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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183705
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】油圧装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/028 20060101AFI20231221BHJP
   B30B 15/02 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
F15B11/028 G
B30B15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097358
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100176463
【弁理士】
【氏名又は名称】磯江 悦子
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】上林 淳浩
【テーマコード(参考)】
3H089
4E088
【Fターム(参考)】
3H089AA20
3H089BB17
3H089CC01
3H089DA02
3H089DA07
3H089DA14
3H089DB44
3H089DB48
3H089EE36
3H089FF07
3H089FF10
3H089GG02
3H089JJ04
4E088EA02
4E088GA04
(57)【要約】
【課題】背圧制御における制御性を向上できる油圧装置を提案する。
【解決手段】油圧装置は、圧力指令信号と流量指令信号および第1圧力センサ(PS1)により検出された作動油の圧力を表す信号を受けて、第1油圧ポンプ(P1)の回転数を制御する第1制御部と、第2油圧ポンプ(P2,P3)の回転数を制御する第2制御部とを備え、第1制御部は、アクチュエータの背圧制御を行うとき、第1油圧ポンプ(P1)の回転数を表す信号を出力し、第2制御部は、アクチュエータ(10)の背圧制御を行うとき、第1制御部からの第1油圧ポンプ(P1)の回転数を表す信号(Rs)による指示により第2油圧ポンプ(P2,P3)の回転数を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ(10)に油タンク(T)からの作動油を供給する第1油圧ポンプ(P1)と、
上記アクチュエータ(10)に上記油タンク(T)からの作動油を供給する第2油圧ポンプ(P2,P3)と、
上記第1油圧ポンプ(P1)が吐出する作動油の圧力を検出する第1圧力センサ(PS1)と、
圧力指令信号(Pi)と流量指令信号(Qi)および上記第1圧力センサ(PS1)により検出された上記作動油の圧力を表す信号を受けて、上記第1油圧ポンプ(P1)の回転数を制御する第1制御部(101)と、
上記第2油圧ポンプ(P2,P3)の回転数を制御する第2制御部(102,103)と
を備え、
上記第1制御部(101)は、上記アクチュエータの背圧制御を行うとき、上記第1油圧ポンプ(P1)の回転数を表す信号(Rs)を出力し、
上記第2制御部(102,103)は、上記アクチュエータ(10)の背圧制御を行うとき、上記第1制御部(101)からの上記第1油圧ポンプ(P1)の回転数を表す信号(Rs)による指示により上記第2油圧ポンプ(P2,P3)の回転数を制御する、油圧装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧装置において、
上記第2制御部(102,103)は、上記アクチュエータ(10)の背圧制御を行うとき、上記第2油圧ポンプ(P2,P3)の回転数を上記第1油圧ポンプ(P1)の回転数以下に制御する、油圧装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の油圧装置において、
上記第2制御部(102,103)は、上記アクチュエータ(10)の背圧制御を行うとき、上記圧力指令信号(Pi)により表される圧力指令値よりも所定圧力高い圧力制限値を表す信号(Pis)を受けて、上記第2油圧ポンプ(P2,P3)の吐出圧力が上記圧力制限値を越えないように上記第2油圧ポンプ(P2,P3)の回転数を制御する、油圧装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の油圧装置において、
上記アクチュエータ(10)から排出される作動油を上記油タンク(T)に戻すリリーフ弁(40)と、
上記リリーフ弁(40)のベントポートに吐出側が接続された第3油圧ポンプ(P4)と、
上記リリーフ弁(40)のベント圧を検出する第2圧力センサ(PS2)と、
上記第2圧力センサ(PS2)により検出された上記リリーフ弁(40)のベント圧に応じて上記第3油圧ポンプ(P4)の回転数を制御する第3制御部(104)と
を備え、
上記第3制御部(104)は、上記アクチュエータ(10)の背圧制御を行うとき、上記第3油圧ポンプ(P4)から吐出された作動油の圧力で上記リリーフ弁(40)のベント圧を制御することにより上記リリーフ弁(40)の設定圧を制御する、油圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧装置としては、プレス機械のダイクッション力を制御するダイクッション装置がある(例えば、特開2006-315074号公報(特許文献1)参照)。上記ダイクッション装置では、油圧シリンダの下降時に油圧ポンプを逆回転しつつダイクッション圧を制御する(背圧制御)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-315074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなプレス機械等の産業機械で背圧制御する油圧装置の場合、圧力と流量の値に従って油圧ポンプの容量と当該油圧ポンプを駆動するモータの能力を決定している。
【0005】
特に、大容量の油圧ポンプを用いる油圧装置では、当該油圧ポンプとモータの慣性が大きいために、背圧制御の動作開始時に逆回転による圧力制御が遅れてサージ圧力が発生しやすく、制御性が悪いという問題がある。
【0006】
本開示では、背圧制御における制御性を向上できる油圧装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様の油圧装置は、
アクチュエータに油タンクからの作動油を供給する第1油圧ポンプと、
上記アクチュエータに上記油タンクからの作動油を供給する第2油圧ポンプと、
上記第1油圧ポンプが吐出する作動油の圧力を検出する第1圧力センサと、
圧力指令信号と流量指令信号および上記第1圧力センサにより検出された上記作動油の圧力を表す信号を受けて、上記第1油圧ポンプの回転数を制御する第1制御部と、
上記第2油圧ポンプの回転数を制御する第2制御部と
を備え、
上記第1制御部は、上記アクチュエータの背圧制御を行うとき、上記第1油圧ポンプの回転数を表す信号を出力し、
上記第2制御部は、上記アクチュエータの背圧制御を行うとき、上記第1制御部からの上記第1油圧ポンプの回転数を表す信号による指示により上記第2油圧ポンプの回転数を制御する。
【0008】
本開示によれば、第1,第2油圧ポンプにより背圧制御を行うことで、1台の大容量の油圧ポンプに比べて第1,第2油圧ポンプ夫々の慣性を小さくできるので、背圧制御における制御性を向上できる。
【0009】
また、本開示の第2の態様に係る油圧装置は、
第1の態様の油圧装置において、
上記第2制御部は、上記アクチュエータの背圧制御を行うとき、上記第2油圧ポンプの回転数を上記第1油圧ポンプの回転数以下に制御する。
【0010】
本開示によれば、アクチュエータの背圧制御を行うとき、第2油圧ポンプの回転数を第2制御部により第1油圧ポンプの回転数以下に制御するので、第1油圧ポンプと第2油圧ポンプとが干渉し合って制御性が低下するのを抑制できる。
【0011】
また、本開示の第3の態様に係る油圧装置は、
第1の態様または第2の態様の油圧装置において、
上記第2制御部は、上記アクチュエータの背圧制御を行うとき、上記圧力指令信号により表される圧力指令値よりも所定圧力高い圧力制限値を表す信号を受けて、上記第2油圧ポンプの吐出圧力が上記圧力制限値を越えないように上記第2油圧ポンプの回転数を制御する。
【0012】
本開示によれば、アクチュエータの背圧制御時に、第2油圧ポンプの吐出圧力が圧力制限値(=圧力指令値+所定圧力)を越えないようにすることによって、第1油圧ポンプと第2油圧ポンプとが干渉し合って制御性が低下するのを抑制できる。
【0013】
また、本開示の第4の態様に係る油圧装置は、
第1の態様~第3の態様のいずれか1つの油圧装置において、
上記アクチュエータから排出される作動油を上記油タンクに戻すリリーフ弁と、
上記リリーフ弁のベントポートに吐出側が接続された第3油圧ポンプと、
上記リリーフ弁のベント圧を検出する第2圧力センサと、
上記第2圧力センサにより検出された上記リリーフ弁のベント圧に応じて上記第3油圧ポンプの回転数を制御する第3制御部と
を備え、
上記第3制御部は、上記アクチュエータの背圧制御を行うとき、上記第3油圧ポンプから吐出された作動油の圧力で上記リリーフ弁のベント圧を制御することにより上記リリーフ弁の設定圧を制御する。
【0014】
本開示によれば、背圧制御時にアクチュエータ内にサージ圧が発生して、アクチュエータの背圧がリリーフ弁の設定圧以上になると、リリーフ弁が動作してアクチュエータから排出される作動油を油タンクに戻すことにより、アクチュエータから発生するサージ圧を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の第1実施形態の油圧装置の概略ブロック図である。
図2】第1実施形態の油圧装置の制御ブロック図である。
図3】第2実施形態の油圧装置の背圧制御を説明するためのフローチャートである。
図4】本開示の第2実施形態の油圧装置の概略ブロック図である。
図5】第2実施形態の油圧装置の制御ブロック図である。
図6】第2実施形態の油圧装置の背圧制御時の圧力変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態を説明する。なお、図面において、同一の参照番号は、同一部分または相当部分を表わすものである。
【0017】
〔第1実施形態〕
図1は、本開示の第1実施形態の油圧装置の概略ブロック図である。この第1実施形態の油圧装置は、プレス機械等の油圧シリンダに作動油を供給する。
【0018】
この第1実施形態の油圧装置は、図1に示すように、油圧シリンダ10に油タンクTからの作動油を供給するメイン油圧ポンプP1と、油圧ポンプP1を駆動するモータM1と、油圧シリンダ10に油タンクTからの作動油を供給するサブ油圧ポンプP2と、サブ油圧ポンプP2を駆動するモータM2と、油圧シリンダ10に油タンクTからの作動油を供給するサブ油圧ポンプP3と、サブ油圧ポンプP2を駆動するモータM3とを備えている。油圧シリンダ10は、アクチュエータの一例である。
【0019】
メイン油圧ポンプP1とサブ油圧ポンプP2およびサブ油圧ポンプP3に同じ性能(1回転あたりの吐出流量が同じ)の油圧ポンプを用いると共に、モータM1とモータM2およびモータM3に同じ性能(例えばモータ容量37kW相当)のモータを用いている。
【0020】
メイン油圧ポンプP1は、第1油圧ポンプの一例である。サブ油圧ポンプP2,P3は、第2油圧ポンプの一例である。圧力センサPS1は、第1圧力センサの一例である。
【0021】
油圧シリンダ10は、シリンダチューブ11と、シリンダチューブ11内を往復動するピストン12と、ピストン12に一端が接続されたピストンロッド13とを有している。油圧シリンダ10のポート10aは、メイン油圧ポンプP1の吐出側に接続されている。
【0022】
サブ油圧ポンプP2の吐出側は、電磁弁20を介して油圧シリンダ10のポート10aに接続されている。サブ油圧ポンプP3の吐出側は、電磁弁30を介して油圧シリンダ10のポート10aに接続されている。
【0023】
電磁弁20は、ソレノイド23が励磁の場合、左側の切り換え位置となり、第1ポート21と第2ポート22が連通する。一方、電磁弁20は、ソレノイド23が非励磁の場合、右側の切り換え位置となり、第1ポート21および第2ポート22が夫々閉鎖される。
【0024】
電磁弁30は、ソレノイド33が励磁の場合、左側の切り換え位置となり、第1ポート31と第2ポート32が連通する。一方、電磁弁30は、ソレノイド33が非励磁の場合、右側の切り換え位置となり、第1ポート31および第2ポート32が夫々閉鎖される。
【0025】
上記油圧装置は、油圧シリンダ10のピストン12を上昇させる制御のときは、電磁弁20,30のソレノイド23,33を非励磁として右側の切り換え位置にし、電磁弁20の第1ポート21と第2ポート22とを閉鎖すると共に、電磁弁30の第1ポート31と第2ポート32とを閉鎖する。一方、油圧シリンダ10のピストン12を下降させる背圧制御時に、電磁弁20,30のソレノイド23,33を励磁して左側の切り換え位置にし、電磁弁20の第1ポート21と第2ポート22とを連通させると共に、電磁弁30の第1ポート31と第2ポート32とを連通させる。
【0026】
圧力センサPS1は、油圧シリンダ10のポート10aとメイン油圧ポンプP1との間の流路の作動油の圧力を検出する。
【0027】
図2は、油圧装置の制御ブロック図である。
【0028】
油圧装置は、図2に示すように、主機コントローラ200からの圧力指令信号Pi,流量指令信号Qi,背圧指令信号BPおよび圧力センサPS1により検出された作動油の圧力を表す信号を受けて、メイン油圧ポンプP1の回転数を制御するメイン制御部101と、主機コントローラ200からの圧力制限信号Pisを受けて、サブ油圧ポンプP2の回転数を制御するサブ制御部102と、主機コントローラ200からの圧力制限信号Pisを受けて、サブ油圧ポンプP3の回転数を制御するサブ制御部103とを備える。メイン制御部101は、第1制御部の一例である。サブ制御部102,103は、第2制御部の一例である。
【0029】
主機コントローラ200からの圧力制限信号Pisが表す圧力制限値pisは、圧力指令信号Piが表す圧力指令値piに所定圧力αを加えた圧力である。
【0030】
背圧指令信号BPは、背圧制御が開始されるときに主機コントローラ200から出力される。背圧指令信号BPがメイン制御部101に入力されない状態で、油圧シリンダ10のピストン12を上昇させる制御のとき、メイン制御部101は、電磁弁20,30のソレノイド23,33を非励磁として右側の切り換え位置にする。そして、メイン制御部101は、主機コントローラ200からの圧力指令信号Pi,流量指令信号Qiに応じてモータM1を制御して、メイン油圧ポンプP1を正回転させる。このとき、電磁弁20,30は閉じた状態でサブ油圧ポンプP2,P3は停止している。
【0031】
一方、背圧指令信号BPがメイン制御部101に入力され、油圧シリンダ10のピストン12を下降させる背圧制御のとき、メイン制御部101は、電磁弁20,30のソレノイド23,33を励磁して左側の切り換え位置にする。そして、メイン制御部101は、主機コントローラ200からの圧力指令信号Pi,流量指令信号Qiに応じてモータM1を制御して、メイン油圧ポンプP1を逆回転させると共に、メイン油圧ポンプP1の回転数を表す回転数信号Rsを出力する。
【0032】
このとき、サブ制御部102は、メイン制御部101からの回転数信号Rsを受けて、モータM2を制御して、メイン油圧ポンプP1と同じ回転数でサブ油圧ポンプP2を逆回転させる。このとき、サブ制御部102は、主機コントローラ200からの圧力制限信号Pisが表す圧力未満になるように、サブ油圧ポンプP2を制御する。
【0033】
同様に、サブ制御部103は、メイン制御部101からの回転数信号Rsを受けて、モータM3を制御して、メイン油圧ポンプP1と同じ回転数でサブ油圧ポンプP3を逆回転させる。このとき、サブ制御部103は、主機コントローラ200からの圧力制限信号Pisが表す圧力未満になるように、サブ油圧ポンプP3を制御する。
【0034】
ここで、メイン制御部101は、圧力センサPS1により検出された作動油の圧力が、圧力指令信号Piが表す圧力と等しくなるように、メイン油圧ポンプP1の回転数を制御する。
【0035】
なお、メイン制御部101からの回転数信号Rsに基づいてサブ油圧ポンプP2,P3をメイン油圧ポンプP1と同じ回転数で逆回転させたが、メイン制御部101からの回転数信号Rsは、回転数の制限値として用いて、サブ油圧ポンプP2,P3の回転数をメイン油圧ポンプP1の回転数未満で逆回転させてもよい。すなわち、サブ制御部102,103は、油圧シリンダ10の背圧制御を行うとき、メイン制御部101からの第1油圧ポンプP1の回転数を表す回転数信号Rsによる指示により第2油圧ポンプP2,P3の回転数を制御するものであればよい。
【0036】
また、メイン油圧ポンプP1とサブ油圧ポンプP2およびサブ油圧ポンプP3に異なる性能の油圧ポンプを用いてもよいし、モータM1,M2,M3に異なる性能のモータを用いてもよい。この場合は、メイン制御部101やサブ制御部102,103は夫々、油圧ポンプやモータの性能に応じて油圧ポンプの回転数を適切に制御する。
【0037】
次に、図3のフローチャートに従って油圧装置の背圧制御について説明する。
【0038】
まず、油圧装置の背圧制御がスタートすると、図3に示すステップS1に進み、メイン制御部101に背圧指令信号BPが入力される。
【0039】
次に、ステップS2に進み、メイン制御部101によって、メイン油圧ポンプP1を逆回転させて、圧力フィードバック制御(圧力制御)を行う。詳しくは、圧力フィードバック制御では、圧力センサPS1により検出された作動油の圧力が、圧力指令信号Piが表す圧力と等しくなるように、メイン油圧ポンプP1の回転数をフィードバック制御する。
【0040】
次に、ステップS3に進み、メイン制御部101から回転数信号Rsをサブ制御部102,103に入力する。
【0041】
次に、ステップS4に進み、サブ制御部102,103によって、サブ油圧ポンプP2,P3を夫々逆回転させて、回転数を制御する。詳しくは、サブ制御部102は、回転数信号Rsが表す回転数になるようにサブ油圧ポンプP2を制御すると共に、サブ制御部103は、回転数信号Rsが表す回転数になるようにサブ油圧ポンプP3を制御する。ここで、サブ制御部102,103は、サブ油圧ポンプP2,P3の回転数のみを制御し、圧力制御は行わず、メイン制御部101のみが圧力制御を行う。
【0042】
上記構成の油圧装置によれば、メイン油圧ポンプP1(第1油圧ポンプ)およびサブ油圧ポンプP2,P3(第2油圧ポンプ)により背圧制御を行うことで、1台の大容量の油圧ポンプに比べてメイン油圧ポンプP1およびサブ油圧ポンプP2,P3夫々の慣性を小さくできるので、背圧制御における制御性を向上でき、油圧シリンダ10を高速で下降させることができる。また、メイン油圧ポンプP1およびサブ油圧ポンプP2,P3夫々の慣性を小さくすることにより、サージ発生を抑制できる。
【0043】
大流量の油圧装置の場合には、その大流量に見合った油圧ポンプとモータとを選定することになり、油圧ポンプとモータの価格が非常に高くなる。一般的に37kwを超えるとモータの価格が急激に高価になると共に、油圧ポンプも流量が300L/min程度までが汎用的な範囲となり、例えば110kWクラスで流量が900L/minを1台の油圧ポンプで賄うと、非常に高価になるだけでなく入手性も悪いので、故障時などの対処が難しくなるという問題がある。これに対して、本開示の油圧装置は、汎用的な低価格の油圧ポンプとモータを複数用いる構成とすることによって、油圧ポンプとモータの入手性を上げ、故障時に迅速な対応が可能となるので、メンテナンス性を大幅に向上できる。
【0044】
また、油圧シリンダ10(アクチュエータ)の背圧制御を行うとき、サブ油圧ポンプP2,P3の回転数をサブ制御部102,103(第2制御部)によりメイン油圧ポンプP1の回転数以下に制御するので、メイン油圧ポンプP1およびサブ油圧ポンプP2,P3が干渉し合って制御性が低下するのを抑制できる。
【0045】
また、油圧シリンダ10の背圧制御時に、サブ油圧ポンプP2,P3の吐出圧力が、圧力制限信号Pisが表す圧力制限値pis(=圧力指令値pi+所定圧力α)を越えないようにすることによって、メイン油圧ポンプP1およびサブ油圧ポンプP2,P3が干渉し合って制御性が低下するのを抑制できる。
【0046】
上記第1実施形態の油圧装置では、油圧シリンダ10のピストン12を上昇させる制御のとき、電磁弁20,30を閉じて、メイン油圧ポンプP1のみを用いて油圧シリンダ10を駆動したが、電磁弁20,30を用いず、メイン油圧ポンプP1およびサブ油圧ポンプP2,P3で油圧シリンダ10のピストン12を上昇させてもよい。
【0047】
〔第2実施形態〕
図4は、本開示の第2実施形態の油圧装置の概略ブロック図である。この第2実施形態の油圧装置は、リリーフ弁40とモータM4と油圧ポンプP4と圧力センサPS2およびリリーフ弁制御部104を除いて第1実施形態の油圧装置と同一の構成をしている。
【0048】
第2実施形態の油圧装置は、油圧シリンダ10から排出される作動油を油タンクTに戻すリリーフ弁40と、リリーフ弁40のベント圧を検出する圧力センサPS2と、リリーフ弁40の設定圧Psetを制御する油圧ポンプP4と、油圧ポンプP4を駆動するモータM4とを備える。油圧ポンプP4は、第3油圧ポンプの一例である。圧力センサPS2は、第2圧力センサの一例である。
【0049】
油圧シリンダ10のポート10aをリリーフ弁40の入口ポート41に接続し、リリーフ弁40の出口ポート42を油タンクTに接続している。リリーフ弁40は、パイロット作動形のリリーフ弁であり、油圧ポンプP4の吐出側をリリーフ弁40のベントポート43に接続している。これにより、油圧ポンプP4の吐出圧力がリリーフ弁40のベントポート43に供給されて、リリーフ弁40の設定圧Psetが制御される。
【0050】
図5は、第2実施形態の油圧装置の制御ブロック図である。この第2実施形態の油圧装置の制御ブロックは、リリーフ弁制御部104を除いて第1実施形態の油圧装置の制御ブロックと同一の構成をしている。リリーフ弁制御部104は、第3制御部の一例である。
【0051】
油圧シリンダ10のピストン12を上昇させる制御と、油圧シリンダ10のピストン12を下降させる背圧制御は、リリーフ弁40の動作を除いて第1実施形態の油圧装置と同じである。
【0052】
リリーフ弁制御部104は、主機コントローラ200からの圧力指令信号Pi,流量指令信号Qi,背圧指令信号BPおよび圧力センサPS2により検出された作動油の圧力を表す信号を受けて、油圧ポンプP4の回転数を制御する。
【0053】
図6は、第2実施形態の油圧装置の背圧制御時の圧力変化の一例を示している。図6において、縦軸は圧力[MPa]を表し、横軸は時間[任意目盛]を表す。
【0054】
図6の例では、油圧シリンダ10の背圧制御の目標圧力を20MPaとする。また、リリーフ弁制御部104により油圧ポンプP4を制御して、リリーフ弁40の設定圧Psetを20MPaに設定している。
【0055】
油圧シリンダ10の背圧制御が開始されると、第1実施形態と同様、メイン油圧ポンプP1およびサブ油圧ポンプP2,P3は逆回転する。
【0056】
例えば、プレス機械の背圧制御では、油圧シリンダ10内にサージ圧が発生する。このとき、油圧シリンダ10のポート10aの圧力がリリーフ弁40の設定圧Pset以上になると、リリーフ弁40が動作して油圧シリンダ10から排出される作動油を油タンクTに戻す。これによって、油圧シリンダ10から発生するサージ圧を抑制する。
【0057】
その後、リリーフ弁制御部104により油圧ポンプP4を制御して、リリーフ弁40の設定圧Psetを22MPaに変更することにより、リリーフ弁40が閉じる。リリーフ弁40が閉じた後は、メイン油圧ポンプP1およびサブ油圧ポンプP2,P3により油圧シリンダ10から排出される作動油を油タンクTに戻す。
【0058】
上記構成の油圧装置によれば、背圧制御時に油圧シリンダ10(アクチュエータ)内にサージ圧が発生して、油圧シリンダ10の背圧がリリーフ弁40の設定圧Pset以上になると、リリーフ弁40が動作して油圧シリンダ10から排出される作動油を油タンクTに戻すことにより、油圧シリンダ10から発生するサージ圧を抑制することができる。
【0059】
上記第2実施形態の油圧装置は、第1実施形態の油圧装置と同様の効果を有する。
【0060】
上記第1,第2実施形態では、アクチュエータとして油圧シリンダ10に片ロッド油圧シリンダを用いたが、両ロッド油圧シリンダや油圧モータ等を用いてもよい。
【0061】
上記第1,第2実施形態では、第2油圧ポンプとしてサブ油圧ポンプP2,P3を用いたが、第2油圧ポンプは1または3以上でもよい。
【0062】
上記第1,第2実施形態では、メイン油圧ポンプP1(第1油圧ポンプ)とサブ油圧ポンプP2(第2油圧ポンプ)およびサブ油圧ポンプP3(第2油圧ポンプ)に同じ性能の油圧ポンプを用いると共に、モータM1,M2,M3に同じ性能のモータを用いた油圧装置について説明したが、第1油圧ポンプと第2油圧ポンプの性能やモータの性能は異なっていてもよい。その場合、第1油圧ポンプを制御する第1制御部や第2油圧ポンプを制御する第2制御部は、制御する油圧ポンプやモータの性能に応じて油圧ポンプの回転数を適切に制御するのが好ましい。
【0063】
本開示の具体的な実施の形態について説明したが、本開示は上記第1,第2実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0064】
10…油圧シリンダ(アクチュエータ)
10a…ポート
11…シリンダチューブ
12…ピストン
13…ピストンロッド
20,30…電磁弁
40…リリーフ弁
101…メイン制御部(第1制御部)
102,103…サブ制御部(第2制御部)
104…リリーフ弁制御部(第3制御部)
M1,M2,M3,M4…モータ
P1…メイン油圧ポンプ(第1油圧ポンプ)
P2,P3…サブ油圧ポンプ(第2油圧ポンプ)
P4…油圧ポンプ(第3油圧ポンプ)
PS1…圧力センサ(第1圧力センサ)
PS2…圧力センサ(第2圧力センサ)
T…油タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6