(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183718
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両用暖房装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20231221BHJP
B60H 1/03 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B60H1/22 611B
B60H1/03 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097379
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博
(72)【発明者】
【氏名】坂野 晃
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA02
3L211BA32
3L211DA50
3L211FB06
3L211GA49
(57)【要約】
【課題】消費電力を抑制しながら、乗員の快適性を向上させる。
【解決手段】温調した空気を車室内に供給する空調装置と、座席シート近傍の空間を加熱する加熱装置と、前記空調装置及び前記加熱装置を制御する制御装置を備えた車両用暖房装置であって、前記制御装置は、乗員の温冷感を含む快適度を推定する快適度推定部と、前記快適度が予め定めた目標快適度となるように前記空調装置及び前記加熱装置を作動させる場合に、前記空調装置及び前記加熱装置が消費する予想消費電力をそれぞれ算出する消費電力算出部と、前記空調装置の予想消費電力及び前記加熱装置の予想消費電力に基づいて、前記空調装置及び前記加熱装置の少なくとも何れか一方を制御する出力制御部と、を備えた車両用暖房装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温調した空気を車室内に供給する空調装置と、座席シート近傍の空間を加熱する加熱装置と、前記空調装置及び前記加熱装置を制御する制御装置を備えた車両用暖房装置であって、
前記制御装置は、
乗員の温冷感を含む快適度を推定する快適度推定部と、
前記快適度が予め定めた目標快適度となるように前記空調装置及び前記加熱装置を作動させる場合に、前記空調装置及び前記加熱装置が消費する予想消費電力をそれぞれ算出する消費電力算出部と、
前記空調装置の予想消費電力及び前記加熱装置の予想消費電力に基づいて、前記空調装置及び前記加熱装置の少なくとも何れか一方を制御する出力制御部と、を備えた車両用暖房装置。
【請求項2】
前記出力制御部は、
前記快適度により示される温度が、前記目標快適度により示される温度よりも高い場合に、前記空調装置の予想消費電力又は前記加熱装置の予想消費電力のうち、高い予想消費電力を示す方の出力を低下させる、請求項1記載の車両用暖房装置。
【請求項3】
前記出力制御部は、
前記快適度により示される温度が、前記目標快適度により示される温度よりも低い場合に、前記空調装置の予想消費電力又は前記加熱装置の予想消費電力のうち、低い予想消費電力を示す方の出力を上昇させる、請求項1記載の車両用暖房装置。
【請求項4】
前記出力制御部は、
前記快適度により示される温度が、前記目標快適度により示される温度よりも低く、かつ、前記空調装置の吹出温度が所定温度以下の場合に、前記加熱装置の出力を上昇させる、請求項3記載の車両用暖房装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記加熱装置を安全に作動させることができる許容時間を算出する許容時間算出部と、
前記加熱装置の作動開始から現在までに作動した作動時間を算出する作動時間算出部と、をさらに備え、
前記出力制御部は、前記作動時間が前記許容時間を超える場合に、前記加熱装置の出力を低下させるように制御する、請求項1記載の車両用暖房装置。
【請求項6】
前記出力制御部は、
前記快適度により示される温度が、前記目標快適度により示される温度よりも低く、かつ、前記作動時間が前記許容時間を超える場合に、
前記加熱装置の出力を低下させると共に、前記空調装置の出力を上昇させるように制御する、請求項5記載の車両用暖房装置。
【請求項7】
前記許容時間は、前記加熱装置の温度変化の履歴に基づいて算出され、前記加熱装置の作動開始から起算して前記加熱装置を安全に作動させることができる時間である、請求項5記載の車両用暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用暖房装置、特に、車室内に温調された空気を供給する空調装置と座席シート付近の空間を加熱する加熱装置とを用いた車両用暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用暖房装置として、例えば、車両の座席足元に発熱体を配置した輻射熱暖房装置と、車室内に温度調節した空気を供給する空調装置とを備えた、車両用暖房装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の車両用暖房装置では、エンジンを搭載した車両において、足元吹出し風量が保有する足元吹出し熱量と、輻射熱暖房装置の投入電力との相互の割合が、乗員の足において同一温感となるように、車室内空調装置と輻射熱暖房装置を制御している。具体的には、特許文献1には、エンジン水温が所定値以上の場合に空調装置による足元吹き出し風量を増加させると共に輻射熱暖房装置の投入電力を減少させ、エンジン水温が所定値未満の場合に空調装置による足元吹出し風量を減少させると共に輻射熱暖房装置の投入電力を増加させるよう制御することで、足元の温感を満足させつつ省燃費を実現することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術のようなエンジンを搭載した車両では、エンジンの廃熱によって空調を行うため、エンジン水温が上昇した後に空調装置による足元吹き出し風量を増加させ、輻射熱暖房装置の出力を低下させることで消費電力を抑制しながら所望の暖房を行うことができる。
【0006】
しかしながら、エンジンを搭載せずにバッテリから供給された電力で走行する電気自動車等では、空調装置及び輻射熱暖房装置も共にバッテリから供給される電力によって動作する。このため、車両用暖房装置において、消費電力を抑制しつつ所望の暖房を行うために、空調装置又は輻射熱暖房装置のいずれを優先的に用いるかは、走行環境や要求される温熱感によって変動する。したがって、電気自動車等における車両用暖房装置において、上記した従来の車両用暖房装置と同様の制御方法を適用することができない。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、走行用バッテリから供給される電力によって動作する車両用暖房装置において、消費電力を抑制しながら、乗員の快適性を向上させること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明の一態様は、以下の構成を具備する。
すなわち、本発明の一態様に係る車両用暖房装置は、温調した空気を車室内に供給する空調装置と、座席シート近傍の空間を加熱する加熱装置と、前記空調装置及び前記加熱装置を制御する制御装置を備えた車両用暖房装置であって、前記制御装置は、乗員の温冷感を含む快適度を推定する快適度推定部と、前記快適度が予め定めた目標快適度となるように前記空調装置及び前記加熱装置を作動させる場合に、前記空調装置及び前記加熱装置が消費する予想消費電力をそれぞれ算出する消費電力算出部と、前記空調装置の予想消費電力及び前記加熱装置の予想消費電力に基づいて、前記空調装置及び前記加熱装置の少なくとも何れか一方を制御する出力制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を備えた本発明の車両用暖房装置によると、走行用バッテリから供給される電力によって動作する車両用暖房装置において、乗員の快適性を向上させつつ、消費電力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用暖房装置が搭載された車両の車室内を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用暖房装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両用暖房装置に制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用暖房装置1が搭載された車両の車室内を示し、
図2は車両用暖房装置1の概略構成を示している。
図1及び
図2に示すように、車両用暖房装置1は、車両100に搭載され、座席シート101に着座した乗員102に向けて温調された空気を吹き出すことで車室内の暖房を行う空調装置11と、座席シート101近傍の空間を加熱して乗員102を直接的に加温する加熱装置12と、空調装置11及び加熱装置12を制御する制御装置10とを備えている。
【0013】
空調装置11は、車両100の走行用バッテリによって駆動される圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器などを備えた冷媒回路と、空調ユニットとを少なくとも有し、冷媒と直接又は他の熱媒体を介して間接的に熱交換することで温調された空気を車室内に供給する。
加熱装置12には、例えば、電気ヒータなどの輻射熱ヒータを適用することができ、座席シート101近傍の空間、例えば、乗員102の足元を直接的に加熱する。
【0014】
制御装置10は、車両用暖房装置1が搭載される車両100の車両用制御システムの一部として機能する。車両用制御システム(不図示)は車両100の走行に必要な種々のセンサや車載機器類とこれらを制御する複数の車載ECU(Electronic Control Unit)を含み、制御装置10は各種車載ECUや上記センサ、電子機器類と連携して空調装置11及び加熱装置12を制御する。
【0015】
制御装置10及び各車載ECUは、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えて構成されている。また、車載ECUが実行する動作の一部又は全部を、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)やGPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアにより実現することもできる。
【0016】
図2に示すように、制御装置10には、赤外線センサ71、内気センサ72、日射センサ73、着座センサ74、加熱装置温度センサ75、及び吹出温度センサ76が直接又は車両用制御システムの車載ネットワークを介して接続され、これらの各センサが検出したデータが入力される。
【0017】
なお、赤外線センサ71は、乗員の複数箇所から赤外線強度を検出し、乗員の表面(皮膚)温度を取得する。内気センサ72は、車室内の温度を検出する。日射センサ73は、車室内に差し込む日射量を検出する。着座センサ74は、乗員が座席シート101に着座しているか否か、着座している位置を検出する。加熱装置温度センサ75は、加熱装置12における発熱部の温度を検出する。吹出温度センサ76は、空調装置11の吹出口から吹き出される空気の温度を検出する。これらの各センサによって検出された情報は、必要に応じて後述する記憶部50に記憶させておくことができる。
【0018】
図2に示すように、本実施形態において、制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)20、ROM30、RAM40、及び記憶部50を備えている。
CPU20は、ROM30に格納されたプログラムに基づいて種々の処理を実行する。本実施形態では、CPU20は、ROM30に格納されたプログラムを例えばRAM40等のメモリに読み込んで実行することにより、
図2に示す快適度推定部21、消費電力算出部22、許容時間算出部23、作動時間算出部24、及び出力制御部25として機能する。以下、快適度推定部21、消費電力算出部22、許容時間算出部23、作動時間算出部24、及び出力制御部25について説明する。
【0019】
快適度推定部21は、乗員の温冷感を含む快適度を推定する。ここで、快適度とは、乗員の温冷感、すなわち、暑い又は寒いなどの感覚を含み、乗員が「快適」と感じる程度を複数段階で評価し、推定したものである。
【0020】
例えば、快適度は、「0」を乗員が暑くも寒くもなく「快適」と感じる目標快適度として設定し、目標快適度によって示される温度と、推定された快適度によって示される温度とに殆ど差がない状態とする。快適度が0より大きい値は、目標快適度によって示される温度よりも推定した快適度によって示される温度が高く、乗員が「暑い」と感じているとして評価する。反対に、快適度が0より小さい値は、目標快適度によって示される温度よりも指定した快適度によって示される温度が低く、乗員が「寒い」と感じているとして評価する。
【0021】
快適度推定部21による乗員の快適度の推定は、例えば、赤外線センサ71から得られる乗員の表面温度及び車室内表面温度と、内気センサ72から得られる車室内空気温度と、日射センサ73から得られる日射量とに基づいて行う。このとき、乗員の体格によって乗員の快適度が異なることから、着座センサ74により特定される乗員の着座位置を乗員の表面温度の算出に用いることが好ましい。また、車室内にシートヒータやハンドルヒータなどが設けられている場合や、空調装置11及び加熱装置12の作動状態に応じて、加熱装置温度センサ75及び吹出温度センサ76による検出値も用いることで正確に快適度の推定を行うことができる。
【0022】
具体的には、快適度推定部21は、赤外線センサ71、内気センサ72、日射センサ73、着座センサ74、加熱装置温度センサ75、及び吹出温度センサ76における検出値を取得し、これらの各検出値を、予め定めた快適度を推定するための計算式に入力して得られた値から快適度を推定する。なお、快適度を推定するための計算式は、例えば、記憶部50等にあらかじめ記憶しておく。
【0023】
消費電力算出部22は、快適度推定部21によって推定された快適度の、予め定めた目標快適度に対する温冷感ないしは快適度の過不足を算出し、快適度推定部21によって推定された快適度が目標快適度となるように空調装置11及び加熱装置12を作動させる場合に、空調装置11及び加熱装置12が消費する予想消費電力をそれぞれ算出する。一例として、消費電力算出部22では、予め実験や数値解析により得られた計算式やマップデータを記憶部50に記憶させておき、これらを用いて予想消費電力の算出を行う。
【0024】
許容時間算出部23は、加熱装置12を、加熱装置温度センサ75から得られる加熱装置12の現在の温度を維持しながら作動させた場合に、加熱装置12の作動開始時間から起算して加熱装置12を安全に作動させることができる時間を「許容時間」として算出する。このとき、加熱装置12が作動を開始してから現在までに、加熱装置12の温度が変化している場合には、温度履歴に基づいて、「許容時間」を補正する。つまり、「許容時間」は、加熱装置12の温度変化の履歴に基づいて算出され、加熱装置12の作動開始から起算して前記加熱装置を安全に作動させることができる時間である。
加熱装置12の温度履歴は、例えば、加熱装置温度センサ75が検出した温度と当該温度を検出した時刻とを対応付けた温度情報を予め記憶部50に記憶しておき、これを参照することができる。
【0025】
加熱装置12が輻射熱ヒータである場合、座席シート101に着座する乗員102を輻射熱ヒータの発熱体によって直接的に加温するため、長時間の使用により乗員102に低温やけどを生じさせる虞がある。そこで、許容時間算出部23では、乗員102に低温やけどを生じさせずに安全に作動させることができる時間として、「許容時間」について加熱装置12の作動開始からの温度履歴を考慮して算出する。許容時間算出部23による許容時間の算出は、予め実験や数値解析により得られた計算式等を記憶部50に記憶させておき、この計算式を用いて行う。
【0026】
例えば、許容時間算出部23は、加熱装置12の「許容時間」を以下のように算出する。
(許容時間算出例1)
この場合、許容時間算出部23は、加熱装置温度センサ75から得られる加熱装置12の現在の温度が50℃の場合、加熱装置12の作動開始から30分で乗員に低温やけどが発生すると仮定する。一方、許容時間算出部23は、加熱装置12の温度履歴を参照し、加熱装置12の温度が作動開始時から50℃である場合には、安全性を担保するために「許容時間」を15分として算出する。
【0027】
(許容時間算出例2)
許容時間算出部23は、加熱装置温度センサ75から得られる加熱装置12の現在の温度が45℃の場合、加熱装置12の作動開始から60分で乗員に低温やけどが発生すると仮定する。一方、許容時間算出部23は、加熱装置12の温度履歴を参照し、加熱装置12の温度が作動開始時から45℃である場合には、安全性を担保するために「許容時間」を45分に仮に算出する。さらに、加熱装置12の温度履歴に、加熱装置12が50℃で15分間使用されていた履歴がある場合、許容時間を35分に短縮する。このように、加熱装置12が作動した温度に応じて重みづけを行い、許容時間に反映させることで安全性を担保する。
【0028】
作動時間算出部24は、加熱装置12の作動開始から現在までに経過した時間を「作動時間」として算出する。
【0029】
出力制御部25は、消費電力算出部22において算出される空調装置11の予想消費電力及び加熱装置12の予想消費電力に基づいて、空調装置11及び加熱装置12の少なくとも何れか一方を制御する。
【0030】
具体的には、出力制御部25は、快適度推定部21によって推定された快適度と予め定めた目標快適度とを比較し、次のように制御を行う。
すなわち、出力制御部25は、快適度により示される温度が、目標快適度により示される温度よりも高く、乗員が「暑い」と感じていると推定される場合に、空調装置11の予想消費電力又は加熱装置12の予想消費電力のうち、高い予想消費電力を示す装置の出力を低下させる。このとき、加熱装置12の作動について、作動時間算出部24により算出された作動時間と許容時間算出部23により算出された許容時間とを比較し、作動時間が許容時間を超える場合には、予想消費電力の大小にかかわらず少なくとも加熱装置12の出力を低下させる。
【0031】
一方、出力制御部25は、快適度により示される温度が、目標快適度により示される温度よりも低く、乗員が「寒い」と感じていると推定される場合に、空調装置11の予想消費電力又は加熱装置12の予想消費電力のうち、低い予想消費電力を示す装置の出力を上昇させる。このとき、予想消費電力の大小にかかわらず、吹出温度センサ76から取得された空調装置11の吹出温度が所定値以下の場合には、加熱装置12の出力を上昇させる。
【0032】
ただし、加熱装置12の作動について、作動時間算出部24により算出された作動時間と許容時間算出部23により算出された許容時間とを比較し、作動時間が許容時間を超える場合には、加熱装置12の出力を低下させ、空調装置11の出力を上昇させる。
【0033】
出力制御部25において、作動時間と許容時間とを比較した結果に基づく加熱装置12の制御は、例えば以下のように行うことができる。
許容時間算出部23によって算出された許容時間が、上記した許容時間算出例1のように15分である場合、作動時間算出部24によって算出された作動開始から現在までの経過時間である作動時間が15分を超えるか否かを判定し、作動時間が15分を超える場合(作動時間≧許容時間)は、加熱装置12の出力を低下させ、加熱装置12の温度を例えば45℃に下げる。
【0034】
一方、許容時間算出部23によって算出された許容時間が、上記した許容時間算出例2のように35分である場合、作動時間算出部24によって算出された作動開始から現在までの経過時間である作動時間が35分を超えるか否かを判定し、作動時間が35分を超えるまでは加熱装置12の温度を45℃で作動させ、35分を超えた場合(作動時間≧許容時間)に、加熱装置12の出力を低下させ、加熱装置12の温度を例えば40℃に下げる。
【0035】
続いて、このように構成された車両用暖房装置1における空調装置11及び加熱装置12の制御フローについて、
図3のフローチャートを用いて説明する。
車両用暖房装置1では、車両用暖房装置1の起動後、車室内温度が所望の温度範囲に到達して安定すると、制御装置10により一定の周期で乗員の温冷感を含む快適度を監視し、
図3に示すフローチャートに従って空調装置11及び加熱装置12を制御する。
【0036】
制御装置10では、快適度推定部21により乗員の快適度を推定し(ステップS101)、許容時間算出部23により加熱装置12が安全に作動可能な許容時間を算出し(ステップS102)、作動時間算出部24により、乗員の快適度が目標快適度となるまで加熱装置12が作動した場合の作動時間を算出し(ステップS103)、消費電力算出部22により、快適度推定部21によって推定された快適度が目標快適度となるように空調装置11及び加熱装置12を作動させる場合に、空調装置11及び加熱装置12が消費する予想消費電力をそれぞれ算出する(ステップS104)。
【0037】
出力制御部25は、ステップS105以降において、ステップS101からステップS104において得られた乗員の快適度と、加熱装置12の許容時間及び作動時間と、空調装置11の予想消費電力と、加熱装置12の予想消費電力とに基づいて、空調装置11又は加熱装置12の少なくとも何れか一方を制御する。
【0038】
出力制御部25は、快適度推定部21によって推定された快適度と予め定めた目標快適度とを比較し(ステップS105)、快適度が目標快適度以上である場合(乗員が「快適」又は「暑い」と感じていると推定される場合)に、ステップS106に進む。快適度と目標快適度が等しく、乗員が「快適」と感じていると推定される場合には(ステップS106)、空調装置11及び加熱装置12の出力を維持するように制御する。
【0039】
出力制御部25は、快適度が目標快適度よりも大きく、乗員が「暑い」と感じていると推定される場合(ステップS106)には、加熱装置12の作動時間と許容時間とを比較する(ステップS107)。加熱装置12の作動時間が許容時間より長い場合には、加熱装置の出力を低減させる(ステップS108)。加熱装置12の作動時間が許容時間より短い場合には、空調装置11の予想消費電力と加熱装置12の予想消費電力とを比較し(ステップS109)、加熱装置12の予想消費電力が大きい場合には、加熱装置12の出力を低減させる(ステップS108)。ステップS109において、加熱装置12の予想消費電力よりも空調装置11の予想消費電力が大きい場合には、空調装置11の出力を低減させる(ステップS110)。
【0040】
ステップS105に戻り、ステップS105おける快適度と目標快適度との比較において、快適度が目標快適度より小さいである場合(乗員が「寒い」と感じていると推定される場合)には、ステップS111に進み、加熱装置12の作動時間と許容時間とを比較する。加熱装置12の作動時間が許容時間より長い場合には、加熱装置の出力を低減させ(ステップS112)、かつ、空調装置11の出力を上昇させる(ステップS116)。
【0041】
加熱装置12の作動時間が許容時間より短い場合には、空調装置11の予想消費電力と加熱装置12の予想消費電力とを比較し(ステップS113)、空調装置11の予想消費電力よりも加熱装置12の予想消費電力が小さい場合には、加熱装置の出力を上昇させる(ステップS114)。
【0042】
ステップS113の比較の結果、空調装置11の予想消費電力よりも加熱装置12の予想消費電力が大きい場合には、空調装置11の吹出温度が所定温度以下であるか判定する(ステップS115)。空調装置11の吹出温度が所定温度以下である場合には、加熱装置12の出力を上昇させる(ステップS114)。ステップS115において空調装置11の吹出温度が所定温度より大きいと判定された場合には、空調装置11の出力を上昇させる(ステップS116)。
【0043】
このように構成された車両用暖房装置1では、空調装置11と加熱装置12を用いて暖房を行う場合において、乗員の快適度を推定し、車室内空間や乗員が着座する座席シート101近傍が目標快適度によって示される温度となるように空調装置11及び加熱装置12の制御を行う。このとき、制御装置10は、乗員の快適度を推定し、目標快適度に対する温冷感を含む快適度の過不足に鑑みて、乗員の快適度が目標快適度となるように制御している。
【0044】
そして、乗員が快適と感じるように車室内空間や乗員が着座する座席シート101近傍を暖房するために、空調装置11及び加熱装置12が消費すると予想される予想費電力を算出し、予想消費電力が小さくなるように空調装置11及び加熱装置12制御する。このため、車両用暖房装置1では、乗員の快適性を向上させつつ、消費電力を抑制することができる。
【0045】
一方、制御装置10は、加熱装置12の作動時間と安全に作動可能な許容時間とを算出して、目標快適度となるように空調装置11及び加熱装置12を制御した場合に、加熱装置12の作動時間が許容時間を超える場合には、消費電力の大小にかかわらず、加熱装置12の出力を低減するので、低温やけどを防止することができ、安全性が向上し、延いては乗員の快適性をより向上させることができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1:車両用暖房装置、10:制御装置、11:空調装置、12:加熱装置、
20:CPU、21:快適度推定部、22:消費電力算出部、23:許容時間算出部、24:作動時間算出部、25:出力制御部、30:ROM、40、RAM、50:記憶部、
71:赤外線センサ、72:内気センサ、73:日射センサ、74:着座センサ、75:加熱装置温度センサ、76:吹出温度センサ、
100:車両、101:座席シート、102:乗員