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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183722
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】保持治具及び被加工部材の保持方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/02 20060101AFI20231221BHJP
   B23Q 3/18 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B23Q3/02 A
B23Q3/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097383
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 広志
(72)【発明者】
【氏名】西峰 太輝
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016BA03
3C016EA01
3C016HA03
3C016HB01
(57)【要約】
【課題】複数の支持部の各々が固定される位置を従来よりも容易に変更できる保持治具、及び当該保持治具を用いた被加工部材の保持方法を提供する。
【解決手段】保持治具1Aは、被加工部材40の決められた位置の箇所と接触して被加工部材40を支持する複数の支持部20と、被加工部材40の決められた位置の箇所と接触する位置である接触位置に配置された複数の支持部20の各々が磁気吸着される吸着面11aを有する本体部10とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工部材の決められた位置の箇所と接触して前記被加工部材を支持する複数の支持部と、
前記被加工部材の前記決められた位置の箇所と接触する位置である接触位置に配置された前記複数の支持部の各々が磁気吸着される吸着面を有する本体部とを備える、保持治具。
【請求項2】
前記複数の支持部の各々は、前記吸着面に磁気吸着する磁石と、前記被加工部材の前記決められた位置の箇所と接触して前記被加工部材を支持する接触部と、前記磁石の前記接触部が存在する側に設けられて前記磁石が発生する磁束を前記吸着面に導くヨークとを含み、
前記本体部は、磁性体を含む、請求項1に記載の保持治具。
【請求項3】
前記本体部は、前記被加工部材が前記吸着面に対して前記吸着面に沿った方向に移動することを制限し、かつ前記吸着面に交差する方向において前記被加工部材を移動可能にするための第1制限部を含む、請求項2に記載の保持治具。
【請求項4】
前記第1制限部によって前記吸着面に対する位置が制限されたときに、前記本体部に対して前記複数の支持部の各々を前記接触位置に配置する、板状の位置決め部をさらに備え、
前記位置決め部には、前記複数の支持部の各々が通される複数の孔が形成されており、
前記第1制限部によって前記吸着面に対して前記位置決め部が位置合わせされている状態で前記複数の孔の各々に通されている前記複数の支持部の各々が前記本体部に対して前記接触位置に配置されるように、前記複数の孔が設けられている、請求項3に記載の保持治具。
【請求項5】
前記位置決め部は、前記複数の支持部及び前記本体部とは別部材であり、磁性体を含む、請求項4に記載の保持治具。
【請求項6】
前記複数の支持部の各々において、前記ヨークは、前記磁石のうち前記吸着面と吸着する面以外の他の面を覆っており、
前記複数の孔の各々の内周面は、前記接触部又は前記ヨークの外周面と対向配置される、請求項5に記載の保持治具。
【請求項7】
前記保持治具は、前記被加工部材を加工機の載置台に保持するための治具であり、
前記本体部は、前記載置台の一部と接触して、前記載置台に対する前記本体部の移動を制限するための第2制限部をさらに含む、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の保持治具。
【請求項8】
被加工部材を保持治具によって保持する方法であって、
前記被加工部材の決められた位置の箇所と接触して前記被加工部材を支持する複数の支持部と、前記複数の支持部の各々が磁気吸着される吸着面を有する本体部とを備える前記保持治具を準備する第1工程と、
前記被加工部材の前記決められた位置の箇所と接触する位置である接触位置に配置された前記複数の支持部の各々を前記吸着面に吸着させる第2工程と、
前記複数の支持部の各々によって前記被加工部材を支持する第3工程とを備えた被加工部材の保持方法。
【請求項9】
前記本体部は、平面視において前記吸着面に対する前記被加工部材の位置を制限し、かつ前記吸着面に対する前記位置が制限されている前記被加工部材を前記吸着面と交差する方向に移動可能にする第1制限部を含み、
前記保持治具は、前記第1制限部によって前記吸着面に対する位置が制限されたときに、前記本体部に対して前記複数の支持部の各々を前記接触位置に配置する、板状の位置決め部をさらに備え、
前記位置決め部には、前記複数の支持部の各々が通され、前記複数の支持部の各々が前記本体部に対して前記接触位置に配置される位置に複数の孔が形成されており、
前記第2工程は、
前記複数の支持部の各々が前記複数の孔の各々に通されており、かつ前記吸着面から間隔を空けて配置されている前記位置決め部を前記第1制限部に接触させることにより、平面視における前記吸着面に対する前記位置決め部の位置を合わせる第4工程と、
前記第1制限部により前記位置決め部が前記吸着面に沿った方向に移動することを制限しながら前記交差する方向に前記位置決め部を移動させて前記複数の各々の孔に通されている前記複数の支持部の各々を前記吸着面に吸着させる第5工程とを含む、請求項8に記載の被加工部材の保持方法。
【請求項10】
前記第2工程では、前記吸着面上において前記複数の支持部の各々が配置されるべき位置を規定する座標データに基づいて、多関節ロボット又は3軸装置が前記複数の支持部の各々を前記本体部に対して位置決めする、請求項8に記載の被加工部材の保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保持治具、及び保持治具を用いた被加工部材の保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-183520号公報(特許文献1)に記載の保持治具では、被加工部材を保持するために用いられる複数の支持部が案内レールにより案内され、かつ複数の支持部の各々がネジにより任意の位置で案内レールに固定される。複数の支持部の各々を案内レールに固定するためのネジは、案内レールに対して被加工部材とは反対側(被加工部材の裏面側)から取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-183520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の保持治具では、複数の支持部の各々が個別にネジによって案内レールに固定されており、かつ案内レール及びネジが被加工部材に対して裏側に配置されるため、複数の支持部の各々の位置を変更して再固定するには、比較的多くの作業が必要となる。このような保持治具は、多品種の被加工部材を保持する保持治具には不適である。
【0005】
本開示の主たる目的は、複数の支持部の各々が固定される位置を従来よりも容易に変更できる保持治具、及び当該保持治具を用いた被加工部材の保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る保持治具は、被加工部材の決められた位置の箇所と接触して被加工部材を支持する複数の支持部と、被加工部材の決められた位置の箇所と接触する位置である接触位置に配置された複数の支持部の各々が磁気吸着される吸着面を有する本体部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の支持部の各々が固定される位置を従来よりも容易に変更できる保持治具、及び当該保持治具を用いた被加工部材の保持方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る保持治具を示す平面図である。
図2図1中の矢印IIから視た正面図である。
図3】実施の形態1に係る保持治具の支持部を示す断面図である。
図4図3中の矢印IVから視た平面図である。
図5図3中の矢印Vから視た底面図である。
図6】実施の形態1に係る保持治具が被加工部材を保持している状態を示す平面図である。
図7図6中の矢印VIIから視た正面図である。
図8図6中の矢印VIII-VIIIから視た断面図である。
図9】実施の形態1に係る保持治具により被加工部材を保持する方法のフローチャートである。
図10】実施の形態1に係る保持治具により被加工部材を保持する方法の一工程を説明するための図である。
図11】実施の形態1に係る保持治具の変形例を示す平面図である。
図12図11中の矢印XIIから視た正面図である。
図13】実施の形態1に係る保持治具の支持部の第1変形例を示す断面図である。
図14図13中の矢印XIVから視た平面図である。
図15図13中の矢印XVから視た底面図である。
図16】実施の形態1に係る保持治具の支持部の第2変形例を示す断面図である。
図17図16中の矢印XVIIから視た平面図である。
図18図16中の矢印XVIIIから視た底面図である。
図19】実施の形態2に係る保持治具を示す平面図である。
図20図19中の矢印XXから視た正面図である。
図21】実施の形態2に係る保持治具により被加工部材を保持する方法の一工程を説明するための平面図である。
図22図21中の矢印XXIIから視た正面図である。
図23】実施の形態2に係る保持治具により被加工部材を保持する方法の、図21及び図22に示される工程後の一工程を説明するための平面図である。
図24図23中の矢印XXIVから視た正面図である。
図25】実施の形態2に係る保持治具の位置決め部の第1変形例を示す平面図である。
図26図25中の矢印XXVIから視た正面図である。
図27】実施の形態2に係る保持治具の位置決め部の第2変形例を示す平面図である。
図28図27中の矢印XXVIIIから視た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。
【0010】
実施の形態1.
【0011】
図1図5に示されるように、実施の形態1に係る保持治具1Aは、本体部10と、複数の支持部20とを備える。図6図8に示されるように、保持治具1Aは、被加工部材40を保持するための治具である。保持治具1Aは、一例として加工機に対して被加工部材40を位置決めして支持するための治具である。被加工部材40は、特に制限されないが、例えばプリント基板である。図1及び図2は、複数の支持部20の各々が被加工部材40を支持可能な位置に位置決めされている状態を示している。図6図8は、被加工部材40が本体部10に対して位置決めされた複数の支持部20によって支持されている状態を示している。
【0012】
<保持治具の構成>
【0013】
図1及び図2に示されるように、本体部10は、磁性部11と、第1制限部12と、第2制限部13とを含む。磁性部11は、磁性体を含む。磁性部11を構成する材料は、例えば軟質磁性材料であり、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、フェライト系ステンレス鋼、及びマルテンサイト系ステンレス鋼からなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0014】
磁性部11は、複数の支持部20の各々が磁気吸着される吸着面11aを有する。吸着面11aは、例えば磁性体の表面、又は磁性体の表面上に形成されている薄膜の表面である。吸着面11aは、例えば1つの平面である。なお、吸着面11aは、複数の平面により構成されていてもよい。以下では、説明の便宜上、吸着面11aに沿っておりかつ被加工部材40の外縁に沿って延びるX方向及びY方向と、吸着面11aと直交するZ方向とが導入される。X方向及びY方向は、例えば互いに直交する。Z方向は、吸着面11aを水平に配置する場合には、例えば上下方向に沿っており、重力方向とは逆方向である。また、以下において、平面視とは、Z方向から視ることを意味する。X方向は、例えば吸着面11aの短手方向に沿っている。Y方向は、例えば吸着面11aの長手方向に沿っている。
【0015】
図1及び図2に示されるように、第1制限部12は、吸着面11aからZ方向に突出している。第1制限部12は、被加工部材40が吸着面11aに対して吸着面11aに沿った方向に移動することを制限する。第1制限部12は、吸着面11aに対する被加工部材40のX方向の位置及びY方向の位置を制限する。第1制限部12により、吸着面11a上において被加工部材40が配置されるべき位置に被加工部材40を配置することができる。第1制限部12は、被加工部材40のX方向の端部の少なくとも一部と接触する第1方向制限部分12aと、被加工部材40のY方向の端部の少なくとも一部と接触する第2方向制限部分12bとを有する。第1方向制限部分12aは、被加工部材40のX方向の位置を制限する。第2方向制限部分12bは、被加工部材40のX方向の位置を制限する。第1方向制限部分12a及び第2方向制限部分12bは、例えば互いに別部材である。第1方向制限部分12a及び第2方向制限部分12bの各々の平面形状は、例えば円形状である。なお、第1方向制限部分12a及び第2方向制限部分12bの各々の平面形状は、特に制限されるものではなく、L字形状、又は多角形状等であってもよい。第1方向制限部分12a及び第2方向制限部分12bは、同一の部材であってもよい。第1方向制限部分12a及び第2方向制限部分12bの各々は、例えばL字形状を有する第1制限部12の一部分であってもよい。
【0016】
図1に示されるように、第1方向制限部分12aは、例えば本体部10のY方向の中央部に配置されている。第2方向制限部分12bは、例えば本体部10のX方向の中央部に配置されている。
【0017】
図1及び図2に示されるように、磁性部11は、吸着面11aとは反対側に位置する裏面11bをさらに有する。裏面11bは、加工機の載置台51(図2参照)の載置面と接触又は間隔を空けて対向する面である。第2制限部13は、裏面11bからZ方向に突出している。第2制限部13は、加工機の載置台51の側面と接触して、載置台51に対する本体部10の移動を制限する。図2に示されるように、平面視において、第2制限部13は、例えば、X方向及びY方向の各々において載置台51を挟むように設けられている。第2制限部13のX方向及びY方向の各長さは、例えば後述する被加工部材40のX方向及びY方向の各長さよりも長い。第2制限部13の延在方向に直交する断面形状は、特に制限されないが、例えばL字形状又は長方形状である。このような第2制限部13を含む磁性部11の剛性は、第2制限部13を含まない磁性部11の剛性よりも高い。そのため、被加工部材40を加工する際に磁性部11に外力が加えられても、磁性部11はたわみにくい。平面視において、第2制限部13は、例えば第1制限部12よりも外側に配置されている。
【0018】
第1制限部12及び第2制限部13の各々は、例えば磁性部11とは別部材であり、磁性部11に固定されている。第1制限部12及び第2制限部13の各々を磁性部11に固定する方法は、特に制限されないが、例えばネジ、かしめ、接着剤、粘着テープ、又は溶接等によって磁性部11に固定される。
【0019】
複数の支持部20の各々は、被加工部材40の決められた位置の箇所と接触して被加工部材40を支持する。複数の支持部20の各々は、吸着面11aとの間に作用する磁気吸着力により、吸着面11aに保持される。複数の支持部20の各々は、被加工部材40の決められた位置の箇所と接触する位置である接触位置に配置された状態で吸着面11aに磁気吸着される。本体部10の吸着面11aと複数の支持部20の各々との間に作用する磁気吸着力は、保持治具1Aを用いて行われる被加工部材40に対する加工に際し複数の支持部20の各々に作用する力よりも大きい。
【0020】
図1及び図2に示されるように、複数の支持部20は、X方向及びY方向の各々において互いに間隔を空けて配置される。図1に示されるように、X方向に隣り合う複数の支持部20の間隔は、例えばY方向に隣り合う複数の支持部20の間隔よりも長い。Y方向において相対的に内側に配置されておりX方向に隣り合う複数の支持部20の間隔は、例えばY方向において相対的に外側に配置されておりX方向に隣り合う複数の支持部20の間隔よりも長い。
【0021】
図1及び図2に示されるように、複数の支持部20の各々は、吸着部21と、柱部22と、段差部23とを含む。吸着部21は、吸着面11aに磁気吸着する。柱部22は、吸着部21から被加工部材40が存在する側に延在する円柱状の部材である。段差部23は、柱部22の先端側で径が小さくなる部分である。段差部23は、被加工部材40の決められた位置の箇所と接触して被加工部材40を支持する接触部である。
【0022】
吸着部21は、磁石21a及びヨーク21bを含む。磁石21aは、例えば永久磁石である。磁石21aは、吸着面11aと接触する面21a1を有している。磁石21aの着磁方向は、Z方向に沿っている。ヨーク21bは、磁性体である。ヨーク21bは、磁石21aの段差部23が存在する側に設けられて磁石21aが発生する磁束を吸着面11aに導く。ヨーク21bは、吸着面11aと接触する面21b1を有している。磁石21aの面21a1を通過する磁束及びヨーク21bの面21b1を通過する磁束は、吸着面11aと交差する。吸着部21と吸着面11aとの間に生じる磁束の密度は、ヨーク21bを含まず磁石21aのみからなる吸着部と吸着面11aとの間に生じる磁束の密度よりも高い。
【0023】
図3に示されるように、磁石21a及びヨーク21bは、柱部22と固定されている。磁石21a及びヨーク21bは、例えばネジ24により柱部22に固定される。なお、磁石21a及びヨーク21bを柱部22に固定する手段及び方法は、特に制限されない。ネジ24によらない他の固定手段及び方法については、後述する。
【0024】
柱部22は、Z方向に延びるように、設けられている。柱部22のZ方向の一端部(例えば下端部)は、ヨーク21bに接触している。柱部22のZ方向の他端部(例えば上端部)は、段差部23を成している。
【0025】
段差部23は、Z方向において吸着部21とは反対側を向いている第1面23aと、第1面23aから突出しておりZ方向と交差する方向を向いている第2面23bとを有する。第1面23aは、柱部22のZ方向の端面である。図4に示されるように、第1面23aの平面形状は、例えば円環状である。第2面23bは、第1面23aから突出している円柱状の突出部の外周面である。第2面23bを外周面とする突出部の中心軸は、例えば柱部22の中心軸と同軸上に配置されている。
【0026】
図5に示されるように、磁石21aの上記した面21a1及びヨーク21bの上記した面21b1の各中心は、例えばネジ24の中心軸上に配置されている。ネジ24の中心軸は、例えば柱部22の中心軸及び第2面23bを外周面とする突出部の中心軸と同軸上に配置されている。図5には、ネジ24の一例として皿ネジを図示しているが、ネジ24の種類は特に制限されない。ネジ24は、例えばナベねじ、六角ボルト、六角穴付きボルト等であってもよい。
【0027】
複数の支持部20は、例えば互いに同等の形状及び寸法を有している。なお、複数の支持部20は、図3図5に示される構造を有している限りにおいて、互いに異なる形状及び寸法を有していてもよい。
【0028】
図6図8に示されるように、被加工部材40は、第3面40aと、第3面40aとは反対側に位置する第4面40bと、第3面40aと第4面40bとの間を接続する外周面40cとを有する。被加工部材40が保持治具1Aに保持されている状態において、第3面40a及び第4面40bの各々はX方向及びY方向に沿って延びておりかつZ方向に直交する。
【0029】
被加工部材40の平面形状は、例えば長方形状である。第3面40a及び第4面40bは、例えばX方向に沿って延びる短辺と、Y方向に沿って延びる長辺とを有している。第3面40a及び第4面40bの各々の一部領域には、電子部品が搭載されている。第3面40aは、後述する本体部10の吸着面11aと対向するように配置される。なお、被加工部材40の平面形状は、特に制限されるものではなく、三角形状もしくは五角形状等の多角形状、円形状、又は楕円形状等であってもよい。
【0030】
外周面40cは、第1制限部12の第1方向制限部分12a及び第2方向制限部分12bと同時に接触する。外周面40cは、X方向及びZ方向に沿って延びる部分と、Y方向及びZ方向に沿って延びる部分とを有している。外周面40cのうちY方向及びZ方向に沿って延びる部分は、被加工部材40のX方向の端部を成しており、第1方向制限部分12aと接触し得る。外周面40cのうちX方向及びZ方向に沿って延びる部分は、被加工部材40のY方向の端部を成しており、第2方向制限部分12bと接触し得る。
【0031】
被加工部材40には、例えば第3面40aに対して凹んでいる複数の溝41が形成されている。複数の溝41は、例えば第3面40aから第4面40bに達する貫通孔である。複数の溝41は、例えば被加工部材40において電子部品が搭載されている領域をX方向及びY方向に挟むように配置されている。複数の溝41は、X方向又はY方向に互いに間隔を空けて形成されている。複数の溝41の各々は、例えばX方向又はY方向に沿って延びている。複数の溝41の内周面41aは、Z方向に沿って延びており、X方向又はY方向を向いている。
【0032】
図6に示されるように、平面視において、複数の支持部20の各々の段差部23の第2面23bの最小幅は、複数の溝41の各々の最小幅よりも狭い。複数の支持部20の段差部23の第2面23bは、複数の溝41の各々の内部に挿入され、内周面41aと接触し得る。平面視において、複数の支持部20の各々の段差部23の第1面23aの最大幅は、複数の溝41の各々の最小幅よりも広い。
【0033】
図6図8に示されるように、被加工部材40が保持治具1Aに保持されている状態では、被加工部材40の外周面40cが第1制限部12の第1方向制限部分12a及び第2方向制限部分12bの各々と接触し、かつ複数の支持部20の段差部23の第2面23bが複数の溝41の各々の内部に挿入されている。上記状態において、複数の支持部20の各々の段差部23の第1面23aは、当該段差部23の第2面23bが通されている溝41と連なる第3面40aと接触している。これにより、被加工部材40は複数の支持部20によりZ方向に位置決めされている。さらに、上記状態において、第2面23bが溝41の内周面41aと接触している。複数の支持部20のうちX方向の一方端に配置されている支持部20の段差部23の第2面23b1(図6参照)は、複数の溝41のうちX方向の一方端に配置されている溝41のX方向において被加工部材40の中央側に存在する内周面41a1(図6参照)と接触する。複数の支持部20のうちX方向の他方端に配置されている支持部20の段差部23の第2面23bは、複数の溝41のうちX方向の他方端に配置されている溝41のX方向において被加工部材40の中央側に存在する内周面41aと接触する。複数の支持部20のうちY方向の一方端に配置されている支持部20の段差部23の第2面23b2(図6参照)は、複数の溝41のうちY方向の一方端に配置されている溝41のY方向において被加工部材40の中央側に存在する内周面41a2(図6参照)と接触する。複数の支持部20のうちY方向の他方端に配置されている支持部20の段差部23の第2面23bは、複数の溝41のうちY方向の他方端に配置されている溝41のY方向において被加工部材40の中央側に存在する内周面41aと接触する。これにより、被加工部材40は複数の支持部20によりX方向及びY方向に位置決めされている。
【0034】
被加工部材40には、加工時には保持治具1Aの方向に押さえつける力が加えられる。そのため、被加工部材40は、加工時に移動しない。保持治具が、被加工部材40を固定する機構を有してもよい。被加工部材40の位置決めは、被加工部材40の決められた位置の箇所に複数の突起を設け、複数の突起の各々を複数の支持部の各々が保持するものでもよい。複数の支持部は、被加工部材40の決められた位置の箇所と接触して被加工部材40を支持するものであればどのようなものでもよい。
【0035】
被加工部材40は、隣り合う2つの溝41間を隔てている被加工領域42を有している。被加工領域42は、加工機によって加工されるべき領域である。被加工部材40に施される加工は、特に制限されないが、例えば切断工具50による切断加工である。図6には、被加工領域42が切断加工されることにより形成された、加工済み領域43も図示されている。
【0036】
<保持治具による被加工部材の保持方法>
【0037】
次に、図9を参照して、保持治具1Aにより被加工部材40を保持する方法について説明する。第1に、本体部10及び複数の支持部20を備える保持治具1Aが準備される(第1工程(S1))。
【0038】
第2に、保持治具1Aの複数の支持部20の各々を、本体部10の吸着面11a上の予め定められた位置に吸着させる(第2工程(S2))。予め定められた位置は、複数の支持部20の各々が被加工部材40の決められた位置の箇所と接触する位置である接触位置である。第2工程(S2)では、接触位置に配置された複数の支持部20の各々を吸着面11aに吸着させる。予め、複数の支持部20の配置位置を規定する座標(XY座標)のデータが準備される。当該座標データは、複数の支持部20の各々の形状及び寸法、並びに被加工部材40の形状及び寸法等に応じて設定される。複数の支持部20の各々は、準備された座標データに基づいて、多関節ロボット又は3軸ロボットによって吸着面11a上の予め定められた位置に配置される。
【0039】
第3に、複数の支持部20の各々に被加工部材40を支持させる(第3工程(S3))。第3工程(S3)では、図10に示されるように、被加工部材40がZ方向において複数の支持部20の各々と間隔を空けておりかつ第1制限部12に接触している状態が実現される。その後、当該状態を維持しながら、被加工部材40を複数の支持部20側に移動させることにより、図6図8に示されるように被加工部材40は複数の支持部20の各々の段差部23と接触して保持治具1Aに保持される。
【0040】
第1工程(S1)において、複数の支持部20の各々は、例えば吸着面11a上の任意の位置に配置されている。今回保持治具1Aによって保持される被加工部材40の形状及び寸法等が、前回保持治具1Aが保持した被加工部材40とは異なる場合、第1工程(S1)において、複数の支持部20の各々は前回の被加工部材40を支持していた位置に配置されていてもよい。この場合、第2工程(S2)において、複数の支持部20の各々は、今回保持治具1Aによって保持される被加工部材40に応じた座標データに基づいて、再配置される。
【0041】
<保持治具の効果>
【0042】
保持治具1Aでは、複数の支持部20の各々が本体部10の磁性部11に磁気吸着されるため、複数の支持部20の各々が固定される位置は従来よりも容易に変更され得る。
【0043】
また、保持治具1Aでは、複数の支持部20を本体部10に対して位置決めする際に、被加工部材40を用いる必要がない。そのため、保持治具1Aにより被加工部材40を保持する方法において、保持治具1Aの複数の支持部20の各々を、本体部10の吸着面11a上の予め定められた位置に吸着させる第2工程(S2)は、複数の支持部20の各々に被加工部材40を支持させる第3工程(S3)前に実施され得る。そのため、保持治具1Aにより保持された被加工部材40を加工する方法に要する時間は、特許文献1に記載の保持治具のように、複数の支持部の位置合わせが被加工部材の現物を用いる必要がある保持治具により保持された被加工部材を加工する場合と比べて、削減され得る。
【0044】
また、特許文献1に記載の保持治具では、複数の支持部の各々がネジ周りに旋回する機構を有しているため、例えば被加工部材の平面寸法が大きく支持部により支持されるべき領域と被加工部材の外縁部との間の距離が長い場合には、当該支持部の長さが長くなり、力のモーメントによる支持部の位置ズレが生じやすい。これに対し、保持治具1Aでは、支持部20が上記のような旋回機構を有していないため、力のモーメントによる支持部20の位置ズレが生じない。
【0045】
保持治具1Aでは、複数の支持部20の各々が、磁石21aと、磁石21aに接続されており被加工部材40の一部と接触する段差部23と、磁石から段差部23側に出た磁束を吸着面11aに導くヨーク21bとを含む。そのため、保持治具1Aにおいて磁石21aと本体部10の磁性部11の吸着面11aとの間に作用する磁気吸着力は、複数の支持部20の各々がヨーク21bを含まない場合と比べて強く、吸着面11aに磁気吸着している複数の支持部20の各々の位置は、ズレにくい。また、ヨーク21bは、磁石21aが被加工部材40側に形成する磁界を抑制するため、被加工部材40に搭載された電子部品等は磁石21aによって形成される磁界の影響を受けにくい。
【0046】
保持治具1Aでは、第1制限部12が、吸着面11aに沿ったX方向及びY方向への被加工部材40の移動を制限しながら、予め位置決めされた複数の支持部20の各々に向けてすなわちX方向及びY方向に交差する方向(Z方向)に被加工部材40を移動させることを可能にする。そのため、保持治具1Aによれば、本体部10が第1制限部12を含まない場合と比べて、上記保持方法における第3工程(S3)が容易に実施され得る。
【0047】
<変形例>
【0048】
保持治具1Aは、以下のように変形されてもよい。保持治具1Aにおいて、本体部10が磁石を有していてもよい。本体部10が磁石を有する場合には、複数の支持部20の各々は、磁性体を有していれば、磁石21aを有していなくてもよい。
【0049】
図11及び図12に示されるように、本体部10の磁性部11には、吸着面11aから裏面11bに達する複数の貫通孔11cが形成されていてもよい。図11及び図12に示される保持治具1Bは、載置台51が図示しない吸気機構を備える場合に、好適である。保持治具1Bに保持された被加工部材40の加工により生じた粉塵は、複数の貫通孔11cを経て吸気機構に吸引される。
【0050】
図13図18に示されるように、複数の支持部20では、吸着部21は、ネジ24に代えて、接着剤25及び接着剤26の少なくともいずれかによる接着により、柱部22に固定されていてもよい。図13図15に示されるように、柱部22のZ方向の一端部が吸着部21のヨーク21bに直接接触しており、ヨーク21bにおいて上記一端部との接触面の外縁部が、接着剤25により柱部22において上記一端部の外周面と接着されていてもよい。図16図18に示されるように、柱部22のZ方向の一端部が接着剤26を介して吸着部21のヨーク21bと接続されていてもよい。接着剤25,26の材質は、特に制限されないが、例えばエポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、及びウレタン系接着剤からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0051】
実施の形態2.
【0052】
図19及び図20に示されるように、実施の形態2に係る保持治具1Cは、実施の形態1に係る保持治具1Aと基本的に同様の構成を備えるが、第1制限部12によって吸着面11aに対する位置が制限されたときに本体部10に対して複数の支持部20の各々を位置決め可能な位置決め部30をさらに備えている点で、保持治具1Aとは異なる。図19及び図20は、複数の支持部20の各々が位置決め部30によって被加工部材40を支持可能な位置に位置決めされている状態を示している。以下では、保持治具1Cが保持治具1Aとは異なる点を主に説明する。
【0053】
図19及び図20に示されるように、位置決め部30は、例えば第5面30aと、第5面30aとは反対側に位置する第6面30bと、第5面30aと第6面30bとの間を接続する外周面30cとを有する。つまり、位置決め部30は、板状である。
【0054】
平面視において、位置決め部30は、例えば被加工部材40と合同な形状である。位置決め部30の平面形状は、例えば長方形状である。第5面30a及び第6面30bは、例えばX方向に沿って延びる短辺と、Y方向に沿って延びる長辺とを有している。第5面30aは、本体部10の吸着面11aと対向するように配置される。なお、位置決め部30の平面形状は、特に制限されるものではなく、三角形状もしくは五角形状等の多角形状、円形状、又は楕円形状等であってもよい。なお、位置決め部30の平面形状は、後述する複数の孔31が形成できる形状である必要がある。
【0055】
外周面30cは、第1制限部12の第1方向制限部分12a及び第2方向制限部分12bと同時に接触する。外周面30cは、X方向及びZ方向に沿って延びる部分と、Y方向及びZ方向に沿って延びる部分とを有している。外周面30cのうちY方向及びZ方向に沿って延びる部分は、位置決め部30のX方向の端部を成しており、第1方向制限部分12aと接触し得る。外周面30cのうちX方向及びZ方向に沿って延びる部分は、位置決め部30のY方向の端部を成しており、第2方向制限部分12bと接触し得る。
【0056】
図19及び図20に示されるように、位置決め部30には、複数の支持部20の各々が通される複数の孔31が形成されている。位置決め部30は、第1制限部12によって吸着面11aに対して位置合わせされている第1状態において複数の孔31に通されている複数の支持部20の各々を、被加工部材40が第1制限部12により吸着面11aに対して位置合わせされている第2状態において被加工部材40を支持可能な位置に配置する。第1制限部12によって吸着面11aに対して位置決め部30が位置合わせされている状態で複数の孔31の各々に通されている複数の支持部20の各々が本体部10に対して接触位置に配置されるように、複数の孔31が設けられている。接触位置は、複数の支持部20の各々(厳密には段差部23の各々)が被加工部材40の決められた位置の箇所と接触するように、複数の支持部20の各々に対して決められた位置である。
【0057】
複数の孔31は、例えば吸着部21を通さず、柱部22及び段差部23を通すように設けられている。複数の孔31の孔径は、例えば吸着部21の外径よりも小さく、柱部22の外径よりも大きい。柱部22の外径に対する複数の孔31の孔径の比率は、例えば100%超え、105%以下である。好ましくは、柱部22の外径に対する複数の孔31の孔径の比率は、例えば100%超え、102%以下である。上記比率が100%に近いほど、複数の孔31の各々の通された支持部20の柱部22の中心軸が複数の孔31の孔軸と同軸上に配置されやすく、複数の支持部20の各々が位置決め部30により本体部10に対してより高精度に位置決めされ得る。例えば、複数の孔31の孔径は、柱部22の外径よりも0.02mm以上0.20mm以下大きい。第5面30aのうち複数の孔31の周縁部分は、複数の孔31の各々に通された支持部20の吸着部21と接触する。
【0058】
複数の支持部20の各々において、位置決め部30の孔31に通される柱部22と被加工部材40を支持する段差部23との寸法公差及び幾何公差は、保持治具1Cに要求される被加工部材40の位置合わせ精度に応じて設定される。
【0059】
位置決め部30の厚さ(第5面30aと第6面30bとの間のZ方向の距離)は、例えば柱部22のZ方向の長さよりも短い。複数の孔31の各々に通された支持部20の柱部22は第6面30bからZ方向に突出しており、複数の孔31の各々に通された支持部20の段差部23は露出している。
【0060】
位置決め部30を構成する材料は、磁性体を含む。位置決め部30は、複数の支持部20の吸着部21と磁気吸着する。位置決め部30を構成する材料は、例えば軟質磁性材料であり、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、フェライト系ステンレス鋼、及びマルテンサイト系ステンレス鋼からなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0061】
保持治具1Cは、複数種の位置決め部30を備えていてもよい。複数種の位置決め部30は、複数の孔31の形状及び寸法、並びに第1制限部12と接触する部分に対する複数の孔31の各々の位置の少なくともいずれかが互いに異なっている。このようにすれば、保持治具1Cは複数種の被加工部材40を保持可能である。
【0062】
<保持治具による被加工部材の保持方法>
【0063】
次に、図19図24を参照して、保持治具1Cにより被加工部材40を保持する方法について説明する。保持治具1Cを用いた保持方法は、保持治具1Aを用いた保持方法と基本的に同様であるが、第1工程(S1)において位置決め部30を備える保持治具1Cが準備され、第2工程(S2)において位置決め部30が用いられる点で、保持治具1Aを用いた保持方法とは異なる。以下では、保持治具1Cを用いた保持方法が保持治具1Aを用いた保持方法と異なる点を主に説明する。なお、図21図24では、第2制限部14の図示が省略されている。
【0064】
第1工程(S1)では、位置決め部30が準備される。位置決め部30の複数の孔31は、複数の支持部20の配置位置を規定する座標(XY座標)のデータに基づいて形成されている。複数の支持部20の各々は、位置決め部30の1つの孔31に通されている。複数の支持部20の各々は、位置決め部30と磁気吸着する。
【0065】
第2工程(S2)では、第1に、図21及び図22に示されるように、位置決め部30及び当該位置決め部30の複数の孔31に通された複数の支持部20がZ方向において吸着面11aから間隔を空けて配置され、かつ位置決め部30が第1制限部12の第1方向制限部分12a及び第2方向制限部分12bの各々と同時に接触している状態が実現される。この状態において、複数の支持部20の各々は、位置決め部30と磁気吸着しており、本体部10とは磁気吸着していない。ここまでの第2工程(S2)は、複数の支持部20の各々が複数の孔31の各々に通されており、かつ吸着面11aから間隔を空けて配置されている位置決め部30を第1制限部12に接触させることにより、平面視における吸着面11aに対する位置決め部の位置を合わせる工程(第4工程と呼ぶ)である。
【0066】
第2工程(S2)では、第2に、上記状態を維持しながら、位置決め部30及び複数の支持部20をZ方向に移動させることにより、図19及び図20に示されるように複数の支持部20の各々の吸着部21が吸着面11aに磁気吸着している状態が実現される。第4工程の後であって、ここまでの第2工程(S2)は、第1制限部12により位置決め部30が吸着面11aに沿った方向に移動することを制限しながら吸着面11aに交差する方向に位置決め部30を移動させて複数の孔31の各々に通されている複数の支持部20の各々を吸着面に吸着させる工程(第5工程と呼ぶ)である。
【0067】
第2工程(S2)では、第3に、図23及び図24に示されるように、位置決め部30を複数の支持部20から分離させる。具体的には、位置決め部30のみをZ方向において本体部10から離れるように移動させる。複数の支持部20の各々がヨーク21bを含むため、吸着部21と磁性部11との間に作用する磁気吸着力は、吸着部21と位置決め部30との間に作用する磁気吸着力よりも強い。その結果、複数の支持部20は磁性部11の吸着面11aと磁気吸着したままとなり、位置決め部30とは分離する。これにより、保持治具1Cは、図1及び図2に示される保持治具1Aと同様に、被加工部材40を保持可能となる。
【0068】
なお、図19及び図20に示される保持治具1Cでは、複数の支持部20の各々の段差部23が位置決め部30から出ているため、位置決め部30が複数の支持部20から分離されていなくても、被加工部材40が保持治具1Cに保持され得る。そのため、位置決め部30が加工機による被加工部材40の加工を妨げない限りにおいて、第2工程(S2)において位置決め部30は複数の支持部20から分離されなくてもよい。
【0069】
<保持治具の効果>
【0070】
保持治具1Cは、保持治具1Aと基本的に同様の構成を備えるため、保持治具1Aと同様の効果を奏する。
【0071】
さらに保持治具1Cでは、複数の支持部20が位置決め部30により本体部10に対して同時に位置決めされ得る。そのため、被加工部材40が支持されるべき箇所を多数有している場合にも、保持治具1Cによれば、特許文献1に記載の保持治具のように個々の支持部を個別に位置決めする必要がない。そのため、保持治具1Cによれば、複数の支持部20を本体部10に対して位置決めする作業が、従来よりも容易に短時間で行われ得る。
【0072】
また、保持治具1Cでは、多品種の被加工部材40のそれぞれに応じた複数種の位置決め部30が事前に準備され得る。そのため、保持治具1Cでは、第1種の被加工部材40を保持した後、それとは異なる第2種の被加工部材40を保持する場合にも、第2種の被加工部材40に応じた位置決め部30を使用することで、複数の支持部20を本体部10に対して位置決めする作業が、従来よりも容易に短時間で行われ得る。
【0073】
また、位置決め部30は、繰り返し使用できる。保持治具1Cでは、例えば上記第1種の被加工部材40を保持した後、再び第1種の被加工部材40を保持する場合に、同一の位置決め部30が繰り返し使用されることにより、複数の支持部20の位置決めの再現性が高い。
【0074】
<変形例>
【0075】
保持治具1Cは、以下のように変形され得る。
【0076】
保持治具1Cにおいて、位置決め部30の複数の孔31は、複数の支持部20の各々のZ方向における任意の一部分を通すように設けられていればよい。
【0077】
図25及び図26に示されるように、複数の孔31は、吸着部21を通すように設けられていてもよい。複数の孔31の孔径は、吸着部21の外径よりも大きい。吸着部21の外径に対する複数の孔31の孔径の比率は、例えば100%超え、105%以下である。好ましくは、吸着部21の外径に対する複数の孔31の孔径の比率は、例えば100%超え、102%以下である。例えば、複数の孔31の孔径は、吸着部21の外径よりも0.02mm以上0.20mm以下大きい。この場合、第5面30aは、磁性部11の吸着面11aと接触する。
【0078】
図27及び図28に示されるように、複数の孔31は、段差部23の突出部のみを通すように設けられていてもよい。複数の孔31の孔径は、第2面23bの外径よりも大きく、第1面23aの外径よりも小さい。第2面23bの外径に対する複数の孔31の孔径の比率は、例えば100%超え、105%以下である。好ましくは、第2面23bの外径に対する複数の孔31の孔径の比率は、例えば100%超え、102%以下である。例えば、複数の孔31の孔径は、第2面23bの外径よりも0.02mm以上0.20mm以下大きい。この場合、第5面30aのうち複数の孔31の周縁部分は、複数の孔31の各々に通された支持部20の段差部23の第1面23aと接触する。
【0079】
図25図28に示される各支持部20においても、位置決め部30の孔31に通される部分と被加工部材40を支持する段差部23との寸法公差及び幾何公差は、保持治具1Cに要求される被加工部材40の位置合わせ精度に応じて設定される。
【0080】
[付記1]
被加工部材の決められた位置の箇所と接触して前記被加工部材を支持する複数の支持部と、
前記被加工部材の前記決められた位置の箇所と接触する位置である接触位置に配置された前記複数の支持部の各々を磁気吸着する吸着面を有する本体部とを備える、保持治具。
[付記2]
前記複数の支持部の各々は、前記吸着面に磁気吸着する磁石と、前記被加工部材の前記決められた位置の箇所と接触して前記被加工部材を支持する接触部と、前記磁石の前記接触部が存在する側に設けられて前記磁石が発生する磁束を前記吸着面に導くヨークとを含み、
前記本体部は、磁性体を含む、付記1に記載の保持治具。
[付記3]
前記本体部は、前記被加工部材が前記吸着面に対して前記吸着面に沿った方向に移動することを制限しかつ前記吸着面に交差する方向において前記被加工部材を移動可能にするための第1制限部を含む、付記1又は付記2に記載の保持治具。
[付記4]
前記第1制限部によって前記吸着面に対する位置が制限されたときに、前記本体部に対して前記複数の支持部の各々を前記接触位置に配置する、板状の位置決め部をさらに備え、
前記位置決め部には、前記複数の支持部の各々が通される複数の孔が形成されており、
前記第1制限部によって前記吸着面に対して前記位置決め部が位置合わせされている状態で前記複数の孔の各々に通されている前記複数の支持部の各々が前記本体部に対して前記接触位置に配置されるように、前記複数の孔が設けられている、付記3に記載の保持治具。
[付記5]
前記位置決め部は、前記複数の支持部及び前記本体部とは別部材であり、磁性体を含む、付記4に記載の保持治具。
[付記6]
前記複数の支持部の各々において、前記ヨークは、前記磁石のうち前記吸着面と吸着する面以外の他の面を覆っており、
前記複数の孔の各々の内周面は、前記接触部又は前記ヨークの外周面と対向配置される、付記2、付記4、又は付記5に記載の保持治具。
[付記7]
前記保持治具は、前記被加工部材を加工機の載置台に保持するための治具であり、
前記本体部は、前記載置台の一部と接触して、前記載置台に対する前記本体部の移動を制限するための第2制限部をさらに含む、付記1から付記6のいずれか1項に記載の保持治具。
[付記8]
被加工部材を保持治具によって保持する方法であって、
前記被加工部材の決められた位置の箇所と接触して前記被加工部材を支持する複数の支持部と、前記複数の支持部の各々を磁気吸着する吸着面を有する本体部とを備える前記保持治具を準備する第1工程と、
前記被加工部材の前記決められた位置の箇所と接触する位置である接触位置に配置された前記複数の支持部の各々を前記吸着面に吸着させる第2工程と、
前記複数の支持部の各々によって前記被加工部材を支持する第3工程とを備えた被加工部材の保持方法。
[付記9]
前記本体部は、平面視において前記吸着面に対する前記被加工部材の位置を制限し、かつ前記吸着面に対する前記位置が制限されている前記被加工部材を前記吸着面と交差する方向に移動可能にする第1制限部を含み、
前記保持治具は、前記第1制限部によって前記吸着面に対する位置が制限されたときに、前記本体部に対して前記複数の支持部の各々を前記接触位置に配置する、板状の位置決め部をさらに備え、
前記位置決め部には、前記複数の支持部の各々が通され、前記複数の支持部の各々が前記本体部に対して前記接触位置に配置される位置に複数の孔が形成されており、
前記第2工程は、
前記複数の支持部の各々が前記複数の孔の各々に通されておりかつ前記吸着面から間隔を空けて配置されている前記位置決め部を前記第1制限部に接触させることにより、平面視における前記吸着面に対する前記位置決め部の位置を合わせる第4工程と、
前記位置決め部を前記第1制限部により前記位置決め部が前記吸着面に沿った方向に移動することを制限しながら前記交差する方向に前記位置決め部を移動させて前記複数の孔の各々に通されている前記複数の支持部の各々を前記吸着面に吸着させる第5工程とを含む、付記8に記載の被加工部材の保持方法。
[付記10]
前記第2工程では、前記吸着面上において前記複数の支持部の各々が配置されるべき位置を規定する座標データに基づいて、多関節ロボット又は3軸装置が前記複数の支持部の各々を前記本体部に対して位置決めする、付記8に記載の被加工部材の保持方法。
【0081】
以上のように本開示の実施の形態について説明を行なったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本開示の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本開示の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1A,1B,1C 保持治具、10 本体部、11 磁性部、11a 吸着面、11b 裏面、11c 貫通孔、12 第1制限部、12a 第1方向制限部分、12b 第2方向制限部分、13,14 第2制限部、20 支持部、21 吸着部、21a 磁石、21b ヨーク、22 柱部、23 段差部(接触部)、23a 第1面、23b1,23b,23b2 第2面、24 ネジ、25,26 接着剤、30 位置決め部、30a 第5面、30b 第6面、30c 外周面、31 孔、40 被加工部材、40a 第3面、40b 第4面、40c 外周面、41 溝、41a1,41a2,41a 内周面、42 被加工領域、43 加工済み領域、50 切断工具、51 載置台。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
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