(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183670
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】無給電中継装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/10 20060101AFI20231221BHJP
H01Q 15/14 20060101ALI20231221BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20231221BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01Q13/10
H01Q15/14 Z
H01Q1/38
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097309
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】石井 佑典
(72)【発明者】
【氏名】松島 秀直
(72)【発明者】
【氏名】久我 宣裕
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA06
5J020BC12
5J020BC13
5J020DA03
5J021AA09
5J021AB05
5J021AB06
5J021GA02
5J021HA05
5J021JA07
5J045AA21
5J045CA01
5J045DA03
5J045LA01
5J046AA07
5J046AB03
5J046AB13
(57)【要約】
【課題】 特定の指向性が得られて不要な放射が抑制でき、小型化・低背化を図ることが可能であると共に、1つで2方向の放射が可能な無給電中継装置を提供すること。
【解決手段】 一対の開口部5aを両端に有して導電体で形成されていると共に上下に対向した天板部2及び地板部3と左右に対向した一対の側壁部4とを有した断面矩形状のアンテナ本体5を備え、天板部が、開口部の開口方向に沿って延在したスロット状貫通孔Sを有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の開口部を両端に有して導電体で形成されていると共に上下に対向した天板部及び地板部と左右に対向した一対の側壁部とを有した断面矩形状のアンテナ本体を備え、
前記天板部が、前記開口部の開口方向に沿って延在したスロット状貫通孔を有していることを特徴とする無給電中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無給電中継装置において、
前記天板部の上方に間隔を空けて設置された導電性パッチ板部を備えていることを特徴とする無給電中継装置。
【請求項3】
請求項2に記載の無給電中継装置において、
前記天板部が、矩形状とされ、
前記導電性パッチ板部が、前記天板部の外形に沿った矩形状のうち互いに対向する一対の角部が切り欠かれた形状とされていることを特徴とする無給電中継装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の無給電中継装置において、
前記側壁部が、前記天板部の縁に沿って並んで立設された複数の壁用導電体ピンで構成されていることを特徴とする無給電中継装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の無給電中継装置において、
前記アンテナ本体で構成された単位アンテナが、前記開口部を同じ方向に向けて複数設置されていることを特徴とする無給電中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の端末と基地局との通信において、通信容量や通信距離を増大させる無給電中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話等の端末と基地局との通信において、通信容量や通信距離を増大させるために、基地局(光ファイバー網含む)の出力電力の増加や密な設置(建屋内外)等の対応が行われてきた。また、特定の通信においては、設置コストを考慮して基地局の代わりに無給電反射板や大型の無給電中継装置などが、山の斜面や鉄塔頭頂部などに設置されている。
【0003】
端末と基地局との通信において、基地局の出力電力の増加、あるいは基地局自体の施設の増加は、通信に必要とするコストの上昇,エネルギーの浪費,電磁波の不要放射などが課題となるが、従来、ダイポールアンテナ,ループアンテナ,パッチアンテナや八木アンテナを使用した無給電中継装置が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、入射波に直交する面を開口面積とする受信アンテナと、反射板を有し送信方向である反射方向に平行な面を開口面積とする送信アンテナと、送信アンテナと受信アンテナの構造の一部を共有していると共に送信アンテナと受信アンテナとが同一平面内に設けられたデュアルアンテナ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術においても、以下の課題が残されている。
近年、5Gミリ波において自由空間減衰の増大や狭ビーム化により、建物と建物との間などのブラインドスポット(電波不感地帯)の通信品質を改善することが要望されている。特に、5Gミリ波の広まりに応じて屋内の不感地帯対策として、基地局の電波を光ファイバで中継し、天井等に設置された多数のアンテナから送受信を行うDAS(分散アンテナシステム)用のアンテナ(無給電中継装置)が検討されている。そのため、屋内の電波不感地帯となりやすい廊下等のT字路や十字路では2方向の放射が要求される。
しかしながら、特許文献1の技術では、一方向しかカバーできないため、2方向をカバーするために2つのユニットを設置する必要があり、アンテナの設置数が増大してしまうという問題があった。また、パッチアンテナエリアと八木アンテナエリアとが分かれているため、アンテナ全体の面積が大きくなってしまう不都合があった。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、特定の指向性が得られて不要な放射が抑制でき、小型化・低背化を図ることが可能であると共に、1つで2方向の放射が可能な無給電中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る無給電中継装置は、一対の開口部を両端に有して導電体で形成されていると共に上下に対向した天板部及び地板部と左右に対向した一対の側壁部とを有した断面矩形状のアンテナ本体を備え、前記天板部が、前記開口部の開口方向に沿って延在したスロット状貫通孔を有していることを特徴とする。
【0009】
この無給電中継装置では、天板部が、開口部の開口方向に沿って延在したスロット状貫通孔を有しているので、天板部の正面から例えば垂直偏波の入射波がスロット状貫通孔を介して入力されると、帯状ループアンテナとして機能するアンテナ本体の一対の開口部から両側の開口方向に向けて水平偏波の送信波を再放射することができる。このように、送信用の帯状ループアンテナとなるアンテナ本体の天板部に、スロット状貫通孔により受信用のスロットアンテナが構成されていることで、受信した電磁波を別の2方向に送信することができ、不要な放射も抑制することができる。例えば、2方向の指向性を有する本発明の無給電中継装置を、構造物の構内のT字路において、その中央に設置することで、T字路を構成する1つの通路方向から別の2つの通路方向へ効率的に再放射することが可能になる。
また、本発明の無給電中継装置では、アンテナ本体が断面矩形状であるため、小型化かつ低背化が可能である。さらに、放射の効率化及び小型化等ができるため、パッシブリピータとしてアンテナの設置数を減らすことができ、低コスト化が可能である。
【0010】
第2の発明に係る無給電中継装置は、第1の発明において、前記天板部の上方に間隔を空けて設置された導電性パッチ板部を備えていることを特徴とする。
すなわち、この無給電中継装置では、天板部の上方に間隔を空けて設置された導電性パッチ板部を備えているので、帯状ループアンテナとして機能するアンテナ本体の天板部が、パッチアンテナとして機能する導電性パッチ板部の地板と共有することで、2つのアンテナ構成がスロット状貫通孔を介して結合され、不要な放射をより抑制して、さらに効率的に再放射動作させることができる。
【0011】
第3の発明に係る無給電中継装置は、第2の発明において、前記天板部が、矩形状とされ、前記導電性パッチ板部が、前記天板部の外形に沿った矩形状のうち互いに対向する一対の角部が切り欠かれた形状とされていることを特徴とする。
すなわち、この無給電中継装置では、導電性パッチ板部が、天板部の外形に沿った矩形状のうち互いに対向する一対の角部が切り欠かれた形状とされているので、一対の角部が切り欠かれた導電性パッチ板部により円偏波化することができ、垂直偏波と水平偏波との両偏波の受信が可能になる。
【0012】
第4の発明に係る無給電中継装置は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記側壁部が、前記天板部の縁に沿って並んで立設された複数の壁用導電体ピンで構成されていることを特徴とする。
すなわち、この無給電中継装置では、側壁部が、天板部の縁に沿って並んで立設された複数の壁用導電体ピンで構成されているので、壁用導電体ピンが側壁部の側板の代わりとなって断面矩形状のアンテナ本体を構成することができる。
【0013】
第5の発明に係る無給電中継装置は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記アンテナ本体で構成された単位アンテナが、前記開口部を同じ方向に向けて複数設置されていることを特徴とする。
すなわち、この無給電中継装置では、アンテナ本体で構成された単位アンテナが、開口部を同じ方向に向けて複数設置されているので、単位アンテナのアレイ化により利得を向上させることができると共に、開口部の開口方向の指向性をさらに増幅して鋭い指向性を得ることができる。したがって、想定設置面での指向性が非常に小さくでき、構造物に近接させて設置することも可能になる。
なお、単位アンテナのアレイ数(設置数)が多い程、利得を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明の無給電中継装置によれば、天板部が、開口部の開口方向に沿って延在したスロット状貫通孔を有しているので、天板部の正面からの入射波がスロット状貫通孔を介して入力されると、帯状ループアンテナとして機能するアンテナ本体の一対の開口部から両側の開口方向の2方向に向けて送信波を効率的かつ低コストで再放射することができる。
したがって、本発明の無給電中継装置は、携帯電話や無線LAN等の通信の中継装置として好適であり、特に構造物内やその近傍において目立たずに設置可能な程度まで小型化・低背化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る無給電中継装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態において、無給電中継装置の指向性を示すグラフである。
【
図3】本発明に係る無給電中継装置の第2実施形態を示す平面図(a)及び側面図(b)である。
【
図4】第2実施形態において、無給電中継装置の指向性を示すグラフである。
【
図5】本発明に係る無給電中継装置の第3実施形態を示す平面図である。
【
図6】第3実施形態において、無給電中継装置の指向性を示すグラフである。
【
図7】本発明に係る無給電中継装置の第4実施形態を示す斜視図である。
【
図8】第4実施形態において、無給電中継装置の指向性を示すグラフである。
【
図9】本発明に係る無給電中継装置の第5実施形態を示す斜視図である。
【
図10】第5実施形態において、無給電中継装置の指向性を示すグラフである。
【
図11】単位アンテナ1つと第5実施形態とにおける無給電中継装置のRCS(レーダー反射断面積)の周波数特性を示すグラフである。
【
図12】本発明に係る無給電中継装置の第4実施形態において他の例を示す斜視図である。
【
図13】本発明に係る無給電中継装置の第5実施形態において他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る無給電中継装置の第1実施形態を、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態における無給電中継装置1は、いわゆるパッシブリピータであって、
図1及び
図2に示すように、一対の開口部5aを両端に有して金属等の導電体で形成されていると共に上下に対向した天板部2及び地板部3と左右に対向した一対の側壁部4とを有した断面矩形状のアンテナ本体5を備えている。
上記天板部2は、開口部5aの開口方向に沿って延在したスロット状貫通孔Sを有している。
すなわち、スロット状貫通孔Sは、開口部5aの開口方向に沿った方向として、一対の開口部5aを結ぶ方向(一対の側壁部4の延在方向であり、
図1中のx方向)に沿って延在している。
【0018】
上記天板部2と地板部3とは、互いに同サイズの矩形状に形成されている。
また、上記天板部2と地板部3と側壁部4との各構成は、板金で形成されている。
上記スロット状貫通孔Sは、天板部2の一辺2a側に寄って前記一辺2aに平行に延在したスリットである。
なお、スロット状貫通孔Sは、天板部2の中心点又は中心線Cから離間した位置に形成されている。
本実施形態では、天板部2及び地板部3が平面視で正方形状であり、アンテナ本体5は、縦断面形状が横長で低背かつ薄い形状となっている。
【0019】
本実施形態では、各部の寸法が例えば以下のように設定されている。
天板部2及び地板部3の一辺の長さx1:4.9mm
開口部5aの開口幅x2:0.5mm
スロット状貫通孔Sの幅x3:0.2mm
スロット状貫通孔Sの長さx4:4.1mm
スロット状貫通孔Sの天板部2の中心線Cからの距離x5:0.9mm
【0020】
本実施形態の無給電中継装置1による指向性を
図2に示す。
なお、
図2に示す指向性のグラフは、
図1におけるz軸方向からの入射波λ1(垂直偏波の到来波)に対する送信波λ2(水平偏波)の再放射をシミュレーションしたものである。この指向性のグラフは、水平偏波のみをシミュレーションした結果である。なお、以下の各実施形態では、いずれも27.5GHzでシミュレーションしている。
本実施形態の無給電中継装置1では、
図3に示すように、xy平面で2方向の指向性を有し、互いに対向する2方向(一対の開口部5aの開口方向)で同等レベルに再放射されている。
【0021】
このように本実施形態の無給電中継装置1では、天板部2が、開口部5aの開口方向に沿って延在したスロット状貫通孔Sを有しているので、天板部2の正面から例えば垂直偏波の入射波λ1がスロット状貫通孔Sを介して入力されると、帯状ループアンテナとして機能するアンテナ本体5の一対の開口部5aから両側の開口方向に向けて水平偏波の送信波λ2を再放射することができる。
【0022】
すなわち、送信用の帯状ループアンテナとなるアンテナ本体5の天板部2に、スロット状貫通孔Sにより受信用のスロットアンテナが構成されていることで、受信した電磁波を別の2方向に送信することができ、不要な放射も抑制することができる。例えば、2方向の指向性を有する本実施形態の無給電中継装置1を、構造物の構内のT字路において、その中央に設置することで、T字路を構成する1つの通路方向から別の2つの通路方向へ効率的に再放射することが可能になる。
また、アンテナ本体5が断面矩形状であるため、小型化かつ低背化が可能である。さらに、放射の効率化及び小型化等ができるため、パッシブリピータとしてアンテナの設置数を減らすことができ、低コスト化が可能である。
【0023】
次に、本発明に係る無給電中継装置の第2から第5実施形態について、
図3から
図13を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0024】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、アンテナ本体2の天板部2に形成されたスロット状貫通孔Sで入射波λ1を直接受信するのに対し、第2実施形態の無給電中継装置21では、
図3に示すように、天板部2の上方に間隔を空けて設置された導電性パッチ板部26を備え、導電性パッチ板部26を介してスロット状貫通孔Sが入射波λ1を受信している点である。
【0025】
第2実施形態では、導電性パッチ板部26と天板部2との間に樹脂製等の絶縁性スペーサ26aが設置されており、天板部2と導電性パッチ板部26とを離間させている。
なお、本実施形態では、導電性パッチ板部26が矩形状の金属板で形成され、その四隅に設けられた棒状の絶縁性スペーサ26aにより導電性パッチ板部26が天板部2上に支持されている。
導電性パッチ板部26は、天板部2よりも若干小さな正方形状で中心軸を同じくして形成され、スロット状貫通孔Sの直上を覆うように設置されている。
【0026】
第2実施形態の無給電中継装置21による指向性を
図4に示す。
第2実施形態の無給電中継装置21では、
図4に示すように、xy平面で2方向の指向性を有し、互いに対向する2方向(一対の開口部5aの開口方向)で同等レベルに再放射されている。この指向性のグラフは、水平偏波のみをシミュレーションした結果である。
また、第2実施形態では、
図4の(a)に示すように、第1実施形態に比べて90°方向の不要な放射が抑制され、利得が向上していることがわかる。
【0027】
なお、本実施形態では、各部の寸法が例えば以下のように設定されている。
天板部2及び地板部3の一辺の長さx1:5.37mm
開口部5aの開口幅x2:0.5mm
スロット状貫通孔Sの幅x3:0.2mm
スロット状貫通孔Sの長さx4:2.0mm
スロット状貫通孔Sの天板部2の中心線Cからの距離x5:2.0mm
導電性パッチ板部26の一辺の長さx6:4.7mm
導電性パッチ板部26と天板部2との間隔x7:0.25mm
【0028】
このように無給電中継装置21では、天板部2の上方に間隔を空けて設置された導電性パッチ板部26を備えているので、帯状ループアンテナとして機能するアンテナ本体5の天板部2が、パッチアンテナとして機能する導電性パッチ板部26の地板と共有することで、2つのアンテナ構成がスロット状貫通孔Sを介して結合され、不要な放射をより抑制して、さらに効率的に再放射動作させることができる。
【0029】
次に、第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、矩形状の導電性パッチ板部36が天板部2上に間隔を空けて設置されているのに対し、第3実施形態の無給電中継装置31では、
図5に示すように、導電性パッチ板部36が、天板部2の外形に沿った矩形状のうち互いに対向する一対の角部が切り欠かれた形状とされている点である。
すなわち、第3実施形態の無給電中継装置31は、互いに対向した一対の角部が切り欠かれた切り欠き部36bを有した6角形状の導電性パッチ板部26を備えている。なお、本実施形態では、正方形状の導電性パッチ板部26から切り欠かれた角部の切り欠き部36bは、垂直二等辺三角形状となっている。
【0030】
第3実施形態の無給電中継装置31による指向性を
図6に示す。
第3実施形態の無給電中継装置31では、
図6に示すように、垂直偏波と水平偏波との両偏波を受信し2方向に再放射がされている。
【0031】
なお、本実施形態では、各部の寸法が例えば以下のように設定されている。
天板部2及び地板部3の一辺の長さx1:5.3mm
開口部5aの開口幅x2:0.5mm
スロット状貫通孔Sの幅x3:0.2mm
スロット状貫通孔Sの長さx4:2.5mm
スロット状貫通孔Sの天板部2の中心線Cからの距離x5:1.4mm
導電性パッチ板部26の横幅・縦幅x6:4.8mm
導電性パッチ板部26と天板部2との間隔x7:0.25mm
切り欠き部36bの二等辺のうち一辺の長さx8:2.0mm
【0032】
このように無給電中継装置31では、導電性パッチ板部26が、天板部2の外形に沿った矩形状のうち互いに対向する一対の角部が切り欠かれた形状とされているので、一対の角部が切り欠かれた導電性パッチ板部26により円偏波化することができ、垂直偏波と水平偏波との両偏波の受信が可能になる。
【0033】
次に、第4実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、側壁部4が天板部2及び地板部3から連続した金属の側板で形成されているのに対し、第4実施形態の無給電中継装置41では、
図7に示すように、側壁部44が、天板部2の縁に沿って並んで立設された複数の壁用導電体ピンPで構成されている。
上記壁用導電体ピンPは、例えば銅等の金属棒で形成されている。
【0034】
第4実施形態の無給電中継装置41による指向性を
図7に示す。
第4実施形態の無給電中継装置41では、
図7に示すように、第2実施形態と同様に、xy平面で2方向の指向性を有し、互いに対向する2方向(一対の開口部5aの開口方向)で同等レベルに再放射されている。この指向性のグラフは、水平偏波のみをシミュレーションした結果である。
【0035】
なお、本実施形態では、各部の寸法が例えば以下のように設定されている。
天板部2及び地板部3の一辺の長さx1:5.9mm
開口部5aの開口幅x2:0.5mm
スロット状貫通孔Sの幅x3:0.2mm
スロット状貫通孔Sの長さx4:4.0mm
スロット状貫通孔Sの天板部2の中心線Cからの距離x5:1.5mm
導電性パッチ板部26の一辺の長さx6:4.7mm
導電性パッチ板部26と天板部2との間隔x7:0.25mm
【0036】
このように無給電中継装置41では、側壁部44が、天板部2の縁に沿って並んで立設された複数の壁用導電体ピンPで構成されているので、壁用導電体ピンPが第1実施形態における側壁部4の側板の代わりとなって断面矩形状のアンテナ本体45を構成することができる。
【0037】
次に、第5実施形態と第2実施形態との異なる点は、第1実施形態では、1つの無給電中継装置1だけであるのに対し、第5実施形態の無給電中継装置51では、
図9に示すように、アンテナ本体5で構成された単位アンテナ51Aが、開口部5aを同じ方向に向けて複数設置されている点である。
第5実施形態では、例えば単位アンテナ51Aが同一平面上に互いの間隔x9が10.8mmとされて4×4の行列状に配列されている。
【0038】
第5実施形態の無給電中継装置51による指向性について、第1実施形態と同様にシミュレーションした結果を
図10に示す。
第5実施形態の無給電中継装置51においても、
図10に示すように、zx平面で2方向の指向性を有すると共にxy平面で2方向により強い指向性を有し、互いに対向する2方向で同等レベルにより強く再放射されている。
【0039】
また、1つの単位アンテナ51Aと第5実施形態の無給電中継装置51とにおけるRCS(レーダー反射断面積)の周波数特性を
図11に示す。
これらから分かるように、1つの単位アンテナ51Aの場合(図中、「単素子」と記載)に比べ、複数の単位アンテナ51Aを並べた本実施形態の無給電中継装置51(図中、「4×4素子」と記載)は利得が向上している。
【0040】
このように第5実施形態の無給電中継装置51では、アンテナ本体5で構成された単位アンテナ51Aが、開口部5aを同じ方向に向けて複数設置されているので、単位アンテナ51Aのアレイ化により利得を向上させることができると共に、開口部5aの開口方向の指向性をさらに増幅して鋭い指向性を得ることができる。したがって、想定設置面での指向性が非常に小さくでき、構造物に近接させて設置することも可能になる。
【0041】
なお、単位アンテナ51Aのアレイ数(設置数)が多い程、利得を向上させることができる。
また、本実施形態では、単位アンテナ51Aを同一平面上に配列しているが、複数の単位アンテナ51Aを、上下方向に間隔を空けた異なる複数の平面上にそれぞれ複数設置しても構わない。
例えば、上下方向に間隔を空けた2つの平面上にそれぞれ4×4の行列状に複数の単位アンテナ51Aを配列しても良い。
この場合、2つの平面に異なる動作周波数の単位アンテナ51Aを分けて積層配列することで、利得が向上すると共に異なる動作周波数で中継を行うことができ、波数帯域を拡大させることができる。
【0042】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0043】
例えば、上記第2実施形態の無給電中継装置21は、板金を用いて作製されているが、フッ素樹脂等の絶縁材料である誘電体を使用したPTFE等の多層リジッド基板に銅箔等を板金の代わりに形成して作製しても構わない。例えば、第2実施形態の他の例として、
図12に示すように、下側リジッド基板27と上側リジッド基板28とを重ねた無給電中継装置21Bとしても構わない。
【0044】
この無給電中継装置21Bでは、下側リジッド基板27の下面に矩形状の銅箔等の導電体膜で地板部23Bを形成すると共に、下側リジッド基板27の上面に矩形状の銅箔で天板部22Bを形成する。また、上側リジッド基板28の上面にも矩形状の銅箔等の導電体膜で導電性パッチ板部26Bを形成する。
上記天板部22Bは、スロット状貫通孔Sを空けてパターン形成されている。
【0045】
さらに、下側リジッド基板27には、地板部23Bと天板部22Bとを接続する金属等の導電体が埋め込まれた複数のビアホールP2が設けられて一対の側壁部24Bを構成している。
このように第2実施形態の他の例である無給電中継装置21Bでは、板金の代わりに銅箔等の導電体箔を用いると共に、壁用導電体ピンとしてビアホールP2を用いることで、第2実施形態の無給電中継装置21と同様に、スロット状貫通孔Sと導電性パッチ板部26Bとを備えると共に両端に開口部を有する矩形筒状構造を構成することができる。
【0046】
また、第5実施形態の他の例として、
図13に示すように、上記無給電中継装置21Bを単位アンテナとして、開口部5aを同じ方向に向けて複数設置することで、上記第5実施形態の無給電中継装置と同様の構成となる無給電中継装置51Bを得ることができる。
この無給電中継装置51Bでは、大判の下側リジッド基板27及び上側リジッド基板28を用いることで、下側リジッド基板27及び上側リジッド基板28内に単位アンテナとして複数の無給電中継装置21Bを形成することができる。
【符号の説明】
【0047】
1,21,21B,41,51,51B…無給電中継装置、2…天板部、3…地板部、4,44…側壁部、5,45…アンテナ本体、5a…開口部、26,36…導電性パッチ板部、51A…単位アンテナ、P…壁用導電体ピン、S…スロット状貫通孔