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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183685
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27M 3/00 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B27M3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097331
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】塩瀬 健太郎
【テーマコード(参考)】
2B250
【Fターム(参考)】
2B250AA05
2B250BA03
2B250CA11
2B250DA03
2B250EA05
2B250EA13
2B250FA03
2B250GA03
2B250GA08
2B250HA01
(57)【要約】
【課題】化粧板の角部において、シート材の余剰部分が残らないようにし、かつ、基材の角部の露出を防止することが可能な化粧板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る化粧板の製造方法は、基材2の側面2b,2cに対して加熱しながら化粧シート3Aを接着剤によって貼着する第1貼着工程と、基材2の側面2b,2cの端部よりも外側へはみ出た化粧シート3Aの余剰部分を切除する第1切除工程と、基材2の裏面2d及び化粧シート3Aの端面に対して加熱しながら化粧シート3Aと異なる化粧シート3Bを接着剤によって貼着する第2貼着工程と、加熱された化粧シート3Bの温度を、第1切除工程における化粧シート3Aの温度よりも低下させる養生工程と、養生工程の後、基材2の側面2b,2cに貼着された化粧シート3Aの端面よりも外側へはみ出た化粧シート3Bの余剰部分を切除する第2切除工程とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の側面に対して加熱しながら第1シート材を接着剤によって貼着する第1貼着工程と、
前記基材の前記側面の端部よりも外側へはみ出た前記第1シート材の余剰部分を切除する第1切除工程と、
前記基材の第1板面及び前記第1シート材の端面に対して加熱しながら前記第1シート材と異なる第2シート材を接着剤によって貼着する第2貼着工程と、
加熱された前記第2シート材の温度を、前記第1切除工程における前記第1シート材の温度よりも低下させる養生工程と、
前記養生工程の後、前記基材の前記側面に貼着された前記第1シート材の前記端面よりも外側へはみ出た前記第2シート材の余剰部分を切除する第2切除工程と、
を備える化粧板の製造方法。
【請求項2】
前記第1貼着工程において、前記基材の前記第1板面とは反対側の第2板面と、前記基材の二つの前記側面に対して、前記第1シート材を貼着する請求項1に記載の化粧板の製造方法。
【請求項3】
前記第1切除工程において、加熱された前記第1シート材の温度が常温よりも高い状態で、前記第1シート材の余剰部分を切除する請求項1に記載の化粧板の製造方法。
【請求項4】
前記養生工程において、前記第1板面に貼着された前記第2シート材の上部に、別の前記第1シート材及び前記第2シート材が貼着された別の前記基材を積載する請求項1に記載の化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧板には、木質基材に対して合成樹脂製又は紙製の化粧シートが貼着されるものがある。化粧板は、使用目的に応じて、化粧シートが貼着される面の数が異なる。例えば、床材の場合、下地に接する面には化粧シートが不要であり、基材の表面(一方の板面)及び両側面の3面に化粧シートが貼着される。また、例えば、ささら桁階段と呼ばれるささら桁に踏み板が支持される階段では、ささら桁や踏み板は、表面並びに裏面(両方の板面)及び両側面の4面が室内に露出するため、基材の4面に化粧シートが貼着される。
【0003】
下記の特許文献1には、基材の表面及び端面に薄紙が貼着される化粧板を製造する際、接着剤が浸透して柔らかくなる薄紙の余剰部が効率良く切除されるように、余剰部が室温より低い温度で冷却されることによって、塗布された接着剤が固化される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-175769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、基材の表面、裏面及び両側面の4面に化粧シートが貼着される場合、表面と一方の側面に1枚の化粧シートが貼着され、裏面と他方の側面に別の1枚の化粧シートが貼着されており、合計2枚の化粧シートが用いられている。
【0006】
化粧シートが接着剤によって基材に貼着されたとき、化粧シートのシート幅は、貼着される基材の2面の合計幅よりも大きいため、化粧シートの端部が余剰部分となって基材の角部からはみ出した状態となる。そして、2枚の化粧シートが基材に貼着された後、2か所の角部でそれぞれ、角部からはみ出た2枚の化粧シートの余剰部分が一度に切除されていた。
【0007】
化粧シートが基材に貼着されるとき、化粧シートは加熱されながらプレスされる。化粧シートが基材に貼着された直後の温度が高い状態で化粧シートの余剰部分が切除されると、化粧シートの温度が低下したとき化粧シートが収縮する。そのため、化粧シートの貼着後に、化粧板の角部において基材の角部が露出する場合がある。
【0008】
また、図6に示すように、化粧シートが基材の4面を被覆するように、角部で隣り合う2枚の化粧シート13が貼着されると、角部付近において隣り合う2枚の化粧シート13が重なった状態となっているため、化粧シート13は基材12からわずかに浮いた状態となる。この状態で隣り合う2枚の化粧シートが同時に切除される場合、化粧シート13の余剰部分が残ったり、基材12の角部が露出したりする可能性がある。したがって、化粧シート13の余剰部分を残さずに、かつ、基材12の角部が露出しないように2枚の化粧シート13を同時に切除することは困難である。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、化粧板の角部において、シート材の余剰部分が残らないようにし、かつ、基材の角部の露出を防止することが可能な化粧板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、化粧シートの温度が低下して化粧シートが収縮する際、基材の側面側よりも基材の表面又は裏面(板面)側に貼着された化粧シートの収縮量が大きく、その結果、化粧板の角部において基材の角部の板面側が露出してしまうという知見が得られた。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の化粧板の製造方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る化粧板の製造方法は、基材の側面に対して加熱しながら第1シート材を接着剤によって貼着する第1貼着工程と、前記基材の前記側面の端部よりも外側へはみ出た前記第1シート材の余剰部分を切除する第1切除工程と、前記基材の第1板面及び前記第1シート材の端面に対して加熱しながら前記第1シート材と異なる第2シート材を接着剤によって貼着する第2貼着工程と、加熱された前記第2シート材の温度を、前記第1切除工程における前記第1シート材の温度よりも低下させる養生工程と、前記養生工程の後、前記基材の前記側面に貼着された前記第1シート材の前記端面よりも外側へはみ出た前記第2シート材の余剰部分を切除する第2切除工程とを備える。
【0012】
この構成によれば、第1シート材が、加熱されながら、基材の側面に対して接着剤によって貼着され、このとき、第1シート材の余剰部分が、基材の側面の端部よりも外側へはみ出た状態となる。そして、第1シート材の余剰部分が切除される。また、第2シート材が、加熱されながら、基材の第1板面及び第1シート材の端面に対して接着剤によって貼着され、このとき、第2シート材の余剰部分が、基材の側面に貼着された第1シート材の端面よりも外側へはみ出た状態となる。そして、加熱された第2シート材の温度が、第1シート材が切除されるときの第1シート材の温度よりも低下するように養生される。その養生を経た後、第2シート材の余剰部分が切除される。
【0013】
このとき、第1シート材の表面に沿うように、第2シート材の余剰部分が切除される。余剰部分の切除は、第2シート材が冷却されて収縮した後であるため、切除後には第2シート材が収縮せず、化粧板の角部において基材の角部の露出を防止することができる。
【0014】
また、第1シート材の余剰部分と第2シート材の余剰部分の切除が異なるタイミングで行われることから、化粧板の角部においてシート材の余剰部分が残らず、また、基材の角部が露出しないように第1シート材及び第2シート材が切除される。
【0015】
上記発明の前記第1貼着工程において、前記基材の前記第1板面とは反対側の第2板面と、前記基材の二つの前記側面に対して、前記第1シート材を貼着してもよい。
【0016】
この構成によれば、第1シート材が、基材の第2板面と二つの側面に対して接着剤によって貼着され、このとき、第1シート材の余剰部分が、第1シート材が貼着された基材の二つの側面の端部からはみ出た状態となる。
【0017】
上記発明の前記第1切除工程において、加熱された前記第1シート材の温度が常温よりも高い状態で、前記第1シート材の余剰部分を切除してもよい。
【0018】
この構成によれば、第1シート材の温度が低下する養生期間を経ないで、加熱された第1シート材の温度が常温よりも高い状態で、第1シート材の余剰部分が切除される。
【0019】
上記発明の前記養生工程において、前記第1板面に貼着された前記第2シート材の上部に、別の前記第1シート材及び別の前記第2シート材が貼着された別の前記基材を積載してもよい。
【0020】
この構成によれば、養生工程では、第2シート材の余剰部分が、基材の側面に貼着された第1シート材の表面からはみ出た状態となっているため、第2シート材の余剰部分が、別の第1シート材及び別の第2シート材が貼着された別の基材と干渉しないように、第1板面に貼着された第2シート材の上部に上記の別の基材を積載することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、化粧板の角部において、シート材の余剰部分が残らないようにし、かつ、基材の角部の露出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る化粧板を示す横断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る化粧板の製造方法を示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る化粧板の基材及び化粧シートを示す部分拡大横断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る化粧板の製造方法の養生工程における基材及び化粧シートを示す横断面図である。
図5】本発明の一実施形態の別の実施例に係る化粧板の基材及び化粧シートを示す部分拡大横断面図である。
図6】従来の化粧板の基材及び化粧シートを示す部分拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の一実施形態に係る化粧板の製造方法について、図面を参照して説明する。まず、本実施形態に係る化粧板の製造方法によって製造される化粧板1の構成について説明する。
【0024】
化粧板1は、図1に示すように、基材2と、複数の化粧シート3などを備える。基材2と化粧シート3は、例えば接着剤によって互いに接合されている。化粧板1は、例えば、ささら桁階段用のささら桁であり、基材2の板面(表面2a(第2板面)、裏面2d(第1板面))及び二つの側面2b,2cの4面に化粧シート3が設けられる。化粧板1がささら桁の場合、例えば、長さ4500mm、幅240mm、高さ60mmである。
【0025】
基材2は、例えば、LVL(単板積層材)又は合板の表面及び裏面に、MDF(中密度繊維板)が積層された材料である。また、基材2の側面2b,2cには、合成樹脂製の縁材が設置されてもよい。側面2b,2cが粗い合板やMDFなどが基材2に用いられるとき、縁材が設置されることによって、化粧シート3が基材2の側面側に貼着されやすくなる。基材2は、集成材の表面及び裏面に、MDFが積層された材料でもよい。基材2は、例えば、上述した化粧板1の例では、長さ4500mm、幅240mm、高さ60mmである。
【0026】
化粧シート3は、例えば、オレフィン樹脂シート、化粧紙などである。化粧シート3は、基材2に貼着される前の寸法が基材2よりも大きく余剰部分を有する。余剰部分が設けられることによって、基材2に化粧シート3を貼着した後、化粧シート3が収縮した場合に、基材2が露出することを防止できる。
【0027】
化粧板1において、化粧シート3は、2枚貼着され、例えば化粧シート3A(第1シート材)と化粧シート3B(第2シート材)を有する。化粧シート3Aは、基材2の表面2a(第2板面)と二つの側面2b,2cの3面に貼着される。化粧シート3Bは、基材2の裏面2d(第1板面)に貼着される。なお、基材2の表面2aと裏面2dは、説明の便宜上定義したものであり、基材2の板面の一方の面と他方の面のいずれが表面2aでもよいし裏面2dでもよい。また、側面2b,2cの表面積は、表面2a又は裏面2dの表面積よりも狭い。
【0028】
上述した化粧板1の例では、化粧シート3A(第1シート材)の幅は、基材2の幅と基材2の高さの2倍と余剰部分を加算した370mmであり、化粧シート3B(第2シート材)の幅は、基材2の幅と余剰部分を加算した250mmである。この例では、余剰部分は、幅方向の両側端部で5mmずつ設けられている。
【0029】
基材2と化粧シート3を互いに接合する接着剤は、例えば、溶剤系2液ウレタン接着剤(湿気硬化型)、PUR系ホットメルト接着剤、酢酸ビニル系接着剤などである。
【0030】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る化粧板1の製造方法について説明する。
まず、化粧シート3Aの裏面に接着剤が塗布される。
そして、図2(A)に示すように、基材2の表面2aが上面とされた状態で、接着剤が塗布された化粧シート3Aが、基材2の表面2aと側面2b,2cの合計3面に貼着される(第1貼着工程)。このとき、化粧シート3Aの余剰部分が、基材2の側面2b,2cの端部よりも外側へはみ出た状態となる。
【0031】
化粧シート3Aの基材2への貼着工程は、例えばロールプレス装置を用いて行われる。化粧シート3Aの貼着工程において、少なくとも化粧シート3Aが加熱されながら貼着される。具体的には、ロールプレス装置におけるロールが高温に設定されたり、貼着前に接着剤、基材2又は化粧シート3Aが予め加熱されたりすることによって、貼着時に基材2、接着剤及び化粧シート3Aの温度が上昇した状態とされる。
【0032】
接着剤として、例えば溶剤系2液ウレタン接着剤(湿気硬化型)が用いられる場合、プレス温度が約70℃に設定されたロールプレス装置によって化粧シート3A、接着剤、及び基材2が加熱されながら貼着される。また、貼着前に、基材2や接着剤が塗布された化粧シート2Aが、ヒーターによって予め加熱される。接着剤として、固形であるPUR系ホットメルト接着剤が用いられる場合、ロールプレス装置自体は温度上昇させず、接着剤が例えば120℃に加熱されて、化粧シート3Aへの塗布の際に溶融された状態とされている。そして、ロールプレス装置による貼着時には、PUR系ホットメルト接着剤の熱によって化粧シート3Aが加熱される。なお、PUR系ホットメルト接着剤が温度低下によって固化しないように、貼着前に基材2や化粧シート3は、ヒーターによって35℃~55℃に設定される。
【0033】
化粧シート3Aが基材2の表面2aと側面2b,2cに貼着された後、図2(B)に示すように、化粧シート3Aが切断されて、基材2の側面2b,2cの端部からはみ出た化粧シート3Aの余剰部分が切除される(第1切除工程)。
【0034】
化粧シート3Aの余剰部分の切除工程は、加熱された化粧シート3Aが冷却されるのを待たずに、化粧シート3Aの温度が常温よりも高い状態(季節によって異なるが室温よりも高く例えば30℃前後)で行われてもよい。側面2b,2cに接着された化粧シート3Aは、表面2aや裏面2dと比べて収縮量が小さく、また、表面2aに接着された化粧シート3Aは、両側部分の側面2b,2cにおける接着によって拘束される。さらに、後述するとおり、化粧シート3Aの端面3aは、接着剤によって化粧シート3Bの端部に貼着される。したがって、収縮による化粧シート3Aの移動が生じにくく、切除後に冷却された場合でも基材2の角部が露出しづらいためである。
【0035】
余剰部分の切除は、作業者によってカッターで行われてもよいし、加工機械による回転刃の動作やミーリング加工(切削加工)によって行われてもよい。
【0036】
次に、化粧シート3Bの裏面に接着剤が塗布される。
そして、図2(C)及び図3(A)に示すように、化粧シート3Aが貼着された基材2が反転されて、基材2の裏面2dが上面とされた状態で、接着剤が塗布された化粧シート3Bが、基材2の裏面2d及び化粧シート3Aの端面3aに貼着される(第2貼着工程)。このとき、化粧シート3Bの余剰部分が、基材2の側面2b,2cに貼着された化粧シート3Aの端面3aから外側へはみ出た状態となる。化粧シート3Bの基材2への貼着工程は、例えばロールプレス装置を用いて行われる。化粧シート3Bの貼着工程において、少なくとも化粧シート3Bが加熱されながら貼着される。加熱方法は、上述した化粧シート3Aの貼着工程と同様である。
【0037】
化粧シート3Aに対する接着剤の塗布工程、化粧シート3Aの基材2への貼着工程、化粧シート3Aの余剰部分の切除工程、化粧シート3Bに対する接着剤の塗布工程、及び、化粧シート3Bの基材2への貼着工程は、一連の搬送ライン上で行われる。
【0038】
その後、化粧シート3A,3Bが貼着された基材2が、搬送ラインから取り出されて、通常の室温下で養生される(養生工程)。養生によって、化粧シート3Bの貼着工程で加熱された化粧シート3Bの温度を降下させる。例えば、化粧シート3Bの温度は、化粧シート3Aの余剰部分が切除されたときの化粧シート3Aの温度よりも低下させること(季節によるが室温とほぼ同じ温度となること)が望ましい。養生時間は、例えば基材2と化粧シート3を互いに接合させる接着剤の硬化時間に応じて決定される。養生時間は、例えば24時間以上168時間以下であり、例えば48時間に設定される。
【0039】
養生時間が24時間よりも短い場合、接着剤の硬化が不十分であり、化粧シート3の収縮が生じる可能性があるため、接着不良や収縮による基材2の角部の露出が生じるおそれがある。他方、養生時間が168時間よりも長い場合、工場や倉庫の一角に占有される半製品の量が増えたり、納期の長期化による生産効率の低下が生じたりするおそれがある。
【0040】
本実施形態の養生工程では、冷却装置が不要であり、化粧板を製造するための通常の搬送ラインをそのまま用いることができる。また、本実施形態に係る製造方法では、搬送ライン上の冷却装置による冷却時間の影響を受けないため、通常の製造工程と同様のタイミングで、搬送ラインによって基材2等を順次搬送させることができ、生産効率が低下しない。
【0041】
化粧シート3Bが基材2の裏面2dに貼着されて養生された後、図2(D)に示すように、基材2の側面2b,2cに貼着された化粧シート3Aの端面3aから外側へはみ出た化粧シート3Bの余剰部分が切除される(第2切除工程)。図3(B)に示すように、化粧シート3Bの端面3bは、基材2の側面2b,2cに貼着された化粧シート3Aの表面、すなわち、化粧シート3Aの端面3aの外側に一致している。これより、基材2の角部が露出されないように化粧板1の角部が仕上がる。
【0042】
切除作業は、搬送ラインとは別の場所で行うことが可能であり、基材2を上記の搬送ラインに戻す必要はない。化粧シート3Bの余剰部分の切除は、化粧シート3Aと同様に、作業者によってカッターで行われてもよいし、加工機械による回転刃の動作やミーリング加工(切削加工)によって行われてもよい。
【0043】
図3(B)に示すように、化粧シート3Bの端部は、化粧シート3Aの端面3aを被覆する位置に設けられる。化粧シート3Aの端面3aは、接着剤によって化粧シート3Bの端部に貼着されているため、角部の化粧シート3Aと化粧シート3Bの結合が強固となる。したがって、化粧シート3Aの余剰部分の切断後、基材2に対する接着不良等があったとしても、化粧シート3Bとの接着によって拘束されて化粧シート3Aが収縮しにくく基材2の角部が露出しづらい。
【0044】
また、化粧シート3Bの余剰部分の切除工程は、化粧シート3Bの収縮が生じる養生期間の経過後に行われることから、余剰部分の切除後には基材2の裏面2dに貼着された化粧シート3Bが収縮せず、基材2の角部が露出されない。
【0045】
基材2の裏面2dが上面とされた状態で、上方からカッター等の刃が化粧シート3Bに入れられる。これにより、側面2b,2cに貼着された化粧シート3Aの端面3aの外側、すなわち、製作される化粧板1の角部に沿うように化粧シート3Bが切断される。したがって、切断時の刃の位置決めが容易であるだけでなく、化粧シート3Bが化粧シート3Aの端面3aを被覆するように、化粧シート3Bが切断されやすい。
【0046】
また、図6に示すように、角部付近において隣り合う2枚の化粧シート13が重なった状態では、化粧シート13の余剰部分を残さずに、かつ、基材12の角部が露出しないように2枚の化粧シート13を同時に切除することは困難である。これに対して、本実施形態では、上述したとおり、化粧シート3Bの余剰部分の切除が、化粧シート3Aの余剰部分の切除と異なるタイミングで行われる。したがって、それぞれの切除工程で化粧板1の表面に合うように化粧シート3が切除されやすい。よって、化粧シート13が2枚重なった状態で切断される場合と異なり、化粧板1の角部において化粧シート3の余剰部分が残りづらく、また、基材2の角部が露出しづらい。
【0047】
以上、図2(D)に示すように、化粧シート3Bの余剰部分が切除されることによって、化粧板1が完成し、化粧板1は、段ボール等によって梱包される。
【0048】
次に、上述した製造方法のうち養生工程について説明する。
本実施形態では、図4に示すように、上述した養生期間の間、一の基材2が裏面2dを上向きにした状態で、基材2の裏面2dに貼着された化粧シート3Bの上部に、別の化粧シート3A,3Bが貼着された別の基材2が裏面2dを上向きにした状態で積載させることが可能である。これにより、化粧シート3Bの余剰部分が、別の基材2と干渉しないように、化粧シート3A,3Bが貼着された基材2の上部に別の基材2を積載することができる。
【0049】
養生されている基材2は、化粧シート3Bが基材2の裏面2dに貼着されているため、化粧シート3Bの余剰部分が基材2の側面2b,2cに貼着された化粧シート3Aの表面からはみ出た状態となっており、化粧シート3Bの余剰部分が裏面2dの延長方向に延びている。そのため、図4に示すように、複数の基材2が垂直方向に積載されている場合、一の基材2の化粧シート3Bの余剰部分が他の基材2に干渉しない。そのため、基材2に接着された化粧シート3Bが、他の基材2と接触しづらく、化粧シート3Bが基材2から外れにくい。また、化粧シート3Bと裏面2dの接着部分が他の基材2から離れた位置にあるため、養生時に基材2の裏面2d側の角部で接着剤が露出している場合であっても、誤って他の基材2と接着される可能性が少ない。
【0050】
以上、本実施形態は、ささら桁階段に用いられるささら桁や踏み板などの化粧板1の製造方法に適している。また、ささら桁階段用のささら桁や踏み板に限定されず、本実施形態は、基材2の表面2a並びに裏面2d(両方の板面)及び二つの側面2b,2cの4面に化粧シート3が貼着される化粧板1の製造方法に適している。
【0051】
本実施形態によれば、化粧シート3Bの余剰部分の切除工程は、化粧シート3Bの収縮が生じる養生期間の経過後に行われる。したがって、余剰部分の切除後には基材2の裏面2dに貼着された化粧シート3Bが収縮せず、収縮による基材2の角部の露出を防止できる。
【0052】
側面2b,2cに接着された化粧シート3Aは、表面2aや裏面2dと比べて収縮量が小さく、また、表面2aに接着された化粧シート3Aは、両側部分の側面2b,2cにおける接着によって拘束される。さらに、化粧シート3Aの端面3aは、接着剤によって化粧シート3Bの端部に貼着される。そのため、収縮による化粧シート3Aの移動が生じにくく、切除後に冷却された場合でも基材2の角部は露出しづらい。なお、化粧シート3Aの端面3aは、図3(B)に示すように、接着剤によって化粧シート3Bの端部に貼着されているため、角部の化粧シート3Aと化粧シート3Bの結合が強固となる。したがって、化粧シート3Aの余剰部分の切断後、基材2に対する接着不良等があったとしても、化粧シート3Bとの接着によって拘束されて化粧シート3Aが収縮しにくく基材2の角部の露出を防止できる。
【0053】
なお、上述した実施形態では、基材2の角部が90度である場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、図5に示すように、基材2の角部がR面など曲面を有する場合についても上述した製造方法によって化粧板1を製造することができる。
【0054】
また、上述した実施形態では、2枚の化粧シート3A,3Bによって基材2を被覆する場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、4枚の化粧シート3が基材2に貼着されてもよい。この場合、側面2b,2cそれぞれ別の化粧シート3が貼着され、それぞれの側面2b,2cに貼着された化粧シート3の余剰部分が切断された後、表面2a、裏面2dそれぞれに化粧シート3が貼着される。4枚の化粧シート3が貼着される場合においても、側面2b,2cに接着された化粧シート3よりも収縮量が大きい板面側の化粧シート3、すなわち表面2a及び裏面2d側の化粧シート3の余剰部分が養生後に切断される。したがって、余剰部分の切除後には基材2の表面2a及び裏面2dに貼着された化粧シート3が収縮せず、収縮による基材2の角部の露出を防止できる。側面2b,2cに接着された化粧シート3は、表面2aや裏面2dと比べて収縮量が小さい。また、側面2b,2cに貼着された化粧シート3の端面3aは、接着剤によって表面2a及び裏面2dに貼着された化粧シート3の端部に貼着されているため、側面側の化粧シート3が収縮しにくく基材2の角部の露出を防止できる。
【符号の説明】
【0055】
1 :化粧板
2 :基材
2a :表面(第2板面)
2b :側面
2c :側面
2d :裏面(第1板面)
3 :化粧シート
3A :化粧シート(第1シート材)
3B :化粧シート(第2シート材)
3a :端面
3b :端面
12 :基材
13 :化粧シート

図1
図2
図3
図4
図5
図6