(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183678
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】立体造形システム
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20231221BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231221BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20231221BHJP
【FI】
B28B1/30
B33Y30/00
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097320
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木ノ村 幸士
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊成
(72)【発明者】
【氏名】岩本 達也
(72)【発明者】
【氏名】原槙 真也
(72)【発明者】
【氏名】森山 英明
【テーマコード(参考)】
4G052
【Fターム(参考)】
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
(57)【要約】
【課題】セメント系材料を積層して立体的な造形物を形成する場合において、層間の縞模様を解消する。
【解決手段】立体造形システムは、セメント系材料を吐出するノズル13と、ノズル13に取り付けられ、ノズル13から吐出されたセメント系材料の表面を仕上げる仕上げ装置3とを備えている。仕上げ装置3は、ノズル13から吐出されたセメント系材料の表面に接触するコテ31A,31Bと、セメント系材料に振動を与える振動機構67とを有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系材料を積層して立体的な造形物を形成する立体造形システムであって、
前記セメント系材料を吐出するノズルと、
前記ノズルに取り付けられ、前記ノズルから吐出された前記セメント系材料の表面を仕上げる仕上げ装置と、を備え、
前記仕上げ装置は、
前記ノズルから吐出された前記セメント系材料の表面に接触するコテと、
前記セメント系材料に振動を与える振動機構と、
を有することを特徴とする立体造形システム。
【請求項2】
前記振動機構は、前記コテに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の立体造形システム。
【請求項3】
前記コテは、前記セメント系材料の吐出方向に進出した位置へ先端部が来るように移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の立体造形システム。
【請求項4】
前記コテは、前記ノズルの中心軸側の面において、前記ノズルの移動方向に平行な導入部と、前記ノズルの進行方向において前記導入部よりも後方に位置されている仕上げ部と、を有し、前記仕上げ部は、前記導入部よりも、前記ノズルの中心軸を通り前記ノズルの進行方向に沿う直線に近い位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の立体造形システム。
【請求項5】
前記振動機構により発生する起振力を手動で調整するための調整部を備えることを特徴とする請求項1に記載の立体造形システム。
【請求項6】
前記セメント系材料のコンシステンシーに関する流動性情報を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記流動性情報に基づいて、前記振動機構により発生する起振力を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の立体造形システム。
【請求項7】
前記検出部は、前記セメント系材料を前記ノズルから定量吐出させるようにスクリュを駆動する駆動モータの回転数に対応する情報を前記流動性情報として検出することを特徴とする請求項6に記載の立体造形システム。
【請求項8】
前記振動機構は、前記コテに設けられるとともに、前記コテの先端部が前記セメント系材料の吐出方向に進出した位置にある際に、前記セメント系材料に振動を与えることを特徴とする請求項3に記載の立体造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系材料を積層して立体的な造形物を形成する立体造形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3Dプリンタ技術を応用して、コンクリートやモルタル等のセメント系材料を用いて建造物、構造物等の造形物を形成する技術が種々提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。3Dプリンタ技術を用い、この種の造形物を形成する場合には、まず、形成しようとする造形物の3次元形状をコンピュータでモデリングする。次いで、そのモデリングされた3次元データから、多数の層に分けられた2次元データを生成する。
そして、移動可能な供給ヘッドにポンプからセメント系材料を供給するとともに、各層の2次元データに基づいて、供給ヘッドのノズルからセメント系材料を吐出して各層の2次元形状を形成する。そして、形成された2次元形状の層上に、続く層の2次元データに基づいて、セメント系材料を一層ずつ積層し、これにより、立体的な造形物を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-122539号公報
【特許文献2】特開2018-140906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セメント系材料を積層して造形物を形成する特許文献1,2に記載の3Dプリンタは、樹脂等の材料を用いた3Dプリンタに比べてノズル径が大きいため、形成される一層が厚い。また、柔らかい状態で材料を積み上げるため、層の断面形状は変形を生じやすい。このため、層の断面を拡大して見ると楕円を積み上げたような形となり、層と層の間に凹凸を生じやすい(特許文献1の
図5、特許文献2の
図3参照)。
このような凹凸(縞模様)の存在は、意匠的な制約や汚れの付着など美観への影響が懸念されるだけでなく、層と層の境界が不連続面を形成した場合には、造形物の耐久性や構造耐力の低下が懸念される。
また、セメント系材料の種類によっては、ねばりけ(粘性)を示す粘度、潰れにくさを示す降伏値等のフレッシュ性状(以下、「コンシステンシー」という)が異なる。コンシステンシーとは、フレッシュ材料(例えば、フレッシュコンクリート、フレッシュモルタル、フレッシュペースト等)の変形あるいは流動に対する抵抗性の程度であり、粘度や降伏値が大きい場合にはフレッシュ材料は変形や流動しにくくなる。したがって、使用するセメント系材料のコンシステンシーが大きいと、表面の良好な仕上げ(凹凸の平滑化)が困難な場合がある。例えば短繊維を含むモルタルを使用する場合、短繊維を含まないモルタルに比べ降伏値が大きくなることが多く、層間の縞模様を解消することはより困難となる。
本発明は、セメント系材料を積層して立体的な造形物を形成する場合において、層間の縞模様を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する本発明は、セメント系材料を積層して立体的な造形物を形成する立体造形システムである。この立体造形システムは、前記セメント系材料を吐出するノズルと、前記ノズルに取り付けられ、前記ノズルから吐出された前記セメント系材料の表面を仕上げる仕上げ装置と、を備える。前記仕上げ装置は、前記ノズルから吐出された前記セメント系材料の表面に接触するコテと、前記セメント系材料に振動を与える振動機構と、を有する。
本発明では、セメント系材料に振動を与えて流動化を促進させるとともに、コテがセメント系材料の表面に接触した状態でノズルが進行することで、表面の仕上げを行うことができる。しかも、セメント系材料の流動化を促進させることができるため、コンシステンシーが異なる各種の材料(配合)を使用する場合や、同じ材料であっても積層中にコンシステンシーが時間的に変化する場合にも、対応可能となる。これにより、層間の縞模様が解消され、仕上げ面が平滑となる。表面の仕上げを実施することによって層間の不連続面の形成が抑制されるため、造形物の耐久性の向上が期待できる。また、造形物の美観の向上、構造耐力低下の抑制も期待できる。
このように、本発明によれば、セメント系材料を積層して立体的な造形物を形成する場合において、層間の縞模様を解消することができる。
【0006】
また、前記振動機構は、前記コテに設けられていることが好ましい。この構成では、ノズルから吐出されたセメント系材料の表面に接触するコテを振動させることができるため、セメント系材料の表面を直接的に流動化させて効率良く仕上げることができる。
また、前記コテは、前記セメント系材料の吐出方向に進出した位置へ先端部が来るように移動可能であることが好ましい。この構成では、コテを進出させたとき接触するセメント系材料の表面が仕上げすべき面である場合に、コテを進出させて表面の仕上げを行うことができる。
また、前記振動機構は、前記コテに設けられるとともに、前記コテの先端部が前記セメント系材料の吐出方向に進出した位置にある際に、前記セメント系材料に振動を与えることが好ましい。この構成では、コテをセメント系材料の表面に接触させて表面の仕上げを行うときに、セメント系材料に振動を与えることができる。すなわち、必要なときにコテを介してセメント系材料に振動を効率的に与えることができ、不必要に振動を与えることはない。
【0007】
また、前記コテは、前記ノズルの中心軸側の面において、前記ノズルの移動方向に平行な導入部と、前記ノズルの進行方向において前記導入部よりも後方に位置されている仕上げ部と、を有することが好ましい。この場合、前記仕上げ部は、前記導入部よりも、前記ノズルの中心軸を通り前記ノズルの進行方向に沿う直線に近い位置に配置されている。この構成では、ノズルから吐出したセメント系材料を導入部に導入した後に、セメント系材料の表面に確実にコテの仕上げ部を接触させて表面の仕上げを行うことができる。
【0008】
また、前記立体造形システムは、前記振動機構により発生する起振力を手動で調整するための調整部を備えるとよい。この構成では、使用するセメント系材料のコンシステンシーに応じて、振動機構により発生する起振力を、調整部によって調整することができる。例えば偏心重錘を振動モータで回転させる振動機構では、調整部を用いて振動モータの単位時間(例えば毎分)当たりの回転数(以下、単に「回転数」ともいう)を変えることで起振力を手動で調整できる。また、造形物の形成中に振動モータの回転数を変えることが可能で、セメント系材料のコンシステンシーの変化を見ながら起振力を柔軟に調整することができる。これにより、セメント系材料の表面の仕上げをより良好に行うことができる。なお、調整部を用いて偏心重錘の偏心モーメント量を変えることで起振力を手動で調整できるように構成されてもよい。
【0009】
また、前記立体造形システムは、検出部と、制御部と、を備えるとよい。この場合、前記検出部は、前記セメント系材料のコンシステンシーに関する流動性情報を検出し、前記制御部は、前記検出部によって検出された前記流動性情報に基づいて、前記振動機構により発生する起振力を制御する。この構成では、検出部によって検出されたセメント系材料の流動性情報を用いて、振動機構により発生する起振力を、制御部によって自動的に制御することができる。具体的には、例えば偏心重錘を振動モータで回転させる振動機構では、制御部によって振動モータの回転数を変えることで起振力を自動的に調整できる。これにより、セメント系材料の表面の仕上げをより良好に行うことができる。
また、前記検出部は、前記セメント系材料を前記ノズルから定量吐出させるようにスクリュを駆動する駆動モータの回転数に対応する情報を前記流動性情報として検出することが好ましい。この構成では、セメント系材料をノズルから定量吐出するフィードバック制御を行う場合に得られる駆動モータの回転数に対応する情報を、前記流動性情報として利用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セメント系材料を積層して立体的な造形物を形成する場合において、層間の縞模様を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る立体造形システムの概要を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されるノズル装置の拡大断面図である。
【
図3】制御部に含まれる駆動モータコントローラの回路図および制御プログラムの例示である。
【
図4】駆動モータコントローラのPI制御を説明するための図である。
【
図5】
図1に示される仕上げ装置をノズルとともに示す拡大斜視図である。
【
図9】コテをノズルの進行方向における後方から見た図である。
【
図10】第1実施形態において振動機構により発生する起振力の手動調整を説明するためのブロック図である。
【
図11】立体造形システムの動作の内容を示すフローチャートである。
【
図12】コテの向きの制御について説明するための模式的な平面図である。
【
図13】
図13(a),(b)は、コテの進出退避移動の制御について説明するための模式的な正面図である。
【
図14】
図14(a)~(d)は、コテの進出退避移動の制御についてさらに具体的に説明するための模式的な図である。
【
図15】
図15(a)は実際に堆積層が配置されるエリアである積層エリアを示す図、
図15(b)は吐出範囲を塗りつぶした堆積領域を示す図、
図15(c)は堆積レイヤーデータを示す図である。
【
図16】ノズルの進行方向の計算方法を説明するための図である。
【
図17】コテの位置の計算方法を説明するための図である。
【
図18】
図18(a)は左のコテに相当する部分を塗りつぶして作成されたコテ配置レイヤーデータを示す図、
図18(b)は右のコテに相当する部分を塗りつぶして作成されたコテ配置レイヤーデータを示す図である。
【
図19】
図19(a)は左のコテに対応するコテ配置レイヤーデータと堆積レイヤーデータとを合成した合成画像を示す図、
図19(b)は右のコテに対応するコテ配置レイヤーデータと堆積レイヤーデータとを合成した合成画像を示す図である。
【
図20】第2実施形態において振動機構により発生する起振力の自動調整を説明するためのブロック図である。
【
図21】変形例に係るコテ部を説明するための模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照して説明する。なお、以下に示す図面において、同一または同種の部材については、同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。また、部材のサイズおよび形状は、説明の便宜のため、変形または誇張して模式的に表す場合がある。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る立体造形システム100の概要を示す斜視図である。立体造形システム100は、セメント系材料をノズル装置1から押し出しながら二次元形状を生成し、これを高さ方向に積層することにより三次元の造形物を形成するものであり、いわゆる3Dプリンタである。セメント系材料は、例えばコンクリート、モルタル、セメントペースト等である。
【0014】
図1に示すように、立体造形システム100は、ノズル装置1と、ノズル支持装置2と、仕上げ装置3と、制御装置5とを備える。
ノズル装置1は、その先端(下端)に、セメント系材料Cを吐出するノズル13(
図2参照、以下同様)を有している。ノズル装置1は、ノズル13からセメント系材料Cを吐出しながら平面移動する。ノズル装置1は、平面移動により所定の二次元形状を形成したら、上方に移動する。すなわち、ノズル装置1は、三次元的に移動可能に、ノズル支持装置2によって支持されている。ノズル装置1は、制御装置5に接続されており、制御装置5からの信号に応じてセメント系材料Cの吐出を行う。
【0015】
ノズル支持装置2は、ノズル装置1をX軸およびY軸に沿って平面移動させるとともに、Z軸に沿って上下動させる。すなわち、立体造形システム100は、ノズル支持装置2を介してノズル装置1を3次元的に移動させることで、立体的な造形物を形成することを可能としている。本実施形態のノズル支持装置2は、X軸に沿って配設されたX軸レール21と、Y軸に沿って配設された一対のY軸レール22と、Z軸に沿って立設されたZ軸柱23とを備えている。X軸レール21は、ノズル装置1を摺動可能に支持している。ノズル装置1は、X軸レール21に沿って移動することで、X軸方向に移動する。また、X軸レール21は、一対のY軸レール22に摺動可能に横架されている。X軸レール21がY軸レール22に沿って摺動することで、ノズル装置1がY軸方向に移動する。また、ノズル装置1がX軸レール21に沿って移動するのと同時にX軸レール21がY軸レール22に沿って移動することで、ノズル装置1が斜め方向に移動する。すなわち、X軸レール21およびY軸レール22により、ノズル装置1を自由に平面移動させることができる。さらに、Y軸レール22は、Z軸柱23によって上下動可能に支持されている。Y軸レール22がZ軸柱23に沿って移動することで、ノズル装置1が上下動する。
ノズル支持装置2は、制御装置5に接続されており、制御装置5から送信された信号に応じてノズル装置1を所定の方向に移動させる。
【0016】
図2は、
図1に示されるノズル装置1の拡大断面図である。
図2に示すように、ノズル装置1は、上下方向を中心軸方向とするシリンダ部11と、内部にスクリュ14が収容されたスクリュ搬送部12と、スクリュ搬送部12の先端に着脱可能に装着されるノズル13とを備えている。
シリンダ部11内の上部には、貯留室11aが設けられている。貯留室11aは、上部が大径の略中空円筒状に形成されており、その下側の部分が下方に向かうにつれて縮径する中空の略逆円錐台状に形成されている。さらに、その下側のスクリュ搬送部12との連結部が小径の中空円筒状に形成されている。スクリュ搬送部12は、シリンダ部11下部の小径部分と内径がほぼ同じ円筒状に形成される。ノズル13は、漏斗状を呈しており、その先端に吐出口13aが下向きに設けられている。
【0017】
シリンダ部11には、貯留室11aの上部側方に、供給パイプ61が接続されている。供給パイプ61は、ポンプ62を介して、貯留部としてのホッパ63に接続されている。ホッパ63内には、所定配合に練り混ぜられたセメント系材料Cが蓄えられている。ポンプ62が作動すると、ホッパ63に蓄えられたセメント系材料Cがシリンダ部11に供給される。
【0018】
ノズル装置1の上部には、駆動モータ15が設けられている。駆動モータ15の出力軸には、回転軸16がカップリング(図示省略)を介して回転駆動力を伝達可能に接続されている。回転軸16には、シリンダ部11の貯留室11a内の位置に、らせん状線材を組み合わせた撹拌部材としての撹拌翼17が装着されている。
【0019】
回転軸16の下端には、螺旋状の雄ねじ部が外周面に形成されたスクリュ14が回転軸16と同軸に垂下された姿勢で固定されている。駆動モータ15の正転駆動によってスクリュ14が任意の定常速度で回転すると、貯留室11a内のセメント系材料Cが螺旋状の雄ねじ部によりノズル13の先端に向けて押し出される。駆動モータ15は、セメント系材料Cをノズル13から定量吐出させるようにスクリュ14を駆動する。これにより、シリンダ部11内のセメント系材料Cは、スクリュ搬送部12の先端に向けて定量圧送可能とされている。
【0020】
図1に示すように、制御装置5は、コンピュータ51と、3Dプリンタコントローラ52と、バッファリング装置53と、制御部54とを備えている。コンピュータ51は、例えば、CPUと記憶装置とを有するパーソナルコンピュータである。コンピュータ51の記憶装置には、3次元形状データから得られた層ごとの2次元データが保存されている。この2次元データには、Gコード等の各種のコード(指令)が記述されている。制御部54としては、例えば、高速処理が可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)が使用される。
【0021】
次に、セメント系材料Cをノズル13から定量吐出させる制御について説明するが、かかる制御に関する以下の構成は、第1実施形態では必ずしも備えていなくてもよい。
図2に示すように、立体造形システム100(
図1参照)は、検出装置19を備えている。検出装置19は、ノズル13の吐出量に相関する情報を検出する装置である。検出装置19によって検出された情報は、制御装置5に送られて、ノズル13の吐出量を調整するフィードバック制御に使用される。検出装置19の構成、検出対象の物理量の種類や数などは特に限定されず、ノズル13の吐出量に相関する情報を適切に検出できるものであればよい。ノズル13の吐出量に相関する情報は、例えば吐出されたセメント系材料Cの重さ、体積、流量などであってよい。本実施形態の検出装置19は、ノズル装置1のフレーム部18に取り付けられており、ノズル装置1の重さを計測する。検出装置19は、ここではビーム型ロードセルであり、ノズル装置1を両側から支持している。
【0022】
図1、
図2に示すように、制御装置5の制御部54は、ノズル13からの吐出量が一定になるように駆動モータ15(つまり、スクリュ14の回転速度)を調整する。制御部54は、駆動モータ15を制御するモータコントローラ55(
図3参照、以下同様)を有しており、モータコントローラ55には、3Dプリンタコントローラ52から駆動モータ15の制御信号が入力される。また、モータコントローラ55には、インジケータ(図示省略)を介して検出装置19から検出結果(ノズル13からの吐出量に相関する情報)が入力される。本実施形態では、吐出量に相関する情報として、ノズル装置1の重さが一定周期(可変周期であってもよい)でモータコントローラ55に入力されることを想定する。モータコントローラ55は、入力された情報を用いたフィードバック制御により、3Dプリンタコントローラ52から出力された駆動モータ15の制御信号を調整する。モータコントローラ55は、モータドライバ(図示省略)を介して、調整後の制御信号で駆動モータ15を駆動する。
【0023】
図3および
図4を参照して、モータコントローラ55の機能についてより具体的に説明する。
図3は、モータコントローラ55の回路図および制御プログラムの例示である。
図4は、モータコントローラ55のPI制御を説明するための図である。なお、PI制御は、フィードバック制御の一例であって、フィードバック制御として他の制御を用いてもよい。
図3に示すように、モータコントローラ55は、3Dプリンタコントローラ52から出力されたモータ制御用のパルス信号を受信し、正逆転に合わせて総パルス数をカウントする。また、モータコントローラ55は、インジケータ(図示省略)を介して検出装置19から荷重値を一定周期(可変)で受信し、数値データに変換する。
また、
図4に示すように、モータコントローラ55は、吐出指令のパルス変化量Δpに吐出率kを乗じて目標重量変化量Δrとし、Δpが指定したパルス増加量を越えると、吐出重量変化量Δdとの誤差eに基づき、PI制御(Kp,Ki)でモータ回転数係数mを上下限内で算出する。これを、指定されたパルス変化量Δp毎に実行する。
また、モータコントローラ55は、モータ制御用のパルス信号の周期測定値に、PI制御出力のモータ回転数係数mを乗じたパルス周期の信号を出力する。つまり、モータコントローラ55は、3Dプリンタコントローラ52からの指令速度に対して、モータ回転を可変制御する。
【0024】
次に、モータコントローラ55の制御について説明する。モータコントローラ55は、造形物の形成が開始され、3Dプリンタコントローラ52から駆動モータ15の制御信号の受信を開始した場合に処理を開始する。
モータコントローラ55は、検出装置19の検出結果(ここでは、収容するセメント系材料Cを含めたノズル装置1の重量)を取得する。モータコントローラ55は、前回の検出結果との比較からノズル装置1の重量の減少量を算出し、重量の減少量からセメント系材料Cの吐出量を特定する。
次に、モータコントローラ55は、特定したセメント系材料Cの吐出量に基づいて、ノズル13の吐出量が一定になるように、駆動モータ15の制御信号(つまり、スクリュ14の回転速度)を調整する。具体的には、モータコントローラ55は、吐出量を想定値と比較し、吐出量が想定値よりも少ないか(または多いか)を判定する。吐出量が想定値よりも少ない場合、モータコントローラ55は、制御信号を調整して駆動モータ15の回転数を上げる処理(制御信号の周期を短くする処理)を行う。また、吐出量が想定値よりも多い場合、モータコントローラ55は、制御信号を調整して駆動モータ15の回転数を下げる処理(制御信号の周期を長くする処理)を行う。本実施形態では、PI制御を想定しており、吐出量と想定値との偏差に比例(P制御)し、更に過去の偏差の蓄積量に比例(I制御)した制御信号(モータ回転数係数m)を算出する。調整後の制御信号は駆動モータ15に送信され、調整後の制御信号に基づいて駆動モータ15が駆動する。上記の処理は、造形物の形成が終了するまで繰り返し実行される。
【0025】
図5は、
図1に示される仕上げ装置3をノズル13とともに示す拡大斜視図である。
図6(a)は
図5の正面図、
図6(b)は
図6(a)の右側面図、
図6(c)は
図6(a)の下面図である。
図7は、
図6(c)のV-V線断面図である。
図8は、コテの斜視図である。
図9は、コテをノズルの進行方向における後方から見た図である。
図5~
図7に示すように、仕上げ装置3は、ノズル13に取り付けられている。仕上げ装置3は、ノズル13の吐出口13aから吐出されたセメント系材料Cの表面を仕上げる装置である。仕上げ装置3は、コテ部30A,30Bと、回転機構部40と、セメント系材料Cに振動を与える振動機構67と、を備える。
コテ部30A,30Bは、ノズル13から吐出されたセメント系材料Cの表面を仕上げる際に接触するコテ31A,31Bを有している。コテ31A,31Bは、セメント系材料Cの吐出方向(
図7における下方)に進出した位置へ先端部が来るように、移動可能に構成されている。本実施形態では、具体的には、コテ31A,31Bは、セメント系材料の吐出方向に進出移動、および吐出方向とは反対方向(
図7における上方)に退避移動可能に構成されている。
【0026】
回転機構部40は、ノズル13の中心軸CLを中心としてノズル13に対してコテ31A,31Bを回転移動させるものである。回転機構部40は、アウターステータ41と、アウターロータ42A,42Bと、サーボモータ45とを有している。アウターステータ41は、プレート47を介して、ノズル13に固定されている。アウターステータ41は、略円筒形状を呈しており、ノズル13の径方向外側に固定して配置される。アウターロータ42Aとアウターロータ42Bとは、ノズル13の中心軸CL方向に並んで配置されており、互いに固定されている。アウターロータ42A,42Bは、アウターステータ41の径方向外側に軸受48(
図7参照)を介してノズル13の中心軸CLを中心として回転可能に配置されている。アウターロータ42Aとアウターステータ41との間にはOリング49Aが装着されており、アウターロータ42Bとアウターステータ41との間にはOリング49Bが装着されている。サーボモータ45は、アウターロータ42A,42Bを動力伝達手段を介して回転駆動させる。この動力伝達手段は、アウターロータ42Aに固定された第1のプーリ43と、第1のプーリ43とベルト46を介して動力伝達可能に接続された第2のプーリ44とを有している。この場合、サーボモータ45は、第2のプーリ44を回転駆動させる。本実施形態では、第1のプーリ43および第2のプーリ44として歯付きプーリが使用され、ベルト46として歯付きベルトが使用される。
なお、前記した動力伝達手段として、本実施形態ではベルト機構(第1のプーリ43、第2のプーリ44、およびベルト46)を採用したが、これに限定されるものではなく、例えばギア機構を採用してもよい。具体的には、前記した動力伝達手段は、アウターロータ42Aに固定された第1のギアと、第1のギアに噛合する第2のギアとを有していてもよい(図示省略)。この場合、サーボモータ45は、第2のギアを回転駆動させる。なお、サーボモータ45の代わりに、ステッピングモータや、DCモータとエンコーダとの組み合わが使用されてもよい。また、サーボモータ45の代わりにステッピングモータを使用し、Gコードに指令を追加すれば、
図1のバッファリング装置53は省略可能となる。
【0027】
コテ部30A,30Bは、圧縮ばね32A,32B(
図7参照)と、サーボモータ33A,33Bとを有している。圧縮ばね32A,32Bは、コテ31A,31Bを該コテ31A,31Bの進出方向に付勢する。サーボモータ33A,33Bは、スプール331A,331Bを回転させることで、コテ31A,31Bを該コテ31A,31Bの退避方向に糸状部材34A,34Bを介して巻き戻す。サーボモータ33A,33Bは、アウターロータ42Aの外周面における180度反対側の位置にそれぞれ固定されている。糸状部材34A,34Bとして、例えば、強度の高いPEラインが使用される。なお、糸状部材34A,34Bには、破断防止のため、例えばテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂製のチューブを被せることが望ましい。
【0028】
図5に示すように、アウターロータ42Bの先端(下端)には、コテ31A,31Bを上下方向に摺動可能に支持するコテ台35が固定されている。コテ台35は、アウターロータ42Bに固定された第1円板部36、第1円板部35aの下方に配置された第2円板部37、および第1円板部36と第2円板部37とを繋ぐ中間部38を有している。
【0029】
図7に示すように、第1円板部36の下面には、該下面から下方に延伸する一対のロッド36aが設けられている。また、
図5に示すように、ロッド36aを間に挟んで両側に、第1円板部36の下面から下方に延伸するガイド棒36b(
図5参照)が設けられている。コテ31A,31Bには、ロッド36aが挿入される中央穴311A,311Bと、ガイド棒36bが挿入されるガイド穴(図示省略)とが形成されている。第2円板部37には、コテ31A,31Bが上下方向に挿通する一対の開口37aが形成されている。開口37aの径方向外側が部分的に切り欠かれており、振動機構67との干渉を回避している。
ロッド36aの先端と中央穴311A,311Bの底面との間に、圧縮ばね32A,32Bが装着される。ロッド36aには、糸状部材34A,34Bが挿通する上下方向に沿う貫通孔36cが形成されている。スプール331A,331Bから延びる糸状部材34A,34Bは、貫通孔36cを通って、中央穴311A,311Bの底面に接続されている。これにより、コテ31A,31Bは、下方に進出移動、および上方に退避移動可能となっている。
【0030】
図5、
図6に示すように、コテ31A,31Bは、略直方体形状を呈している。
図6(c)、
図8に示すように、コテ31A,31Bのノズル13の中心軸CL側の面は、それぞれ導入部312A,312Bと仕上げ部313A,313Bとを有している。導入部312A,312Bは、ノズル13の移動方向に平行に、ノズル13先端の外周面に接する位置に配置される。仕上げ部313A,313Bは、導入部312A,312Bよりもノズル13の中心軸CLを通りノズル13の進行方向に沿う直線Lに近い位置に配置される。
図6(c)においては、ノズル13の進行方向は紙面の上方向である。コテ31A,31Bのうち、仕上げ部313A,313Bは、セメント系材料Cの表面に接触して仕上げ面を形成する。仕上げ部313A,313Bは、ノズル13の進行方向において、導入部312A,312Bよりも後方、かつノズル13の中心よりも後方に位置されている。
【0031】
図9に示すように、コテ31Bの後面(ノズル13の進行方向における後方の面)314Bは、ノズル13から遠い側(
図9の破線の左側)が長方形を呈し、ノズル13に近い側(
図9の破線の右側)が台形を呈している。この台形の下端(セメント系材料Cの吐出方向先端側)における2つの内角がそれぞれ直角に設定されており、
図9の破線を台形の下底とすると、上底がHとなり、高さがWとなる。このように、コテ31Bの後面314Bのノズル13に近い側に、下端における2つの内角がそれぞれ直角に設定された台形が形成されることによって、吐出されたセメント系材料Cが下方に流れ過ぎるのが抑えられる。これにより、セメント系材料Cの表面の仕上げがより良好となる。コテ31Bにおけるノズル13と反対側の面には、振動機構67を取り付けるために使用されるアリ溝(台形の溝)315Bが形成されている。なお、コテ31Aの形状については、コテ31Bと対称な形状に形成されているため、説明を省略する。
【0032】
図10は、第1実施形態において振動機構67により発生する起振力の手動調整を説明するためのブロック図である。振動機構67は、偏心重錘(図示省略)を回転させる振動モータ68を有している。本実施形態では、振動機構67は、コテ31A,31Bにそれぞれ設けられており、コテ31A,31B全体に振動が伝播するようになっている。また、振動機構67は、コテ31A,31Bに着脱可能とされている。これにより、セメント系材料Cの種類によっては、振動機構67を外して造形物を形成して、良好な表面の仕上げを得ることも可能となる。また、振動機構67を外した状態では、振動機構67に影響を与えることなくコテ31A,31Bの清掃が可能となる。
【0033】
振動機構67により発生する起振力P0(kN)は、以下の式で求められる。
P0=(Kω2)×10-3
ω=2πN/60=2πf
K:偏心重錘のもっている偏心モーメント量(kg・m)
ω:角振動数(sec-1)
N:振動数(毎分当たりの繰り返し回数:振動モータ68の(毎分当たりの)回転数)(min-1)
f:周波数(毎秒当たりの繰り返し回数(Hz)
したがって、起振力は、偏心重錘の偏心モーメント量、または振動モータ68の回転数を変えることで調整できる。
【0034】
図10に示すように、立体造形システム100(
図1参照)は、振動機構67により発生する起振力を手動で調整するための調整部58を備える。調整部58は、可変可能な値を設定して、制御装置5の制御部54に入力するものである。調整部58としては、ここでは可変抵抗器が使用されるが、これに限定されるものではなく、例えばロータリーエンコーダや押しボタン等が使用され得る。制御部54は、調整部58から入力された値(ここではアナログ値)を読み取る。読み取られた値は、例えば255段階の数値(デジタル値)に変換され、例えばコンピュータ51に備えられた表示部に表示される。制御部54は、得られた数値に基づいて振動モータ68を制御するための指令値を生成して、例えば無線シリアル通信等の通信手段によって、ノズル装置1に設けられたノズル側制御部56に送信する。ノズル側制御部56は、制御部54から受け取った指令値に基づいてPWM信号を生成し、モータドライバ57に送信する。モータドライバ57は、受信したPWM信号に応じた電圧を、振動機構67の振動モータ68に出力する。このように、制御部54からの指令値に応じた電圧によって振動モータ68の回転数が変更されることで、振動機構67により発生する起振力が調整される。なお、振動モータ68は、PWM制御に限定されるものではなく、例えば印加する電圧値を変化させることで制御されてもよい。
【0035】
次に、
図11を参照して、立体造形システム100の動作について説明する。
図11に示すように、制御装置5のコンピュータ51が動作開始の指示を受けると、3Dプリンタコントローラ52は、コンピュータ51の記憶装置から層ごとの2次元データを取得する(ステップS1)。ここで、3Dプリンタコントローラ52は、2次元データに記述されたコードに基づいて、ノズル装置1、ノズル支持装置2、および仕上げ装置3に送るパルス列データを生成する。続いて、バッファリング装置53は、3Dプリンタコントローラ52から送られるパルス列データを一旦保存する(ステップS2)。続いて、制御部54は、バッファリング装置53に保存されたパルス列データから、ノズル13の進行方向を解析する(ステップS3)。例えば、ノズル13の吐出口13a中心の現在の位置に対する一つ前の位置から移動先の位置に向かう直線方向が、ノズル13の進行方向とされる。また、制御部54は、解析されたノズル13の進行方向に基づく回転機構部40に対する制御信号を、ノズル13移動用のパルス列データと同じタイミングで送信する(ステップS4)。
【0036】
続いて、制御信号およびパルス列データに基づいてノズル装置1、ノズル支持装置2、および仕上げ装置3が動作されることで、層ごとに造形物が形成される(ステップS5)。そして、ステップS1~S5が繰り返されて、立体的な造形物が形成される。なお、本実施形態では、エクストルーダ(セメント系材料Cの押出し情報)のパルス列データも同時にバッファリングされるため、このパルス列データは、ノズル13からの吐出量のフィードバック制御にも活用され得る。
【0037】
図12は、コテ31A,31Bの向きの制御について説明するための模式的な平面図である。
図12の実線で示すように、ノズル13が紙面左方向に進行する場合、コテ31A,31Bがノズル13の中心軸CLを通りノズル13の進行方向に沿う直線L1の側方に位置するように、回転機構部40の動作を制御する。
図12の二点鎖線で示すように、ノズル13が紙面上方向に進行する場合、コテ31A,31Bがノズル13の中心軸CLを通りノズル13の進行方向に沿う直線L2の側方に位置するように、回転機構部40の動作を制御する。
【0038】
図13(a),(b)は、コテ31A,31Bの進出退避移動の制御について説明するための模式的な正面図である。
図13に示す造形物65は、
図13の紙面に垂直な方向に延びる長尺の構成部材を一層当たり3列に並べ、これを3層に積層する例を示している。
図13(a)では、ノズル13の吐出口13aが下から3層目の右端に位置しており、ノズル13は、白抜き矢印方向にセメント系材料Cを吐出しながら、
図13の紙面の奥方向に移動する。この場合、3層目の右端部に吐出されるセメント系材料Cの右の表面は造形物65の外面に当たるため、仕上げすべき面であると判別される。したがって、ノズル13の進行方向に向かって右側のコテ31Aが進出位置に来るように制御される。コテ31Aが進出位置にあるとき、コテ31Aの先端部(下端部)は、形成しようとする層の一つ下の層(ここでは下から2層目)の側面に当接するように位置される。
図13(b)では、ノズル13の吐出口13aが3層目の中央部に位置している。この場合、3層目の中央部に吐出されるセメント系材料Cの左右の表面は造形物65の内部に当たるため、仕上げすべき面ではないと判別され、コテ31A,31Bは退避位置に来るように制御される。ここで、
図13(b)においてコテ31Aが進出すると、形成済みの造形物65に当接してしまうことになり適切ではない。
また、本実施形態では、振動機構67は、コテ31A,31Bの先端部がセメント系材料Cの吐出方向に進出した位置にある際に、セメント系材料Cに振動を与えるように構成されている。すなわち、コテ31A,31Bが進出しているときにセメント系材料Cに振動が与えられる。
【0039】
図14(a)~(d)は、コテ31A,31Bの進出退避移動の制御についてさらに具体的に説明するための模式的な図である。
図14(a)は完成後の造形物65の模式的な正面図である。
図14(b)は形成途中の造形物65の下から1層目(下層)を示す模式的な平面図である。
図14(c)は形成途中の造形物65の2層目(上層)を進出位置にあるコテ31A,31Bとともに示す模式的な平面図である。
図14(d)は完成後の造形物65の模式的な斜視図である。
図14に示す造形物65は、水平方向に延びる長尺の構成部材A1~A6を一層当たり3列に並べ、これを2層に積層する例を示している。
【0040】
図14(b)に示すように、造形物65の1層目(下層)を形成する際、例えば矢印で示す方向にノズル13の吐出口13aが移動する。この際には、形成対象が造形物65の最下層(構成部材A1~A3)であるため、コテ31A,31Bは、退避位置に来るように制御される。
図14(c)に示すように、造形物65の2層目(上層)を形成する際、例えば矢印で示す方向にノズル13の吐出口13aが移動する。この際には、形成対象が造形物65の上層(構成部材A4~A6)であるため、上層と下層の間における縞模様を解消するため、コテ31A,31Bの進出退避移動が制御される。
【0041】
本実施形態では、造形物65の形成時における造形物65に対するコテ31A,31Bの3次元位置情報から、コテ31A,31Bを進出させたときに接触するであろうセメント系材料Cの表面が仕上げすべき面であるか否かが判別される。具体的には、コテ31A,31Bが進出時に接触するセメント系材料Cの表面が造形物65の外面に当たる場合に、仕上げすべき面であると判別される。したがって、
図14(c)に示すように、構成部材A4、および構成部材A4と構成部材A5との接続部分の形成時には、コテ31Aは進出位置、コテ31Bは退避位置に来るように制御される。構成部材A5の形成時には、コテ31A,31Bは、退避位置に来るように制御される。構成部材A5と構成部材A6との接続部分、および構成部材A6の形成時には、コテ31Aは退避位置、コテ31Bは進出位置に来るように制御される。
【0042】
次に、
図15~
図18を参照して、コテ31A,31Bを進出させたときに接触するセメント系材料Cの表面が仕上げすべき面であるか否かの判別方法、およびコテ31A,31Bの進出退避移動の決定方法について説明する。
1.準備
造形物65の3次元形状のデータを、スライサーを用いて、Gコードが記述された2次元データ(NC用プログラム)に変換する。
【0043】
2.堆積レイヤーデータ80(
図15(c)参照)の作成
(1)堆積レイヤーデータ80の初期化
図15(a)は、実際に堆積層が配置されるエリアである積層エリア70を示す図である。ここでは、堆積層は、外側の層71と、内側の層72とから構成されている。そして、積層エリア70に対応するピクセル数を持つビットマップファイルを作成する。ここで、各ピクセルのRGBデータは、すべてゼロとする。例えば、積層エリア70が500mm×500mm(横幅W1×縦幅H1)で、空間分解能が0.1mmの場合について考える。この場合、横方向ピクセル数W2および縦方向ピクセル数H2がともに500mm÷0.1mm=5000ピクセルのビットマップファイルが作成される。このビットマップファイルが、初期化された堆積レイヤーデータ80となる。
(2)Gコードの読み取り
スライサーが出力したGコードを1行ずつ読み込む。読み込んだ座標が移動先の座標となる。その際、X座標、Y座標、および吐出モータ(駆動モータ15)の回転角のデータ(エクストルーダ)がセットになった直線補間のGコード(指令)のみを使用する。つまり、移動のみの場合や吐出モータ回転のみの場合の指令は無視する。
直線補間のGコードは、例えば、G01 X10.0 Y10.0 A500である。ここで、G01:直線補間、X:X座標、Y:Y座標、A:吐出モータ回転角である。
【0044】
(3)ノズル13の中心の移動経路の作成
図15(b)に示すように、現在位置P1のXY座標および移動先位置P2のXY座標から、移動経路を表す直線の式を求め、適当に分割して、それぞれの座標を求める。求めた座標が、ノズル13の中心位置の移動経路となる。
(4)吐出範囲(吐出口径)の塗りつぶし
図15(b)に示すように、ノズル13の中心位置を中心とした円(吐出口径)を想定し、円の内側のピクセルを堆積領域73として塗りつぶす。ここでは、堆積領域73内の各ピクセルのRGBデータは、(red,green,blue)=(100,0,0)とする。
【0045】
(5)一つのレイヤー(層)についての処理が終わるまで、(2)から(4)を繰り返す。これにより、
図15(c)に示すように、堆積レイヤーデータ80が作成される。堆積レイヤーデータ80は、RGBデータがすべてゼロのピクセルからなる素地部81と、塗りつぶされたピクセルからなる堆積塗りつぶし部82とを有している。なお、本実施形態ではRGBデータのうちのRedしか使用していないので、RGBデータの代わりにグレイスケールのデータを使用することも可能である。また、画像ファイルのデータではなく、配列のデータを用いて判定することも可能である。
(6)一つのレイヤーについての処理が終わったら、ファイル(例えば、layer001.bmp,layer002.bmp)を保存する。
(7)すべてのレイヤーについての処理が終わるまで、(1)、(5)を繰り返す。
【0046】
3.コテ31A,31Bの進出退避移動の決定
(1)ノズル13中心の位置の読み取り
スライサーが出力したGコードを3行ずつ読み込む。その際、X座標、Y座標、吐出モータ回転角のデータがセットになった直線補間のGコード(指令)のみを使用する。1行目が一つ前のノズル13中心の位置(X0,Y0)、2行目が現在の位置(X1,Y1)、3行目が移動先の位置(X2,Y2)とする。
(2)ノズル13の進行方向θの計算
図16に示すように、ノズル13中心の現在の位置(X1,Y1)に対する一つ前の位置(X0,Y0)から移動先の位置(X2,Y2)に向かう直線方向が、現在の位置におけるノズル13の進行方向θとされる。すなわち、現在の位置(X1,Y1)におけるノズル13の進行方向θは、式(1)から求められる。
【0047】
【0048】
(3)コテ31A,31Bの位置の計算
図17に示すように、ノズル13中心の現在の位置(X1,Y1)と進行方向θから、左右のコテ31A,31Bの位置を求める。ここで、ノズル13中心と左右の31A,31Bとの相対的な位置関係は予め分かっているものとする。
【0049】
(4)コテ配置レイヤーデータ90A,90Bの作成
図15(c)に示す堆積レイヤーデータ80と同じピクセル数を持つビットマップファイルを作成する。ここで、各ピクセルのRGBデータは、すべてゼロとする。続いて、コテ31A,31Bに相当する部分を塗りつぶす。ここでは、塗りつぶされたピクセルのRGBデータは、(red,green,blue)=(100,0,0)とする。平面視で進行方向に向かって左のコテ31Bと右のコテ31Aとで、別ファイルを作成する。
図18(a)は、左のコテ31Bに相当する部分を塗りつぶして作成されたコテ配置レイヤーデータ90Bを示す図である。コテ配置レイヤーデータ90Bは、RGBデータがすべてゼロのピクセルからなる素地部91と、塗りつぶされたピクセルからなるコテ塗りつぶし部92Bとを有している。
図18(b)は、右のコテ31Aに相当する部分を塗りつぶして作成されたコテ配置レイヤーデータ90Aを示す図である。コテ配置レイヤーデータ90Aは、RGBデータがすべてゼロのピクセルからなる素地部91と、塗りつぶされたピクセルからなるコテ塗りつぶし部92Aとを有している。
【0050】
(5)仕上げすべき面であるか否かの判別(現在のレイヤー(層))
図19(a),(b)に示すように、コテ配置レイヤーデータ90A,90Bと堆積レイヤーデータ80のビットマップファイルをピクセルごとに加算(合成)することで、合成画像80A,80Bを作成する。合成画像80Aは、素地部81と、堆積塗りつぶし部82と、コテ塗りつぶし部92Aとを有している。ここでは、コテ塗りつぶし部92Aは、堆積塗りつぶし部82の上に重なっている。合成画像80Bは、素地部81と、堆積塗りつぶし部82と、コテ塗りつぶし部92Bとを有している。合成画像80A,80Bのピクセルの値を調べることで、コテ塗りつぶし部92A,92Bと堆積塗りつぶし部82との重なりを以下のように判定できる.
【0051】
すなわち、すべてのピクセルの値が、red≦100(green,blueはゼロ)である場合、「重なりなし」と判定される。一方、red=200(もしくはred>100)のピクセルがある(または所定ピクセル数以上ある)場合、「重なりあり」と判定される。そして、「重なりなし」と判定された場合、コテ31A,31Bが進出時に接触するセメント系材料Cの表面が仕上げすべき面であると判別される。
(6)仕上げすべき面であるか否かの判別(一つ下のレイヤー(層))
一つ下の堆積レイヤーデータに対して、(5)と同様の処理を実行する。
【0052】
(7)2次元データ(NC用プログラム)の修正
仕上げすべき面であるか否かの判別結果に基づいて、コテ31A,31Bの進出退避移動を制御するための指令を追加するように、2次元データを修正する。
すなわち、現在のレイヤーおよび一つ下のレイヤーのどちらも「重なりなし」の場合、コテ31A,31Bは進出位置と決定する(仕上げあり)。一方、現在のレイヤーあるいは一つ下のレイヤーが「重なりあり」の場合、コテ31A,31Bは退避位置と決定する(仕上げなし)。この決定は、右のコテ31Aと左のコテ31Bとで別々に行われる。
(8)一つのレイヤーについての処理が終わるまで、(1)から(7)を繰り返す。
(9)すべてのレイヤーについての処理が終わるまで(8)を繰り返す。
このような2次元データの修正は、制御装置5のコンピュータ51が所定のプログラムを実行することで効率的に行うが、マニュアルで行うことも可能である。
なお、サーボモータ45の代わりに、ステッピングモータを用いる場合には、ノズル13の進行方向θを事前に解析し、解析されたノズル13の進行方向θに基づく回転機構部40の回転角の情報をGコードに追加するように修正された2次元データを使用する。
そして、修正された2次元データに基づいてノズル13からセメント系材料Cを吐出するとともにコテ31A,31Bの進出退避移動を制御することで、表面の仕上げが行われた立体的な造形物を形成できる。
【0053】
前記したように、本実施形態の立体造形システム100は、セメント系材料Cを吐出するノズル13と、ノズル13に取り付けられ、ノズル13から吐出されたセメント系材料Cの表面を仕上げる仕上げ装置3とを備える。仕上げ装置3は、ノズル13から吐出されたセメント系材料Cの表面に接触するコテ31A,31Bと、セメント系材料Cに振動を与える振動機構67とを有している。
本実施形態では、セメント系材料Cに振動を与えて流動化を促進させるとともに、コテ31A,31Bがセメント系材料Cの表面に接触した状態でノズル13が進行することで、表面の仕上げを行うことができる。しかも、セメント系材料Cの流動化を促進させることができるため、コンシステンシーが異なる各種の材料(配合)を使用する場合や、同じ材料であっても積層中にコンシステンシーが時間的に変化する場合にも、対応可能となる。これにより、層間の縞模様が解消され、仕上げ面が平滑となる。表面の仕上げを実施することによって層間の不連続面の形成が抑制されるため、造形物の耐久性の向上が期待できる。また、造形物の美観の向上、構造耐力低下の抑制も期待できる。
このように、本発明によれば、セメント系材料Cを積層して立体的な造形物を形成する場合において、層間の縞模様を解消することができる。
【0054】
また、本実施形態では、振動機構67は、コテ31A,31Bにそれぞれ設けられている。この構成では、ノズル13から吐出されたセメント系材料Cの表面に接触するコテ31A,31Bを振動させることができるため、セメント系材料Cの表面を直接的に流動化させて効率良く仕上げることができる。なお、振動機構67は、コテ31A,31Bに設けられることに限定されず、例えばノズル13の外周面上に設けられてもよい。
また、本実施形態では、コテ31A,31Bは、セメント系材料Cの吐出方向に進出した位置へ先端部が来るように移動可能である。この構成では、コテ31A,31Bを進出させたとき接触するセメント系材料Cの表面が仕上げすべき面である場合に、コテ31A,31Bを進出させて表面の仕上げを行うことができる。
また、本実施形態では、振動機構67は、コテ31A,31Bにそれぞれ設けられるとともに、コテ31A,31Bの先端部がセメント系材料Cの吐出方向に進出した位置にある際に、セメント系材料Cに振動を与える。この構成では、コテ31A,31Bをセメント系材料Cの表面に接触させて表面の仕上げを行うときに、セメント系材料Cに振動を与えることができる。すなわち、必要なときにコテ31A,31Bを介してセメント系材料Cに振動を効率的に与えることができ、不必要に振動を与えることはない。
【0055】
また、本実施形態では、コテ31A,31Bは、ノズルの中心軸側の面において、導入部312A,312Bと、仕上げ部313A,313Bとをそれぞれ有している。導入部312A,312Bは、ノズル13の移動方向に平行である。仕上げ部313A,313Bは、ノズル13の進行方向において導入部312A,312Bよりも後方に位置されている。この場合、仕上げ部313A,313Bは、導入部312A,312Bよりも、ノズル13の中心軸CLを通りノズル13の進行方向に沿う直線に近い位置に配置されている。この構成では、ノズル13から吐出したセメント系材料Cを導入部312A,312Bに導入した後に、セメント系材料Cの表面に確実にコテ31A,31Bの仕上げ部313A,313Bを接触させて表面の仕上げを行うことができる。
【0056】
また、本実施形態では、立体造形システム100は、振動機構67により発生する起振力を手動で調整するための調整部58を備えている。この構成では、使用するセメント系材料Cのコンシステンシーに応じて、振動機構67により発生する起振力を、調整部58によって調整することができる。例えば偏心重錘を振動モータ68で回転させる振動機構67では、調整部58を用いて振動モータ68の回転数を変えることで起振力を手動で調整できる。また、造形物の形成中に振動モータ68の回転数を変えることができ、セメント系材料Cのコンシステンシーの変化を見ながら起振力を柔軟に調整することができる。これにより、セメント系材料Cの表面の仕上げをより良好に行うことができる。なお、調整部58を用いて偏心重錘の偏心モーメント量を変えることで起振力を手動で調整できるように構成されてもよい。
【0057】
[第2実施形態]
次に、
図20を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
図20は、第2実施形態において振動機構67により発生する起振力の自動調整を説明するためのブロック図である。第2実施形態は、振動機構67により発生する起振力を自動調整する点で、手動調整する第1実施形態と相違している。なお、第1の実施形態と共通する点についての説明は省略する。
【0058】
図20に示すように、検出部59は、セメント系材料Cのコンシステンシーに関する流動性情報を検出する。本実施形態では、検出部59は、セメント系材料Cをノズル13から定量吐出させるようにスクリュ14を駆動する駆動モータ15の回転数に対応する情報を流動性情報として検出する。すなわち、検出部59は、モータコントローラ55から、モータ回転数係数mを受け取ることで、モータ回転数係数mを流動性情報として検出する。そして、制御部54は、検出部59によって検出された流動性情報としてのモータ回転数係数mに基づいて、振動機構67により発生する起振力を制御する。
【0059】
具体的には、制御部54は、m>1.0の場合、つまり吐出量が想定値よりも少ない場合、セメント系材料Cの流動性が想定よりも低下していると判断して、振動モータ68の回転数を増加させる。これにより、起振力が増大して、セメント系材料Cの流動性が促進される。制御部54は、m=1.0の場合、つまり吐出量が想定値通りの場合、セメント系材料Cの流動性が想定通りと判断して、振動モータ68の回転数を変更しない。これにより、起振力は変化せず、セメント系材料Cの流動性が維持される。一方、制御部54は、m<1.0の場合、つまり吐出量が想定値よりも多い場合、セメント系材料Cの流動性が想定よりも上昇していると判断して、振動モータ68の回転数を減少させる。これにより、起振力が低下して、セメント系材料Cの流動性が抑制される。
【0060】
起振力の補正係数Aは、以下の式で定義される。
A=P/P0=(f/f0)2=(N/N0)2
周波数または回転数の補正係数Bは、以下の式で与えられる。
B=(f/f0)=(N/N0)=A1/2
P:補正後の起振力
P0:起振力の初期値(対象とする材料でm=1.0のときに良好な仕上げが得られる起振力)
f:補正後の周波数
fo:周波数の初期値(対象とする材料でm=1.0のときに良好な仕上げが得られる周波数)
N:補正後の回転数
No:回転数の初期値(対象とする材料でm=1.0のときに良好な仕上げが得られる振動モータ68の回転数)
起振力の補正係数Aは、m=1.0のときにA=1.0となるモータ回転数係数mの関数であり、例えば以下の式で与えられる。
A=αm-1
α:1よりも大きい任意の数値(例えば実験で決定される)
この場合、回転数の補正係数Bは、以下の式で求められる。
B=A1/2=(αm-1)1/2
【0061】
制御部54は、検出部59によって検出された流動性情報としてのモータ回転数係数mから得られた回転数の補正係数Bに基づいて振動モータ68を制御するための指令値を生成して、ノズル側制御部56に送信する。ノズル側制御部56は、制御部54から受け取った指令値に基づいてPWM信号を生成し、モータドライバ57に送信する。モータドライバ57は、受信したPWM信号に応じた電圧を、振動機構67の振動モータ68に出力する。このように、制御部54からの指令値に応じた電圧によって振動モータ68の回転数が変更されることで、振動機構67により発生する起振力が調整される。
【0062】
このような第2実施形態では、立体造形システム100は、検出部59と、制御部54とを備えている。この場合、検出部59は、セメント系材料Cのコンシステンシーに関する流動性情報を検出し、制御部54は、検出部59によって検出された流動性情報に基づいて、振動機構67により発生する起振力を制御する。この構成では、検出部59によって検出されたセメント系材料Cの流動性情報を用いて、振動機構67により発生する起振力を、制御部54によって自動的に制御することができる。具体的には、例えば偏心重錘を振動モータ68で回転させる振動機構では、制御部54によって振動モータ68の回転数を変えることで起振力を自動的に調整できる。これにより、セメント系材料Cの表面の仕上げをより良好に行うことができる。
【0063】
また、第2実施形態では、検出部59は、セメント系材料Cをノズル13から定量吐出させるようにスクリュ14を駆動する駆動モータ15の回転数に対応する情報であるモータ回転数係数mを流動性情報として検出する。この構成では、セメント系材料Cをノズルから定量吐出するフィードバック制御を行う場合に得られるモータ回転数係数mを、流動性情報として利用することができる。
なお、検出部59は、モータ回転数係数mを検出する場合に限定されるものではない。検出部59は、例えばレーザ変位計を使用して非接触でセメント系材料Cの表面粗さを検出し、流動性情報と置き換えてもよい。この場合、セメント系材料Cの表面粗さが大きいほど、コンステンシーが大きいと判断できる。また、検出部59は、例えば撮像装置を使用して撮像されたセメント系材料Cの表面の画像から認識された表面のきめ細かさや輝度等の情報を流動性情報として検出してもよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、前記実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、ノズル13から吐出されたセメント系材料Cの表面に対する仕上げの有無は、例えば円環形状の層の内側と外側とで独立して設定可能である。例えば円筒形状の造形物の外側のみを仕上げ、内側は仕上げずに敢えて凹凸を残すことができる。この場合、円筒形状の造形物の内部に例えばコンクリートを打ち込んだ場合に、両者の付着力を高めて一体化させることが可能である。また、表面の内外での仕上げの使い分けだけでなく、一つの面内でその一部のみを仕上げることも可能であり、デザインの自由度が拡大する。
コテ31A,31Bの導入部312A,312Bと仕上げ部313A,313Bとは、間に段差が形成されているが、これに限定されるものではなく、同一平面上に存在していてもよい。この場合の平面は、ノズル13の中心軸CLを通りノズル13の進行方向に沿う直線Lに平行、または仕上げ部313A,313Bの方が導入部312A,312Bよりも直線Lに近くなるように傾斜していることが好ましい。
前記実施形態では、コテ31A,31Bは、セメント系材料の吐出方向に進出移動、および吐出方向とは反対方向に退避移動可能に構成されている。つまり、前記実施形態では、コテ31A,31Bは、直線方向に移動させられるように構成されているが、これに限定されるものではない。
図21は、変形例に係るコテ部30Cを説明するための模式的な側面図である。
図21に示すように、コテ部30Cは、サーボモータ33Aと、第1リンク302Cと、第2リンク303Cと、コテ31Cとを有している。第1リンク302Cは、一端がサーボモータ33Aによって回転させられる軸301Cに固定され、他端が第2リンク303Cの一端に回動可能に連結されている。第2リンク303Cの他端は、コテ31Cの先端部に回動可能に連結されている。コテ31Cの基端部は、ヒンジ304Cに回動可能に連結されている。つまり、コテ31Cは、回転方向に移動、すなわちヒンジ304Cを中心として回動させられることで、セメント系材料の吐出方向に進出した位置へコテ31Cの先端部が来るように構成されている。この場合、第1リンク302Cを矢印Aで示す方向に回動させるとコテ31Cの先端部が下がり、第1リンク302Cを矢印Bで示す方向に回動させるとコテ31Cの先端部が上がる。コテ31Dも、コテ31Cを回動させる機構と同様な構成(図示省略)によって回動させることができる。
ノズル支持装置2の構成は、ノズル装置1を3次元的に移動させることが可能であれば特に限定されるものではなく、例えば多軸式ロボットアームの先端にノズル装置1を装着して支持してもよい。この場合、ロボットアームの動作によってノズル13とともにコテ31A,31Bを回転させることができるため、回転機構部40を省略してもよい。
また、前記実施形態では、ノズル装置1を3次元的に移動させる立体造形システム100について説明したが、これに限定されるものではない。立体造形システム100の構成は、例えば、ノズル装置1が平面移動するとともに造形物が形成される製作テーブルが上下動することで立体的な造形物が形成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 ノズル装置
13 ノズル
14 スクリュ
15 駆動モータ
2 ノズル支持装置
3 仕上げ装置
31A,31B コテ
312A,312B 導入部
313A,313B 仕上げ部
5 制御装置
54 制御部
55 モータコントローラ
58 調整部
59 検出部
65 造形物
67 振動機構
100 立体造形システム
C セメント系材料
CL 中心軸
L 直線
m モータ回転数係数(流動性情報)
θ 進行方向