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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183689
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】樹脂製蓋および蓋付容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/06 20060101AFI20231221BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B65D43/06 200
B65D81/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097337
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】相馬 克彦
【テーマコード(参考)】
3E067
3E084
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AA23
3E067AB01
3E067AB26
3E067BA07A
3E067BB01A
3E067BB14A
3E067BC01A
3E067BC03A
3E067EA17
3E067EB27
3E067EC11
3E067GD06
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA34
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB13
3E084DC03
3E084FC07
3E084GA08
3E084GB12
3E084KA06
3E084KB01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で段差空隙に起因する液漏れを抑制できる蓋付容器を提供する。
【解決手段】本発明の蓋付き容器は、紙容器100と樹脂製蓋1とからなる。紙容器1は、紙容器開口部104に設けられた紙容器嵌合部103を有し、容器胴面102に段差105を有する。樹脂製蓋1は、蓋天面10と、前記蓋天面10周辺に設けられ、紙容器嵌合部103と嵌合する蓋嵌合部30とを有する。前記蓋嵌合部30は、蓋嵌合部外壁31と、蓋嵌合部天部32と、蓋嵌合部内壁33とを有する。前記蓋嵌合部内壁33は前記紙容器の胴部102に対向する。前記蓋嵌合部内壁33には周外方向に突出するアンダー突起36が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋天面と、
前記蓋天面周辺に設けられ、容器開口部に設けられた容器嵌合部と嵌合する蓋嵌合部とを備え、
前記蓋嵌合部は、蓋嵌合部外壁と、蓋嵌合部天部と、蓋嵌合部内壁とを有し、
前記蓋嵌合部内壁は前記容器の胴部に対向し、
前記蓋嵌合部内壁には周外方向に突出するアンダー突起が設けられている
ことを特徴とする樹脂製蓋。
【請求項2】
前記アンダー突起の肉厚は前記蓋嵌合部天部の肉厚より薄い
ことを特徴とする請求項1記載の樹脂製蓋。
【請求項3】
前記アンダー突起は垂直断面において曲線形状である
ことを特徴とする請求項1記載の樹脂製蓋。
【請求項4】
前記蓋嵌合部内壁のテーパ角は前記容器のテーパ角と等しく、
前記蓋嵌合部内壁には前記アンダー突起の上部に周外方向に突出する段突起が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の樹脂製蓋。
【請求項5】
前記アンダー突起の肉厚は前記段突起の肉厚より薄い
ことを特徴とする請求項4記載の樹脂製蓋。
【請求項6】
紙容器開口部に設けられた紙容器嵌合部を有し、容器胴面に段差を有する紙容器と、
蓋天面と、前記蓋天面周辺に設けられ、前記紙容器嵌合部と嵌合する蓋嵌合部とを有する樹脂製蓋とからなる、蓋付き容器であって、
前記蓋嵌合部は、蓋嵌合部外壁と、蓋嵌合部天部と、蓋嵌合部内壁とを有し、
前記蓋嵌合部内壁は前記紙容器の胴部に対向し、
前記蓋嵌合部内壁には周外方向に突出するアンダー突起が設けられている
ことを特徴とする蓋付容器。
【請求項7】
前記アンダー突起は前記紙容器の段差に対応して少なくとも周方向の一部に設けられている
ことを特徴とする請求項6記載の蓋付容器。
【請求項8】
熱い飲料用である
ことを特徴とする請求項6記載の蓋付容器。
【請求項9】
レンジ加熱用である
ことを特徴とする請求項6記載の蓋付容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器と蓋とからなる蓋付容器に関する。特に、容器胴部やフランジ部に段差がある場合の蓋付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料や汁気の多い食品用の容器では蓋付であることが好ましい。蓋と容器の嵌合構造を工夫することにより、例えば運搬時の液漏れ等を抑制できる(例えば特許文献1)。
【0003】
ところで、近年、環境配慮の観点から紙製容器が好まれている。紙製容器は、底部と、底部から立設される胴部と、胴部上端に形成されるフランジ部とを備える。胴部上端には開口が形成される。フランジ部は外側カール状に形成されることが多い。フランジ部に蓋が嵌合される。
【0004】
円形容器の場合、胴部は略逆円錐台形状であることが一般的である。略扇型状の紙製ブランクの両端部を重ね合わせて、略逆円錐台形状を形成する。この製造過程において、容器胴部及びフランジ部において微小な段差が発生し、段差に起因する空隙が発生する。
【0005】
その結果、蓋と容器の嵌合構造の密着性を向上させても、段差空隙からの液漏れを抑制するには限界がある。特に、近年、蓋付容器は商品の配達、持ち帰りに多用されており、容器転倒リスクの検討が必要である。容器転倒後数秒で戻せば、全体的な液漏れは防止できるが、段差空隙からの液漏れが発生することもある。
【0006】
段差空隙からの液漏れに対し、蓋嵌合部の内側に発泡性材料からなる緩衝材を配置することも検討されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許2004-001892号公報
【特許文献2】特開2019-077475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2記載の液漏れ抑制構造は、別途発泡性材料からなる緩衝材を必須の構成とする。一般論として、構成が増える程、製造工程増、コスト増となり好ましくない。
【0009】
また、特許文献2記載の液漏れ抑制構造では、緩衝材は嵌合部天部裏に設けられており、胴部上部での段差空隙からの液漏れが発生するおそれは残る。
【0010】
したがって、特許文献2記載の液漏れ抑制構造とは異なる手段で、段差空隙からの液漏れを抑制する必要がある。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、簡易な構成で段差空隙に起因する液漏れを抑制できる蓋付容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の樹脂製蓋は、蓋天面と、前記蓋天面周辺に設けられ、容器開口部に設けられた容器嵌合部と嵌合する蓋嵌合部とを備える。前記蓋嵌合部は、蓋嵌合部外壁と、蓋嵌合部天部と、蓋嵌合部内壁とを有する。前記蓋嵌合部内壁は前記容器の胴部に対向する。前記蓋嵌合部内壁には周外方向に突出するアンダー突起が設けられている。
【0013】
アンダー突起は変形しながら容器胴部に密着される。容器段差においては空隙を埋めるように変形する。これにより、段差空隙に起因する液漏れを抑制できる。
【0014】
上記発明において好ましくは、前記アンダー突起の肉厚は前記蓋嵌合部天の肉厚より薄い。
【0015】
薄肉によりアンダー突起は低剛性となり変形しやすくなる。
【0016】
上記発明において好ましくは、前記アンダー突起は垂直断面において曲線形状である。
【0017】
曲線形状によりアンダー突起は低剛性となり変形しやすくなる。
【0018】
上記発明において好ましくは、前記蓋嵌合部内壁のテーパ角は前記紙容器のテーパ角と等しく、前記蓋嵌合部内壁には前記アンダー突起の上部に周外方向に突出する段突起が設けられている。
【0019】
段突起は容器胴部を押圧し密閉性が向上する。また、段突起を形成することで、段部へシートが伸ばされ、更に鉛直方向の距離が長くなるため、よりアンダー突起が薄肉になる。さらに、段突起はアンダー突起と比べて高剛性である結果、アンダー突起の変形を確実にする。
【0020】
上記発明において好ましくは、前記アンダー突起の肉厚は前記段突起の肉厚より薄い。
【0021】
これにより、段突起はアンダー突起と比べて高剛性となる。
【0022】
上記目的を達成するための本発明の蓋付き容器は、紙容器と樹脂製蓋とからなる。紙容器は、紙容器開口部に設けられた紙容器嵌合部を有し、容器胴面に段差を有する。樹脂製蓋は、蓋天面と、前記蓋天面周辺に設けられ、紙容器嵌合部と嵌合する蓋嵌合部とを有する。前記蓋嵌合部は、蓋嵌合部外壁と、蓋嵌合部天部と、蓋嵌合部内壁とを有する。前記蓋嵌合部内壁は前記紙容器の胴部に対向する。前記蓋嵌合部内壁には周外方向に突出するアンダー突起が設けられている。
【0023】
アンダー突起は変形しながら容器胴部に密着される。容器段差においては空隙を埋めるように変形する。これにより、段差空隙に起因する液漏れを抑制できる。
【0024】
上記発明において好ましくは、前記アンダー突起は前記紙容器の段差に対応して少なくとも周方向の一部に設けられている。
【0025】
アンダー突起は全周に設けられていてもよいが、少なくとも段差に対応する位置にあれば、段差空隙に起因する液漏れを抑制できる。
【0026】
上記発明において好ましくは、蓋付き容器は、熱い飲料用である。
【0027】
熱い飲料から発生する蒸気熱により、アンダー突起は柔軟に変形する。
【0028】
上記発明において好ましくは、蓋付き容器は、レンジ加熱用である。
【0029】
レンジ加熱により、アンダー突起は柔軟に変形する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の蓋付容器は、簡易な構成で段差空隙に起因する液漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】蓋付容器の概略構成図
図2】蓋体の概略構成図
図3】蓋体の詳細構成図
図4】蓋と容器の嵌合動作概略説明図
図5】蓋嵌合部内壁と容器胴部との接触状態の詳細説明図
図6】段差リブ動作説明図
図7】容器転倒時動作説明図
図8】変形例
図9】変形例
図10】円形紙容器以外への適用例
【発明を実施するための形態】
【0032】
~基本構成~
図1は蓋付容器の概略構成図である。まず、基本構成について説明する。蓋付容器は蓋1と容器100とからなる。
【0033】
容器100は紙製である。一般にラミネート加工されている。底部101と胴部102とフランジ部103とを備える。底部101は平面視円形である。胴部102は側面視略逆円錐台形状であり、底部101から立設される。胴部上端に形成されるフランジ部103は胴部102上端に形成される。周外側にカール状に形成される。
【0034】
胴部102上端には開口104が形成される。蓋1はフランジ部103に嵌合され、開口104を塞ぐ。
【0035】
胴部102は略扇型状の紙製ブランクの両端部を重ね合わせて形成する。これにより、胴部102およびフランジ部103には段差105が発生する。
【0036】
蓋1は樹脂製である。例えば、ポリプロピレン製である。ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンなどでもよい。
【0037】
~蓋構成~
図2は蓋の概略構成図である。図3は蓋の詳細構成図である。
【0038】
蓋1は蓋天面10と蓋嵌合部30とからなる。蓋嵌合部30は、蓋天面10周縁に設けられ、容器開口104に設けられた容器嵌合部(フランジ部103)と嵌合する。
【0039】
蓋嵌合部30は、蓋嵌合部外壁31と、蓋嵌合部天部32と、蓋嵌合部内壁33とを有する。すなわち蓋嵌合部外壁31と蓋嵌合部内壁33とが対向し、蓋嵌合部外壁31と蓋嵌合部内壁33とは上端において蓋嵌合部天部32と連続し、略門型形状を形成し、門型形状に囲まれた嵌合空間34を形成する。
【0040】
蓋嵌合部内壁33下部にはアンダー突起36が設けられ、蓋嵌合部内壁33中部であってアンダー突起36の上側には段突起37が設けられている(詳細後述)。
【0041】
蓋天面10の構成について説明する。蓋天面中央部11は蓋天面10の中央に位置する。
【0042】
段差リブ部12は蓋天面10に蓋嵌合部内壁33に隣接するように設けられる。段差リブ部12は幅部13と高さ部14とからなる。幅部13は蓋嵌合部内壁33下端から水平に延設される。高さ部14は幅部13端部から斜め上方向に延設される。テーパは0~45度程度が好ましい。
【0043】
段差リブ部15は蓋天面10に段差リブ部12に隣接するように設けられる。段差リブ部15は幅部16と高さ部17とからなる。幅部16は段差リブ部12の高さ部14上端から水平に延設される。高さ部17は幅部16端部から斜め上方向に延設される。テーパは0~45度程度が好ましい。
【0044】
段差リブ部18は蓋天面10に段差リブ部15に隣接するように設けられる。段差リブ部18は幅部(付番省略)と高さ部(付番省略)とからなる。段差リブ部18幅部は段差リブ部15の高さ部17上端から水平に延設される。段差リブ部18高さ部は段差リブ部18幅部端部から下方向に延設され、蓋天面中央部11周縁と連続する。
【0045】
さらに、蓋天面中央部11には周方向略均等に複数(図示5つ)の半径方向に食い込む段差リブ部19が設けられている。
【0046】
~突起~
蓋嵌合部内壁33下部にはアンダー突起36が設けられ、蓋嵌合部内壁33中部であってアンダー突起36の上側には段突起37が設けられている。図示の好適例では1つのアンダー突起36と3つの段突起37が設けられているが、個数は限定されない。
【0047】
アンダー突起36は、周に沿って外に突出するように設けられている。図示の好適例では垂直断面において半楕円形状である。例えば、蓋嵌合部内壁33の高さを10mm程度とする場合、アンダー突起36の長軸径は1~3mm程度であり、短軸径は0.5~1.2mm程度であることが好ましい。半楕円形状の他に、半円、半長円等、垂直断面において曲線形状であると、蓋嵌合時のアンダー突起変形を阻害しないため好ましい。
【0048】
段突起37は、周に沿って外に突出するように設けられている。図示の好適例では垂直断面において直角三角形である。段突起37は、上端から垂直下方向に延設され、下端から水平方向に延設されて形成される。例えば、蓋嵌合部内壁33の高さを10mm程度とする場合、段突起37の高さは1~2mm程度、幅は0.1~0.3mm程度であることが好ましい。
【0049】
段突起37は、段形状により蓋嵌合時に適度な剛性を確保できれば、三角形形状は任意でよい。四角形形状等でもよい。
【0050】
なお、上記寸法は、発明の理解を容易にするための例示であり、各寸法に限定されない。
【0051】
~肉厚~
本願樹脂製蓋の肉厚について検討する。下記寸法は、発明の理解を容易にするための例示であり、各寸法に限定されない。例えば厚み0.3mmのフィルムを成形する。
【0052】
蓋嵌合部外壁31の肉厚は0.17~0.21mmであり、蓋嵌合部天部32の肉厚は0.25~0.27mmであり、蓋嵌合部内壁33上部の突起が形成されない範囲の肉厚は0.21~0.24mmであり、段突起37の肉厚は0.15~0.20mmであり、アンダー突起36の肉厚は0.12~0.14mmである。
【0053】
段差リブ部12高さ部14の肉厚は0.12~0.16mmであり、段差リブ部15高さ部17の肉厚は0.18~0.21mmである。
【0054】
すなわち、アンダー突起36は最も薄肉となり、低剛性により変形しやすい。
【0055】
また、蓋嵌合部内壁33中部において段突起37形成により、段部へシートが伸ばされ、更に鉛直方向の距離が長くなるため、確実にアンダー突起36を薄肉にできる。
【0056】
~嵌合~
図4は蓋1と容器100の嵌合動作を示す概略図である。容器フランジ部103は蓋嵌合部30の嵌合空間34に嵌合される。蓋嵌合部外壁31は容器フランジ部103形状に対応するよう内側に窪んでいる。
【0057】
嵌合時、蓋嵌合部内壁33と容器胴部102は互いに対向する。特に、蓋嵌合部内壁33のテーパ角は紙容器102のテーパ角と等しくし、蓋嵌合部内壁33と容器胴部102とは可能な限り接することが好ましい。これにより密閉性が向上する。
【0058】
図5は、嵌合時の蓋嵌合部内壁33と容器胴部102との接触状態の詳細図である。アンダー突起36は、周に沿って外に突出するように設けられている。
【0059】
容器胴部102には反力が作用する。アンダー突起36は曲線形状および薄肉の相乗効果により変位しやすい。アンダー突起36の弾性力により密閉性がさらに向上する。特に、アンダー突起36は容器段差105による空隙を埋めるように変形する。これにより、簡易な構成で段差105による空隙に起因する液漏れを抑制できる。
【0060】
アンダー突起36が変形しやすいのに対し、段突起37は直角三角形状および比較的厚肉の相乗効果により剛性が高くなる(変位しにくい)。段突起37は周に沿って外に突出するように設けられている。段突起37の凸部が容器胴部102を押圧する。段突起37の押圧力により密閉性が向上する。
【0061】
一方、段差リブ部12はリブとして機能する(詳細後述)。段差リブ部12はリブ機能により剛性が高くなる(変位しにくい)。
【0062】
アンダー突起36の変形が元の形状に戻ろうとするとき、アンダー突起36は容器胴部102と段差リブ部12に挟持され、アンダー突起36の弾性力は維持される。
【0063】
これにより、剛12-柔36-剛37構造が形成される。柔構造が剛構造に挟まれることにより、アンダー突起36は上に逃げることもできず、半径中心方向に逃げることもできず、アンダー突起36は確実に周外方向に変形し、段差105による空隙に起因する液漏れを抑制できる。
【0064】
なお、段差リブ部15はリブとして機能する(詳細後述)。段差リブ部15は段突起37の押圧力に対抗するともに、段差リブ部12のリブ機能を補助する。
【0065】
~段差リブ~
段差リブ部12は蓋天面10に蓋嵌合部内壁33に隣接するように設けられる。段差リブ部12は幅部13と高さ部14とからなる。
【0066】
段差リブ部12の高さ部14はアンダー突起36位置に対応している。図示の例では、アンダー突起36上端及び下端は高さ部14上端下端の間に含まれる。例えば、蓋嵌合部内壁33の高さを10mm程度とし、アンダー突起36の長軸径が1~3mm程度である場合、高さ部14の高さは1~4mm程度であることが好ましい。または、高さ部14の高さはアンダー突起36の長軸径の1.0~1.5倍程度であることが好ましい。より詳細には、段差リブ部12は幅部13外端とアンダー突起36下端は別の微小円弧を介して連続している。なお、微小円弧を介することで、アンダー突起36はより変形しやすくなる。
【0067】
段差リブ12がリブとして機能するように、幅部13は所定幅以内であることが好ましい。幅部13が長すぎると撓んでしまい十分なリブ剛性が得られない。高さ部14の高さは1~4mm程度である場合、幅部13の幅は2~6mmであることが好ましい。または、幅部13の幅は高さ部14の高さの2倍程度が好ましい。上記寸法は、発明の理解を容易にするための例示であり、各寸法に限定されない。
【0068】
これにより、段差リブ部12はリブとして機能し、アンダー突起36の弾性力に対抗する。
【0069】
図6は、段差リブ部15の動作説明図である。
【0070】
段差リブ部15は蓋天面10に段差リブ部12に隣接するように設けられる。段差リブ部15は幅部16と高さ部17とからなる。
【0071】
段差リブ部15の高さ部17は段突起37位置に対応している。図示の例では、段差リブ部15の高さ部17下端位置は3つの段突起37の下端位置に概ね対応している。段差リブ部15の高さ部17上端位置は3つの段突起37高さ方向合計長の1.5倍程度の位置にある。例えば、蓋嵌合部内壁33の高さを10mm程度とし、3つの段突起37の高さ合計が3~6mm程度である場合、高さ部17の高さは2~8mm程度であることが好ましい。または、高さ部17の高さは3つの段突起37高さ合計の0.5~1.5倍程度であることが好ましい。
【0072】
段差リブ15がリブとして機能するように、幅部16は所定幅以内であることが好ましい。幅部16が長すぎると撓んでしまい十分なリブ剛性が得られない。高さ部17の高さは2~8mm程度である場合、幅部16の幅は2~6mmであることが好ましい。または、幅部16の幅は高さ部17の高さの0.5~1.5倍程度が好ましい。上記寸法は、発明の理解を容易にするための例示であり、各寸法に限定されない。
【0073】
これにより段差リブ部15は段突起37の押圧力に対抗するともに、段差リブ部12のリブ機能を補助する。
【0074】
~転倒時検証~
図7は容器転倒時の動作説明図である。本願蓋付容器は密閉性に優れる。したがって、容器転倒後数秒以内で戻せば、全体的な液漏れは防止できる。
【0075】
さらに、アンダー突起36が、容器段差105による空隙に起因する液漏れを抑制できるか、検証した。図示のように、容器段差105が下になるよう転倒した場合、液漏れリスクが最も高くなる。
【0076】
(検証例1)内容物として常温のコーヒーを入れ、転倒後の液滴下開始時間を計測した。アンダー突起36のない従来例5つと、アンダー突起36のある実施例5つを比較したところ、従来例は平均4秒で滴下開始したのに対し、実施例は平均13秒で滴下開始した。容器段差105による空隙に起因する液漏れを完全に防止できないものの、滴下開始時間は3倍近く延び、液漏れ抑制されている。
【0077】
上記検証によれば、容器転倒後数秒以内で戻せば、容器段差105による空隙に起因する液漏れを防止できる。
【0078】
(検証例2)内容物として豚汁を入れレンジ加熱をし、転倒後の液滴下開始時間を計測した。アンダー突起36のない従来例3つと、アンダー突起36のある実施例3つを比較したところ、従来例は平均2秒で滴下開始したのに対し、実施例は3分経過しても滴下しなかった。容器段差105による空隙に起因する液漏れを完全に防止できた。
【0079】
同様の検証を、ユッケジャンと生姜スープでおこなった。ユッケジャンでは豚汁同様に実施例は3分経過しても滴下しなかった。生姜スープでは、3分経過しても滴下しなかった例と、42秒で滴下開始した例と、14秒で滴下開始した例に分かれた。
【0080】
(考察)常温非加熱でも容器段差105による空隙に起因する液漏れ抑制効果を確認できた。レンジ加熱すると当該効果は顕著になる。内容物の加熱により、樹脂が軟化し、アンダー突起36が容器段差105による空隙を塞ぐように柔軟に変形するよう励起されたものと推測できる。
【0081】
レンジ加熱に限らず、内容物として、ホットコーヒー、熱い豚汁、熱いスープ等熱い飲料を対象としても、蒸気熱によりアンダー突起36が容器段差105による空隙を塞ぐように柔軟に変形するよう励起されると推測できる。
【0082】
~変形例~
本願発明は、上記実施形態に限定されず、上記技術思想の範囲で種々の変更が可能である。
【0083】
図8は変形例の一つである。上記実施形態では、アンダー突起36と段突起37との組み合わせによる効果について説明したが、アンダー突起36の変形だけでも本願効果は得られる。図示の変形例においては段突起37を省いている。
【0084】
図9は別の変形例のである。上記実施形態では、アンダー突起36は全周に設けられているが、容器段差105による空隙に起因する液漏れを抑制するためには、容器段差105に対応する箇所に一部あればよい。
【0085】
図10は他の適用例である。上記実施形態では、円形紙容器製造過程に発生する容器段差105に着目したが、本願発明は段差空隙に起因する液漏れリスクに対し広く適用可能である。
【0086】
図10Aは、紙を折り込んで形成した矩形容器である。容器製造過程において段差が発生する。アンダー突起36の変形により、段差空隙に起因する液漏れを抑制できる。
【0087】
図10Bは、一枚の紙から底部と側壁とフランジ部を形成した一枚絞り紙容器である。なお、紙以外の材質(例えば樹脂やアルミ等)で形成してもよい。一枚の紙から容器形状に成形するために、胴部の上下方向やフランジ部の半径方向(周直交方向)に細かい段差が出来る。アンダー突起36の変形により、段差空隙に起因する液漏れを抑制できる。
【符号の説明】
【0088】
1 蓋
10 蓋天面
11 蓋天面中央部
12 段差リブ部
13 幅部
14 高さ部
15 段差リブ部
16 幅部
17 高さ部
18 段差リブ部
19 段差リブ部
30 蓋嵌合部
31 蓋嵌合部外壁
32 蓋嵌合部天部
33 蓋嵌合部内壁
36 アンダー突起
37 段突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10