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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183655
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】診療支援装置および診療支援方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20231221BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20231221BHJP
【FI】
G16H10/00
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097285
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室井 規雅
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 清人
(72)【発明者】
【氏名】高木 真吾
(72)【発明者】
【氏名】山地 圭
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】診察時のシーンごとの患者の理解度を数値化して医師に提示することで、正確で精度のよい診療を患者に提供すること。
【解決手段】実施形態に係る診療支援装置は、特定部と、算出部と、出力制御部とを備える。特定部は、診察を構成する複数のシーンのそれぞれを特定する。算出部は、特定部によって特定されたシーンごとに、診察を受ける受診者の映像データと音声データとにもとづいて、診察を行う診察者の説明内容に対する受診者の理解度を示す数値を算出する。出力制御部は、算出部によって算出された理解度を示す数値を出力させる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診察を構成する複数のシーンのそれぞれを特定する特定部と、
前記特定されたシーンごとに、前記診察を受ける受診者の映像データと音声データとにもとづいて、前記診察を行う診察者の説明内容に対する前記受診者の理解度を示す数値を算出する算出部と、
前記算出された理解度を示す数値を出力させる出力制御部と、
を備えた診療支援装置。
【請求項2】
前記出力制御部は、
前記複数のシーンの各シーンの終了の都度、前記算出された理解度を示す数値を出力させる、
請求項1に記載の診療支援装置。
【請求項3】
前記出力制御部は、
前記複数のシーンのすべてが終了した後で、前記算出された理解度を示す数値を出力させる、
請求項1に記載の診療支援装置。
【請求項4】
前記算出部は、
前記複数のシーンのうち前記数値が所定の閾値以下に対応する低理解度のシーンについて、前記説明内容に関する情報を算出し、
前記出力制御部は、
前記算出された前記説明内容に関する情報をさらに出力させる、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の診療支援装置。
【請求項5】
前記出力制御部は、
シーンが前記低理解度となった原因になり得る項目を含む情報を、前記説明内容に関する情報として出力する、
請求項4に記載の診療支援装置。
【請求項6】
前記出力制御部は、
前記低理解度のシーンについて、前記説明内容に含まれる難しい単語と、説明の難易度と、説明のスピードと、回線速度とのうち少なくとも1つを出力する、
請求項5に記載の診療支援装置。
【請求項7】
診察を構成する複数のシーンのそれぞれを特定し、
前記特定されたシーンごとに、前記診察を受ける受診者の映像データと音声データとにもとづいて、前記診察を行う診察者の説明内容に対する前記受診者の理解度を示す数値を算出し、
前記算出された理解度を示す数値を出力させる、
診療支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書および図面に開示の実施形態は、診療支援装置および診療支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
診察時に主治医などの医師が患者に病状や今後の治療方針などを説明し、理解と合意を得るインフォームド・コンセントという概念がある。これは「患者の権利」としてアメリカで生まれた概念で、患者には、自分が望めば病状などの情報を聞く権利があるということが本来の意味ではあるが、日本ではインフォームド・コンセントが「説明と同意」と訳されたため、説明を行うことがインフォームド・コンセントであると思ってしまう。
【0003】
医師による病状や治療方法の説明を行う診察のための機会は設けられていたが、診察後にいざ治療が始まると患者が診察時の説明内容を理解できていないと感じることがある。その結果、患者が納得しないまま治療が進んでしまうことも考えられる。患者が診察時の説明内容を理解できていないと感じる1つの原因として、近年はオンライン診察を行う機会も多く、オンラインゆえに診察時の説明内容が患者に正しく伝わっているか医師が不安をもつことが挙げられる。さらに、診察時の説明で用いられる言葉(医療用語)が難しく、患者が診察時の説明内容を理解したかどうかの確認が難しいことが挙げられる。また、診察時間が長く、また、何を話したときに理解できなかったのか(難しかったのか)が解りづらいため、診察時に医師が患者にどのように説明するのかが難しいことが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-113003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書および図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、診察時のシーンごとの患者の理解度を数値化して医師に提示することで、正確で精度のよい診療を患者に提供することである。ただし、本明細書および図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を、他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る診療支援装置は、特定部と、算出部と、出力制御部とを備える。特定部は、診察を構成する複数のシーンのそれぞれを特定する。算出部は、特定部によって特定されたシーンごとに、診察を受ける受診者の映像データと音声データとにもとづいて、診察を行う診察者の説明内容に対する受診者の理解度を示す数値を算出する。出力制御部は、算出部によって算出された理解度を示す数値を出力させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る診療支援装置を備える診療支援システムの構成例を示すブロック図。
図2】第1実施形態に係る診療支援装置を備える診療支援システムを示す概要図。
図3】第1実施形態に係る診療支援装置の構成例を示すブロック図。
図4】第1実施形態に係る診療支援装置の動作例をフローチャートとして示す図。
図5】第1実施形態に係る診療支援装置において、患者の理解度の表示例を示す図。
図6】第1実施形態に係る診療支援装置において、低理解度のシーンの説明内容に関する情報の表示例を示す図。
図7】第1実施形態に係る診療支援装置において、患者の理解度の表示例を示す図。
図8】第1実施形態に係る診療支援装置において、低理解度のシーンの説明内容に関する情報の表示例を示す図。
図9】第2実施形態に係る診療支援装置を備える診療支援システムの構成例を示すブロック図。
図10】第2実施形態に係る診療支援装置の構成例を示すブロック図。
図11】第3実施形態に係る診療支援装置を備える診療支援システムを示す概要図。
図12】第3実施形態に係る診療支援装置の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、診療支援装置および診療支援方法の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る診療支援装置1を備える診療支援システムM1を示す。診療支援システムM1は、オンライン診察を行う診察者(例えば、医師)が操作する医師側装置10(診療支援装置1の一例)と、オンライン診察を受ける受診者(例えば、患者)が操作する患者側装置20と、診療管理装置30とを備え、テレビ会議システム、または、Web会議システムを構成する。医師側装置10と、患者側装置20と、診療管理装置30とは、ネットワークNを介して相互に通信可能である。診療支援システムM1がテレビ会議システムを構成する場合、診療管理装置30はサーバである一方、診療支援システムM1がWeb会議システムを構成する場合、診療管理装置30は多拠点接続装置(MCU)である。
【0010】
図2に示すように、医師側装置10は、患者側装置20(図1に図示)と通信可能な状態でオンライン診察を行う場合を想定している。医師Dは、医師側装置10のディスプレイ17を参照しながら患者Pのオンライン診察を行うことができる。
【0011】
図1の説明に戻って、医師側装置10は、処理回路11と、メモリ12と、入力インターフェース13と、ネットワークインターフェース14と、カメラ15と、マイク16と、ディスプレイ17と、スピーカ18とを備える。なお、カメラ15と、マイク16と、スピーカ18との一部または全部は、処理回路11と、メモリ12とを備えるコンピュータに外付けで備えられるものとしてもよい。
【0012】
処理回路11は、医師側装置10の全体の動作を制御する。処理回路11は、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、またはGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサの他、ASIC、および、プログラマブル論理デバイスなどを意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、および、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)などが挙げられる。
【0013】
また、処理回路11は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した処理回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、メモリは処理回路要素ごとに個別に設けられてもよいし、単一のメモリが複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0014】
メモリ12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクなどによって構成される。メモリ12は、USB(Universal Serial Bus)メモリおよびDVD(Digital Video Disk)などの可搬型メディアによって構成されてもよい。メモリ12は、処理回路11において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)なども含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータを記憶する。また、OSに、医師D等の操作者に対するディスプレイ17への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース13によって行うことができるGUI(Graphic User Interface)を含めることもできる。メモリ12は、記憶部の一例である。
【0015】
入力インターフェース13は、医師Dなどの操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路などによって実現される。入力デバイスが操作者から入力操作を受け付けると、入力回路は当該入力操作に応じた電気信号を生成して処理回路44に出力する。入力インターフェース13は、外部装置に無線通信可能なタブレット端末などで構成されてもよい。なお、入力インターフェース13は、入力部の一例である。
【0016】
ネットワークインターフェース14は、パラレル接続仕様やシリアル接続仕様に合わせたコネクタによって構成される。ネットワークインターフェース14は、ネットワークN上の外部装置と情報の送受信を行なう。
【0017】
カメラ15は、光量に応じて電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの半導体センサを撮像素子として用いる。カメラ15は、視野が医師Dに向けられ、処理回路11の制御によりオンライン診察時の医師Dの映像を捉えて医師Dの映像データを生成し、それを処理回路11に送る。医師Dの映像データは、ネットワークNを介して患者側装置20に送られ、患者側装置20のディスプレイ27から映像として出力される。
【0018】
マイク16は、音を電気信号に変換する音響機器である。マイク16は、処理回路11の制御によりオンライン診察時の医師Dの声を録音して医師Dの音声データを生成し、それを処理回路11に送る。医師Dの音声データは、ネットワークNを介して患者側装置20に送られ、患者側装置20のスピーカ28から医師Dの音声として出力される。また、医師Dの音声データは、後述する患者Pの理解度の算出や、低理解度情報の算出に利用される。
【0019】
ディスプレイ17は、コンピュータなどの機器から出力される映像データを表示する機器である。例えば、ディスプレイ17は、液晶ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、または、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどである。また、ディスプレイ17は、デスクトップ型でもよいし、タブレット端末などで構成されてもよい。ディスプレイ17は、処理回路11の制御により各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ17は、処理回路11によって生成された診療記録や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUIなどを出力する。また、ディスプレイ17は、処理回路11の制御によりネットワークNを介してオンライン診察時の患者Pの映像データを受信して、それを患者Pの映像として出力する。なお、ディスプレイ17は、表示部の一例である。
【0020】
スピーカ18は、電気信号(電気的振動)を音声(物理的振動)に変換する装置である。なお、スピーカ18の機能とマイク16の機能とが一体化された装置(例えば、ヘッドセット、イヤホンマイク)が用いれてもよい。スピーカ18は、処理回路11の制御によりネットワークNを介してオンライン診察時の患者Pの音声データを受信して、それを患者Pの音声として出力する。
【0021】
一方で、患者側装置20は、処理回路21と、メモリ22と、入力インターフェース23と、ネットワークインターフェース24と、カメラ25と、マイク26と、ディスプレイ27と、スピーカ28とを備える。なお、カメラ25と、マイク26と、スピーカ28との一部または全部は、処理回路21と、メモリ22とを備えるコンピュータに外付けで備えられるものとしてもよい。患者側装置20の要素21~28の構成は、医師側装置10の要素11~18の構成とそれぞれ同等であるので説明を省略する。
【0022】
カメラ25は、視野が患者Pに向けられ、処理回路21の制御によりオンライン診察時の患者Pの映像を捉えて患者Pの映像データを生成し、それを処理回路21に送る。患者Pの映像データは、ネットワークNを介して医師側装置10に送られ、医師側装置10のディスプレイ17から患者Pの映像として出力される。また、患者Pの映像データは、後述する患者Pの理解度の算出や、低理解度情報の算出に利用される。
【0023】
マイク26は、処理回路21の制御によりオンライン診察時の患者Pの声を録音して患者Pの音声データを生成し、それを処理回路21に送る。患者Pの音声データは、ネットワークNを介して医師側装置10に送られ、医師側装置10のスピーカ18から患者Pの音声として出力される。また、患者Pの音声データは、後述する患者Pの理解度の算出や、低理解度情報の算出に利用される。
【0024】
ディスプレイ27は、処理回路21の制御によりネットワークNを介してオンライン診察時の医師Dの映像データを受信して、それを医師Dの映像として出力する。
【0025】
スピーカ28は、処理回路21の制御によりネットワークNを介してオンライン診察時の医師Dの音声データを受信して、それを医師Dの音声として出力する。
【0026】
続いて、図3を用いて医師側装置10の機能について説明する。
【0027】
処理回路11は、メモリ12、または、処理回路11内のメモリなどの非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、図3に示すように、特定機能F1と、算出機能F2と、出力制御機能F3とを実現する。なお、機能F1~F3の全部または一部は、コンピュータプログラムの実行により実現される場合に限定されるものではなく、医師側装置10にASICなどの回路として備えられる場合であってもよい。
【0028】
主治医などの医師による病状や治療方法の説明を行う診察のための機会は設けられていたが、診察後にいざ治療が始まると患者が診察時の説明内容を理解できていないと感じることがある。その結果、患者が納得しないまま治療が進んでしまうことも考えられる。患者が診察時の説明内容を理解できていないと感じる1つの原因として、近年はオンライン診察を行う機会も多く、オンラインゆえに診察時の説明内容が患者に正しく伝わっているか医師が不安をもつことが挙げられる。さらに、診察時の説明で用いられる言葉(医療用語)が難しく、患者が診察時の説明内容を理解したかどうかの確認が難しいことが挙げられる。また、診察時間が長く、また、何を話したときに理解できなかったのか(難しかったのか)が解りづらいため、診察時に医師が患者にどのように説明するのかが難しいことが挙げられる。このような問題点を解消すべく、医師側装置10は、機能F1~F3を備える。
【0029】
特定機能F1は、診察を構成する複数のシーンのそれぞれを特定する機能を含む。シーンは、診察の流れに応じて診察時間が分割された後の1つの要素であり、例えば、「今後の見通しを立てる」、「治療の実績を知る」、「治療の効果を予測する」、「治療法の選択に役立てる」、「病状の比較をする」などを含む。特定機能F1は、シーンが、「今後の見通しを立てる」、「治療の実績を知る」、「治療の効果を予測する」、「治療法の選択に役立てる」、「病状の比較をする」のいずれかであるかを特定する。
【0030】
算出機能F2は、特定機能F1によって特定されたシーンごとに、患者Pの映像データと音声データとにもとづいて、医師Dの説明内容に対する患者Pの理解度を示す数値を算出する機能を含む。
【0031】
ここで、算出機能F2は、患者Pの映像データにもとづいて、患者Pの理解度を数値として算出する。例えば、算出機能F2は、多数の患者の頷き動作を含む映像データ(または、画像データ)と、各映像データに対応する「頷き動作」とを学習させた学習済みモデルに患者Pの映像データを入力することで、患者Pの映像データに対応する「頷き動作」の回数を取得する。算出機能F2は、「頷き動作」の回数×係数G1として個別の理解度を示す数値を算出する。同様に、算出機能F2は、「首傾げ動作」の回数×係数G2として個別の理解度を示す数値を算出し、「笑顔(驚き、怒り、悲しみ、または、真顔)」の回数(または、笑顔動作の時間[sec.])×係数G3として個別の理解度を示す数値を算出する。
【0032】
また、例えば、算出機能F2は、患者Pの音声データと医師Dの音声データにもとづいて、無音声状態が閾値時間以上続く「無音声時間」を特定し、「無音声時間[sec.]」×係数H1として個別の理解度を示す数値を算出する。同様に、算出機能F2は、患者Pの音声データにもとづいて、音声データの音声認識技術によって「難しい単語(例えば、医学用語)」を抽出し、「難しい単語」の回数×係数H2として個別の理解度を示す数値を算出する。そして、算出機能F2は、映像データと音声データとにもとづいて算出された個別の理解度を示す数値を加算し、必要に応じて正規化し、全体の理解度を示す数値を算出する。なお、患者Pの音声データに「理解できました」などの肯定的な音声が含まれる場合、その他の映像や音声にかかわらず、そのシーンの患者Pの理解度の数値を100[%]としてもよい。
【0033】
また、算出機能F2は、複数のシーンのうち数値が所定の閾値以下に対応する低理解度のシーンについて、説明内容に関する情報(本明細書および図面において「低理解度シーン情報」という)を算出する機能を含む。
【0034】
出力制御機能F3は、算出機能F2によって算出された理解度を示す数値を出力させる機能を含む。また、例えば、出力制御機能F3は、算出機能F2によって算出された低理解度シーン情報を出力させる機能を含んでもよい。出力制御機能F3は、理解度を示す数値や低理解度シーン情報を画像としてディスプレイ17に表示させることができるし、スピーカ18から音声として発音させることもできる。低理解度シーン情報は、シーンが低理解度となった原因になり得る項目を含み、低理解度のシーンにおける医師Dの説明で使われた難しい単語と、説明難易度と、説明スピードと、回線速度とのうち少なくとも1つを含む(図6の下段に図示)。また、出力制御機能F3は、診療記録等を画像としてディスプレイ17に表示させることもできる。
【0035】
なお、機能F1~F3の機能の詳細については図4図8を用いて後述する。
【0036】
続いて、図4を用いて、診療支援方法について説明する。図4において、「S」に数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0037】
まず、医師側装置10の特定機能F1は、患者側装置20とネットワークNを介した接続を行う(ステップS1)。そして、患者Pに対するオンライン診察を開始する。
【0038】
特定機能F1は、患者Pのオンライン診察が開始すると、シーンの開始を検知する(ステップS2)。例えば、特定機能F1は、入力インターフェース13を介した医師Dの「シーンの開始」操作にもとづいて、シーンの開始を検知する。医師Dは、シーンの開始として、『「今後の見通しを立てる」の開始』、『「治療の実績を知る」の開始』、『「治療の効果を予測する」の開始』、『「治療法の選択に役立てる」の開始』、『「病状の比較をする」の開始』を操作入力する。なお、特定機能F1は、入力インターフェース13を介した医師Dの操作に限られず、「今後の見通しの話を開始します」という音声にもとづいて、シーンの開始を検知してもよい。
【0039】
医師Dは、診察時のシーン「今後の見通しを立てる」において、もしこのまま治療をしない場合、異常部位(例えば、腫瘍)がどのように進行していくのか(予後はどうか)について患者Pに説明する。医師Dは、診察時のシーン「治療の実績を知る」において、異常部位の種類や進行の度合いが同じ他の患者で、これまでどのような治療が行われているか(その効果と予後はどうか)について患者Pに説明する。医師Dは、診察時のシーン「治療の効果を予測する」において、ある治療を予定しているが、同じ状態の他の患者での治療効果はどうか、および、どんな副作用があるかについて患者Pに説明する。医師Dは、診察時のシーン「治療法の選択に役立てる」において、複数の治療法を検討しているが、どれが自分の今の状態に対して有効な治療かについて患者Pに説明する。医師Dは、診察時のシーン「病状の比較をする」において、他の人の異常部位の治療法やその後の経過について聞く機会があったが、それが患者Pに当てはまるかどうかについて患者Pに説明する。
【0040】
特定機能F1は、オンライン診察時の患者Pの映像データと音声データとにもとづいて、ステップS2(または、ステップS9)によって開始されたシーンを特定する(ステップS3)。そして、算出機能F2は、ステップS3によって特定されたシーンにおいての患者Pの理解度を数値化すべく、患者Pの理解度を示す数値を算出する(ステップS4)。算出機能F2は、オンライン診察時の患者Pの映像データと音声データの取得が続く限り、当該シーンの終了まで患者Pの理解度を示す数値を逐次算出する。
【0041】
特定機能F1は、ステップS2(または、ステップS9)によって開始されたシーンの終了を検知したか否かを判断する(ステップS5)。例えば、特定機能F1は、入力インターフェース13を介した医師Dの「シーンの終了」操作にもとづいて、シーンの終了を検知する。なお、特定機能F1は、入力インターフェース13を介した医師Dの操作に限られず、「今後の見通しの話を終了します」という音声にもとづいて、シーンの終了を検知してもよい。ステップS5の判断でNO、つまり、シーンの終了を検知していないと判断された場合、特定機能F1は、ステップS2(または、ステップS9)によって開始されたシーンを特定する(ステップS3)。
【0042】
ステップS5の判断でYES、つまり、シーンの終了を検知したと判断された場合、出力制御機能F3は、ステップS4によって算出された患者Pの理解度を示す数値を出力する(ステップS6)。ステップS6において出力制御機能F3は、当該シーンの説明内容に関する患者Pの理解度を示す数値を画像としてディスプレイ17に表示させることができるし(図5参照)、音声としてスピーカ18から発音させることもできる。
【0043】
図5(A)は、最初のシーン「今後の見通し」の終了後に表示される患者Pの理解度をグラフとして示す表示例である。シーン「今後の見通し」に対する患者Pの理解度は、閾値(例えば、50[%])を超える100[%]と表示される。一方で、図5(B)は、3つ目のシーン「治療の効果」の終了後に表示される患者Pの理解度をグラフとして示す表示例である。最初のシーンから3つ目のシーン「治療の効果」に対するそれぞれ患者Pの理解度が表示される。また、理解度が閾値(例えば、50[%])以下である3つめのシーン「治療の効果」については強調表示されてもよい。なお、患者Pの理解度を示す数値は、グラフにより表示されるものに限定されるものではなく、数値が単に羅列された表示であってもよい。
【0044】
図4の説明に戻って、出力制御機能F3は、ステップS4によって算出された患者Pの理解度を示す数値が所定の閾値以下(または、閾値未満)であるか否かを判断する(ステップS7)。ステップS7の判断でNO、つまり、患者Pの理解度を示す数値が所定の閾値を超える(または、閾値以上)と判断された場合、ステップS9に進む。
【0045】
一方で、ステップS7の判断でYES、つまり、患者Pの理解度を示す数値が所定の閾値以下であると判断された場合、算出機能F2は、当該シーンに関する低理解度シーン情報を算出し、出力制御機能F3は、当該シーンに関する低理解度シーン情報を出力する(ステップS8)。ステップS8において出力制御機能F3は、低理解度シーン情報を画像としてディスプレイ17に表示させることができるし、音声としてスピーカ18から発音させることもできる。
【0046】
図6は、上段に、3つ目のシーン「治療の効果」の終了後に表示される患者Pの理解度をグラフとして示し、下段に、低理解度シーン情報を表として示す表示例である。低理解度シーン情報は、低理解度のシーンの説明内容に関する情報を意味し、難しい単語と、説明難易度と、説明スピードと、回線速度とのうち少なくとも1つを含む。シーンの診察時の説明で難しい単語が使われると患者Pの理解度が低くなると考えられる。なお、使われた難しい単語自体が表示されればよい。
【0047】
説明難易度は、難しい単語が使用された回数(割合)を意味し、難しい単語が多く使われると患者Pの理解度が低くなると考えられる。説明スピードは、医師側装置10のマイク16で取得した医師Dの音声データからシーンにおける平均値として特定することができ、シーンの診察時の説明スピードが速いと患者Pの理解度が低くなると考えられる。回線速度は、上りおよび下りの回線速度を含み、シーンの診察時に回線速度が遅いと患者Pの理解度が低くなると考えられる。
【0048】
このように、診察中のシーンに対する患者Pの理解度を判断し、低理解度シーン情報を表示することができるので、医師は低理解度のシーンに絞って患者Pに再度説明を行う。その際、医師Dは、原因に沿って平易な単語を選択したり、説明スピードを緩めたりして、説明を再度行う。そして、算出機能F2は、理解度を示す数値を再度得る。理解度の数値が改善されていれば、出力制御機能F3は、図5(B)に示すグラフ上に反映する。これにより、低理解度のシーンにおける再度の説明内容に対する患者Pの理解度を再確認することができるし、患者Pの理解度の向上を確認することができる。
【0049】
図4の説明に戻って、医師Dは、出力された低理解度シーン情報を参照し、終了した低理解度のシーンに関する説明を繰り返すか、次のシーンの説明に進むかを判断する。特定機能F1は、終了した低理解度のシーンの開始(低理解度のシーンの繰り返し)、または、次のシーンの開始(次のシーンに進む)を検知したか否かを判断する(ステップS9)。例えば、特定機能F1は、入力インターフェース13を介した医師Dの「シーンの開始」操作にもとづいて、シーンの開始を検知する。ステップS9の判断でYES、つまり、終了した低理解度のシーンの開始、または、次のシーンの開始を検知したと判断される場合、特定機能F1は、ステップS9によって開始されたシーンを特定する(ステップS3)。
【0050】
ステップS9の判断でNO、つまり、終了した低理解度のシーンの開始、および、次のシーンの開始を検知していないと判断される場合、特定機能F1は、ステップS1によって接続された患者側装置20とのネットワークNを切断する(ステップS10)。そして、医師は、ステップS1によって開始されたオンライン診察を終了する。
【0051】
なお、図4に示すフローチャートにおいて、シーンが終了する都度患者Pの理解度の出力(図5に図示)と、低理解度シーン情報の出力(図6に図示)とを行うものとしたがその場合に限定されるものではない。例えば、出力制御機能F3は、すべてのシーンについての説明の終了後に、各シーンについての患者Pの理解度の出力(図7に図示)と、低理解度シーン情報の出力(図8の下段に図示)とを行ってもよい。それにより、医師Dやその他の関係者(医師Dの上長や同僚など)は、診察自体を振り返り、当該診察の中の低理解度のシーンに関する低理解度情報を確認することができる。
【0052】
以上のように、第1実施形態に係る診療支援装置1の一例である医師側装置10によれば、オンライン診察のシーンごとの患者Pの理解度を数値化してシーンの終了の都度医師Dに提示することで、医師Dは、患者Pの理解度に応じた説明を繰り返し行うことができるし、次の患者(または、次の診察)以降で注意しながらオンライン診察を行うことができる。その結果、医師側装置10によれば、正確で精度のよい診療を患者Pに提供することができる。
【0053】
また、低理解度のシーンのみに注目し、高理解度のシーンは医師Dが説明したかったことが伝わっている可能性は高いと判断することができるので、医者Dの説明時間を削減することができる。また、医師Dと患者Pとのやり取りを映像および音声として記録することによって、次回以降の患者Pの診察時にその記録を患者Pとの合意形成の情報として利用することができる。
【0054】
(第2実施形態)
図1図8の説明では、診療支援装置1が、診療支援システムM1の医師側装置10である場合について説明したがその場合に限定されるものではない。例えば、診療支援装置1は、ネットワークNで通信可能に接続される診療管理装置30であってもよい。診療管理装置30は、医師側装置10でも患者側装置20でもない装置を意味する。その場合について、図9図10を用いて説明する。
【0055】
図9は、第2実施形態に係る診療支援装置1を備える診療支援システムM2を示す。診療支援システムM2は、オンライン診察を行う医師が操作する医師側装置10と、オンライン診察を受ける患者が操作する患者側装置20と、診療管理装置30(診療支援装置1の一例)とを備え、テレビ会議システム、または、Web会議システムを構成する。医師側装置10と、患者側装置20と、診療管理装置30とは、ネットワークNを介して相互に通信可能である。なお、医師側装置10と、患者側装置20との構成については図1を用いて説明したので説明を省略する。
【0056】
診療支援システムM2がテレビ会議システムを構成する場合、診療管理装置30はサーバである一方、診療支援システムM2がWeb会議システムを構成する場合、診療管理装置30は多拠点接続装置(MCU)である。図9に示すように、診療管理装置30は、処理回路31と、メモリ32と、ネットワークインターフェース34とを備える。なお、診療管理装置30の要素31,32,34の構成は、図1を用いて説明した医師側装置10の要素11,12,14の構成とそれぞれ同等であるので説明を省略する。
【0057】
処理回路31は、メモリ32、または、処理回路31内のメモリなどの非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、図10に示すように、算出機能F2と、特定機能F4と、出力制御機能F5とを実現する。
【0058】
特定機能F4は、図3に示す特定機能F1と同等である。一方で、患者Pの映像データ及び音声データをネットワークNを介して患者側装置20から取得する他、医師Dの音声データをネットワークNを介して医師側装置10から取得する点が特定機能F1とは異なる。
【0059】
出力制御機能F5は、図3に示す出力制御機能F3と同等である。一方で、算出機能F2によって算出された各シーンについての患者Pの理解度や、低理解度シーン情報をネットワークNを介して医師側装置10から出力させる点が出力制御機能F3とは異なる。
【0060】
診療管理装置30の機能F2,F4,F5の作用、動作については図3図4を用いて説明したものと同等であるので説明を省略する。
【0061】
以上のように、第2実施形態に係る診療支援装置1の一例である診療管理装置30によれば、オンライン診察のシーンごとの患者Pの理解度を数値化してシーンの終了の都度医師Dに提示することで、医師Dは、患者Pの理解度に応じた説明を繰り返し行うことができるし、次の患者(または、次の診察)以降で注意しながらオンライン診察を行うことができる。その結果、診療管理装置30によれば、正確で精度のよい診療を患者Pに提供することができる。
【0062】
(第3実施形態)
図1図10を用いてオンライン診察時の動作について説明したが、その場合に限定されるものではない。診療支援装置1が配置される医療機関で行われる対面診察時の動作について図11図12を用いて説明する。
【0063】
図11に示すように、第3実施形態に係る医師側装置10A(診療支援装置1の一例)は、患者Pと向き合った状態で対面診察を行う場合を想定している。医師Dは、医師側装置10Aのディスプレイ17Aを参照しながら患者Pのオンライン診察を行うことができる。
【0064】
図12は、第3実施形態に係る、診察する医師が操作する医師側装置10Aを示す。医師側装置10Aは、ネットワーク接続可能であること(ネットワークインターフェースの存在)は必須ではない。
【0065】
医師側装置10Aは、処理回路11Aと、メモリ12Aと、入力インターフェース13Aと、カメラ15Aと、マイク16Aと、ディスプレイ17Aとを備える。なお、医師側装置10Aの要素11A~13A,15A,16Aの構成は、図1を用いて説明した医師側装置10の要素11~13,15,16の構成とそれぞれ同等であるので説明を省略する。
【0066】
カメラ15Aは、視野が患者Pに向けられ、処理回路11Aの制御により対面診察時の患者Pの映像を捉えて患者Pの映像データを生成し、それを処理回路11Aに送る。また、患者Pの映像データは、患者Pの理解度の算出や、低理解度情報の算出に利用される。
【0067】
マイク16Aは、処理回路11Aの制御により対面診察時の医師D及び患者Pの声を録音して医師D及び患者Pの音声データを生成し、それを処理回路11Aに送る。音声データには医師Dの音声と患者Pの音声とが含まれるが、音声の周波数の違いにより分離が可能である。また、患者Pの音声データは、患者Pの理解度の算出や、低理解度情報の算出に利用される。
【0068】
ディスプレイ17Aは、処理回路11Aによって生成された診療記録や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUIなどを出力する。
【0069】
処理回路11Aは、メモリ12A、または、処理回路11A内のメモリなどの非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、図12に示すように、特定機能F1と、算出機能F2と、出力制御機能F3とを実現する。
【0070】
医師側装置10Aの機能F1~F3の作用、動作については図3図4を用いて説明したものと同等であるので説明を省略する。対面診察を行うための医師側装置10Aの場合、低理解度情報に回線速度は含まないものとする。
【0071】
以上のように、第3実施形態に係る診療支援装置1の一例である医師側装置10Aによれば、対面診察のシーンごとの患者Pの理解度を数値化してシーンの終了の都度医師Dに提示することで、医師Dは、患者Pの理解度に応じた説明を繰り返し行うことができるし、次の患者(または、次の診察)以降で注意しながら対面診察を行うことができる。その結果、医師側装置10Aによれば、正確で精度のよい診療を患者Pに提供することができる。
【0072】
なお、特定機能F1,F4は、特定部の一例である。算出機能F2は、算出部の一例である。出力制御機能F3,F5は、出力制御部の一例である。
【0073】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、診察時のシーンごとの患者の理解度を数値化して医師に提示することで、正確で精度のよい診療を患者に提供することができる。
【0074】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
1…診療支援装置
10,10A…医師側装置
11,11A…処理回路
17,17A…ディスプレイ
20…患者側装置
30…診療管理装置
31…処理回路
F1,F4…特定機能
F2…算出機能
F3,F5…出力制御機能
M1,M2…診療支援システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12