(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018368
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】昇圧接続回路、電力変換システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20230201BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122444
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】安藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】石田 真之
(72)【発明者】
【氏名】吉松 昂洋
(72)【発明者】
【氏名】神野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】村田 之広
(72)【発明者】
【氏名】西川 修平
(72)【発明者】
【氏名】森田 聖史
(72)【発明者】
【氏名】合田 智哉
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA12
5H730AA20
5H730AS04
5H730BB14
5H730DD03
5H730DD04
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD41
5H730FF09
5H730FG05
5H730FV00
5H730FV05
5H730XX12
5H730XX23
5H730XX32
(57)【要約】
【課題】種々の電力変換装置に接続可能な汎用性の高い昇圧接続回路を実現する。
【解決手段】昇圧回路(11)は、第1の直流電源(PV1)より開放電圧が低い第2の直流電源(PV2)から出力される直流電力の電圧を昇圧できる。合流出力配線(Wb)は、昇圧回路(11)の出力配線(Wb)と、第1の直流電源(PV1)の出力配線(W1)が合流した配線であり、昇圧接続回路(10)から供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置(20)に接続される。昇圧接続回路(10)は、電力変換装置(20)の最大入力電圧を超えないように、昇圧回路(11)の最大出力電圧の設定を切替えることが可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の直流電源より開放電圧が低い第2の直流電源から出力される直流電力の電圧を昇圧可能な昇圧回路と、
前記昇圧回路の出力配線と、前記第1の直流電源の出力配線が合流した合流出力配線と、
前記昇圧回路を制御する制御部と、を備え、
前記合流出力配線は、本昇圧接続回路から供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に接続され、
本昇圧接続回路は、前記電力変換装置の最大入力電圧を超えないように、前記昇圧回路の最大出力電圧の設定を切替えることが可能であることを特徴とする昇圧接続回路。
【請求項2】
前記合流出力配線の電圧を検出する電圧センサをさらに備え、
前記制御部は、前記電力変換装置と前記昇圧回路の停止中において、前記電圧センサで検出される電圧に応じて、前記電力変換装置の最大入力電圧を推定し、推定した最大入力電圧以下の電圧値に、前記昇圧回路の最大出力電圧の設定値を決定することを特徴とする請求項1に記載の昇圧接続回路。
【請求項3】
前記第1の直流電源および前記第2の直流電源は太陽電池であり、
前記制御部は、前記電力変換装置が動作中で前記昇圧回路の停止中において、前記電圧センサで検出される電圧に、前記太陽電池の最大出力点電圧に対する開放電圧の比率を掛けて得られる電圧に応じて、前記電力変換装置の最大入力電圧を推定することを特徴とする請求項2に記載の昇圧接続回路。
【請求項4】
前記制御部は、ユーザ操作に基づき、前記昇圧回路の最大出力電圧の設定値を決定することを特徴とする請求項1に記載の昇圧接続回路。
【請求項5】
前記合流出力配線の電圧を検出する電圧センサをさらに備え、
前記制御部は、前記ユーザ操作に基づき決定された前記昇圧回路の最大出力電圧の設定値が、前記電圧センサで検出される電圧から推定される前記電力変換装置の最大入力電圧を超えている場合、当該最大入力電圧以下の電圧値に、前記昇圧回路の最大出力電圧の設定値を切替えることを特徴とする請求項4に記載の昇圧接続回路。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の昇圧接続回路と、
前記昇圧接続回路から供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置と、
を備えることを特徴とする電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、出力電圧が異なる複数の直流電源の出力を統合するための昇圧接続回路、電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーへの注目が集まる中、太陽光発電システムの普及が拡大している。複数の太陽電池ストリングが設置される太陽光発電システムにおいて、パワーコンディショナの前段に、複数の太陽電池ストリングで発電された直流電流を統合するための接続箱が設置されることがある。
【0003】
屋根の形状などにより、複数の太陽電池ストリングのそれぞれを構成する太陽電池モジュールの枚数を統一できない場合がある。その場合、パワーコンディショナの前段に昇圧機能付接続箱が設置される。昇圧機能付接続箱は、太陽電池モジュールの直列数が少ない太陽電池ストリングの電圧を、標準の太陽電池ストリングの電圧まで昇圧して各太陽電池ストリングの直流電流を統合する機能を有する(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-10232号公報
【特許文献2】特開2013-218503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パワーコンディショナの負荷変動により、パワーコンディショナの前段に接続された昇圧機能付接続箱の出力電圧が上昇する場合がある。昇圧機能付接続箱の出力電圧が、パワーコンディショナの最大入力電圧を超えた場合、パワーコンディショナで入力過電圧エラーが発報される。また、パワーコンディショナ内で使用されている部品が耐圧超過し、部品に不具合が発生する場合がある。
【0006】
パワーコンディショナには、最大入力電圧が異なる複数の機種が存在し、接続される太陽電池ストリングの開放電圧に応じて、機種が選定される。昇圧機能付接続箱は、最大出力電圧が異なる複数の機種が用意され、接続されるパワーコンディショナの最大入力電圧に応じて機種が選定されていた。
【0007】
昇圧機能付接続箱として複数の機種を用意することは、製造コストの上昇に繋がる。また、人的ミスにより、施工時に誤った機種の昇圧機能付接続箱を、パワーコンディショナに接続してしまうリスクがある。
【0008】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、種々の電力変換装置に接続可能な汎用性の高い昇圧接続回路、電力変換システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の昇圧接続回路は、第1の直流電源より開放電圧が低い第2の直流電源から出力される直流電力の電圧を昇圧可能な昇圧回路と、前記昇圧回路の出力配線と、前記第1の直流電源の出力配線が合流した合流出力配線と、前記昇圧回路を制御する制御部と、を備える。前記合流出力配線は、本昇圧接続回路から供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に接続され、本昇圧接続回路は、前記電力変換装置の最大入力電圧を超えないように、前記昇圧回路の最大出力電圧の設定を切替えることが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、種々の電力変換装置に接続可能な汎用性の高い昇圧接続回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る太陽光発電システムの構成例を示す図である。
【
図3】太陽電池モジュールの電力-電圧特性(P-V曲線)を示す図である。
【
図4】最大出力電圧の切り替え機能を有する昇圧接続箱の操作部の一例を示す図である。
【
図5】最大出力電圧の切り替え機能を有する昇圧接続箱の操作部の別の例を示す図である。
【
図6】
図5に示した操作部の使用例を説明するための図である。
【
図7】昇圧機がパワコンの最大入力電圧を自動判定する際の波形推移の一例を示す図である。
【
図8】昇圧機がパワコンの最大入力電圧を自動判定する際の波形推移の別の例を示す図である。
【
図9】複数の種類の太陽電池モジュールの最大出力電力Pmax(W)、最大出力動作電圧Vpm(V)、開放電圧Voc(V)、最大出力電流Imax(A)、短絡電流Isc(A)、定数βをまとめたグラフを示す図である。
【
図10】実施の形態に係る、昇圧機による最大出力電圧の切り替え処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図10のステップS20に示したパワコンの最大入力電圧の自動判定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施の形態に係る太陽光発電システムの構成例を示す図である。
図1に示す太陽光発電システムは、複数の太陽電池ストリングPV1、PV2と電力変換システム1を備える。電力変換システム1は、昇圧機能付接続箱(以下適宜、昇圧接続箱または単に昇圧機と呼ぶ)10と電力変換装置20を備える。
【0013】
第1太陽電池ストリングPV1は、直列接続された複数の太陽電池モジュール(太陽光パネル)を含む。第2太陽電池ストリングPV2は、第1太陽電池ストリングPV1より直列数が少ない太陽電池モジュールを含む。例えば、第1太陽電池ストリングPV1は5枚の太陽電池モジュールを含み、第2太陽電池ストリングPV2は3枚の太陽電池モジュールを含んでいてもよい。
【0014】
各太陽電池モジュールは、直列接続された複数の太陽電池セルを含む。太陽電池セルは、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接、直流電力に変換することができる。太陽電池セルとして、ヘテロ接合太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、単結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、化合物系太陽電池などを使用することができる。
【0015】
昇圧接続箱10は、昇圧回路11、制御部12、操作部13、第1入力端子IN1、第2入力端子IN2、第1開閉器RY1、第2開閉器RY2、逆流防止ダイオードD1、出力端子OUT、入力電圧センサV1、入力電流センサA1、出力電圧センサV2および出力電流センサA2を含む。
【0016】
第2太陽電池ストリングPV2は第1太陽電池ストリングPV1より直列数が少ないため、第1太陽電池ストリングPV1より開放電圧が低い。第1太陽電池ストリングPV1は第1入力端子IN1に接続され、第1入力端子IN1に入力された電力が、出力配線W1に供給される。出力配線W1には、第1開閉器RY1と逆流防止ダイオードD1が接続される。第2太陽電池ストリングPV2は第2入力端子IN2に接続され、第2入力端子IN2に入力された電力が、第2開閉器RY2を介して出力配線W2に供給され、さらに昇圧回路11に接続される。
【0017】
第1太陽電池ストリングPV1の出力配線W1と、昇圧回路11の出力配線Wbは端子台(不図示)で合流され、端子台と電力変換装置20の入力端子との間が合流出力配線Wmで接続される。以下、本明細書では第1太陽電池ストリングPV1と端子台との間の回路を標準回路系、第2太陽電池ストリングPV2と端子台との間の回路を昇圧回路系と呼ぶ。
【0018】
昇圧回路11は、第2太陽電池ストリングPV2から出力される直流電力の電圧を昇圧可能なDC/DCコンバータである。昇圧回路11は、第2太陽電池ストリングPV2の出力電圧を標準回路系の電圧まで昇圧させることにより、第1太陽電池ストリングPV1の出力電力と第2太陽電池ストリングPV2の出力電力を統合して、出力端子OUTを介して電力変換装置20に供給することができる。
【0019】
入力電圧センサV1は、第2太陽電池ストリングPV2の出力配線W2の電圧を検出して制御部12に出力する。入力電流センサA1は、第2太陽電池ストリングPV2の出力配線W2に流れる電流を検出して制御部12に出力する。出力電圧センサV2は、合流出力配線Wmの電圧を検出して制御部12に出力する。出力電流センサA2は、合流出力配線Wmに流れる電流を検出して制御部12に出力する。
【0020】
入力電圧センサV1、出力電圧センサV2は例えば、分圧抵抗と差動増幅器を含んで構成される。入力電流センサA1、出力電流センサA2は例えば、CTセンサやホールセンサを含んで構成される。
【0021】
操作部13は、施工者あるいはユーザの操作を受け付け、操作信号を制御部12に出力する。
【0022】
制御部12は、各センサから入力される電圧、電流をもとに昇圧回路11を制御する。制御部12は、昇圧回路11の昇圧動作を制御して、入力電圧センサV1で検出される電圧および入力電流センサA1で検出される電流を制御することで、第2太陽電池ストリングPV2の発電電力を最適化することができる(詳細は後述する)。
【0023】
制御部12は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコントローラ、DSP、ROM、RAM、ASIC、FPGA、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源として、ファームウェアなどのプログラムを利用できる。
【0024】
図2は、昇圧回路11の回路構成例を示す図である。
図2に示す昇圧回路11は、入力コンデンサC1、リアクトルL1、ダイオードD2、スイッチング素子S1および出力コンデンサC2を含む昇圧チョッパである。
【0025】
第2太陽電池ストリングPV2の出力配線W2のプラス配線とマイナス配線間に、入力電圧センサV1と平滑用の入力コンデンサC1が接続される。第2太陽電池ストリングPV2の出力配線W2のプラス配線にリアクトルL1が挿入される。第2太陽電池ストリングPV2の出力配線W2のマイナス配線上に入力電流センサA1が設置される。なお、プラス配線上に設置されてもよい。
【0026】
昇圧回路11の出力配線Wbのプラス配線とマイナス配線間に、スイッチング素子S1と平滑用の出力コンデンサC2が接続される。昇圧回路11のスイッチング素子S1と出力コンデンサC2間のプラス配線にダイオードD2が直列に接続される。スイッチング素子S1とダイオードD2間のノードにリアクトルL1が接続される。ダイオードD2は、昇圧回路11の出力側からの電流の逆流を防止する。
【0027】
スイッチング素子S1には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を使用することができる。リアクトルL1は、スイッチング素子S1のオン/オフに応じて、第2太陽電池ストリングPV2からの出力電流に基づくエネルギーの蓄積および放出を行う。
【0028】
制御部12は、スイッチング素子S1のオン/オフの比率(デューティ比)を制御することにより、昇圧比を制御することができる。制御部12は第2太陽電池ストリングPV2の出力電力(発電電力)が最大になるように昇圧回路11をMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御することができる。
【0029】
図3は、太陽電池モジュールの電力-電圧特性(P-V曲線)を示す図である。太陽電池モジュールの開放電圧Vocと、最大出力電力Pmaxで動作する最大出力動作電圧Vpmとの間の電圧範囲では、動作電圧Vを低下させるほど出力電力Pが増加する。最大出力動作電圧Vpmより下側の電圧範囲では、動作電圧Vを低下させるほど出力電力Pが低下する。MPPT制御では、最大出力電力Pmaxが維持されるように動作電圧Vが制御される。
【0030】
制御部12は、入力電圧センサV1で検出された第2太陽電池ストリングPV2の出力電圧と、入力電流センサA1で検出された第2太陽電池ストリングPV2の出力電流をもとに、第2太陽電池ストリングPV2の出力電力を検出する。制御部12は、第2太陽電池ストリングPV2の出力電圧と出力電力の関係をもとに、第2太陽電池ストリングPV2の出力電力を最大にするための電圧指令値を生成する。
【0031】
制御部12は例えば、山登り法にしたがい動作電圧Vを所定のステップ幅で変化させて最大出力電力Pmaxの動作点を探索する。例えば、
図3の最大出力電力Pmaxの動作点の左側では、現在の動作電圧Vを右側にシフトさせるための電圧指令値を生成し、最大出力電力Pmaxの動作点の右側では、現在の動作電圧Vを左側にシフトさせるための電圧指令値を生成する。制御部12は、最大出力電力Pmaxの動作点を捉えると最大出力電力Pmaxの動作点を維持するように電圧指令値を生成する。昇圧回路11のスイッチング素子S1は、生成された電圧指令値に基づく駆動信号に応じてスイッチング動作する。
【0032】
図1に戻る。電力変換装置20は、太陽光発電システムにおいて直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナである。電力変換装置20は、DC/DCコンバータ21、インバータ22および制御部23を備える。
【0033】
DC/DCコンバータ21は、昇圧接続箱10により統合された直流電力の電圧を調整可能なコンバータである。DC/DCコンバータ21には例えば、
図2に示したような昇圧チョッパを使用することができ、このDC/DCコンバータ21はインバータ22に接続される。
【0034】
インバータ22は、DC/DCコンバータ21から供給される直流電力を交流電力に変換して、変換した交流電力を、分電盤(不図示)を介して商用電力系統2に出力することができる。なお、分電盤には宅内の負荷(不図示)が接続されており、インバータ22は変換した交流電力を、分電盤を介して負荷にも供給することができる。
【0035】
制御部23は電力変換装置20全体を統括的に制御する。制御部23は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコントローラ、DSP、ROM、RAM、ASIC、FPGA、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源として、ファームウェアなどのプログラムを利用できる。
【0036】
制御部23は、DC/DCコンバータ21の入力電圧が目標値が低い場合にインバータ22の入力電圧が目標値となるように昇圧するとともに、第1太陽電池ストリングPV1と第2太陽電池ストリングPV2の統合された入力電力が最大になるようDC/DCコンバータ21をMPPT制御する。制御部23は、DC/DCコンバータ21とインバータ22間の電圧が目標値を維持するようにインバータ22を制御する。具体的には制御部23は、インバータ22の入力電圧を目標値に一致させるための電流指令値を生成する。制御部23は、インバータ22の入力電圧が目標値より高い場合はインバータ22の出力電力を増加させるための電流指令値を生成し、インバータ22の入力電圧が目標値より低い場合はインバータ22の出力電力を低下させるための電流指令値を生成する。インバータ22は、生成された電流指令値に基づく駆動信号に応じてスイッチング動作する。
【0037】
上述した昇圧回路11には、後段の部品を保護するために出力電圧にリミッタ値が設定される。制御部12は、昇圧回路11の出力電圧がリミッタ値を超えないように制御する。具体的には制御部12は、昇圧回路11の出力電圧がリミッタ値に到達すると、スイッチング素子S1のデューティ比を低下させて出力電圧を低下させるか、スイッチング素子S1をオフして昇圧回路11の動作を停止させる。
【0038】
電力変換装置20(以下適宜、パワコンと呼ぶ)は、出力制御(出力抑制ともいう)や負荷変動などで出力電力が減少すると、入力電力を減少させるように制御する。この制御により、昇圧接続箱10の出力電圧が上昇することがある。
【0039】
上述したようにパワコンには、最大入力電圧が異なる複数の機種が存在する。例えば、最大入力電圧が450Vの機種(以下、450V入力パワコンという)、最大入力電圧が380Vの機種(以下、380V入力パワコンという)が存在する。
【0040】
例えば、380V入力パワコンに、450Vまで昇圧可能な昇圧接続箱10を接続した場合、昇圧回路11の出力電圧が380V以上になると、380V入力パワコンの最大入力電圧を超えてしまう。この場合、入力過電圧エラーで380V入力パワコンが停止する。
【0041】
これに対してメーカ側は、パワコンのスペックに応じた複数の昇圧接続箱10を用意している。施工者は、使用するパワコンのスペックに適合した昇圧接続箱10を選択し、太陽光発電システムを施工している。
【0042】
しかしながら、施工者の発注ミスなどにより、パワコンと昇圧接続箱10が不適切な組み合わせで、太陽光発電システムが組まれてしまうことがあった。その場合、商品交換あるいは買い替えが必要になり、ユーザおよび施工者にとって大きな負担となる。
【0043】
ここで、450V入力パワコン、開放電圧の範囲が380~450Vの太陽電池ストリング、最大出力電圧が380Vに設定された昇圧接続箱10(以下、380V出力昇圧機という)で太陽光発電システムが組まれた場合を考える。この場合、太陽電池モジュールの割付を見直して開放電圧が380V未満になるようにストリング構成を変更すれば、商品交換などは不要である。しかしながら、施工者の負担が大きくなる。
【0044】
次に、380V入力パワコン、開放電圧の範囲が380V未満の太陽電池ストリング、最大出力電圧が450Vに設定された昇圧接続箱10(以下、450V出力昇圧機という)で太陽光発電システムが組まれた場合を考える。この場合、450V出力昇圧機は38Vを超える出力電圧を許容するため、380V入力パワコンに最大入力電圧を超える電圧が入力され、380V入力パワコンがエラー発報して停止する可能性がある。また、380V入力パワコン内の部品故障に繋がる。
【0045】
昇圧機を提供するメーカ側にとって、パワコンのスペックに応じた複数の種類の商品をラインナップすることは、生産、サービス、管理面で負担がかかるものとなっている。
【0046】
これに対して本実施の形態では、昇圧機自体に最大出力電圧の切り替えができる機能を搭載した昇圧機を提供する。これにより、施工者はパワコンと昇圧機の組み合わせを意識する必要がなくなり、施工者の負担が軽減される。メーカ側においても、パワコンのスペックに応じた複数の種類の商品をラインナップしておく必要がなくなり、生産、サービス、管理面の負担が軽減される。
【0047】
図4は、最大出力電圧の切り替え機能を有する昇圧接続箱10の操作部13の一例を示す図である。
図4に示す操作部13は、第1スライドスイッチSW1と第2スライドスイッチSW2を備える。第1スライドスイッチSW1は、自動判定モードと手動設定モードを切り替えるためのスイッチである。第2スライドスイッチSW2は、昇圧機の最大出力電圧を切り替えるためのスイッチである。
図4では、最大出力電圧として450Vと380Vを設定できる例を示している。第2スライドスイッチSW2による選択は、第1スライドスイッチSW1で手動設定モードが選択されている場合に有効となる。施工者は、施工時にパワコンの最大入力電圧に応じて、昇圧機の最大出力電圧を設定することができる。
【0048】
なお、パワコンの最大入力電圧の種類が2種類以上あるときは、その種類数に応じてスライドスイッチの数やスライドスイッチの選択ポイントの数を増加させ、選択できる種類数を増加させればよい。
【0049】
図5は、最大出力電圧の切り替え機能を有する昇圧接続箱10の操作部13の別の例を示す図である。
図5に示す操作部13は、7セグ表示器13a、複数のプッシュボタンB1~B4を備える。第1プッシュボタンB1は「MODE」ボタンであり、第2プッシュボタンB2は「UP」ボタンであり、第3プッシュボタンB3は「DOWN」ボタンであり、第4プッシュボタンB4は「ENTER」ボタンである。
【0050】
図6は、
図5に示した操作部13の使用例を説明するための図である。施工者は「MODE」ボタンを数回押下し、最大出力電圧設定モードを選択する。選択の確定は「ENTER」ボタンの押下で行う。次に設定値を選択する。「UP」ボタン、「DOWN」ボタンを押下して目的の設定値を選択する。
図6に示す例では、「AUto」(=自動判定)、「380」(最大出力電圧380V設定)、「450」(最大出力電圧450V設定)の3パターンの中から「450」を選択する例である。
【0051】
なお、最大出力電圧は、設定の範囲内で10V刻みで設定できてもよい。所望の電圧値を選択した状態で、「ENTER」ボタンを押下し、最大出力電圧の設定を確定する。このように
図5、
図6に示す例では、7セグ表示器13a、複数のプッシュボタンB1~B4を用いて、最大出力電圧の設定を切り替える。
【0052】
以上のように切り替えられた設定にしたがって、昇圧機は出力電圧が、設定された最大出力電圧を超えた状態になった場合、昇圧動作を停止あるいは昇圧比を低下させて、最大出力電圧を超えないように制御する。
【0053】
次に、最大出力電圧の自動切り替え機能について説明する。太陽光発電システムで使用されるパワコンには入力電圧の制限があり、太陽電池モジュールの直列数は、太陽電池ストリングの開放電圧がパワコンの最大入力電圧を超えないように決定される。例えば、380V入力パワコンが使用されるシステムでは、太陽電池ストリングの開放電圧が380V未満になるように太陽電池モジュールの直列数が決定される。また、450V入力パワコンが使用されるシステムでは、太陽電池ストリングの開放電圧が450V未満になるように太陽電池モジュールの直列数が決定される。
【0054】
太陽電池モジュールは、低温時に公称開放電圧より電圧が上昇する特性を有する。多くのケースでは、低温時の特性を考慮して、太陽電池ストリングの開放電圧が、パワコンの最大入力電圧近辺ではなく、パワコンの最大入力電圧より所定値以上低い電圧になるように、太陽電池モジュールの直列数が決定される。
【0055】
したがって、太陽光発電システムに使用されている太陽電池ストリングの開放電圧が380Vを超えている場合、当該太陽光発電システムでは、380V入力パワコンではなく、450V入力パワコンが使用されていると判断できる。また、太陽電池ストリングの開放電圧が380V以下の場合、380V入力パワコンが使用されていると判断できる。
【0056】
450V入力パワコンが使用されている場合であっても、太陽電池ストリングの開放電圧が380V以下になっている太陽光発電システムも存在する。仮に昇圧機の自動判定機能(詳細は後述する)により、昇圧機が450V入力パワコンではなく380V入力パワコンが接続されていると判断し、最大出力電圧を380Vに制限した場合、昇圧機の出力電圧はパワコンの最大入力電圧を超えない。したがって、上述したエラー停止などの問題は発生しない。また、システム上も開放電圧以下で動作するため、発電量が低下するなどの問題も発生しない。
【0057】
このように、昇圧機に接続される太陽電池ストリングの開放電圧が分かれば、昇圧機は、接続されるパワコンの最大入力電圧に応じた最大出力電圧を自動的に判断して設定することが可能となる。
【0058】
また、あらかじめ接続されるパワコンの最大入力電圧が確認できる場合や、自動判定による切替が困難である場合、施工者は、手動設定に切り替えて、接続されるパワコンの最大入力電圧値に適合した最大出力電圧を昇圧機に設定することが可能である。
【0059】
次に、昇圧機によるパワコンの最大入力電圧の自動判定方法を具体的に説明する。パワコンが停止中で、かつ昇圧機の昇圧回路11の昇圧動作が停止中の場合、昇圧機の制御部12は、接続される太陽電池ストリングの開放電圧を出力電圧センサV2で検出できる。昇圧機の制御部12は、出力電圧センサV2の検出値が判定閾値以上の場合は450V入力パワコンが接続されていると判断し、判定閾値未満の場合は380V入力パワコンが接続されていると判断する。判定閾値は、昇圧機の出力側に380V入力パワコンが接続されているか、450V入力パワコンが接続されているかを判定するための閾値であり、この例では380Vに設定される。
【0060】
図7は、昇圧機がパワコンの最大入力電圧を自動判定する際の波形推移の一例を示す図である。
図7に示す例は、開放電圧Vocが420Vの太陽電池ストリングと450V入力パワコンが使用される場合を前提としており、パワコンの動作開始前に、昇圧機がパワコンの最大入力電圧を判定する例を示している。
【0061】
パワコンが停止中の状態において、日射強度の増加に伴い太陽電池ストリングの出力電圧Voutが上昇する。太陽電池ストリングの出力電圧Voutは、標準回路系の第1太陽電池ストリングPV1の出力電圧である。昇圧回路11が動作開始前であるため、昇圧回路系の第2太陽電池ストリングPV2の出力電圧は、標準回路系の第1太陽電池ストリングPV1の出力電圧より低い。
【0062】
太陽電池ストリングの出力電圧Voutが判定閾値Vth(380V)を超えるまでは、制御部12は昇圧機の出力側に380V入力パワコンが接続されていると判断し、昇圧回路11の最大出力電圧を380Vに設定する。一方、太陽電池ストリングの出力電圧Voutが判定閾値Vth(380V)を超えると、制御部12は昇圧機の出力側に450V入力パワコンが接続されていると判断し、昇圧回路11の最大出力電圧を450Vに設定する。
【0063】
パワコンのMPPT制御が開始されると、太陽電池ストリングの出力電圧Voutが最大動作出力電圧Vpm近辺に降下し、380Vより低下する。ただし、制御部12は、出力電圧センサV2の検出値が一旦、判定閾値Vth(380V)を超えれば、それ以降に判定閾値Vth(380V)を下回っても、昇圧回路11の最大出力電圧を450Vに維持する。
【0064】
図8は、昇圧機がパワコンの最大入力電圧を自動判定する際の波形推移の別の例を示す図である。
図8に示す例も、開放電圧Vocが420Vの太陽電池ストリングと450V入力パワコンが使用される場合を前提としている。
図8に示す例では、太陽電池ストリングの出力電圧Voutが開放電圧Vocに到達する前にパワコンが動作開始する場合の例を示している。
【0065】
日の出直後の太陽電池ストリングの発電電力は少なく、太陽電池ストリングの出力電圧Voutが開放電圧Vocまで上昇しない状態で、パワコンが動作を開始する場合がある。また、近年のパワコンは応答性能が向上しており、太陽電池ストリングの出力電圧Voutが開放電圧Vocまで上昇する前にMPPT制御が開始され、最大動作出力電圧Vpm近辺に制御される場合もある。
【0066】
このように、開放電圧Vocが420Vの太陽電池ストリングであっても、太陽電池ストリングの出力電圧Voutが最大動作出力電圧Vpm(350V近辺)までしか上昇しない場合がある。
図8に示す例では、太陽電池ストリングの出力電圧Voutが380V未満のときにパワコンが動作を開始し、太陽電池ストリングの出力電圧Voutが判定閾値Vth(380V)を一度も超えることがなく、判定閾値Vth(380V)以下で推移している。この場合、制御部12は昇圧機の出力側に450V入力パワコンが接続されているにも関わらず、380V入力パワコンが接続されていると誤判定する。
【0067】
以下、このような誤判定を防止するための制御について説明する。パワコンの動作中、制御部12は、出力電圧センサV2で検出される出力電圧と出力電流センサA2で検出される出力電流を乗算して昇圧機の出力電力を検出する。なお、昇圧機の出力電力は、標準回路系の入力電圧センサ(不図示)で検出される入力電圧と入力電流センサ(不図示)で検出される入力電流を乗算して得られる標準回路系の入力電力と、昇圧回路系の入力電圧センサV1で検出される入力電圧と入力電流センサA1で検出される入力電流を乗算して得られる昇圧回路系の入力電力を合算した入力電力で代用してもよい。
【0068】
制御部12は、昇圧機の出力電力が最大となるように昇圧回路11をMPPT制御する。制御部12は、昇圧機の出力電力が最大出力点を捉えているときの最大出力動作電圧に、所定の定数βを乗算して、太陽電池ストリングの推定開放電圧Voc’を算出する。定数βは、太陽電池ストリングの最大出力動作電圧Vpmに対する開放電圧Vocの比率で規定される。
【0069】
パワコンの動作中、制御部12は、太陽電池ストリングの推定開放電圧Voc’と判定閾値Vth(380V)を比較する。太陽電池ストリングの推定開放電圧Voc’が判定閾値Vth(380V)以上の場合、制御部12は昇圧機の出力側に450V入力パワコンが接続されていると判断し、昇圧回路11の最大出力電圧を450Vに設定する。一方、太陽電池ストリングの推定開放電圧Voc’が判定閾値Vth(380V)未満の場合、制御部12は昇圧機の出力側に380V入力パワコンが接続されていると判断し、昇圧回路11の最大出力電圧を380Vに設定する。
【0070】
図9は、複数の種類の太陽電池モジュールの最大出力電力Pmax(W)、最大出力動作電圧Vpm(V)、開放電圧Voc(V)、最大出力電流Imax(A)、短絡電流Isc(A)、定数βをまとめたグラフを示す図である。本発明者らの調査によると、多くの種類の太陽電池モジュールの定数(β)が1.2程度になることが分かった。以上から本実施の形態では定数βに1.2が設定される。なお、昇圧機の電力変換効率や回路定数を鑑みて、1.2を補正した値が定数βに設定されてもよい。
【0071】
図10は、実施の形態に係る、昇圧機による最大出力電圧の切り替え処理の流れを示すフローチャートである。
図10のフローチャートに示す例では、
図4に示した操作部13が用いられることを前提とする。昇圧機の電源がオンの状態において(S10のY)、第1スライドスイッチSW1で手動が選択され、第2スライドスイッチSW2で450Vが選択されている場合(S11の手動、S12の450V)、制御部12は、昇圧回路11の最大出力電圧Vlimを450Vに設定する(S13)。第1スライドスイッチSW1で手動が選択され、第2スライドスイッチSW2で380Vが選択されている場合(S11の手動、S12の380V)、制御部12は、昇圧回路11の最大出力電圧Vlimを380Vに設定する(S14)。
【0072】
第1スライドスイッチSW1で自動が選択されている場合(S11の自動)、制御部12は、接続されているパワコンの最大入力電圧の自動判定処理を実行する(S20)。昇圧機の電源がオフの状態になると(S10のN)、最大出力電圧の切り替え処理が終了する。
【0073】
図11は、
図10のステップS20に示したパワコンの最大入力電圧の自動判定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
図11のフローチャートにおいて、パラメータVaは、パワコン停止中の太陽電池ストリングの出力電圧Voutの最大値を保持するためのパラメータである。パラメータVbは、パワコン動作中の太陽電池ストリングの出力電圧Voutの最大値を保持するためのパラメータである。パラメータVcは、判定閾値Vth(380V)と比較される対象電圧を保持するためのパラメータである。
【0074】
パワコンが停止中で(S21のY)、かつ昇圧回路11も停止中の場合(S22のY)、制御部12は、パラメータVaに保持されている値と、出力電圧センサV2で検出された出力電圧Voutを比較する(S23)。パラメータVaに保持されている値より出力電圧Voutが大きい場合(S23のY)、制御部12は、パラメータVaに保持されている値を、検出された出力電圧Voutの値に更新する(S24)。パラメータVaに保持されている値より出力電圧Voutが大きくない場合(S23のN)、ステップS24の処理がスキップされる。制御部12は、パラメータVaに保持されている値を、パラメータVcに代入する(S25)。
【0075】
パワコンが動作を開始すると(S21のN)、昇圧回路11も動作を開始する。制御部12は、出力電圧センサV2で検出される出力電圧と出力電流センサA2で検出される出力電流を乗算して昇圧機の出力電力を検出する。制御部12は、昇圧機の出力電力が上昇している場合(S26のY)、パラメータVbに保持されている値を、検出された出力電力に対応する出力動作電圧Voutの値に更新する(S27)。昇圧機の出力電力が上昇していない場合(S26のN)、ステップS27の処理をスキップし、制御部12は、常に最大電力が得られる電圧値に更新する。
【0076】
制御部12は、パラメータVaに保持されている値とパラメータVbに保持されている値を比較する(S28)。パラメータVbに保持されている値がパラメータVaに保持されている値以下の場合(S28のN)、制御部12は、パラメータVaに保持されている値を、パラメータVcに代入する(S25)。パラメータVbに保持されている値が日射の上昇に伴って、パラメータVaに保持されている値より大きくなった場合(S28のY)、制御部12は、パラメータVbに保持されている値に定数βを乗算して得られる値を、開放電圧Vocの推定値としてパラメータVcに代入する(S29)。
【0077】
制御部12は、パラメータVcに保持されている値と判定閾値Vth(380V)を比較する(S210)。パラメータVcに保持されている値が判定閾値Vth(380V)より小さい場合(S210のY)、制御部12は、昇圧回路11の最大出力電圧Vlimを380Vに設定する(S211)。パラメータVcに保持されている値が判定閾値Vth(380V)以上の場合(S210のN)、制御部12は、昇圧回路11の最大出力電圧Vlimを450Vに設定する(S212)。
【0078】
以上説明したように本実施の形態によれば、昇圧接続箱10に最大出力電圧を切り替えできる機能を搭載したことにより、1種類の昇圧接続箱10で、最大入力電圧が異なる複数の種類のパワコンに対応できる。このような汎用性の高い昇圧接続箱10を実現することにより、メーカと施工者の負担を軽減することができる。
【0079】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0080】
上記実施の形態では、最大出力電圧の切り替え機能として、自動判定モードと手動設定モードが搭載された昇圧接続箱10を説明した。この点、自動判定機能のみを搭載する昇圧接続箱10あるいは手動設定機能のみを搭載する昇圧接続箱10も、本開示の範囲に含まれる。後者の場合、
図4に示した第1スライドスイッチSW1は省略される。
【0081】
また、
図4に示した第1スライドスイッチSW1を設けずに、手動設定機能のみを施工者あるいはユーザに提供し、自動判定機能をバックグラウンドで動作させてもよい。施工者は、第2スライドスイッチSW2を誤って操作する可能性がある。例えば、昇圧接続箱10に380V入力パワコンが接続されているにも関わらず、施工者は誤認識や誤操作により第2スライドスイッチSW2を450V側に設定してしまうことがあり得る。この場合において、昇圧接続箱10の自動判定機能により380V入力パワコンが接続されていると判定されると、制御部12は、昇圧回路11の最大出力電圧Vlimを450Vから380Vに変更する。
【0082】
上記実施の形態では説明を単純化するために、標準回路系に一つの第1太陽電池ストリングPV1が接続され、昇圧回路系に一つの第2太陽電池ストリングPV2が接続される例を説明した。この点、標準回路系に、複数の第1太陽電池ストリングPV1が並列に接続されてもよい。この場合、第1開閉器RY1および逆流防止ダイオードD1がそれぞれのストリングに設置される。複数の第1太陽電池ストリングPV1から合流出力配線Wmに出力される電流(電力)は、複数の第1太陽電池ストリングPV1の出力電流(出力電力)の合計となる。
【0083】
同様に、昇圧回路系に、複数の第2太陽電池ストリングPV2が並列に接続されてもよい。この場合、第2開閉器RY2および昇圧回路11がそれぞれのストリングに設置される。複数の昇圧回路11から合流出力配線Wmに出力される電流(電力)は、複数の第2太陽電池ストリングPV2の出力電流(出力電力)の合計となる。
【0084】
上記実施の形態では、昇圧接続箱10に、第1太陽電池ストリングPV1と、第1太陽電池ストリングPV1より開放電圧が低い第2太陽電池ストリングPV2が接続される例を説明した。この点、昇圧接続箱10には、開放電圧が異なる複数の太陽電池以外の直流電源を接続することもできる。例えば、昇圧接続箱10に、第1蓄電池パックと、第1蓄電池パックより開放電圧が低い第2蓄電池パックが接続されてもよい。第2蓄電池パックは、セルまたはモジュールの直列数が第1蓄電池パックより少ない蓄電池パックである。
【0085】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0086】
[項目1]
第1の直流電源(PV1)より開放電圧が低い第2の直流電源(PV2)から出力される直流電力の電圧を昇圧可能な昇圧回路(11)と、
前記昇圧回路(11)の出力配線(Wb)と、前記第1の直流電源(PV1)の出力配線(W1)が合流した合流出力配線(Wb)と、
前記昇圧回路(11)を制御する制御部(12)と、を備え、
前記合流出力配線(Wb)は、本昇圧接続回路(10)から供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置(20)に接続され、
本昇圧接続回路(10)は、前記電力変換装置(20)の最大入力電圧を超えないように、前記昇圧回路(11)の最大出力電圧の設定を切替えることが可能であることを特徴とする昇圧接続回路(10)。
これによれば、汎用性の高い昇圧接続回路(10)を実現することにより、メーカと施工者の負担を軽減することができる。
[項目2]
前記合流出力配線(Wb)の電圧を検出する電圧センサ(V2)をさらに備え、
前記制御部(12)は、前記電力変換装置(20)と前記昇圧回路(11)の停止中において、前記電圧センサ(V2)で検出される電圧に応じて、前記電力変換装置(20)の最大入力電圧を推定し、推定した最大入力電圧以下の電圧値に、前記昇圧回路(11)の最大出力電圧の設定値を決定することを特徴とする項目1に記載の昇圧接続回路(10)。
これによれば、自動判定モードを搭載することにより、施工者の負担を軽減できるとともに、人的ミスを減らすことができる。
[項目3]
前記第1の直流電源(PV1)および前記第2の直流電源(PV2)は太陽電池(PV1、PV2)であり、
前記制御部(12)は、前記電力変換装置(20)が動作中で前記昇圧回路(11)の停止中において、前記電圧センサ(V2)で検出される電圧に、前記太陽電池(PV1、PV2)の最大出力点電圧に対する開放電圧の比率を掛けて得られる電圧に応じて、前記電力変換装置(20)の最大入力電圧を推定することを特徴とする項目2に記載の昇圧接続回路(10)。
これによれば、太陽電池(PV1、PV2)用の電力変換装置(20)の最大入力電圧を高精度に推定することができる。
[項目4]
前記制御部(12)は、ユーザ操作に基づき、前記昇圧回路(11)の最大出力電圧の設定値を決定することを特徴とする項目1に記載の昇圧接続回路(10)。
これによれば、最大出力電圧の切り替え機能を簡単に実装することができる。
[項目5]
前記合流出力配線(Wb)の電圧を検出する電圧センサ(V2)をさらに備え、
前記制御部(12)は、前記ユーザ操作に基づき決定された前記昇圧回路(11)の最大出力電圧の設定値が、前記電圧センサ(V2)で検出される電圧から推定される前記電力変換装置(20)の最大入力電圧を超えている場合、当該最大入力電圧以下の電圧値に、前記昇圧回路(11)の最大出力電圧の設定値を切替えることを特徴とする項目4に記載の昇圧接続回路(10)。
これによれば、手動設定による人的ミスを、自動判定機能でカバーすることができる。
[項目6]
項目1から5のいずれか1項に記載の昇圧接続回路(10)と、
前記昇圧接続回路(10)から供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置(20)と、
を備えることを特徴とする電力変換システム(1)。
これによれば、汎用性の高い昇圧接続回路(10)を実現することにより、メーカと施工者の負担を軽減することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 電力変換システム、 2 商用電力系統、 10 昇圧接続箱、 11 昇圧回路、 12 制御部、 20 電力変換装置、 21 DC/DCコンバータ、 22 インバータ、 23 制御部、 PV1 第1太陽電池ストリング、 PV2 第2太陽電池ストリング、 RY1 第1開閉器、 RY2 第2開閉器、 D1 逆流防止ダイオード、 V1 入力電圧センサ、 V2 出力電圧センサ、 A1 入力電流センサ、 A2 出力電流センサ、 A3 標準回路出力電流センサ、 T1 温度センサ、 W1,W2,Wb 出力配線、 Wm 合流出力配線、 L1 リアクトル、 C1 入力コンデンサ、 C2 出力コンデンサ、 D2 ダイオード、 S1 スイッチング素子。