(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183682
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ガス流路、ガス検出システム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20231221BHJP
G01N 1/40 20060101ALI20231221BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G01N1/00 101T
G01N1/40
G01N1/22 L
G01N1/22 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097324
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】水谷 学世
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誉久
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA01
2G052AA03
2G052AB27
2G052AD02
2G052AD22
2G052AD42
2G052BA03
2G052BA14
2G052BA22
2G052CA11
2G052GA23
2G052HC04
2G052HC09
2G052HC25
2G052HC43
2G052JA06
2G052JA07
2G052JA08
2G052JA18
(57)【要約】
【課題】検出対象であるガス種の濃度が低い場合であっても、ガスを吸蔵することなく、リアルタイムで検出対象であるガス種を濃縮することができるガス流路及びガス検出システムを提供する。
【解決手段】ガス流路(11)は、ガスを選択的に透過させるフィルタ(111)と、フィルタ(111)の下流に設けられ、下流端(112)における開口面積が上流端(113)における開口面積より狭い筒状部材(114)と、前記筒状部材の後段に設けられ、且つ、前記筒状部材を通過したガスを吸引する負圧発生装置(ポンプ14)と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを選択的に透過させるフィルタと、
前記フィルタを透過したガスが通過する筒状部材であって、下流端における開口面積が上流端における開口面積より狭い筒状部材と、
前記筒状部材の後段に設けられ、且つ、前記筒状部材を通過したガスを吸引する負圧発生装置と、を備えている、
ことを特徴とするガス流路。
【請求項2】
前記筒状部材は、前記上流端から前記下流端に向かって内部空間が滑らかに先細っている、
ことを特徴とする請求項1に記載のガス流路。
【請求項3】
軸が前記筒状部材の軸方向に沿うように、且つ、前記筒状部材を取り囲むように、配置されたコイルを更に備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス流路。
【請求項4】
前記筒状部材の形状は、円筒状であり、
前記コイルは、当該コイルの軸方向から平面視した場合にらせん状であり、
前記筒状部材と前記コイルとは、同軸に配置されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のガス流路。
【請求項5】
前記フィルタは、金属イオンが有機配位子により3次元的且つ周期的に架橋された金属有機構造体からなり、
前記有機配位子は、酸性又は塩基性の官能基を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のガス流路。
【請求項6】
請求項3に記載のガス流路と、
前記ガス流路の下流に設けられているチャンバと、
前記チャンバに収容されているガスセンサと、を備え、
前記負圧発生装置は、前記チャンバの下流に設けられており、前記ガス流路及び前記チャンバを排気するポンプである、
ことを特徴とするガス検出システム。
【請求項7】
前記筒状部材の内部の圧力である第1の圧力、及び、前記チャンバの内部の圧力である第2の圧力の各々を、それぞれが検出する第1の圧力センサ及び第2の圧力センサと、
前記コイルに駆動電流を供給する電源と、
前記第1の圧力と前記第2の圧力との差分に応じて前記駆動電流を定める制御部と、を更に備えている、
ことを特徴とする請求項6に記載のガス検出システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記差分と前記駆動電流との間に正の相関関係があるように前記駆動電流を定める、
ことを特徴とする請求項7に記載のガス検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流路、及びガス検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
比較的濃度が高いガス種を検出する方法としては、種々の方法が知られている。しかし、大気中に拡散するような濃度の薄いガス種は、検出するのが難しい。例えば、特定の硫黄ガスを検出するための市販のガスセンサにおける検出限界濃度の一例は、ppmオーダーである。
【0003】
検出対象であるガス種の濃度がガスセンサの検出限界濃度よりも低い場合、当該ガス種を濃縮する方法が用いられている。この方法では、検出対象であるガス種を所定の期間に亘ってフィルタに吸蔵させた後、当該フィルタに吸蔵されたガス種をフィルタから放出させる。その結果、ガスセンサの検出限界濃度よりもガス種の濃度が高まるように、ガス種を濃縮させることができる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の検出方法では、検出対象であるガス種を所定の期間に亘ってフィルタに吸蔵させた後、当該フィルタから放出させるため、ガス種をリアルタイムで検出できないという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、検出対象であるガス種の濃度が低い場合であっても、ガスを吸蔵することなく、リアルタイムで検出対象であるガス種を濃縮することができるガス流路及びガス検出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係るガス流路は、ガスを選択的に透過させるフィルタと、前記フィルタを透過したガスが通過する筒状部材であって、下流端における開口面積が上流端における開口面積より狭い筒状部材と、前記筒状部材の後段に設けられ、且つ、前記筒状部材を通過したガスを吸引する負圧発生装置と、を備えている。
【0008】
上記の構成によれば、筒状部材を透過することにより、ガスに含まれる検出対象であるガス種の濃度を高めることができる。したがって、本ガス流路は、検出対象であるガス種の濃度が低い場合であっても、ガスを吸蔵することなく、リアルタイムで検出対象であるガス種を濃縮することができるガス流路を提供することができる。
【0009】
本発明の態様2に係るガス流路は、態様1に係るガス流路の構成に加えて、前記筒状部材は、前記上流端から前記下流端に向かって内部空間が滑らかに先細っている、構成が採用されている。
【0010】
上記の構成によれば、開口面積が大きな上流端から供給されたガスを、開口面積が小さな下流端から排出する場合に、ガスの流れに生じ得る乱れを抑制することができる。したがって、本ガス流路は、検出対象であるガス種を濃縮しつつ、ガスにおける圧力損失を低減することができる。
【0011】
本発明の態様3に係るガス流路は、態様1又は2に係るガス流路の構成に加えて、軸が前記筒状部材の軸方向に沿うように、且つ、前記筒状部材を取り囲むように、配置されたコイルを更に備えている、構成が採用されている。
【0012】
コイルに駆動電流を供給することにより、コイルの周辺には電磁場が生じる。特にコイルの軸の近傍には、当該軸の方向と沿うように電磁場が生じる。上記の構成によれば、コイルにより生じる電磁場とガス種との相互作用により、筒状部材の上流端から筒状部材の内部空間に供給されたガスは、渦旋回をしながら下流端へ向かって流れる。したがって、本ガス流路は、ガスにおける圧力損失を更に低減することができる。
【0013】
本発明の態様4に係るガス流路は、態様1~3の何れか1つに係るガス流路の構成に加えて、前記筒状部材の形状は、円筒状であり、前記コイルは、当該コイルの軸方向から平面視した場合にらせん状であり、前記筒状部材と前記コイルとは、同軸に配置されている、構成が採用されている。
【0014】
上記の構成によれば、筒状部材の上流端から下流端へ向かって流れるガスを、より綺麗に渦旋回させることができる。したがって、本ガス流路は、ガスにおける圧力損失を更に低減することができる。
【0015】
本発明の態様5に係るガス流路は、態様1~4の何れか1つに係るガス流路の構成に加えて、前記フィルタは、金属イオンが有機配位子により3次元的且つ周期的に架橋された金属有機構造体からなり、前記有機配位子は、酸性又は塩基性の官能基を有する、構成が採用されている。
【0016】
有機配位子が酸性の官能基を有する場合、フィルタは、塩基性のガス種を吸蔵し、酸性のガス種を透過させる。一方、有機配位子が塩基性の官能基を有する場合、フィルタは、酸性のガス種を吸蔵し、塩基性のガス種を透過させる。上記の構成によれば、フィルタは、金属有機構造体の細孔径に応じてガス種を分別することに加え、ガス種の極性に応じてガス種を分別することができる。したがって、本ガス流路は、検出対象ではないガス種をより適切に排除することができる。
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明の態様6に係るガス検出システムは、態様1~5の何れか1つに記載のガス流路と、前記ガス流路の下流に設けられているチャンバと、前記チャンバに収容されているガスセンサと、を備え、前記負圧発生装置は、前記チャンバの下流に設けられており、前記ガス流路及び前記チャンバを排気するポンプである。
【0018】
上記の構成によれば、本発明の一態様に係るガス流路を用いてリアルタイムで検出対象であるガス種を濃縮したうえで、ガス流路の下流に設けられたガスセンサを用いて、濃縮された検出対象であるガス種をリアルタイムで検出することができる。
【0019】
本発明の態様7に係るガス検出システムは、態様6に係るガス検出システムの構成に加えて、前記筒状部材の内部の圧力である第1の圧力、及び、前記チャンバの内部の圧力である第2の圧力の各々を、それぞれが検出する第1の圧力センサ及び第2の圧力センサと、前記コイルに駆動電流を供給する電源と、前記第1の圧力と前記第2の圧力との差分に応じて前記駆動電流を定める制御部と、を更に備えている、構成が採用されている。
【0020】
上記の構成によれば、第1の圧力と第2の圧力との差分に応じてコイルの駆動電流を定めるため、ガスにおける圧力損失が小さくなるように駆動電流を定めることができる。
【0021】
本発明の態様8に係るガス検出システムは、態様6又は7に係るガス検出システムの構成に加えて、前記制御部は、前記差分と前記駆動電流との間に正の相関関係があるように前記駆動電流を定める、構成が採用されている。
【0022】
第1の圧力と第2の圧力との差分が大きいということは、ガスにおける圧力損失が大きいことを意味する。上記の構成によれば、第1の圧力と第2の圧力との差分が大きければ大きいほど、ガスに生じさせる渦旋回をより強くすることができる。したがって、ガスにおける圧力損失を適切に低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、検出対象であるガス種の濃度が低い場合であっても、ガスを吸蔵することなく、リアルタイムで検出対象であるガス種を濃縮することができるガス流路及びガス検出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガス検出システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(ガス検出システムの構成)
本発明の一実施形態に係るガス検出システム10の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、ガス検出システムのブロック図である。
図1中、白抜きの矢印は、ガスが上流から下流へ流れる向きを示している。
【0026】
ガス検出システム10は、ガスを検出するためのシステムであり、
図1に示すように、本発明の一態様に係るガス流路11と、ガス流路11の下流に設けられているチャンバ12と、チャンバ12に収容されているガスセンサ13と、を備えている。このような構成によれば、本発明の一態様に係るガス流路11を用いてリアルタイムで検出対象であるガス種を濃縮したうえで、ガス流路11の下流に設けられたガスセンサ13を用いて、濃縮された検出対象であるガス種をリアルタイムで検出することができる。
【0027】
本実施形態において、ガス検出システム10における検出対象であるガス種は、硫黄系ガスである。ただし、ガス検出システム10において検出できるガスは、後述するフィルタ111によって選択的に透過できるガスであり得る。本明細書において「選択的に透過」とは、ガスの性質を利用して検出対象であるガス種を透過させ、不要ガスを排除することを指す。ガスの性質としては、例えば、極性及び分子量等を利用することができる。また、ガス検出システム10において検出できるガスは、後述するコイル116によって生じる電磁場の影響の受けやすさの観点から、電荷の分布に偏りがある極性分子を含むことが好ましい。このような極性分子としては、例えば、アンモニア、硫化水素、及びエタノール等が挙げられる。
【0028】
(ガス流路11)
ガス流路11は、ガスを選択的に透過させるフィルタ111と、フィルタ111を透過したガスが通過する筒状部材114であって、下流端112における開口面積が上流端113における開口面積より狭い筒状部材114と、チャンバ12の下流に設けられており、ガス流路11及びチャンバ12を排気するポンプ14と、を備えている。筒状部材114は、フィルタ111の下流に設けられている。ガス流路11においては、筒状部材114を透過することにより、ガスに含まれる検出対象であるガス種の濃度を高めることができる。したがって、本ガス流路11は、検出対象であるガス種の濃度が低い場合であっても、ガスを吸蔵することなく、リアルタイムで検出対象であるガス種を濃縮することができる。また、ガス流路11は、吸入口117を更に備えている。ガス流路11は、吸入口117からガスを吸入する。また、ガス流路11は、フィルタ111の下流端に弁(不図示)を更に備えていてもよい。弁は、フィルタ111がチャンバ12に混入するのを防ぐ。また、ポンプ14は、負圧発生装置の一例であり、ガス流路11の終端を構成する。負圧発生装置は、筒状部材114の後段に設けられ、且つ、筒状部材114を通過したガスを吸引する。ポンプ14の具体的な構成については、後述する。
【0029】
(フィルタ111)
フィルタ111は、吸入口117に接続されており、吸入口117から吸入されたガスを選択的に透過させる。本実施形態において、フィルタ111は、金属イオンが有機配位子により3次元的且つ周期的に架橋された金属有機構造体(Metal Organic Frameworks, MOF)からなり、前記有機配位子は、酸性の官能基を有する。本明細書において、金属有機構造体は、多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer, PCP)とも呼ばれる。フィルタ111は、金属有機構造体の細孔径を調整することで、透過可能なガス種を分別することができる。さらに、配位子が酸性の官能基を有する場合、フィルタ111は、塩基性のガス種を吸蔵し、酸性のガス種を透過させる。そのため、フィルタ111は、検出対象である硫黄系ガスを透過させ、検出に不要な塩基性のガス種を吸蔵する。ただし、有機配位子は、塩基性の官能基を有していてもよい。有機配位子が塩基性の官能基を有する場合、フィルタ111は、酸性のガス種を吸蔵し、塩基性のガス種を透過させる。このような構成によれば、フィルタ111は、金属有機構造体の細孔径に応じてガス種を分別することに加え、ガス種の極性に応じてガス種を分別することができる。したがって、本ガス流路11は、検出対象ではないガス種をより適切に排除することができる。ただし、フィルタ111は、検出対象であるガスを選択的に透過させるものであればよく、検出対象であるガス種に応じて適宜選択することができる。
【0030】
また、フィルタ111が吸着したガス種は、以下の方法により取り除くことができる。つまり、ガスセンサ13、第1の圧力センサ15及び第2の圧力センサ16、電源17、並びに制御部18の動作を止め、ポンプ14を作動させた状態で、フィルタ111の温度を上昇させることにより、吸着したガス種を取り除くことができる。よって、フィルタ111を交換せずに再利用することができるため、フィルタ111を取り換える手間及びコストを削減することができる。
【0031】
(筒状部材114)
筒状部材114は、フィルタ111の下流に設けられ、下流端112における開口面積が上流端113における開口面積より狭い筒状部材である。下流端112における開口面積は、下流端112における開口の面積を指し、上流端113における開口面積は、上流端113における開口の面積を指す。本実施形態において、下流端112及び上流端113の各々の開口は、何れも円形状である。すなわち、本実施形態において、筒状部材114は、円筒状である。
【0032】
本実施形態において、筒状部材114の内径(内部空間115の直径)は、上流端113から下流端112に近づくにしたがって、連続的に小さくなるように定められている。すなわち、本実施形態においては、上流端113から下流端112に向かって内部空間115が滑らかに先細っている、テーパー状の筒状部材114を採用している。このような構成によれば、開口面積が大きな上流端113から供給されたガスを、開口面積が小さな下流端112から排出する場合に、ガスの流れに生じ得る乱れを抑制することができる。したがって、本ガス流路11は、検出対象であるガス種を濃縮しつつ、ガスにおける圧力損失を低減することができる。
【0033】
(コイル116)
ガス流路11は、軸が筒状部材114の軸方向に沿うように、且つ、筒状部材114を取り囲むように、配置されたコイル116を更に備えている。コイル116に駆動電流を供給することにより、コイル116の周辺には電磁場が生じる。特にコイル116の軸の近傍には、当該軸の方向と沿うように電磁場が生じる。駆動電流は、後述する電源17によって供給される。このような構成によれば、コイル116により生じる電磁場とガス種との相互作用により、筒状部材114の上流端113から筒状部材114の内部空間115に供給されたガスは、渦旋回をしながら下流端112へ向かって流れる。したがって、本ガス流路11は、ガスにおける圧力損失を更に低減することができる。
【0034】
本実施形態において、コイル116は、当該コイル116の軸方向から平面視した場合にらせん状であり、筒状部材114とコイル116とは、同軸に配置されている。このような構成によれば、筒状部材114の上流端113から下流端112へ向かって流れるガスを、より綺麗に渦旋回させることができる。したがって、本ガス流路11は、ガスにおける圧力損失を更に低減することができる。
【0035】
(チャンバ12)
チャンバ12は、ガス流路11の下流に設けられている。チャンバ12は、筒状部材114の下流端112に接続されており、ガス流路11からガスが供給される供給口(不図示)とポンプ14にガスを排気する排気口(不図示)とが設けられている。
【0036】
(ガスセンサ13)
ガスセンサ13は、チャンバ12に収容されている。本実施形態において、ガスセンサ13は、硫黄系ガスを検出可能なガスセンサである。ただし、ガスセンサ13は、検出対象であるガス種を検出できるガスセンサであればよく、例えば、半導体方式、電気化学式、及び水晶振動子式等のガスセンサを用いることができる。
【0037】
(ポンプ14)
本実施形態では、負圧発生装置としてポンプ14を採用している。ポンプ14は、チャンバ12の下流に設けられており、ガス流路11及びチャンバ12を排気する。本実施形態において、ポンプ14の種類は、ガス流路11及びチャンバ12を排気できるものであればよく、排気能力によって適宜選択することができる。例えば、ダイヤフラムポンプ、ロータリーポンプ、油拡散ポンプ、及びターボ分子ポンプ等を使用することができる。ポンプ14は、ガス流路11及びチャンバ12を排気することにより、ガス流路11及びチャンバ12の内部の圧力を大気圧よりも低い圧力(すなわち負圧)にする。
【0038】
本実施形態のガス検出システム10は、第1の圧力センサ15及び第2の圧力センサ16と、電源17と、制御部18と、を更に備えている。第1の圧力センサ15及び第2の圧力センサ16は、筒状部材114の内部の圧力である第1の圧力、及び、チャンバ12の内部の圧力である第2の圧力の各々を、それぞれが検出することができる。このような構成によれば、第1の圧力と第2の圧力との差分に応じてコイル116の駆動電流を定めるため、ガスにおける圧力損失が小さくなるように駆動電流を定めることができる。
【0039】
(第1の圧力センサ15及び第2の圧力センサ16)
第1の圧力センサ15は、筒状部材114に収容されており、筒状部材114の内部の圧力である第1の圧力を検出し、第1の圧力を表す第1の圧力情報を制御部18に供給する。第2の圧力センサ16は、チャンバ12に収容されており、チャンバ12の内部の圧力である第2の圧力を検出し、第2の圧力を表す第2の圧力情報を制御部18に供給する。第1の圧力センサ15及び第2の圧力センサ16の種類は、負圧である圧力を測定できるセンサであればよく、当業者が適宜選択することができる。
【0040】
(電源17)
電源17は、コイル116に駆動電流を供給するように構成されている。電源17は、後述する制御部18が生成する制御信号を取得し、当該制御信号に基づいてコイル116に駆動電流を供給する。電源17は、直流の定電流源であることが好ましい。ただし、電源17は、これに限定されるものではなく、コイル116が所望の電磁場を発生可能な駆動電流をコイル116に供給可能なように構成されていればよい。
【0041】
(制御部18)
制御部18は、第1の圧力と第2の圧力との差分に応じて駆動電流を定めるための構成である。制御部18は、第1の圧力センサ15から供給される第1の圧力情報と、第2の圧力センサ16から供給される第2の圧力情報と、を取得する。そのうえで、制御部18は、第1の圧力と第2の圧力との差分を算出し、当該差分に応じて駆動電流を定める。ここで、制御部18は、予め定められている差分と駆動電流との相関関係を参照して、当該相関関係より差分に対応する駆動電流を定める。当該相関関係は、差分と駆動電流との間に正の相関を有するように定められていることが好ましい。当該相関関係は、ルックアップテーブルにより表されていてもよいし、関数(例えば一次関数)により表されていてもよい。更に、制御部18は、定めた駆動電流を電源17がコイル116に供給するように、電源17を制御する制御信号を電源17に供給する。制御部18の一部又は全部の機能は、集積回路(ICチップ)等のハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。本実施形態では、制御部18は、ソフトウェアにより実現されている。この場合、制御部18の各機能は、例えば、ソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータによって実現される。
【0042】
(作動)
次に、上述した各構成によって構成されている本実施形態に係るガス検出システム10の動作を以下に説明する。
【0043】
まず、これから吸入、検知しようとするガスと、ガス流路11及びチャンバ12内の在来のガスとが混合しないように、ポンプ14を駆動し、ガス流路11及びチャンバ12を排気する。
【0044】
次に、ポンプ14は引き続き駆動しており、ガス流路11及びチャンバ12内は引き続き負圧なので、吸入口117からこれから検知しようとするガスが吸入できる。吸入されたガスは、フィルタ111によって選択的に透過された後、コイル116に取り囲まれた筒状部材114に流入する。
【0045】
その際、筒状部材114を取り囲んでいるコイル116は、第1の圧力センサ15及び第2の圧力センサ16が検出した圧力情報に基づいて制御部18が定めた駆動電流を電源17から供給されているので、当該筒状部材114周辺に電磁場を発生させている。
【0046】
この発生している電磁場と筒状部材114に流入してきたガスとの相互作用により、ポンプ14の負圧によって流下しようとしているガスは圧力損失を低減させる渦旋回をしながらより綺麗に下流端112へ向かって流れる。
【0047】
下流端112からチャンバ12内に流入したガスは当該チャンバ12内に設けたガスセンサ13によって、そのガス種を検知される。
【0048】
ガスセンサ13によって検知され終わったガスは、チャンバ12に接続しているポンプ14によって排気される。
【0049】
(効果)
以上のことから、ガス検出システム10によれば、本発明の一態様に係るガス流路11を用いてリアルタイムで検出対象である硫黄系ガスを濃縮したうえで、ガス流路11の下流に設けられたガスセンサ13を用いて、濃縮された硫黄系ガスをリアルタイムで検出することができる。したがって、例えば農作物由来の低濃度の硫黄系ガスを検知することにより、農作物の成熟度及び腐敗状況等をリアルタイムで知ることができる。そのため、農作物の栽培、流通、及び保管を効率的に行うことができ、農作物のロスの削減に繋げることができる。
【0050】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10 ガス検出システム
11 ガス流路
111 フィルタ
112 下流端
113 上流端
114 筒状部材
115 内部空間
116 コイル
117 吸入口
12 チャンバ
13 ガスセンサ
14 ポンプ
15 第1の圧力センサ
16 第2の圧力センサ
17 電源
18 制御部