応生成物であってよい。多価カルボン酸は、例えば、コハク酸、グルタール酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸であってよい。グリコール系溶媒は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオールであってよい。
【0030】
ポリエーテルポリオールは、例えば、オキシラン化合物と、低分子ポリオールとの重合体であってよい。オキシラン化合物は、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランであってよい。低分子ポリオールは、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンであってよい。
【0031】
ポリエーテルエステルポリオールは、例えば、多価カルボン酸、多価カルボン酸のジアルキルエステル及びこれらの混合物と、ポリエーテルポリオールとの反応によって得られたものであってよい。
【0032】
ポリウレタンポリオールは、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールと、ポリイソシアネート単量体との反応生成物であってよい。
【0033】
ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネート、芳香族系ポリイソシアネート、及び、それらの混合物であってよい。
【0034】
脂肪族系ポリイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体、ポリイソシアネート末端プレポリマーであってよい。ポリイソシアネート単量体は、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートであってよい。ポリイソシアネート誘導体は、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートであってよい。
【0035】
芳香族系ポリイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体、ポリイソシアネート末端プレポリマーであってよい。ポリイソシアネート単量体は、例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートであってよい。ポリイソシアネート誘導体は、例えば、ポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート体であってよい。ポリイソシアネート末端プレポリマーは、ポリイソシアネート単量体と、ポリプロピレングリコールなどの2官能ポリオール化合物との反応で得られる末端イソシアネート基含有の2官能ポリイシシアネートであってよい。また、ポリイソシアネート末端プレポリマーは、ポリイソシアネート単量体と、トリメチロールプロパンなどの3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネートであってよい。
【0036】
無溶剤型接着剤は、ラミネート強度をより向上させる観点から、アジピン酸とイソフタル酸とを含むウレタン系接着剤であることが好ましい。また、アジピン酸とイソフタル酸とを含むウレタン系接着剤を用いた場合、ボイル処理及びレトルト処理等の加熱殺菌処理に対する耐性を向上させることができ、加熱殺菌処理によるラミネート強度の低下を抑制することができる。
【0037】
また、無溶剤型接着剤は、グリシドキシアルキルアルコキシシランを含まなくてよい。グリシドキシアルキルアルコキシシランとしては、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。一般的な接着剤の多くは、密着補助剤としてグリシドキシアルキルアルコキシシランを含有しているが、本実施形態の積層体においては、無溶剤型接着剤がグリシドキシアルキルアルコキシシランを含有していなくても、十分なラミネート強度を得ることができる。特に、無溶剤型接着剤がアジピン酸とイソフタル酸とを含むウレタン系接着剤である場合、無溶剤型接着剤がグリシドキシアルキルアルコキシシランを含有していなくても、より十分なラミネート強度を得ることができる。
【0038】
第1の接着剤層40の塗工量は、0.5g/m以上3.0g/m以下が好ましく、1.0g/m以上2.0g/m以下がより好ましい。第1の接着剤層40の塗工量が0.5g/m以上であれば、基材層10とシーラント層30又は中間層20との間でのデラミネーションの抑制効果を高められる。第1の接着剤層40の塗工量が3.0g/m以下であれば、積層体の加工時において巻きズレが生じることを抑制できると共に、積層体の外観品質を良好なものとすることが可能であり、加えて、適正なラミネート強度が得られる。
【0039】
(中間層)
中間層20はポリエチレンを含む層であってよく、例えば、無延伸ポリエチレンフィルムから構成された層であってよい。中間層20に含まれるポリエチレンとしては、強度及び耐熱性の観点からは、高密度ポリエチレン及び中密度ポリエチレンが好ましい。これらの材料は、石油由来からなるものでも、植物由来からなるものでもよく、これらの混合物であってもよい。中間層20としては、基材層10と同様に、密度が異なるポリエチレンを共押出法により押出した多層構造の無延伸ポリエチレンフィルムを用いることも可能である。また、中間層20の表面には、コロナ処理、大気圧プラズマ処理などの乾式の表面処理により易接着処理を施すことができる。
【0040】
中間層20の厚さは、9μm以上50μm以下であることが好ましく、12μm以上35μm以下であることがより好ましい。中間層20の厚さを9μm以上とすることにより、積層体の強度及び耐熱性を向上できる。中間層20の厚さを50μm以下とすることにより、積層体の加工適性を向上できる。
【0041】
中間層20は、ポリエチレンをTダイ法又はインフレーション法などにより製膜することで作製できる。Tダイ法により中間層20を作製する場合、ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、3g/10分以上、20g/10分以下であることが好ましい。MFRを3g/10分以上とすることにより、積層体の加工適性を向上することができる。また、MFRを20g/10分以下とすることにより、作製されたフィルムが破断してしまうことを防止できる。
【0042】
インフレーション法により中間層20を作製する場合、ポリエチレンのMFRは、0.5g/10分以上、5g/10分以下であることが好ましい。MFRを0.5g/10分以上とすることにより、積層体の加工適性を向上することができる。また、MFRを5g/10分以下とすることにより、製膜性を向上することができる。
【0043】
(アンカーコート層)
積層体2において、中間層20の少なくとも一方の面には、アンカーコート層13及び無機酸化物層14が形成されている。本実施形態において、アンカーコート層13は、公知のアンカーコート剤を用いて形成することができる。アンカーコート層13を介して無機酸化物層14を中間層20上に形成することで、中間層20に対する無機酸化物層14の密着性を向上させることができる。
【0044】
アンカーコート剤としては、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等を例示できる。耐熱性及び層間接着強度の観点からは、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0045】
アンカーコート剤として、ポリビニルアルコール系樹脂を用いてもよい。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルエステル単位がケン化されてなるビニルアルコール単位を有するものであればよく、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)が挙げられる。
【0046】
アンカーコート剤としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、アンカーコート層の形成方法としては、ポリビニルアルコール系樹脂溶液を用いた塗布や、多層押出等が挙げられる。多層押出の場合は、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン等の接着性樹脂を介して積層してよい。
【0047】
(無機酸化物層)
無機酸化物層14は、積層体2に酸素バリア性及び水蒸気バリア性を付与する。積層体2において、アンカーコート層13及び無機酸化物層14は、中間層20の第2の接着剤層50に対向する面に形成されているが、反対面に形成してもよい。
【0048】
無機酸化物層14の構成としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化錫等の金属酸化物からなる蒸着層が挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。さらに、コストを考慮すると、酸化アルミニウム、酸化珪素から選択される。さらに、加工時に引っ張り延伸性に優れる観点から、酸化珪素を用いた層とすることがより好ましい。無機酸化物層14を金属酸化物からなるバリア膜とすることにより、積層体2のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。
【0049】
金属酸化物からなる蒸着層は、透明性を有するため、金属からなる蒸着層と比べて、積層体からなる包装材料を手にする使用者に、金属箔が使用されているとの誤認を生じさせにくいという利点がある。
【0050】
酸化アルミニウムからなる無機酸化物層の膜厚は、5nm以上30nm以下であることが好ましい。膜厚が5nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が30nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が30nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、酸化アルミニウムからなる無機酸化物層の膜厚は、7nm以上15nm以下であることがより好ましい。
【0051】
酸化珪素からなる無機酸化物層の膜厚は、10nm以上50nm以下であることが好ましい。膜厚が10nm以上であると、十分なガスバリア性を得ることができる。また、膜厚が50nm以下であると、薄膜の内部応力による変形によりクラックが発生することを抑制し、ガスバリア性の低下を抑制することができる。なお、膜厚が50nmを超えると、材料使用量の増加、及び膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し易いため、経済的観点からも好ましくない。上記と同様の観点から、酸化珪素からなる無機酸化物層の膜厚は、20nm以上40nm以下であることがより好ましい。
【0052】
無機酸化物層14は、例えば真空成膜で形成することができる。真空成膜では、物理気相成長法あるいは化学気相成長法を用いることができる。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。化学気相成長法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
上記真空成膜では、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相堆積法(PECVD法)等が特に好ましく用いられる。ただし、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましい。
【0054】
(第2の接着剤層)
第2の接着剤層50は、少なくとも1種類の接着剤を含有した層であり、中間層20とシーラント層30との間に設けられて両者を接合する。1液硬化型又は2液硬化型のいずれの接着剤も、第2の接着剤層50に使用できる。接着剤としては、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。これらの接着剤は、バリア性をさらに高める目的で、層状無機化合物を含んでもよい。
【0055】
硬化後にガスバリア性を発現し得る接着剤を用いて、ガスバリア性を有する第2の接着剤層50(ガスバリア性接着剤層)を形成することもできる。特に、ガスバリア性を発現する接着剤で無機酸化物層14に接触する接着剤層を形成すると、無機酸化物層14のクラック発生によるガスバリア性の低下をさらに抑制することが可能である。これにより、積層体2のガスバリア性能をさらに向上できる。このようなガスバリア性接着剤としては、エポキシ系接着剤、ポリエステル・ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。具体例としては、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」、DIC社製の「Paslim」等が挙げられる。
【0056】
第2の接着剤層50は、無溶剤型接着剤を用いて形成してもよい。無溶剤型接着剤としては、第1の接着剤層40の形成に用いたものと同様のものが使用可能である。
【0057】
第2の接着剤層50の厚さは、0.5μm以上6μm以下であることが好ましく、0.8μm以上5μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上4.5μm以下であることがさらに好ましい。第2の接着剤層50の厚さを0.5μm以上とすることにより、第2の接着剤層50の接着性を向上することができる。第2の接着剤層50の厚さを6μm以下とすることにより、積層体2の加工適性を向上することができる。
【0058】
(シーラント層)
シーラント層30は、ポリエチレンにより構成されており、積層体1,2を用いて包装袋等の包装材料を形成する際に熱融着(ヒートシール)により接合される。シーラント層30を構成するポリエチレンは、ヒートシール性という観点からは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び超低密度ポリエチレン(VLDPE)が好ましい。また、環境負荷の観点から、バイオマス由来のポリエチレン又はリサイクルされたポリエチレンがシーラント層30に使用されていてもよい。シーラント層30は、無延伸ポリエチレンフィルムで構成されていてよい。
【0059】
低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm以上0.925g/cm未満のポリエチレンを使用することができる。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm以上0.925g/cm未満のポリエチレンを使用することができる。超低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm未満のポリエチレンを使用することができる。シーラント層30には、積層体1,2の特性を損なわない範囲において、エチレンとその他のモノマーとの共重合体を使用することができる。
【0060】
シーラント層30の厚さは、作製される包装袋に充填する内容物の重量等に応じて適宜変更できる。例えば、1g以上、200g以下の内容物を充填する包装袋を作製する場合、シーラント層30の厚さは、20μm以上、60μm以下であることが好ましい。厚さを20μm以上とすることにより、充填された内容物が、シーラント層30の破損により漏れてしまうことを防止できる。厚さを60μm以下とすることにより、積層体1,2の加工適性を向上できる。
【0061】
他の例として、50g以上、2000g以下の内容物を充填するスタンディングパウチを作製する場合、シーラント層30の厚さは、50μm以上、200μm以下であることが好ましい。厚さを50μm以上とすることにより、充填された内容物が、シーラント層30の破損により漏れてしまうことを防止することができる。また、厚さを200μm以下とすることにより、積層体1,2の加工適性を向上でき、さらに150μm以下とすることが好ましい。
【0062】
上記基材層10、上記中間層20、上記シーラント層30に用いるポリエチレンには、酸化防止剤、帯電防止剤、造核剤、紫外線吸収剤などの添加剤を添加してもよい。
【0063】
上記の様に構成された本実施形態の積層体1は、基材層10及びシーラント層30がポリエチレンで構成されていることにより、積層体1に占めるポリエチレンの割合が90質量%以上となっている。また、上記の様に構成された本実施形態の積層体2は、基材層10、中間層20、及びシーラント層30がポリエチレンで構成されていることにより、積層体2に占めるポリエチレンの割合が90質量%以上となっている。これにより、積層体1,2は、高いリサイクル性を有する。基材層10、中間層20、及びシーラント層30がいずれもポリエチレンのみからなる場合、積層体1,2に占めるポリエチレンの割合(質量%)は、下記式(1)により算出できる。なお、積層体1においては、下記式(1)中の中間層の質量は0である。
積層体に占めるポリエチレンの割合(質量%)=(基材層の質量+中間層の質量+シーラント層の質量)/積層体全体の質量×100 …(1)
【0064】
上記の様に構成された本実施形態の積層体1,2は、溶剤含有量が5mg/m以下であることが好ましい。これにより、印刷絵柄の寸法安定性をより良好なものとすることができる。本実施形態の積層体1,2は、第1の接着剤層40が無溶剤型接着剤により形成されているため、溶剤含有量を5mg/m以下に低減することが可能である。なお、第2の接着剤層50が溶剤型接着剤により形成された場合であっても、本実施形態の積層体1,2は、上記溶剤含有量の条件を満たすことが可能である。積層体1,2の溶剤含有量は、4.5mg/m以下であってもよく、4mg/m以下であってもよい。積層体1,2の溶剤含有量は、例えばガスクロマトグラフを用いて以下の条件で測定することができる。
【0065】
(ガスクロマトグラフ測定条件)
装置:ヘッドスペースオートサンプラー付きガスクロマトグラフ(GC)
型番:ヘッドスペースオートサンプラー7697A(Agilent Technologies社製)
GC7890B(Agilent Technologies社製)
測定方法:積層体を10cm角の正方形に切り取り、細かく裁断したものを20mLバイアルに封入し、それらを80℃で20分間加熱する。加熱により発生したヘッドスペースガス1.0mLをGC分析に供し、予め作成した各標準物質(トルエン、酢酸エチル、2-プロパノール(IPA)、メタノール、及びMEK等)による検量線を用いて、残存溶剤含有量を定量する。
【0066】
<積層体の製造方法>
次に、積層体の製造方法について説明する。本実施形態に係る積層体の製造方法は、基材層上にインキを用いた印刷法により印刷層を形成して印刷基材を得る印刷工程と、印刷基材と、シーラント層を含む積層フィルム又はシーラント層とを、第1の接着剤層を形成するための無溶剤型接着剤を用いて貼り合わせる貼合工程と、を有する。
【0067】
積層体1を製造する場合、上記貼合工程では、基材層10及び印刷層12からなる印刷基材と、シーラント層30とを、無溶剤型接着剤を用いて貼り合わせる。
【0068】
印刷基材とシーラント層30との貼り合わせは、例えば、加熱溶融させた無溶剤型接着剤をロールコートで被塗工基材に塗工する装置を具備した無溶剤型接着剤用ラミネーターにより行うことができる。
【0069】
無溶剤型接着剤が例えば2液硬化型のウレタン系接着剤である場合、通常は、ポリオール成分を含む主剤とポリイソシアネート成分を含む硬化剤とが別々に供給され、ラミネート装置の塗工部に至る前に混合される。混合された接着剤は、例えば、ラミネート装置の互いに反対方向に回転するドクターロールとメタリングロールとの間に供給される。供給された接着剤は、メタリングロールからコーティングロールに転移され、コーティングロールと圧胴ロールとの間に供給された印刷基材の印刷層12側の表面に塗工される。
【0070】
接着剤が塗工された印刷基材はシーラント層30と貼り合わされ、巻き取り機により巻き取られて、積層体が得られる。得られた積層体は、20~50℃で24~96時間のエージングを行うことが好ましい。なお、上述したドクターロール、メタリングロール及びコーティングロールは、ラミネート装置の構成の一例であり、使用するラミネート装置によって構成が異なっていてよい。
【0071】
ここで、無溶剤型接着剤を、溶剤が無くても塗工できる程度に低粘度にするために、ドクターロール及びコーティングロール等の金属ロールを加温し、無溶剤型接着剤を温度によって溶融させ、粘度を下げて塗工及び貼り合わせを行うことが好ましい。
【0072】
そのため、貼合工程における無溶剤型接着剤の加熱温度を、該加熱温度における無溶剤型接着剤の粘度が200~2000mPa・sとなるように、50~90℃の範囲内で設定することが好ましい。上記加熱温度は、より均一な塗工外観を有する積層体を得る観点から、無溶剤型接着剤の粘度が300~1500mPa・sとなる温度であることがより好ましく、500~1000mPa・sとなる温度であることが更に好ましい。また、上記加熱温度は、積層体のラミネート強度をより向上させると共に、印刷基材の伸び縮みをより抑制する観点から、50~80℃であることがより好ましく、50~70℃であることが更に好ましい。
【0073】
また、無溶剤型接着剤が2液硬化型のウレタン系接着剤である場合、2液混合直後のウレタン系接着剤の粘度が、40℃において200~2500mPa・sであることが好ましく、500~2000mPa・sであることがより好ましく、800~1500mPa・sであることが更に好ましい。これにより、貼合工程における無溶剤型接着剤の塗工時の上記加熱温度を低くすることができ、印刷基材の伸び縮みをより一層抑制することができる。無溶剤型接着剤の粘度は、例えば、ビスコテスター(高粘度用)VT-04FS(リオン株式会社製)を用いて、所定温度における接着剤に測定用ローターを差し込むことによって測定することができる。
【0074】
上記貼合工程では、無溶剤型接着剤を用いているため、溶剤を除去するための高温で長時間の熱乾燥(オーブン乾燥等)が行われない。そのため、印刷基材の伸び縮みを抑制でき、印刷絵柄の寸法安定性が良好な積層体を得ることができる。
【0075】
以上の工程を経て、本実施形態に係る積層体1を製造することができる。
【0076】
一方、積層体2を製造する場合、貼合工程の前に、中間層20上にアンカーコート層13及び無機酸化物層14を形成して中間フィルムを得る中間フィルム作製工程と、中間フィルムとシーラント層30とを貼り合わせて積層フィルムを作製する積層フィルム作製工程とを行う。
【0077】
中間フィルム作製工程では、公知の方法により、中間層20上にアンカーコート層13及び無機酸化物層14を形成することができる。
【0078】
積層フィルム作製工程では、使用する接着剤に対応した方法で中間フィルムとシーラント層30とを貼り合わせる。
【0079】
接着剤として溶剤型接着剤を用いる場合、一般的なドライラミネート法により、中間フィルム上に溶剤型接着剤を塗工してシーラント層30と貼り合わせ、熱乾燥して溶剤を除去することで、積層フィルムを得ることができる。熱乾燥は、オーブン等を用いて、例えば、温度50~80℃、オーブン炉長5~20m、加工速度50~200m/分の条件で行うことができる。
【0080】
接着剤として無溶剤型接着剤を用いる場合、上述した貼合工程と同様の方法で、中間フィルム上に無溶剤型接着剤を塗工してシーラント層30と貼り合わせることで、積層フィルムを得ることができる。
【0081】
その後、上述した貼合工程により印刷基材と積層フィルムとを貼り合わせることで、本実施形態に係る積層体2を製造することができる。
【0082】
<包装袋>
本実施形態に係る包装袋は、本実施形態に係る積層体を製袋してなるものである。包装袋は、シーラント層30を対向させつつ1枚の積層体1,2を折り曲げたり、シーラント層30を対向させつつ2枚の積層体1,2を重ねたりした状態で、内容物の充填部を残して周縁部のシーラント層30をヒートシールにより接合することで形成することができる。また、折り曲げた底フィルムを挟みつつ上記の様な接合を行うことにより、包装袋としてスタンディングパウチを形成することができる。その他、積層体1,2は、ピロー包装、四方シール、三方シール、ガゼット袋など、各種包装袋の形成に用いることができる。このように、積層体1,2は、各種包装袋に適用できる。
【0083】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、積層体は、図2に示す積層体2において中間層20の第2の接着剤層50側に配置されたアンカーコート層13及び無機酸化物層14が、中間層20の第1の接着剤層40側に配置された構造を有していてもよい。また、積層体は、図2に示す積層体2からアンカーコート層13、無機酸化物層14のうちの一層以上を除いた構造を有していてもよい。更に、積層体は、図2に示す積層体2から中間層20を除いた構造を有していてもよく、その場合、シーラント層30上にアンカーコート層13及び無機酸化物層14が順次形成されていてもよい。
【0084】
また、積層体は、図2に示す積層体2の無機酸化物層14上(無機酸化物層14と第2の接着剤層50との間)に、ガスバリア性被覆層を備えていてもよい。特に、第2の接着剤層50が、硬化後にガスバリア性を発現し得る接着剤(ガスバリア性接着剤)を用いて形成された層(ガスバリア性接着剤層)ではない場合、無機酸化物層14のクラック発生によるガスバリア性の低下を抑制する観点から、ガスバリア性被覆層を設けることが好ましい。以下、ガスバリア性被覆層について説明する。
【0085】
(ガスバリア性被覆層)
ガスバリア性の向上及び無機酸化物層14の保護を目的として、無機酸化物層14上に、ガスバリア性被覆層を設けてもよい。特に限定されるものではないが、ガスバリア性被覆層は、水酸基含有高分子化合物を含んでよく、具体的には、水酸基含有高分子化合物及びその加水分解物の少なくともいずれかと、金属アルコキシド、シランカップリング剤及びそれらの加水分解物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含有する組成物の加熱乾燥物であってよい。
【0086】
ガスバリア性被覆層は、例えば、水酸基含有高分子化合物と、金属アルコキシド及び/又はシランカップリング剤とを、水或いは水/アルコール混合液に添加して得られる組成物(以下、オーバーコート剤という)を用いて形成することができる。オーバーコート剤は、例えば、水溶性高分子である水酸基含有高分子化合物を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液と、金属アルコキシド及び/又はシランカップリング剤とを直接、或いは予めこれらを加水分解させるなどの処理を行ったものとを混合して調製することができる。
【0087】
水酸基含有高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でもポリビニルアルコール(PVA)をガスバリア性被覆層のオーバーコート剤に用いた場合、ガスバリア性が特に優れるので好ましい。
【0088】
金属アルコキシドとしては、下記一般式(I)で表わされる化合物が挙げられる。
M(OR(Rn-m …(I)
上記一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~8の1価の有機基であり、メチル基、エチル基等のアルキル基であることが好ましい。MはSi、Ti、Al、Zr等のn価の金属原子を示す。mは1~nの整数である。なお、R又はRが複数存在する場合、R同士又はR同士は同一でも異なっていてもよい。
【0089】
金属アルコキシドとしては、具体的には、テトラエトキシシラン〔Si(OC〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O-2’-C〕などが挙げられる。テトラエトキシシラン及びトリイソプロポキシアルミニウムは、加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0090】
シランカップリング剤としては、下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
Si(OR11(R123-p13 …(II)
上記一般式(II)中、R11はメチル基、エチル基等のアルキル基を示し、R12はアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アクリロキシ基で置換されたアルキル基、又は、メタクリロキシ基で置換されたアルキル基等の1価の有機基を示し、R13は1価の有機官能基を示し、pは1~3の整数を示す。なお、R11又はR12が複数存在する場合、R11同士又はR12同士は同一でも異なっていてもよい。R13で示される1価の有機官能基としては、グリシジルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、又は、イソシアネート基を含有する1価の有機官能基が挙げられる。
【0091】
シランカップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。
【0092】
また、シランカップリング剤は、上記一般式(II)で表される化合物が重合した多量体であってもよい。多量体としては三量体が好ましく、より好ましくは1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートである。これは、3-イソシアネートアルキルアルコキシシランの縮重合体である。この1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、イソシア部には化学的反応性はなくなるが、ヌレート部の極性により反応性は確保されることが知られている。一般的には、3-イソシアネートアルキルアルコキシランと同様に接着剤などに添加され、接着性向上剤として知られている。よって1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートを、水酸基含有高分子化合物に添加することにより、水素結合によりガスバリア性被覆層の耐水性を向上させることができる。3-イソシアネートアルキルアルコキシランは反応性が高く、液安定性が低いのに対し、1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、ヌレート部はその極性により水溶性ではないが、水系溶液中に分散しやすく、液粘度を安定に保つことができる。また、耐水性能は3-イソシアネートアルキルアルコキシランと1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートとは同等である。
【0093】
1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、3-イソシアネートプロピルアルコキシシランの熱縮合により製造されるものもあり、原料の3-イソシアネートプロピルアルコキシシランが含まれる場合もあるが、特に問題はない。より好ましくは、1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートであり、さらに好ましくは1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートである。このメトキシ基は加水分解速度が速く、またプロピル基を含むものは比較的安価に入手し得ることから1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートは実用上有利である。
【0094】
オーバーコート剤における金属アルコキシドの量は、無機酸化物層との密着性及びガスバリア性維持の観点から、水酸基含有高分子化合物1質量部に対して1~4質量部とすることができ、2~3質量部であってよい。同様に、シランカップリング剤の量は、水酸基含有高分子化合物1質量部に対して0.01~1質量部とすることができ、0.1~0.5質量部であってよい。金属アルコキシドとしてシラン化合物(アルコキシシラン)を用いる場合、オーバーコート剤におけるシラン化合物(金属アルコキシドとシランカップリング剤)の量は、水酸基含有高分子化合物1質量部に対して1~4質量部とすることができ、2~3質量部であってよい。
【0095】
オーバーコート剤には、ガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、あるいは、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることも可能である。
【0096】
オーバーコート剤は、例えば、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等により塗布することができる。オーバーコート剤を塗布してなる塗膜は、例えば、熱風乾燥法、熱ロール乾燥法、高周波照射法、赤外線照射法、UV照射法、又はそれらの組み合わせにより乾燥させることができる。
【0097】
上記塗膜を乾燥させる際の温度は、例えば、温度50~150℃とすることができ、温度70~100℃とすることが好ましい。乾燥時の温度を上記範囲内とすることで、無機酸化物層やガスバリア性被覆層にクラックが発生することをより一層抑制でき、優れたバリア性を発現することができる。
【0098】
ガスバリア性被覆層は、水酸基含有高分子化合物(例えばポリビニルアルコール系樹脂)及びシラン化合物を含むオーバーコート剤を用いて形成されてよい。オーバーコート剤には、必要に応じて酸触媒、アルカリ触媒、光重開始剤等を加えてよい。
【0099】
シラン化合物としては、シランカップリング剤、ポリシラザン、シロキサン等が挙げられ、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0100】
ガスバリア性被覆層の厚さは、50~1000nmであることが好ましく、100~500nmであることがより好ましい。ガスバリア性被覆層の厚さが50nm以上であると、より十分なガスバリア性を得ることができる傾向があり、1000nm以下であると、十分な柔軟性を保持できる傾向がある。
【実施例0101】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
【0102】
実施例及び比較例で用いた各材料を以下に示す。
【0103】
(無溶剤型接着剤A)
無溶剤型接着剤Aとして、ヘンケルジャパン株式会社製の商品名「LA7735」(ポリイソシアネート成分)とヘンケルジャパン株式会社製の商品名「LA6159」(ポリオール成分)とを質量比100:45で配合した、2液硬化型のウレタン系接着剤を用いた。無溶剤型接着剤Aは、アジピン酸及びイソフタル酸を含むものであった。無溶剤型接着剤Aの粘度は、2液混合直後の40℃において1500mPa・sであり、ラミネート時の60℃において800mPa・sであった。粘度は、ビスコテスターによって測定した。
【0104】
(無溶剤型接着剤B)
無溶剤型接着剤Bとして、ヘンケルジャパン株式会社製の商品名「LA7772」(ポリイソシアネート成分)とヘンケルジャパン株式会社製の商品名「LA6172」(ポリオール成分)とを質量比100:60で配合した、2液硬化型のウレタン系接着剤を用いた。無溶剤型接着剤Bは、アジピン酸及びイソフタル酸を含むものであった。無溶剤型接着剤Bの粘度は、2液混合直後の40℃において1500mPa・sであり、ラミネート時の60℃において800mPa・sであった。
【0105】
(無溶剤型接着剤C)
無溶剤型接着剤Cとして、東洋モートン株式会社製の商品名「AD-N369AF」(ポリイソシアネート成分)と東洋モートン株式会社製の商品名「AD-N369B」(ポリオール成分)とを質量比3:1で配合した、2液硬化型のウレタン系接着剤を用いた。無溶剤型接着剤Cは、油脂酸を含み、アジピン酸及びイソフタル酸を含まないものであった。無溶剤型接着剤Cの粘度は、2液混合直後の40℃において4000mPa・sであり、ラミネート時の60℃において2000mPa・sであった。
【0106】
(溶剤型接着剤)
溶剤型接着剤として、三井化学社製のタケラックA525を100質量部に対し、三井化学社製のタケネートA52を11質量部と、酢酸エチル84質量部とを混合した、ウレタン系接着剤を用いた。溶剤型接着剤は、アジピン酸及びイソフタル酸を含むものであった。
【0107】
(ガスバリア性接着剤)
溶剤型のガスバリア性接着剤として、三菱ガス化学社製のマクシーブC93Tを16質量部と、三菱ガス化学社製のマクシーブM-100を5質量部とを混合した、エポキシ系のガスバリア性接着剤を用いた。ガスバリア性接着剤は、アジピン酸及びイソフタル酸を含まないものであった。
【0108】
(アンカーコート剤)
アクリルポリオールとトリレンジイソシアネートとを、アクリルポリオールのOH基の数に対してトリレンジイソシアネートのNCO基の数が等量となるように混合し、全固形分(アクリルポリオール及びトリレンジイソシアネートの合計量)が5質量%になるよう酢酸エチルで希釈した。希釈後の混合液に、さらにβ-(3,4エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランを、アクリルポリオール及びトリレンジイソシアネートの合計量100質量部に対して5質量部となるように添加し、これらを混合することでアンカーコート剤を調製した。
【0109】
(中間フィルム)
中間層としての無延伸高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム(タマポリ株式会社製、商品名:HS31、厚さ:30μm、片面コロナ処理あり)のコロナ処理面に、上述したアンカーコート剤をグラビアコート法により塗布、乾燥し、厚さ0.05μmのアンカーコート層を設けた。次に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、酸化珪素からなる厚さ30nmの透明な蒸着層(無機酸化物層)をアンカーコート層上に形成した。無機酸化物層のO/Si比は、蒸着材料種を調整することにより1.8とした。以上により、中間層/アンカーコート層/無機酸化物層が積層された中間フィルムを得た。
【0110】
[実施例1]
基材層として、無延伸高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム(タマポリ株式会社製、商品名:HS31、厚さ:30μm、片面コロナ処理あり)を準備した。基材層のコロナ処理面に、フレキソ印刷法によって絵柄印刷を施して厚さ1μmの印刷層を形成し、印刷基材を得た。一方、シーラント層として、厚さ60μmの片面コロナ処理済無延伸ポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製、商品名:SE620、LLDPEの単層構成)を準備した。
【0111】
次に、上述した無溶剤型接着剤Aのポリイソシアネート成分及びポリオール成分を、2液混合供給装置で混合し、液温40℃とした。無溶剤型接着剤用ラミネーターを用い、加工速度100m/min、ドクターロール及びコーティングロール温度60℃の条件で、印刷基材の印刷層上に無溶剤型接着剤A(第1の接着剤層を形成する接着剤)を塗布量が2.1g/mとなるように塗工し、印刷基材とシーラント層とを貼り合わせた。その後、40℃で2日間エージングすることで、基材層/印刷層/第1の接着剤層/シーラント層の積層構造を有する積層体を得た。
【0112】
[実施例2]
無溶剤型接着剤Aに代えて無溶剤型接着剤Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、基材層/印刷層/第1の接着剤層/シーラント層の積層構造を有する積層体を得た。
【0113】
[実施例3]
無溶剤型接着剤Aに代えて無溶剤型接着剤Cを用いたこと以外は実施例1と同様にして、基材層/印刷層/第1の接着剤層/シーラント層の積層構造を有する積層体を得た。
【0114】
[実施例4]
実施例1と同様にして、印刷基材及びシーラント層を準備した。次に、上述した無溶剤型接着剤Aのポリイソシアネート成分及びポリオール成分を、2液混合供給装置で混合し、液温40℃とした。無溶剤型接着剤用ラミネーターを用い、加工速度100m/min、ドクターロール及びコーティングロール温度60℃の条件で、上述した中間フィルムの無機酸化物層上に無溶剤型接着剤A(第2の接着剤層を形成する接着剤)を塗布量が2.1g/mとなるように塗工し、中間フィルムとシーラント層とを貼り合わせた。その後、40℃で1日間エージングすることで、中間フィルムとシーラント層とが第2の接着剤層を介して積層された積層フィルムを得た。
【0115】
次に、上述した無溶剤型接着剤Aのポリイソシアネート成分及びポリオール成分を、2液混合供給装置で混合し、液温40℃とした。無溶剤型接着剤用ラミネーターを用い、加工速度100m/min、ドクターロール及びコーティングロール温度60℃の条件で、印刷基材の印刷層上に無溶剤型接着剤A(第1の接着剤層を形成する接着剤)を塗布量が2.1g/mとなるように塗工し、印刷基材と積層フィルムとを貼り合わせた。その後、40℃で2日間エージングすることで、基材層/印刷層/第1の接着剤層/中間層/アンカーコート層/無機酸化物層/第2の接着剤層/シーラント層の積層構造を有する積層体を得た。
【0116】
[実施例5]
実施例1と同様にして、印刷基材及びシーラント層を準備した。次に、上述したガスバリア性接着剤(第2の接着剤層を形成する接着剤)を用いたドライラミネート法により、上述した中間フィルムの無機酸化物層側の面とシーラント層とを接着した。接着は、ドライラミネーターを用いて乾燥温度50℃で加工速度100m/minの条件で行った。また、第2の接着剤層の厚さは2μmであった。これにより、中間フィルムとシーラント層とが第2の接着剤層を介して積層された積層フィルムを得た。
【0117】
次に、上述した無溶剤型接着剤Aのポリイソシアネート成分及びポリオール成分を、2液混合供給装置で混合し、液温40℃とした。無溶剤型接着剤用ラミネーターを用い、加工速度100m/min、ドクターロール及びコーティングロール温度60℃の条件で、印刷基材の印刷層上に無溶剤型接着剤A(第1の接着剤層を形成する接着剤)を塗布量が2.1g/mとなるように塗工し、印刷基材と積層フィルムとを貼り合わせた。その後、40℃で2日間エージングすることで、基材層/印刷層/第1の接着剤層/中間層/アンカーコート層/無機酸化物層/第2の接着剤層/シーラント層の積層構造を有する積層体を得た。
【0118】
[比較例1]
実施例1と同様にして、印刷基材及びシーラント層を準備した。次に、上述した溶剤型接着剤(第1の接着剤層を形成する接着剤)を用いたドライラミネート法により、上述した印刷基材の印刷層側の面とシーラント層とを接着した。接着は、ドライラミネーターを用いて乾燥温度50℃で加工速度100m/minで行った。また、第1の接着剤層の厚さは2.1μmであった。これにより、基材層/印刷層/第1の接着剤層/シーラント層の積層構造を有する積層体を得た。
【0119】
[比較例2]
基材層として、延伸高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム(東京インキ株式会社製、商品名:SMUQ、厚さ:25μm、片面コロナ処理あり)を準備した。基材層のコロナ処理面に、フレキソ印刷法によって絵柄印刷を施して厚さ1μmの印刷層を形成し、印刷基材を得た。一方、シーラント層として、厚さ60μmの片面コロナ処理済無延伸ポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製、商品名:SE620、LLDPEの単層構成)を準備した。
【0120】
次に、上述した無溶剤型接着剤Aのポリイソシアネート成分及びポリオール成分を、2液混合供給装置で混合し、液温40℃とした。無溶剤型接着剤用ラミネーターを用い、加工速度100m/min、ドクターロール及びコーティングロール温度60℃の条件で、印刷基材の印刷層上に無溶剤型接着剤A(第1の接着剤層を形成する接着剤)を塗布量が2.1g/mとなるように塗工し、印刷基材とシーラント層とを貼り合わせた。その後、40℃で2日間エージングすることで、基材層/印刷層/第1の接着剤層/シーラント層の積層構造を有する積層体を得た。
【0121】
[評価]
得られた積層体について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】
<基材層の伸び率>
各実施例及び比較例で用いた基材層(HDPEフィルム)の伸び率の測定を、熱分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、商品名:TA7000PCステーション)にて行った。HDPEフィルムは4mm幅にて0.4Nの荷重をかけて100N/mの張力とし、25℃から昇温速度5℃/分にて連続的に100℃まで昇温し、その後5分間保持して、フィルムの伸び率の測定を実施した。この測定における70℃の温度での伸び率を記録した。
【0123】
<溶剤含有量>
各実施例及び比較例で得られた積層体の溶剤含有量を、ガスクロマトグラフを用いて以下の条件で測定した。トルエン、酢酸エチル、IPA、メタノール、及びMEKの総量(mg/m)を溶剤含有量とした。
(ガスクロマトグラフ測定条件)
装置:ヘッドスペースオートサンプラー付きガスクロマトグラフ(GC)
型番:ヘッドスペースオートサンプラー7697A(Agilent Technologies社製)
GC7890B(Agilent Technologies社製)
測定方法:積層体を10cm角の正方形に切り取り、細かく裁断したものを20mLバイアルに封入し、それらを80℃で20分間加熱した。加熱により発生したヘッドスペースガス1.0mLをGC分析に供し、予め作成した各標準物質(トルエン、酢酸エチル、IPA、メタノール、及びMEK)による検量線を用いて、残存溶剤含有量を定量した。
【0124】
<グリシドキシアルキルアルコキシシランの分析>
各実施例及び比較例で得られた積層体における第1の接着剤層中のグリシドキシアルキルアルコキシシランの有無を、以下の方法により確認した。まず、積層体を第1の接着剤層と印刷基材との間で剥離し、第1の接着剤層をむき出しにした試験片を得た。この試験片をトルエンに60℃で1週間浸漬させた後、このトルエンについてGC/MSを用いて分析し、グリシドキシアルキルアルコキシシランの含有量を測定した。上記含有量には、グリシドキシアルキルアルコキシシランに由来する成分(ダイマー、トリマー、加水分解物等)の含有量を含めた。測定は、日本分析工業社製の商品名:JCI-55を用いて行い、40℃で3分間保持した後、20℃/1分の昇温速度で320℃まで昇温し、3分間保持した。上記含有量が上記試験片の質量に対して0.15質量ppb以下である場合、第1の接着剤層はグリシドキシアルキルアルコキシシランを含まない(表中、「無」と記載する)と判定し、上記含有量が上記試験片の質量に対して0.15質量ppbを超える場合、第1の接着剤層はグリシドキシアルキルアルコキシシランを含む(表中、「有」と記載する)と判定した。
【0125】
<リサイクル性>
下記式(1)に基づき、各実施例及び比較例で得られた積層体に占めるポリエチレンの割合(質量%)を算出した。評価は、以下の2段階とした。
積層体に占めるポリエチレンの割合(質量%)=(基材層の質量+中間層の質量+シーラント層の質量)/積層体全体の質量×100 …(1)
A:ポリエチレンの含有割合が90質量%以上。
B:ポリエチレンの含有割合が90質量%未満。
【0126】
<印刷絵柄寸法安定性>
各実施例及び比較例で得られた積層体の絵柄を目視にて観察し、寸法安定性を以下の評価基準に基づいて評価した。
A:絵柄の伸び縮みが小さく、フレキソ印刷における版胴の周長とそれに対応する積層体の絵柄の寸法との差が±5mm以下であり、且つ、擦れ、滲み等が生じていない良好な絵柄であった。
B:絵柄の伸び縮みが大きく、フレキソ印刷における版胴の周長とそれに対応する積層体の絵柄の寸法との差が±5mmを超えており、且つ、絵柄に擦れや滲みが生じていた。
【0127】
<ラミネート強度>
JIS K6854に準拠して、各実施例及び比較例で得られた積層体から15mm幅の短冊状の試験片を切り出し、オリエンテック社製のテンシロン万能試験機RTC-1250を用いて、試験片の層間の剥離強度(ラミネート強度)を密着性の指標として測定した。測定は、T型剥離で、常態(23℃、50%RH)にて剥離速度300mm/minの条件で行った。
【0128】
<耐圧試験>
実施例及び比較例で得られた積層体を90mm角で2枚切り出し、シーラント層同士を対面させて外周3辺をシールした後、水道水100gを充填し、残り1辺をシールして密封した。シール条件は130℃、0.2MPa、1秒とし、シールの幅は外周から5mmとした。これにより、試験用パウチを得た。
【0129】
得られたパウチについて、JIS Z0238に準拠して80kgf×3分間の静荷重試験を行い、破袋の有無に基づいて以下の基準で耐圧強度を評価した。
A:静荷重試験80kgf×3分間で破袋なし。
B:静荷重試験80kgf×3分間で破袋あり。
【0130】
<酸素透過度:OTR>
実施例及び比較例で得られた積層体について、モコン法により、30℃、70%RH(相対湿度)の条件下で、酸素透過度を測定した。但し、無機酸化物層を有さない積層体については、酸素透過度を測定しなかった。
【0131】
<水蒸気透過度:WVTR>
実施例及び比較例で得られた積層体について、モコン法により、40℃、90%RH(相対湿度)の条件下で、水蒸気透過度を測定した。但し、無機酸化物層を有さない積層体については、水蒸気透過度を測定しなかった。
【0132】
【表1】
【符号の説明】
【0133】
1,2…積層体、10…基材層、12…印刷層、13…アンカーコート層、14…無機酸化物層、20…中間層、30…シーラント層、40…第1の接着剤層、50…第2の接着剤層。
図1
図2