(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183645
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電源装置及び車両
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20231221BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H02J7/00 302B
H02J7/00 A
H02J7/00 P
H02J7/00 Q
B60R16/02 645A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097265
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良介
(72)【発明者】
【氏名】佐野 佑樹
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA04
5G503DA07
5G503DA17
5G503EA09
5G503FA06
(57)【要約】
【課題】負荷の故障診断が必要となったタイミングから故障診断を開始するまでの時間を短くすることができる電源装置を提供する。
【解決手段】電力供給源から複数の負荷への電力供給を制御する電源装置であって、蓄電素子と、電力供給源と蓄電素子とを充電可能に接続する第1回路と、蓄電素子と複数の負荷とを放電可能に接続する第2回路と、電力供給源と複数の負荷とを電力供給可能に接続する第3回路と、所定の信号が検出された場合、電力供給源の電力で蓄電素子を充電するように第1回路を制御すると共に、電力供給源の電力を複数の負荷へ供給するように第3回路を制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給源から複数の負荷への電力供給を制御する電源装置であって、
蓄電素子と、
前記電力供給源と前記蓄電素子とを充電可能に接続する第1回路と、
前記蓄電素子と前記複数の負荷とを放電可能に接続する第2回路と、
前記電力供給源と前記複数の負荷とを電力供給可能に接続する第3回路と、
所定の信号が検出された場合、前記電力供給源の電力で前記蓄電素子を充電するように前記第1回路を制御すると共に、前記電力供給源の電力を前記複数の負荷へ供給するように前記第3回路を制御する制御部と、を備える、電源装置。
【請求項2】
前記所定の信号が検出された場合、前記制御部は、前記蓄電素子から前記複数の負荷へ放電しないように前記第2回路を制御する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記複数の負荷のそれぞれが所定の状態にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部において前記所定の状態にあると判定された負荷の故障診断を実施する診断部と、をさらに備える、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記複数の負荷から前記所定の状態にあるか否かの情報を取得する、請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記電源装置が車両に搭載され、
前記所定の信号は、前記車両のイグニッションがオンされたことを示すIG-ON信号である、請求項3又は4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記第3回路は、前記電力供給源と前記複数の負荷とを接続するリレーであり、
前記制御部は、前記IG-ON信号が検出されると前記リレーを電気的に導通させる、請求項5に記載の電源装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記診断部による負荷の故障診断が終了すると、前記リレーを電気的に遮断させる、請求項6に記載の電源装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記電力供給源が失陥した場合、前記リレーを電気的に遮断させると共に、前記蓄電素子から前記複数の負荷へ放電するように前記第2回路を制御する、請求項6に記載の電源装置。
【請求項9】
電力供給源から複数の負荷への電力供給を制御する電源装置であって、
蓄電素子と、
前記電力供給源と前記蓄電素子とを充電可能に接続する第1回路と、
前記蓄電素子と前記複数の負荷とを放電可能に接続する第2回路と、
前記電力供給源と前記複数の負荷とを電力供給可能に接続する第3回路と、を備える、電源装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の前記電源装置と、
前記電力供給源と、
前記複数の負荷と、が搭載された、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力供給源から複数の負荷への電力供給を制御する電源装置、及びこの電源装置を搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、バッテリの正常時にはバッテリから電力が供給される負荷に対して、バッテリの異常時にキャパシタに充電された電力を用いて供給をバックアップする電源装置が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された電源装置では、例えば車両のイグニッションオンのタイミングで負荷の故障診断を実施するときなど、電源装置から負荷への電力供給が必要な場合、バッテリの電力でキャパシタを充電させた後にキャパシタから負荷へ充電電力が供給される。
【0005】
負荷の故障診断を開始するまでの時間を短くするためには、充電回路の電流容量を増加させてキャパシタの充電を素早く完了させる必要があるが、それを実現させるには、充電回路のサイズが大きくなる課題や配線径が太くなる課題などが生じる。よって、電源装置の構成には、改善の余地がある。
【0006】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、負荷の故障診断が必要となったタイミングから故障診断を開始するまでの時間を短くすることができる電源装置などを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、電力供給源から複数の負荷への電力供給を制御する電源装置であって、蓄電素子と、電力供給源と蓄電素子とを充電可能に接続する第1回路と、蓄電素子と複数の負荷とを放電可能に接続する第2回路と、電力供給源と複数の負荷とを電力供給可能に接続する第3回路と、所定の信号が検出された場合、電力供給源の電力で蓄電素子を充電するように第1回路を制御すると共に、電力供給源の電力を複数の負荷へ供給するように第3回路を制御する制御部と、を備える、電源装置である。
【発明の効果】
【0008】
上記本開示の電源装置によれば、負荷の故障診断が必要となる所定の信号が検出された場合に第1回路と第3回路とを同時に動作させるようにすることで、負荷の故障診断が必要となったタイミングから故障診断を開始するまでの時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電源装置の概略構成図
【
図2】電源装置によって実行される第1例の故障診断制御の処理フローチャート
【
図3A】電源装置によって実行される第2例の故障診断制御の処理フローチャート
【
図3B】電源装置によって実行される第2例の故障診断制御の処理フローチャート
【
図4A】電源装置によって実行される第3例の故障診断制御の処理フローチャート
【
図4B】電源装置によって実行される第3例の故障診断制御の処理フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の電源装置は、負荷の故障診断が必要なことを示す信号が検出されると、電力供給源の電力を蓄電素子の充電と並行して複数の負荷へ供給する。これにより、蓄電素子の充電完了を待たなくてもよくなり、負荷の故障診断が必要となったタイミングから故障診断を開始するまでの時間を短くすることができる。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る電源装置100を含むシステム10の概略構成図である。
図1に例示したシステム10は、電源装置100と、電力供給源200と、複数の負荷310~330と、を備えている。このシステム10は、例えば、車両などに搭載することが可能である。
【0012】
電力供給源200は、複数の負荷310~330に電力を供給するメイン電源(1次系電源)である。この電力供給源200としては、システム10が車両に搭載される場合、発電を行うオルタネータ及び発電電力を所定の電圧に変換するDCDCコンバータや、補機バッテリなどの充放電可能に構成された二次電池など、所定の電源(+B電源)を例示できる。
【0013】
複数の負荷310~330は、電力供給源200に直接(ジカ線などで)又は間接的に(所定のECUなどを介して)接続され、電力供給源200に基づいたメイン電源(+B電源)から電力の供給を受ける所定の機器である。複数の負荷310~330の数は、
図1に示したものに限られない。この複数の負荷310~330としては、電源装置100を用いた冗長電源構成を必要とするバックアップ対象の負荷(例えば、車両であれば自動運転システムなど)を例示することができる。
【0014】
電源装置100は、電力供給源200の電源失陥などによって電力供給源200から複数の負荷310~330への電力供給に異常が生じたときに、複数の負荷310~330に電力をバックアップ供給するための電源であり、電力供給源200に基づいたサブ電源(2次系電源)である。
【0015】
図1に例示した電源装置100は、蓄電素子110と、充電回路120と、放電回路130と、リレー回路140と、判定部150と、診断部160と、制御部170と、複数の負荷リレー181~183と、を備えている。
【0016】
蓄電素子110は、例えば、充放電可能に構成されたリチウムイオン電池などの二次電池やキャパシタなどである。この蓄電素子110は、電力供給源200の電力を充電可能に、充電回路120と接続されている。また、蓄電素子110は、自らが蓄えた電力を複数の負荷310~330へ放電可能に、放電回路130と接続されている。
【0017】
充電回路120は、電力供給源200の電力を入力し、蓄電素子110に出力するための回路(第1回路)である。この充電回路120には、例えばDCDCコンバータを用いることができる。充電回路120は、制御部170の指示(電圧指令値など)に基づいて、電力供給源200から供給される電力を蓄電素子110に充電することができる。
【0018】
放電回路130は、蓄電素子110から入力する電力を複数の負荷310~330に出力するための回路(第2回路)である。また、放電回路130は、電力供給源200からリレー回路140経由で電力を入力して蓄電素子110に出力することも可能である。この放電回路130には、制御部170の指示(電圧指令値など)に基づいて、リレー回路140を介して電力供給源200から供給される電力を、所定の電圧に変換して蓄電素子110に充電したり、蓄電素子110に蓄えた電力(バックアップ電力)を所定の電圧に変換して、複数の負荷リレー181~183を介して複数の負荷310~330に供給したりすることができる、DCDCコンバータを用いることができる。
【0019】
リレー回路140は、制御部170の指示に基づいて、電気的な導通/遮断の状態を切り替えることができるリレーなどのスイッチ素子を含む回路(第3回路)である。リレー回路140は、一方端子が電力供給源200と充電回路120との接続点に接続されており、他方端子が放電回路130と複数の負荷リレー181~183との接続点に接続されている。つまり、このリレー回路140は、充電回路120及び放電回路130をショートカットして、電力供給源200と複数の負荷リレー181~183とを直接接続するパススルー回路として機能する。リレー回路140のリレーには、励磁式のメカニカルリレーや電界効果トランジスタ(例えばMOSFET)を用いた半導体リレーなどを用いることができる。
【0020】
複数の負荷リレー181~183は、制御部170の指示に基づいて、電気的な導通/遮断の状態を切り替えることができるスイッチ素子である。負荷リレー181は、一方端子がリレー回路140と放電回路130との接続点に接続され、他方端子が負荷310に接続される。負荷リレー182は、一方端子がリレー回路140と放電回路130との接続点に接続され、他方端子が負荷320に接続される。負荷リレー183は、一方端子がリレー回路140と放電回路130との接続点に接続され、他方端子が負荷330に接続される。複数の負荷リレー181~183の数は、
図1に示したものに限られず、複数の負荷310~330の数に応じて増減する。
【0021】
判定部150は、複数の負荷310~330のそれぞれについて、各負荷が故障診断を実施できる所定の状態にあるか否かを判定するための構成である。この所定の状態とは、故障診断の実施などで負荷が動作しても負荷が安全を維持できる状態である。システム10が車両に搭載される場合には、車両の速度や車体の傾きなどの車両状態に基づいて負荷の安全状態を判定することができる。安全状態であると判定された負荷については、対応する負荷リレーの導通が許可される。
【0022】
診断部160は、負荷の故障診断を実施するための構成である。この故障診断は、判定部150の判定で負荷リレーの導通が許可された負荷に関して行われる。故障の有無は、負荷リレーの導通によって負荷に印加される電圧や負荷に流れる電流の時間変化などに基づいて、適切に判断される。この電圧や電流は、電源装置100が備える電圧センサーや電流センサーなどを用いて取得することが可能である。故障診断の結果は、必要に応じて診断部160から所定の構成に通知される。
【0023】
制御部170は、リレー回路140の導通/遮断の切り替え制御、複数の負荷リレー181~183それぞれの導通/遮断の切り替え制御、充電回路120の動作/非動作の制御、及び放電回路130の動作/非動作の制御を行うための構成である。この制御部170は、少なくとも所定の信号の検出に基づいて、リレー回路140の状態、充電回路120の状態、及び放電回路130の状態を制御する。所定の信号としては、システム10が車両に搭載される場合、イグニッションがオンされたことを示すIG-ON信号が挙げられる。
【0024】
なお、この電源装置100の一部又は全部の構成は、典型的にはプロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェイスなどを含んだ電子制御装置(ECU)として構成され得る。この電子制御装置は、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが読み出して実行することによって、上述した充電回路120、放電回路130、判定部150、診断部160、及び制御部170の一部又は全部の機能を実現する。
【0025】
[制御]
次に、
図2、
図3A、
図3B、
図4A、及び
図4Bをさらに参照して、システム10が車両に搭載された場合における電源装置100が実行する制御の具体例を、いくつか説明する。
【0026】
(1)第1例
図2は、電源装置100の各構成が実行する故障診断制御の第1例の処理手順を説明するフローチャートである。
図2に示す第1例の故障診断制御は、電源装置100によってIG-ON信号が検出されると開始される。この第1例は、車両のイグニッションオンに応じて複数の負荷310~330に対してメイン電源(1次系電源)からメイン電力が供給される場合に実行される故障診断制御である。なお、IG-ON信号が検出される前の車両の停止状態においては、リレー回路140及び複数の負荷リレー181~183は、それぞれ遮断(OFF)状態となっている。
【0027】
(ステップS201)
制御部170は、充電回路120を動作状態に制御し、放電回路130を非動作状態に制御し、リレー回路140を導通(ON)状態に制御する。この制御によって、電力供給源200からサブ電力が、蓄電素子110と複数の負荷リレー181~183とに並行して出力される状態になる。制御部170によって充電回路120の状態、放電回路130の状態、及びリレー回路140の状態がそれぞれ制御されると、ステップS202に処理が進む。
【0028】
(ステップS202)
判定部150は、複数の負荷310~330のそれぞれから、負荷が安全に動作できるか否かに関する情報である安全情報を取得する。負荷が安全に動作できるか否かは、メイン電源から供給されたメイン電力で動作する各負荷が、車両状態に基づいてそれぞれ判断する。そして、判定部150は、複数の負荷310~330から取得した安全情報に基づいて、複数の負荷リレー181~183の導通が可能であるか否かを判定する。具体的には、判定部150は、安全に動作できると判断した負荷(例えば負荷310)について、その負荷にサブ電力を供給するための負荷リレー(例えば負荷リレー181)の導通が可能であると判定する。判定部150によって複数の負荷リレー181~183の導通可/不可がそれぞれ判定されると、ステップS203に処理が進む。
【0029】
(ステップS203)
制御部170は、判定部150によって導通可能と判定された負荷リレーのうち、いずれか1つの負荷リレーを導通(ON)状態に制御する。この制御により、導通状態に制御された負荷リレーに繋がる負荷(以下「対象負荷」という)に、電力供給源200からサブ電力が供給される状態になる。導通状態に制御する負荷リレーの選択は、ランダムに行われてもよいし、所定の順序に基づいて行われてもよいし、予め各負荷に付与された優先度に基づいて行われてもよい。制御部170によって導通可能な負荷リレーの1つが導通状態に制御されると、ステップS204に処理が進む。
【0030】
(ステップS204)
診断部160は、対象負荷の故障診断を実施する。この故障診断には、周知の手法を用いることができる。診断部160によって対象負荷の故障診断が実施されると、ステップS205に処理が進む。
【0031】
(ステップS205)
診断部160は、故障診断の結果、対象負荷が故障しているか否かを判断する。故障の有無は、例えば、サブ電力によって対象負荷に印加される電圧や負荷に流れる電流の時間変化などに基づいて判断される。診断部160が、対象負荷が故障していると判断した場合は(ステップS205、はい)、ステップS206に処理が進む。一方、診断部160が、対象負荷が故障していないと判断した場合は(ステップS205、いいえ)、ステップS207に処理が進む。
【0032】
(ステップS206)
診断部160は、対象負荷が故障していることを通知する。この対象負荷の故障は、ダイアグによって対象負荷(又は全ての負荷310~330)に通知されてもよいし、所定の表示デバイスや音声デバイスなどを介して車両のドライバーなどに通知(例えば故障表示や停車勧告)されてもよい。診断部160によって対象負荷の故障が通知されると、本第1例の故障診断制御が終了する。
【0033】
(ステップS207)
診断部160は、判定部150によって負荷リレーが導通可能と判定された負荷について故障診断の実施が全て終了したか否かを判断する。診断部160が、負荷リレーが導通可能な負荷の故障診断が全て終了していないと判断した場合は(ステップS207、いいえ)、故障診断をまだ実施していない負荷について故障診断を実施すべく、ステップS203に処理が進む。一方、診断部160が、負荷リレーが導通可能な負荷の故障診断が全て終了したと判断した場合は(ステップS207、はい)、本第1例の故障診断制御が終了する。
【0034】
なお、上記ステップS207において診断部160が負荷リレーの導通が可能な負荷の故障診断が全て終了したと判断した後、電力供給源200のサブ電力を複数の負荷310~330へ供給する必要がない場合には、制御部170がリレー回路140を遮断(OFF)状態に制御してもよい。また、暗電流を低減させるために、複数の負荷リレー181~183を全て遮断(OFF)状態に制御してもよい。
【0035】
また、上記ステップS207において診断部160が負荷リレーの導通が可能な負荷の故障診断が全て終了したと判断した後、メイン電源(1次系電源)の失陥の有無を検知する処理を実施してもよい。この場合、メイン電源の失陥が検知されれば、制御部170が、リレー回路140を遮断(OFF)状態に制御し、かつ複数の負荷リレー181~183を導通(ON)状態に制御すると共に、放電回路130を動作状態に制御することによって、蓄電素子110から複数の負荷310~330に対してバックアップ給電が開始される。
【0036】
また、上記第1例では、負荷リレーが導通可能な2つ以上の負荷に対して逐次的に故障診断を実施する処理(ステップS203~S207)を説明したが、2つ以上の負荷の故障診断を並列に実施してもよい。この場合、制御部170によって、導通可能と判定された負荷リレーが全て導通(ON)状態に制御されることになる。
【0037】
(2)第2例
図3A及び
図3Bは、電源装置100の各構成が実行する故障診断制御の第2例の処理手順を説明するフローチャートである。
図3Aの処理と
図3Bの処理とは、結合子Xで結ばれる。
図3A及び
図3Bに示す第2例の故障診断制御は、電源装置100によってIG-ON信号が検出されると開始される。この第2例は、車両のイグニッションオンに応じて複数の負荷310~330に対してメイン電源(1次系電源)からメイン電力が供給されない場合に実行される故障診断制御である。なお、IG-ON信号が検出される前の車両の停止状態においては、リレー回路140及び複数の負荷リレー181~183は、それぞれ遮断(OFF)状態となっている。
【0038】
(ステップS301)
制御部170は、充電回路120を動作状態に制御し、放電回路130を非動作状態に制御し、リレー回路140を導通(ON)状態に制御する。この制御によって、電力供給源200からサブ電力が、蓄電素子110と複数の負荷リレー181~183とに並行して出力される状態になる。制御部170によって充電回路120の状態、放電回路130の状態、及びリレー回路140の状態がそれぞれ制御されると、ステップS302に処理が進む。
【0039】
(ステップS302)
制御部170は、複数の負荷リレー181~183の全てを導通(ON)状態に制御する。この制御により、複数の負荷310~330の全てに、電力供給源200からサブ電力が供給される状態になる。制御部170によって複数の負荷310~330が導通状態に制御されると、ステップS303に処理が進む。
【0040】
(ステップS303)
判定部150は、複数の負荷310~330のそれぞれが安全に動作できる状態(安全状態)か否かを判断する。負荷が安全に動作できるか否かは、電力供給源200から供給されたサブ電力によって各負荷に印加される電圧や各負荷に流れる電流などに基づいて、判断することができる。そして、判定部150は、複数の負荷310~330について判断した安全状態に基づいて、複数の負荷リレー181~183の導通が可能であるか否かを判定する。判定部150は、安全に動作できると判断した負荷(例えば負荷310)について、その負荷にサブ電力を供給するための負荷リレー(例えば負荷リレー181)の導通が可能であると判定する。判定部150によって複数の負荷リレー181~183の導通可/不可がそれぞれ判定されると、ステップS304に処理が進む。
【0041】
(ステップS304)
制御部170は、複数の負荷リレー181~183の全てを遮断(OFF)状態に制御する。この制御により、電力供給源200から複数の負荷310~330の全てに対するサブ電力の供給が停止される。制御部170によって複数の負荷310~330が遮断状態に制御されると、ステップS305に処理が進む。
【0042】
(ステップS305)
制御部170は、判定部150によって導通可能と判定された負荷リレーのうち、いずれか1つの負荷リレーを導通(ON)状態に制御する。この制御により、導通状態に制御された負荷リレーに繋がる対象負荷に、電力供給源200からサブ電力が供給される状態になる。導通状態に制御する負荷リレーの選択は、ランダムに行われてもよいし、所定の順序に基づいて行われてもよいし、予め各負荷に付与された優先度に基づいて行われてもよい。制御部170によって導通可能な負荷リレーの1つが導通状態に制御されると、ステップS306に処理が進む。
【0043】
(ステップS306)
診断部160は、対象負荷の故障診断を実施する。この故障診断には、周知の手法を用いることができる。診断部160によって対象負荷の故障診断が実施されると、ステップS307に処理が進む。
【0044】
(ステップS307)
診断部160は、故障診断の結果、対象負荷が故障しているか否かを判断する。故障の有無は、例えば、サブ電力によって対象負荷に印加される電圧や負荷に流れる電流の時間変化などに基づいて判断される。診断部160が、対象負荷が故障していると判断した場合は(ステップS307、はい)、ステップS308に処理が進む。一方、診断部160が、対象負荷が故障していないと判断した場合は(ステップS307、いいえ)、ステップS309に処理が進む。
【0045】
(ステップS308)
診断部160は、対象負荷が故障していることを通知する。この対象負荷の故障は、ダイアグによって対象負荷(又は全ての負荷310~330)に通知されてもよいし、所定の表示デバイスや音声デバイスなどを介して車両のドライバーなどに通知(例えば故障表示や停車勧告)されてもよい。診断部160によって対象負荷の故障が通知されると、本第2例の故障診断制御が終了する。
【0046】
(ステップS309)
診断部160は、判定部150によって負荷リレーが導通可能と判定された負荷について故障診断の実施が全て終了したか否かを判断する。診断部160が、負荷リレーが導通可能な負荷の故障診断が全て終了していないと判断した場合は(ステップS309、いいえ)、故障診断をまだ実施していない負荷について故障診断を実施すべく、ステップS305に処理が進む。一方、診断部160が、負荷リレーが導通可能な負荷の故障診断が全て終了したと判断した場合は(ステップS309、はい)、本第2例の故障診断制御が終了する。
【0047】
なお、上記ステップS309において診断部160が負荷リレーの導通が可能な負荷の故障診断が全て終了したと判断した後、電力供給源200のサブ電力を複数の負荷310~330へ供給する必要がない場合には、制御部170がリレー回路140を遮断(OFF)状態に制御してもよい。また、暗電流を低減させるために、複数の負荷リレー181~183を全て遮断(OFF)状態に制御してもよい。
【0048】
また、上記ステップS309において診断部160が負荷リレーの導通が可能な負荷の故障診断が全て終了したと判断した後、メイン電源(1次系電源)の失陥の有無を検知する処理を実施してもよい。この場合、メイン電源の失陥が検知されれば、制御部170が、リレー回路140を遮断(OFF)状態に制御し、かつ複数の負荷リレー181~183を導通(ON)状態に制御すると共に、放電回路130を動作状態に制御することによって、蓄電素子110から複数の負荷310~330に対してバックアップ給電が開始される。
【0049】
また、上記第2例では、負荷リレーが導通可能な2つ以上の負荷に対して逐次的に故障診断を実施する処理(ステップS305~S309)を説明したが、2つ以上の負荷の故障診断を並列に実施してもよい。この場合、制御部170によって、導通可能と判定された負荷リレーが全て導通(ON)状態に制御されることになる。
【0050】
(3)第3例
図4A及び
図4Bは、電源装置100の各構成が実行する故障診断制御の第3例の処理手順を説明するフローチャートである。
図4Aの処理と
図4Bの処理とは、結合子Y及びZで結ばれる。
図4A及び
図4Bに示す第3例の故障診断制御は、電源装置100によってIG-ON信号が検出されると開始される。この第3例は、車両のイグニッションオンに応じてメイン電源(1次系電源)からメイン電力が供給される負荷とメイン電源から電力が供給されない負荷とが混在している場合に、実行される故障診断制御である。なお、IG-ON信号が検出される前の車両の停止状態においては、リレー回路140及び複数の負荷リレー181~183は、それぞれ遮断(OFF)状態となっている。
【0051】
(ステップS401)
制御部170は、充電回路120を動作状態に制御し、放電回路130を非動作状態に制御し、リレー回路140を導通(ON)状態に制御する。この制御によって、電力供給源200からサブ電力が、蓄電素子110と複数の負荷リレー181~183とに並行して出力される状態になる。制御部170によって充電回路120の状態、放電回路130の状態、及びリレー回路140の状態がそれぞれ制御されると、ステップS402に処理が進む。
【0052】
(ステップS402)
判定部150は、複数の負荷310~330のうち、メイン電源からメイン電力の供給を受けて安全に動作できるか否かを判断できる負荷(以下「負荷A」という)から、その負荷Aが安全に動作できるか否かに関する情報である安全情報を取得する。そして、判定部150は、取得した安全情報に基づいて、負荷Aにサブ電力を供給するための負荷リレーの導通が可能であるか否かを個別に判定する。判定部150によって負荷Aの負荷リレーの導通可/不可がそれぞれ判定されると、ステップS403に処理が進む。
【0053】
(ステップS403)
制御部170は、判定部150によって導通可能と判定された負荷リレーのうち、いずれか1つの負荷リレーを導通(ON)状態に制御する。この制御により、導通状態に制御された負荷リレーに繋がる対象負荷に、電力供給源200からサブ電力が供給される状態になる。導通状態に制御する負荷リレーの選択は、負荷Aの中でランダムに行われてもよいし、負荷Aにおける所定の順序に基づいて行われてもよいし、予め各負荷Aに付与された優先度に基づいて行われてもよい。制御部170によって負荷Aについて導通可能な負荷リレーの1つが導通状態に制御されると、ステップS404に処理が進む。
【0054】
(ステップS404)
診断部160は、対象負荷(負荷A)の故障診断を実施する。この故障診断には、周知の手法を用いることができる。診断部160によって対象負荷(負荷A)の故障診断が実施されると、ステップS405に処理が進む。
【0055】
(ステップS405)
診断部160は、故障診断の結果、対象負荷(負荷A)が故障しているか否かを判断する。故障の有無は、例えば、サブ電力によって対象負荷(負荷A)に印加される電圧や負荷に流れる電流の時間変化などに基づいて判断される。診断部160が、対象負荷(負荷A)が故障していると判断した場合は(ステップS405、はい)、ステップS414に処理が進む。一方、診断部160が、対象負荷(負荷A)が故障していないと判断した場合は(ステップS405、いいえ)、ステップS406に処理が進む。
【0056】
(ステップS406)
診断部160は、判定部150によって負荷リレーが導通可能と判定された負荷Aについて故障診断の実施が全て終了したか否かを判断する。診断部160が、負荷リレーが導通可能な負荷Aの故障診断が全て終了していないと判断した場合は(ステップS406、いいえ)、故障診断をまだ実施していない負荷Aについて故障診断を実施すべく、ステップS403に処理が進む。一方、診断部160が、負荷リレーが導通可能な負荷Aの故障診断が全て終了したと判断した場合は(ステップS406、はい)、ステップS407に処理が進む。
【0057】
(ステップS407)
制御部170は、負荷Aに接続された負荷リレーを全て遮断(OFF)状態に制御する。この制御により、電力供給源200から負荷Aの全てに対するサブ電力の供給が停止される。制御部170によって負荷Aが遮断状態に制御されると、ステップS408に処理が進む。
【0058】
(ステップS408)
制御部170は、複数の負荷310~330のうち、判定部150が安全情報を取得できなかった負荷(以下「負荷B」という)に接続された負荷リレーを全て導通(ON)状態に制御する。判定部150が安全情報を取得できなかった負荷とは、車両のイグニッションオンに応じてメイン電源からメイン電力の供給を受けることができない負荷である。この制御により、負荷Bの全てに電力供給源200からサブ電力が供給される状態になる。制御部170によって負荷Bの負荷リレーが全て導通状態に制御されると、ステップS409に処理が進む。
【0059】
(ステップS409)
判定部150は、負荷Bが安全に動作できる状態(安全状態)か否かを判断する。負荷Bが安全に動作できるか否かは、電力供給源200から供給されたサブ電力によって負荷Bに印加される電圧や負荷Bに流れる電流などに基づいて、判断することができる。そして、判定部150は、負荷Bについて判断した安全状態に基づいて、負荷Bに接続された負荷リレーの導通が可能であるか否かを判定する。判定部150によって負荷Bの負荷リレーの導通可/不可が判定されると、ステップS410に処理が進む。
【0060】
(ステップS410)
制御部170は、負荷Bに接続された負荷リレーを全て遮断(OFF)状態に制御する。この制御により、電力供給源200から負荷Bの全てに対するサブ電力の供給が停止される。制御部170によって負荷Bの負荷リレーが遮断状態に制御されると、ステップS411に処理が進む。
【0061】
(ステップS411)
制御部170は、判定部150によって導通可能と判定された負荷リレーのうち、いずれか1つの負荷リレーを導通(ON)状態に制御する。この制御により、導通状態に制御された負荷リレーに繋がる対象負荷に、電力供給源200からサブ電力が供給される状態になる。導通状態に制御する負荷リレーの選択は、負荷Bの中でランダムに行われてもよいし、負荷Bにおける所定の順序に基づいて行われてもよいし、予め各負荷Bに付与された優先度に基づいて行われてもよい。制御部170によって負荷Bについて導通可能な負荷リレーの1つが導通状態に制御されると、ステップS412に処理が進む。
【0062】
(ステップS412)
診断部160は、対象負荷(負荷B)の故障診断を実施する。この故障診断には、周知の手法を用いることができる。診断部160によって対象負荷(負荷B)の故障診断が実施されると、ステップS413に処理が進む。
【0063】
(ステップS413)
診断部160は、故障診断の結果、対象負荷(負荷B)が故障しているか否かを判断する。故障の有無は、例えば、サブ電力によって対象負荷(負荷B)に印加される電圧や負荷に流れる電流の時間変化などに基づいて判断される。診断部160が、対象負荷(負荷B)が故障していると判断した場合は(ステップS413、はい)、ステップS414に処理が進む。一方、診断部160が、対象負荷(負荷B)が故障していないと判断した場合は(ステップS413、いいえ)、ステップS415に処理が進む。
【0064】
(ステップS414)
診断部160は、対象負荷(負荷A、負荷B)が故障していることを通知する。この対象負荷の故障は、ダイアグによって対象負荷(又は全ての負荷310~330)に通知されてもよいし、所定の表示デバイスや音声デバイスなどを介して車両のドライバーなどに通知(例えば故障表示や停車勧告)されてもよい。診断部160によって対象負荷(負荷A、負荷B)の故障が通知されると、本第3例の故障診断制御が終了する。
【0065】
(ステップS415)
診断部160は、判定部150によって負荷リレーが導通可能と判定された負荷Bについて故障診断の実施が全て終了したか否かを判断する。診断部160が、負荷リレーが導通可能な負荷Bの故障診断が全て終了していないと判断した場合は(ステップS415、いいえ)、故障診断をまだ実施していない負荷Bについて故障診断を実施すべく、ステップS411に処理が進む。一方、診断部160が、負荷リレーが導通可能な負荷Bの故障診断が全て終了したと判断した場合は(ステップS415、はい)、本第3例の故障診断制御が終了する。
【0066】
なお、上記ステップS415において診断部160が負荷リレーの導通が可能な負荷A及び負荷Bの故障診断が全て終了したと判断した後、電力供給源200のサブ電力を複数の負荷310~330へ供給する必要がない場合には、制御部170がリレー回路140を遮断(OFF)状態に制御してもよい。また、暗電流を低減させるために、複数の負荷リレー181~183を全て遮断(OFF)状態に制御してもよい。
【0067】
また、上記ステップS415において診断部160が負荷リレーの導通が可能な負荷A及び負荷Bの故障診断が全て終了したと判断した後、メイン電源(1次系電源)の失陥の有無を検知する処理を実施してもよい。この場合、メイン電源の失陥が検知されれば、制御部170が、リレー回路140を遮断(OFF)状態に制御し、かつ複数の負荷リレー181~183を導通(ON)状態に制御すると共に、放電回路130を動作状態に制御することによって、蓄電素子110から複数の負荷310~330に対してバックアップ給電が開始される。
【0068】
また、上記第2例では、負荷リレーが導通可能な2つ以上の負荷Aに対して逐次的に故障診断を実施する処理(ステップS403~S406)、及び負荷リレーが導通可能な2つ以上の負荷Bに対して逐次的に故障診断を実施する処理(ステップS411~S415)を説明した。しかし、2つ以上の負荷Aの故障診断を並列に実施してもよいし、2つ以上の負荷Bの故障診断を並列に実施してもよい。この場合、制御部170によって、導通可能と判定された負荷リレーが全て導通(ON)状態に制御されることになる。
【0069】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係る電源装置100は、電力供給源200の電力を蓄電素子110に充電する充電回路120、蓄電素子110の電力を複数の負荷310~330に放電する放電回路130、及び電力供給源200の電力を複数の負荷310~330に直接供給するリレー回路140を備え、IG-ON信号が検出された場合、電力供給源200の電力による蓄電素子110の充電と、電力供給源200の電力による複数の負荷310~330への供給とを並列に行うように制御する。
【0070】
この制御によって、負荷の故障診断の開始に際して蓄電素子110の充電完了を待たなくてもよくなり、複数の負荷310~330の故障診断が必要となったタイミングから故障診断を開始するまでの時間を短くすることができる。
【0071】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、電源装置だけでなく、プロセッサとメモリとを備えた電源装置が実行する制御方法、制御方法を実行するための制御プログラム、制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的記憶媒体、及び電源装置を搭載した車両などとして捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本開示の電源装置は、冗長的な電源構成を必要とする負荷を複数装備する車両などに利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 システム
100 電源装置
110 蓄電素子
120 充電回路(第1回路)
130 放電回路(第2回路)
140 リレー回路(第3回路)
150 判定部
160 診断部
170 制御部
181~183 リレー
200 電力供給源
310~330 負荷