(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183715
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】装飾フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20231221BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20231221BHJP
C09J 133/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/06
C09J133/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097372
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】阿部 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】大倉 健
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル ヨスト
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004FA01
4J040DF011
4J040DF031
4J040DF061
4J040GA07
4J040GA13
4J040JA09
4J040JB09
4J040LA02
4J040LA06
(57)【要約】
【課題】車両、建築物などの内外装用途に使用することができ、高彩度の色を有する場合であっても下地表面を高度に隠蔽することができる装飾フィルムを提供する。
【解決手段】一実施態様の装飾フィルムは、透明フィルム層と、着色剤を含む第1アクリル感圧接着層と、白色着色剤を含む第2アクリル感圧接着層とをこの順で含む。
透明フィルム層及び第1アクリル感圧接着層を含み第2アクリル感圧接着層を含まない装飾フィルムの構成部分である部分積層体において、背景色を白色及び黒色として透明フィルム層側から測定したときの白色背景色の部分と黒色背景色の部分との色差ΔE
*は13以上であり、装飾フィルムにおいて、背景色を白色及び黒色として透明フィルム層側から測定したときの白色背景色の部分と黒色背景色の部分との色差ΔE
*は11以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム層と、着色剤を含む第1アクリル感圧接着層と、白色着色剤を含む第2アクリル感圧接着層とをこの順で含む装飾フィルムであって、
前記透明フィルム層及び前記第1アクリル感圧接着層を含み前記第2アクリル感圧接着層を含まない前記装飾フィルムの構成部分である部分積層体において、背景色を白色及び黒色として前記透明フィルム層側から測定したときの前記白色背景色の部分と前記黒色背景色の部分との色差ΔE*が13以上であり、
前記装飾フィルムにおいて、背景色を白色及び黒色として前記透明フィルム層側から測定したときの前記白色背景色の部分と前記黒色背景色の部分との色差ΔE*が11以下である、装飾フィルム。
【請求項2】
前記装飾フィルムをアルミニウム板に貼り付けて前記透明フィルム層側から測定したときの彩度C*が40以上である、請求項1に記載の装飾フィルム。
【請求項3】
前記第1アクリル感圧接着層の粘着性ポリマーのガラス転移温度が-40℃以下である、請求項1又は2に記載の装飾フィルム。
【請求項4】
前記第1アクリル感圧接着層が、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを含む、請求項1又は2に記載の装飾フィルム。
【請求項5】
前記第2アクリル感圧接着層の粘着性ポリマーのガラス転移温度が-40℃以下である、請求項1又は2に記載の装飾フィルム。
【請求項6】
前記第2アクリル感圧接着層が、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを含む、請求項1又は2に記載の装飾フィルム。
【請求項7】
前記装飾フィルムの厚さが240μm以下である、請求項1又は2に記載の装飾フィルム。
【請求項8】
ISO5660-1コーンカロリーメータ発熱性試験に準拠して測定される加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下である、請求項1又は2に記載の装飾フィルム。
【請求項9】
前記装飾フィルムが難燃剤を実質的に含まない、請求項1又は2に記載の装飾フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は装飾フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
着色された装飾フィルムは、自動車、鉄道、船舶等の車両、建築物などの内外装用途に広く使用されている。着色された装飾フィルムは、例えば、車両の製造時若しくは建築物の建築時、又は車両若しくは建築物の修繕時に使用される。着色された装飾フィルムは、被着体(下地)表面の色、模様などを効果的に隠蔽できることが望ましい。
【0003】
特許文献1(特開2008-308646号公報)は、「カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、顔料または染料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含むアクリル系着色粘着剤」及び「ベースフィルム層と、上記アクリル系着色粘着剤からなる粘着剤層とを有するマーキングフィルム」を記載している。
【0004】
特許文献2(特開2003-138235号公報)は、「(a)アルキル基の炭素数が1~12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分とする共重合体の樹脂成分100重量部に対して、(b)平均粒径が5~50μm、アスペクト比が50~200である粒子表面が処理されたアルミニウム粉0.1~5重量部、及び(c)酸化チタン5~60重量部を含有してなる隠蔽性を有する粘着剤組成物」及び「隠蔽性を有する粘着剤組成物を基材シート上に、塗布、乾燥してなる粘着シート」を記載している。
【0005】
特許文献3(特開2003-183602号公報)は、「全光線透過率が3~80%である着色フィルムの片面に、粘着剤のベースポリマー100重量部に対して3~50重量部の白色顔料、及び白色顔料添加量の0.3~2重量%のアルミ金属片が含有されてなる粘着剤が積層されてなることを特徴とする装飾用粘着シート」を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-308646号公報
【特許文献2】特開2003-138235号公報
【特許文献3】特開2003-183602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
着色された装飾フィルムが適用される下地表面の色は様々であり、装飾フィルムの色も様々である。例えば、装飾フィルムの色が高彩度の黄色、マゼンタ、ベージュなどであるときに、装飾フィルムによって下地表面を十分に隠蔽することができない場合がある。特に、下地表面の明度が低い場合、あるいは下地表面が異なる色相、明度若しくは彩度、又はこれらの2つ以上の組み合わせを有する場合、装飾フィルムの不十分な隠蔽性が顕著に視認されるおそれがある。
【0008】
本開示は、車両、建築物などの内外装用途に使用することができ、高彩度の色を有する場合であっても下地表面を高度に隠蔽することができる装飾フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、装飾フィルムの感圧接着層を、着色剤を含む第1アクリル感圧接着層、及び白色着色剤を含む第2アクリル感圧接着層の2層を含む積層構造とすることにより、高彩度と高隠蔽性の両方を兼ね備えた装飾フィルムが提供できることを見出した。
【0010】
一実施態様によれば、透明フィルム層と、着色剤を含む第1アクリル感圧接着層と、白色着色剤を含む第2アクリル感圧接着層とをこの順で含む装飾フィルムであって、前記透明フィルム層及び前記第1アクリル感圧接着層を含み前記第2アクリル感圧接着層を含まない前記装飾フィルムの構成部分である部分積層体において、背景色を白色及び黒色として前記透明フィルム層側から測定したときの前記白色背景色の部分と前記黒色背景色の部分との色差ΔE*が13以上であり、前記装飾フィルムにおいて、背景色を白色及び黒色として前記透明フィルム層側から測定したときの前記白色背景色の部分と前記黒色背景色の部分との色差ΔE*が11以下である、装飾フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、車両、建築物などの内外装用途に使用することができ、高彩度の色を有する場合であっても下地表面を高度に隠蔽することができる装飾フィルムを提供することができる。
【0012】
なお、上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施態様の装飾フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0015】
本開示において「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0016】
本開示において「フィルム」には「シート」と呼ばれる物品も包含される。
【0017】
本開示において「感圧接着(性)」とは、使用温度範囲で、例えば0℃以上、50℃以下の範囲において、短時間わずかな圧力を加えただけで様々な表面に接着し、相変化(液体から固体へ)を呈さない材料又は組成物の特性を意味する。本開示において「粘着(性)」は「感圧接着(性)」と相互に交換可能に使用される。
【0018】
本開示において「上に配置される」とは、直接的に上に配置される場合のみならず、間接的に、すなわち他の材料又は層を介して上に配置される場合も含む。
【0019】
本開示において「酸化チタン」は「二酸化チタン(TiO2)」と交換可能に使用される。
【0020】
一実施態様の装飾フィルムは、透明フィルム層と、着色剤を含む第1アクリル感圧接着層と、白色着色剤を含む第2アクリル感圧接着層とをこの順で含む。透明フィルム層及び第1アクリル感圧接着層を含み第2アクリル感圧接着層を含まない装飾フィルムの構成部分である部分積層体において、背景色を白色及び黒色として透明フィルム層側から測定したときの白色背景色の部分と黒色背景色の部分との色差ΔE*は13以上である。装飾フィルムにおいて、背景色を白色及び黒色として透明フィルム層側から測定したときの白色背景色の部分と黒色背景色の部分との色差ΔE*は11以下である。
【0021】
一実施態様では、装飾フィルムは、透明フィルム層と、着色剤を含む第1アクリル感圧接着層と、白色着色剤を含む第2アクリル感圧接着層とからなる。「透明フィルム層と、着色剤を含む第1アクリル感圧接着層と、白色着色剤を含む第2アクリル感圧接着層とからなる」とは、装飾フィルムが、透明フィルム層、第1アクリル感圧接着層、及び第2アクリル感圧接着層、並びに使用時に除去されるライナー以外の層を含まないことを意味する。この実施態様の装飾フィルムは、簡素な層構造を有することから各国の難燃性に関する規制により有利に対応することができる。
【0022】
図1に一実施態様の装飾フィルムの概略断面図を示す。装飾フィルム10は、透明フィルム層12と、第1アクリル感圧接着層14と、第2アクリル感圧接着層16とをこの順で含む。
図1の装飾フィルム10は、更に、任意の構成要素としてライナー18を有する。ライナー18は、被着体への装飾フィルム10の貼り付け前に除去される。
【0023】
透明フィルム層としては、特に限定されず、様々な樹脂のフィルムを使用することができる。樹脂フィルムとしては、例えば、アクリル樹脂フィルム、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)系フィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのポリエステルフィルム、及びポリ塩化ビニル(PVC)系フィルムが挙げられる。透明フィルム層は可撓性を有することが好ましい。透明フィルム層は、単層であってもよく、異種材料を含む2層以上の積層体であってもよい。
【0024】
透明フィルム層は、任意成分として、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、熱安定剤、充填材等の添加剤を含んでもよい。
【0025】
透明フィルム層の厚さは様々であってよく、例えば、約10μm以上、約12μm以上、又は約15μm以上、約200μm以下、約150μm以下、又は約100μm以下とすることができる。装飾フィルムの伸び及び不燃性の観点からは、透明フィルム層の厚さは約80μm以下であることが好ましく、約50μm以下であることがより好ましい。
【0026】
透明フィルム層は、無色透明であるか、透明フィルム層を通して第1アクリル感圧接着層の色の存在が視認できる程度の透明度を有することが好ましい。一実施態様では、透明フィルム層の波長範囲380~780nmにおける全光線透過率は約80%以上、約85%以上、又は約90%以上、100%以下である。本開示において全光線透過率は、JIS A 5759:2008に準拠して測定される。上記全光線透過率を有する透明フィルム層は、装飾フィルムにおいて、第1アクリル感圧接着層及び第2アクリル感圧接着層の組み合わせが元々呈する色相、明度及び彩度を実質的に変化させずに視認可能にすることができる。そのため、第1アクリル感圧接着層及び第2アクリル感圧接着層を形成するときの色合わせに係る作業負担を軽減することができる。
【0027】
透明フィルム層の表面に、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理が施されていてもよく、プライマー層が設けられていてもよい。上記表面処理又はプライマー層により、透明フィルム層と第1アクリル感圧接着層との密着性をより高めることができる。
【0028】
透明フィルム層の第1アクリル感圧接着層とは反対側の表面に、エンボス加工が施されていてもよく、ハードコート層などの表面保護層が設けられていてもよい。
【0029】
第1アクリル感圧接着層は着色剤を含み、主に装飾フィルムの色相、明度及び彩度に寄与する。第1アクリル感圧接着層は、一般に粘着性ポリマーと、着色剤とを含む第1着色接着剤組成物を用いて形成することができる。粘着性ポリマーは、(メタ)アクリル系ポリマーであってよい。第1アクリル感圧接着層は、ビスアミド架橋剤、アジリジン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、エポキシ架橋剤、イソシアネート架橋剤等の架橋剤で架橋されていてもよい。
【0030】
着色剤としては、顔料及び染料が挙げられる。顔料及び染料はそれぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。顔料及び染料の形態は特に限定されず、分散処理が施されていてもよい。
【0031】
顔料としては、例えば、酸化チタン、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、カーボンブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、赤色酸化鉄、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア、酸化鉄系顔料、水酸化鉄系顔料、酸化クロム系顔料、スピネル型焼成系顔料、クロム酸系顔料、クロムバーミリオン系顔料、紺青系顔料、アルミニウム粉末系顔料、ブロンズ粉末系顔料、リン酸カルシウムなどの無機顔料;及びフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、アゾレーキ系顔料、アントラキノン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチンアゾ系顔料、アニリンブラック系顔料、トリフェニルメタン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドンレッドなどのキナクリドン系顔料などの有機顔料が挙げられる。
【0032】
染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キノンフタロン系染料、スチリル系染料、ジフェニルメタン系染料、トリフェニルメタン系染料、オキサジン系染料、トリアジン系染料、キサンタン系染料、アゾメチン系染料、アクリジン系染料、及びジアジン系染料が挙げられる。
【0033】
着色剤の含有量は、装飾フィルムに所望される色相、明度及び彩度に応じて様々であってよいが、例えば、第1アクリル感圧接着層の質量を基準として、約0.1質量%以上、約0.5質量%以上、又は約1質量%以上、約50質量%以下、約45質量%以下、又は約40質量%以下とすることができる。
【0034】
一実施態様では、第1アクリル感圧接着層の粘着性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は約-40℃以下である。上述のとおり、第1アクリル感圧接着層は装飾フィルムの色相、明度及び彩度を調整する機能を有する層である。粘着性ポリマーのガラス転移温度を約-40℃以下とすることにより、第1アクリル感圧接着層は、透明フィルム層及び第2アクリル感圧接着層とより良好に密着することができる。そのため、この実施態様の第1アクリル感圧接着層は、透明フィルム層及び第2アクリル感圧接着層を強固に結合して、装飾フィルムの一体性を更に高める結合層としても機能することができる。
【0035】
粘着性ポリマーが(メタ)アクリル系ポリマーである場合、各ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、下記のFOXの式(Fox, T. G., Bull. Am. Phys. Soc., 1 (1956), p. 123)
【数1】
を用いて計算ガラス転移温度として求めることができる。式中、Tg
iは成分iのホモポリマーのガラス転移温度(℃)、X
iは重合の際に添加した成分iのモノマーの質量分率をそれぞれ示し、iは1~nの自然数であり、
【数2】
である。
【0036】
一実施態様では、第1アクリル感圧接着層は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを含む。カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、多量の着色剤を第1アクリル感圧接着層中に安定に分散させる能力を有するため、第1アクリル感圧接着層を比較的薄くしても、様々な色相、明度及び彩度を第1アクリル感圧接着層に付与することができる。第1アクリル感圧接着層を薄くできることは、装飾フィルムの不燃性の観点からも有利である。また、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、互いに相互作用して、着色剤の分散に起因する第1アクリル感圧接着層の凝集力の低下を抑制してその接着性を維持することができる。これにより、装飾フィルムの製造方法について後述する、第1アクリル感圧接着層と第2アクリル感圧接着層との積層をより容易にすることができる。カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及び/又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、上記架橋剤で架橋されていてもよい。
【0037】
カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系モノマーと、カルボキシ基含有モノマーと、必要に応じてその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーを含む重合性組成物を共重合することにより得ることができる。本開示において、(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、及びその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーを合わせて重合性成分という。(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシ基含有モノマー、及びその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーは、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
(メタ)アクリル系モノマーは、一般にアルキル(メタ)アクリレートを含む。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素原子数は1~12であってよい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-メチルブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレートなどの直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート;及びシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、又はそれらの組み合わせを含むことが好ましい。
【0039】
アルキル(メタ)アクリレートは、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの主成分を構成する。一実施態様では、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートを、重合性成分の質量を基準として、約50質量%以上、約70質量%以上、又は約80質量%以上、約99.5質量%以下、約99質量%以下、又は約98質量%以下の量で含む重合性組成物を共重合して得られたものであり、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を上記質量比で含む。
【0040】
(メタ)アクリル系モノマーは、フェニル(メタ)アクリレート、p-トリル(メタ)アクリレートなどの芳香族(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;又はグリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル含有(メタ)アクリレートを含んでもよい。
【0041】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、及びマレイン酸が挙げられる。カルボキシ基含有モノマーは(メタ)アクリル酸であることが好ましい。本開示において、(メタ)アクリル系モノマーとカルボキシ基含有モノマーのいずれにも該当するもの、例えば(メタ)アクリル酸などは、カルボキシ基含有モノマーとして取り扱う。
【0042】
一実施態様では、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有モノマーを、重合性成分の質量を基準として、約0.5質量%以上、約1質量%以上、又は約2質量%以上、約15質量%以下、約10質量%以下、又は約8質量%以下の量で含む重合性組成物を共重合して得られたものであり、カルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位を上記質量比で含む。
【0043】
(メタ)アクリル系モノマー又はその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムなどのアミド基含有モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー;及び酢酸ビニルなどのビニルエステルも挙げられる。
【0044】
カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの共重合は、ラジカル重合により行なうことができる。ラジカル重合として、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などの公知の重合方法を用いることができる。高分子量のポリマーを容易に合成することができる溶液重合を用いることが有利である。重合開始剤として、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどの有機過酸化物;又は2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(AVN)などのアゾ系重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の使用量は、重合性成分100質量部に対して、一般に約0.01質量部以上、又は約0.05質量部以上、約5質量部以下、又は約3質量部以下である。
【0045】
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとの相互作用により、第1アクリル感圧接着層の凝集力を高めて、第1アクリル感圧接着層の接着特性を向上させることができる。上記凝集力向上は、第1アクリル感圧接着層と第2アクリル感圧接着層との接着性を高めることにも寄与する。
【0046】
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系モノマーと、アミノ基含有モノマーと、必要に応じてその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーを含む重合性組成物を共重合することにより得ることができる。(メタ)アクリル系モノマー、アミノ基含有モノマー、及びその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーは、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
(メタ)アクリル系モノマー及びその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーについては、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーについて説明したものと同様のものを使用することができる。
【0048】
アルキル(メタ)アクリレートは、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの主成分を構成する。一実施態様では、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートを、重合性成分の質量を基準として、約50質量%以上、約70質量%以上、又は約80質量%以上、約99.5質量%以下、約99質量%以下、又は約98質量%以下の量で含む重合性組成物を共重合して得られたものであり、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を上記質量比で含む。
【0049】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート;ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;及びN,N-ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N,N-ジエチルアミノエチルビニルエーテルなどのジアルキルアミノアルキルビニルエーテルが挙げられる。アミノ基含有モノマーは、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。本開示において、(メタ)アクリル系モノマーとアミノ基含有モノマーのいずれにも該当するもの、例えばアミノエチル(メタ)アクリレートなどは、アミノ基含有モノマーとして取り扱う。
【0050】
一実施態様では、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、アミノ基含有モノマーを、重合性成分の質量を基準として、約0.5質量%以上、約1質量%以上、又は約2質量%以上、約20質量%以下、約15質量%以下、又は約10質量%以下の量で含む重合性組成物を共重合して得られたものであり、アミノ基含有モノマーに由来する構成単位を上記質量比で含む。
【0051】
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、芳香族ビニルモノマーに由来するモノマー単位を含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー(以下、本開示において「アミノ基含有非芳香族(メタ)アクリル系ポリマー」ともいう。)であることが好ましい。アミノ基含有非芳香族(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとの相溶性に優れていることから、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとの上記相互作用をより効果的なものにすることができる。
【0052】
アミノ基含有非芳香族(メタ)アクリル系ポリマーは、芳香族ビニルモノマーに由来する構成単位を含まない。芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルアントラキノン、芳香族アミンの(メタ)アクリルアミド、及び水酸基含有芳香族化合物の(メタ)アクリレートが挙げられる。芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、アミノアントラセン、アミノアントラキノン、及びこれらの誘導体が挙げられる。水酸基含有芳香族化合物としては、例えば、上記芳香族アミンに対応する水酸基含有化合物が挙げられる。
【0053】
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの共重合も、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの共重合と同様に、ラジカル重合により行なうことができる。重合方法、重合開始剤及びその使用量は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの共重合について説明したものと同様である。
【0054】
第1アクリル感圧接着層において、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの少なくとも一方は、アクリル系粘着性ポリマーとして機能する。アクリル系粘着性ポリマーは、使用温度(例えば5℃~35℃)で第1アクリル感圧接着層に感圧接着性を付与する。
【0055】
アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、約-70℃~約-40℃とすることができる。一実施態様では、アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度は、約-65℃以上、又は約-60℃以上、約-45℃以下、又は約-50℃以下である。アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度を約-70℃以上とすることにより、第2アクリル感圧接着層に対する接着力を第1アクリル感圧接着層に付与することができる。アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度を約-40℃以下とすることにより、第1アクリル感圧接着層は、透明フィルム層及び第2アクリル感圧接着層とより良好に密着することができる。これにより、第1アクリル感圧接着層は、透明フィルム層及び第2アクリル感圧接着層を強固に結合して、装飾フィルムの一体性を更に高める結合層としても機能することができる。アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、上述したFOXの式を用いて計算ガラス転移温度として求めることができる。
【0056】
一実施態様において、アクリル系粘着性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、約150,000以上、約200,000以上、又は約250,000以上、約2,000,000以下、約1,500,000以下、又は約1,000,000以下である。本開示において「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による標準ポリスチレンで換算した分子量を意味する。
【0057】
カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの質量比は、100:約0.1~50、100:約1~40、若しくは100:約2~30(カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系粘着性ポリマーとして機能する場合)、又は約0.1~50:100、約1~40:100、若しくは約2~30:100(アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系粘着性ポリマーとして機能する場合)とすることができる。
【0058】
一実施態様において、アクリル系粘着性ポリマーとして機能する(メタ)アクリル系ポリマーとは別の(メタ)アクリル系ポリマーが、アクリル系ポリマー添加剤として機能してもよい。すなわち、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系粘着性ポリマーとして機能する場合、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系ポリマー添加剤として機能してもよく、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系粘着性ポリマーとして機能する場合、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系ポリマー添加剤として機能してもよい。アクリル系ポリマー添加剤は、アクリル系粘着性ポリマーとの酸(カルボキシ基)-塩基(アミノ基)相互作用を介して、太陽光への暴露などにより生じるアクリル系粘着性ポリマーの解重合に起因する凝集力の低下を抑制して、第1アクリル感圧接着層の接着力を所望のレベルに維持することができる。
【0059】
一実施態様では、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系粘着性ポリマーであり、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系ポリマー添加剤である。
【0060】
アクリル系ポリマー添加剤のガラス転移温度(Tg)は、約20℃~約120℃とすることができる。一実施態様では、アクリル系ポリマー添加剤のガラス転移温度は、約30℃以上、又は約45℃以上、約100℃以下、又は約80℃以下である。アクリル系ポリマー添加剤のガラス転移温度を約20℃以上とすることにより、太陽光への暴露などにより生じるアクリル系粘着性ポリマーの解重合に起因する凝集力の低下を抑制して、第1アクリル感圧接着層の接着力を所望のレベルに維持することができる。アクリル系ポリマー添加剤のガラス転移温度を約120℃以下とすることにより、常温域での接着性を担保することができる。アクリル系ポリマー添加剤のガラス転移温度は、アクリル系粘着性ポリマーと同様にFOXの式を用いて決定することができる。
【0061】
一実施態様において、アクリル系ポリマー添加剤の重量平均分子量(Mw)は、約1,000以上、約5,000以上、又は約10,000以上、約200,000以下、約100,000以下、又は約80,000以下である。
【0062】
カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの少なくとも一方が、着色剤の分散剤として機能してもよい。この実施態様において、着色剤と、分散剤として機能する(メタ)アクリル系ポリマーとを混合してプレミックス(ミルベースともいう。)を調製し、得られたプレミックスを、第1アクリル感圧接着層の形成に使用される第1着色接着剤組成物の他の成分と混合してもよい。これにより、多量の着色剤を第1アクリル感圧接着層中に安定に分散させることができる。複数の着色剤についてそれぞれプレミックスを調製し、これらのプレミックスを適宜混合することにより、調色を容易に行うこともできる。
【0063】
分散剤として機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、アクリル系粘着性ポリマー又はアクリル系ポリマー添加剤として機能するものと同じであってもよく、異なっていてもよい。後者の場合、第1アクリル感圧接着層は、2種以上のカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー、すなわち分散剤として機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アクリル系粘着性ポリマー又はアクリル系ポリマー添加剤として機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを含む。
【0064】
分散剤として機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、一般に、約1,000以上、又は約10,000以上、約1,500,000以下、又は約800,000以下とすることができる。
【0065】
第1アクリル感圧接着層は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー、及び着色剤、並びに必要に応じて架橋剤、溶剤、及び/又はその他の添加剤を含む第1着色接着剤組成物を用いて、透明フィルム層の上又はライナーの上に形成することができる。
【0066】
第1着色接着剤組成物の調製前に、着色剤と、分散剤として機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを混合してプレミックスを調製してもよい。混合は、例えば、ペイントシェイカー、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、又は3本ロールミルを用いて行うことができる。混合時に、必要に応じて水系溶媒又は有機溶媒を加えてもよい。得られたプレミックスを、第1着色接着剤組成物の他の成分と混合することにより、第1着色接着剤組成物を調製することができる。複数の着色剤を用いる場合、着色剤ごとにプレミックスを調製し、これらのプレミックスを適宜混合することにより調色した後、プレミックス混合物を第1着色接着剤組成物の他の成分と混合してもよい。
【0067】
着色剤の合計と分散剤との質量比は、約1~100:約5~1000、約1~100:約10~700、又は約1~100:約10~500とすることができる。分散剤は、全量がプレミックスの調製時に使用されてもよく、一部がプレミックスの調製時に使用され、残りが第1着色接着剤組成物の調製時に使用されてもよい。
【0068】
架橋剤としては、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー、又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのポリマー鎖間に架橋を形成することができるものであれば特に限定されない。例えば、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの架橋剤として、エポキシ系架橋剤、ビスアミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤などを使用することができる。
【0069】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)(商品名として、TETRAD-X(三菱ガス化学株式会社、日本国東京都千代田区)、E-AX及びE-5XM(いずれも綜研化学株式会社、日本国東京都豊島区))、及びN,N’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビスメチレン)ビス(ジグリシジルアミン)(商品名として、TETRAD-C(三菱ガス化学株式会社、日本国東京都千代田区)、及びE-5C(綜研化学株式会社、日本国東京都豊島区))が挙げられる。
【0070】
ビスアミド系架橋剤としては、例えば、1,1’-イソフタロイル-ビス(2-メチルアジリジン)、1,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ベンゼン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、及び1,8-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)オクタンが挙げられる。
【0071】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート(商品名として、ケミタイト(登録商標)PZ-33(株式会社日本触媒(日本国大阪府大阪市))、及びCrosslinker CX-100(DSM Coating Resins B.V.(オランダ王国ズヴォレ))が挙げられる。
【0072】
カルボジイミド系架橋剤としては、例えば、カルボジライトV-03、V-05、及びV-07(いずれも日清紡ケミカル株式会社(日本国東京都中央区))が挙げられる。
【0073】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、コロネートL、及びコロネートHK(いずれも東ソー株式会社(日本国東京都港区))が挙げられる。
【0074】
架橋剤は、アクリル系粘着性ポリマーとして機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部を基準として、約0.01質量部以上、約0.02質量部以上、又は約0.05質量部以上、約0.5質量部以下、約0.4質量部以下、又は約0.3質量部以下の量で使用することができる。
【0075】
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなど又はこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0076】
その他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、充填材、粘着付与剤などが挙げられる。
【0077】
第1アクリル感圧接着層の厚さは、装飾フィルムに所望される色相、明度及び彩度に応じて様々であってよいが、例えば、約5μm以上、約10μm以上、又は約15μm以上、約100μm以下、約80μm以下、又は約50μm以下とすることができる。装飾フィルムの不燃性の観点からは、第1アクリル感圧接着層の厚さは約80μm以下であることが好ましく、約50μm以下であることがより好ましい。
【0078】
第2アクリル感圧接着層は白色着色剤を含み、主に装飾フィルムの隠蔽性及び接着性に寄与する。装飾フィルムの感圧接着層を、着色剤を含む第1アクリル感圧接着層と、白色着色剤を含む第2アクリル感圧接着層の2層を含む積層構造とすることにより、高彩度と高隠蔽性の両方を装飾フィルムに付与することができる。
【0079】
第2アクリル感圧接着層は、一般に粘着性ポリマーと、白色着色剤とを含む第2着色接着剤組成物を用いて形成することができる。粘着性ポリマーは、第1アクリル感圧接着剤について説明した(メタ)アクリル系ポリマーであってよい。第2アクリル感圧接着層は、第1アクリル感圧接着層について説明した架橋剤で架橋されていてもよい。
【0080】
白色着色剤としては、例えば、酸化チタン、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの白色顔料が挙げられる。白色着色剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。白色着色剤の形態は特に限定されず、分散処理が施されていてもよい。
【0081】
白色顔料は酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンは難燃剤として作用して、装飾フィルムの難燃性を高めることもできる。
【0082】
酸化チタンの平均粒径は、約0.1μm以上、又は約0.15μm以上、約5μm以下、又は約3μm以下とすることができる。本開示における平均粒径とは、凝集粒子(二次粒子)ではなく一次粒子に関する値である。酸化チタンの平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定を用いて決定することができる体積累積粒径D50である。
【0083】
白色着色剤の含有量は、装飾フィルムに所望される隠蔽性及び接着性に応じて様々であってよいが、例えば、第2アクリル感圧接着層の質量を基準として、約5質量%以上、約10質量%以上、又は約15質量%以上、約50質量%以下、約45質量%以下、又は約40質量%以下とすることができる。第2アクリル感圧接着層が酸化チタンを約5質量%~約50質量%含むことにより、装飾フィルムを適用した被着体(下地)表面を部分的に又は完全に隠蔽することができる。
【0084】
第2アクリル感圧接着層は、白色着色剤以外の第2着色剤を更に含んでもよい。第2着色剤としては、顔料及び染料が挙げられる。顔料及び染料はそれぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。顔料及び染料の形態は特に限定されず、分散処理が施されていてもよい。
【0085】
顔料及び染料としては、例えば、第1アクリル感圧接着層について説明したもののうち、白色顔料を除いた無機顔料、有機顔料及び染料が挙げられる。
【0086】
第2着色剤を使用する場合、第2着色剤は無彩色を呈するもの、すなわち黒色着色剤であることが好ましい。第2着色剤として黒色着色剤を用いることにより、第1アクリル感圧接着層が有する色相を変化させずに、装飾フィルムの明度及び彩度を調整することができる。
【0087】
第2着色剤を使用する場合、第2着色剤の含有量は、第2アクリル感圧接着層の質量を基準として、約0.1質量%以上、約0.5質量%以上、又は約1質量%以上、約45質量%以下、約40質量%以下、又は約35質量%以下とすることができる。
【0088】
第2着色剤を使用する場合、白色着色剤と第2着色剤の合計含有量は、第2アクリル感圧接着層の質量を基準として、約5質量%以上、約10質量%以上、又は約15質量%以上、約50質量%以下、約45質量%以下、又は約40質量%以下とすることができる。
【0089】
一実施態様では、第2アクリル感圧接着層の粘着性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は約-40℃以下である。粘着性ポリマーのガラス転移温度を約-40℃以下とすることにより、初期接着性(タック)を第2アクリル感圧接着層に効果的に付与することができる。
【0090】
一実施態様では、第2アクリル感圧接着層は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを含む。カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、多量の白色着色剤を第2アクリル感圧接着層中に安定に分散させる能力を有するため、第2アクリル感圧接着層を比較的薄くしても、高い隠蔽性を第2アクリル感圧接着層に付与することができる。第2アクリル感圧接着層を薄くできることは、装飾フィルムの不燃性の観点からも有利である。また、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、互いに相互作用して、白色着色剤の分散に起因する第2アクリル感圧接着層の凝集力の低下を抑制してその接着性を維持することができる。カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及び/又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、上記架橋剤で架橋されていてもよい。
【0091】
カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの例示的及び好適な組成及び製造方法は、第1アクリル感圧接着層について説明したとおりである。
【0092】
第2アクリル感圧接着層において、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの少なくとも一方は、アクリル系粘着性ポリマーとして機能する。アクリル系粘着性ポリマーは、使用温度(例えば5℃~35℃)で第2アクリル感圧接着層に感圧接着性を付与する。
【0093】
アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、約-70℃~約-40℃とすることができる。一実施態様では、アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度は、約-65℃以上、又は約-60℃以上、約-45℃以下、又は約-50℃以下である。アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度を約-70℃以上とすることにより、接着力及び保持力を第2アクリル感圧接着層に付与することができる。アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度を約-40℃以下とすることにより、初期接着性(タック)を第2アクリル感圧接着層に効果的に付与することができる。アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、上述したFOXの式を用いて計算ガラス転移温度として求めることができる。
【0094】
アクリル系粘着性ポリマーの重量平均分子量(Mw)、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの質量比、並びにアクリル系ポリマー添加剤、そのガラス転移温度(Tg)及び重量平均分子量(Mw)に関する例示的及び好適な実施態様は、第1アクリル感圧接着層について説明したものと同じである。
【0095】
カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの少なくとも一方が、白色着色剤及び任意の第2着色剤の分散剤として機能してもよい。この実施態様における例示的及び好適な分散剤及びプレミックスは、第1アクリル感圧接着層について説明したものと同じである。
【0096】
第2アクリル感圧接着層は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー、及び白色着色剤、並びに必要に応じて第2着色剤、架橋剤、溶剤、及び/又はその他の添加剤を含む第2着色接着剤組成物を用いて、第1アクリル感圧接着層の上又はライナーの上に形成することができる。
【0097】
第2着色接着剤組成物の調製前に、白色着色剤及び任意の第2着色剤と、分散剤として機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを混合してプレミックスを調製してもよい。プレミックス及び第2着色接着剤組成物の調製は、「着色剤」を「白色着色剤及び任意の第2着色剤」に読み替えて、第1アクリル感圧接着層について説明したものと同様の手順で行うことができる。
【0098】
例示的及び好適な架橋剤、溶剤及びその他の添加剤は、第1アクリル感圧接着層について説明したものと同じである。
【0099】
第2アクリル感圧接着層の厚さは、装飾フィルムに所望される隠蔽性及び接着性に応じて様々であってよいが、例えば、約5μm以上、約10μm以上、又は約15μm以上、約100μm以下、約80μm以下、又は約50μm以下とすることができる。装飾フィルムの不燃性の観点からは、第2アクリル感圧接着層の厚さは約80μm以下であることが好ましく、約50μm以下であることがより好ましい。
【0100】
装飾フィルムは、例えば、以下の工程を含む第1の方法に従って製造することができる。第1着色接着剤組成物を、ナイフコート、バーコートなどによりライナー上に塗布し乾燥して、第1アクリル感圧接着層を形成する。任意成分の架橋剤を反応させるために、乾燥時に熱風、オーブンなどを用いて第1アクリル感圧接着層を加熱してもよい。得られた第1アクリル感圧接着層の上に透明フィルム層をドライラミネートなどの方法により積層して、装飾フィルム前駆体を作製する。第2着色接着剤組成物を、ナイフコート、バーコートなどによりライナー上に塗布し乾燥して、第2アクリル感圧接着層を形成する。任意成分の架橋剤を反応させるために、乾燥時に熱風、オーブンなどを用いて第2アクリル感圧接着層を加熱してもよい。装飾フィルム前駆体からライナーを除去し、第1アクリル感圧接着層と第2アクリル感圧接着層とが接するようにドライラミネートなどの方法により積層して、装飾フィルムを形成する。第1アクリル感圧接着層及び第2アクリル感圧接着層の両方が感圧接着性を有するため、上記手順で装飾フィルムを製造することができる。この実施態様では、装飾フィルム前駆体に含まれるライナーが透明フィルム層の支持体として機能できるため、透明フィルム層が薄い場合であってもハンドリングが可能である。
【0101】
以下の工程を含む第2の方法に従って装飾フィルムを製造することもできる。第1着色接着剤組成物を、ナイフコート、バーコートなどにより透明フィルム層の上に直接塗布し、必要に応じて加熱により乾燥して、第1アクリル感圧接着層を形成する。第2着色接着剤組成物を、ナイフコート、バーコートなどによりライナー上に塗布し、必要に応じて加熱により乾燥して、第2アクリル感圧接着層を形成する。第1アクリル感圧接着層と第2アクリル感圧接着層とが接するようにドライラミネートなどの方法により積層して、装飾フィルムを形成する。
【0102】
以下の工程を含む第3の方法に従って装飾フィルムを製造することもできる。第1着色接着剤組成物を、ナイフコート、バーコートなどにより透明フィルム層の上に直接塗布し、必要に応じて加熱により乾燥して、第1アクリル感圧接着層を形成する。第2着色接着剤組成物を、ナイフコート、バーコートなどにより第1アクリル感圧接着層の上に直接塗布し、必要に応じて加熱により乾燥して、第2アクリル感圧接着層を形成する。第2アクリル感圧接着層の上に必要に応じてライナーを積層して、装飾フィルムを形成する。
【0103】
以下の工程を含む第4の方法に従って装飾フィルムを製造することもできる。第2着色接着剤組成物を、ナイフコート、バーコートなどによりライナーの上に塗布し、必要に応じて加熱により乾燥して、第2アクリル感圧接着層を形成する。第1着色接着剤組成物を、ナイフコート、バーコートなどにより第2アクリル感圧接着層の上に直接塗布し、必要に応じて加熱により乾燥して、第1アクリル感圧接着層を形成する。第1アクリル感圧接着層の上に透明フィルム層をドライラミネートなどの方法により積層して、装飾フィルムを形成する。
【0104】
装飾フィルムは、第2アクリル感圧接着層の表面にライナーを有していてもよい。任意の構成要素であるライナーとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロースなどのプラスチック材料、紙、及び前記プラスチック材料のラミネート紙などを挙げることができる。これらのライナーは、シリコーンなどにより剥離処理した表面を有してもよい。ライナーの厚さは、通常約10μm以上、又は約25μm以上、約500μm以下、又は約200μm以下とすることができる。
【0105】
第2アクリル感圧接着層の接着面は平坦であってもよく、凹凸を有してもよい。凹凸接着面には、第2アクリル感圧接着層の接着面に、第2着色接着剤組成物の固形分又は反応物の固形分を含む凸部と、その凸部の周りを取り囲んだ凹部とが形成され、被着体に接着された状態で被着体の表面と接着面との間に凹部が画する外部と連通した連通路が形成される接着面を含む。凹凸接着面を形成する方法の一例を以下説明する。
【0106】
所定の凹凸構造を有する剥離面を持つライナーを用意する。このライナーの剥離面に、第2着色接着剤組成物を塗布し、必要に応じて加熱して、第2アクリル感圧接着層を形成する。これにより、第2アクリル感圧接着層のライナーと接する面(これが装飾フィルムにおける接着面となる。)に、ライナーの凹凸構造(ネガ構造)を転写し、接着面に所定の構造(ポジ構造)を有する凹凸接着面を形成する。接着面の凹凸は、前述したように、被着体に凸部が接着した際に連通路が形成可能な溝を含むように予め設計される。ライナー上に形成された第2アクリル感圧接着層は、上記第1の方法、第2の方法及び第4の方法で用いることができる。
【0107】
第2アクリル感圧接着層の溝は、一定形状の溝を規則的パターンに沿って接着面に配置することにより規則的パターンの溝を形成してもよく、不定形の溝を配置することにより不規則なパターンの溝を形成してもよい。複数の溝が互いに略平行に配置されるように形成される場合、溝の配置間隔は約10μm以上、又は約100μm以上、約2000μm以下、又は約1000μm以下であることが好ましい。溝の深さ(接着面から透明フィルム層の方向に向かって測定した溝の底までの距離)は、通常約10μm以上、約100μm以下である。溝の形状も、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。例えば、溝の形状を、接着面に垂直な方向の溝の断面において、略矩形(台形を含む)、略半円形、又は略半楕円形とすることができる。
【0108】
透明フィルム層及び第1アクリル感圧接着層を含み第2アクリル感圧接着層を含まない装飾フィルムの構成部分である部分積層体において、背景色を白色及び黒色として透明フィルム層側から測定したときの白色背景色の部分と黒色背景色の部分との色差ΔE*は約13以上である。上記色差ΔE*は、約15以上、又は約20以上であってもよい。本開示の部分積層体は、透明フィルム層及び第1アクリル感圧接着層に加えて、任意に透明フィルム層の上に配置されたプライマー層及び表面保護層など、第2アクリル感圧接着層及びライナー以外の装飾フィルムを構成する層を全て含むものと定義され、装飾フィルムから第2アクリル感圧接着層を除去することにより得ることができる。上記色差ΔE*が約13以上であることは、第1アクリル感圧接着層が、主に装飾フィルムの色相、明度及び彩度に寄与する層であって、装飾フィルムの隠蔽性には殆ど寄与しないことを意味する。上記色差ΔE*は、分光測色計を用いて、実施例の「3.隠蔽力」の項で説明された手順に従い決定される。
【0109】
装飾フィルムにおいて、背景色を白色及び黒色として透明フィルム層側から測定したときの白色背景色の部分と黒色背景色の部分との色差ΔE*は約11以下である。上記色差ΔE*の文脈において、装飾フィルムにライナーは含まれない。上記色差ΔE*は、約8以下であることが好ましく、約6以下であることがより好ましい。上記色差ΔE*が約11以下であることは、上記部分積層体の色差ΔE*が約13以上であることと合わせて考慮すると、第2アクリル感圧接着層が、主に装飾フィルムの隠蔽性に寄与する層であることを意味する。上記色差ΔE*は、分光測色計を用いて、実施例の「3.隠蔽力」の項で説明された手順に従い決定される。
【0110】
一実施態様では、装飾フィルムをアルミニウム板に貼り付けて透明フィルム層側から測定したときの彩度C*が約40以上である。上記彩度C*は、約50以上、約65以上、又は約80以上であってもよい。上記彩度C*が約40以上であることは、装飾フィルムについて視認される色が高彩度であることを意味する。彩度C*は、分光測色計を用いて、実施例の「4.彩度C*」の項で説明された手順に従い決定される。
【0111】
装飾フィルムの厚さは様々であってよいが、難燃性の観点からは、装飾フィルムの厚さは約240μm以下であることが好ましい。装飾フィルムの厚さを約240μm以下とすることにより、装飾フィルムに必要な難燃性を付与することができる。本開示において、装飾フィルムの厚さにはライナーの厚さは含まれない。装飾フィルムの厚さは、約200μm以下又は約100μm以下とすることができる。装飾フィルムの厚さは、約30μm以上、約40μm以上、又は約50μm以上とすることができる。
【0112】
装飾フィルムのISO5660-1コーンカロリーメータ発熱性試験に準拠して測定される加熱開始後20分間の総発熱量は8MJ/m2以下である。一実施態様では、前記総発熱量は、約7MJ/m2以下、又は約6MJ/m2以下である。前記総発熱量が8MJ/m2以下である場合、装飾フィルムは不燃性であると判定される。
【0113】
一実施態様では、装飾フィルムは難燃剤を実質的に含まない。ここで「実質的に含まない」とは、装飾フィルムの質量を基準として、難燃剤の含有量が約1質量%未満、約0.5質量%未満、又は約0.2質量%未満であることを意味する。難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、塩素系難燃剤などの有機系難燃剤、及びアンチモン化合物、金属水酸化物、窒素化合物、ホウ素化合物などの無機系難燃剤が挙げられる。本開示において、酸化チタンなどの難燃剤としても機能しうる顔料は、難燃剤の含有量には含まれない。
【0114】
本開示の装飾フィルムは、自動車、鉄道、船舶等の車両、建築物などの内外装目的、及び貯蔵タンク、変電設備等の外壁などの外装目的に好適に使用することができる。一実施態様では、装飾フィルムは車両用である。
【実施例0115】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0116】
装飾フィルムの作製に使用した材料を表1に示す。
【0117】
【0118】
装飾フィルムの作製に使用したミルベース1~3(プレミックス)の配合を表2に示す。
【0119】
【0120】
装飾フィルムの作製に使用した着色接着剤組成物CA1~CA13の配合を表3に示す。着色接着剤組成物CA1~CA13は、ミルベース1~6及びその他の材料を混合することにより調製した。
【0121】
【0122】
例1
着色接着剤組成物CA1をライナー1(L1)上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ30μmの第1アクリル感圧接着層が得られた。第1アクリル感圧接着層をフィルム1(FL1)に貼り合わせて装飾フィルム前駆体を得た。次に、着色接着剤組成物CA2をL1上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ30μmの第2アクリル感圧接着層が得られた。装飾フィルム前駆体のL1を剥離し、第2アクリル感圧接着層を第1アクリル感圧接着層の上に積層して、例1の装飾フィルムを得た。
【0123】
例2
着色接着剤組成物CA3をL1上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ22μmの第1アクリル感圧接着層が得られた。第1アクリル感圧接着層をフィルム2(FL2)に貼り合わせて装飾フィルム前駆体を得た。次に、着色接着剤組成物CA4をL1上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ40μmの第2アクリル感圧接着層が得られた。装飾フィルム前駆体のL1を剥離し、第2アクリル感圧接着層を第1アクリル感圧接着層の上に積層して、例2の装飾フィルムを得た。
【0124】
例3
着色接着剤組成物をCA4からCA5に変更し、第2アクリル感圧接着層の厚さを23μmとした以外は、例2と同様の手順で例3の装飾フィルムを得た。
【0125】
例4
第2アクリル感圧接着層の厚さを15μmとした以外は、例3と同様の手順で例4の装飾フィルムを得た。
【0126】
例5
第2アクリル感圧接着層の厚さを34μmとした以外は、例3と同様の手順で例5の装飾フィルムを得た。
【0127】
例6
着色接着剤組成物CA6をL1上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ20μmの第1アクリル感圧接着層が得られた。第1アクリル感圧接着層をFL2に貼り合わせて装飾フィルム前駆体を得た。次に、着色接着剤組成物CA7をライナー2(L2)上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ34μmの第2アクリル感圧接着層が得られた。装飾フィルム前駆体のL1を剥離し、第2アクリル感圧接着層を第1アクリル感圧接着層の上に積層して、例6の装飾フィルムを得た。
【0128】
例7
着色接着剤組成物をCA7から架橋剤含有量の異なるCA8に変更し、第2アクリル感圧接着層の厚さを33μmとした以外は、例6と同様の手順で例7の装飾フィルムを得た。
【0129】
例8
着色接着剤組成物CA6をL1上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ20μmの第1アクリル感圧接着層が得られた。第1アクリル感圧接着層をFL2に貼り合わせて装飾フィルム前駆体を得た。次に、着色接着剤組成物CA9をL1上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ30μmの第2アクリル感圧接着層が得られた。装飾フィルム前駆体のL1を剥離し、第2アクリル感圧接着層を第1アクリル感圧接着層の上に積層して、例8の装飾フィルムを得た。
【0130】
例9
第1アクリル感圧接着層の厚さを40μmとした以外は、例8と同様の手順で例9の装飾フィルムを得た。
【0131】
例10
着色接着剤組成物CA6をフィルム3(FL3)上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ21μmの第1アクリル感圧接着層が得られた。次に、着色接着剤組成物CA8を第1アクリル感圧接着層の上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ36μmの第2アクリル感圧接着層が得られた。L1を第2アクリル感圧接着層の上に積層し、FL3の支持フィルム(入手時のFL3に付着)を除去して、例10の装飾フィルムを得た。
【0132】
例11
FL3をフィルム4(FL4)に変更し、第1アクリル感圧接着層の厚さを16μmとし、第2アクリル感圧接着層の厚さを38μmとした以外は、例10と同様の手順で例11の装飾フィルムを得た。
【0133】
例12
着色接着剤組成物CA9をL1上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ29μmの第2アクリル感圧接着層が得られた。次に、着色接着剤組成物CA6を第2アクリル感圧接着層の上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ20μmの第1アクリル感圧接着層が得られた。FL2を第1アクリル感圧接着層の上に積層して、例12の装飾フィルムを得た。
【0134】
例13
透明フィルム層をFL2からFL5に変更した以外は、例12と同様の手順で例13の装飾フィルムを得た。
【0135】
例14~例21
第1アクリル感圧接着層を表4の記載のとおり変更した以外は、例8と同様の手順で例14~例21の装飾フィルムを作製した。
【0136】
比較例1
第2アクリル感圧接着層を使用せずに、例1と同様の手順で比較例1の装飾フィルムを得た。
【0137】
比較例2
第2アクリル感圧接着層を使用せずに、例2と同様の手順で比較例2の装飾フィルムを得た。
【0138】
比較例3
第1アクリル感圧接着層を使用せずに、例5と同様の手順で比較例3の装飾フィルムを得た。
【0139】
比較例4~比較例11
第2アクリル感圧接着層を使用せずに、例14~例21とそれぞれ同様の手順で比較例4~比較例11の装飾フィルムを得た。
【0140】
装飾フィルムを以下の項目について評価した。
【0141】
1.接着力
装飾フィルムを幅25mm×長さ150mmに切断して試験片を作製した。試験片をメラミン塗装板(株式会社パルテック、日本国神奈川県平塚市)の上に20℃で貼り付けた。貼り付け方法はJIS Z 0237:2009 8.2.3に準拠した。試験片を20℃で48時間放置した。引張試験機(テンシロン(登録商標)万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)を用いて温度20℃、剥離速度300mm/分で180度剥離を行ったときの接着力(N/25mm)を測定した。
【0142】
2.熱収縮性
装飾フィルムを幅50mm×長さ100mmに切断して試験片を作製した。23℃の環境下で試験片をA5052Pアルミニウム板(株式会社パルテック(日本国神奈川県平塚市))の上にローラーで貼り付けて、23℃の環境下、24時間放置した。試験片にカッターで十字に切り込みを入れた。その後、試験片を65℃で48時間加熱した。加熱エージング後、顕微鏡でフィルムの収縮量(mm)を測定し、最大値を記録した。
【0143】
3.隠蔽力
装飾フィルムを50mm角の正方形に切断して試験片を作製した。試験片を隠蔽率試験紙(市松、隠ぺい性試験紙(ハイディングパワーチャート)、精英堂印刷株式会社(日本国山形県米沢市))上に貼り付けた。白色領域及び黒色領域について、試験片のL*、a*、b*の値を、分光測色計(CM-3700d、コニカミノルタジャパン株式会社(日本国東京都港区))を用いて測定した。白色領域の測定値をL1
*、a1
*、b1
*とし、黒色領域の測定値をL2
*、a2
*、b2
*としたときに、隠蔽力の指標として色差ΔE*を以下の式:
ΔE*=[(L2
*-L1
*)2+(a2
*-a1
*)2+(b2
*-b1
*)2]1/2
で計算して求めた。色差ΔE*が6未満の場合をA、6以上12未満の場合をB、12以上の場合はCと評価した。Aは優れた隠蔽性を有し、Bは良好な隠蔽性を有するものと判定される。
【0144】
4.彩度C*
隠蔽力試験で作製した試験片をアルミニウム板(株式会社パルテック(日本国神奈川県平塚市))の上に貼り付けて、試験片のL*、a*、b*の値を、分光測色計(CM-3700d、コニカミノルタジャパン株式会社(日本国東京都港区))を用いて測定した。彩度C*を以下の式:
C*=[(a*)2+(b*)2]1/2
で計算して求めた。
【0145】
5.不燃性試験
亜鉛メッキ鋼板(厚さ0.27mm)上に装飾フィルムを貼り付けた。ISO5660-1コーンカロリーメータ発熱性試験に準拠して試験を行った。パラメータとして発熱速度(kW/m2)及び総発熱量(MJ/m2)をコーンカロリーメータ(株式会社東洋精機製作所製)を用いて測定した。加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下でありかつ200kW/m2を超える発熱速度を示した時間が合計で10秒以下である場合を合格、それ以外の場合を不合格と判定した。
【0146】
例1~例21及び比較例1~比較例11の装飾フィルムの構成及び評価結果を表4及び表5にそれぞれ示す。
【0147】
【0148】
【0149】
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることも当業者には明らかである。本開示の実施態様の一部を以下に記載する。
[態様1]
透明フィルム層と、着色剤を含む第1アクリル感圧接着層と、白色着色剤を含む第2アクリル感圧接着層とをこの順で含む装飾フィルムであって、
前記透明フィルム層及び前記第1アクリル感圧接着層を含み前記第2アクリル感圧接着層を含まない前記装飾フィルムの構成部分である部分積層体において、背景色を白色及び黒色として前記透明フィルム層側から測定したときの前記白色背景色の部分と前記黒色背景色の部分との色差ΔE*が13以上であり、
前記装飾フィルムにおいて、背景色を白色及び黒色として前記透明フィルム層側から測定したときの前記白色背景色の部分と前記黒色背景色の部分との色差ΔE*が11以下である、装飾フィルム。
[態様2]
前記装飾フィルムをアルミニウム板に貼り付けて前記透明フィルム層側から測定したときの彩度C*が40以上である、態様1に記載の装飾フィルム。
[態様3]
前記第1アクリル感圧接着層の粘着性ポリマーのガラス転移温度が-40℃以下である、態様1又は2に記載の装飾フィルム。
[態様4]
前記第1アクリル感圧接着層が、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを含む、態様1~3のいずれか一態様に記載の装飾フィルム。
[態様5]
前記第2アクリル感圧接着層の粘着性ポリマーのガラス転移温度が-40℃以下である、態様1~4のいずれか一態様に記載の装飾フィルム。
[態様6]
前記第2アクリル感圧接着層が、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを含む、態様1~5のいずれか一態様に記載の装飾フィルム。
[態様7]
前記装飾フィルムの厚さが240μm以下である、態様1~6のいずれか一態様に記載の装飾フィルム。
[態様8]
ISO5660-1コーンカロリーメータ発熱性試験に準拠して測定される加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下である、態様1~7のいずれか一態様に記載の装飾フィルム。
[態様9]
前記装飾フィルムが難燃剤を実質的に含まない、態様1~8のいずれか一態様に記載の装飾フィルム。