(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183661
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20231221BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20231221BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
F01N3/24 N
F01N3/08 B
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097295
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智也
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 優
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
【Fターム(参考)】
3G091AB05
3G091BA14
3G091CA17
3G091CA27
3G091HB01
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC03
4D148CC23
4D148CC61
(57)【要約】
【課題】SCR触媒を用いて排ガスを浄化するように構成された排ガス浄化装置において、還元剤と排ガスとをより適切に混合できる構成を提供する。
【解決手段】SCR触媒を用いて排ガスを浄化するように構成された排ガス浄化装置である。排ガス浄化装置は、排気管と、インジェクタと、撹拌部材と、を備える。排気管は、排ガスの流れ方向の下流側がSCR触媒を収容する部材に接続される。インジェクタは、排気管内にて流れ方向に沿って還元剤を噴射する。撹拌部材は、排気管内でインジェクタよりも流れ方向の下流側に配置された撹拌部材は、インジェクタ側に突出する突出部を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SCR触媒を用いて排ガスを浄化するように構成された排ガス浄化装置であって、
排ガスの流れ方向の下流側がSCR触媒を収容する部材に接続される排気管と、
前記排気管内にて前記流れ方向に沿って還元剤を噴射するインジェクタと、
前記排気管内で前記インジェクタよりも前記流れ方向の下流側に配置された撹拌部材であって、前記インジェクタ側に突出する突出部を有する撹拌部材と、
を備える排ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス浄化装置であって、
前記排気管は、
前記撹拌部材が配置され、前記インジェクタから遠ざかるように湾曲する部位である湾曲管と、
前記湾曲管の前記流れ方向の上流側に配置される上流管と、
を備え、
前記撹拌部材は、前記湾曲管内において流れ方向に直交する断面が平板状、円弧状、又は環状であり、前記流れ方向の下流側に延伸する本体部を有し、
前記上流管における流れ方向と、前記撹拌部材の前記本体部の延伸方向とは、平行になるように構成される
排ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の排ガス浄化装置であって、
前記インジェクタ及び前記撹拌部材は、前記上流管の中心軸を挟んで互いに対向するように配置される
排ガス浄化装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の排ガス浄化装置であって、
前記インジェクタと前記撹拌部材との間の部位における前記排気管の中心軸と、前記インジェクタの噴射範囲の中心軸とは、一致する
ように構成された排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、SCR触媒を用いて排ガスを浄化するように構成された排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1のように、排ガス浄化装置において、インジェクタから尿素水等の還元剤が噴射され、噴射された還元剤が撹拌部材にて撹拌されてSCR触媒に供給される構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排ガス浄化装置においては、還元剤と排ガスとがより適切に混合された状態にしたいという要求がある。
本開示の1つの局面は、SCR触媒を用いて排ガスを浄化するように構成された排ガス浄化装置において、還元剤と排ガスとをより適切に混合できる構成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、SCR触媒を用いて排ガスを浄化するように構成された排ガス浄化装置である。排ガス浄化装置は、排気管と、インジェクタと、撹拌部材と、を備える。排気管は、排ガスの流れ方向の下流側がSCR触媒を収容する部材に接続される。インジェクタは、排気管内にて流れ方向に沿って還元剤を噴射する。撹拌部材は、排気管内でインジェクタよりも流れ方向の下流側に配置された撹拌部材であって、インジェクタ側に突出する突出部を有する。
【0006】
このような構成によれば、還元剤が排ガスの流れに沿って噴射されるので、還元剤が高速で撹拌部材に向かって供給される。また、撹拌部材は突出部を有することで表面積がより広くなるように構成されている。これらの構成により、還元剤は撹拌部材によって良好に撹拌され、高温の排ガスにより加熱されるので、還元剤と排ガスとを良好に混合させて、これらをSCR触媒に供給することができる。
【0007】
本開示の一態様では、排気管は、湾曲管と、上流管と、を備えてもよい。湾曲管は、撹拌部材が配置され、インジェクタから遠ざかるように湾曲する部位である。上流管は、湾曲管の流れ方向の上流側に配置される。撹拌部材は、湾曲管内において流れ方向に直交する断面が平板状、円弧状、又は環状であり、流れ方向の下流側に延伸する本体部を有し、上流管における流れ方向と、撹拌部材の本体部の延伸方向の延伸方向とは、平行になるように構成されてもよい。なお、平行には、実質的に平行であることを示す略平行を含む。実質的に平行とは、平行でない場合において平行である場合と作用及び効果に大差がないことを示す。後述する実質的に一致についても同様である。
【0008】
このような構成によれば、湾曲管内での排ガスの流れ方向と撹拌部材とが所定の角度で衝突するように構成できる。このため、湾曲管内で撹拌部材の延伸方向の長さをより長く確保することができる。よって、上流側からの排ガスと、撹拌部材との接触面積を増やし、排ガスと還元剤との接触機会を増やすことができる。
【0009】
本開示の一態様では、インジェクタ及び撹拌部材は、上流管の中心軸を挟んで互いに対向するように配置されてもよい。
このような構成によれば、還元剤が撹拌部材に到達するまでの距離を確保することができるので、還元剤を十分に拡散及び加速させてから撹拌部材に到達するように構成できる。
【0010】
本開示の一態様では、インジェクタと撹拌部材との間の部位における排気管の中心軸と、インジェクタの噴射範囲の中心軸とは、一致してもよい。なお、一致には、実質的に一致することを示す略一致を含む。
このような構成によれば、排気管を流れる排ガスの中心に還元剤が供給されやすくなることで、還元剤と排ガスとが良好に混合されやすくすることができる。
【0011】
本開示の一態様では、撹拌部材は、還元剤が直接的に噴射される衝突部を構成してもよい。
このような構成によれば、還元剤が撹拌部材に直接的に噴射されるので、より還元剤と排ガスとが良好に混ざった状態で触媒に供給することができる。
【0012】
本開示の一態様では、撹拌部材は、複数の貫通孔を有してもよい。
このような構成によれば、撹拌部材の周辺での圧力損失を抑制でき、還元剤と排ガスとが撹拌部材の下流側に流れやすくすることができる。さらに撹拌部材が湾曲又は屈曲していない平板状等の場合、例えば撹拌部材が排ガスの流れ方向に直交する平板状の場合には、撹拌部材の上流側に排ガスの淀みが発生しやすくなるが、本実施形態の撹拌部材では、排ガスの淀みが発生しにくい。撹拌部材の湾曲した形状、及び複数の貫通孔により、排ガスが流れやすくなるからである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の排ガス浄化装置を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の排ガス浄化装置を示す中央断面図である。
【
図3】排ガスの流れを示すための
図2におけるIII-III断面図である。
【
図4】第2実施形態の排ガス浄化装置を示す斜視図である。
【
図5】第2実施形態の排ガス浄化装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本開示の実施形態を図面と共に説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1及び
図2に示す排ガス浄化装置1は、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒17を用いて内燃機関の排ガスを浄化する装置である。この排ガス浄化装置1は、排気管10を備える。排気管10は、図示しない内燃機関で発生した排ガスを排出するための排ガスの流路を形成する。排気管10は、例えば
図1に示されるように、導入部11、及び連結部13を備えてもよい。
【0015】
排気管10は、排ガスの流れ方向の下流側がSCR触媒17を備える触媒保持部12に接続される。導入部11、触媒保持部12、及び連結部13は排ガス流路を形成する。排ガス浄化装置1は、インジェクタ14、撹拌部材16、及びSCR触媒17を備え、これらによって排ガスの浄化機能を実現する。
【0016】
なお、以下の説明では、
図2を基準に上下左右方向を説明する場合があるが、あくまでも説明の便宜上の表現であり、排ガス浄化装置1の形状や実際の使用態様を何ら制限するものではない。
【0017】
<排ガス流路>
図1及びそれ以下の図面において、排ガス流路内の矢印は排ガスの少なくとも一部が流れる方向を示している。導入部11は、上流管21、還元剤導入管22、及び湾曲管23を有する。
【0018】
上流管21は、内燃機関から流れる排ガスを排ガス浄化装置1に導入する配管であり、直管として構成される部位である。上流管21は、湾曲管23よりも流れ方向の上流側(すなわち
図2では左側)に配置される。還元剤導入管22は、上流管21から上流管21の中心軸から見て攪拌部材と反対側に突出する管である。還元剤導入管22の左上側の端部にはインジェクタ14が配置されている。
【0019】
湾曲管23は、導入部11のうちの、上流管21及び還元剤導入管22のそれぞれの下流側に配置され、上流管21から離れるにつれて、インジェクタ14から遠ざかるように湾曲する部位である。湾曲管23は、上流管21側では、上流管21から遠ざかるにつれて水平な状態から下方向に湾曲し、やがて連結部13に近づくにつれて再び水平な状態になるように湾曲する。
【0020】
湾曲管23の幅方向の大きさは上流管21と同程度である。幅方向とは、
図2の上下方向と直交し、かつ、左右方向と直交する方向であり、
図2の紙面と垂直な方向である。湾曲管23には、後述する撹拌部材16が配置される。
【0021】
触媒保持部12は、SCR触媒17を収容する筒状の部材であり、上流管21や湾曲管23と比較して大きな直径を有する。SCR触媒17は、図示しないマット(例えば弾性部材)を介して触媒保持部12によって保持されている。なお、
図1及び
図2では、触媒保持部12としてSCR触媒17を保持する部位を示しているが、その下流側には、図示しないが、さらに下流に排ガスを導くための配管が接続される。
【0022】
連結部13は、湾曲管23の下流側の端部と触媒保持部12の上流側の端部とを連結する。連結部13は下流側ほど径が大きくなるテーパ形状である。連結部13は、湾曲管23及び触媒保持部12に対して溶接され、それにより導入部11、触媒保持部12、及び連結部13が一体に固定される。
【0023】
上流管21は、撹拌部材16よりも上流側に配置される。
図2に示されるように、上流管21の第1中心軸21aと、SCR触媒17の中心軸である第2中心軸17aと、は略平行である。ここでいう略平行とは、実質的に平行という意味である。例えば、各軸の角度を変えずに交差させたときに、それらの軸でなす角が5°以下となるように傾斜していてもよい。第2中心軸17aは、触媒保持部12の中心軸と一致する。また第2中心軸17aと第1中心軸21aとは、第2中心軸17aと交差する交差方向(
図2では上下方向)に間隔を有する。つまり、上流管21と触媒保持部12とは互いに平行な管である。
【0024】
<機能部品>
インジェクタ14は、図示しない還元剤のタンクに接続されており、排気管10内にて排ガスの流れ方向に沿って、例えば放射状の所定の噴射範囲内に、還元剤を噴射する。「排気管10内にて排ガスの流れ方向に沿って」とは、インジェクタ14の下流側における排ガスの流れ方向(例えば管の中心線23aの一部)とインジェクタ14の噴射軸22aの方向とが略一致することを示す。噴射軸22aは、インジェクタ14が還元剤を噴射する際の噴射範囲の中心軸であり、本実施形態ではインジェクタ14そのものの中心軸と一致する。なお、インジェクタ14は、噴射軸22aを中心に所定の角度の範囲内に還元剤を噴射する。還元剤は、例えば尿素水である。
【0025】
この際、インジェクタ14は、湾曲管23内の排ガスの流れ方向(例えば、湾曲管23の中心軸を連続的に接続した中心線23a)に沿うように還元剤を噴射する。また、湾曲管23の中心線23aと、インジェクタ14の噴射軸22aとは、上面から見たとき略一致するように配置される。
【0026】
噴射軸22aは、湾曲管23の中心線23a付近を通過し、撹拌部材16に向けられている。特に、噴射軸22aは、撹拌部材16の突出部16b側の面に向けられる。噴射軸22a上の還元剤が噴射される方向において、インジェクタ14に最も近い物体は、撹拌部材16である。つまり、インジェクタ14と撹拌部材16との間には排ガスの流れを大きく変えるような他の構成要素が存在しない。このため、噴射された還元剤は、還元剤導入管22を通過して湾曲管23に進入し、還元剤の大部分は撹拌部材16に当たる。このように、撹拌部材16において、還元剤が他の構成要素に触れることなく、撹拌部材16に最初に当たる際の、還元剤が直接的に噴射される部位は、衝突部を構成する。衝突部は、主として、撹拌部材16のインジェクタ14側の面であり、具体的には、衝突部には、後述する複数の貫通孔16hの周囲の領域、及び突出部16bが該当する。なお、還元剤の一部は、撹拌部材16の表面に沿って周方向に流れ、撹拌部材16における下方側に流れる。
【0027】
撹拌部材16は、湾曲管23の内部であって、インジェクタ14よりも下流側、かつ、SCR触媒17よりも上流側に配置される。撹拌部材16は、接続部16aにて湾曲管23の下流側の端部付近に接合され、接続部16aから上流側に向けて延びるように配置される。撹拌部材16の延伸方向は、上流管21及び触媒保持部12における排ガスの流れ方向と、略平行になるように構成される。撹拌部材16は、湾曲管23の上側の端部付近から湾曲管23の下側の端部付近まで直線的に延びる。このように撹拌部材16は、排気管10の湾曲する部位である湾曲管23に配置されるので、より直線的に長い部材を配置することができる。
【0028】
撹拌部材16は、撹拌部材16の断面が湾曲管23内において流れ方向に直交する断面と一致して配置された場合に流れ方向の下流側に延伸する本体部16cを備える。本体部16cは、流れ方向の上流側、換言すればインジェクタ14側に突出する突出部16bを有する。突出部16bは、周囲よりも一方向に突き出た部位、例えば本体部16cの短手方向の端部よりも中央部が突き出た部位である。撹拌部材16は、例えば、板状の部材を曲げることで半円筒状に形成されており、半円筒状の部位の周方向の中心部を含む領域が突出部16bである。本体部16cは、湾曲管23内において流れ方向に直交する断面が平板状、円弧状、又は環状でもよい。
【0029】
撹拌部材16は、突出部16bを中心として、両端部がインジェクタ14とは反対側に湾曲する。なお、半円筒とは、円筒を軸方向に広がる面で切断したような形状である。半円筒は、断面が真円の一部を構成する円弧状であるものに限定されず、断面が凡そ円弧状であればよい。
【0030】
撹拌部材16は、撹拌部材16の延伸方向、言い換えると上記半円筒の中心軸方向が、湾曲管23での排ガスの流れ方向と一定の角度で交差するように配置される。このため、撹拌部材16は、排気管10内の排ガスの流路の一部を横断するように配置される。
【0031】
ここでいう中心軸とは、半円筒が一部を構成する前述した仮想的な円筒の中心軸である。このような構成では、排ガスは、撹拌部材16の突出部16b側の面に衝突する。
撹拌部材16(すなわち本体部16c)は、複数の貫通孔16hを有している。複数の貫通孔16hは、円形であってもよいし、楕円形等の長孔、バーリング孔等であってもよい。
【0032】
<排ガスの流れ>
図2に示されるように、導入部11の上流管21から導入された排ガスは、湾曲管23に流れる。湾曲管23は、第1中心軸21a側から第2中心軸17a側に向かう排ガス流路の一部を構成する。
【0033】
なお、撹拌部材16は、湾曲管23を通って第1中心軸21a側から第2中心軸17a側に向かう排ガスが当該撹拌部材16の突出部16bに当たるように配置されている。言い換えると、撹拌部材16は、半筒の外周面がインジェクタ14側を向くように配置されている。ここでいう外周面とは、撹拌部材16が円筒の一部であると想定したときに、当該円筒を構成する周壁の外側の表面に相当する部位である。
【0034】
排ガスと還元剤とが撹拌部材16の周囲を通過するとき、
図3に示すように、排ガスの一部は、複数の貫通孔16hの内部を通過することができる。つまり複数の貫通孔16hは、排ガスと還元剤とがより拡散されやすくなるように機能する。また、撹拌部材16が湾曲又は屈曲していない平板状等の場合には、還元剤が当たる撹拌部材16の上流側(すなわち
図3では上側)に排ガスの淀みが発生しやすくなるが、本実施形態の撹拌部材16では、排ガスの淀みが発生しにくい。撹拌部材16の湾曲した形状、及び複数の貫通孔16hにより、排ガスが流れやすくなるからである。
【0035】
また、複数の貫通孔16hは、排ガス流路の圧力損失を低減させることにも寄与する。このように本実施形態の構成では、撹拌部材16の湾曲した形状、及び複数の貫通孔16hによって、排ガスの流れが分散化され、排ガスと還元剤とが混合しやすくなる。
【0036】
排ガスは、撹拌部材16の周囲を通過して湾曲管23から連結部13に導かれ、SCR触媒17に導入される。SCR触媒17は第2中心軸17aと平行である図示しない多数の穴が形成されている。排ガスはその多数の穴に流れ込み、窒素酸化物が還元反応により浄化される。
【0037】
[1-2.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)本開示の一態様は、SCR触媒17を用いて排ガスを浄化するように構成された排ガス浄化装置1である。排ガス浄化装置1は、排気管10と、インジェクタ14と、撹拌部材16と、を備える。排気管10は、排ガスの流れ方向の下流側がSCR触媒17を収容する部材に接続される。インジェクタ14は、排気管10内にて流れ方向に沿って還元剤を噴射する。撹拌部材16は、排気管10内でインジェクタ14よりも流れ方向の下流側に配置された撹拌部材16であって、インジェクタ14側に突出する突出部16bを有する。
【0038】
このような構成によれば、還元剤が排ガスの流れに沿って噴射されるので、還元剤が高速で撹拌部材16に向かって供給される。また、撹拌部材16は突出部16bを有することで表面積がより広くなるように構成されている。これらの構成により、還元剤は撹拌部材16によって良好に撹拌され、高温の排ガスにより加熱されるので、還元剤と排ガスとを良好に混合させて、これらをSCR触媒17に供給することができる。
【0039】
(1b)本開示の一態様では、排気管10は、湾曲管23と、上流管21と、を備えてもよい。湾曲管23は、撹拌部材16が配置され、インジェクタ14から遠ざかるように湾曲する部位である。上流管21は、湾曲管23よりも流れ方向の上流側に配置される。 撹拌部材16は、湾曲管23内において流れ方向に直交する断面が平板状、円弧状、又は環状であり、流れ方向の下流側に延伸する本体部16cを有し、上流管21における流れ方向と、撹拌部材16の本体部16cの延伸方向とは、略平行になるように構成される。
【0040】
このような構成によれば、湾曲管23内で撹拌部材16の延伸方向の長さをより長く確保することができる。よって、上流側からの排ガスと、撹拌部材16との接触面積を増やし、排ガスと還元剤との接触機会を増やすことができる。
【0041】
(1c)本開示の一態様では、インジェクタ14及び撹拌部材16は、排気管10の中心軸を挟んで互いに対向するように配置されてもよい。
このような構成によれば、還元剤が排気管10の中心軸を通過後して撹拌部材16に到達するように構成できるので、還元剤がより高速で撹拌部材16に到達するように構成できる。
【0042】
(1d)本開示の一態様では、排気管10のインジェクタ14よりも流れ方向の下流側(湾曲部の一部)における中心軸と、インジェクタ14と撹拌部材16との間の部位における排気管10の中心線23aインジェクタ14の噴射範囲の中心軸とは、略一致してもよい。
【0043】
このような構成によれば、排気管10を流れる排ガスの中心に還元剤が供給されやすくなることで、還元剤と排ガスとが良好に混合されやすくすることができる。
【0044】
(1e)本開示の一態様では、撹拌部材16は、還元剤が直接的に噴射される衝突部を構成してもよい。
このような構成によれば、還元剤が撹拌部材16に直接的に噴射されるので、より還元剤と排ガスとが良好に混ざった状態でSCR触媒17に供給することができる。
【0045】
(1f)本開示の一態様では、撹拌部材16は、複数の貫通孔16hを有してもよい。
このような構成によれば、撹拌部材16の周辺での圧力損失を抑制でき、還元剤と排ガスとが撹拌部材16の下流側に流れやすくすることができる。さらに撹拌部材16が湾曲又は屈曲していない平板状等の場合、例えば撹拌部材16が排ガスの流れ方向に直交する平板状の場合には、撹拌部材16の上流側に排ガスの淀みが発生しやすくなるが、本実施形態の撹拌部材16では、排ガスの淀みが発生しにくい。撹拌部材16の湾曲した形状、及び複数の貫通孔16hにより、排ガスが流れやすくなるからである。
【0046】
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0047】
前述した第1実施形態の排ガス浄化装置1では、撹拌部材16が排ガスの流れに沿って上流側に延伸し、その方向がSCR触媒17における第2中心軸17aと一致する構成について説明した。これに対し、第2実施形態の排ガス浄化装置2では、撹拌部材16が異なる方向に向けられている点で、第1実施形態と相違する。
【0048】
[2-2.構成]
第2実施形態の排ガス浄化装置2は、
図4及び
図5に示すように構成される。すなわち、湾曲管23は、中央部231と、第1湾曲部232と、第2湾曲部233とを備える。中央部231は、直管として構成される。第1湾曲部232は、中央部231よりも上流側で上流管210側に湾曲するように構成される。第1湾曲部232からは、還元剤導入管22が湾曲の外側に向けて突出して配置される。還元剤導入管22には、インジェクタ14が配置される。
【0049】
第2湾曲部233は、中央部231よりも下流側で鉛直方向下側に向けて湾曲するように構成される。第2湾曲部233における下流側の部位に、鉛直方向下側から上側に延伸するように撹拌部材16が配置される。
【0050】
湾曲管23の鉛直方向下側には、SCR触媒17を備える触媒保持部12が配置される。
インジェクタ14は、噴射軸22aが中央部231の中心軸と一致するように構成される。そして、噴射軸22aは、第1実施形態の噴射軸22aと同様に、撹拌部材16の突出部16bに向かうように配置される。
【0051】
[2-3.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)を奏する。
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0052】
(3a)上記実施形態では、複数の貫通孔16hを備える半円筒状の撹拌部材16を備えたが、撹拌部材16の構成は、これに限定されるものではない。撹拌部材16は、排ガスと還元剤とを良好に混合できる構成であれば、任意の構成を採用できる。例えば、撹拌部材16は、複数の貫通孔16hを備えなくてもよい。
また、撹拌部材16は平板、平板の組み合わせ、平板と湾曲した板との組み合わせ、平板を屈曲させた形状としてもよい。この場合、撹拌部材16の突出部16bは、これらの平板や湾曲した板等から形成されてもよい。
【0053】
(3b)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0054】
(3c)前述した排ガス浄化装置1,2の他、当該排ガス浄化装置1,2を構成要素とするシステム、当該排ガス浄化装置1,2による排ガス浄化方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0055】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
SCR触媒を用いて排ガスを浄化するように構成された排ガス浄化装置であって、
排ガスの流れ方向の下流側がSCR触媒を収容する部材に接続される排気管と、
前記排気管内にて前記流れ方向に沿って還元剤を噴射するインジェクタと、
前記排気管内で前記インジェクタよりも前記流れ方向の下流側に配置された撹拌部材であって、前記インジェクタ側に突出する突出部を有する撹拌部材と、
を備える排ガス浄化装置。
【0056】
[項目2]
項目1に記載の排ガス浄化装置であって、
前記排気管は、
前記撹拌部材が配置され、前記インジェクタから遠ざかるように湾曲する部位である湾曲管と、
前記湾曲管の前記流れ方向の上流側に配置される上流管と、
を備え、
前記撹拌部材は、前記湾曲管内において流れ方向に直交する断面が平板状、円弧状、又は環状であり、前記流れ方向の下流側に延伸する本体部を有し、
前記上流管における流れ方向と、前記撹拌部材の前記本体部の延伸方向とは、平行になるように構成される
排ガス浄化装置。
【0057】
[項目3]
項目2に記載の排ガス浄化装置であって、
前記インジェクタ及び前記撹拌部材は、前記上流管の中心軸を挟んで互いに対向するように配置される
排ガス浄化装置。
【0058】
[項目4]
項目1から項目3のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置であって、
前記インジェクタと前記撹拌部材との間の部位における前記排気管の中心軸と、前記インジェクタの噴射範囲の中心軸とは、一致する
ように構成された排ガス浄化装置。
【符号の説明】
【0059】
1,2…排ガス浄化装置、10…排気管、11…導入部、12…触媒保持部、13…連結部、14…インジェクタ、16…撹拌部材、16a…接続部、16b…突出部、16c…本体部、16h…貫通孔、17…SCR触媒、17a…第2中心軸、21,210…上流管、21a…第1中心軸、22…還元剤導入管、22a…噴射軸、23…湾曲管、23a…中心線、23b…流路、231…中央部、232…第1湾曲部、233…第2湾曲部。