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  • 特開-強化路盤材およびその製造方法 図1
  • 特開-強化路盤材およびその製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183642
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】強化路盤材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20231221BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20231221BHJP
   E01C 3/04 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/14 F
E01C3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097262
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢埜 泰武
(72)【発明者】
【氏名】井上 陽太郎
(72)【発明者】
【氏名】松永 久宏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 克則
【テーマコード(参考)】
2D051
4G112
【Fターム(参考)】
2D051AF02
2D051AF05
2D051CA09
2D051CA10
4G112PA29
(57)【要約】
【課題】逆断層型破壊を起こすことのない強化路盤材およびその製造方法を提案する。
【解決手段】強化路盤材を、スラグの水浸膨張試験による膨張率(%)が、セメント養生後における強化路盤材の圧縮試験における強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率(%)よりも下回るもので構成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントとスラグとの混合物からなる強化路盤材であって、
該強化路盤材は、該スラグの水浸膨張試験による膨張率(%)が、セメント養生後における強化路盤材の圧縮試験における該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率(%)よりも下回るものであることを特徴とする強化路盤材。
【請求項2】
前記水浸膨張試験は、JIS A 5015 道路用鉄鋼スラグの水浸膨張試験であることを特徴とする請求項1に記載の強化路盤材。
【請求項3】
前記圧縮試験は、0.1~1%/minの圧下速度で行うことを特徴とする請求項1に記載の強化路盤材。
【請求項4】
セメントとスラグとの混合物からなる強化路盤材の製造方法において、
セメント養生後の強化路盤材に対して圧縮試験を行って該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率を求めるとともに、水浸膨張試験により該スラグの膨張率を求め、該スラグの膨張率と該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率とを比較し、該膨張率が、該歪み率よりも下回る条件下でセメントを添加してスラグと混合することを特徴とする強化路盤材の製造方法。
【請求項5】
前記水浸膨張試験は、JIS A 5015 道路用鉄鋼スラグの水浸膨張試験であることを特徴とする請求項4に記載の強化路盤材の製造方法。
【請求項6】
前記圧縮試験は、0.1~1%/minの圧下速度で行うことを特徴とする請求項4に記載の強化路盤材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所の副産物の一つである製鋼スラグを使用した強化路盤材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装の路盤は、路盤の安定性や耐久性を考慮したうえで使用する材料等が選定される。路盤材として用いられる材料は、各都道府県の土木共通仕様書や舗装再生便覧等において定められており、修正CBR等の各種特性を満たすことが求められている。
【0003】
製鉄所の副産物として生成される製鋼スラグは、路盤材の材料の一つであることは周知であるが、製鋼スラグは、その中に含まれる酸化カルシウムが雨水等の水分と反応して堆積膨張を起こすことから、路盤材の材料として用いるあたっては、路盤の施工後における製鋼スラグの膨張を抑制するために、予め、エージング等の前処理を施し、その前処理が施された製鋼スラグにセメントを添加して安定処理混合物としているのが一般的であった。
【0004】
ところで、製鋼スラグを含む強化路盤材は、所望の強度や充填性、締固め性等の他に、製鋼スラグの膨張に起因した逆断層型の破壊を起こさないことが求められ、そのため従来は、一律に大きな安全率を設定して過剰な前処理を行っており、製鋼スラグの膨張をどの程度まで抑制すれば逆断層型の破壊を回避できるかについては未だ解明されていないのが現状であった。なお、ここでいう、逆断層型の破壊とは、路盤材の固結後における製鋼スラグの膨張等によって路盤に水平方向の圧縮力が働いて路盤に断層が生じ、断層の一方側の路盤が他方側の路盤の上にのし上がることにより断層近傍において路盤が隆起する現象をいう。
【0005】
路盤材に関連した先行技術として、例えば、特許文献1、2には、未固結のソイルセメントから将来の発現強度を推定する方法が提案されており、また、特許文献3には、ソイルセメントの造成現場の施工条件に応じた所定材令の圧縮強度を推定する方法が提案されており、さらに、特許文献4には、施工現場の管理および合理化の観点からコンクリートの充填性、締固め性等を評価する方法が提案されているものの、何れのものにおいても、路盤材の固結後の膨張による逆断層破壊を回避することまでは言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-135696号公報
【特許文献2】特開2014-111879号公報
【特許文献3】特開2015-59325号公報
【特許文献4】特開2017-223490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、スラグの膨張に起因した逆断層型破壊を起こすことのない強化路盤材およびその製造方法を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、セメントとスラグとの混合物からなる強化路盤材であって、該強化路盤材は、該スラグの水浸膨張試験による膨張率(%)が、セメント養生後における強化路盤材の圧縮試験における強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率(%)よりも下回るものであることを特徴とする強化路盤材である。本発明において強化路盤材とは、スラグとセメントの安定処理混合物をいうものとする。
【0009】
上記の強化路盤材において、前記水浸膨張試験は、JIS A 5015 道路用鉄鋼スラグの水浸膨張試験(100日間実施)であることが好ましく、また、前記圧縮試験は、0.1~1%/minの圧下速度で行うことが好ましい。水浸膨張試験については、水温80℃で40日間の連続加速水浸膨張試験を実施してもよい。
【0010】
また、本発明は、セメントとスラグとを混合して構成された強化路盤材の製造方法において、セメント養生後の強化路盤材に対して圧縮試験を行って該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率を求めるとともに、水浸膨張試験により該スラグの膨張率を求め、該スラグの膨張率と該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率とを比較し、該膨張率が、該歪み率よりも下回る条件下でセメントを添加してスラグと混合することを特徴とする強化路盤材の製造方法である。本発明においてスラグの膨張率を圧縮破壊に至る歪み率よりも下回るものとするためには、より長時間エージング処理を施したスラグを使用するか、よりCaOやMgO濃度の低いスラグを使用するか、あるいは、セメント添加量を低減する、等のいずれか1または2以上の方法を適用するのが好ましい。
【0011】
上記の製造方法において、前記水浸膨張試験は、JIS A 5015道路用鉄鋼スラグの水浸膨張試験であることが好ましく、また、前記圧縮試験は、0.1~1%/minの圧下速度で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セメント養生後における強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率(%)を、スラグの膨張によるものとみなし、この歪み率(%)を、製鋼スラグの水浸膨張試験による膨張率(%)と比較し、該膨張率(%)が歪み率(%)よりも下回るものすることにより、スラグの膨張を抑制でき、それによる強化路盤材の逆断層破壊を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】セメント添加量と圧縮破壊時の歪み率との関係を示したグラフである。
図2】圧下速度と圧縮破壊時の歪み率の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、強化路盤材において、スラグの水浸膨張試験による膨張率(%)が、セメント養生後における強化路盤材の圧縮試験における該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率(%)よりも下回る場合、固結後の材料の膨張に起因した逆断層型破壊を起こすのを回避することが可能で、これにより、将来的に逆断層型破壊を起こさないセメント添加量を設定できるという新規知見に基づいてなされたものである。
【0015】
図1は、粒度が0~40mmに調整された、製鋼スラグを用い、その製鋼スラグに1.0~5.0mass%のセメントを添加、混合して突き固め(含水比は、セメントの28日間の固化に必要十分な含水比に調整)封かん養生を行った、直径100mm、高さ/直径比が1.27の供試体を複数作成し、得られた供試体の圧縮破壊時の歪み率(%)とセメント添加量(%)の関係を示した図であり、また、表1は、各供試体の添加セメント量(%)、各供試体の圧縮破壊時の歪み率(%)、製鋼スラグの膨張率(%)、適用の可否の調査結果を示したものである。
【0016】
なお、この調査においては、製鋼スラグの粒度分布を、JIS A 1102に従い測定し、測定された粒度を用いて相対粒度を作成し、各供試体で粒度差がでないように調整(スラグの最大粒径が供試体の直径の1/4以下となる相対粒度に調整)した。また、混合物の突き固めは、試験便覧のE011、F007に従って行い、圧縮試験での圧下速度は、0.2mm/minに設定した。また、圧縮破壊時の歪み率(%)は、圧縮試験結果より荷重・歪み曲線を作成し、荷重・歪み曲線における最大荷重の歪みを歪み率に換算して求め、製鋼スラグの膨張率(%)は、JIS A5015道路用鉄鋼スラグの水浸膨張試験(最終的な膨張率を推定する試験)から求め、適用可否は、圧縮破壊時の歪み率(%)よりも製鋼スラグの水浸膨張試験から得られた膨張率(%)が下回るものを〇で、とくに歪み率(%)と膨張率(%)の差が0.2%以上のものは◎で表記し、圧縮破壊時の歪み率(%)よりも膨張率(%)が上回るものを×で表記した。
【0017】
【表1】
【0018】
表1において実施例1~3は添加セメント量を1.5mass%とした場合であり、実施例4~6は添加セメント量を3.5mass%とした場合であり、実施例7は添加セメント量を5.0mass%とした場合であるが、膨張率(%)は、いずれのものも破断時の歪み率(%)よりも下回っており、適用可能であるという結果が得られた。これに対して、比較例1~4は、膨張率(%)が全て破断時の歪み率(%)を上回るものであり、適用不可となった。
【0019】
本発明において圧縮試験における圧下速度は、0.1~1%/minの圧下速度で行うのが好ましいとしたが、その理由は、製鋼スラグが拘束状態で膨張する時の応力を意図的に起こすことができると考えられたからであり、そのためには、できるだけ圧下速度を小さくし、かつ圧縮破壊に至る歪み率(%)に影響を与えることがないようにしなければないことが肝要であって、予備試験から図2に示すような結果が得られたからである。
【0020】
本発明においては、強化路盤材を、セメント養生後の強化路盤材に対して圧縮試験を行って該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率を求めるとともに、水浸膨張試験により該スラグの膨張率を求め、該スラグの膨張率と該路盤材の圧縮破壊に至る歪み率とを比較し、該膨張率が、該歪み率よりも下回る条件下でセメントを添加してスラグと混合することにより製造する。そのためには、スラグの粒度は、0~40mmの範囲に調整されたものを用いるのが好ましく、添加するセメント量は、必要な路盤支持力に合わせて1~5mass%の範囲で決定するのが好ましく、スラグとセメントとの混合は、スラグを突き固め前日に調湿し、突き固め直前にセメントと混合することが、また、封かん養生は温度20℃、湿度98%という条件とするのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、逆断層型破壊を起こすことのない強化路盤材およびその製造方法が提供できる。
図1
図2