(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183637
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】マイクロポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 43/04 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
F04B43/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097253
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】内貴 崇
【テーマコード(参考)】
3H077
【Fターム(参考)】
3H077AA01
3H077CC02
3H077CC09
3H077CC12
3H077DD06
3H077EE01
3H077FF14
3H077FF36
(57)【要約】
【課題】小型であっても流量を増加させることのできるマイクロポンプを提供する。
【解決手段】マイクロポンプ1は、圧電素子11が積層された振動膜9と、振動膜9の上面に接して設けられた上側空間部31と、振動膜9の下面に接して設けられた下側空間部51とを備え、振動膜9を上側空間部31の方向へ変位させることによって、上側空間部31から外部へ流体を流出させるとともに下側空間部51へ外部から流体を流入させ、振動膜9を下側空間部51の方向へ変位させることによって、下側空間部51から外部へ流体を流出させるとともに上側空間部31へ外部から流体を流入させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子が積層された振動膜と、
前記振動膜の上面に接して設けられた上側空間部と、
前記振動膜の下面に接して設けられた下側空間部とを備え、
前記振動膜を前記上側空間部の方向へ変位させることによって、前記上側空間部から外部へ流体を流出させるとともに前記下側空間部へ外部から流体を流入させ、
前記振動膜を前記下側空間部の方向へ変位させることによって、前記下側空間部から外部へ流体を流出させるとともに前記上側空間部へ外部から流体を流入させるマイクロポンプ。
【請求項2】
前記上側空間部の側面に設けられて流体を外部から前記上側空間部へ流入させる上側流入口と前記下側空間部の側面に設けられて流体を外部から前記下側空間部へ流入させる下側流入口は、前記振動膜の膜厚方向に重ならない位置に配置されている請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項3】
前記上側流入口と外部とを接続する上側流入経路の前記振動膜の膜厚方向から見た形状は、外部から前記上側流入口へ向かって徐々に幅が広くなる形状であり、
前記下側流入口と外部とを接続する下側流入経路の前記振動膜の膜厚方向から見た形状は、外部から前記下側流入口へ向かって徐々に幅が広くなる形状である請求項2に記載のマイクロポンプ。
【請求項4】
前記上側空間部の側面に設けられて流体を前記上側空間部から外部へ流出させる上側流出口と前記下側空間部の側面に設けられて流体を前記下側空間部から外部へ流出させる下側流出口は、前記振動膜の膜厚方向に重ならない位置に配置されている請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項5】
前記上側流出口と外部とを接続する上側流出経路と前記下側流出口と外部とを接続する下側流出経路は、前記振動膜の膜厚方向に少なくとも一部で重なる位置に配置され、前記重なる位置で1つの経路に合流する請求項4に記載のマイクロポンプ。
【請求項6】
前記上側流出口と外部とを接続する上側流出経路の前記振動膜の膜厚方向から見た形状は、前記上側流出口から外部へ向かって徐々に幅が広くなる形状であり、
前記下側流出口と外部とを接続する下側流出経路の前記振動膜の膜厚方向から見た形状は、前記下側流出口から外部へ向かって徐々に幅が広くなる形状である請求項4に記載のマイクロポンプ。
【請求項7】
前記下側空間部が形成された下側部材に前記振動膜が形成され、
前記上側空間部と前記下側空間部の前記振動膜の膜厚方向から見た形状は円形であり、
前記下側空間部の直径は、前記上側空間部の直径よりも小さい請求項1~6のいずれか1項に記載のマイクロポンプ。
【請求項8】
前記上側空間部が形成された上側部材と前記下側空間部が形成された下側部材は、それぞれ前記振動膜の膜厚方向から見た形状が四角形状であり、
前記上側空間部へ外部から流体を流入させる上側流入経路と前記上側空間部から外部へ流体を流出させる上側流出経路は、前記上側部材の対向しない側面に配置され、
前記下側空間部へ外部から流体を流入させる下側流入経路と前記下側空間部から外部へ流体を流出させる下側流出経路は、前記下側部材の対向しない側面に配置される請求項1~6のいずれか1項に記載のマイクロポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、圧電薄膜技術を活用したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)型のマイクロポンプが知られている。例えば、非特許文献1には、圧電素子を用いたマイクロポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「マイクロポンプ」<URL: https://www.asianprofile.wiki/wiki/Micropump>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のマイクロポンプは小型であるために、流量を増加させることが困難であるという問題点があった。
【0005】
そこで、本開示は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型であっても流量を増加させることのできるマイクロポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本開示に係るマイクロポンプは、圧電素子が積層された振動膜と、振動膜の上面に接して設けられた上側空間部と、振動膜の下面に接して設けられた下側空間部とを備えている。そして、本開示に係るマイクロポンプでは、振動膜を上側空間部の方向へ変位させることによって、上側空間部から外部へ流体を流出させるとともに下側空間部へ外部から流体を流入させる。また、振動膜を下側空間部の方向へ変位させることによって、下側空間部から外部へ流体を流出させるとともに上側空間部へ外部から流体を流入させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、小型であっても流量を増加させることのできるマイクロポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るマイクロポンプの上側部材と下側部材の境界における断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るマイクロポンプにおける
図1のA-A線における断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るマイクロポンプの上側部材の構造を示す平面図であり、下方向から見た図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るマイクロポンプの下側部材の構造を示す平面図であり、下方向から見た図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るマイクロポンプの動作を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るマイクロポンプの動作を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係るマイクロポンプの上側部材の構造を示す平面図であり、下方向から見た図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係るマイクロポンプの下側部材の構造を示す平面図であり、下方向から見た図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係るマイクロポンプにおける変形例の下側部材の構造を示す平面図であり、下方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。
【0010】
[マイクロポンプの構造]
図1、2を参照して、本実施形態に係るマイクロポンプ1の構造を説明する。
図1は、本実施形態に係るマイクロポンプ1の上側部材と下側部材の境界(
図2のB-B線)における断面図であり、
図2は、
図1のA-A線における断面図である。
図1、2に示すように、本実施形態に係るマイクロポンプ1は、上側部材3と、下側部材5と、底板7を主体に構成され、下側部材5には、振動膜9が形成され、振動膜9の上面に圧電素子11が積層されている。以下の説明では、
図1に示すマイクロポンプ1の状態を基準に上下方向を定義するが、マイクロポンプ1を使用する方向を限定するものではない。
【0011】
上側部材3は、例えばシリコン(Si)等の(半導体)材料によって構成されており、中心部に円筒状の上側空間部31がエッチング加工などにより形成されている。
図3は、上側部材3の構造を示す平面図であり、下方向から見た図である。
図3に示すように、上側部材3は、振動膜9の膜厚方向から見た形状が四角形状をしており、上側部材3の下面側を選択的にエッチングすることによって、上側空間部31と、上側流入経路33と、上側流出経路35が形成されている。また、上側部材3には、後述する電極パッドを露出するための切り欠き40が設けられている。
【0012】
上側空間部31は、下側部材5に形成された振動膜9の上面に接して設けられた円筒状の空間であり、振動膜9の膜厚方向から見た形状は円形をしている。そして、振動膜9の上下動によって、流体が、上側流入経路33から上側空間部31へ流入し、上側流出経路35へ流出する。
【0013】
上側流入経路33は、上側空間部31の側面に設けられた上側流入口37と外部とを接続し、上側流入経路33を通って、流体が外部から上側空間部31へ流入する。上側流入経路33の振動膜9の膜厚方向から見た形状は、外部から上側流入口37へ向かって徐々に幅が広くなる形状をしているので、逆止弁を設けなくても上側空間部31から外部へ流体が逆流することを抑制できる。
【0014】
上側流出経路35は、上側空間部31の側面に設けられた上側流出口39と外部とを接続し、上側流出経路35を通って、流体が上側空間部31から外部へ流出する。上側流出経路35の振動膜9の膜厚方向から見た形状は、上側流出口39から外部へ向かって徐々に幅が広くなる形状をしているので、逆止弁を設けなくても外部から上側空間部31へ流体が逆流することを抑制できる。
【0015】
下側部材5は、例えばシリコン(Si)等の(半導体)材料によって構成されており、下側部材5の下面側を選択的にエッチング加工などすることによって、中心部に円形の振動膜9と、円筒状の下側空間部51が形成されている。
図4は、下側部材5の構造を示す平面図であり、下方向から見た図である。
図4に示すように、下側部材5は、振動膜9の膜厚方向から見た形状が四角形状をしており、下側部材5の下面側を選択的にエッチングすることによって、下側空間部51と、下側流入経路53と、下側流出経路55が形成されている。また、下側部材5の上面側には、圧電素子11に駆動電圧を印加する電極パッド60が設けられている。2つの電極パッド60は、圧電素子11の上下の電極にそれぞれ接続されている。
【0016】
振動膜9は、下側空間部51の上面を閉塞するように下側空間部51の内周面に連結された薄膜から構成されている。振動膜9の上面には圧電素子11が積層され、圧電素子11が変形することによって、振動膜9は、膜厚方向、すなわち、振動膜9の法線方向に変位する。
【0017】
圧電素子11は、圧電膜の上面と下面にそれぞれ電極が積層された構造をしており、上下の電極にそれぞれ駆動電圧を印加することによって、圧電素子11が変形して振動膜9を上下に変位させる。さらに、圧電素子11に駆動電圧を繰り返し印加することによって、振動膜9は、上側への変位と下側への変位を交互に繰り返す。この振動膜9の振動により、マイクロポンプ1は外部からの流体を流入および流出させる。圧電素子11の平面形状は、振動膜9の平面形状に対応しており、円形状を有している。
【0018】
下側空間部51は、振動膜9の下面に接して設けられた円筒状の空間であり、振動膜9の膜厚方向から見た形状は円形をしている。そして、振動膜9の上下動によって、流体が、下側流入経路53から下側空間部51へ流入し、下側流出経路55へ流出する。尚、
図4では、上側空間部31の外周を点線で示している。
図4に示すように、下側空間部51の直径は、上側空間部31の直径よりも小さくなっている。これにより、振動膜9の外周が上側空間部31の内周面よりも内側に配置されるので、振動膜9の振動による上側部材3への影響を低減することができ、耐久性を向上させることができる。
【0019】
下側流入経路53は、下側空間部51の側面に設けられた下側流入口57と外部とを接続し、下側流入経路53を通って、流体が外部から下側空間部51へ流入する。下側流入経路53の振動膜9の膜厚方向から見た形状は、外部から下側流入口57へ向かって徐々に幅が広くなる形状をしているので、逆止弁を設けなくても下側空間部51から外部へ流体が逆流することを抑制できる。
【0020】
下側流出経路55は、下側空間部51の側面に設けられた下側流出口59と外部とを接続し、下側流出経路55を通って、流体が下側空間部51から外部へ流出する。下側流出経路55の振動膜9の膜厚方向から見た形状は、下側流出口59から外部へ向かって徐々に幅が広くなる形状をしているので、逆止弁を設けなくても外部から下側空間部51へ流体が逆流することを抑制できる。また、
図4に示すように、上側流出経路35と下側流出経路55が、振動膜9の膜厚方向に重なる位置には、開口部65が設けられている。これにより、上側流出経路35と下側流出経路55は1つの経路に合流する。
【0021】
底板7は、振動膜9の膜厚方向から見た形状が四角形状をしており、下側部材5の下方に配置され、下側部材5と結合することによって、下側空間部51を封止する。
【0022】
本実施形態に係るマイクロポンプ1は、上述した上側部材3と、下側部材5と、底板7を積層して結合することによって、
図1、2に示すように一体に構成される。
図1を参照して、マイクロポンプ1の内部に形成された空間や流路の構造を説明する。
【0023】
図1に示すように、上側流入口37と下側流入口57は、それぞれ上側部材3と下側部材5の同じ方向の側面、すなわち左側の側面に設けられている。しかし、上側流入口37と下側流入口57は、左右にずれて配置されているので、振動膜9の膜厚方向に重ならない位置に配置されている。同様に、上側流出口39と下側流出口59も、それぞれ上側部材3と下側部材5の同じ方向の側面、すなわち右側の側面に設けられている。しかし、上側流出口39と下側流出口59は、左右にずれて配置されているので、振動膜9の膜厚方向に重ならない位置に配置されている。
【0024】
上側流入口37と下側流入口57を上下に重なる位置に配置すると、振動膜9の上下が何もない空間になってしまうので、振動膜9が振動すると、その応力歪によって各流入口の開口面積が振動に応じて変化してしまう。また、振動膜9の耐久性も低下することになる。そこで、上側流入口37と下側流入口57の位置を左右にずらして上下に重ならないように配置することによって、各流入口の開口面積が変動することを防止し、振動膜9の耐久性も向上させている。上側流出口39と下側流出口59についても、同様に上下に重ならない位置に配置することによって、開口面積が変動することを防止し、振動膜9の耐久性を向上させている。
【0025】
また、上側流出経路35と下側流出経路55は、
図1に示すように、振動膜9の膜厚方向に少なくとも一部で重なる位置に配置され、この重なる位置で1つの経路に合流している。これにより、1つの経路に合流するときに、一方の経路から流出する流体が、他方の経路から次に流出する流体を引き付けるので、慣性力によって流体の流出効率を向上させることができる。
【0026】
[マイクロポンプの動作]
次に、本実施形態に係るマイクロポンプ1の動作を説明する。本実施形態に係るマイクロポンプ1は、電極パッド60から駆動電圧を圧電素子11に印加することによって、振動膜9を上下方向に変位させ、その上下動によって外部からの流体を流入および流出させる。
【0027】
具体的に、
図5に示すように、振動膜9を上側空間部31の方向へ変位させると、矢印で示すように上側空間部31から外部へ流体を流出させるとともに下側空間部51へ外部から流体を流入させる。すなわち、振動膜9が上方向へ変位すると、上側空間部31の容積が減少することによって、上側空間部31から上側流出経路35を通じて外部へ流体を流出させる。このとき、上側流入経路33は、振動膜9の膜厚方向から見た形状が外部から上側流入口37へ向かって徐々に幅が広くなる形状をしているので、逆止弁がなくても上側空間部31から外部へ流体が逆流することを抑制する。
【0028】
また、振動膜9が上方向へ変位したときには、同時に、下側空間部51の容積が増大することによって、下側流入経路53を通じて外部から下側空間部51へ流体が流入する。このとき、下側流出経路55は、振動膜9の膜厚方向から見た形状が下側流出口59から外部へ向かって徐々に幅が広くなる形状をしているので、逆止弁がなくても下側空間部51へ外部から流体が逆流することを抑制する。
【0029】
一方、
図6に示すように、振動膜9を下側空間部51の方向へ変位させると、矢印で示すように下側空間部51から外部へ流体を流出させるとともに上側空間部31へ外部から流体を流入させる。すなわち、振動膜9が下方向へ変位すると、下側空間部51の容積が減少することによって、下側空間部51から下側流出経路55を通じて外部へ流体を流出させる。このとき、下側流入経路53は、振動膜9の膜厚方向から見た形状が外部から下側流入口57へ向かって徐々に幅が広くなる形状をしているので、逆止弁がなくても下側空間部51から外部へ流体が逆流することを抑制する。
【0030】
また、振動膜9が下方向へ変位したときには、同時に、上側空間部31の容積が増大することによって、上側流入経路33を通じて外部から上側空間部31へ流体が流入する。このとき、上側流出経路35は、振動膜9の膜厚方向から見た形状が上側流出口39から外部へ向かって徐々に幅が広くなる形状をしているので、逆止弁がなくても上側空間部31へ外部から流体が逆流することを抑制する。
【0031】
このように、本実施形態に係るマイクロポンプ1は、振動膜9を上下動させることによって、外部からの流体を流入および流出させている。
【0032】
[第1実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係るマイクロポンプ1は、振動膜9を上側空間部31の方向へ変位させることによって、上側空間部31から外部へ流体を流出させるとともに下側空間部51へ外部から流体を流入させる。一方、振動膜9を下側空間部51の方向へ変位させることによって、下側空間部51から外部へ流体を流出させるとともに上側空間部31へ外部から流体を流入させる。これにより、振動膜9が上方向へ変位したときも下方向へ変位したときも流体を流出させることができるので、小型であっても流量を増加させることができる。
【0033】
特に、従来のマイクロポンプでは、振動膜を上方向へ変位させたときか、あるいは下方向へ変位させたときのいずれかの場合のみ外部へ流体を流出させる構造となっていた。しかし、本実施形態に係るマイクロポンプ1では、振動膜9を上方向へ変位させたときには上側空間部31から流体を流出させ、振動膜9を下方向へ変位させたときには下側空間部51から流体を流出させることができる。したがって、振動膜9を上方向へ変位させたときも下方向へ変位させたときも両方とも流体を流出させることができるので、従来のマイクロポンプに比べて2倍の流量を流出させることができる。
【0034】
また、本実施形態に係るマイクロポンプ1では、上側流入口37と下側流入口57が、振動膜9の膜厚方向に重ならない位置に配置されている。これにより、各流入口が上下に重なって配置され、振動膜9の上下が何もない空間になってしまうことを防止できる。したがって、振動膜9が振動しても応力歪によって各流入口の開口面積が変動することを防止でき、振動膜9の耐久性を向上させることができる。
【0035】
さらに、本実施形態に係るマイクロポンプ1では、上側流入経路33の振動膜9の膜厚方向から見た形状が、外部から上側流入口37へ向かって徐々に幅が広くなる形状である。これにより、逆止弁がなくても上側空間部31から外部へ流体が逆流することを抑制できる。また、下側流入経路53の振動膜9の膜厚方向から見た形状が、外部から下側流入口57へ向かって徐々に幅が広くなる形状である。これにより、逆止弁がなくても下側空間部51から外部へ流体が逆流することを抑制できる。
【0036】
また、本実施形態に係るマイクロポンプ1では、上側流出口39と下側流出口59が振動膜9の膜厚方向に重ならない位置に配置されている。これにより、各流出口が上下に重なって配置されて、振動膜9の上下が何もない空間になってしまうことを防止できる。したがって、振動膜9が振動しても応力歪によって各流出口の開口面積が変動することを防止でき、振動膜9の耐久性を向上させることができる。
【0037】
さらに、本実施形態に係るマイクロポンプ1では、上側流出経路35と下側流出経路55が、振動膜9の膜厚方向に少なくとも一部で重なる位置に配置され、この重なる位置で1つの経路に合流する。これにより、1つの経路に合流するときに、一方の経路から流出する流体が、他方の経路から次に流出する流体を引き付けるので、慣性力によって流体の流出効率を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態に係るマイクロポンプ1では、上側流出経路35の振動膜9の膜厚方向から見た形状が、上側流出口39から外部へ向かって徐々に幅が広くなる形状である。これにより、逆止弁がなくても外部から上側空間部31へ流体が逆流することを抑制できる。また、下側流出経路55の振動膜9の膜厚方向から見た形状が、下側流出口59から外部へ向かって徐々に幅が広くなる形状である。これにより、逆止弁がなくても外部から下側空間部51へ流体が逆流することを抑制できる。
【0039】
さらに、本実施形態に係るマイクロポンプ1では、下側空間部51が形成された下側部材5に振動膜9が形成され、上側空間部31と下側空間部51の振動膜9の膜厚方向から見た形状が円形であり、下側空間部51の直径は上側空間部31の直径よりも小さい。これにより、振動膜9の外周が上側空間部31の内周面よりも内側に配置されるので、振動膜9の振動による上側部材3への影響を低減することができ、耐久性を向上させることができる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、
図7及び
図8を参照し、第2実施形態に係るマイクロポンプ1について説明する。本実施形態に係るマイクロポンプ1では、流入経路と流出経路を四角形状の部材の対向しない側面に配置したことが第1実施形態と相違している。以下、第1実施形態と重複する内容の説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0041】
第1実施形態では、
図3に示すように、上側流入経路33と上側流出経路35は、上側部材3の対向する側面に配置されていたので、上側流入経路33と上側流出経路35は直線上に並んで配置されていた。そのため、上側流入経路33と上側流出経路35が並ぶ直線上では、強い応力がかかる場合があった。
図4に示す下側部材5でも同様に下側流入経路53と下側流出経路55が並ぶ直線上では、強い応力がかかる場合があった。
【0042】
そこで、本実施形態に係るマイクロポンプ1では、
図7に示すように、上側流入経路33と上側流出経路35が、上側部材3の対向しない側面に配置されている。同様に、
図8に示すように、下側流入経路53と下側流出経路55は、下側部材5の対向しない側面に配置されている。
【0043】
これにより、上側流入経路33と上側流出経路35が直線上に並んで配置されることがなくなるので、強い応力がかかることを防止して製造時の強度を確保することができる。また、上側部材3の縦方向の強度と横方向の強度を均等にすることもできる。同様に、下側部材5でも、下側流入経路53と下側流出経路55が直線上に並んで配置されることがなくなるので、強い応力がかかることを防止して製造時の強度を確保することができる。また、下側部材5の縦方向の強度と横方向の強度を均等にすることもできる。
【0044】
[変形例]
図7、8では、上側流出経路35と下側流出経路55が異なる側面に配置されているが、
図9に示すように、下側部材5を、振動膜9の中心の法線方向を中心軸として90度回転させ、上側流出経路35と下側流出経路55が同じ側面に配置されるようにしてもよい。そして、上側流出経路35と下側流出経路55を、振動膜9の膜厚方向に少なくとも一部で重なる位置に配置し、この重なる位置に開口部65を設けて1つの経路に合流させる。これにより、1つの経路に合流するときに、一方の経路から流出する流体が、他方の経路から次に流出する流体を引き付けるので、慣性力によって流体の流出効率を向上させることができる。また、この場合も、上側流出口39と下側流出口59は上下に重ならない位置に配置されるので、振動膜9が振動しても応力歪によって各流出口の開口面積が変動することを防止でき、振動膜9の耐久性を向上させることができる。
【0045】
[第2実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係るマイクロポンプ1では、上側部材3と下側部材5は、それぞれ振動膜9の膜厚方向から見た形状が四角形状であり、上側流入経路33と上側流出経路35が上側部材3の対向しない側面に配置される。また、下側流入経路53と下側流出経路55が、下側部材5の対向しない側面に配置される。これにより、流入経路と流出経路が直線上に並んで配置されることがなくなるので、強い応力がかかることを防止して製造時の強度を確保することができる。また、上側部材3及び下側部材5の縦方向の強度と横方向の強度を均等にすることもできる。
【0046】
また、本実施形態に係るマイクロポンプ1では、上側流出経路35と下側流出経路55が、振動膜9の膜厚方向に少なくとも一部で重なる位置に配置され、この重なる位置で1つの経路に合流する。これにより、1つの経路に合流するときに、一方の経路から流出する流体が、他方の経路から次に流出する流体を引き付けるので、慣性力によって流体の流出効率を向上させることができる。
【0047】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0048】
[付記]
(付記1)
圧電素子が積層された振動膜と、前記振動膜の上面に接して設けられた上側空間部と、前記振動膜の下面に接して設けられた下側空間部とを備え、前記振動膜を前記上側空間部の方向へ変位させることによって、前記上側空間部から外部へ流体を流出させるとともに前記下側空間部へ外部から流体を流入させ、前記振動膜を前記下側空間部の方向へ変位させることによって、前記下側空間部から外部へ流体を流出させるとともに前記上側空間部へ外部から流体を流入させるマイクロポンプ。
【0049】
(付記2)
前記上側空間部の側面に設けられて流体を外部から前記上側空間部へ流入させる上側流入口と前記下側空間部の側面に設けられて流体を外部から前記下側空間部へ流入させる下側流入口は、前記振動膜の膜厚方向に重ならない位置に配置されている付記1に記載のマイクロポンプ。
【0050】
(付記3)
前記上側流入口と外部とを接続する上側流入経路の前記振動膜の膜厚方向から見た形状は、外部から前記上側流入口へ向かって徐々に幅が広くなる形状であり、前記下側流入口と外部とを接続する下側流入経路の前記振動膜の膜厚方向から見た形状は、外部から前記下側流入口へ向かって徐々に幅が広くなる形状である付記2に記載のマイクロポンプ。
【0051】
(付記4)
前記上側空間部の側面に設けられて流体を前記上側空間部から外部へ流出させる上側流出口と前記下側空間部の側面に設けられて流体を前記下側空間部から外部へ流出させる下側流出口は、前記振動膜の膜厚方向に重ならない位置に配置されている付記1~3のいずれか1項に記載のマイクロポンプ。
【0052】
(付記5)
前記上側流出口と外部とを接続する上側流出経路と前記下側流出口と外部とを接続する下側流出経路は、前記振動膜の膜厚方向に少なくとも一部で重なる位置に配置され、前記重なる位置で1つの経路に合流する付記4に記載のマイクロポンプ。
【0053】
(付記6)
前記上側流出口と外部とを接続する上側流出経路の前記振動膜の膜厚方向から見た形状は、前記上側流出口から外部へ向かって徐々に幅が広くなる形状であり、前記下側流出口と外部とを接続する下側流出経路の前記振動膜の膜厚方向から見た形状は、前記下側流出口から外部へ向かって徐々に幅が広くなる形状である付記4または5に記載のマイクロポンプ。
【0054】
(付記7)
前記下側空間部が形成された下側部材に前記振動膜が形成され、前記上側空間部と前記下側空間部の前記振動膜の膜厚方向から見た形状は円形であり、前記下側空間部の直径は、前記上側空間部の直径よりも小さい付記1~6のいずれか1項に記載のマイクロポンプ。
【0055】
(付記8)
前記上側空間部が形成された上側部材と前記下側空間部が形成された下側部材は、それぞれ前記振動膜の膜厚方向から見た形状が四角形状であり、前記上側空間部へ外部から流体を流入させる上側流入経路と前記上側空間部から外部へ流体を流出させる上側流出経路は、前記上側部材の対向しない側面に配置され、前記下側空間部へ外部から流体を流入させる下側流入経路と前記下側空間部から外部へ流体を流出させる下側流出経路は、前記下側部材の対向しない側面に配置される付記1~7のいずれか1項に記載のマイクロポンプ。
【符号の説明】
【0056】
1 マイクロポンプ
3 上側部材
5 下側部材
7 底板
9 振動膜
11 圧電素子
31 上側空間部
33 上側流入経路
35 上側流出経路
37 上側流入口
39 上側流出口
40 切り欠き
51 下側空間部
53 下側流入経路
55 下側流出経路
57 下側流入口
59 下側流出口
60 電極パッド
65 開口部