(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183654
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電子写真用トナーおよび電子写真用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20231221BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G03G9/08 391
G03G9/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097283
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中島 一比古
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA06
2H500AA14
2H500BA24
2H500CB06
2H500CB07
2H500EA22A
2H500EA52C
2H500EA60C
(57)【要約】
【課題】高い光輝性を発揮することができる電子写真用トナーを提供すること。
【解決手段】本発明の電子写真用トナーは、光輝性顔料と、前記光輝洗顔料を被覆する樹脂層とを有するトナー母体粒子を含む電子写真用トナーであって、前記光輝性顔料は、光輝部と前記光輝部を被覆するコート層とを含み、前記コート層の平均厚さをAnmとし、前記樹脂層の平均厚さをBnmとしたときにA+B≦1600nmを満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝性顔料と、前記光輝性顔料を被覆する樹脂層とを有するトナー母体粒子を含む電子写真用トナーであって、
前記光輝性顔料は、光輝部と前記光輝部を被覆するコート層とを含み、
前記コート層の平均厚さをAnmとし、前記樹脂層の平均厚さをBnmとしたときにA+B≦1600nmを満たす、
電子写真用トナー。
【請求項2】
前記コート層の平均厚さが5~100nmの範囲内である、請求項1に記載の電子写真用トナー。
【請求項3】
前記光輝性顔料の平均長軸径が3~30μmの範囲内である、請求項1または2に記載の電子写真用トナー。
【請求項4】
前記光輝部はアルミニウムであり、前記コート層はアルミナである、請求項1または2に記載の電子写真用トナー。
【請求項5】
乾式コーティング法により、前記光輝性顔料に前記樹脂層を被覆する、請求項1または2に記載の電子写真用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用トナーおよび電子写真用トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式で形成された画像において、様々な顧客ニーズに応えて、商業印刷分野で見られるような高付加価値な画像とすることが求められている。このような高付加価値の画像の一例として、光輝性を有する画像が挙げられる。
【0003】
電子写真方式で光輝性を有する画像を出力するために、光輝性顔料を含む電子写真用トナーが用いられている。たとえば、特許文献1は、光輝性金属顔料を含む光輝性トナーを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような光輝性顔料を含む電子写真用トナーは高い光輝性を発揮することが求められる。ここで特許文献1に記載されている様な光輝性顔料は金属酸化物および樹脂層によって被覆されているが、高い光輝性を発揮させるためにはこれらの被覆層は薄い方がよいと考えられる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているような製造方法で光輝性顔料を被覆すると被覆層を薄くすることができず、高い光輝性を発揮させることができない。
【0007】
本発明の目的は、高い光輝性を発揮することができる電子写真用トナーを提供することである。また、本発明の目的は、当該電子写真用トナーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の電子写真用トナーに関する。
[1]光輝性顔料と、前記光輝性顔料を被覆する樹脂層とを有するトナー母体粒子を含む電子写真用トナーであって、前記光輝性顔料は、光輝部と前記光輝部を被覆するコート層とを含み、前記コート層の平均厚さをAnmとし、前記樹脂層の平均厚さをBnmとしたときにA+B≦1600nmを満たす、電子写真用トナー。
[2]前記コート層の平均厚さが5~100nmの範囲内である、[1]に記載の電子写真用トナー。
[3]前記光輝性顔料の平均長軸径が3~30μmの範囲内である、[1]または[2]に記載の電子写真用トナー。
[4]前記光輝部はアルミニウムであり、前記コート層はアルミナである、[1]~[3]のいずれかに記載の電子写真用トナー。
【0009】
本発明は以下の電子写真用トナーの製造方法に関する。
[5]乾式コーティング法により、前記光輝性顔料に前記樹脂層を被覆する、[1]~[4]のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い光輝性を発揮することができる電子写真用トナーを提供することができる。また、本発明によれば、当該電子写真用トナーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る電子写真用トナーは、光輝部と、前記光輝部を被覆するコート層とを有する光輝性顔料と、前記光輝性顔料を被覆する樹脂層と、を含み、前記コート層の平均厚さをAnmとし、前記樹脂層の平均厚さをBnmとしたときにA+B≦1600nmを満たすことを特徴とする。
【0013】
なお、本明細書において、電子写真用トナーのことを、単に、「トナー」ともいい、光輝性顔料を含む電子写真用トナーのことを、「光輝性トナー」ともいう。本発明のトナーが含むトナー母体粒子は、必要に応じて外添剤を含んでもよい。
【0014】
なお、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。「トナー母体粒子」は外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、トナー粒子の集合体のことをいう。
【0015】
図1に、本発明の実施の形態に係る電子写真用トナーが含むトナー母体粒子10の断面を示す。
【0016】
図1に示されるように、トナー母体粒子10は、光輝性顔料20と樹脂層30とを含む。光輝性顔料10は、光輝部21と、光輝部21を被覆するコート層22と、を含む。
【0017】
形成された画像が高い光輝性を発揮するためには、光輝性顔料20中の光輝部21を被覆するコート層22、および光輝性顔料20を被覆する樹脂層30ができる限り薄い方がよいと考えられる。本発明によれば、トナー母体粒子10中の光輝性顔料20において、光輝部21を被覆するコート層22の平均厚さをAnmとし、樹脂層30の平均厚さをBnmとしたときに、A+B≦1600nmを満たす。これにより、本発明の電子写真用トナーは高い光輝性を発揮することができる。なお、A+Bは、高い光輝性を発揮させるという観点から、1500nm以下であることがさらに好ましく、1000nm以下であることがさらに好ましく、500nm以下であることがさらに好ましく、150nm以下であることがさらに好ましい。A+Bの下限は、特に制限されないが、例えば、100nm以上であればよい。
【0018】
以下、光輝性顔料、樹脂層のそれぞれについて説明する。
【0019】
(光輝性顔料)
光輝性顔料は、入射してきた光を反射することで光輝性を発揮する。光輝性顔料は、光輝部とコート層とを有するが、光の反射は主に光輝部によって行われる。光輝部はコート層と比較して入射してきた光を殆ど吸収・散乱等することが無い反射性が高い部分である。
【0020】
光輝性顔料の平均長軸径は、3~30μmの範囲内であることが好ましく、5~100μmの範囲内であることがより好ましい。
【0021】
光輝性顔料は、記録媒体における専有面積が広ければ広いほど、また、光輝性顔料の専有面が、記録媒体表面に対して平行かつ一様に広がっているほど、より多くの光を反射することができる。そのため、高い光輝性を発揮させるという観点から、記録媒体上の画像形成箇所において、本発明に係るトナー粒子を隙間なく配列させて専有面を大きくすることが好ましい。
【0022】
一方で、広く広がりすぎると製造時や印刷プロセスにおいて曲がり変型が起きやすく、画像の光輝性が下がる。そのため、光輝性顔料の平均長軸径を上記範囲内とすることが好ましい。
【0023】
なお、平均長軸径は走査型電子顕微鏡を用いた電子顕微鏡写真から測定すればよい。
【0024】
また、光輝性顔料の平均厚さは、25~500nmの範囲内であることが好ましく、80~350nmの範囲内であることがより好ましい。平均厚さが25nm以上であることにより、光輝性顔料の表面に入射した光が、光輝性顔料を透過しづらく、表面で反射しやすくなるため、良好な光輝性が得られる。また、トナー粒子の製造時や画像形成時に外力を受けても光輝性顔料が変形しづらい。一方、平均厚さが、500nm以下であることにより、光輝性顔料が記録媒体の表面に平行に配列しやすくなるため、良好な光輝性が得られる。
【0025】
光輝性顔料の形状は扁平状であることが好ましい。光輝性顔料が扁平状であることで、光輝性顔料の表面と記録媒体の表面とが平行になり、優れた光輝性を発揮しやすくなる。なお、「扁平状」とは、所定の厚さを有しており、厚さ方向に直交する面方向に沿った少なくとも二方向の寸法が厚さの寸法よりも大きく、平面の上に安定して置くことができる形状のことをいい、例えば、球や直方体等の立体形状のものを一方向で押しつぶしたような形状であり、薄片状、鱗片状、板状等の形状が含まれる。具体的には、光輝性顔料において、数平均円相当径が、数平均最大厚さよりも長い場合に、扁平状であるといえる。
【0026】
〈光輝部〉
光輝性顔料中の光輝部の構成材料の例には、金属(合金を含む)、金属化合物、ガラス、結晶性化合物、鉱物等が含まれる。より具体的には、光輝部の構成材料の例には、アルミニウム、黄銅、青銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛、銅、銀、金、白金などの金属粉末、酸化チタンや黄色酸化鉄を被覆した雲母、硫酸バリウム、層状ケイ酸塩、層状アルミニウムのケイ酸塩などの被覆薄片状無機結晶基質、単結晶板状酸化チタン、塩基性炭酸塩、酸オキシ塩化ビスマス、天然グアニン、薄片状ガラス粉、金属蒸着された薄片状ガラス粉等が挙げられる。これらは、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。また、色調調整のために、染料や顔料などの各種色材を併用してもよい。
【0027】
中でも、コストや安定性、入手容易性、光輝性の観点から、金属鱗片であることが好ましく、アルミニウム鱗片であることがより好ましく、アルミニウム金属単体の金属鱗片であることが更に好ましい。
【0028】
金属鱗片の例としては、金属又は合金をプラスチックフィルム上に真空蒸着してなる金属薄膜をプラスチックフィルムから剥離し、剥離した金属薄膜を粉砕、撹拌して得られたもの、金属又は合金の粉末と溶剤とを混合し、媒体撹拌ミル、ボールミル、アトライター等で、当該粉末を展延及び/又は粉砕して得られたもの等が挙げられる。
【0029】
また、アルミニウム鱗片としては、市販品を用いてもよく、アルペースト(登録商標)WXM-0630、EMERAL(登録商標)EMR-D5660、WJC-U75C(以上、東洋アルミニウム社製)、METALURE(登録商標)W-52012 IL、Ultravario Aqua PG-24001(以上、ECKART社製)、エルジー(登録商標)neo Silver#500(銀色)、Gold#500(金色)(以上、尾池工業社製)等が挙げられる。
【0030】
〈コート層〉
光輝部を被覆するコート層の構成材料の例には、上記の光輝部を構成する金属の酸化物等が挙げられる。より具体的には、アルミナ、シリカ、チタニア、酸化銀等が挙げられる。これらは一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0031】
コート層は、上記の構成材料の中で、特にアルミナであることが好ましい。コート層を有する光輝性顔料は樹脂層によって被覆されるが、この際に、樹脂層は乾式コーティングで形成されることが好ましい。
【0032】
乾式コーティング法は機械的衝撃力により、光輝性顔料を樹脂層で被覆するが、アルミナはモース硬度が高く、機械的衝撃力に強いため、乾式コーティング法で樹脂層を形成する際に欠損しづらく、乾式コーティング法に適している。なお、コート層が欠損すると、むき出しになった光輝部が傷つき、光輝性が著しく落ちる。また、光輝部がアルミニウムなどの導電性がある材料であると、むき出しになった光輝部によって帯電不良となり、電子写真方式による画像形成に悪影響を与える。
【0033】
コート層は薄いほど、光輝性顔料の光輝性は上がるが、コート層が薄すぎると光輝部が露出しやすい。露出した光輝部に傷がつくと反射性が低下する。上記の観点から、コート層の厚さは5~800nmの範囲であることが好ましく、5~500nmの範囲であることがさらに好ましく、5~150nmの範囲であることがさらに好ましく、5~100nmの範囲であることがさらに好ましく、5~50nmの範囲であることがさらに好ましく、5~15nmの範囲であることがさらに好ましい。
【0034】
コート層は、公知の方法で光輝部の表面に形成されればよい。公知の方法にはゾルゲル法、金属酸化物を光輝部の表面に析出させ、低温で結晶化させる方法などが含まれる。
【0035】
一方で、光輝部として用いる材料によってはコート層を既に有しているのでコート層を形成しなくてもよい。たとえば、アルミニウムを光輝部として用いる場合、アルミニウムは既にコート層としてアルミナを有しているので、コート層を形成しなくてもよい。
【0036】
[樹脂層]
樹脂層は、光輝性顔料を被覆する。光輝性顔料は、自身のみでは記録媒体上に固定化されない。そこで、光輝性顔料を、樹脂層で被覆させてトナー母体粒子とすることにより、記録媒体上に固定化させることができる。樹脂層の構造は、特に制限されず、単層であっても二層以上の複数層であってもよい。二層以上の複数層の構造の例としては、コア・シェル構造や多層構造が挙げられる。
【0037】
樹脂層は薄いほど、光輝性顔料の光輝性は上がるが、樹脂層が薄すぎると光輝性顔料が露出しやすくなり、帯電不良を起こしやすくなる。
【0038】
上記の観点から、樹脂層の平均厚さは80~1550nmの範囲であることが好ましく、80~1000nmの範囲であることがさらに好ましく、80~500nmの範囲であることがさらに好ましく、80~150nmの範囲であることがさらに好ましい。
【0039】
樹脂層を構成する材料は、特に制限されず、公知の電子写真用トナーに通常用いられる結着樹脂を用いることができる。
【0040】
樹脂層(結着樹脂)の構成材料の例には、ポリエステル、スチレン-アクリル樹脂等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、これらの樹脂を二種以上含む複合樹脂等が挙げられる。これらは一種を単独で用いても併用してもよい。
【0041】
これらの中で、低温定着性、耐久性、及び保存性の両立の観点から、結着樹脂はポリエステルを含むことが好ましい。
【0042】
また、樹脂層は、乾式コーティング法で形成されることが好ましい。樹脂層が乾式コーティング法で形成されることで、コート層の平均厚さ(A)と樹脂層の平均厚さ(B)の合計を小さくすることができる。このことについて以下に説明する。
【0043】
樹脂層を形成する方法としては、重合法や粉砕法が知られているが、これらは高い光輝性を発揮する電子写真用トナーを得るという観点から好ましくなく、上記のように乾式コーティング法が好ましい。
【0044】
重合法は、光輝性顔料の周りに重合によって樹脂層を形成する方法である。この方法は、例えば水やアルカリなどの溶媒を用いる湿式法である。ここで、光輝性顔料が、光輝部として金属(例えばアルミニウム)を有し、コート層として金属酸化物(例えばアルミナ)を有する場合、コート層が厚くないと水やアルカリと光輝部とが強く反応して光輝性が落ちる。そのため、厚いコート層が必要となり、A+Bを小さくすることが難しく高い光輝性を発揮させることが難しい。
【0045】
一方、粉砕法は、光輝性顔料を含む樹脂ペレットを成形して、樹脂ペレットを粉砕することで樹脂層によって被覆された光輝性顔料を得る方法である。この方法は、乾式であり、コート層を薄くできる可能性はあるが、樹脂ペレットを粉砕するという原理上、樹脂層を薄くすることが難しい。そのため、A+Bを小さくすることが難しく高い光輝性を発揮させることが難しい。
【0046】
これに対して乾式コーティング法により光輝性顔料に樹脂層を被覆すると、乾式であるためコート層が厚い必要がない。また、粉砕法と異なり、乾式コーティング法は、樹脂層の厚さを制御しやすい。そのため、A+Bを小さくすることが容易になり高い光輝性を発揮させやすくなる。
【0047】
なお、「乾式コーティング法」とは、例えば、溶媒を使用せず、被覆用の樹脂として樹脂粒子を使用し、当該樹脂粒子と光輝性顔料を混合した後、加熱して被覆用の樹脂を溶融し、光輝性顔料の表面に樹脂を被覆する方法である。
【0048】
[その他]
本発明のトナーは、例えば、本発明のトナーとキャリア粒子とを含有する、電子写真用の二成分現像剤として使用してもよい。また、トナー母体粒子に添加する外添剤の例には、ワックス、荷電制御材、有色着色剤等が挙げられる。
【0049】
[画像形成方法]
本発明の実施の形態に係る電子写真用トナーを用いる画像形成方法は、光輝性トナー像を記録媒体上に熱ローラ方式で定着処理する過程を経るものに好適である。具体的には、例えば下記(1)~(5)の工程を有する
【0050】
(1)像担持体の表面を帯電する帯電工程
(2)露光することにより像担持体上に静電潜像を形成する露光工程
(3)像担持体上に形成された静電潜像をトナーが含有される現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程
(4)像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写工程
(5)記録媒体上に転写されたトナー像を熱ローラ方式で定着処理する定着工程
【実施例0051】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
【0052】
<トナー1の作製>
まず、光輝性顔料を被覆するための樹脂を以下の様にして得た。
【0053】
ビスフェノールA-PO付加物4900質量部、ビスフェノールA-EO付加物1950質量部、テレフタル酸1328質量部、2-エチルヘキサン酸錫(II)40質量部、及び没食子酸1質量部を窒素導入管、脱水管、攪拌器および熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、230℃にて8時間反応を行った。反応後、8.3kPaにて1時間反応させた。さらに、210℃に降温して、無水トリメリット酸5質量部、フマル酸5質量部、及びターシャリブチルカテコール5質量部を添加し、所望の軟化点に達するまで反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0054】
次に、得られたポリエステル樹脂に以下の様にして添加剤を添加した。
【0055】
ポリエステル樹脂100質量部、荷電制御剤「Bontron E-304」(オリヱント化学工業(株)製、負帯電性荷電制御剤)0.5質量部、及びワックス「HNP-9」(日本精蝋社製、パラフィンワックス、融点:79℃)3質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間予備混合した後、二軸押出機「PCM-87」(池貝鉄工社製)を用いて溶融混練した。溶融混練の条件は、原料のフィード量を3.0kg/min、混練部のスクリュー回転数を200(rpm)に設定し、混練物の吐出部で測定した混練物の温度を160℃に、バレル設定温度を170℃に調整して、混練物を得た。得られた混練物を冷却ロールで圧延しながら20℃以下に冷却し、冷却された溶融混練物をロートプレックス(東亜機械社製)で3mm程度に粗粉砕した。
【0056】
得られた粗砕物を、カッターミル(奈良機械製作所製)を用いて体積中位粒径(D50)が1.5~2.5mmに粗粉砕した後、衝突板式ジェットミル「I-20型」(日本ニューマチック工業社製)で微粉砕した。このようにして微粉砕した樹脂粒子を得た。
【0057】
次に以下のようにして乾式コーティング法により、光輝性顔料に樹脂層を被覆させトナー母体粒子を得た。
【0058】
上記の微粉砕した樹脂粒子35質量部と、扁平なアルミニウム顔料1(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層10nm)50質量部を撹拌羽根つき高速混合器に投入し、窒素雰囲気下において120℃で1時間撹拌混合して、機械的衝撃力を利用して光輝性顔料に樹脂を被覆したトナー母体粒子1を得た。
【0059】
次に以下のようにしてトナー母体粒子に添加剤を添加してトナー粒子(トナー)を得た。
【0060】
上記のようにして得たトナー母体粒子100質量部に、シリカ微粒子を0.8質量部添加し、ヘンシェルミキサー型式「FM20C/I」(日本コークス工業(株)製)に添加し、羽根先端周速が50m/sとなるようにして回転数を設定して20分間撹拌しトナー粒子1(トナー1)を得た。
【0061】
<トナー2の作製>
樹脂粒子200質量部と、扁平なアルミニウム顔料1(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層10nm)50質量部を用いた以外はトナー1の作製と同様にして、トナー2を得た。
【0062】
<トナー3の作製>
樹脂粒子350質量部と、扁平なアルミニウム顔料1(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層10nm)50質量部を用いた以外はトナー1の作製と同様にして、トナー3を得た。
【0063】
<トナー4の作製>
樹脂粒子500質量部と、扁平なアルミニウム顔料1(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層10nm)50質量部を用いた以外はトナー1の作製と同様にして、トナー4を得た。
【0064】
<トナー5の作製>
前記樹脂粒子130質量部と、扁平なアルミニウム顔料2(顔料の長軸径2.8μm、コート層としてアルミナ層15nm)50質量部を用いた以外はトナー1の作製と同様にして、トナー5を得た。
【0065】
<トナー6の作製>
前記樹脂粒子150質量部と、扁平なアルミニウム顔料3(顔料の長軸径32μm、コート層としてアルミナ層20nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー6を得た。
【0066】
<トナー7の作製>
前記樹脂粒子35質量部と、扁平なアルミニウム顔料4(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層40nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー7を得た。
【0067】
<トナー8の作製>
前記樹脂粒子190質量部と、扁平なアルミニウム顔料4(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層40nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー8を得た。
【0068】
<トナー9の作製>
前記樹脂粒子330質量部と、扁平なアルミニウム顔料4(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層40nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー9を得た。
【0069】
<トナー10の作製>
前記樹脂粒子480質量部と、扁平なアルミニウム顔料4(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層40nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー10を得た。
【0070】
<トナー11の作製>
前記樹脂粒子40質量部と、扁平なアルミニウム顔料5(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層100nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー11を得た。
【0071】
<トナー12の作製>
前記樹脂粒子170質量部と、扁平なアルミニウム顔料5(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層100nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー12を得た。
【0072】
<トナー13の作製>
前記樹脂粒子300質量部と、扁平なアルミニウム顔料5(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層100nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー13を得た。
【0073】
<トナー14の作製>
前記樹脂粒子430質量部と、扁平なアルミニウム顔料5(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層100nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー14を得た。
【0074】
<トナー15の作製>
前記樹脂粒子25質量部と、扁平なアルミニウム顔料6(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層490nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー15を得た。
【0075】
<トナー16の作製>
前記樹脂粒子110質量部と、扁平なアルミニウム顔料6(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層490nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー16を得た。
【0076】
<トナー17の作製>
前記樹脂粒子190質量部と、扁平なアルミニウム顔料6(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層490nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー17を得た。
【0077】
<トナー18の作製>
前記樹脂粒子20質量部と、扁平なアルミニウム顔料7(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層760nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー18を得た。
【0078】
<トナー19の作製>
前記樹脂粒子130質量部と、扁平なアルミニウム顔料7(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層760nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー19を得た。
【0079】
<トナー20の作製>
前記樹脂粒子120質量部と、扁平なアルミニウム顔料6(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層490nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー20を得た。
【0080】
<トナー21の作製>
前記樹脂粒子230質量部と、扁平なアルミニウム顔料7(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層760nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー21を得た。
【0081】
<トナー22の作製>
前記樹脂粒子240質量部と、扁平なアルミニウム顔料7(顔料の長軸径12μm、コート層としてアルミナ層760nm)50質量部を用いた以外は、トナー1の作製と同様にしてトナー22を得た。
【0082】
[評価]
上記のようにして得た各トナーについて、光輝性顔料の平均長軸径、母体粒子のコート層の平均厚さ、樹脂層の平均厚さ、および光輝性を以下の様にして評価した。
【0083】
〈平均長軸径〉
光輝性顔料の平均長軸径は、走査型電子顕微鏡(SEM)「JSM-7401F」(日本電子(株)製)を用いた電子顕微鏡写真によって測定した。具体的には、1000個の光輝性顔料における長軸径を測定し。個数平均長軸径を算出した。
【0084】
〈コート層の平均厚さ、樹脂層の平均厚さ〉
トナー母体粒子を光硬化性樹脂「D-800」(日本電子社製)中に分散させて硬化処理を行い、光硬化性樹脂中に包埋した。
【0085】
包埋処理したサンプルを、剃刀を用いて平板状に加工し、イオンミリング用試料ホルダーに熱可塑性ワックスを用いて固定して、イオンミリング加工装置「SM-09010」(日本電子社製)により切削面をイオンミリング加工して、断面観察用のサンプルを作製した。
【0086】
なお、断面は、扁平状である光輝性顔料の長軸方向に沿い、かつ、扁平状である光輝性顔料の表面に垂直な断面とした。
【0087】
また、イオンミリング加工は、加速電圧:5.0kV、ビーム電流:60μA、設定時間:12時間、イオン種Ar+の条件で行った。
【0088】
得られた断面観察用のサンプルの樹脂層およびコート層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)「JSM-7401F」(日本電子(株)製)にエネルギー分散型X線分析装置(EDS)「JED-2300」(日本電子(株)製)を組み込んだ装置を用いて求めた。具体的には、得られた断面観察用のサンプルに対して元素マッピングを行って、光輝部、コート層、樹脂層を明白化した画像を得た。なお、EDSの条件は、加速電圧:20kV、照射電流:2.56nA、PHAモード:T3とした。次に、以下の様にして樹脂層およびコート層の厚さを測定した。
【0089】
樹脂層については、当該画像において、トナー母体粒子の最表面の輪郭上の任意の20点から光輝性顔料のコート層の表面までの垂直線の長さを測定した。なお、当該任意の20点は、互いの間隔を、少なくとも100nm以上とし、樹脂が光輝性顔料から剥がれ、光輝性顔料が露出している箇所については、任意の点から除いた。
【0090】
コート層については、当該画像において、光輝部の任意の20点からコート層の表面までの垂直線の長さを測定した。なお、当該任意の20点は、互いの間隔を少なくとも100nm以上とした。
【0091】
上記の様に、任意の20点からの樹脂層およびコート層の厚さのそれぞれの平均値を算出した。また、この平均値の算出を、任意のトナー母体粒子100個のそれぞれについて行い平均値を算出し、これを「コート層の平均厚さ」、「樹脂層の平均厚さ」とした。
【0092】
<光輝性>
市販のカラー複合機(bizhub PRO C6500、コニカミノルタ社製)に上記トナーを収容し、当該複合機を用いて、A4版の上質紙(65g/m2)上に2cm×2cmの正方形のパッチ画像(付着量5g/m2)を有するトナー画像を、定着温度180℃で出力した。
【0093】
得られたトナー画像について、ゴニオメーター装置(変角分光反射率測定器、ゴニオフォトメーターGP-5、村上色彩研究所製)により、入射角を60°としてトナー画像表面で反射した反射角60°の正反射光の明度L*を測定した。なお、校正は、入射角60°として標準白色版表面で反射した反射角60°の正反射光の明度を100として行い、L*が300以上を光輝性良好とした。
【0094】
以下の表1に各トナーの評価結果を示す。
【0095】
【0096】
実施例であるトナー1~19と、比較例であるトナー20~22とを比べると、実施例では光輝性が300L*以上であり、光輝性が良好であった。これは実施例のトナー1~19は、コート層の平均厚さ(Anm)と、樹脂層の平均厚さ(Bnm)との合計が1600nm以下であるためである。