(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183662
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】排気装置
(51)【国際特許分類】
F01N 13/08 20100101AFI20231221BHJP
F01N 13/00 20100101ALI20231221BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
F01N13/08 Z
F01N13/00 A
F01N3/24 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097296
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小出 崇史
(72)【発明者】
【氏名】矢野 紘章
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004BA06
3G004DA01
3G004DA21
3G004DA25
3G004GA06
3G091AA02
3G091AB01
3G091BA13
3G091CA27
3G091EA34
3G091HA36
3G091HB01
(57)【要約】
【課題】排気の流路に設けられる排気装置の共通化を図る。
【解決手段】排気装置は、車両の排気の流路に設けられ、排気の流路を形成する流路形成部材の内周面に取り付けられる複数の取付面を備える。それぞれの取付面は、異なる形状の内周面に取り付け可能となる形状を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の排気の流路に設けられる排気装置であって、
前記排気の前記流路を形成する流路形成部材の内周面に取り付けられる複数の取付面を備え、
それぞれの前記取付面は、異なる形状の前記内周面に取り付け可能となる形状を有している
排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気装置であって、
前記流路を流下する前記排気を攪拌するよう構成された羽根部
をさらに備える排気装置。
【請求項3】
請求項2に記載の排気装置であって、
前記排気装置は、前記流路に設けられたセンサに対し、前記排気の流れ方向の上流側に設けられる
排気装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の排気装置であって、
軸線に沿って延びる筒状の部位であって、その外周面にそれぞれの前記取付面が設けられる部位である本体部をさらに備え、
それぞれの前記取付面は、前記軸線を周回する周方向に並ぶ
排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の排気の流路に設けられる排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の排気管の内部に排気を攪拌する装置を設ける技術が知られている。特許文献1の排気攪拌装置は、排気管の内周面に接合されるリング状の本体部と、本体部に設けられた複数の羽根を備える。そして、複数の羽根により排気を旋回させることで、排気の流れの偏りが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の排気攪拌装置では、本体部の外周面は、その全周にわたって排気管の内周面に接合される。このため、排気攪拌装置は、本体部の径に適合する径を有する排気管にしか接合できず、共通の排気攪拌装置を異なる径の排気管に接合することはできなかった。
【0005】
本開示の一態様では、排気の流路に設けられる排気装置の共通化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、車両の排気の流路に設けられる排気装置であって、排気の流路を形成する流路形成部材の内周面に取り付けられる複数の取付面を備える。それぞれの取付面は、異なる形状の内周面に取り付け可能となる形状を有している。
【0007】
上記構成によれば、排気装置は、形状の異なる複数の流路形成部材の内周面に取付可能となる。このため、排気装置の共通化を図ることができる。
本開示の一態様は、流路を流下する排気を攪拌するよう構成された羽根部をさらに備えてもよい。
【0008】
上記構成によれば、排気の流れを攪拌する装置の共通化を図ることができる。
本開示の一態様では、排気装置は、流路に設けられたセンサに対し、排気の流れ方向の上流側に設けられてもよい。
【0009】
上記構成によれば、センサを通過する排気の偏りを抑制でき、センサの検出精度を向上させることができる。
本開示の一態様は、軸線に沿って延びる筒状の部位であって、その外周面にそれぞれの取付面が設けられる部位である本体部をさらに備えてもよい。それぞれの取付面は、軸線を周回する周方向に並んでいてもよい。
【0010】
上記構成によれば、軸線を中心とした排気装置の回転により排気装置の向きを変更することで、流路形成部材の内周面に取り付ける取付面を選択できる。このため、軸線の向きが変化するのを抑制しつつ、異なる流路形成部材の内周面に排気装置を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の攪拌装置が取り付けられた排気管の上面図である。
【
図3】第1取付面が排気管の内周面に取り付けられている第1実施形態の攪拌装置を、排気の流れ方向の上流側から視認した正面図である。
【
図4】第2取付面が排気管の内周面に取り付けられている第1実施形態の攪拌装置を、排気の流れ方向の上流側から視認した正面図である。
【
図5】第1取付面が排気管の内周面に取り付けられている第2実施形態の攪拌装置を、排気の流れ方向の上流側から視認した正面図である。
【
図6】第2取付面が排気管の内周面に取り付けられている第2実施形態の攪拌装置を、排気の流れ方向の上流側から視認した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0013】
[第1実施形態]
[1.概要]
第1実施形態の排気管2は、車両のエンジンからの排気の流路20を形成する流路形成部材の一例であり、排気管2には、攪拌装置1と、センサ3と、触媒4とが設けられる(
図1参照)。
【0014】
センサ3は、一例として、排気管2を貫通する穴部を貫通した状態で、排気管2の内周面から排気の流路20に突出するように設けられる。センサ3は、一例として、排気に含まれる酸素の濃度を検出するよう構成されている。無論、これに限らず、排気管2には、排気の状態を検出する様々なセンサが設けられ得る。
【0015】
触媒4は、排気を浄化するための部材であり、排気管2の一部を構成する触媒ケース22に配置される。触媒4は、排気の流路20におけるセンサ3の排気の流れ方向21の下流側に位置する。また、触媒4は、排気の流れ方向21に延びる複数の流路を有しており、各流路を通過する排気との接触によって排気中の環境汚染物質を改質又は捕集し、排気を浄化する。
【0016】
攪拌装置1は、排気管2の内部における、センサ3に対し排気の流れ方向21の上流側の場所に設けられ、攪拌装置1を通過する排気を攪拌する。これにより、センサ3に到達する排気が攪拌され、排気の濃度が均一になるよう促されるため、センサ3の検出精度が向上する。
【0017】
より詳しくは、攪拌装置1は、排気管2の内周面に一例として溶接等により取り付けられるが、攪拌装置1は、形状の異なる複数の種類の内周面に取付可能となっている。すなわち、攪拌装置1が取り付けられる排気管2の区間は、一例として円筒形となっており、排気の流れ方向21に直交する断面は円形となっている。攪拌装置1は、断面の径が異なる複数の円筒形の排気管2に取付可能となっている。攪拌装置1は、本体部10と、第1~第4羽根部15~18とを備える(
図2~4参照)。
【0018】
[2.本体部]
本体部10は、軸線1Aに沿って延びる略円筒形の部位であり、本体部10の内側を排気が流下する(
図2~4参照)。また、本体部10の軸線1Aに直交する断面(以後、単に断面と記載)は、略円形となっている。なお、軸線1Aは、本体部10の断面の略中心を通過することを念のため付言しておく。また、攪拌装置1は、軸線1Aの方向が排気の流れ方向21と略一致するように、排気管2の内周面に取り付けられる。
【0019】
[3.第1~第4取付面]
本体部10の外周面には、第1~第4取付面11~14が形成されている(
図2~4参照)。第1~第4取付面11~14は、それぞれ、本体部10の外周面における上流側の端部から下流側の端部まで広がる。また、第1~第4取付面11~14は、それぞれ、本体部10の断面において同程度の中心角を有する円弧を形成し、互いに隣接した状態で軸線1Aを周回する方向(以後、周方向と記載)に並ぶ。つまり、各取付面は、隣接する取付面から、約90°周方向にずれた位置に配置される。なお、第1~第4取付面11~14は、略一定の間隔を空けた状態で周方向に並んでいても良い。
【0020】
第1~第4取付面11~14は、攪拌装置1が設けられる排気管2の内周面に取り付けられる部位であり、異なる形状を有する。すなわち、第1~第4取付面11~14は、それぞれ、本体部10の断面において半径がR1~R4である円弧を形成する。なお、R1~R4は異なる値を意味することを念のため付言しておく。
【0021】
このため、第1~第4取付面11~14は、それぞれ、その断面において半径がR1~R4である円を形成する排気管の内周面に対し、その大部分が当接可能となっており、該排気管の内周面に対し、一例として溶接により取り付け可能である(
図3、4参照)。つまり、攪拌装置1は、第1~第4取付面11~14を有することで、断面における内周面の半径(換言すれば、形状)が異なる4種類の排気管の内周面に対し、取り付け可能となっている。
【0022】
[4.本体部及び取付面の変形例]
本体部10に設けられる取付面の数は、4つに限らず、適宜定められ得る。また、取付面は、円筒形の排気管2の内周面に限らず、様々な形状の排気管の内周面に取り付け可能であっても良い。具体的には、本体部10の断面における各取付面の形状を、例えば、平面状やV字状等とし、各取付面を、当該取付面の大部分が当接可能な排気管の内周面に取り付けるようにしても良い。
【0023】
また、本体部10は、略円筒形に限らず、例えば取付面の形状に応じて、様々な形状の断面(例えば、多角形等)を有する筒状の部位として形成され得る。
[5.第1~第4羽根部]
第1~第4羽根部15~18は、本体部10の内側を流下する排気を攪拌するための部位であり、それぞれ、第1~第4取付面11~14に対応して設けられる(
図2~4参照)。具体的には、各羽根部は、対応する取付面に隣接する本体部10の下流側の端部における、周方向の略中央から突出するように設けられる。各羽根部は、略三角形の板状の部位であり、下流側に向かうに従い細くなると共に、下流側に向かうに従い軸線1Aに接近するように軸線1Aに対し傾斜する。
【0024】
つまり、第1~第4羽根部15~18は、本体部10の下流側の端部に、周方向に略一定の間隔を空けて設けられている。また、各羽根部は他の羽根部から離間しており、各羽根部の先端は軸線1Aの付近に位置する。
【0025】
なお、羽根部の数は、4つに限らず、適宜定められ得る。具体的には、例えば、対応する羽根部がない取付面が設けられていても良いし、取付面に対応して複数の羽根部が設けられていても良い。また、各羽根部の形状は、略三角形に限らず、適宜定められ得る。これにより、攪拌装置1による攪拌能力を調整できる。
【0026】
また、例えば、羽根部は、下流側に向かうに従い軸線1Aに接近しなくてもよい。さらに、例えば、各羽根部の形状は、互いに異なっていてもよいし、各羽根部は、本体部10の内周面に設けられた別部材に取り付けられていてもよい。
【0027】
[第2実施形態]
[6.概要]
第2実施形態の攪拌装置1は、第1実施形態の攪拌装置1と同様の構成を有するが、本体部10及び第1~第4羽根部15~18の構成において第1実施形態と相違する(
図5、6参照)。以下では、第2実施形態の攪拌装置1における第1実施形態との相違点について説明する。
【0028】
[7.本体部及び第1~第3取付面]
本体部10は、軸線1Aに沿って延びる溝状の部位であり、本体部10の断面は略円弧状となっている(
図5、6参照)。なお、一例として、該断面の中心角は、約270°となっているが、該中心角の値は適宜定められ得る。また、軸線1Aは、本体部10の断面の略中心を通過する。
【0029】
本体部10は、外周面に第1~第3取付面11~13が形成されている。第1~第3取付面11~13は、第1実施形態における取付面と同様に構成されており、本体部10の断面において半径がR1~R3である円弧を形成する。すなわち、本体部10を軸方向から視ると、各第1~第3取付面11~13は、中心角が約90°となっている。また、第1~第3取付面11~13は、本体部10の断面に沿って並ぶ。
【0030】
このため、第1~第3取付面11~13は、それぞれ、その断面における内周面の半径がR1~R3である円筒形の排気管の内周面に当接可能となっており、該排気管の内周面に対し、一例として溶接により取り付け可能となっている。つまり、第2実施形態の攪拌装置1は、断面における内周面の半径が異なる3種類の排気管の内周面に対し、取り付け可能となっている。
【0031】
なお、第2実施形態においても、本体部10に設けられる取付面の数は適宜定められ得る。また、第1実施形態と同様、取付面は、円筒形の排気管2の内周面に限らず、様々な形状の排気管の内周面に取り付け可能であっても良い。また、本体部10の断面の形状は、略円弧状に限らず、例えば取付面の形状に応じて定められ得る。
【0032】
[8.第1~第3羽根部]
第2実施形態の攪拌装置1は、羽根部の数において第1実施形態と異なっており、本体部10には第1~第3羽根部15~17が設けられている(
図5、6参照)。第1~第3羽根部15~17は、それぞれ、第1実施形態と同様にして、第1~第3取付面11~13に対応して設けられる。無論、羽根部の数は、3つに限らず、適宜定められ得る。
【0033】
[9.効果]
(1)第1及び第2実施形態の攪拌装置1は、断面の半径が異なる複数の排気管2の内周面に取付可能となる。このため、攪拌装置1の共通化を図ることができる。また、攪拌装置1の共通化により、設計の負担の軽減に加え試験の負担の軽減も期待でき、開発コストを低減できる。
【0034】
(2)また、攪拌装置1は排気の流路20におけるセンサ3の上流側に設けられている。このため、センサ3を通過する排気の偏りを抑制でき、センサ3の検出精度を向上させることができる。特に、近年では、環境規制に適合させるため排気の浄化性能の向上が求められているが、上記実施形態のようにしてセンサ3の検出精度を向上させることで、排気の浄化性能の向上を促すことができる。
【0035】
(3)また、第1実施形態の攪拌装置1では、筒状の本体部10の外周面に第1~第4取付面11~14が形成される。また、第2実施形態の攪拌装置1では、断面が円弧状の本体部10の外周面に第1~第3取付面11~13が形成される。このため、断面の半径が異なる複数の排気管2の内周面に対し、攪拌装置1を良好に取り付けることができる。
【0036】
(4)また、第1実施形態の攪拌装置1では、第1~第4取付面11~14は、本体部10の外周面において周方向に並ぶ。また、第2実施形態の攪拌装置1では、第1~第3取付面11~13は、本体部10の断面に沿って並ぶ。
【0037】
これにより、軸線1Aを中心とする回転により攪拌装置1の向きを変更することで、排気管2の内周面に取り付ける取付面を選択できる。このため、軸線1Aの向きが変化するのを抑制しつつ、異なる排気管2の内周面に攪拌装置1を取り付けることができる。その結果、取り付けられる排気管2の種類によって攪拌装置1の性能に差が生じるのを抑制できる。したがって、攪拌装置1を取り付ける排気管2の種類に応じて、攪拌装置1の取付位置を変更する等といった事態が生じ難くなる。
【0038】
[10.他の実施形態]
(1)第1及び第2実施形態の攪拌装置1において、本体部10の外周面には、軸線1Aに沿って並ぶように複数の取付面が形成されていても良い。このような構成を有する場合であっても、排気の流れ方向21に対する攪拌装置1の傾きを変更することで、攪拌装置1を、異なる形状の排気管の内周面に取り付けることが可能となる。
【0039】
(2)車両の排気の流路に設けられる攪拌装置以外の排気装置において、第1又は第2実施形態と同様にして、異なる形状の流路形成部材の内周面に当接可能な形状を有する複数の取付面を設けても良い。なお、排気装置とは、例えば、マフラ内の排気の流路を形成する流路形成部材の内周面に取り付けられ、マフラ内に消音室を形成したり、マフラ内で消音部材を保持したりする装置であっても良い。
【0040】
(3)また、攪拌装置に取付面が4つ以上設けられている場合において、周方向に隣接する取付面の曲率の差が、隣接しない取付面の曲率の差に比べて大きくなるように、各取付面の曲率が定められても良い。こうすることにより、流路形成部材の内周面に攪拌装置を取り付ける際、内周面に当接させるべき取付面を選択し易くなる。
【0041】
(4)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0042】
[11.文言の対応関係]
第1及び第2実施形態における攪拌装置1は、排気装置の一例に相当する。
【符号の説明】
【0043】
1…攪拌装置、1A…軸線、10…本体部、11~14…第1~第4取付面、15~18…第1~第4羽根部、2…排気管、20…流路、21…排気の流れ方向、3…センサ。