(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183648
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電力変換装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20231221BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097270
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大長 規浩
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 太一
(57)【要約】
【課題】ケースの外に引き出された配線部材の傾斜を低減する。
【解決手段】配線部材64は、制御端子領域21e1に対向する裏面64a2の引き出し口21fの近傍に形成され、裏面64a2と制御端子領域21e1とで挟持されているスペーサ部64cを含む。配線部材64の外部接続部64aをケース20の制御端子領域21e1に押圧して折り曲げると、スペーサ部64cにより外部接続部64aの先端辺64a4が屈曲部64bよりも下位となるように傾斜する。押圧を解放すると、外部接続部64aは元の状態に戻っても、制御端子領域21e1に対して略水平となる高さまで戻る。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き出し口が形成された主面を備えるケースと、
前記引き出し口から引き出されて、前記引き出し口を起点に前記主面側に曲げられた配線部材と、
を含み、
前記配線部材は、前記主面に対向する対向面の前記引き出し口の近傍に形成され、前記対向面と前記主面とで挟持されているスペーサ部を含む、
電力変換装置。
【請求項2】
前記スペーサ部は前記配線部材の前記対向面から突出されており、前記配線部材の前記スペーサ部の反対側に窪みが設けられている、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
曲げられた前記配線部材の前記対向面の前記スペーサ部の両側部に前記スペーサ部に沿って前記窪みが設けられている、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記引き出し口から引き出された前記配線部材は締結孔が形成されており、
前記スペーサ部は、前記配線部材の前記対向面の前記引き出し口の近傍から前記締結孔の間に設けられている、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記スペーサ部は、平面視で、前記引き出し口から引き出された前記配線部材の延伸方向に平行な側辺の間に、1以上形成されている、
請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記スペーサ部は、平面視で、前記引き出し口から引き出された前記配線部材の延伸方向に平行な側辺の間を横切って形成されている、
請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記ケースの前記主面には、前記引き出し口から引き出された前記配線部材に対向して窪んだ端子受付部が形成されている、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記配線部材の前記対向面は、前記ケースの前記主面に対して略平行を成し、または、前記配線部材の先端部が前記ケースの前記主面に近づくように前記配線部材が前記主面に対して傾斜している、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
引き出し口が形成された第1主面を備えるケースと、一方向に延伸する配線部材とを用意する用意工程と、
前記配線部材を前記第1主面の反対側の第2主面から前記第1主面に向かう方向に前記引き出し口から引き出し、前記配線部材の前記第1主面に対向する対向面と前記第1主面とでスペーサ部を挟持しながら、前記配線部材を前記引き出し口を起点に前記第1主面側に折り曲げる折り曲げ工程と、
を含む電力変換装置の製造方法。
【請求項10】
前記スペーサ部は、前記引き出し口を起点に折り曲げられた前記配線部材の前記対向面の前記引き出し口の近傍に形成されている、
請求項9に記載の電力変換装置の製造方法。
【請求項11】
前記用意工程において、前記配線部材の前記対向面の反対側の面に対するプレス加工により前記配線部材の前記対向面に前記スペーサ部を成形し、前記スペーサ部の反対側に窪みが形成される、
請求項10に記載の電力変換装置の製造方法。
【請求項12】
前記折り曲げ工程では、前記配線部材は前記対向面の反対側の面に設けられた前記窪みから折り曲げられる、
請求項11に記載の電力変換装置の製造方法。
【請求項13】
前記折り曲げ工程において、前記配線部材を前記引き出し口から引き出した後、前記配線部材の折り曲げ側の前記引き出し口の近傍に沿って、前記スペーサ部を配置して、前記配線部材を折り曲げて、
前記折り曲げ工程後に、前記スペーサ部を除去するスペーサ部除去工程をさらに有する、
請求項9に記載の電力変換装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置及び電力変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)といった半導体素子を含んでいる。電力変換装置は、放熱ベース板と、当該放熱ベース板上にそれぞれ接合され、半導体素子が設けられた複数の絶縁回路基板と複数の絶縁回路基板に電気的に接続された配線部材であるリードフレームとを含んでいる。このような電力変換装置はケースが取り付けられている。ケースは放熱ベース板に取り付けられて半導体素子及び複数の絶縁回路基板を覆う。また、リードフレームがケースの引き出し口から引き出されて、ケースに対して曲げられている(例えば、特許文献1~10を参照)。なお、このようにリードフレームを曲げた際に、リードフレームの浮き上がりを防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1,2,6~10を参照)。また、リードフレームを曲げた際に、リードフレームに対するクラックの発生を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献10を参照)。また、曲げられたリードフレームに対するはんだ付け時の熱に対するケースの耐熱性を向上する技術が提案されている(例えば、特許文献11を参照)。
【0003】
また、電力変換装置のケースの取り付けは次のように行われる。まず、ケースの引き出し繰りからリードフレームがケースのおもて面から鉛直上方に延伸するようにケースを取り付ける。ケースの引き出し口から鉛直上方に延伸したリードフレームをケースの主面に対して曲げる。以上により、ケースが取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-126842号公報
【特許文献2】特開平9-045831号公報
【特許文献3】特開2011-018933号公報
【特許文献4】特開2015-053301号公報
【特許文献5】特開2019-102758号公報
【特許文献6】特開平7-099276号公報
【特許文献7】特開2021-150606号公報
【特許文献8】特開2015-173138号公報
【特許文献9】特開平10-256411号公報
【特許文献10】特開平4-072748号公報
【特許文献11】特開2016-157826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配線部材であるリードフレームは金属により構成されている。このため、ケースの取り付け後、ケースに対して曲げられて設けられたリードフレームは、曲げられる前の状態を復元するために元の位置に戻ろうとする(スプリングバック)。つまり、リードフレームは、ケースの主面に対して引き出し口側を起点に傾斜して、ケースの主面との間が空いている。例えば、このように傾斜したリードフレームにプリント基板をネジで締結すると、樹脂で構成されたプリント基板は傾斜したリードフレームに突き当たり変形してしまい、破損してしまうおそれがある。このため、電力変換装置の信頼性が低下してしまう。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、ケースの外に引き出された配線部材の傾斜が低減された電力変換装置及び電力変換装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、引き出し口が形成された主面を備えるケースと、前記引き出し口から引き出されて、前記引き出し口を起点に前記主面側に曲げられた配線部材と、を含み、前記配線部材は、前記主面に対向する対向面の前記引き出し口の近傍に形成され、前記対向面と前記主面とで挟持されているスペーサ部を含む、電力変換装置が提供される。
【0008】
また、本発明の一観点によれば、引き出し口が形成された第1主面を備えるケースと、一方向に延伸する配線部材とを用意する用意工程と、前記配線部材を前記第1主面の反対側の第2主面から前記第1主面に向かう方向に前記引き出し口から引き出し、前記配線部材の前記第1主面に対向する対向面と前記第1主面とでスペーサ部を挟持しながら、前記配線部材を前記引き出し口を起点に前記第1主面側に折り曲げる折り曲げ工程と、を含む電力変換装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、ケースの外に引き出された配線部材の傾斜を低減し、当該配線部材に適切にプリント基板を締結することができ、電力変換装置の信頼性の低下を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態の電力変換装置の平面図である。
【
図2】第1の実施の形態の電力変換装置の側面図である。
【
図3】第1の実施の形態の電力変換装置の内部平面図である。
【
図4】第1の実施の形態の電力変換装置に含まれる半導体ユニットの平面図である。
【
図5】第1の実施の形態の電力変換装置に含まれる配線部材の平面図である。
【
図6】第1の実施の形態の電力変換装置に含まれる配線部材の断面図である。
【
図7】第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる配線部材接合工程を示す図である。
【
図9】第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる取り付け工程(取り付け中)を示す図である。
【
図10】第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる取り付け工程(取り付け後)を示す図である。
【
図11】第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程(その1)を示す図である。
【
図12】第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程(その2)を示す図である。
【
図13】参考例の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程(その1)を示す図である。
【
図14】参考例の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程(その2)を示す図である。
【
図15】第1の実施の形態(変形例1-1)の電力変換装置の製造方法に含まれる配線部材に対するプレス加工を示す図である。
【
図16】第1の実施の形態(変形例1-1)の電力変換装置に含まれる配線部材を示す図である。
【
図17】第1の実施の形態(変形例1-2)の電力変換装置に含まれる配線部材を示す図である。
【
図18】第1の実施の形態(変形例1-3)の電力変換装置の製造方法に含まれる配線部材に対する押圧加工を示す図である。
【
図19】第1の実施の形態(変形例1-3)の電力変換装置に含まれる配線部材を示す図である。
【
図20】第1の実施の形態(変形例1-4)の電力変換装置の製造方法に含まれる取り付け工程(取り付け後)を示す図である。
【
図21】第1の実施の形態(変形例1-4)の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程を示す図である。
【
図22】第2の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる取り付け工程(取り付け後)を示す図である。
【
図23】第2の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程を示す図である。
【
図24】第2の実施の形態(変形例2-1)の電力変換装置の製造方法に含まれる取り付け工程(取り付け後)を示す図である。
【
図25】第2の実施の形態(変形例2-1)の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程を示す図である。
【
図26】第3の実施の形態の電力変換装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図27】第3の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる取り付け工程(取り付け後)を示す図である。
【
図28】第3の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれるスペーサ部設置工程を示す図である。
【
図29】第3の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程(その1)を示す図である。
【
図30】第3の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程(その2)を示す図である。
【
図31】第3の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれるスペーサ部除去工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、「おもて面」及び「上面」とは、
図1及び
図2の電力変換装置10において、上側(+Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「上」とは、
図1及び
図2の電力変換装置10において、上側(+Z方向)の方向を表す。「裏面」及び「下面」とは、
図1及び
図2の電力変換装置10において、下側(-Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「下」とは、
図1及び
図2の電力変換装置10において、下側(-Z方向)の方向を表す。必要に応じて他の図面でも同様の方向性を意味する。「おもて面」、「上面」、「上」、「裏面」、「下面」、「下」、「側面」は、相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。また、以下の説明において「主成分」とは、80vol%以上含む場合を表す。また、「略同一」とは、±10%以内の範囲であればよい。また、「垂直」、「平行」とは、±10°以内の範囲であればよい。
【0012】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態の電力変換装置10について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、第1の実施の形態の電力変換装置の平面図であり、
図2は、第1の実施の形態の電力変換装置の側面図である。なお、
図1及び
図2は、電力変換装置10の外観を示している。
図2は、
図1の電力変換装置10の+Y方向に(
図1において下から上に向かって)見た側面図である。
【0013】
電力変換装置10は、ケース20を含んでいる。ケース20は、後述する、半導体ユニットが接合された放熱ベース板に取り付けられている。後述するようにしてケース20は半導体ユニットを収納する。ケース20は、下部収納部21及び上部収納部22を含んでいる。
【0014】
下部収納部21は、直方体状を成している。下部収納部21は、平面視で、長側壁21a、短側壁21b、長側壁21c、短側壁21dにより四方が囲まれている。また、下部収納部21は、長側壁21a、短側壁21b、長側壁21c、短側壁21dで囲まれる開口に下部おもて面21eを含んでいる。
【0015】
下部おもて面21eは、制御端子領域21e1~21e6を含んでいる。制御端子領域21e1は、下部おもて面21eの短側壁21bに寄って、長側壁21cの縁部に設けられている。制御端子領域21e2は、下部おもて面21eの長側壁21cの縁部であって、長側壁21cの略中央部に設けられている。制御端子領域21e3は、下部おもて面21eの長側壁21cの縁部であって、制御端子領域21e2と短側壁21dとの間に設けられている。制御端子領域21e4は、下部おもて面21eの短側壁21bに寄って、長側壁21aの縁部に、制御端子領域21e1に対向して設けられている。制御端子領域21e5は、下部おもて面21eの長側壁21aの縁部であって、側面視で制御端子領域21e2,21e3の間に設けられている。制御端子領域21e6は、下部おもて面21eの長側壁21aの縁部であって、側面視で制御端子領域21e3に対向して設けられている。
【0016】
また、例えば、制御端子領域21e4~21e6は、
図2に示されるように、下部おもて面21eに設けられている。図示は省略するものの、制御端子領域21e1~21e3も同様に、下部おもて面21eに設けられている。制御端子領域21e1~21e6には、制御用の配線部材64がそれぞれ曲げられて表出されている。制御用の配線部材64は、制御端子領域21e1~21e6に設けられている。また、制御端子領域21e4~21e6は、配線部材64に対向するようにナットが設けられる。配線部材64の詳細については後述する。
【0017】
上部収納部22もまた直方体状を成している。上部収納部22は、平面視で、長側壁22a、短側壁22b、長側壁22c、短側壁22dにより四方が囲まれている。また、上部収納部22は、長側壁22a、短側壁22b、長側壁22c、短側壁22dで囲まれる開口に上部おもて面22eを含んでいる。上部収納部22は、下部収納部21の下部おもて面21eのY方向の中央部であって、短側壁22dが短側壁21dに同一平面を成すように設けられている。なお、下部収納部21の下部おもて面21eの上部収納部22が形成されている範囲は開口されている。
【0018】
上部おもて面22eには、出力用,正極用,負極用,正極用,負極用の配線部材63,61,62,61,62(の接続部)が短側壁22bから短側壁22dに向かって(+X方向に沿って)それぞれ設けられている。出力用,正極用,負極用,正極用,負極用の配線部材63,61,62,61,62もまた、上部おもて面22eに対して折り曲げられている。この場合は、
図1に示されるように、出力用の配線部材63は、-Y方向に折り曲げられている。正極用,負極用,正極用,負極用の配線部材61,62,61,62は、+Y方向に折り曲げられている。また、上部おもて面22eも、配線部材63,61,62,61,62に対向してナットが収納されている。
【0019】
このようなケース20は、熱可塑性樹脂により構成されている。このような樹脂は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリアミド樹脂、または、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂が挙げられる。
【0020】
次に、電力変換装置10のケース20内に収納されている構成について
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、第1の実施の形態の電力変換装置の内部平面図であり、
図4は、第1の実施の形態の電力変換装置に含まれる半導体ユニットの平面図である。
図3及び
図4は、
図1に示した電力変換装置10においてケース20を取り外した場合を示している。
図4は、
図3のうち、最左端の半導体ユニット30aを示している。
【0021】
電力変換装置10は、
図3に示されるように、放熱ベース板35と放熱ベース板35上に設けられた複数の半導体ユニット30a~30f及び制御配線ユニット50a~50fとを含む。なお、半導体ユニット30a~30fは、それぞれ同様の構成を成している。半導体ユニット30a~30fは、それぞれを区別しない場合には、半導体ユニット30と表す。また、制御配線ユニット50a~50fは、それぞれを区別しない場合には、制御配線ユニット50と表す。電力変換装置10は、各半導体ユニット30に電気的に接続された正極用,負極用,出力用の配線部材61,62,63がそれぞれ設けられている。電力変換装置10は、放熱ベース板35上にケース20が取り付けられている。放熱ベース板35上の半導体ユニット30及び制御配線ユニット50はケース20により覆われている。
【0022】
放熱ベース板35は、熱伝導性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、アルミニウム、鉄、銀、銅、マグネシウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。放熱ベース板35の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。なお、このような電力変換装置10の放熱ベース板35の裏面に冷却器(図示を省略)をサーマルグリースを介して取り付けて放熱性を向上させることも可能である。この場合の冷却器は、例えば、熱伝導性に優れたアルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金等により構成されている。また、冷却器として、例えば、フィン、または、複数のフィンから構成されるヒートシンク並びに水冷による冷却装置を適用することができる。なお、サーマルグリースは、例えば、金属酸化物のフィラーが混入されたシリコーンが挙げられる。
【0023】
また、放熱ベース板35は、このような冷却器と一体的に構成されてもよい。その場合は、熱伝導性に優れたアルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金により構成される。この場合、耐食性を向上させるために、冷却器と一体化された放熱ベース板35の表面にめっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。
【0024】
半導体ユニット30は、
図4に示されるように、絶縁回路基板31と絶縁回路基板31に配置された第1,第2半導体チップ40a,41a及び第1,第2半導体チップ40b,41bとを含んでいる。半導体ユニット30では、絶縁回路基板31と第1,第2半導体チップ40a,41a及び第1,第2半導体チップ40b,41bとがボンディングワイヤ42a~42dにより適宜、電気的に接続されて、第1アーム部A及び第2アーム部Bが構成されている。
【0025】
第1半導体チップ40a,40b及び第2半導体チップ41a,41bは、シリコン、炭化シリコンまたは窒化ガリウムから構成されるパワーデバイス素子を含んでいる。また、第1半導体チップ40a,40b及び第2半導体チップ41a,41bの厚さは、例えば、40μm以上、250μm以下である。パワーデバイス素子は、スイッチング素子またはダイオード素子である。
【0026】
第1半導体チップ40a,40bは、スイッチング素子を含む。スイッチング素子は、例えば、IGBT、パワーMOSFETである。このような第1半導体チップ40a,40bがIGBTを含む場合には、裏面に主電極としてコレクタ電極を、おもて面に、制御電極としてゲート電極及び主電極としてエミッタ電極をそれぞれ備えている。また、第1半導体チップ40a,40bがパワーMOSFETを含む場合には、裏面に主電極としてドレイン電極を、おもて面に、制御電極としてゲート電極及び主電極としてソース電極をそれぞれ備えている。
【0027】
第2半導体チップ41a,41bは、ダイオード素子を含む。ダイオード素子は、例えば、SBD(Schottky Barrier Diode)、PiN(P-intrinsic-N)ダイオードで構成されるFWD(Free Wheeling Diode)である。このような第2半導体チップ41a,41bは、裏面に主電極としてカソード電極を、おもて面に主電極としてアノード電極をそれぞれ備えている。すなわち、第2半導体チップ41a,41bのおもて面及び裏面の主電極は導電部である。
【0028】
第1半導体チップ40a,40b及び第2半導体チップ41a,41bは、その裏面側が配線板33a,33b上に接合部材(図示を省略)により機械的かつ電気的に接合される。なお、接合部材は、はんだ、ろう材、または、金属焼結体である。はんだは、鉛フリーはんだが用いられる。鉛フリーはんだは、例えば、錫、銀、銅、亜鉛、アンチモン、インジウム、ビスマスの少なくとも2つを含む合金を主成分とする。さらに、はんだには、添加物が含まれてもよい。添加物は、例えば、ニッケル、ゲルマニウム、コバルトまたはシリコンである。はんだは、添加物が含まれることで、濡れ性、光沢、結合強度が向上し、信頼性の向上を図ることができる。ろう材は、例えば、アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金、ジルコニウム合金、シリコン合金の少なくともいずれかを主成分とする。金属焼結体は、例えば、銀及び銀合金を主成分とする。
【0029】
また、第1半導体チップ40a,40b及び第2半導体チップ41a,41bに代えて、IGBT及びFWDの機能を合わせ持つRC(Reverse-Conducting)-IGBTを用いてもよい。
【0030】
絶縁回路基板31は、放熱ベース板35のおもて面に、放熱ベース板35の長辺に沿って一列にそれぞれ配置されている。絶縁回路基板31は、放熱ベース板35のおもて面に対して、例えば、既述の接合部材(図示を省略)を介して接合されている。
【0031】
絶縁回路基板31は、絶縁板32と絶縁板32の裏面に形成された金属板(図示を省略)とを有している。さらに、絶縁板32のおもて面に形成された配線板33a~33eをそれぞれ有している。なお、以下では、配線板33a~33eを特に区別しない場合には、配線板33と表す。
【0032】
絶縁板32及び金属板は、平面視で矩形状である。また、絶縁板32及び金属板は、角部がR面取り、C面取りされていてもよい。金属板のサイズは、平面視で、絶縁板32のサイズより小さく、絶縁板32の内側に形成されている。
【0033】
絶縁板32は、絶縁性を備え、熱伝導性に優れた材料を主成分として構成されている。このような材料は、セラミックスまたは絶縁樹脂により構成されている。セラミックスは、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素である。絶縁樹脂は、例えば、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板である。絶縁板32の厚さは、例えば、0.2mm以上、2.5mm以下である。
【0034】
配線板33a~33eは、導電性に優れた金属を主成分として構成されている導電部である。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を主成分とする合金である。また、配線板33a~33eの厚さは、0.1mm以上、2.0mm以下である。配線板33a~33eの表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。なお、
図4に示す配線板33a~33eは一例である。必要に応じて、配線板33a~33eの個数、形状、大きさ等を適宜選択してもよい。
【0035】
配線板33aは、第1アーム部Aのコレクタパターンを構成する。配線板33aは、第1,第2半導体チップ40a,41aの裏面にそれぞれ形成された入力電極(コレクタ電極)、出力電極(カソード電極)が既述の接合部材を介して接合されている。配線板33aは、略矩形状を成しており、
図4中下側に正極用の配線部材61の脚部61cが接合される部分が突出している。
【0036】
配線板33dは、第1アーム部Aの制御パターンを構成する。配線板33dは、第1半導体チップ40aの制御電極と接続されたボンディングワイヤ42aが接続される。さらに、配線板33dは、図示を省略するものの、制御配線ユニット50(半導体ユニット30aに対しては制御配線ユニット50d)とボンディングワイヤ(図示を省略)により電気的に接続される。
【0037】
配線板33bは、第1アーム部Aのエミッタパターン及び第2アーム部Bのコレクタパターンを構成する。配線板33bは、配線板33a上の第1半導体チップ40aの出力電極(エミッタ電極)と第2半導体チップ41aの入力電極(アノード電極)とに接続されたボンディングワイヤ42bが接続されている。また、配線板33bは、第1半導体チップ40bの裏面に形成された入力電極(コレクタ電極)と第2半導体チップ41bの裏面に形成された出力電極(カソード電極)とが既述の接合部材を介して接合されている。配線板33bは、略矩形状を成しており、
図4中上側の部分が突出している。配線板33bは、配線板33aと並んで、配置される。さらに、配線板33bは、制御配線ユニット50(半導体ユニット30aに対しては制御配線ユニット50a)とボンディングワイヤ(図示を省略)により電気的に接続される。
【0038】
配線板33eは、第2アーム部Bの制御パターンを構成する。配線板33eは、第1半導体チップ40bの制御電極と接続されたボンディングワイヤ42cが接続されている。
配線板33cは、第2アーム部Bのエミッタパターンを構成する。配線板33cは、第1半導体チップ40bの出力電極(エミッタ電極)と接続されたボンディングワイヤ42dが接続されている。配線板33cは、配線板33bの
図4中下側に配置されている。このような配線板33cは、負極用の配線部材62の脚部62cが接合される。
【0039】
絶縁板32の裏面に形成された金属板は、絶縁板32よりも面積が小さく、配線板33a~33eが形成されている領域の面積よりも広く、絶縁板32と同様に矩形状を成している。また、角部がR面取り、C面取りされていてもよい。金属板は、絶縁板32のサイズより小さく、絶縁板32の縁部を除いた全面に形成されている。金属板は、熱伝導性に優れた金属を主成分として構成されている。金属は、例えば、銅、アルミニウムまたは、少なくともこれらの一種を含む合金である。また、金属板の厚さは、0.1mm以上、2.5mm以下である。金属板の耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。
【0040】
このような構成を有する絶縁回路基板31として、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板、AMB(Active Metal Brazed)基板、樹脂絶縁基板を用いることができる。
【0041】
正極用,負極用,出力用の配線部材61,62,63は、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銀、銅、ニッケル、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。制御用の配線部材64の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。正極用,負極用,出力用の配線部材61,62,63は、放熱ベース板35に一列に接合された半導体ユニット30a~30fにそれぞれ電気的かつ機械的に接続されている。
【0042】
正極用の配線部材61は、本体部61aと連係部61bと脚部61cとを含んでいる。正極用の配線部材61は、本体部61aに対して、接続される半導体ユニット30a~30fに応じた位置に脚部61c(並びに連係部61b)を備えている。正極用の配線部材61は、本体部61aに対して、ケース20の表出する位置に図示を省略する接続部を備えている。また、負極用,出力用の配線部材62,63もまた、同様に、本体部62a,63aと連係部62b,63bと脚部62c,63cとを含んでいる。
【0043】
本体部61a,62a,63aは、平板状であって、一方向に複数配置された半導体ユニット30a~30f(絶縁回路基板31)のおもて面から所定の高さにおいて配線方向(放熱ベース板35の長手方向)に延伸して設けられている。脚部61c,62c,63cは、正極用,負極用,出力用の配線部材61,62,63ごとに、各絶縁回路基板31の配線板33a,33c,33bに接合されている。連係部61b,62b,63bは、本体部61a,62a,63aと脚部61c,62c,63cとに一体的に接続されている。よって、連係部61b,62b,63bは本体部61a,62a,63aと脚部61c,62c,63cとを電気的に接続する。なお、図示は省略するものの、本体部61a,62a,63aには、外部端子がそれぞれ接続されている。外部端子は、ケース20の上部収納部22の上部おもて面22eから表出される。
【0044】
制御配線ユニット50a,50b,50cは、放熱ベース板35上であって、
図3中、半導体ユニット30a,30c,30eの上方(+Y方向側)に配置されている。制御配線ユニット50d,50e,50fは、放熱ベース板35上であって、
図3中、半導体ユニット30a,30d,30eの下方(-Y方向側)に配置されている。
【0045】
このような制御配線ユニット50は、絶縁板51と絶縁板51上に設けられた配線板52と絶縁板51の裏面に形成された、図示を省略する金属板と配線板52上に接合された制御用の配線部材64とを有している。なお、制御配線ユニット50のうち、制御配線ユニット50fは、配線板52及び制御用の配線部材64が一組形成されている。他の制御配線ユニット50は、配線板52及び制御用の配線部材64が二組形成されている。
【0046】
絶縁板51は、熱伝導性のよいセラミックスにより構成されている。このようなセラミックスは、例えば、酸化アルミニウムと当該酸化アルミニウムに添加された酸化ジルコニウムとを主成分とする複合材料、または、窒化珪素を主成分とする材料により構成されてよい。また、絶縁板51の厚さは、0.5mm以上、2.0mm以下である。絶縁板51は、平面視で、矩形状である。また、角部がR面取り、C面取りされていてもよい。
【0047】
配線板52は、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銀、銅、ニッケル、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。また、配線板52の厚さは、0.5mm以上、1.5mm以下である。配線板52の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。絶縁板51に対する配線板52は、絶縁板51のおもて面に金属板を形成し、この金属板に対してエッチング等の処理を行って得られる。または、あらかじめ金属板から切り出した配線板52を絶縁板51のおもて面に圧着させてもよい。なお、
図3に示す配線板52は一例である。必要に応じて、配線板52の個数、形状、大きさ等を適宜選択してもよい。
【0048】
制御用の配線部材64は、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銀、銅、ニッケル、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。配線部材64の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。このような配線部材64は、例えば、ストライプ状を成して、全体的に厚さが略均一である。また、配線部材64の厚さは、後述するケース20の引き出し口21fの(±Y方向の)開口幅よりも小さい(
図6を参照。開口幅は点P1から点P2の長さに対応)。例えば、配線部材64の厚さは、当該開口幅の60%以上、90%以下である。
【0049】
配線部材64の下端部が配線板52に接合される。この際の接合は、既述の接合部材による。または、超音波接合でもよい。ケース20を取り付ける際には、配線部材64をケース20の引き出し口から引き出して(挿通させ)、引き出された部分が折り曲げられる。ケース20に取り付けられた配線部材64の詳細については後述する。
【0050】
次に、ケース20から表出された制御用の配線部材64の詳細について
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、第1の実施の形態の電力変換装置に含まれる配線部材の平面図である。
図6は、第1の実施の形態の電力変換装置に含まれる配線部材の断面図である。なお、
図5及び
図6では、
図1の制御端子領域21e1から表出されている制御用の配線部材64を示している。配線部材64は、制御端子領域21e1に限らず、制御端子領域21e2~21e6でも同様に表出される。
図6は、
図5の一点鎖線X-Xにおける断面図である。
図6では、引き出し口21fの-Y方向側の端部を点P1、+Y方向側の端部を点P2とする。また、スペーサ部64cの制御端子領域21e1に接する底部の中心の位置を点P3とする。外部接続部64aの先端辺64a4の位置を点P4とする。なお、
図6では、外部接続部64aの-Y方向の端部も点P2に重複している。しかし、屈曲部64bの屈曲具合により、外部接続部64aの-Y方向の端部は、点P2よりも+Y方向側に位置することがある。
【0051】
配線部材64は先端部の外部接続部64aと外部接続部64aと残りの部分とを接続して屈曲している屈曲部64bとを含んでいる。配線部材64は、引き出し口21fで屈曲部64bにより屈曲し、外部接続部64aがケース20の制御端子領域21e1に対して略平行に延伸している。なお、外部接続部64aの先端部(先端辺64a4)がケース20の制御端子領域21e1に近づく(屈曲部64bよりも低位に位置する)ように外部接続部64aが制御端子領域21e1に対して傾斜していてもよい。
【0052】
なお、
図6では、配線部材64が引き出し口21fのケース20の内側(-Y方向側、点P1)に接している場合を示している。配線部材64は、引き出し口21fのケース20の外側(+Y方向側、点P2)に接していてもよい。または、配線部材64は、引き出し口21fの点P1,P2のいずれに接していなくてもよい。但し、配線部材64は、引き出し口21fの点P1,P2のいずれかに接していた方が好ましい。これは、後述する折り曲げの際に安定して折り曲げることができ、折り曲げた後の配線部材64の引き出し口21f内でのぶれが低減されるためである。
【0053】
外部接続部64aは、ケース20の制御端子領域21e1の引き出し口21fから引き出されており、ケース20の制御端子領域21e1に略平行を成している。すなわち、外部接続部64aの裏面64a2と制御端子領域21e1との間には隙間が空いている。なお、外部接続部64aの裏面64a2は、ケース20の制御端子領域21e1に対向する対向面でもある。
【0054】
外部接続部64aの先端部の三方が側辺64a3と先端辺64a4と側辺64a5とにより順に囲まれている。すなわち、先端辺64a4は、外部接続部64aの延伸方向(引き出し口21fからの引き出し方向)に対して垂直を成し、側辺64a3,64a5は、外部接続部64aの延伸方向に対して平行を成している。なお、先端辺64a4に対する側辺64a3,64a5の接続部分はR面取り、または、C面取りされていてもよい。外部接続部64aは、おもて面64a1から裏面64a2に貫通する締結孔64a6が形成されている。なお、締結孔64a6は、外部接続部64aの中心部に形成されてよい。
【0055】
また、外部接続部64aの裏面64a2にスペーサ部64cが形成されている。スペーサ部64cは、制御端子領域21e1に当接している。または、スペーサ部64cは、裏面64a2と制御端子領域21e1とで挟持されてよい。このようなスペーサ部64c(点P3)は、ケース20の制御端子領域21e1に対向する裏面64a2の屈曲部64b側の端部(点P2)から締結孔64a6の間に形成される。スペーサ部64cは、外部接続部64aの裏面64a2の引き出し口21fの近傍に形成されることが好ましい。引き出し口21fの近傍とは、例えば、外部接続部64aの端部(点P2)から配線部材64の厚さ程の距離である。
【0056】
スペーサ部64cは、例えば、平面視で、外部接続部64aの裏面64a2に対して、側辺64a3から側辺64a5の間で連続する一直線状を成している。スペーサ部64cの側面視の形状は、半円状を成している。すなわち、第1の実施の形態のスペーサ部64cは、半円柱状を成している。また、スペーサ部64cの側面視の形状は、半円状に限らず、例えば、矩形状、三角柱状であってよい。つまりこの場合、スペーサ部64cは、角柱状、三角形状であってよい。すなわち、スペーサ部64cは、側面視で、外部接続部64aの裏面64a2と制御端子領域21e2とで挟持される形状であればよい。また、スペーサ部64cは、連続する一直線状に限らない。スペーサ部64cは、例えば、不連続に複数の半球状、矩形状、円錐状、角錐状を成して、一直線状に設けられてもよい。また、これらの場合及び
図5及び
図6の場合は、1列に限らず、複数列であってもよい。また、このような形状のスペーサ部64cは、外部接続部64aに対して、例えば、溶接、圧接、ろう付けにより形成してよい。
【0057】
ケース20の制御端子領域21e1には、ナット36が収納されるナット収納部21gが形成されている。ナット収納部21gは、制御端子領域21e1の外部接続部64aの締結孔64a6に対向する位置に形成されている。ナット収納部21gの底面は、制御端子領域21e1よりも下方(-Z方向)に位置し、制御端子領域21e1に対して略平行を成している。ナット収納部21gの直径及び深さは、ナット36が完全に収納されればよい。なお、外部接続部64aの締結孔64a6の直径は、ナット収納部21gの直径の60%程度である。したがって、外部接続部64aの締結孔64a6は、ナット収納部21gに収納されているナット36に対向している。
【0058】
次に、このような電力変換装置10の製造方法(組立方法)について
図7を用いて説明する。
図7は、第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0059】
まず、電力変換装置10の構成部品を用意する用意工程を行う(ステップS10)。ここで用意される構成部品は、例えば、放熱ベース板35、第1半導体チップ40a,40b、第2半導体チップ41a,41b、絶縁回路基板31、各種の配線部材61~64、ケース20を用意する。ここに記載されていない構成部品も必要に応じて用意される。また、後述するように配線部材64に対するスペーサ部64cの形成も、用意工程に含めてよい。
【0060】
次いで、絶縁回路基板31に第1半導体チップ40a,40b、第2半導体チップ41a,41bを接合する半導体チップ接合工程を行う(ステップS11)。絶縁回路基板31の配線板33aに第1半導体チップ40a及び第2半導体チップ41aをそれぞれ接合する。配線板33bに第1半導体チップ40b及び第2半導体チップ41bをそれぞれ接合する。
【0061】
次いで、ボンディングワイヤにより配線する配線工程を行う(ステップS12)。第1半導体チップ40a,40b及び第2半導体チップ41a,41bが接合された絶縁回路基板31に対して、ボンディングワイヤ42aにより配線板33dと第1半導体チップ40aの制御電極とを直接接続する。ボンディングワイヤ42bにより第1半導体チップ40aの出力電極と第2半導体チップ41aの入力電極と配線板33bとを直接接続する。また、ボンディングワイヤ42cにより配線板33eと第1半導体チップ40bの制御電極とを直接接続する。ボンディングワイヤ42dにより第1半導体チップ40bの出力電極と第2半導体チップ41bの入力電極と配線板33cとを直接接続する。このようにして、必要な個数の半導体ユニット30が組み立てられる。
【0062】
また、この際、制御配線ユニット50も組み立てられる。絶縁板51と絶縁板51上に設けられた配線板52と絶縁板51の裏面に形成された図示を省略する金属板とを含む基板を予め用意しておく。この基板の配線板52上に配線部材64の下端部を接合する。この際、配線部材64は配線板52に対して鉛直上方に延伸している状態である。このようにして、必要な個数の制御配線ユニット50が組み立てられる。
【0063】
次いで、放熱ベース板35に半導体ユニット30(絶縁回路基板31)を搭載する搭載工程を行う(ステップS13)。放熱ベース板35のおもて面に放熱ベース板35の長手方向に設定された複数の搭載領域に接合部材を介して半導体ユニット30を搭載し、半導体ユニット30を接合部材により放熱ベース板35に接合する。また、同様に、放熱ベース板35に制御配線ユニット50を搭載し、接合する。
【0064】
次いで、放熱ベース板35上に配列された半導体ユニット30に対して、配線部材61~63を接合する配線部材接合工程を行う(ステップS14)。配線部材接合工程について、
図8を用いて説明する。
図8は、第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる配線部材接合工程を示す図である。なお、
図8は、配線部材接合工程後の配線部材61~63を含む放熱ベース板35の最左端側の側面図を示している。
【0065】
ステップS13で半導体ユニット30及び制御配線ユニット50が搭載された放熱ベース板35に対して、配線部材61,62,63を取り付ける。この際、配線部材61の脚部61cを絶縁回路基板31の配線板33aに接合する。配線部材62の脚部62cを絶縁回路基板31の配線板33cに接合する。配線部材63の脚部63cを絶縁回路基板31の配線板33bに接合する。これにより、
図8に示されるように、半導体ユニット30に対して配線部材61,62,63がそれぞれ接合される。
【0066】
次いで、配線部材61,62,63が接合された半導体ユニット30及び制御配線ユニット50が搭載された放熱ベース板35にケース20を取り付ける取り付け工程を行う(ステップS15)。取り付け工程について、
図9及び
図10を用いて説明する。
図9は、第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる取り付け工程(取り付け中)を示す図である。
図10は、第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる取り付け工程(取り付け後)を示す図である。なお、
図9は、取り付け工程における配線部材61~63を含む放熱ベース板35の最左端側の側面図を示している。
図10は、
図6に対応しており、ケース20を取り付けた後の制御端子領域21e1から引き出された配線部材64の断面図を示している。
【0067】
配線部材61,62,63が接合された半導体ユニット30及び制御配線ユニット50が搭載された放熱ベース板35に対して、
図9に示されるように、上方から、ケース20を取り付ける。この際、ケース20の長側壁21a、短側壁21b、長側壁21c、短側壁21dの底部に接着剤を塗布しておき、放熱ベース板35の外周部に接着させる。
【0068】
このようにしてケース20が取り付けられると、例えば、
図10に示されるように、配線部材64がケース20の制御端子領域21e1の引き出し口21fから鉛直上方(+Z方向)に延伸する。なお、図示を省略するものの、制御端子領域21e2~21e6に対しても、
図10と同様に配線部材64が引き出し口21fから鉛直上方に延伸する。
【0069】
次いで、配線部材64をケース20側に折り曲げる折り曲げ工程を行う(ステップS16)。折り曲げ工程について
図11及び
図12を用いて説明する。
図11及び
図12は、第1の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程を示す図である。
【0070】
図10に示したように、ケース20の制御端子領域21e1の引き出し口21fから鉛直上方に延伸している配線部材64を、そのおもて面64a1をケース20の制御端子領域21e1に向かって押圧する。すると、配線部材64は引き出し口21f付近を支点として折れ曲がり、外部接続部64aが制御端子領域21e1に向かって倒れる。
【0071】
同方向に続けて押圧すると、外部接続部64aのスペーサ部64cが制御端子領域21e1に当接する。さらに、押圧すると、
図11に示されるように、スペーサ部64cを支点として、外部接続部64aの先端辺64a4側が制御端子領域21e1に当接する。
【0072】
その後、配線部材64に対する押圧を解除する。押圧を解除された配線部材64の外部接続部64aは、曲がる前の状態を復元しようとして元に戻ろうとする。押圧解除直後は、スペーサ部64cが支点となり、外部接続部64aの先端辺64a4が制御端子領域21e1に当接するまで外部接続部64aが傾斜している。このため、外部接続部64aが元の位置に戻ろうとしても、例えば、
図12に示されるように、制御端子領域21e1に対して最大略水平となる高さまで戻る。すなわち、外部接続部64aの先端部(先端辺64a4)が制御端子領域21e1から離間しつつ、屈曲部64bよりも下位になるように傾斜してもよい。このような折り曲げ工程を各配線部材64に対して行う。また、スペーサ部64cを含んでいないものの、配線部材61,62,63に対しても同様に行ってよい。以上により、
図1及び
図2に示される電力変換装置10が製造される。
【0073】
ここで、参考例の電力変換装置の製造方法について説明する。参考例の電力変換装置は、配線部材64にはスペーサ部が設けられていない。参考例の電力変換装置は、これ以外は、
図1及び
図2の電力変換装置10と同様の構成を成している。このような参考例の電力変換装置も
図7の製造方法に沿って製造される。ここでは、
図7のステップS16について、
図13及び
図14を用いて説明する。
図13及び
図14は、参考例の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程を示す図である。
【0074】
図7のステップS16にて、ケース20の制御端子領域21e1の引き出し口21fから鉛直上方に延伸している配線部材64を、そのおもて面64a1をケース20の制御端子領域21e1に向かって押圧する。すると、
図13に示されるように、配線部材64は引き出し口21f付近を支点として折れ曲がり、外部接続部64aの裏面64a2の全体が制御端子領域21e1に当接する。その後、配線部材64に対する押圧を解除する。押圧を解除された配線部材64の外部接続部64aは、曲げられる前の状態を復元するために元の位置に戻ろうとする。このため、
図14に示されるように、配線部材64の外部接続部64aは、ケース20の制御端子領域21e1に対して引き出し口21f側を起点に傾斜する。
【0075】
例えば、このように傾斜した配線部材64の外部接続部64a上に、プリント基板を設けて、ネジで締結する。この場合、樹脂で構成されたプリント基板には、浮き上がった外部接続部64aの先端辺64a4近傍が突き当たる。このため、プリント基板は変形してしまい、場合によっては破損してしまう。このため、電力変換装置の信頼性が低下してしまう。
【0076】
上記の電力変換装置10は、引き出し口21fが形成された制御端子領域21e1を備えるケース20と、引き出し口21fから引き出されて、引き出し口21fを起点に制御端子領域21e1側に曲げられた配線部材64と、を含む。さらに、電力変換装置10において、配線部材64は、制御端子領域21e1に対向する裏面64a2の引き出し口21fの近傍に形成され、裏面64a2と制御端子領域21e1とで挟持されているスペーサ部64cを含む。配線部材64の外部接続部64aをケース20の制御端子領域21e1に押圧して折り曲げると、スペーサ部64cにより外部接続部64aの先端辺64a4が屈曲部64bよりも下方となるように傾斜する。押圧を解放すると、外部接続部64aは元の状態に戻っても、制御端子領域21e1に対して略水平となる高さまで戻る。このような配線部材64の外部接続部64a上に、プリント基板を設けて、ネジで締結しても、外部接続部64aはプリント基板に突き当たることはない。このため、プリント基板は変形することなく適切に配線部材64に締結される。このため、電力変換装置10の信頼性の低下が抑制される。
【0077】
上記では、配線部材64の外部接続部64aに対して、スペーサ部64cを、例えば、溶接、圧接、ろう付けにより形成する場合を例に挙げて説明した。以下では、変形例として、これらと異なる形成方法により配線部材64の外部接続部64aにスペーサ部64cを形成し、また、形成方法に応じた様々なスペーサ部64cの形状を説明する。
【0078】
(変形例1-1)
変形例1-1では、配線部材64に対してプレス加工を用いてスペーサ部64cを形成する場合について、
図15及び
図16を用いて説明する。
図15は、第1の実施の形態(変形例1-1)の電力変換装置の製造方法に含まれる配線部材に対するプレス加工を示す図である。
図16は、第1の実施の形態(変形例1-1)の電力変換装置に含まれる配線部材を示す図である。なお、
図16(A)は、プレス加工によりスペーサ部64cが形成された外部接続部64aの平面図を、
図16(B)は、
図16(A)の一点鎖線X-Xにおける断面図をそれぞれ表している。
【0079】
スペーサ部64cは外部接続部64aに対してプレス加工により形成される。まず、スペーサ部64cが形成されていない、おもて面64a1及び裏面64a2が平坦な配線部材64を用意する。なお、配線部材64は締結孔64a6を開口しておく。このような配線部材64をプレス装置70にセットする。
【0080】
プレス装置70は、プレス加工治具71と載置台72とを含む。プレス加工治具71は、プレス部71aが設けられている。プレス部71aは、形成したいスペーサ部64cの形状に対向した形状を成している。例えば、変形例1-1の場合、プレス部71aは半円柱状を成している。載置台72は平坦な載置面にプレス受け部72aが形成されている。プレス受け部72aは、載置面に対して窪んでいる。このようなプレス受け部72aは、配線部材64に形成されたスペーサ部64cが入り込むサイズである。
【0081】
このような載置台72の載置面に配線部材64の少なくとも外部接続部64aをセットする。次いで、外部接続部64aの所望の範囲にプレス部71aが対応するように、プレス加工治具71を位置合わせする。プレス加工治具71を配線部材64に重ね合わせて載置台72に押圧する。そして、プレス装置70から配線部材64を取り出す。
【0082】
このようにして形成された配線部材64は、
図16に示されるように、外部接続部64aの裏面64a2にスペーサ部64cが設けられている。さらに、外部接続部64aのおもて面64a1のスペーサ部64cに対向して窪み64c1が形成されている。窪み64c1はプレス部71aで押圧されて窪んだものであり、プレス部71aの形状に対応している。このような配線部材64は、
図7のステップS10の用意工程で用意してよい。
【0083】
(変形例1-2)
変形例1-2では、変形例1-1のプレス加工により形成されるスペーサ部64cの別の形態について
図17を用いて説明する。
図17は、第1の実施の形態(変形例1-2)の電力変換装置に含まれる配線部材を示す図である。なお、
図17(A),(B)は、それぞれ異なるスペーサ部の変形例を示している。また、
図17(A),(B)の一点鎖線X-Xにおける断面図は、
図16(B)を参照することができる。
【0084】
図17(A)に示す外部接続部64aは、図示を省略する裏面64a2に2つのスペーサ部64cが形成されている。2つのスペーサ部64cは、先端辺64a4に対して一列に平行を成している。また、外部接続部64aのおもて面64a1のスペーサ部64cに対向して窪み64c1がそれぞれ形成されている。このような外部接続部64aは、
図15のプレス装置70においてプレス加工治具71に2つのプレス部71aが設けられている。このプレス加工治具71で配線部材64の外部接続部64aをプレスすることで、
図17(A)に示される配線部材64が得られる。また、1つのスペーサ部64cは、半円球状を成している。1つのスペーサ部64cは、半円球状に限らず、例えば、立方体状、円錐状、四角錘状、三角錐状であってもよい。プレス加工治具71のプレス部71aの形状に応じてスペーサ部64cの形状が定まる。また、これに応じて、スペーサ部64cに対応する窪み64c1の形状も定まる。なお、スペーサ部64cは、2つに限らず、3つ以上が一列に設けられてよい。この場合は、プレス加工治具71にまた3つ以上のプレス部71aが一列に設けられる。
【0085】
図17(B)に示す外部接続部64aは、図示を省略する裏面64a2に側辺64a3から側辺64a5を横切るスペーサ部64cが形成されている。このような外部接続部64aは、
図15のプレス装置70においてプレス加工治具71にこのようなスペーサ部64cの形状に対応するプレス部71aが設けられている。このプレス加工治具71で配線部材64の外部接続部64aをプレスすることで、
図17(B)に示される配線部材64が得られる。また、スペーサ部64cは、半円柱状を成している。スペーサ部64cは、半円柱状に限らず、例えば、四角柱状、三角柱状であってもよい。このような角柱の場合、角部はR面取りされていてもよい。
【0086】
(変形例1-3)
変形例1-3では、配線部材64に対して押圧加工を用いてスペーサ部64cを形成する場合について、
図18及び
図19を用いて説明する。
図18は、第1の実施の形態(変形例1-3)の電力変換装置の製造方法に含まれる配線部材に対する押圧加工を示す図である。
図19は、第1の実施の形態(変形例1-3)の電力変換装置に含まれる配線部材を示す図である。なお、
図18(A)は、配線部材64の外部接続部64aに対して押圧加工の(裏面からの)平面図を、
図18(B)は、その側面図をそれぞれ示している。
図19(A)は、押圧加工された配線部材64の外部接続部64aの平面図を、
図19(B)は、
図19(A)の一点鎖線X-Xの断面図をそれぞれ示している。
【0087】
配線部材64の外部接続部64aのスペーサ部64cの形成予定領域に、一対の押圧治具73a,73bを押し付ける。一対の押圧治具73a,73bは、半円筒状を成している。一対の押圧治具73a,73bの材質は、配線部材64を押圧可能な硬度を備えていればよい。一対の押圧治具73a,73bの一端部を
図18に示されるように、外部接続部64aに対して押し付ける。これにより、
図19に示されるように、押し付けられた箇所には一対の押圧治具73a,73bの一端部の形状に対応した窪み64c1が形成される。さらに、外部接続部64aに窪み64c1が形成されることで、窪み64c1に囲まれる部分が隆起してスペーサ部64cが形成される。すなわち、一対の押圧治具73a,73bにより、配線部材64の裏面64a2のスペーサ部64cの両側部にスペーサ部64cに沿って窪み64c1が設けられている。
【0088】
なお、一対の押圧治具73a,73bは、半円筒状に限らず、例えば、平板状であってもよい。この場合には、例えば、
図17(B)のように、外部接続部64aに側辺64a3から側辺64a5を横切るような窪み64c1が形成されると共に、窪み64c1に挟まれて隆起するスペーサ部64cが形成される。
【0089】
(変形例1-4)
変形例1-4では、ケース20の制御端子領域21e1の曲げられた外部接続部64aに対向する領域が窪んでいる場合について、
図20及び
図21を用いて説明する。
図20は、第1の実施の形態(変形例1-4)の電力変換装置の製造方法に含まれる取り付け工程(取り付け後)を示す図である。
図21は、第1の実施の形態(変形例1-4)の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程を示す図である。なお、
図20及び
図21は、
図10及び
図11に対応している。
【0090】
ケース20の制御端子領域21e1のナット収納部21gの周囲に端子受付部21hが窪んで形成されている。端子受付部21hの底面は、制御端子領域21e1よりも下位であって、ナット収納部21gの底面よりも上位に位置する。また、端子受付部21hは、平面視で、折り曲げられた外部接続部64aが嵌る形状並びにサイズであってよい。
【0091】
このようなケース20の場合の電力変換装置10もまた
図7の製造方法に沿って製造される。ここでは、
図7のステップS15,S16について説明する。
【0092】
図7のステップS15にて、ケース20を取り付けると、
図20に示されるように、配線部材64がケース20の制御端子領域21e1の引き出し口21fから鉛直上方(+Z方向)に延伸している。
【0093】
次いで、
図7のステップS16にて、ケース20の制御端子領域21e1の引き出し口21fから鉛直上方に延伸している配線部材64を、そのおもて面64a1をケース20の制御端子領域21e1に向かって押圧する。すると、
図21に示されるように、配線部材64は引き出し口21f付近を支点として折れ曲がり、外部接続部64aの先端辺64a4が制御端子領域21e1に当接する。この際、外部接続部64aは、制御端子領域21e1に形成された端子受付部21hに入り込む。すなわち、外部接続部64aは、第1の実施の形態の
図11の場合より、よりケース20側に付勢される。このため、その後、配線部材64に対する押圧の解除後、配線部材64の外部接続部64aが元の位置に戻ろうとしても、外部接続部64aの先端辺64a4が屈曲部64bよりも上方となるように傾斜することがより防止される。
【0094】
したがって、このような配線部材64の外部接続部64a上に対して、プリント基板を変形することなく確実にネジで締結でき、電力変換装置の信頼性の低下を防止することができる。
【0095】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、変形例1-1のようにプレス加工が施された配線部材64を用いる場合について、
図22及び
図23を用いて説明する。
図22は、第2の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる取り付け工程(取り付け後)を示す図である。
図23は、第2の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程を示す図である。
【0096】
プレス加工によりスペーサ部64cが形成された配線部材64を含む電力変換装置10もまた
図7の製造方法に沿って製造される。ここでは、
図7のステップS15,S16について説明する。
【0097】
図7のステップS15にて、ケース20を取り付けると、
図22に示されるように、配線部材64がケース20の制御端子領域21e1の引き出し口21fから鉛直上方(+Z方向)に延伸している。
【0098】
次いで、
図7のステップS16にて、ケース20の制御端子領域21e1の引き出し口21fから鉛直上方に延伸している配線部材64を、そのおもて面64a1をケース20の制御端子領域21e1に向かって押圧する。すると、
図23に示されるように、配線部材64は引き出し口21f付近を支点として折れ曲がり、外部接続部64aの先端辺64a4が制御端子領域21e1に当接する。この際、配線部材64は窪み64c1が他の部分よりも強度が低いため、外部接続部64aは、おもて面64a1の窪み64c1から折れ曲がる。その後、配線部材64に対する押圧の解除後、配線部材64の外部接続部64aが元の位置に戻ろうとしても、外部接続部64aの先端辺64a4が屈曲部64bよりも上方となるように傾斜することがより防止される。特に、窪み64c1は他の部分よりも厚さが薄いため、窪み64c1で曲がった外部接続部64aは、元の位置に戻りにくい。
【0099】
したがって、このような配線部材64の外部接続部64a上に対して、プリント基板を変形することなく確実にネジで締結でき、電力変換装置の信頼性の低下を防止することができる。
【0100】
(変形例2-1)
第2の実施の形態では、配線部材64を、窪み64c1を支点として折り曲げるにあたり、スペーサ部64cは窪み64c1に対向する位置に制限される。変形例2-1では、配線部材64を、窪みを支点として折り曲げつつ、スペーサ部64cの位置が制限されない場合について、
図24及び
図25を用いて説明する。
図24は、第2の実施の形態(変形例2-1)の電力変換装置の製造方法に含まれる取り付け工程(取り付け後)を示す図である。
図25は、第2の実施の形態(変形例2-1)の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程を示す図である。なお、
図24及び
図25は、
図23及び
図24の場合に対応している。
【0101】
変形例2-1でも、プレス加工によりスペーサ部64cが形成された配線部材64を含む電力変換装置10もまた
図7の製造方法に沿って製造される。但し、変形例2-1の配線部材64では、スペーサ部64c(及び窪み64c1)が締結孔64a6の近くに形成されている。
【0102】
さらに、変形例2-1の配線部材64のおもて面64a1に、窪み64c2が形成されている。窪み64c2は、配線部材64に後述するようにケース20が取り付けられた際に引き出し口21f付近に位置するように配線部材64のおもて面64a1に形成される。窪み64c2は、スリット加工により形成されてよい。この場合、配線部材64のX方向の幅を横断するように窪み64c2が形成されてよい。また、この際の窪み64c2の深さは、配線部材64が折り曲げられた際に切断されない程度であってよい。また、窪み64c2は、プレス加工により形成してもよい。この場合、配線部材64のX方向の幅に沿って複数形成されてよい。ここでは、スリット加工により窪み64c2が形成されている場合を例示している。なお、変形例2-1でも、
図7のステップS15,S16について説明する。
【0103】
図7のステップS15にて、ケース20を取り付けると、
図24に示されるように、配線部材64がケース20の制御端子領域21e1の引き出し口21fから鉛直上方(+Z方向)に延伸している。この際、配線部材64の窪み64c2がケース20の引き出し口21fに位置している。
【0104】
次いで、
図7のステップS16にて、ケース20の制御端子領域21e1の引き出し口21fから鉛直上方に延伸している配線部材64を、そのおもて面64a1をケース20の制御端子領域21e1に向かって押圧する。すると、
図25に示されるように、配線部材64は引き出し口21f付近を支点として折れ曲がり、外部接続部64aの先端辺64a4が制御端子領域21e1に当接する。この際、配線部材64は窪み64c2が他の部分よりも強度が低いため、外部接続部64aは、おもて面64a1の窪み64c2から折れ曲がる。その後、配線部材64に対する押圧の解除後、配線部材64の外部接続部64aが元の位置に戻ろうとしても、外部接続部64aの先端辺64a4が屈曲部64bよりも上方となるように傾斜することがより防止される。特に、折れ曲がった窪み64c2は他の部分よりも厚さが薄いため、窪み64c2で曲がった外部接続部64aは、元の位置に戻りにくい。
【0105】
したがって、変形例2-1の配線部材64の外部接続部64a上に対して、プリント基板を変形することなく確実にネジで締結でき、電力変換装置の信頼性の低下を防止することができる。
【0106】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態の電力変換装置の配線部材64の外部接続部64aは、スペーサ部64cを含まずに、ケース20の制御端子領域21e1に対して略平行を成している。このような電力変換装置の製造方法について、
図26を用いて説明する。
図26は、第3の実施の形態の電力変換装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0107】
まず、電力変換装置の構成部品を用意する用意工程を行う(ステップS10)。ここで用意される構成部品は、例えば、放熱ベース板35、第1半導体チップ40a,40b、第2半導体チップ41a,41b、絶縁回路基板31、各種の配線部材61~64、ケース20を用意する。ここで用意される配線部材64は、スペーサ部64cを含んでおらず、おもて面64a1及び裏面64a2が略平坦である。なお、ここに記載されていない構成部品でも用意される。
【0108】
次いで、ステップS11~S14の工程が行われる。これらの工程は、
図7のステップS11~S14と同様である。次いで、配線部材61,62,63が接合された半導体ユニット30及び制御配線ユニット50が搭載された放熱ベース板35にケース20を取り付ける取り付け工程を行う(ステップS15)。取り付け工程について、
図27を用いて説明する。
図27は、第3の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる取り付け工程(取り付け後)を示す図である。
図27は、第1の実施の形態の
図10に対応しており、ケース20を取り付けた後の制御端子領域21e1から引き出された配線部材64の断面図を示している。
【0109】
配線部材61,62,63が接合された半導体ユニット30及び制御配線ユニット50が搭載された放熱ベース板35に対して、上方から、ケース20を取り付ける(
図9を参照)。この際、ケース20の長側壁21a、短側壁21b、長側壁21c、短側壁21dの底部に接着剤を塗布しておき、放熱ベース板35の外周部に接着させる。
【0110】
このようにしてケース20が取り付けられると、例えば、
図27に示されるように、配線部材64がケース20の制御端子領域21e1の引き出し口21fから鉛直上方(+Z方向)に延伸している。なお、図示を省略するものの、制御端子領域21e2~21e6に対しても、
図27と同様に配線部材64が引き出し口21fから鉛直上方に延伸する。
【0111】
次いで、スペーサ部64cをケース20の制御端子領域21e1に設置するスペーサ部設置工程を行う(ステップS16a)。スペーサ部設置工程について、
図28を用いて説明する。
図28は、第3の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれるスペーサ部設置工程を示す図である。スペーサ部64cをケース20の制御端子領域21e1の引き出し口21f近傍に設定する。スペーサ部64cは、柱状であってよい。例えば、
図10で説明したように、半円柱状であってよい。この他、角柱状、三角柱状であってよい。また、スペーサ部64cの配置位置は、第1の実施の形態の外部接続部64aが折り曲げた際のスペーサ部64cの位置に対応してよい。スペーサ部64cの材質は、配線部材64からの押圧に対抗可能な硬度を備えていればよい。
【0112】
次いで、配線部材64をケース20側に折り曲げる折り曲げ工程を行う(ステップS16)。折り曲げ工程について
図29及び
図30を用いて説明する。
図29及び
図30は、第3の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれる折り曲げ工程を示す図である。
【0113】
図28に示したように、ケース20の制御端子領域21e1の引き出し口21fから鉛直上方に延伸している配線部材64を、そのおもて面64a1をケース20の制御端子領域21e1に向かって押圧する。すると、配線部材64は引き出し口21f付近を支点として折れ曲がり、外部接続部64aが制御端子領域21e1に向かって倒れる。同方向に続けて押圧すると、外部接続部64aが制御端子領域21e1に設けられたスペーサ部64cが当接する。さらに、押圧すると、スペーサ部64cを支点として、
図29に示されるように、外部接続部64aの先端辺64a4側が制御端子領域21e1に当接する。
【0114】
その後、配線部材64に対する押圧を解除する。押圧を解除された配線部材64の外部接続部64aは、曲がる前の状態を復元しようとして元に戻ろうとする。押圧解除直後は、スペーサ部64cが支点となり、外部接続部64aの先端辺64a4が制御端子領域21e1に当接するまで外部接続部64aが傾斜している。このため、外部接続部64aが元の位置に戻ろうとしても、例えば、
図30に示されるように、制御端子領域21e1に対して最大略水平となる高さまで戻る。すなわち、外部接続部64aの先端部(先端辺64a4)が制御端子領域21e1から離間しつつ、屈曲部64bよりも下位になるように傾斜してもよい。このような折り曲げ工程を各配線部材64に対して行う。
【0115】
次いで、スペーサ部64cを除去するスペーサ部除去工程を行う(ステップS16b)。スペーサ部除去工程について、
図31を用いて説明する。
図31は、第3の実施の形態の電力変換装置の製造方法に含まれるスペーサ部除去工程を示す図である。ステップS16の後、スペーサ部64cをケース20の制御端子領域21e1から取り除く。これにより、
図31に示されるように、外部接続部64aとケース20の制御端子領域21e1との間からスペーサ部64cが取り除かれて、外部接続部64aがケース20の制御端子領域21e1に対して略平行に維持される。以上により、電力変換装置が製造される。
【0116】
このような電力変換装置でも、配線部材64の外部接続部64aは制御端子領域21e1に対して略水平となる高さまで戻る。このような配線部材64の外部接続部64a上に、プリント基板を設けて、ネジで締結しても、外部接続部64aはプリント基板に突き当たることはない。このため、プリント基板は変形することなく適切に配線部材64に締結される。このため、電力変換装置の信頼性の低下が抑制される。
なお、第3の実施の形態のケース20の制御端子領域21e1に対して、変形例1-4の端子受付部21hを形成してもよい。
【符号の説明】
【0117】
10 電力変換装置
20 ケース
21 下部収納部
21a,21c 長側壁
21b,21d 短側壁
21e 下部おもて面
21e1~21e6 制御端子領域
21f 引き出し口
21g ナット収納部
21h 端子受付部
22 上部収納部
22a,22c 長側壁
22b,22d 短側壁
22e 上部おもて面
30,30a~30f 半導体ユニット
31 絶縁回路基板
32 絶縁板
33,33a~33e 配線板
35 放熱ベース板
36 ナット
40a,40b 第1半導体チップ
41a,41b 第2半導体チップ
42a~42d ボンディングワイヤ
50,50a~50f 制御配線ユニット
51 絶縁板
52 配線板
61 配線部材(正極用)
61a 本体部
61b 連係部
61c 脚部
62 配線部材(負極用)
62a 本体部
62b 連係部
62c 脚部
63 配線部材(出力用)
63a 本体部
63b 連係部
63c 脚部
64 配線部材(制御用)
64a 外部接続部
64a1 おもて面
64a2 裏面
64a3,64a5 側辺
64a4 先端辺
64a6 締結孔
64b 屈曲部
64c スペーサ部
64c1 窪み
70 プレス装置
71 プレス加工治具
71a プレス部
72 載置台
72a プレス受け部
73a,73b 押圧治具