(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183714
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】暗渠の継手
(51)【国際特許分類】
E21D 11/04 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
E21D11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097370
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000196624
【氏名又は名称】西武ポリマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(72)【発明者】
【氏名】伊比 洋一
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155AA04
2D155BA01
2D155BB01
2D155CA01
2D155GD02
2D155GD03
(57)【要約】
【課題】可撓止水部材を二重に配置することなく、外圧および内圧に対応できる暗渠の継手を提供する。
【解決手段】暗渠の継手100は、接続される暗渠1の周方向に連続し対向する端面2にそれぞれ固定される継手枠体(固定部材)10間に、可撓性で中間部に膨出部21を有し両端部に碇着部22を有した可撓止水部材20を周方向に連続して水密的に架設し可撓止水部材20の変形により暗渠1の相対変位を許容する暗渠の継手100であって、膨出部21の外周側の空間Aに配置され周方向に連続する環状支持部材30と、環状支持部材30の横断面回りに回動可能かつ周方向に間隔を開けて装着され可撓止水部材20への内圧による変形を支える受圧部材40と、受圧部材40の環状支持部材30に対する周方向の移動範囲を規制する間隔保持部材と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続される暗渠の周方向に連続し対向する端面それぞれに固定される固定部材間に、可撓性で中間部に膨出部を有し両端部に碇着部を有した可撓止水部材を周方向に連続して水密的に架設し前記可撓止水部材の変形により前記暗渠の相対変位を許容する暗渠の継手であって、
前記膨出部の外周側の空間に配置され周方向に連続する環状支持部材と、
前記環状支持部材の横断面回りに回動可能かつ周方向に間隔を開けて装着され前記可撓止水部材への内圧による変形を支える受圧部材と、
前記受圧部材の前記環状支持部材に対する周方向の移動範囲を規制する間隔保持部材と、を備えて前記可撓止水部材への内圧に対する変形を許容する、
ことを特徴とする暗渠の継手。
【請求項2】
前記環状支持部材は、横断面が円形の棒材または索条のいずれかで複数に分割され連結部材で連結されて環状に構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の暗渠の継手。
【請求項3】
前記受圧部材は、前記可撓止水部材の変形時に前記暗渠と干渉しない幅とされ、周方向に前記可撓止水部材の肉厚の2倍以下の間隔となる長さとされている、
ことを特徴とする請求項2に記載の暗渠の継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗渠の継手に関する。
【背景技術】
【0002】
上・下水道、導水渠、放流渠等の地中に構築される暗渠には、単位長毎の目地部に止水を保ちつつ相対変位を許容する継手が介装される。
このような暗渠の継手として、例えば、特許文献1に開示されたシールド工法によって構築される暗渠の継手では、
図12に示すように、接続される暗渠1の周方向に連続し対向する端面2間に、短筒状にゴム・合成樹脂等の可撓性を有した可撓止水部材20を外周側と内周側との二重に配置して連結することで、暗渠1に作用する外圧および内圧に対応可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、可撓止水部材20を二重に配置するため、設置に必要な径方向Yの高さが大きくなり、高さが制限された暗渠1への適用が困難となる。また、可撓止水部材20を二重に配置することにより、暗渠1の外径を大きくする必要が生じ、あるいは、有効な内側の空間が小さくなるなどの問題がある。
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、可撓止水部材を二重に配置することなく、外圧および内圧に対応できる暗渠の継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明にかかる暗渠の継手は、
接続される暗渠の周方向に連続し対向する端面それぞれに固定される固定部材間に、可撓性で中間部に膨出部を有し両端部に碇着部を有した可撓止水部材を周方向に連続して水密的に架設し前記可撓止水部材の変形により前記暗渠の相対変位を許容する暗渠の継手であって、
前記膨出部の外周側の空間に配置され周方向に連続する環状支持部材と、
前記環状支持部材の横断面回りに回動可能かつ周方向に間隔を開けて装着され前記可撓止水部材への内圧による変形を支える受圧部材と、
前記受圧部材の前記環状支持部材に対する周方向の移動範囲を規制する間隔保持部材と、を備えて前記可撓止水部材への内圧に対する変形を許容する、
ことを特徴とする。
【0007】
前記環状支持部材は、横断面が円形の棒材または索条のいずれかで複数に分割され連結部材で連結されて環状に構成される、ことが好ましい。
【0008】
前記受圧部材は、前記可撓止水部材の変形時に前記暗渠と干渉しない幅とされ、周方向に前記可撓止水部材の肉厚の2倍以下の間隔となる長さとされている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の暗渠の継手によれば、可撓止水部材を二重に配置することなく、外圧および内圧に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の暗渠の継手の一実施の形態にかかり、
図2中のA-A線に沿う断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態の適用対象の暗渠の概略斜視図である。
【
図3】本発明の一実施の形態の環状支持部材の正面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態のスリーブにかかり、(a)は一部分の拡大縦断面図、(b)は一部分の拡大正面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態の受圧部材にかかり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態の間隔保持部材の縦断面図である。
【
図7】本発明の他の一実施の形態の環状支持部材の正面図である。
【
図8】本発明の他の一実施の形態にかかり、(a)は一部分の拡大縦断面図、(b)は連結部分の拡大縦断面図である。
【
図9】本発明の一実施の形態にかかる伸び状態の断面図である。
【
図10】本発明の一実施の形態にかかる縮み状態の断面図である。
【
図11】本発明の一実施の形態にかかるせん断状態の断面図である。
【
図13】受圧部材のない参考例にかかり、(a)は常態の説明図、(b)は偏った状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の暗渠の継手の一実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
暗渠の継手100は、
図1~
図11に示すように、接続される暗渠1の周方向に連続し対向する端面2にそれぞれ固定される固定部材10間に、可撓性で中間部に膨出部21を有し両端部に碇着部22を有した可撓止水部材20を周方向に連続して水密的に架設し可撓止水部材20の変形により暗渠1の相対変位を許容する暗渠の継手100であって、膨出部21の外周側の空間Aに配置され周方向に連続する環状支持部材30と、環状支持部材30の横断面回りに回動可能かつ周方向に間隔を開けて装着され可撓止水部材20への内圧による変形を支える受圧部材40と、受圧部材40の環状支持部材30に対する周方向の移動範囲を規制する間隔保持部材50と、を備えて構成される。
この暗渠の継手100により、可撓止水部材20を二重に配置する(
図12参照)ことなく、外圧および内圧に対応することができる。
なお、接続される暗渠1は、トンネルに限らず、上・下水道、導水渠、放流渠等の地中に構築される暗渠などであっても良く、暗渠1としての用途は何ら限定するものでない。
【0012】
以下の説明では、暗渠1としてシールド工法によるトンネルに、暗渠の継手100としての可撓セグメントを設ける場合を例に説明する。
暗渠1は、
図2に示すように、シールド工法によって施工される断面形状が円形の暗渠であって、スチールセグメント、コンクリートセグメント、ダクタイルセグメント等のセグメントを円筒状に組み立ててトンネル内面に覆工するとともに、さらにその内周に、図示省略するが、二次覆工としてコンクリートを打設してコンクリート層を形成して構成される。
可撓セグメントで構成される暗渠の継手100は、シールド工法によるトンネルの1次覆工を構成する。環状に連結された可撓セグメントは、軸方向Xの両端の継手枠体(固定部材)10が通常のシールドセグメントによる暗渠1の端面2に連結されて可撓性を備えたトンネルが形成される。
【0013】
暗渠の継手100は、接合するそれぞれの暗渠1の端面2に固定される左右対称の一対の固定部材としての継手枠体10に、ゴム,合成樹脂等の可撓性の可撓止水部材20で水密的に連結して構成され、両継手枠体10が暗渠1の対向する端面2にそれぞれ固定されることによって暗渠の継手100で暗渠1同士を結合する。
左右の継手枠体10の形状および暗渠1への取付構造は左右対称であり、以下、一方の継手枠体10について説明する。なお、継手枠体10は、シールドセグメントと同様に周方向に複数のピース(周分割ピース)に分割されており、複数連結することで暗渠1と対応する所定の径の円環状に形成される。
【0014】
継手枠体10は、暗渠1の外面と等しい曲率で屈曲された所定幅(トンネルの軸方向Xの長さ)で板状の外面板としてのスキンプレート11の内面に、結合桁部材としての主桁12と、支持桁部材としての副桁13がそれぞれ溶接固定される。これら主桁12と副桁13の間に縦リブ部材としての縦リブ14が暗渠1の軸方向Xに配設されるとともに、周方向端部(周分割ピースの端部)には、周方向継手板15が設けられて枠体状に構成されている。主桁12は、リング間ボルト(図示せず)によって暗渠1を構成するセグメントの端面2に締結されることで、暗渠1と連結固定される。
【0015】
主桁12は、スキンプレート11の外端部(暗渠1側の端部)に板面を暗渠1の軸方向Xと直交する方向として溶接固定されており、その高さ(径方向Yの幅)は暗渠1を構成するセグメントと等しい。
【0016】
副桁13は、スキンプレート11の内端部に板面を暗渠1の軸方向Xと直交させて溶接固定される。なお、掘進時に副桁13間に推力受材を設置する場合には、その高さは主桁12の高さの例えば、50~70%以下に設定され、掘進時の推力受材の厚さを確保できるようにし、通常は、副桁13ではなく、主桁12の高さを高くして推力受材に対応するようにする。副桁13には、可撓止水部材20の側縁の碇着部22が、取付ボルト・ナット23によって締め付けられる押え金具24を介して挟むように固定される。なお、取付ボルト・ナット23のナット側には、必要に応じて可撓止水部材20との直接接触を防止するゴム製などの保護部材28が取り付けられる。
【0017】
縦リブ14は、推力伝達が可能な剛性を有する所定厚さのブロック状であって、主桁12と副桁13の間にこれらと直交状態で(板面を暗渠1の軸方向Xとして)介装固定され、周方向に所定の間隔で複数配設されている。その外周側端面(図中、上側の端面)はスキンプレート11の内周面に当接せず両者の間には隙間を有している。内周側端面(図中、下側の端面)は、主桁12の内周側端面より所定量高く(引っ込んで)設定され、ここに雌ねじが端面に直交して形成されている。縦リブ14の雌ねじに固定ボルト17によって、暗渠1の内周側を平坦面とする内側カバーゴム18が対向する暗渠1の間を塞ぐように配置され、可撓止水部材20の伸縮変形等に追従できるように取り付けられる。
【0018】
周方向継手板15は、スキンプレート11、主桁12および副桁13の間を塞ぐようにこれらと直交して介装固定され、その内周側端面は主桁12の内周側端面と一致している。継手枠体10の周分割ピース同士の結合は、周方向継手板15を継手ボルト16によって締結することで行われている(
図1参照)。
【0019】
主桁12と副桁13の間隔(継手枠体10の軸方向Xの幅)は、周分割ピースを結合する継手ボルト16の配置が可能であり、且つ、可撓止水部材20を副桁13に締着する取付ボルト・ナット23を挿入するための最小限の間隔に設定される。
【0020】
一対の継手枠体10は、それぞれ暗渠1を構成するセグメントに主桁12がリング間ボルト(図示せず)よって締結されることで連結固定される。継手枠体10のスキンプレート11の外周面には、両者間を跨いで外側カバープレート19が暗渠1の間を塞ぐように配置され、可撓止水部材20の伸縮変形等に追従できるように取り付けられる。
【0021】
可撓止水部材20は、
図1に示すように、中間の膨出部21が暗渠1の中心側に突き出すように配置され、両側縁の碇着部22が外周側から中心側に屈曲され、両副桁13に取付ボルト・ナット23で締着される押え金具24で水密的に取り付けられる。
可撓止水部材20は、所定硬度のクロロプレンゴム製の所定厚さで所定幅の板状で、幅方向中央に変形を許容する膨出部21が形成され、両側端に碇着部22が中心側に垂直に屈曲されて形成されている。
可撓止水部材20は、ゴムの内部に補強繊維等を内挿して補強しても良い。
【0022】
膨出部21は、所定幅で中心側に膨出した略V字状に形成されており、これを展開させることで幅方向に伸び変形できる(
図9参照)とともに、重ねるように変形させることで縮み変形にも対応できる(
図10参照)。なお、この膨出部21は、略V字状に限らず、逆Ω字状等の形状であっても良く、伸縮などの変形に対向できれば良く、V字状やΩ字状の部分を複数連続させて備えるものであっても良い。
【0023】
押え金具24は、鋼材などの金属で構成される。押え金具24は、
図1に示すように、略Z字状に形成され、外周側の円弧状の押え部25と、中間部の径方向Yに沿う垂直状の押え板部26と、内周側に副桁13に当てる当接部27とを備えている。押え板部26には、取付ボルト・ナット23が挿通されるボルト孔が形成されている。当接部27は、押え部25と逆に副桁13側に突き出して形成され、碇着部22の締め代を考慮した突き出し量とされている。可撓止水部材20は、膨出部21の両側の碇着部22との間の内周側に押え部25が当てられ、碇着部22の対向内側に押え板部26が当てられ、当接部27を副桁13に当てた状態で、押え板部26に挿通された取付ボルト・ナット23で、副桁13と押え板部26で挟むようにして締め付けて固定される。
なお、碇着部22は、取付ボルト・ナット23用のボルト孔を形成せずに押え金具25で挟むように取り付ける場合に限らず、ボルト孔を形成して押え金具24で直接締め付けて取り付けるようにするものであっても良い。
【0024】
このような暗渠の継手100では、可撓止水部材20に暗渠1の外周側からの土圧や水圧などの外圧に対しては、膨出部21が伸長するように変形することで、水密状態を保持して変形を許容することができ、碇着部22には、引き抜き方向(径方向Yの外側方向)の力がほとんど作用しない。
一方、内圧に対しては、例えば
図13に示すように、膨出部21の変形状態が必ずしも均一とならず、膨出部21を中心に左右の変形量が異なり、傾いた状態で変形し、大きく変形した方の碇着部22に大きな引き抜き力が作用するなどの虞があり、内圧に対する耐圧性が外圧に比べて低く、そのまま内圧が作用する状態での使用は難しい。なお、図示参考例では、環状支持部材30を空間Aに配置した場合を示してある。
【0025】
暗渠の継手100では、内圧に対する耐圧性を向上するため、
図1に示すように、膨出部21の外周側の空間Aに配置され周方向に連続する環状支持部材30と、環状支持部材30の横断面回りに回動可能かつ周方向に間隔を開けて装着され可撓止水部材20への内圧による変形を支える受圧部材40と、
図3~
図6に示すように、受圧部材40の環状支持部材30に対する周方向の移動範囲を規制する間隔保持部材50と、を備えている。
【0026】
環状支持部材30は、
図3および
図7に示すように、鋼材などの金属やエンジニアリングプラスチックなどの合成樹脂による棒材やワイヤロープなどの索条が用いられ、溶接やスリーブなどで接合・連結されて環状に形成される。環状支持部材30は、暗渠の継手100の可撓止水部材20の内圧による変形を規制するものであり、
図1に示すように、膨出部21の外周側の空間Aに配置される。環状支持部材30は、空間Aの膨出部21の外周側の略中央に位置し、常態では、自重により環状の上端部が膨出部21に接した状態となる。環状支持部材30は、
図3に示すように、丸棒材を複数、例えば2つの半円状に分割して配置した後、2箇所の分割部分31を溶接することによって接合される。あるいは、分割部分31に形成した雌ねじ部32にスリーブ33を装着して、
図4に示すように、連結される。スリーブ33は、円筒状のパイプで構成され、両端から環状支持部材30の分割部分31の端部が挿入される。環状支持部材30には、分割部分31の外周側から雌ねじ部32が2箇所ずつ形成してある。スリーブ33には、環状支持部材30の雌ねじ部32に対応して側壁部に雌ねじ部34が4箇所形成され、4本の6角穴付止めねじ35がスリーブ33の雌ねじ部34を介して雌ねじ部32にねじ込まれて連結固定される。
また、環状支持部材30は、ワイヤロープなどの索条で構成することもでき、鋼製の1本のワイヤロープ36を、通常のワイヤロープと同様に、
図7および
図8に示すように、連結スリーブ37に差し込んで、側壁部から6角穴付止めねじ35で押さえるように締め付けて連結する。なお、環状支持部材30は、環状に設置できれば良く、スリーブ33や連結スリーブ37に限らず、他の部材で連結するなど特に限定するものでない。
【0027】
受圧部材40は、
図3~
図6に示すように、環状支持部材30の横断面回りに回動可能かつ周方向に間隔を開けて装着され可撓止水部材20への内圧による変形を支える。受圧部材40は、矩形の受圧板41を備え、受圧板41を内圧により変形する可撓止水部材20を外周側に接触させることで、環状支持部材30よりも大きな接触面積として変形を支える。受圧部材40は、内側面の中央部に装着リング42が取り付けられ、装着リング42に環状支持部材30を挿通することで、環状支持部材30の横断面回りに回動可能に装着される。これにより、膨出部21が左右で変形量が異なる場合でも受圧板41の回動により平均化して押えることができる。受圧部材40は、
図1に示すように、暗渠1の空間Aの両側に位置する副桁13と干渉しない幅(暗渠1の軸方向Xの幅)とされ、両副桁13が接近する縮み変形や上下にずれるせん断変形の場合でも暗渠1と干渉しないようにしている(
図6等参照)。
【0028】
受圧部材40は、環状支持部材30に挿通してあり、周方向には、間隔を開けて受圧板41同士が接触しないようにしてある。環状支持部材30には、受圧部材40の間隔を保持するため、側壁部の外周から雌ねじ部が形成され、6角穴付ボルト51をねじ込むことでボルト頭部に受圧板41を当てて移動を規制し受圧板41同士の間隔を保持できるようにしてある。環状支持部材30への受圧部材40の取り付けの際には、受圧板41と6角穴付ボルト51とを交互に取り付けるようにし、周方向の間隔を保持する。受圧部材40同士の間隔は、最も間隔が開いた状態でも可撓止水部材20の肉厚の2倍以下の間隔となるように設定する。こうすることで、受圧部材40同士の間から変形した膨出部21がはみ出すことを防止し、止水性と耐圧性を保持する(
図6など参照)。
なお、間隔保持部材50として、雌ねじ部と6角穴付ボルト51とを用いる場合に限らず、ワイヤロープなどの索条で環状支持部材30を構成する場合には、雌ねじ部を形成することができないことから、間隔を保持する長さの筒状のスリーブ52を用い、受圧部材40とスリーブ52とを交互に環状支持部材30に装着するようにすれば良い(
図8など参照)。なお、受圧部材40の周方向の間隔の保持は、間隔保持部材50に限らず、他の方法であっても良く、間隔を保持できれば特にその方法は、限定するものでない。
【0029】
このような暗渠の継手100では、継手枠体10の組立にともなって、予め環状支持部材30に受圧部材40および間隔保持部材50を取り付けた状態とした後、環状に連結して空間Aに配置する。あるいは、継手枠体10の組立とともに、分割状態の環状支持部材30に受圧部材40および間隔保持部材50を組立ながら最終的に環状に空間Aに配置する。この暗渠の継手100は、
図9に示すように、常態で可撓止水部材20の中央部外周側に環状支持部材30が位置し、受圧部材40が軸方向Xと平行に位置した状態とする。
【0030】
暗渠の継手100では、通常の可撓止水部材と同様に、可撓止水部材20に暗渠1の外周側からの土圧や水圧などの外圧に対しては、環状支持部材30、受圧部材40および間隔保持部材50は空間Aに自由状態で位置するだけで支持機能を発揮せず外圧により可撓止水部材20の膨出部21が伸長するように変形することで、碇着部22には、引き抜き方向(径方向Yの外側方向)の力がほとんど作用せず水密状態を保持して変形を許容することができる。
【0031】
一方、可撓止水部材20に暗渠1の内周側からの水圧などの内圧に対しては、暗渠の継手100で副桁13間の軸方向Xの距離が大きくなる伸びが生じる場合には、膨出部21が外側に伸長するように変形すると、
図9に示すように、受圧部材40が環状支持部材30の横断面を中心に回動することで環状支持部材30が膨出部21の略中央に位置して膨出部21の左右両側の変形を均等に押さえて変形を許容する。これにより、暗渠の継手100では、内圧に対する水密状態を保持して変形を許容でき、碇着部22に対しても均等な力が作用することで耐圧性を確保することができる。
また、暗渠の継手100で副桁13間の軸方向Xの距離が小さくなる縮みが生じる場合には、
図10に示すように、膨出部21が重なるように変形することになり、可撓止水部材20に暗渠1の内周側からの水圧などの内圧に対しても外圧であっても、環状支持部材30、受圧部材40および間隔保持部材50(
図8など参照)は空間Aに自由状態で位置するだけで支持機能を発揮せず、膨出部21の変形だけで碇着部22には、引き抜き方向(径方向Yの外側方向)の力がほとんど作用せず均等な力が作用することで耐圧性を確保することができる。
さらに、暗渠の継手100で可撓止水部材20に暗渠1の内周側からの水圧などの内圧に対して、暗渠の継手100で副桁13間の軸方向Xの位置がずれるせん断が生じる場合には、
図11に示すように、膨出部21が軸方向Xに対して左右に傾くように変形することになるが、受圧部材40が環状支持部材30の横断面を中心に回動することで受圧板41が膨出部21の略中央に位置して膨出部21の左右両側の変形を押さえる。これにより、暗渠の継手100では、膨出部21が左右で傾くものの水密状態を保持して変形を許容でき、碇着部22に対しても均等な力を作用させることで耐圧性を確保することができる。
【0032】
以上、実施の形態とともに、具体的に説明したように、暗渠の継手100は、接続される暗渠1の周方向に連続し対向する端面2にそれぞれ固定される継手枠体(固定部材)10間に、可撓性で中間部に膨出部21を有し両端部に碇着部22を有した可撓止水部材20を周方向に連続して水密的に架設し可撓止水部材20の変形により暗渠1の相対変位を許容する暗渠の継手100であって、膨出部21の外周側の空間Aに配置され周方向に連続する環状支持部材30と、環状支持部材30の横断面回りに回動可能かつ周方向に間隔を開けて装着され可撓止水部材20への内圧による変形を支える受圧部材40と、受圧部材40の環状支持部材30に対する周方向の移動範囲を規制する間隔保持部材50と、を備えて構成される。
かかる構成によれば、暗渠の継手100は、可撓止水部材20を二重(2条)に配置することなく、外圧に対応する一条の可撓止水部材20と内圧による変形を押さえる環状支持部材30、受圧部材40および間隔保持部材50を膨出部21の外周側の空間Aに配置することで、外圧および内圧に対応して水密状態を確保し、かつ変形を許容することができる。
また、暗渠の継手100は、可撓止水部材20を一条だけで良く、内圧による変形を押さえる環状支持部材30、受圧部材40および間隔保持部材50を膨出部21の外周側の空間Aに配置することで、設置スペースを二条の可撓止水部材を設ける場合に比べ大幅に小さくコンパクトにすることができ、暗渠1の有効スペースを大きくすることもできる。さらに、部品点数が少なく、構造も簡素化でき、短時間に施工することもできる。
【0033】
暗渠の継手100では、環状支持部材30は、横断面が円形の棒材または索条のいずれかで複数に分割されスリーブ33や連結スリーブ37による連結部材で連結されて環状に構成される。
かかる構成によれば、連結部材であるスリーブ33や連結スリーブ37で分割された環状支持部材30を環状にすることができ、工場や施工現場で簡単に環状にすることができる。また、環状支持部材30の横断面を円形とすることで、横断面回りに受圧部材40を容易に回動させて可撓止水部材20の変形を均一化して支持することができる。
【0034】
暗渠の継手100では、受圧部材40が可撓止水部材20の変形時に暗渠1と干渉しない幅とされ、周方向に可撓止水部材20の肉厚の2倍以下の間隔となる長さとされる。
かかる構成によれば、受圧部材40の幅と長さとによって可撓止水部材20の変形を阻害することを防止できるとともに、変形に対しては受圧部材40で確実に受圧して変形の均一化を図ることができる。
【0035】
なお、上記の実施の形態では、暗渠の継手として可撓セグメントに適用した場合を例に固定部材として継手枠体を用いる場合で説明したが、枠状の継手枠体とせずに板状の固定部材を直接暗渠の対向する端面に固定するようにして構成することもできる。
また、暗渠は、トンネルのような大径のものに限らず、小径のものであっても良く、主として外圧が作用するもので、何らかの理由で内圧が作用する場合などに広く適用することもできる。
本願発明は、上記実施の形態により何ら限定するものではなく、要旨を逸脱しない範囲で変形を加えることもできるものである。
【符号の説明】
【0036】
100 暗渠の継手
1 暗渠
2 端面
10 継手枠体(固定部材)
11 スキンプレート
12 主桁
13 副桁
14 縦リブ
15 周方向継手板
16 継手ボルト
17 固定ボルト
18 内側カバーゴム
19 外側カバープレート
20 可撓止水部材
21 膨出部
22 碇着部
23 取付ボルト・ナット
24 押え金具
25 押え部
26 押え板部
27 当接部
28 保護部材
30 環状支持部材
31 分割部分
32 雌ねじ部
33 スリーブ
34 雌ねじ部
35 6角穴付止めねじ
36 ワイヤロープ
37 連結スリーブ
40 受圧部材
41 受圧板
42 装着リング
50 間隔保持部材
51 6角穴付ボルト
52 スリーブ
A 空間
X 軸方向
Y 径方向