(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183731
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20231221BHJP
B27B 17/12 20060101ALI20231221BHJP
B27B 17/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B25F5/00 Z
B25F5/00 H
B27B17/12
B27B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097397
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新山 拓磨
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA06
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA12
3C064BA34
3C064BB01
3C064BB08
3C064BB11
3C064BB21
3C064BB53
3C064BB56
3C064CA03
3C064CA08
3C064CA25
3C064CA27
3C064CA54
3C064CA60
3C064CA61
3C064CA62
3C064CB06
3C064CB17
3C064CB26
3C064CB32
3C064CB36
3C064CB63
3C064CB64
3C064CB68
3C064CB72
3C064CB78
3C064CB91
(57)【要約】
【課題】本明細書では、作業機の取り回し性能を向上することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本明細書が開示する作業機は、前後方向に長手方向を有する作業部と、作業部を駆動する電動モータと、電動モータを制御する制御ユニットと、作業部の後方で作業部を保持するとともに、電動モータおよび制御ユニットを収容するハウジング本体と、ハウジング本体から延びており、ユーザの一方の手によって把持されるグリップと、を含むハウジングと、ハウジングに取り付けられ、制御ユニットを介して電動モータに電力を供給可能な電池パックと、グリップに設けられており、ユーザの手指でグリップ側に引かれることによって、電動モータを作動するトリガレバーと、を備えている。制御ユニットの前端は、トリガレバーの後端よりも後方に配置されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に長手方向を有する作業部と、
前記作業部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを制御する制御ユニットと、
前記作業部の後方で前記作業部を保持するとともに、前記電動モータおよび前記制御ユニットを収容するハウジング本体と、前記ハウジング本体から延びており、ユーザの一方の手によって把持されるグリップと、を含むハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられ、前記制御ユニットを介して前記電動モータに電力を供給可能な電池パックと、
前記グリップに設けられており、ユーザの手指で前記グリップ側に引かれることによって、前記電動モータを作動するトリガレバーと、を備えており、
前記制御ユニットの前端は、前記トリガレバーの後端よりも後方に配置されている、作業機。
【請求項2】
前記電動モータの重心位置は、前記トリガレバーの前記後端よりも後方に配置されている、請求項1の作業機。
【請求項3】
前記電動モータの前端は、前記トリガレバーの前端よりも後方に配置されている、請求項1または2の作業機。
【請求項4】
前記電池パックの前端は、前記トリガレバーの前記後端よりも後方に配置されている、請求項1から3の何れか一項の作業機。
【請求項5】
前記ハウジング本体に収容され、前記電動モータからの動力を前記作業部に伝達する動力伝達機構をさらに備えており、
前記動力伝達機構の後端は、前記トリガレバーの前端よりも後方に配置されている、請求項1から4の何れか一項の作業機。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記電動モータを制御する制御基板と、前記制御基板を収容するコントローラケースと、を備えており、
前記コントローラケースには、金属材料が用いられている、請求項1から5の何れか一項の作業機。
【請求項7】
前記電動モータは、ブラシレスモータであり、
前記制御ユニットは、前記電動モータに供給される電流を切り替えるためのスイッチング素子を備えている、請求項1から6の何れか一項の作業機。
【請求項8】
前記作業部は、前記前後方向に延びるガイドバーと、前記ガイドバーの周縁に設けられており、前記電動モータの駆動により前記ガイドバーの周縁を走行するソーチェーンと、を備えており、
チェーンソーとして機能する、請求項1から7の何れか一項の作業機。
【請求項9】
前記ハウジング本体に取り付けられ、前記ソーチェーンを潤滑するための潤滑油を貯留するオイルタンクをさらに備えており、
前記オイルタンクは、前記ハウジング本体の前端近傍に配置されている、請求項8の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前後方向に長手方向を有する作業部と、前記作業部を駆動する電動モータと、前記電動モータを制御する制御ユニットと、前記作業部の後方で前記作業部を保持するとともに、前記電動モータおよび前記制御ユニットを収容するハウジング本体と、前記ハウジング本体から延びており、ユーザの一方の手によって把持されるグリップと、を含むハウジングと、前記ハウジングに取り付けられ、前記制御ユニットを介して前記電動モータに電力を供給可能な電池パックと、前記グリップに設けられており、ユーザの手指で前記グリップ側に引かれることによって、前記電動モータを作動するトリガレバーと、を備える作業機が開示されている。前記制御ユニットの前端は、前記トリガレバーの前端よりも前方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0339420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような作業機では、ユーザはグリップを把持した状態で作業機の姿勢を変えようとすることがある。この時、ユーザにとって作業機の姿勢を変えづらいと、ユーザは快適に作業を行うことができない可能性がある。本明細書では、作業機の取り回し性能を向上することが可能な技術を提供する。なお、本明細書では、「ユーザにとっての作業機の姿勢の変えやすさ」を「作業機の取り回し性能」と呼ぶことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する作業機は、前後方向に長手方向を有する作業部と、前記作業部を駆動する電動モータと、前記電動モータを制御する制御ユニットと、前記作業部の後方で前記作業部を保持するとともに、前記電動モータおよび前記制御ユニットを収容するハウジング本体と、前記ハウジング本体から延びており、ユーザの一方の手によって把持されるグリップと、を含むハウジングと、前記ハウジングに取り付けられ、前記制御ユニットを介して前記電動モータに電力を供給可能な電池パックと、前記グリップに設けられており、ユーザの手指で前記グリップ側に引かれることによって、前記電動モータを作動するトリガレバーと、を備えている。前記制御ユニットの前端は、前記トリガレバーの後端よりも後方に配置されている。
【0006】
ユーザが把持するグリップは、ユーザの安全性などに鑑みて、作業部から離れた位置(例えば、作業機の後方)に設けられるのが一般的である。また、作業機全体に対する作業部の重量が比較的大きいことも一般的である。このため、作業機では、トリガレバーの前端よりも前方に重量物(作業部など)が偏りやすくなっており、トリガレバーの前端を支点とした時のモーメントが大きくなりやすい。トリガレバーの前端近傍はユーザが手指を掛ける部分であるため、トリガレバーの前端を支点とした時のモーメントが大きくなると、作業機の取り回し性能は低下してしまう。これに対し、上記の構成によれば、作業機の構成部品の中でも比較的重量の大きい制御ユニットの前端が、トリガレバーの後端よりも後方に配置される。このため、制御ユニットの重量により、トリガレバーの前端を支点とした時のモーメントを低減できる。したがって、作業機の取り回し性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1に係るチェーンソーT1を前方左方上方から見た斜視図である。
【
図2】実施例1に係るチェーンソーT1において、電池インタフェース160から電池パックB1を取り外した状態を、後方右方上方から見た斜視図である。
【
図3】実施例1に係るチェーンソーT1を下方から見た底面図である。
【
図4】実施例1に係るチェーンソーT1において、ハウジング本体14からスプロケットカバー18を取り外した状態を、後方左方上方から見た斜視図である。
【
図5】実施例1に係るチェーンソーT1の、グリップ16の基端近傍の内部構造を左方から見た断面図である。
【
図6】実施例1に係るチェーンソーT1の、ハウジング4の内部構造を右方から見た断面図である。
【
図7】実施例1に係るチェーンソーT1の、電動モータ64、モータシャフト80、冷却ファン82、動力伝達機構70、オイルポンプ68、スプロケット26、および作業部10を前方右方上方から見た図である。
【
図8】実施例1に係るチェーンソーT1において、ハウジング本体14の内部を、モータシャフト80の軸線A1に直交する方向に沿って前方から見た図である。
【
図9】実施例2に係るチェーンソーT2において、電池インタフェース160から電池パックB2を取り外した状態を、後方右方上方から見た斜視図である。
【
図10】実施例2に係るチェーンソーT2の、ハウジング4の内部構造を右方から見た断面図である。
【
図11】実施例3に係るチェーンソーT3において、電池インタフェース360から電池パックB3を取り外した状態を、後方右方上方から見た斜視図である。
【
図12】実施例3に係るチェーンソーT3の、ハウジング4の内部構造を右方から見た断面図である。
【
図13】実施例4に係るチェーンソーT4において、電池インタフェース360から電池パックB4を取り外した状態を、後方右方上方から見た斜視図である。
【
図14】実施例4に係るチェーンソーT4の、ハウジング4の内部構造を右方から見た断面図である。
【
図15】変形例に係るチェーンソーT1において、電池インタフェース160から電池パックB1を取り外した状態を、後方右方上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して以下に詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、開示された追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された作業機を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
【0009】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、以下の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、特許請求の範囲に記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0010】
本明細書及び/又は特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施例及び/又は特許請求の範囲に記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびに特許請求の範囲に記載された特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびに特許請求の範囲に記載された特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0011】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記電動モータの重心位置は、前記トリガレバーの前記後端よりも後方に配置されていてもよい。
【0012】
電動モータも、作業機の構成部品の中では比較的重量の大きい部品である。上記の構成によれば、電動モータの重心位置が、トリガレバーの後端よりも後方に配置される。このため、電動モータの重量により、トリガレバーの前端を支点とした時のモーメントを低減できる。したがって、作業機の取り回し性能をさらに向上することができる。
【0013】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記電動モータの前端は、前記トリガレバーの前端よりも後方に配置されていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、電動モータの重量により、トリガレバーの前端を支点とした時のモーメントをさらに低減できる。したがって、作業機の取り回し性能をさらに向上することができる。
【0015】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記電池パックの前端は、前記トリガレバーの前記後端よりも後方に配置されていてもよい。
【0016】
電池パックも、作業機の構成部品の中では比較的重量の大きい部品である。上記の構成によれば、電池パックの前端が、トリガレバーの後端よりも後方に配置される。このため、電池パックの重量により、トリガレバーの前端を支点とした時のモーメントを低減できる。したがって、作業機の取り回し性能をさらに向上することができる。
【0017】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記作業機は、前記ハウジング本体に収容され、前記電動モータからの動力を前記作業部に伝達する動力伝達機構をさらに備えていてもよい。前記動力伝達機構の後端は、前記トリガレバーの前端よりも後方に配置されていてもよい。
【0018】
作業機では、電動モータと作業部の間に動力伝達機構(減速機などを含む)が設けられることがある。動力伝達機構も、作業機の構成部品の中では比較的重量の大きい部品である。上記の構成によれば、動力伝達機構の後端が、トリガレバーの前端よりも後方に配置される。このため、動力伝達機構の後端近傍の重量により、トリガレバーの前端を支点とした時のモーメントを低減できる。したがって、作業機の取り回し性能をさらに向上することができる。
【0019】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記制御ユニットは、前記電動モータを制御する制御基板と、前記制御基板を収容するコントローラケースと、を備えていてもよい。前記コントローラケースには、金属材料が用いられていてもよい。
【0020】
作業機では、制御基板の冷却効率を向上するため、コントローラケースに金属材料が用いられることがある。金属材料は比較的比重の大きい材料であるため、コントローラケースに金属材料が用いられると、制御ユニットの重量は増大する。すなわち、制御ユニットの位置が、トリガレバーの前端を支点とした時のモーメントに影響しやすくなる。上記の構成によれば、コントローラケースに金属材料が用いられる。このため、制御基板の冷却効率を向上することができる。さらに上記の構成によれば、制御ユニットの配置によるモーメントの低減効果がより顕著に発揮される。したがって、本願による作業機の取り回し性能の向上効果がより顕著に発揮される。
【0021】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記電動モータは、ブラシレスモータであってもよい。前記制御ユニットは、前記電動モータに供給される電流を切り替えるためのスイッチング素子を備えていてもよい。
【0022】
一般的に、電動モータがブラシレスモータである場合、複数のスイッチング素子における発熱によって、制御ユニットの発熱量は比較的大きくなる。この場合、制御ユニットを効率的に冷却するため、コントローラケースに金属材料を用いる必要性が高い。また、コントローラケースに金属材料が用いられると、上述の通り、本願による作業機の取り回し性能の向上効果がより顕著に発揮される。上記の構成によれば、電動モータはブラシレスモータであるため、コントローラケースに金属材料が用いられる可能性が高い。したがって、本願による作業機の取り回し性能の向上効果がより顕著に発揮される可能性が高い。
【0023】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記作業部は、前記前後方向に延びるガイドバーと、前記ガイドバーの周縁に設けられており、前記電動モータの駆動により前記ガイドバーの周縁を走行するソーチェーンと、を備えていてもよい。前記作業機は、チェーンソーとして機能してもよい。
【0024】
上記の構成によれば、チェーンソーの取り回し性能を向上することができる。
【0025】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記作業機は、前記ハウジング本体に取り付けられ、前記ソーチェーンを潤滑するための潤滑油を貯留するオイルタンクをさらに備えていてもよい。前記オイルタンクは、前記ハウジング本体の前端近傍に配置されていてもよい。
【0026】
チェーンソーでは、ソーチェーンを潤滑するために、オイルタンクに貯留された潤滑油をソーチェーン(またはガイドバー)に供給する必要がある。この時、オイルタンクとソーチェーン(またはガイドバー)の距離が離れていると、オイルタンクからソーチェーン(またはガイドバー)までの潤滑油の供給路が長くなり、作業機の大型化につながる可能性がある。これに対し、上記の構成によれば、オイルタンクは、ハウジング本体の前端近傍、すなわち、ソーチェーン(またはガイドバー)の近傍に配置される。このため、潤滑油の供給路を短くすることができ、作業機を小型化できる。
【0027】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記電動モータは、ステータと、ロータを備えていてもよい。前記作業機は、前記ロータに固定されたモータシャフトをさらに備えていてもよい。前記モータシャフトの軸線は、前後上下方向に広がる平面上に配置されていてもよい。前記制御ユニットは、前記モータシャフトの軸線上に配置されていてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、制御ユニットと電動モータの距離を近づけることができる。このため、制御ユニットと電動モータの間を電気的に接続する導線の距離を小さくすることができる。したがって、作業機を小型化できる。
【0029】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記軸線から前記制御ユニットの前記前端までの距離は、前記軸線から前記制御ユニットの後端までの距離よりも小さくなっていてもよい。
【0030】
一般的に、電動モータは、モータシャフトの軸線に沿った略軸対称形状を有する。上記の構成によれば、制御ユニットの前後方向の中心位置を、軸線の径方向に沿って後方にオフセットすることができる。これにより、軸線の径方向において、制御ユニットの中心位置を、電動モータの中心位置に対して後方にオフセットすることができる。このような構成とすることで、制御ユニットと電動モータの間を電気的に接続する導線を、電動モータの後方に配置しやすくなる。電動モータの後方に配置される導線は、トリガレバーの後端よりも後方に配置される。この場合、導線の重量により、トリガレバーの前端を支点とした時のモーメントを低減できる。したがって、作業機の取り回し性能をさらに向上することができる。
【0031】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記モータシャフトの前記軸線に直交する方向に沿って前方から前記ハウジング本体の内部を見た時、前記制御ユニットと、前記電動モータと、前記オイルタンクと、が略一列に並んでいてもよい。
【0032】
上記の構成によれば、軸線の径方向に関して、ハウジング本体を小型化できる。すなわち、軸線の径方向に関して、作業機を小型化できる。
【0033】
(実施例1)
図1に示すように、本実施例の作業機は、チェーンソーT1である。チェーンソーT1は、主に木材や木の枝等の切断作業に用いられる、いわゆるプルーニングチェーンソーである。チェーンソーT1全体の重量は、大きくとも約2000gと比較的軽量である。これにより、チェーンソーT1は、片手で持ち運び可能となっている。
【0034】
チェーンソーT1は、ハウジング4と、ガイドバー6と、ソーチェーン8と、ハンドガード20と、電池パックB1を備えている。ガイドバー6は、ハウジング4から前方に向けて突出するようにハウジング4に取り付けられた、細長い板状の部材である。ガイドバー6は、例えば鉄等の金属材料からなる。ソーチェーン8は、相互に連結された複数のカッタ(図示せず)を備えており、ガイドバー6の周縁に沿って取り付けられている。ハウジング4には、略直方体形状の電池パックB1が取り付けられている。チェーンソーT1は、電池パックB1から供給される電力によって、ソーチェーン8をガイドバー6の周縁に沿って走行させる。
【0035】
ガイドバー6としては、切断作業の内容に応じて、種々のものを取付可能である。ガイドバー6の先端の曲率半径は、例えば15mmである。本実施例のチェーンソーT1は、ソーチェーン8を、例えば8m/sの速度で、ガイドバー6の周縁に沿って走行する。本明細書では、ガイドバー6とソーチェーン8を総称して「作業部10」と呼ぶことがある。本実施例では、作業部10の重量は、例えば約180gである。また、ハウジング4には、作業部10の一部を覆う作業カバー12が設けられている。このため、ユーザは、作業部10のうち作業カバー12により覆われていない部分を被切断物(例えば、木の枝)に押し当てることで、切断作業を実行する。この際、ユーザがチェーンソーT1に与える荷重は大きくとも20N程度であると想定される。
【0036】
以下の説明では、ガイドバー6の長手方向において、ハウジング4からガイドバー6に向かう方向を前方向とし、ガイドバー6からハウジング4に向かう方向を後方向とする。そして、前後方向に直交する方向であって、作業部10から作業カバー12に向かう方向を上方向とし、作業カバー12から作業部10に向かう方向を下方向とする。そして、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向とする。なお、
図1から
図15では、図示の簡略化のため、ソーチェーン8をガイドバー6と面一な輪状の部材として図示している。
【0037】
ハウジング4は、ハウジング本体14と、グリップ16と、第1取付部22と、第2取付部24を備えている。ハウジング本体14は、前後方向に対して、前方から後方に向かうにつれて下方から上方に向かうように傾斜した、略直方体形状を有している。ハウジング本体14は、前方において、スプロケットカバー18とともに作業部10を保持している。グリップ16は、ハウジング本体14の前方下部に接続している。グリップ16は、前後方向に対して、前方から後方に向かうにつれて上方から下方に傾斜した、略円筒形状を有している。第1取付部22は、ハウジング4の下方に突出して設けられるとともに、グリップ16の基端近傍に配置されている。第2取付部24は、ハウジング4の下方に突出して設けられるとともに、グリップ16の先端近傍に配置されている。第1取付部22および第2取付部24には、ハンドガード20が取り付けられる。ハウジング4(ハウジング本体14と、グリップ16と、第1取付部22と、第2取付部24)には、ヤング率が100MPaよりも大きい材料が用いられる。本実施例のハウジング4には、例えばポリアミド等のプラスチック材料が用いられている。ポリアミドのヤング率は、周囲の環境により変化することがあるが、少なくとも5000MPaよりは大きいといえる。なお、ユーザの手指が置かれる部分(ハウジング本体14の頭部14aと、グリップ16の周囲)には、例えばニトリルブタジエンゴム等のゴム材料によるコーティングが施されている。
【0038】
電池パックB1は、例えばリチウムイオン電池等の、再充電可能な二次電池を収容している。電池パックB1の出力電圧は、例えば10Vである。電池パックB1の電池容量は、例えば1.5Ahである。電池パックB1の重量は、例えば約215gである。
図3に示すように、電池パックB1の下面には、表示部166が設けられている。表示部166は、電池パックB1の電池残量に応じて表示を変化させることで、電池パックB1の電池残量をユーザに報知する。
【0039】
図2に示すように、グリップ16の先端には、電池パックB1を着脱可能に受け入れるための電池インタフェース160が設けられている。電池パックB1は、電池インタフェース160に対して後方上方から前方下方にスライドさせることで取り付けられる。また、電池インタフェース160は、電池パックB1が備える端子(図示せず)と接続するための接続端子162を備えている。接続端子162は、後述する制御ユニット62(
図6参照)およびトリガスイッチ52(
図6参照)に電気的に接続されている。電池パックB1が電池インタフェース160に取り付けられると、電池パックB1が備える端子と接続端子162が電気的に接続される。これにより、電池パックB1から制御ユニット62およびトリガスイッチ52への電力供給が許容される。
【0040】
図1に示すように、電池パックB1が電池インタフェース160に取り付けられた状態では、電池パックB1とグリップ16の外表面は滑らかに接続している。また、電池パックB1は、電池パックB1に設けられたフック164を押し込んだ状態で、電池インタフェース160に対して前方下方から後方上方にスライドさせることで取り外される。
【0041】
図4に示すように、スプロケットカバー18は、スプロケットカバー本体36と係止部材42を備えている。スプロケットカバー本体36は、スリーブ38を備えている。係止部材42は、係止部材本体44と、ナット46と、爪部48を備えている。スプロケットカバー18の内側では、スプロケット26がハウジング本体14の外側に露出している。スプロケット26には、ガイドバー6からソーチェーン8が架け渡される。また、ガイドバー6には、前後方向に沿って延びる切り欠き6aが形成されている。切り欠き6aには、ハウジング本体14の左側面から突出して固定されたピン28、30およびボルト32が右方から嵌入されている。
【0042】
図4に示す状態から、スプロケットカバー本体36のスリーブ38にボルト32を挿入し、スリーブ38を貫通するボルト32に対して係止部材42のナット46を締結することで、ハウジング本体14に対してスプロケットカバー18を取り付けることができる。ボルト32にナット46が締結された状態では、ガイドバー6は、ハウジング本体14とスプロケットカバー18の間に挟み込まれて固定される。ユーザは、ボルト32とナット46を緩めた状態で、ハウジング本体14に対してガイドバー6を前後方向にスライドさせることで、ガイドバー6とスプロケット26の距離を変化させて、ソーチェーン8の張り具合を調整することができる。
【0043】
ユーザは、係止部材本体44に対して左方に起立させた爪部48をボルト32の軸線周りに回転させることで、ボルト32とナット46を締めたり、緩めたりすることができる。これにより、ユーザは、特段の工具を用いることなく、十分な締め付けトルクでナット46をボルト32に締結することができる。なお
図1に示すように、通常時の爪部48は、捩りばね(図示せず)によって、係止部材本体44に沿って寝かせた状態となるように保持されている。
【0044】
図2に示すように、グリップ16の基端近傍の下面には、ユーザが作業部10を駆動操作するためのトリガレバー50が配置されている。
図5に示すように、トリガレバー50は、左右方向に延びる回動軸50a周りに回動可能に、ハウジング4に支持されている。ユーザは、トリガレバー50をグリップ16側に向けて引き上げ操作することができる。また、本明細書では、トリガレバー50のうち、グリップ16の外側に露出している部分の前端を、単に「前端50f」と呼ぶ。トリガレバー50のうち、グリップ16の外側に露出している部分の後端を、単に「後端50r」と呼ぶ。
【0045】
ハウジング4の内部には、ユーザによるトリガレバー50の引き上げ操作を検出するトリガスイッチ52が設けられている。トリガスイッチ52は、トリガレバー50の直上に配置されており、グリップ16とハウジング本体14の間に跨っている。トリガスイッチ52は、後述する制御ユニット62(
図6参照)に電気的に接続されている。トリガスイッチ52は、トリガレバー50が引き上げ操作されている間、制御ユニット62に対してトリガオン信号を出力する。また、ハウジング4の内部には、ユーザによるトリガレバー50の操作を許可する状態と禁止する状態の間で切り換えるロック部材54がさらに設けられている。ロック部材54は、トリガレバー50の直上であって、トリガスイッチ52の前方に配置されている。ロック部材54は、左右方向に延びる回動軸54a周りに回動可能に、ハウジング4に支持されている。
【0046】
ロック部材54が上方に回動した状態では、ロック部材54がトリガレバー50と機械的に干渉することで、トリガレバー50の上方への回動が禁止される。ロック部材54が下方に回動した状態では、ロック部材54がトリガレバー50と干渉しなくなり、トリガレバー50の上方への回動が許容される。
【0047】
図1に示すように、ロック部材54は、ハウジング4の左側面に設けられた貫通孔56aを介してハウジング4の外側に突出した左側ロックレバー58aを備えている。
図2に示すように、ロック部材54は、ハウジング4の右側面に設けられた貫通孔56bを介してハウジング4の外側に突出した右側ロックレバー58bを備えている。以下では、左側ロックレバー58aと右側ロックレバー58bを総称して「ロックレバー58」と呼ぶ。ユーザは、ロックレバー58を介して、ロック部材54を回動操作することができる。
【0048】
トリガレバー50とロック部材54は、捩りバネ60(
図5参照)によって互いに連結されている。捩りバネ60は、トリガレバー50を下方に回動する方向に付勢するとともに、ロック部材54を上方に回動する方向に付勢する。このため、ユーザがトリガレバー50から手を離している場合には、捩りバネ60の付勢力によってトリガレバー50は下方に回動した状態となる。また、ユーザがロックレバー58から手を離している場合には、捩りバネ60の付勢力によってロック部材54は上方に回動した状態となる。
【0049】
例えば、ユーザは、チェーンソーT1を使用する際、右手でグリップ16を把持し、左手を頭部14aに添えて、チェーンソーT1を保持する。この状態から、ユーザがロックレバー58を右手の親指で押し下げると、ユーザによるトリガレバー50の操作が許可された状態となり、この状態でユーザがトリガレバー50を右手の人差し指で引き上げ操作することで、作業部10が駆動される。
【0050】
(ハンドガード20の構成)
図1に示すハンドガード20は、グリップ16を把持するユーザの手を保護するための保護具である。ユーザによる切断作業の実行中(作業部10の駆動中)にソーチェーン8が破断すると、破断したソーチェーン8が、走行時の勢いを保ったままガイドバー6から飛び出すことがある。このような場合に、ハンドガード20は、ガイドバー6から飛び出したソーチェーン8が、グリップ16(
図1参照)を把持するユーザの手に接触することを抑制することができる。ハンドガード20には、例えば、ヤング率が1MPaから100MPaまでの範囲内にある材料が用いられる。本実施例のハンドガード20には、例えばニトリルブタジエンゴム等のゴム材料が用いられている。ニトリルブタジエンゴムのヤング率は、周囲の環境により変化することがあるが、1MPaから10MPaまでの範囲内にはあるといえる。
【0051】
ハンドガード20は、第1端部202と、第2端部204と、第1端部202と第2端部204の間で連続的に延びるガード本体206を備えている。第1端部202は、左右方向に延びる回動軸22a周りに回動可能に、第1取付部22に取り付けられている。第1端部202は、第1取付部22に取り付けられることで、グリップ16の基端近傍に配置される。また、第2端部204は、左右方向に延びる回動軸24a(
図2参照)周りに回動可能に、第2取付部24に取り付けられている。第2端部204は、第2取付部24に取り付けられることで、グリップ16の先端近傍に配置される。
【0052】
ガード本体206は、板状に形成されたプレート部208と、プレート部208の下面から下方に突出した複数のリブ部210(
図3参照)を備えている。プレート部208は、上面がグリップ16に対向するように配置されている。本実施例では、プレート部208の厚さ(プレート部208の上面および下面に直交する方向における厚さ)は、例えば約5mmである。
【0053】
図3に示すように、チェーンソーT1を下方から見た時、プレート部208は略矩形形状を有している。プレート部208は、ガイドバー6の左面よりも左方において、例えば約29mmの幅を有している。プレート部208は、ガイドバー6の右面よりも右方において、例えば約30mmの幅を有している。また、プレート部208は、グリップ16(
図1参照)の左面よりも左方において、例えば約30mmの幅を有している。プレート部208は、グリップ16の右面よりも右方において、例えば約0.5mmの幅を有している。
【0054】
複数のリブ部210は、プレート部208の下面に沿って前後方向に延びる第1リブ部212と、プレート部208の下面に沿って左右方向に延びる第2リブ部214と、プレート部208の下面の周縁部に沿って延びる第3リブ部216を備えている。第1リブ部212は、左右方向に4つ並べられている。チェーンソーT1を下方から見た時、第1リブ部212のそれぞれは、第1端部202と第2端部204の間を略直線状に延びている。また、第2リブ部214は、前後方向に3つ並べられている。第1リブ部212と、第2リブ部214は、互いに直交する部分において接続している。第2リブ部214は、左端および右端において、第3リブ部216と接続している。
【0055】
図6に示すように、プレート部208は、基端側から先端側に向かうにつれてグリップ16から離れるように延びる第1延伸部220と、先端側から基端側に向かうにつれてグリップ16から離れるように延びる第2延伸部222と、第1延伸部220と第2延伸部222を接続する屈曲部224から構成されている。第1延伸部220の延伸方向における長さは、第2延伸部222の延伸方向における長さよりも短くなっている。屈曲部224の屈曲角度は、例えば100°である。屈曲部224の曲率半径は、例えば18mmである。これにより、自然状態(ハンドガード20に外力が加わっていない状態)では、ハンドガード20は、グリップ16から見て外側に突き出したような形状となっている。
【0056】
上記の説明の通りに構成されたハンドガード20では、ハンドガード20は、ハウジング4よりも弾性変形しやすくなっている。ハンドガード20は、例えば、プレート部208の下面に対向する方向から、5N以下の所定の荷重がかかることで、変形し始めるように構成されている。なお、ここでいう「変形し始める」とは、ハンドガード20の弾性ひずみが1%を上回ることを意味している。このため、ユーザは、比較的小さな荷重をもって、ハンドガード20を変形させることができる。
【0057】
(チェーンソーT1の内部構造)
図6に示すように、ハウジング本体14の内部には、制御ユニット62と、電動モータ64と、オイルタンク66と、オイルポンプ68と、減速機72と、冷却ファン82が収容されている。
【0058】
図7に示すように、電動モータ64は、インナロータ型のDCブラシレスモータである。電動モータ64は、コイル74が巻回されたステータ76と、ステータ76の内側に配置されており、永久磁石(図示せず)を備えるロータ78と、を備えている。本実施例では、電動モータ64(コイル74と、ステータ76と、ロータ78)の重量は、例えば約180gである。なお、ロータ78には、ステータ76およびロータ78の中央を貫通するように配置されたモータシャフト80が固定されている。このため、電動モータ64は、モータシャフト80を回転駆動するように構成されている。
【0059】
冷却ファン82は、ロータ78よりも下方において、モータシャフト80に固定されている。冷却ファン82は、モータシャフト80の回転に伴って回転する。冷却ファン82が回転すると、モータシャフト80の軸線A1(
図6参照)に沿って下方から上方に向かう空気の流れが形成される。この時、左側吸気口140(
図1参照)および右側吸気口142(
図2参照)を通じて、ハウジング4の外部から内部に空気が吸入される。また、左側排気口144(
図1参照)および右側排気口146(
図2参照)を通じて、ハウジング4の内部から外部に空気が排出される。これにより、冷却ファン82は、電動モータ64の駆動に伴って電動モータ64を冷却することができる。
【0060】
減速機72は、冷却ファン82よりも下方においてモータシャフト80に固定された第1ベベルギヤ72aと、第1ベベルギヤ72aに噛み合う第2ベベルギヤ72bを備えている。第2ベベルギヤ72bは、駆動シャフト84に固定されている。駆動シャフト84は、左右方向に延びる回転軸周りに回転可能に、ハウジング4(
図1参照)に支持されている。駆動シャフト84には、第2ベベルギヤ72bの左方において、スプロケット26が固定されている。このため、電動モータ64が駆動すると、モータシャフト80の回転運動が、減速機72、駆動シャフト84、およびスプロケット26を介してソーチェーン8に伝達される。これによってソーチェーン8がスプロケット26とガイドバー6の周りを回転する。
【0061】
図6に示すオイルタンク66は、ソーチェーン8を潤滑するための潤滑油を貯留するためのタンクである。オイルタンク66は、最大約50ccの潤滑油を貯留することができる。オイルタンク66には、オイルタンク66に潤滑油を補充するための給油口(図示せず)が設けられている。給油口には、キャップ660が着脱可能に取り付けられている。オイルタンク66は、ハウジング本体14の前端近傍に配置されている。
図2に示すように、オイルタンク66のキャップ660および給油口は、ハウジング本体14の外部に露出している。このため、ユーザは、ハウジング本体14を分解することなく、給油口からキャップ660を取り外して、オイルタンク66への給油を行うことができる。
【0062】
図7に示すように、駆動シャフト84には、第2ベベルギヤ72bの右方において、ウォームギヤ84aが固定されている。ウォームギヤ84aは、オイルポンプ68のウォームホイール68aに噛み合っている。このため、電動モータ64が駆動すると、モータシャフト80の回転運動が、減速機72、駆動シャフト84、ウォームギヤ84a、およびウォームホイール68aを介してオイルポンプ68に伝達される。これによってオイルポンプ68が駆動される。オイルポンプ68が駆動されると、オイルタンク66(
図6参照)の内部に配置された吸込部680を介して、潤滑油がオイル供給路682へと吸引される。そして、吐出部684を介して、オイル供給路682からガイドバー6およびソーチェーン8に潤滑油が供給される。
【0063】
本明細書では、減速機72と、駆動シャフト84と、ウォームギヤ84aから構成される機構を「動力伝達機構70」と呼ぶことがある。
図6に示すように、動力伝達機構70は、ハウジング本体14の中央部分に配置されている。動力伝達機構70は、電動モータ64の前方かつ下方に配置されている。動力伝達機構70は、オイルタンク66よりも後方に配置されている。本実施例では、動力伝達機構70の重量は、例えば約110gである。
【0064】
制御ユニット62は、ハウジング本体14の頭部14aの直下に配置されている。制御ユニット62は、電動モータ64の上方かつ後方に配置されている。制御ユニット62の下方であって、電動モータ64の後方には、配線空間Sが形成されている。図示しないが、制御ユニット62や電動モータ64等の各構成部品間を電気的に接続する導線の大部分は、配線空間Sを通じて配線される。
【0065】
制御ユニット62は、複数のスイッチング素子を備えるインバータ回路およびそれぞれのスイッチング素子の動作を制御する制御回路が搭載された制御基板(図示せず)と、制御基板を収容する略直方体形状のコントローラケース620を備えている。コントローラケース620には、例えばアルミニウム等の金属材料が用いられている。本実施例では、制御ユニット62の重量は、例えば約60gである。
【0066】
制御ユニット62は、トリガスイッチ52からトリガオン信号が出力されている間、電池パックB1から供給される直流電力を三相交流電力に変換して、電動モータ64へ供給する。制御ユニット62は、トリガスイッチ52からトリガオン信号が出力されなくなると、電池パックB1から電動モータ64への電力供給を遮断する。また、制御ユニット62は、ソーチェーン8を所定の走行方向に走行させるように、電動モータ64の駆動を制御する。ここでいう所定の走行方向とは、ソーチェーン8が、ガイドバー6の上方では前方に走行し、ガイドバー6の下方では後方に走行するような方向である。
【0067】
(主な構成部品の軸線A1に対する位置関係)
モータシャフト80(
図7参照)の軸線A1は、前後上下方向に広がる平面上に配置されている。軸線A1は、上下方向に対して、上方から下方に向かうにつれて後方から前方に向かうように傾斜している。軸線A1の上下方向に対する傾斜角度は、本実施例では41°である。制御ユニット62は、軸線A1上に配置されている。制御ユニット62(コントローラケース620)は、軸線A1に略直交する平面に沿って配置されている。軸線A1から制御ユニット62の前端62f(コントローラケース620の前端に一致)までの距離は、軸線A1から制御ユニット62の後端62r(コントローラケース620の後端に一致)までの距離よりも小さい。また、動力伝達機構70の駆動シャフト84は、軸線A1に略直交するように配置されている。
【0068】
図8に示すように、軸線A1に直交する方向に沿って前方からハウジング本体14(
図1参照)の内部を見た時、上方から順に、制御ユニット62と、電動モータ64と、冷却ファン82と、動力伝達機構70およびスプロケット26と、オイルタンク66が、略一列に並んで配置されている。軸線A1に直交する方向に沿って前方から見た時、制御ユニット62の重心位置62Gと、電動モータ64の重心位置64Gと、冷却ファン82の重心位置82Gは、それぞれ軸線A1上に配置されている。
【0069】
軸線A1に直交する方向に沿って前方から見た時、制御ユニット62と、電動モータ64と、冷却ファン82のそれぞれは、略左右対称(軸線A1に関して略線対称)の形状を有している。図示しないが、グリップ16(
図1参照)および電池パックB1(
図1参照)も同様に、略左右対称(軸線A1に関して略線対称)の形状を有している。また、スプロケット26は、軸線A1よりも左方に配置されている。オイルタンク66と、オイルポンプ68と、第2ベベルギヤ72bと、ウォームギヤ84aは、軸線A1よりも右方に配置されている。
【0070】
(主な構成部品のトリガレバー50に対する位置関係)
図6では、トリガレバー50の前端50fを通り、上下方向に延びる直線A2と、トリガレバー50の後端50rを通り、上下方向に延びる直線A3を図示している。
【0071】
制御ユニット62の前端62fは、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置されている。電動モータ64の前端64fは、トリガレバー50の前端50fよりも後方であって、トリガレバー50の後端50rよりも前方に配置されている。動力伝達機構70の後端70r(第1ベベルギヤ72aの後端に一致)は、トリガレバー50の前端50fよりも後方であって、トリガレバー50の後端50rよりも前方に配置されている。電池パックB1の前端B1fは、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置されている。また、制御ユニット62の重心位置62Gは、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置されている。電動モータ64の重心位置64Gは、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置されている。冷却ファン82の重心位置82Gは、トリガレバー50の前端50fよりも後方であって、トリガレバー50の後端50rよりも前方に配置されている。電池パックB1の重心位置BG1は、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置されている。
【0072】
上記の説明の通りに構成されたチェーンソーT1では、チェーンソーT1の重心位置TG1は、ハウジング4の内部であって、直線A2と直線A3の間に配置されている。重心位置TG1は、ロック部材54と重なる位置にあるともいえる。また、直線A2から重心位置TG1までの距離と、直線A3から重心位置TG1までの距離は、略同一となっている。なお、本実施例では、オイルタンク66に満量の潤滑油が貯留された状態、電池パックB1が電池インタフェース160に取り付けられた状態、かつ、その他の構成部品がすべて取り付けられた状態で、重心位置TG1を定めている。
【0073】
(実施例2)
図9に示すように、本実施例の作業機は、チェーンソーT2である。チェーンソーT2は、電池パックB1の代わりに電池パックB2を備える点を除いて、実施例1のチェーンソーT1と略同様の構成を備えている。以下では、チェーンソーT2とチェーンソーT1の相違点についてのみ説明を行う。
【0074】
電池パックB2は、例えばリチウムイオン電池等の、再充電可能な二次電池を収容している。電池パックB2の出力電圧は、例えば10Vである。電池パックB2の電池容量は、例えば4.0Ahである。電池パックB2の重量は、例えば約375gである。電池パックB2は、電池パックB1と同様に、電池インタフェース160に対して着脱可能に取り付けられる。
【0075】
電池パックB2は、電池パックB1(
図2参照)と比較して、グリップ16の延在方向における幅が大きくなっている。電池パックB2の左右方向における幅は、電池パックB1と同程度である。電池パックB2の、グリップ16の延在方向および左右方向に直交する方向における幅は、電池パックB1と同程度である。これにより、電池パックB2の体積は、電池パックB1の体積よりも大きくなっている。
【0076】
図10に示すように、電池パックB2の前端B2fおよび重心位置BG2は、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置されている。また、チェーンソーT2の重心位置TG2は、ハウジング4の内部であって、直線A2と直線A3の間に配置されている。重心位置TG2は、トリガスイッチ52の前端近傍に位置しているともいえる。また、直線A2から重心位置TG2までの距離は、直線A3から重心位置TG2までの距離よりも、大きくなっている。
【0077】
(実施例3)
図11に示すように、本実施例の作業機は、チェーンソーT3である。チェーンソーT3は、電池パックB1の代わりに電池パックB3を備え、電池インタフェース160の代わりに電池インタフェース360を備える点を除いて、実施例1のチェーンソーT1と略同様の構成を備えている。以下では、チェーンソーT3とチェーンソーT1の相違点についてのみ説明を行う。
【0078】
電池パックB3は、例えばリチウムイオン電池等の、再充電可能な二次電池を収容している。電池パックB3の出力電圧は、例えば18Vである。電池パックB3の電池容量は、例えば2.0Ahである。電池パックB3の重量は、例えば約375gである。電池パックB3のグリップ16の延在方向における幅は、電池パックB1(
図2参照)と同程度である。電池パックB3は、電池パックB1と比較して、左右方向における幅が大きくなっている。電池パックB3は、電池パックB1と比較して、グリップ16の延在方向および左右方向に直交する方向における幅が大きくなっている。これにより、電池パックB3の体積は、電池パックB1の体積よりも大きくなっている。
【0079】
電池パックB3は、電池インタフェース360に対して後方上方から前方下方にスライドさせることで取り付けられる。また、電池インタフェース360は、電池パックB3が備える端子(図示せず)と接続するための接続端子362を備えている。接続端子362は、制御ユニット62(
図12参照)およびトリガスイッチ52(
図12参照)に電気的に接続されている。電池パックB3が電池インタフェース360に取り付けられると、電池パックB3が備える端子と接続端子362が電気的に接続される。これにより、電池パックB3から制御ユニット62およびトリガスイッチ52への電力供給が許容される。
【0080】
図12に示すように、電池パックB3が電池インタフェース360に取り付けられた状態では、電池パックB3とグリップ16の外表面は滑らかに接続している。また、電池パックB3は、電池パックB3に設けられたフック364(
図11参照)を押し込んだ状態で、電池インタフェース360に対して前方下方から後方上方にスライドさせることで取り外される。
【0081】
電池パックB3の前端B3fおよび重心位置BG3は、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置されている。また、チェーンソーT3の重心位置TG3は、ハウジング4の内部であって、直線A2と直線A3の間に配置されている。重心位置TG3は、トリガスイッチ52の前端近傍に位置しているともいえる。また、直線A2から重心位置TG3までの距離は、直線A3から重心位置TG3までの距離よりも、大きくなっている。なお、チェーンソーT3の重心位置TG3は、実施例2のチェーンソーT2の重心位置TG2と略同一の位置にある。
【0082】
(実施例4)
図13に示すように、本実施例の作業機は、チェーンソーT4である。チェーンソーT4は、電池パックB3の代わりに電池パックB4を備える点を除いて、実施例3のチェーンソーT3と略同様の構成を備えている。以下では、チェーンソーT4とチェーンソーT3の相違点についてのみ説明を行う。
【0083】
電池パックB4は、例えばリチウムイオン電池等の、再充電可能な二次電池を収容している。電池パックB4の電圧は、例えば18Vである。電池パックB4の電池容量は、例えば6.0Ahである。電池パックB4の重量は、例えば約670gである。電池パックB4は、電池パックB3と同様に、電池インタフェース360に対して着脱可能に取り付けられる。
【0084】
電池パックB4は、電池パックB3(
図11参照)と比較して、グリップ16の延在方向における幅が大きくなっている。電池パックB4の左右方向における幅は、電池パックB3と同程度である。電池パックB4の、グリップ16の延在方向および左右方向に直交する方向における幅は、電池パックB3と同程度である。これにより、電池パックB4の体積は、電池パックB3の体積よりも大きくなっている。
【0085】
図14に示すように、電池パックB4の前端B4fおよび重心位置BG4は、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置されている。また、チェーンソーT4の重心位置TG4は、ハウジング4の内部であって、ハウジング4の内部であって、直線A3よりも後方に配置されている。重心位置TG3は、トリガスイッチ52の後端近傍に位置しているともいえる。
【0086】
以下では、チェーンソーT1と、チェーンソーT2と、チェーンソーT3と、チェーンソーT4を総称して「チェーンソーT」と呼ぶことがある。
【0087】
(変形例)
上記の実施例では、作業機が、作業部10としてガイドバー6およびソーチェーン8を備えるチェーンソーTである構成について説明した。別の実施例では、作業機は、作業部10として鋸刃を備えるレシプロソーであってもよい。なお、作業機がレシプロソーである場合には、作業機はオイルタンク66およびオイルポンプ68を備えていなくてもよい。
【0088】
上記の実施例では、電動モータ64がインナロータ型のDCブラシレスモータである構成について説明した。別の実施例では、電動モータ64は、アウタロータ型のDCブラシレスモータであってもよい。あるいは、電動モータ64は、ブラシ付きモータであってもよいし、他の種類の電動モータであってもよい。
【0089】
上記の実施例では、ハウジング4には、ポリアミド等のプラスチック材料が用いられている構成について説明した。別の実施例では、ハウジング4には、ヤング率が100MPaよりも大きい材料であれば、ポリアミド以外のプラスチック材料(例えば、ポリカーボネート)が用いられてもよい。さらに別の実施例では、ハウジング4には、ヤング率が100MPaよりも大きい材料であれば、プラスチック材料以外の材料(例えば、アルミニウム等の金属材料)が用いられてもよい。
【0090】
上記の実施例では、ハンドガード20には、ニトリルブタジエンゴム等のゴム材料が用いられている構成について説明した。別の実施例では、ハンドガード20には、ヤング率が1MPaから100MPaまでの範囲内にある材料であれば、ニトリルブタジエンゴム以外のゴム材料(例えば、エチレンプロピレンゴム)が用いられてもよい。
【0091】
上記の実施例において、ハンドガード20の第1端部202および第2端部204の少なくとも一方は、対応する第1取付部22および第2取付部24の少なくとも一方に対して、回転不能に取り付けられていてもよい。
【0092】
上記の実施例において、ハンドガード20の複数のリブ部210は、第1リブ部212、第2リブ部214、および第3リブ部216のうち、少なくとも1つを備えていなくてもよい。
【0093】
上記の実施例では、ハンドガード20が、比較的ヤング率の低い材料(ゴム材料)によって形成されることで、ハウジング4よりも弾性変形しやすくなっている構成について説明した。別の実施例では、ハンドガード20は、ハウジング4に対して揺動可能に設けられた、いわゆるスイングドアのような構成としてもよい。この場合、ハンドガード20が障害物に当接した状態で、ハンドガード20に荷重がかかると、ハンドガード20は閉状態から開状態に変形する。さらに別の実施例では、ハンドガード20は、ハウジング4に対して第1位置と第2位置の間で並進可能に設けられる構成としてもよい。この場合、ハンドガード20が障害物に当接した状態で、ハンドガード20に荷重がかかると、ハンドガード20が第1位置と第2位置の間で並進することにより、ハウジング4に対するハンドガード20の位置が変化する。なお、ハンドガード20を弾性変形以外の方法で変形させる場合には、ハンドガード20には、ゴム材料以外の材料(例えば、ポリアミド等のプラスチック材料)が用いられてもよいし、ヤング率が100MPaよりも大きい材料が用いられてもよい。
【0094】
上記の実施例において、チェーンソーT(作業機の例)は、動力伝達機構70を備えていなくてもよい。この場合、例えば、スプロケット26に複数の歯が形成されており、スプロケット26の複数の歯が、モータシャフト80に固定された第1ベベルギヤ72aと噛み合っていてもよい。また、オイルポンプ68のウォームホイール68aは、モータシャフト80に固定された第1ベベルギヤ72aと噛み合っていてもよい。
【0095】
上記の実施例では、コントローラケース620には、アルミニウム等の金属材料が用いられている構成について説明した。別の実施例では、コントローラケース620には、アルミニウム以外の金属材料(例えば、鉄)が用いられていてもよい。さらに別の実施例では、コントローラケース620には、金属材料以外の材料(例えば、ポリアミド等のプラスチック材料)が用いられてもよい。
【0096】
図15に示すように、チェーンソーT1(作業機の例)は、上記の実施例における排気口144、146の代わりに、排気口544を備えていてもよい。排気口544は、ハウジング本体14の頭部14aに設けられている。この場合、冷却ファン82が回転すると、排気口144、146の代わりに、排気口544を通じて、ハウジング4の内部から外部に空気が排出される。この場合も、冷却ファン82は、電動モータ64の駆動に伴って電動モータ64を冷却することができる。なお、上記の構成は、チェーンソーT2、T3、T4において適用されてもよい。
【0097】
(対応関係)
以上のように、1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソーT(作業機の例)は、前後方向に長手方向を有する作業部10と、作業部10を駆動する電動モータ64と、電動モータ64を制御する制御ユニット62と、作業部10の後方で作業部10を保持するとともに、電動モータ64および制御ユニット62を収容するハウジング本体14と、ハウジング本体14から延びており、ユーザの一方の手によって把持されるグリップ16と、を含むハウジング4と、ハウジング4に取り付けられ、制御ユニット62を介して電動モータ64に電力を供給可能な電池パックB1(または、電池パックB2、B3、B4)と、グリップ16に設けられており、ユーザの手指でグリップ16側に引かれることによって、電動モータ64を作動するトリガレバー50と、を備えている。制御ユニット62の前端62fは、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置されている。
【0098】
ユーザが把持するグリップ16は、ユーザの安全性などに鑑みて、作業部10から離れた位置(例えば、チェーンソーTの後方)に設けられるのが一般的である。また、チェーンソーT全体に対する作業部10の重量が比較的大きいことも一般的である。このため、チェーンソーTでは、トリガレバー50の前端50fよりも前方に重量物(作業部10など)が偏りやすくなっており、トリガレバー50の前端50fを支点とした時のモーメントが大きくなりやすい。トリガレバー50の前端50f近傍はユーザが把持する部分であるため、トリガレバー50の前端50fを支点とした時のモーメントが大きくなると、チェーンソーTの取り回し性能は低下してしまう。これに対し、上記の構成によれば、チェーンソーTの構成部品の中でも比較的重量の大きい制御ユニット62の前端62fが、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置される。このため、制御ユニット62の重量により、トリガレバー50の前端50fを支点とした時のモーメントを低減できる。したがって、チェーンソーTの取り回し性能を向上することができる。
【0099】
1つまたはそれ以上の実施形態において、電動モータ64の重心位置64Gは、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置されている。
【0100】
電動モータ64も、チェーンソーTの構成部品の中では比較的重量の大きい部品である。上記の構成によれば、電動モータ64の重心位置64Gが、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置される。このため、電動モータ64の重量により、トリガレバー50の前端50fを支点とした時のモーメントを低減できる。したがって、チェーンソーTの取り回し性能をさらに向上することができる。
【0101】
1つまたはそれ以上の実施形態において、電動モータ64の前端64fは、トリガレバー50の前端50fよりも後方に配置されている。
【0102】
上記の構成によれば、電動モータ64の重量により、トリガレバー50の前端50fを支点とした時のモーメントをさらに低減できる。したがって、チェーンソーTの取り回し性能をさらに向上することができる。
【0103】
1つまたはそれ以上の実施形態において、電池パックB1の前端B1f(または、電池パックB2の前端B2f、電池パックB3の前端B3f、電池パックB4の前端B4f)は、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置されている。
【0104】
電池パックB1(または、電池パックB2、B3、B4)も、チェーンソーTの構成部品の中では比較的重量の大きい部品である。上記の構成によれば、電池パックB1の前端B1f(または、電池パックB2の前端B2f、電池パックB3の前端B3f、電池パックB4の前端B4f)が、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置される。このため、電池パックB1(または、電池パックB2、B3、B4)の重量により、トリガレバー50の前端50fを支点とした時のモーメントを低減できる。したがって、チェーンソーTの取り回し性能をさらに向上することができる。
【0105】
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソーTは、ハウジング本体14に収容され、電動モータ64からの動力を作業部10に伝達する動力伝達機構70をさらに備えている。動力伝達機構70の後端70rは、トリガレバー50の前端50fよりも後方に配置されている。
【0106】
チェーンソーTでは、電動モータ64と作業部10の間に動力伝達機構70(減速機72などを含む)が設けられることがある。動力伝達機構70も、チェーンソーTの構成部品の中では比較的重量の大きい部品である。上記の構成によれば、動力伝達機構70の後端70rが、トリガレバー50の前端50fよりも後方に配置される。このため、動力伝達機構70の後端70r近傍の重量により、トリガレバー50の前端50fを支点とした時のモーメントを低減できる。したがって、チェーンソーTの取り回し性能をさらに向上することができる。
【0107】
1つまたはそれ以上の実施形態において、制御ユニット62は、電動モータ64を制御する制御基板と、制御基板を収容するコントローラケース620と、を備えている。コントローラケース620には、金属材料が用いられている。
【0108】
チェーンソーTでは、制御基板の冷却効率を向上するため、コントローラケース620に金属材料が用いられることがある。金属材料は比較的比重の大きい材料であるため、コントローラケース620に金属材料が用いられると、制御ユニット62の重量は増大する。すなわち、制御ユニット62の位置が、トリガレバー50の前端50fを支点とした時のモーメントに影響しやすくなる。上記の構成によれば、コントローラケース620に金属材料が用いられる。このため、制御基板の冷却効率を向上することができる。さらに上記の構成によれば、制御ユニット62の配置によるモーメントの低減効果がより顕著に発揮される。したがって、本願によるチェーンソーTの取り回し性能の向上効果がより顕著に発揮される。
【0109】
1つまたはそれ以上の実施形態において、電動モータ64は、ブラシレスモータである。制御ユニット62は、電動モータ64に供給される電流を切り替えるためのスイッチング素子を備えている。
【0110】
一般的に、電動モータ64がブラシレスモータである場合、複数のスイッチング素子における発熱によって、制御ユニット62の発熱量は比較的大きくなる。この場合、制御ユニット62を効率的に冷却するため、コントローラケース620に金属材料を用いる必要性が高い。また、コントローラケース620に金属材料が用いられると、上述の通り、本願によるチェーンソーTの取り回し性能の向上効果がより顕著に発揮される。上記の構成によれば、電動モータ64はブラシレスモータであるため、コントローラケース620に金属材料が用いられる可能性が高い。したがって、本願によるチェーンソーTの取り回し性能の向上効果がより顕著に発揮される可能性が高い。
【0111】
1つまたはそれ以上の実施形態において、作業部10は、前後方向に延びるガイドバー6と、ガイドバー6の周縁に設けられており、電動モータ64の駆動によりガイドバー6の周縁を走行するソーチェーン8と、を備えている。作業機は、チェーンソーTとして機能する。
【0112】
上記の構成によれば、チェーンソーTの取り回し性能を向上することができる。
【0113】
1つまたはそれ以上の実施形態において、チェーンソーTは、ハウジング本体14に取り付けられ、ソーチェーン8を潤滑するための潤滑油を貯留するオイルタンク66をさらに備えている。オイルタンク66は、ハウジング本体14の前端近傍に配置されている。
【0114】
チェーンソーTでは、ソーチェーン8を潤滑するために、オイルタンク66に貯留された潤滑油をソーチェーン8(またはガイドバー6)に供給する必要がある。この時、オイルタンク66とソーチェーン8(またはガイドバー6)の距離が離れていると、オイル供給路682(オイルタンクからソーチェーンまたはガイドバーまでの潤滑油の供給路の例)が長くなり、チェーンソーTの大型化につながる可能性がある。これに対し、上記の構成によれば、オイルタンク66は、ハウジング本体14の前端近傍、すなわち、ソーチェーン8(またはガイドバー6)の近傍に配置される。このため、オイル供給路682を短くすることができ、チェーンソーTを小型化できる。
【0115】
1つまたはそれ以上の実施形態において、電動モータ64は、ステータ76と、ロータ78を備えている。チェーンソーTは、ロータ78に固定されたモータシャフト80をさらに備えている。モータシャフト80の軸線A1は、前後上下方向に広がる平面上に配置されている。制御ユニット62は、モータシャフト80の軸線A1上に配置されている。
【0116】
上記の構成によれば、制御ユニット62と電動モータ64の距離を近づけることができる。このため、制御ユニット62と電動モータ64の間を電気的に接続する導線の距離を小さくすることができる。したがって、チェーンソーTを小型化できる。
【0117】
1つまたはそれ以上の実施形態において、軸線A1から制御ユニット62の前端62fまでの距離は、軸線A1から制御ユニット62の後端62rまでの距離よりも小さくなっている。
【0118】
一般的に、電動モータ64は、モータシャフト80の軸線A1に沿った略軸対称形状を有する。上記の構成によれば、制御ユニット62の前後方向の中心位置を、軸線A1の径方向に沿って後方にオフセットすることができる。これにより、軸線A1の径方向において、制御ユニット62の中心位置を、電動モータ64の中心位置に対して後方にオフセットすることができる。このような構成とすることで、制御ユニット62と電動モータ64の間を電気的に接続する導線を、電動モータ64の後方に配置しやすくなる。すなわち、トリガレバー50に対する導線の位置を、より後方に配置しやすくなる。電動モータ64の後方に配置される導線は、トリガレバー50の後端50rよりも後方に配置される。この場合、導線の重量により、トリガレバー50の前端50fを支点とした時のモーメントを低減できる。したがって、チェーンソーTの取り回し性能をさらに向上することができる。
【0119】
1つまたはそれ以上の実施形態において、モータシャフト80の軸線A1に直交する方向に沿って前方からハウジング本体14の内部を見た時、制御ユニット62と、電動モータ64と、オイルタンク66と、が略一列に並んでいる。
【0120】
上記の構成によれば、軸線A1の径方向に関して、ハウジング本体14を小型化できる。すなわち、軸線A1の径方向に関して、チェーンソーTを小型化できる。
【符号の説明】
【0121】
4 :ハウジング
6 :ガイドバー
6a :切り欠き
8 :ソーチェーン
10 :作業部
12 :作業カバー
14 :ハウジング本体
14a :頭部
16 :グリップ
18 :スプロケットカバー
20 :ハンドガード
22 :第1取付部
22a :回動軸
24 :第2取付部
24a :回動軸
26 :スプロケット
28、30 :ピン
32 :ボルト
36 :スプロケットカバー本体
38 :スリーブ
42 :係止部材
44 :係止部材本体
46 :ナット
48 :爪部
50 :トリガレバー
50a :回動軸
50f :トリガレバーの前端
50r :トリガレバーの後端
52 :トリガスイッチ
54 :ロック部材
54a :回動軸
56a :貫通孔
56b :貫通孔
58a :左側ロックレバー
58b :右側ロックレバー
60 :捩りバネ
62 :制御ユニット
62G :制御ユニットの重心位置
62f :制御ユニットの前端
62r :制御ユニットの後端
64 :電動モータ
64G :電動モータの重心位置
64f :電動モータの前端
66 :オイルタンク
68 :オイルポンプ
68a :ウォームホイール
70 :動力伝達機構
70r :動力伝達機構の後端
72 :減速機
72a :第1ベベルギヤ
72b :第2ベベルギヤ
74 :コイル
76 :ステータ
78 :ロータ
80 :モータシャフト
82 :冷却ファン
82G :冷却ファンの重心位置
84 :駆動シャフト
84a :ウォームギヤ
140 :左側吸気口
142 :右側吸気口
144 :左側排気口
146 :右側排気口
160 :電池インタフェース
162 :接続端子
164 :フック
166 :表示部
202 :第1端部
204 :第2端部
206 :ガード本体
208 :プレート部
210 :リブ部
212 :第1リブ部
214 :第2リブ部
216 :第3リブ部
220 :第1延伸部
222 :第2延伸部
224 :屈曲部
360 :電池インタフェース
362 :接続端子
364 :フック
544 :排気口
620 :コントローラケース
660 :キャップ
680 :吸込部
682 :オイル供給路
684 :吐出部
B1、B2、B3、B4 :電池パック
B1f、B2f、B3f、B4f :電池パックの前端
BG1、BG2、BG3、BG4 :電池パックの重心位置
S :配線空間
T1、T2、T3、T4 :チェーンソー
TG1、TG2、TG3、TG4 :チェーンソーの重心位置